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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174095
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】タッチセンサ
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20241206BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20241206BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241206BHJP
   H10K 59/40 20230101ALI20241206BHJP
   H10K 59/131 20230101ALI20241206BHJP
   H10K 50/822 20230101ALI20241206BHJP
   H10K 50/81 20230101ALI20241206BHJP
【FI】
G09F9/30 338
G06F3/041
G09F9/00 366A
H10K59/40
H10K59/131
H10K50/822
H10K50/81
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024169922
(22)【出願日】2024-09-30
(62)【分割の表示】P 2022505867の分割
【原出願日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】62/988,708
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】110004277
【氏名又は名称】弁理士法人そらおと
(72)【発明者】
【氏名】門脇 淳
(57)【要約】
【課題】垂直方向寄生キャパシタンスそれ自体を低減できるタッチセンサを提供する。
【解決手段】本発明によるタッチセンサは、マトリクス状に配置された複数の画素のそれぞれに対応して設けられた複数の画素電極、及び、前記複数の画素に共通に設けられた共通電極を有するディスプレイパネルと、指及びペンの少なくとも一方の位置を検出するためのタッチパネルと、が垂直方向に重畳して配置された構造を有するタッチセンサであって、前記共通電極は、第1の方向に見て前記マトリクスの1列おきに、第2の方向に並べて配置された複数のH型の穴を有し、前記複数のH型の穴はそれぞれ、前記第2の方向に隣接する2つの前記画素の間の領域と、該2つの前記画素の前記第1の方向の両側の領域とを用いて形成されており、前記第1の方向に隣接する2つの前記H型の穴の列では、1つの前記画素の分、前記H型の穴の位置がずれている、タッチセンサである。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向及び前記第1の方向に直交する第2の方向に沿ってマトリクス状に配置された複数の画素のそれぞれに対応して設けられた複数の画素電極、及び、前記複数の画素に共通に設けられた共通電極を有するディスプレイパネルと、
指及びペンの少なくとも一方の位置を検出するためのタッチパネルと、
が垂直方向に重畳して配置された構造を有するタッチセンサであって、
前記共通電極は、前記第1の方向に見て前記マトリクスの1列おきに、前記第2の方向に並べて配置された複数のH型の穴を有し、
前記複数のH型の穴はそれぞれ、前記第2の方向に隣接する2つの前記画素の間の領域と、該2つの前記画素の前記第1の方向の両側の領域とを用いて形成されており、
前記第1の方向に隣接する2つの前記H型の穴の列では、1つの前記画素の分、前記H型の穴の位置がずれている、
タッチセンサ。
【請求項2】
前記共通電極は、1以上の電源配線によって定電圧電源に接続され、
前記複数のH型の穴は、前記1以上の電源配線のいずれとも電気的に接続されない部分が前記共通電極内に発生しないように形成される、
請求項1に記載のタッチセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイパネルとタッチパネルとが垂直方向に重畳して配置された構造のタッチセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
指又はペンの位置を検出するためのタッチパネルをディスプレイパネル上に配置してなる構造のタッチセンサが知られている。この種のタッチセンサのうち、ディスプレイパネルとタッチパネルが一体形成されているものは「オンセル型」と呼ばれ、ディスプレイパネルとタッチパネルが別々に形成されているものは「アウトセル型」と呼ばれる。以下では、これら「オンセル型」及び「アウトセル型」をまとめて、単に「タッチセンサ」と称する。
