(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174085
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】サセプタ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241206BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241206BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/31 F
C23C16/42
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024168043
(22)【出願日】2024-09-27
(62)【分割の表示】P 2021152994の分割
【原出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】田部井 貴浩
(57)【要約】
【課題】少なくともシリコンウェーハとサセプタとが接触するレッジ部を含むウェーハ保持面の表面粗さを精度良く制御することができ、研磨ムラが生じることなく汚染の抑制された
サセプタを提供する。
【解決手段】本発明にかかるサセプタは、
炭素材料からなる基材の全面が炭化ケイ素からなる薄膜3で被覆され、一面側に、シリコンウェーハが載置される環状領域であるレッジ部4aを有するサセプタであって、前記レッジ部の薄膜の表面は研磨された面であり、前記レッジ部の薄膜の表面には、20μm以上の突起が存在せず、かつ、前記レッジ部の薄膜の表面粗さSaのばらつきが0.4μm以内であり、前記レッジ部における、薄膜の表面から深さ3μmにおけるFe,Cr,Cu,Alの濃度は、いずれの元素においても1×10
15
atoms/cm
3
以下である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材料からなる基材の全面が炭化ケイ素からなる薄膜で被覆され、一面側に、シリコンウェーハが載置される環状領域であるレッジ部を有するサセプタであって、
前記レッジ部の薄膜の表面は研磨された面であり、前記レッジ部の薄膜の表面には、20μm以上の突起が存在せず、
かつ、前記レッジ部の薄膜の表面粗さSaのばらつきが0.4μm以内であり、
前記レッジ部における、薄膜の表面から深さ3μmにおけるFe,Cr,Cu,Alの濃度は、いずれの元素においても1×10
15
atoms/cm
3
以下である
ことを特徴とするサセプタ。
【請求項2】
前記サセプタの一面側に、ザグリ部が形成され、前記ザグリ部は前記レッジ部を有することを特徴とする請求項1に記載のサセプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サセプタに関し、例えばエピタキシャル成膜装置においてウェーハを保持するサセプタに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造用装置の一つであるエピタキシャル成膜装置においては、シリコンウェーハを保持する部材であるサセプタとして、炭素材料(カーボン基材と呼ぶ)を炭化ケイ素(SiC)で覆ったカーボン複合材料が使用されている。前記サセプタには、平板状のサセプタ基材に一つのウェーハ収納用の凹部が形成された枚葉式サセプタや多数の凹部が形成されたサセプタなど、複数種が用いられている。
前記サセプタを製造する場合、いずれの型であっても所定のコーティング炉にカーボン基材の状態で設置され、CVD法等によって炭化ケイ素(SiC)をカーボン基材の表面に成膜することによって、カーボン複合材料からなるサセプタが得られる。
【0003】
例えば、枚葉タイプのサセプタの場合、
図5に示すようにサセプタ50の一の主面にシリコンウェーハWを載置する一つの凹形状のザグリ部51が形成されている。シリコンウェーハWはザグリ部51の周縁部に接することによりサセプタ50に支持される。このシリコンウェーハWが接するザグリ部51内の周縁部はレッジ部51aと呼ばれている。