【0003】
タッチセンサにおいては、タッチパネル内のセンサ電極間に生ずる寄生キャパシタンスとは別に、タッチパネルとディスプレイパネルの間にも寄生キャパシタンスが生ずる。以下、後者の寄生キャパシタンスを「垂直方向寄生キャパシタンス」と称する。コンピュータからディスプレイパネルに供給されるディスプレイ駆動信号は、この垂直方向寄生キャパシタンスを介してタッチパネルにも到達する。こうしてタッチパネルに到達したディスプレイ駆動信号は、タッチパネルの動作に対するノイズとなり、指やペンの検出精度を低下させる。
【0004】
特許文献1,2には、このような検出精度の低下を防止するための技術が開示されている。具体的に説明すると、特許文献1には、画像データの内容及び各画素電極の極性に応じて複数の画素電極の駆動方法を変更するというディスプレイ側の処理により、上記ノイズを低減する技術が開示されている。特許文献2には、垂直方向寄生キャパシタンスに相当する量の電荷をタッチセンサのチャージアンプに与えることにより、上記ノイズの影響を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/087332号公報
【特許文献2】特開2011-222013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載の技術によれば、ノイズは低減できるものの、垂直方向寄生キャパシタンス自体を低減できるわけではない。できる限りディスプレイの影響を受けずに指又はペンの位置を検出できるようにするためには、垂直方向寄生キャパシタンス自体を低減することが好ましい。
【0007】
したがって、本発明の目的の一つは、垂直方向寄生キャパシタンスそれ自体を低減できるタッチセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるタッチセンサは、複数の画素のそれぞれに対応して設けられた複数の画素電極、及び、前記複数の画素に共通に設けられた共通電極を有するディスプレイパネルと、指及びペンの少なくとも一方の位置を検出するためのタッチパネルと、が垂直方向に重畳して配置された構造を有するタッチセンサであって、前記共通電極は、該共通電極の面積を削減する導体面積抑制部を有する、タッチセンサである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、垂直方向キャパシタンスの一方の電極の大部分を構成する共通電極の面積を削減できるので、垂直方向寄生キャパシタンスそれ自体を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態によるタッチセンサ2を含む電子機器1の構成を示す図である。
図2図1に示したディスプレイパネル4の平面図である。
図3】個々のOLEDセルPXの回路構成を示す図である。
図4】(a)は、図2に示したA-A線に対応するディスプレイパネル4の断面図であり、(b)は、図2に示したB-B線に対応するディスプレイパネル4の断面図である。
図5図4(a)及び図4(b)に示した共通電極32の平面構成を示す図である。
図6】本発明の第1の実施の形態の第1の変形例による共通電極32の平面構成を示す図である。
図7】(a)は、図6に示したC-C線に対応するディスプレイパネル4の断面図であり、(b)は、図6に示したD-D線に対応するディスプレイパネル4の断面図である。
図8】本発明の第1の実施の形態の第2の変形例による共通電極32の平面構成を示す図である。
図9】本発明の第1の実施の形態の第3の変形例による共通電極32の平面構成を示す図である。
図10】本発明の第1の実施の形態の第4の変形例による共通電極32の平面構成を示す図である。
図11】本発明の第2の実施の形態によるタッチセンサ2に含まれる共通電極32の平面構成を示す図である。
図12】(a)は、図11に示したE-E線に対応するディスプレイパネル4の断面図であり、(b)は、図11に示したF-F線に対応するディスプレイパネル4の断面図である。
図13】本発明の第2の実施の第1の変形例による共通電極32の平面構成を示す図である。
図14】本発明の第2の実施の第2の変形例による共通電極32の平面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態によるタッチセンサ2を含む電子機器1の構成を示す図である。同図においては、タッチセンサ2の部分のみ、パネル構造を示す垂直方向の断面図となっている。電子機器1は例えばタブレット端末、スマートフォン、ノート型パソコンのような個人用の情報機器であり、タッチセンサ2の他に、ホストプロセッサ50、メモリ51、及びセンサコントローラ52を有して構成される。
【0013】
ホストプロセッサ50は、電子機器1の中央処理装置である。また、メモリ51は任意のデータを記憶可能に構成された記憶装置であり、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの主記憶装置と、ハードディスクなどの補助記憶装置とを含んで構成される。ホストプロセッサ50は、メモリ51内に記憶されるプログラムを読み出して実行することにより、電子機器1のオペレーティングシステムや描画アプリケーションを含む各種のアプリケーションを実行可能に構成される。メモリ51は、ホストプロセッサ50のワークメモリとして機能するとともに、ホストプロセッサ50により生成されたデータを記憶する役割も有する。
【0014】
センサコントローラ52は、タッチパネル6を用いて、後述するタッチ面2a上における指及びペンの位置を検出する集積回路である。センサコントローラ52が行う処理の詳細については、後述する。指及びペンの位置の具体的な検出方式は特に限定されないが、例えば、指の位置検出は静電容量方式によって実行され、ペンの検出はアクティブ静電方式又は電磁誘導方式によって実行される。以下では、指の位置検出を静電容量方式により、ペンの位置検出をアクティブ静電方式によりそれぞれ実行することを前提として説明を続ける。
【0015】
タッチセンサ2は上述したオンセル型に類別されるタッチセンサであり、ディスプレイパネル4とタッチパネル6とが一体的に形成された構造を有している。より具体的には、図1に示すように、ガラス基板3(ボトムグラス)、ディスプレイパネル4、ガラス基板5(トップグラス)、タッチパネル6、偏光板7、空気ギャップ8、及びガラス基板9(ウインドウグラス)がこの順で積層されてなる構造を有している。このうちガラス基板9の表面は、ユーザが指やペンを摺動させるタッチ面2aを構成する。以下でタッチセンサ2の上側というときはタッチ面2a側を指し、タッチセンサ2の下側というときはタッチ面2aの反対側(ガラス基板3の表面)を指す。
【0016】
ディスプレイパネル4はガラス基板3上に配置された有機ELディスプレイであり、それぞれが1つの画素(サブピクセル)を構成する複数のOLED(Organic Light Emitting Diode)セルをマトリクス状に配置してなる構造を有している。ディスプレイパネル4の構造については、後ほどより詳しく説明する。ディスプレイパネル4は、ホストプロセッサ50から供給されるディスプレイ駆動信号に基づいて各OLEDセルを個別に駆動することにより、ホストプロセッサ50が生成した画像を表示する役割を果たす。
【0017】
タッチパネル6は、指及びペンの少なくとも一方の位置を検出するためのセンサであり、ディスプレイパネル4の上面(より具体的には、後述する共通電極32の上面)にガラス基板5を介して配置される。ガラス基板5は、所定の誘電率εを有する厚みdの透明な絶縁体である。厚みdの具体的な値は、例えば数十μmより小さい値となる。
【0018】
タッチパネル6内には、それぞれセンサコントローラ52に接続された複数のセンサ電極(図示せず)が配置される。これら複数のセンサ電極には、長方形であるタッチパネル6の一辺に平行に延在し、かつ等間隔に配置された複数の第1の線状導体(図示せず)と、それぞれ上記一辺と直交する方向に延在し、等間隔に配置された複数の第2の線状導体(図示せず)とが含まれる。第1及び第2の線状導体はいずれも、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明な導体によって構成される。
【0019】
センサコントローラ52は、タッチパネル6に含まれる複数のセンサ電極を用いてペンと双方向の通信を行うことにより、ペンの位置を検出するとともに、ペンが送信したデータを受信する処理を行う。また、センサコントローラ52は、複数の第1の線状導体のそれぞれに対して指検出用信号を供給し、それを複数の第2の線状導体のそれぞれで受信することにより、指の位置を検出する処理を行う。センサコントローラ52は、こうして検出したペン又は指の位置、及び、ペンから受信したデータを、逐次ホストプロセッサ50に供給する。ホストプロセッサ50は、こうして供給された位置及びデータに基づいて画像を生成し、生成した画像を表示させるためのディスプレイ駆動信号をディスプレイパネル4に供給する処理を行う。ホストプロセッサ50が生成する画像には、指又はペンの位置に対応する位置に表示されたカーソルや、指又はペンの位置の軌跡を示すストロークデータなどが含まれる。
【0020】
偏光板7は、ディスプレイパネル4の屋外視認性を改善するためのもので、タッチパネル6の上面に配置される。ガラス基板9は平坦かつ透明な絶縁体であり、偏光板7上に空気ギャップ8を介して配置される。空気ギャップ8に代えて、又は、空気ギャップ8とともに樹脂層を用いてもよい。タッチパネル6とタッチ面2aとの間の距離dは、これら偏光板7、空気ギャップ8、及びガラス基板9の厚みの合計値となる。距離dが大きいほど、タッチパネル6に含まれる複数のセンサ電極と指又はペンとの間の距離が長くなり、センサコントローラ52による位置検出の精度が悪化するので、距離dはできるだけ小さくすることが好ましい。