例えば、特許文献1においては、前記サセプタは、機械的研削等によって凹部が形成されたカーボン基材にSiCを被覆して製造し、被覆した状態のまま、そのサセプタをシリコンウェーハの熱処理に用いている。
しかしながら、特許文献1のように、SiC被膜を被覆した状態のまま熱処理等に用いる場合には、SiCは非常に硬いため、結晶粒が大きくなると、その結晶頂部が刃物のごとく作用して、シリコンウェーハの表面を傷つける虞があった。
このような問題を解決するため、例えば特許文献2では、回転式研磨装置の先端にダイヤモンドペーパー及びダイヤモンドペーストを取り付け、前記レッジ部を含むザグリ部の表面を研磨して、その表面粗さの状態を調整するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56-10921号公報
【特許文献2】特開平5-283351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示される研磨装置においては、
図6に示すように先端の研磨ヘッド70(回転面)には、ダイヤモンドペーパー71が取り付けられる。前記ダイヤモンドペーパー71は、一般的に、樹脂基材72上にレジノイドボンドのような熱硬化性合成樹脂73を層状に設け、これにダイヤモンド砥粒74を保持したものが用いられている。
【0006】
しかしながら、このダイヤモンドペーパー71を用いた研磨にあっては、硬質な樹脂層73に砥粒74が保持されたものであるため、ザグリ部表面に歪みがあった場合などに、砥粒面が均一に当たらず、研磨ムラが生じる虞があった。
また、硬質な樹脂層73の表面側のみにダイヤモンド砥粒74が保持された構造であるため、ダイヤモンド砥粒74が脱落した場合に、脱落領域は砥粒の無い状態となり、研磨レートが大きく低下するなどの不具合が生じる虞があった。
【0007】
また、ダイヤモンドペーパー71に使用するレジノイドボンドは、高濃度の金属不純物を含むことが知られている。そして、本発明者の研究において、研磨装置側が金属不純物を含むと、ザグリ部に金属不純物が残留し、研磨後に不純物を除去する手間と時間が必要になるという課題があることを知見した。
【0008】
本発明は、上記事情の下になされたものであり、炭素材料からなる基材の表面を炭化ケイ素(SiC)の薄膜で覆ったカーボン複合材料からなるサセプタにおいて、少なくともシリコンウェーハとサセプタとが接触するレッジ部を含むウェーハ保持面の表面粗さを精度良く制御することができ、研磨ムラが生じることなく汚染の抑制されたサセプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
また、前記課題を解決するためになされた本発明に係るサセプタは、炭素材料からなる基材の全面が炭化ケイ素からなる薄膜で被覆され、一面側に、シリコンウェーハが載置される環状領域であるレッジ部を有するサセプタであって、前記レッジ部の薄膜の表面は研磨された面であり、前記レッジ部の薄膜の表面には、20μm以上の突起が存在せず、かつ、前記レッジ部の薄膜の表面粗さSaのばらつきが0.4μm以内であり、前記レッジ部における、薄膜の表面から深さ3μmにおけるFe,Cr,Cu,Alの濃度は、いずれの元素においても1×10
15
atoms/cm
3
以下であることに特徴を有する。
ここで、前記サセプタの一面側に、ザグリ部が形成され、前記ザグリ部は前記レッジ部を有することが望ましい。
【0010】
このように構成されたサセプタによれば、サセプタ上にシリコンウェーハを載置し、ウェーハ上面にエピタキシャル膜を形成する熱処理を行った際に、レッジ部とシリコンウェーハの下面との間の隙間を小さくすることができ、シリコンウェーハの下面(裏面)における不要なエピタキシャル膜の成長を抑制することができる。
また、シリコンウェーハへの不純金属物による汚染を減少させることができる。
【0011】
前記課題を解決するためになされた本発明に係るサセプタを製造するには、基材の全面に炭化ケイ素からなる薄膜を形成する工程と、前記シリコンウェーハが載置される面において、前記薄膜に対し研磨処理を施す工程と、を備え、前記薄膜に対し研磨処理を施す工程において、回転可能な研磨ヘッドに、ダイヤモンド砥粒と耐熱性樹脂とを混練し、前記ダイヤモンド砥粒が前記耐熱性樹脂中に多層に配置された混練一体型ラッピングシートを取り付け、前記研磨ヘッドを回転させるとともに、前記混練一体型ラッピングシートを前記薄膜に押し当てて研磨処理を施す。
尚、前記混練一体型ラッピングシートの厚さは60μm以上90μm以下であり、前記ダイヤモンド砥粒の粒度は10μm以上40μm以下とすることが望ましい。また、前記耐熱性樹脂がポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂のいずれかであることが望ましい。
【0012】
このような方法によれば、炭素材料からなる基材の表面を炭化ケイ素(SiC)の薄膜で覆ったカーボン複合材料からなるサセプタにおいて、少なくともシリコンウェーハが接触するレッジ部を、可撓性を有する耐熱性樹脂とダイヤモンド砥粒とが混練されてシート状に形成された混練一体型ラッピングシートを用いて研磨することにより、表面粗さを精度良く制御することができる。
即ち、研磨処理中において、前記混練一体型ラッピングシートの表面からダイヤモンド砥粒が脱落した場合には、脱落したダイヤモンド砥粒の下に他のダイヤモンド砥粒が存在し、それが被研磨面への加圧によってシート表面側に出てくる(自生する)ため、研磨力を長く維持し、研磨レートの低下を抑制することができる。
また、前記混練一体型ラッピングシートが、可撓性を有し、さらに緩衝部材に保持されれば、被研磨面に歪みがあった場合であっても、砥粒面が被研磨面にフィットして均一に当たり、研磨ムラの発生を防止することができる。
更に、前記混練一体型ラッピングシートにおいて、耐熱性樹脂は金属不純物の濃度が低いため、ザグリ部に金属不純物が残留することがなく、研磨後に不純物を除去する作業を不要とすることができる。
尚、耐熱性樹脂は、エンジニアリングプラスチック(汎用エンプラ、スーパーエンプラ)、汎用性プラスチックであれば、特に限定されるものではないが、耐熱性があり、かつシート状に形成できることから、前記耐熱性樹脂がポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂のいずれかであることがより好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、炭素材料からなる基材の表面を炭化ケイ素(SiC)の薄膜で覆ったカーボン複合材料からなるサセプタにおいて、少なくともシリコンウェーハとサセプタとが接触するレッジ部を含むウェーハ保持面の表面粗さを精度良く制御することができ、研磨ムラが生じることなく汚染の抑制されたサセプタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明に係るサセプタを製造する際に使用するCVD装置を模式的に示した断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のCVD装置での処理により形成されたサセプタの断面図である。
【
図3】
図3は、研磨装置の構成を示す断面図である。
【
図4】
図4は、研磨装置による研磨処理の状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、従来の枚葉式サセプタの構成を示す断面図である。
【
図6】
図6は、従来の研磨装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明にかかる
サセプタの一実施形態について、
図1乃至
図4に基づいて説明する。図は模式的または概念的なものであり、各部位の厚みと幅との関係、部位間の大きさの比率等は、正確に図示されていない。
【0016】
本発明に係るサセプタは、最初に、例えば
図1に示すようなCVD装置5を用いて炭化ケイ素(SiC)をカーボン基材の表面に成膜する。
図1に示すCVD装置5は、処理空間を形成するチャンバ10と、キャリアガス(水素ガス)をチャンバ10内に供給するため、チャンバ10側面に設けられたガス流入口11と、流入口11に対向する反対側のチャンバ10側面に設けられたガス流出口12とを有する。また、チャンバ10内においてサセプタのカーボン基材2の下面側を支持するための支持部20を備えている。また、チャンバ10の上下には、ヒータ部15が設けられ、炉内を所定温度まで昇温可能に構成されている。