【0021】
ここで、センサコントローラ52による位置検出の精度には、距離dの他、上述したガラス基板5の厚みdも影響する。すなわち、タッチパネル6には、上述した垂直方向寄生キャパシタンス(タッチパネル6とディスプレイパネル4の間に生ずる寄生キャパシタンス)を介して、ディスプレイパネル4から漏れ出たディスプレイ駆動信号が到達する。タッチパネル6に到達したディスプレイ駆動信号は、センサコントローラ52とペンとの間で送受信される信号や上述した指検出用信号にノイズとして重畳するので、できるだけタッチパネル6に到達するディスプレイ駆動信号の強度を小さくすることが好ましく、そのためには、厚みdを大きくして垂直方向寄生キャパシタンスを小さくすることが好ましい。ただし、タッチセンサ2の低背化やディスプレイパネル4の視認性の観点からは厚みdを小さくすることが好ましく、現実の厚みdはむしろ縮小傾向にある。厚みdが小さくなると上述した距離dが相対的に大きくなり、結果として、センサコントローラ52による位置検出の精度が悪化するので、厚みdを大きくする以外の方法で、垂直方向寄生キャパシタンスを小さくする技術が求められている。
【0022】
本発明は、ディスプレイパネル4内の構造を工夫することにより、厚みdを大きくする以外の方法で、垂直方向寄生キャパシタンスの低減を実現するものである。以下、図2図5を参照しながら、厚みdによらず垂直方向寄生キャパシタンスの低減を実現するディスプレイパネル4の構造について、具体的に説明する。
【0023】
図2は、ディスプレイパネル4の平面図である。同図に示すように、ディスプレイパネル4は、複数のOLEDセルPX(画素)が図示したx方向及びy方向に沿ってマトリクス状に配置された構成を有している。なお、図2に示す各OLEDセルPXの領域(長方形の領域)は、発光の範囲を表している。
【0024】
図2及び後掲の各図において「R」と記したOLEDセルPXは赤色に発光するように構成されたOLEDセルPXであり、「G」と記したOLEDセルPXは緑色に発光するように構成されたOLEDセルPXであり、「B」と記したOLEDセルPXは青色に発光するように構成されたOLEDセルPXである。図2に示すように、x方向においては、左から順に「R」「G」「B」に対応する3つのOLEDセルPXのセットが繰り返し配置される。また、y方向においては、同色のOLEDセルPXが繰り返し配置される。
【0025】
また、ディスプレイパネル4は、複数のゲート線GL、複数のソース線SL、及び、複数の電源線VLを有して構成される。各ゲート線GLは、x方向に並ぶ複数のOLEDセルPXに共通に設けられ、対応する各OLEDセルPXに接続される。また、各ソース線SL及び各電源線VLはそれぞれ、y方向に並ぶ複数のOLEDセルPXに共通に設けられ、対応する各OLEDセルPXに接続される。
【0026】
図3は、個々のOLEDセルPXの回路構成を示す図である。同図に示すように、OLEDセルPXは、スイッチングトランジスタTsと、駆動トランジスタTdと、有機発光ダイオードELと、キャパシタCとを有して構成される。このうちスイッチングトランジスタTsのゲートは対応するゲート線GLに接続され、ソースは対応するソース線SLに接続される。また、駆動トランジスタTdのソースは、対応する電源線VLに接続される。スイッチングトランジスタTsのドレインは、駆動トランジスタTdのゲートに接続される。駆動トランジスタTdのゲートは、キャパシタCを介して、自身のソースにも接続される。有機発光ダイオードELのアノードは駆動トランジスタTdのドレインに接続され、カソードは接地される。
【0027】
OLEDセルPXの駆動は、マトリクスの行単位で行われる。具体的に説明すると、ホストプロセッサ50はまず、表示対象の画像に基づいてx方向に並ぶ一連のOLEDセルPXそれぞれの発光強度を決定し、決定した発光強度に応じた電位を各ソース線SLに与える。次に、対応するゲート線GLを活性化することにより、対応する一連のOLEDセルPXのスイッチングトランジスタTsをオンにする。これにより、対応するソース線SLの電位が駆動トランジスタTdのゲートに供給され、駆動トランジスタTdがオンになる。電源線VLは所定電圧の電源に接続されており、駆動トランジスタTdがオンになると、ソース線SLの電位に応じた量の電流が有機発光ダイオードELに供給される。これにより、決定した発光強度で有機発光ダイオードELが発光することになる。
【0028】
図4(a)は、図2に示したA-A線に対応するディスプレイパネル4の断面図であり、図4(b)は、図2に示したB-B線に対応するディスプレイパネル4の断面図である。以下、この図4(a)及び図4(b)を参照しながら、ディスプレイパネル4の積層構造について説明する。
【0029】
まず初めに、ディスプレイパネル4は、下側から順に6つの絶縁層10~15を有して構成される。絶縁層10の上面には、スイッチングトランジスタTsのゲート20と、駆動トランジスタTdのゲート24と、ゲート線GLとが形成される。このうちゲート20とゲート線GLとは、絶縁層10の上面に形成される導体(図4には現れていない)を介して相互に接続される。また、絶縁層11の上面には、スイッチングトランジスタTsのチャネル21と、駆動トランジスタTdのチャネル25とが形成される。
【0030】
絶縁層12の上面には、スイッチングトランジスタTsのソース22及びドレイン23と、駆動トランジスタTdのドレイン26及びソース27と、ソース線SLと、電源線VLとが形成される。このうちソース22は、絶縁層12を貫くビア導体によってチャネル21の一端に接続される。また、ドレイン23は、絶縁層12を貫くビア導体によってチャネル21の他端に接続されるとともに、絶縁層11,12を貫くビア導体によってゲート24にも接続される。ドレイン26は、絶縁層12を貫くビア導体によってチャネル25の一端に接続される。ソース27は、絶縁層12を貫くビア導体によってチャネル25の他端に接続される。図3に示したキャパシタCは、ソース27とゲート24の間に形成される寄生キャパシタンスによって構成される。
【0031】
絶縁層14の上面には、有機発光ダイオードELのアノードに相当する画素電極30が形成される。画素電極30は、絶縁層13,14を貫くビア導体によってドレイン26に接続される。図4(b)に示すように、y方向に隣接する2つの画素電極30の間には絶縁層33が形成されており、これによりy方向に隣接する2つの画素電極30の間の絶縁が確保されている。一方、図4(a)に示すように、x方向に隣接する2つの画素電極30の間は、絶縁層15によって絶縁される。
【0032】
絶縁層15は絶縁層33に比べて厚く形成されており、x方向に隣接する2つの絶縁層15の間は、底面に画素電極30及び絶縁層33が交互に露出した谷状の構造を呈している。この谷の底部には、発光層31が一定の厚みで形成される。発光層31は、対応する画素電極30と共通電極32との間の電位差に応じて発光する材料によって構成される。また、発光層31の上面には、有機発光ダイオードELのカソードに相当する共通電極32が形成される。
【0033】
共通電極32は、絶縁層15によって構成される谷の側面と絶縁層15の上面とにも形成されており、画素ごとではなくディスプレイパネル4の全体を覆う矩形のベタ導体を構成している。これにより共通電極32は、垂直方向キャパシタンスの一方の電極の大部分を構成している。共通電極32をベタ導体で構成するのは、共通電極32をできるだけ低抵抗化するためであり、通常であれば共通電極32に穴を開けることはあり得ないが、本実施の形態においては、共通電極32に1以上の穴Hを設ける。この1以上の穴Hは、それぞれが共通電極32の面積を削減する導体面積抑制部として機能するもので、共通電極32の面積を全体として削減する役割を担っている。本実施の形態によるタッチセンサ2は、こうしてベタ導体に1以上の穴Hを設けて共通電極32の面積を削減することにより、垂直方向寄生キャパシタンスの低減を実現するものである。
【0034】
図5は、共通電極32の平面構成を示す図である。同図に示した破線は、各画素の発光の範囲を表している。同図に示すように、共通電極32は、1以上の電源配線によって、接地電位GNDが供給される定電圧電源に接続されている。図5の例では、ディスプレイパネル4のx方向一端と他端に2本ずつ、計4本の電源配線が設けられている。
【0035】
図5に示すように、本実施の形態による共通電極32の穴Hは、水平方向に見て複数の画素の間に相当する領域に形成される。より具体的に言えば、共通電極32には複数の穴Hが設けられており、各穴Hは、それぞれx方向に隣接する2つの画素の間に相当する複数の領域のそれぞれに、y方向に延在するように形成されている。ただし、x方向に隣接する2つの画素の間に相当する複数の領域のそれぞれには数個のブリッジHa(穴Hを開けない部分)も設けられており、これにより、穴Hのx方向両側に位置する共通電極32の各部分が電気的に相互に接続されている。
【0036】