【0017】
このCVD装置5を用いてサセプタを製造する場合、予め円形のザグリ部4が形成された炭素材料からなるカーボン基材2を、チャンバ10内の支持部20上に配置する。前記カーボン基材2は、例えば直径50~400mmの4,5,6,8,12インチのシリコンウェーハ用のものであり、内部の不純物濃度(Fe,Ni,Crの金属元素)が各々0.05ppm以下に形成されたものである。
【0018】
また、ヒータ部15を駆動してチャンバ10内を例えば500℃に昇温し、チャンバ10内をガス流出口12から吸引して真空状態とする。
次にガス流入口11よりキャリアガス(H2)を所定の流量でチャンバ10内に導入する。その後、チャンバ10内を例えば1300℃に昇温し、キャリアガス(希釈ガス)としてH2を用い、原料ガス(SiCl4、C3H8)を所定時間導入する。導入開始時におけるチャンバ10内の原料ガス濃度は、例えば15%~20%とされる。
【0019】
そして、形成膜が所定の厚さ(例えば60μm以上)となるように所定時間(例えば14時間)原料ガスをチャンバ10内に供給する。原料ガスは、キャリアガスによってカーボン基材2の上下面に沿って流れ、ガス流出口12より排出される。
予め設定された原料ガスの供給時間が経過すると、原料ガスの供給を停止する。
【0020】
これらの処理によりカーボン基材2上には、
図2に示すように炭化ケイ素(SiC)からなる薄膜3が形成される。
次に、薄膜3が形成されたカーボン基材2をチャンバ10から取り出し、ザグリ部4に対する研磨処理を行う。ここで、研磨処理は、少なくともザグリ部4においてシリコンウェーハWとの接触部となるレッジ部4aに対し行う。
図3に示すように、この研磨処理に用いる研磨装置6は、回転軸7aに支持された研磨ヘッド(回転基材)7bの上に、ウレタンゴムなどの緩衝部材9を設け、さらに緩衝部材9上に混練一体型ラッピングシート8を設けたものである。緩衝部材9の厚さTk1は、例えば5mmである。
【0021】
前記混練一体型ラッピングシート8は、ダイヤモンド砥粒8aとポリイミドなどの可撓性を有する耐熱性樹脂8bとを混練し、
図3に示すようにダイヤモンド砥粒8aが耐熱性樹脂8b中に多層に配置されている。尚、前記したように、耐熱性樹脂として、エンジニアリングプラスチック(汎用エンプラ、スーパーエンプラ)、汎用性プラスチックであれば、特に限定されることなく用いることができる。より好ましくは、耐熱性があり、かつシート状に形成できることから、前記耐熱性樹脂がポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂のいずれかを用いるのが良い。
【0022】
より具体的には、耐熱性樹脂8bの中に集中度が20以上200以下、より好ましくは70以上130以下(例えば100)でダイヤモンド砥粒8aが含まれ、シート状の耐熱性樹脂8bの中に、シート面方向及び厚さ方向に略均一にダイヤモンド砥粒8aが配置されている。シート表面に配置されたダイヤモンド砥粒8aの保持力は、耐熱性樹脂8bが例えばポリイミド樹脂の場合、高い保持力を有する。
しかしながら、研磨中に耐熱性樹脂8bの消耗により、シート表面のダイヤモンド砥粒8aが脱落することが想定される。その場合、脱落したダイヤモンド砥粒8aの下に他のダイヤモンド砥粒8aが存在し、それが消耗シート8表面側に新たに出てくる(自生する)ため、研磨力を長く維持し、研磨レートの低下を抑制することができる。
【0023】
混練一体型ラッピングシート8の厚さTk2は、好ましくは60μm以上90μm以下(例えば75μm)に形成される。混練一体型ラッピングシート8の厚さTk2が60μmより小さい場合、研磨中に減耗し消失することがあり、90μmより大きい場合、しなやかさが無くなり製品(サセプタ)の凹凸に追従できなくなるので、好ましくない。
また、混練一体型ラッピングシート8の面積は例えば0.5cm2に形成される。
【0024】
ダイヤモンド砥粒8aの粒度は、被研磨面の表面粗さSaの狙い値(目標とする表面粗さSa値)によって選定する。
例えば、表面粗さSaの狙い値が1.0μm以下の小さい場合は、ダイヤモンド砥粒8aの粒度を30~40μmのものを使用し、表面粗さSaの狙い値が1.0μmより大きい場合は、ダイヤモンド砥粒8aの粒度を10~20μmのものを使用する。
本実施形態において、ダイヤモンド砥粒8aの粒度は、10μm以上40μm以下であることが好ましい。ダイヤモンド砥粒8aの粒度が10μmより小さい場合、研磨効率が極端に悪くなり、ダイヤモンド砥粒8aの粒度が40μmより大きい場合、研磨部にツール跡(傷)が残るため好ましくない。
【0025】
また、ラッピングシート8が可撓性を有し、さらにウレタンゴムのような緩衝部材9に保持されるものであるため、被研磨面に歪みがあった場合であっても、砥粒面が被研磨面にフィットして均一に当たり、研磨ムラの発生を防止することができる。
また、従来のようなレジノイドボンドを用いたダイヤモンドペーパーを用いず、耐熱性樹脂8bの金属不純物の濃度が低いため、ザグリ部4に金属不純物が残留することがなく、研磨後に不純物を除去する作業を不要とすることができる。
【0026】
研磨装置6による研磨は、例えば、
図4に示すようにザグリ部4のレッジ部4aに混練一体型ラッピングシート8を加圧力2kgfで押し付け、研磨ヘッド回転数2000rpmとして、2分間研磨する。この研磨終了後、弗硝酸などによる洗浄を施して最終的なサセプタが得られる。
【0027】
このようにして得られたサセプタにあっては、前記ザグリ部4において、少なくともシリコンウェーハWの下面が接する環状領域であるレッジ部4aは、その薄膜3の表面粗さSa(面の算術平均粗さ)のばらつきが0.4μm以内に形成される。
即ち、サセプタ上にシリコンウェーハWを載置し、ウェーハ上面にエピタキシャル膜を形成する熱処理を行った際に、レッジ部4aとシリコンウェーハWの下面との間の隙間を小さくすることができ、シリコンウェーハWの下面(裏面)における不要なエピタキシャル膜の成長を抑制することができる。
【0028】
また、シリコンウェーハWのレッジ部4aにおいては前記した研磨処理を行うため、薄膜3表面には、例えば20μm以上の突起が無い状態となる。このため、サセプタ1側の突起によるシリコンウェーハWの表面への傷つけが防止される。
また、前記したように耐熱性樹脂8bの場合は、金属不純物の濃度が低いため、ザグリ部4に金属不純物が残留することがない。そのため、レッジ部4aにおける薄膜3Fの表面から深さ3μm、測定面積200μm×200μmにおける金属不純物(Fe,Cr,Cu,Al)の含有量は、いずれの元素も1×1015atoms/cm3以下に形成される。これにより、シリコンウェーハへの不純金属物による汚染が減少する。
【0029】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、炭素材料からなる基材2の表面を炭化ケイ素(SiC)の薄膜3で覆ったカーボン複合材料からなるサセプタにおいて、少なくともシリコンウェーハWが接触するレッジ部4aを、混練一体型ラッピングシート8を用いて研磨することにより、表面粗さを精度良く制御することができる。
即ち、研磨処理中において、前記混練一体型ラッピングシート8の表面からダイヤモンド砥粒8aが脱落した場合には、その下から新しい砥粒8aが次々と自生してくるため、研磨レートの低下を抑制することができる。
【0030】
また、前記混練一体型ラッピングシート8が、可撓性を有し、さらにウレタンゴムのような緩衝部材9に保持されるため、被研磨面に歪みがあった場合であっても、砥粒面が被研磨面にフィットして均一に当たり、研磨ムラの発生を防止することができる。
更に、前記混練一体型ラッピングシート8において、耐熱性樹脂8bは金属不純物の濃度が低いため、ザグリ部4に金属不純物が残留することがなく、研磨後に不純物を除去する作業を不要とすることができる。
【0031】
尚、前記実施の形態においては、研磨装置6において、混練一体型ラッピングシート8は、緩衝部材9上に設けられるものとしたが、本発明にあっては、その構成に限定されるものではなく、緩衝部材9を設けない構成であってもよい。
また、前記実施の形態においては、ザグリ部が形成されたサセプタを例に説明したが、本発明にあっては、その形態に限定されるものではなく、ザグリ部を有しないサセプタにも適用することができる。
また、ザグリ部を有する場合、図示したような凹状に湾曲したザグリ部に限らず、例えば、円柱形状のザグリ部を有するサセプタにも本発明を適用することができる。
【実施例0032】
本発明に係るサセプタについて、実施例に基づきさらに説明する。
[実験1]
実験1では、研磨装置に用いる混練一体型ラッピングシートのダイヤモンド粒度の粒度に応じて、目標とする表面粗さSa(面の算術平均粗さ)が得られるかを検証した。
また、一つのサセプタのレッジ部において18箇所の測定箇所をランダムに決定し、表面粗さSaのばらつきを測定した。
【0033】
(実施例1)
実施例1では、サセプタの基材の材料として等方性黒鉛を用い、ザグリ部が形成されたカーボン基材を複数用意した。
図1に示したCVD装置を用い、複数の膜厚形成条件により基材表面に炭化ケイ素膜を形成した。
前記CVD装置において、チャンバ内にカーボン基材を配置し、真空引き後、チャンバ内を500℃まで昇温してキャリアガス(H
2)をチャンバ内に導入した。次いで、チャンバ内を1300℃まで昇温し、カーボン基材の支持位置を固定しないように該基材を0.1rpmの回転速度で回転させ、カーボン基材の表裏面に沿って原料ガス(SiCl
4,C
3H
8)を供給した。所定時間(14時間)の経過後、原料ガスの供給を止め、1時間後にカーボン基材の回転を停止して基材表面に厚さ60μmの炭化ケイ素の薄膜を形成した。
【0034】
次いで、ザグリ部におけるレッジ部に対し、
図3に示した混練一体型ラッピングシートを研磨ヘッドに設けた研磨装置を用いて、サセプタを回転させ、回転した研磨ヘッドを固定したまま、一定時間研磨処理を実施した。なお、各条件は、研磨押付圧力2kgf、研磨ヘッド回転数2000rpm、サセプタ回転数20rpm、研磨時間2分であった。
前記混練一体型ラッピングシートは、可撓性を有する耐熱性樹脂にポリイミド樹脂を用い、ポリイミド樹脂と、粉末状のダイヤモンド砥粒を混練し、厚さ75μmのシート状とした。ポリイミド樹脂中におけるダイヤモンド砥粒の集中度は100、ダイヤモンド粒度の粒度は、30~40μmとした。また、シート面積は、0.5cm
2とした。
【0035】
また、前記混練一体型ラッピングシートは、厚さ5mmのウレタンゴム板を緩衝部材とし、この緩衝部材を介して研磨ヘッドに取り付けた。
研磨終了後、一サセプタのレッジ部において18箇所の測定領域をランダムに決定し、表面粗さSaのばらつきを測定した。測定方法は、レーザー顕微鏡により測定領域の高さプロファイルを作成し、各測定領域における面の算術平均粗さSaを得た。
実施例1の結果、レッジ部における面の表面粗さSaのばらつきは、0.4μm以内であった。また、レッジ部を、レーザー顕微鏡を用いて観察した結果、20μm以上となるような突起部は存在しなかった。
【0036】
(実施例2)
実施例2では、レッジ部に対する研磨処理において、混練一体型ラッピングシートに含まれるダイヤモンド粒度の粒度として、10~20μmのものを使用した。その他の条件は、実施例1と同じである。
研磨終了後、一サセプタのレッジ部において18箇所の測定領域をランダムに決定し、表面粗さSaのばらつきを測定した。測定方法は、レーザー顕微鏡により測定領域の高さプロファイルを作成し、各測定領域における面の算術平均粗さSaを得た。
実施例2の結果、レッジ部における面の表面粗さSaのばらつきは、0.4μm以内であった。また、レッジ部をレーザー顕微鏡を用いて観察した結果、20μm以上となるような突起部は存在しなかった。
【0037】
(比較例1)
比較例1では、実施例1と同様にサセプタの基材の材料として等方性黒鉛を用い、ザグリ部が形成されたカーボン基材を複数用意した。
図3に示したCVD装置を用い、複数の膜厚形成条件により基材表面に炭化ケイ素膜を形成した。
前記CVD装置において、チャンバ内にカーボン基材を配置し、真空引き後、チャンバ内を500℃まで昇温してキャリアガス(H
2)をチャンバ内に導入した。次いで、チャンバ内を1300℃まで昇温し、カーボン基材の支持位置を固定しないように該基材を0.1rpmの回転速度で回転させ、カーボン基材の表裏面に沿って原料ガス(SiCl
4,C
3H
8)を供給した。所定時間(14時間)の経過後、原料ガスの供給を止め、1時間後にカーボン基材の回転を停止して基材表面に厚さ70μmの炭化ケイ素の薄膜を形成した。
【0038】
次いで、ザグリ部におけるレッジ部に対し、
図6に示したように熱硬化性合成樹脂であるレジノイドボンドにダイヤモンド砥粒を保持したダイヤモンドペーパーを研磨ヘッドに設けた研磨装置を用いて、サセプタを回転させ、回転した研磨ヘッドを固定したまま、一定時間研磨処理を実施した。なお、各条件は、研磨押付圧力2kgf、研磨ヘッド回転数2000rpm、サセプタ回転数20rpm、研磨時間1分であった。
前記ダイヤモンドペーパーにおいて、ダイヤモンド砥粒は、レジノイドボンドによって1層に配置されており、ダイヤモンド砥粒の集中度は100、ダイヤモンド粒度の粒度は、30~40μmとした。また、シート面積は、0.5cm
2とした。
研磨終了後、一サセプタのレッジ部において18箇所の測定領域をランダムに決定し、表面粗さSaのばらつきを測定した。測定方法は、レーザー顕微鏡により測定領域の高さプロファイルを作成し、各測定領域における面の算術平均粗さSaを得た。
比較例1の結果、レッジ部の面の表面粗さSaのばらつきが0.5μm以上であった。
【0039】
以上のように実験1の結果、レッジ部における表面粗さSaのばらつきは、0.4μm以内であり、小さく抑えることができることを確認した。
また、ダイヤモンド砥粒の粒度に応じて、レッジ部の表面粗さSaが変化するため、目標とする表面粗さSaに対応して砥粒の粒度を設定すればよいことを確認した。
一方、比較例1では、実施例1、2の場合よりもレッジ部における表面粗さSaのばらつきが大きくなることを確認した。
【0040】
[実験2]
実験2では、サセプタのレッジ部において、研磨後のSiC膜が金属不純物により汚染されているかを検証した。
前記レッジ部の研磨により汚染されるか否かを検証するため、先ず、レッジ部の研磨を実施しないサセプタを製造し、レッジ部において、SiC膜の表面から深さ3μm、測定領域200μm×200μmにおけるFe,Cr,Cu,Alの濃度を測定した。測定方法は、二次イオン質量分析法(SIMS分析)を用いた。サセプタの製造条件としては、レッジ部の研磨を実施しない以外は、実施例1と同じとした。
この結果、SiC膜の表面から深さ3μmにおけるFe,Cr,Cu,Alの濃度は、いずれの元素においても1×1015atoms/cm3以下であった。
【0041】
(実施例3)
実施例3では、実施例1と同様の方法により製造したサセプタのレッジ部において、SiC膜の表面から深さ3μm、測定領域200μm×200μmにおけるFe,Cr,Cu,Alの濃度を測定した。測定方法は、二次イオン質量分析法を用いた。
実施例3の結果、SiC膜の表面から深さ3μmにおけるFe,Cr,Cu,Alの濃度は、いずれの元素においても1×1015atoms/cm3以下であった。
即ち、レッジ部の研磨処理を実施しない場合と比較しても、金属不純物による汚染は殆どなかった。
【0042】
(実施例4)
実施例4では、実施例2と同様の方法により製造したサセプタのレッジ部において、SiC膜の表面から深さ3μm、測定領域200μm×200μmにおけるFe,Cr,Cu,Alの濃度を測定した。測定方法は、実施例3と同じである。
実施例4の結果、SiC膜の表面から深さ3μmにおけるFe,Cr,Cu,Alの濃度は、いずれの元素においても1×1015atoms/cm3以下であった。
即ち、レッジ部の研磨処理を実施しない場合と比較しても、金属不純物による汚染は殆どなかった。
【0043】
(比較例2)
比較例2では、比較例1と同様の方法により製造したサセプタのレッジ部において、SiC膜の表面から深さ3μm、測定領域200μm×200μmにおけるFe,Cr,Cu,Alの濃度を測定した。測定方法は、実施例3と同じである。
比較例2の結果、SiC膜の表面から深さ3μmにおけるFe,Cr,Cu,Alの濃度は、いずれの元素においても1×1016以上1×1018atoms/cm3以下であった。
即ち、レッジ部の研磨処理を実施しない場合と比較して、研磨処理したことにより金属不純物の汚染が確認できた。
【0044】
以上の実験2の結果、実施例3、4によれば、サセプタのレッジ部において、SiC膜の表面から深さ3μmにおけるFe,Cr,Cu,Alの濃度は、いずれの元素においても1×1015atoms/cm3以下に低く抑えることができることを確認した。