図5に示した穴Hの配置によれば、複数の画素それぞれの少なくとも一部又は全部が共通電極32に覆われた状態を維持できる。したがって、発光層31から射出される光の透過率の均一性に影響を与えないように、穴Hを設けることが可能になる。また、図5の例では、x方向に隣接する2つの画素の間に相当する複数の領域のそれぞれに数個のブリッジHaを設けているので、共通電極32の一部が1以上の電源配線のいずれとも電気的に接続されず、接地電位の供給されないフローティング導体となってしまうことを回避できる。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態によるタッチセンサ2によれば、垂直方向キャパシタンスの一方の電極の大部分を構成する共通電極32の面積を削減できるので、垂直方向寄生キャパシタンスそれ自体を低減することが可能になる。したがって、距離dを大きくすることができなくても、ディスプレイ駆動信号に起因してセンサコントローラ52による位置検出の精度が悪化することを防止できるようになる。また、発光層31から射出される光の透過率の均一性に影響を与えないように穴Hを設けることができ、かつ、共通電極32の一部が接地電位の供給されないフローティング導体になってしまうことも回避できる。
【0038】
なお、共通電極32に設ける穴Hの位置は、図4(a)及び図5に示したものに限られない。例えば、図4(a)及び図5の例では規則性をもって穴Hを配置しているが、ランダムに穴Hを配置することとしてもよい。ランダムに穴Hを配置する場合、隣接する2つの画素の色の組み合わせごとに、該色に対応する2つの画素の間に配置される穴Hの数(或いは総面積又は総延長)が実質的に同じ値となるように穴Hを配置することが好ましい。
【0039】
一例を挙げると、赤に対応する画素と緑に対応する画素の間に配置される穴Hの総数T1と、緑に対応する画素と青に対応する画素の間に配置される穴Hの総数T2と、青に対応する画素と赤に対応する画素の間に配置される穴Hの総数T3とが実質的に同じ値になるように穴Hを配置することが好ましい。ただし、ここでいう「実質的に同じ値」とは、T1,T2,T3のうちの任意の2つの数の差の絶対値の最大値がT1,T2,T3の合計の1/3の50%より小さい数であることを意味する。こうすることで、領域による色の異なり(色のムラ)を抑制することが可能になる。
【0040】
図6は、本実施の形態の第1の変形例による共通電極32の平面構成を示す図である。また、図7(a)は、図6に示したC-C線に対応するディスプレイパネル4の断面図であり、図7(b)は、図6に示したD-D線に対応するディスプレイパネル4の断面図である。本変形例は、それぞれy方向に隣接する2つの画素の間に相当する複数の領域のそれぞれに、x方向に延在する穴Hを設けている点で、図5に示した例と異なっている。y方向に隣接する2つの画素の間に相当する複数の領域のそれぞれに数個のブリッジHaを設けている点は、図5に示した例と同様である。また、共通電極32に接地電位GNDを供給するための電源配線は、ディスプレイパネル4のy方向一端と他端に2本ずつ設けられる。
【0041】
本変形例によっても、複数の画素それぞれの少なくとも一部又は全部が共通電極32に覆われた状態を維持できるので、発光層31から射出される光の透過率の均一性に影響を与えないように、穴Hを設けることが可能になる。また、y方向に隣接する2つの画素の間に相当する複数の領域のそれぞれに数個のブリッジHaを設けているので、共通電極32の一部が接地電位の供給されないフローティング導体となってしまうことを回避できる。
【0042】
図8は、本実施の形態の第2の変形例による共通電極32の平面構成を示す図である。この例では、x方向に隣接する2つの画素の間に相当する領域の一部、及び、y方向に隣接する2つの画素の間に相当する領域の一部に、ランダム又は一定の規則性をもって、穴Hを配置している。ただし、共通電極32の一部が接地電位の供給されないフローティング導体となってしまうことを回避するべく、穴Hによって全体を囲まれた部分が生じないように穴Hのサイズ及び位置を調整している。この例によっても、発光層31から射出される光の透過率の均一性に影響を与えないように穴Hを設けることができ、しかも、共通電極32の一部が接地電位の供給されないフローティング導体となってしまうことを回避できる。
【0043】
図9は、本実施の形態の第3の変形例による共通電極32の平面構成を示す図である。この例では、一部の画素のほぼ全体を覆うように穴Hを設けている。穴Hが発光層31から射出される光の透過率の均一性にほとんど影響しない場合であれば、このように、一部の画素のほぼ全体を覆うように穴Hを設けることも可能である。
【0044】
図10は、本実施の形態の第4の変形例による共通電極32の平面構成を示す図である。本変形例は、ディスプレイパネル4が完成した後、共通電極32に穴Hを穿孔する場合など、画素の配列とは関係なく共通電極32に穴Hを設けなければならない場合の例である。この場合、穴Hが画質に影響することを極力避けるため、図10に示すように、画素に比べて小さい面積で穴Hを形成することが好ましい。また、図10に示すように穴Hを規則的に並べることによって、赤、緑、青のそれぞれに対して均一に穴Hが配置されるようにすることが好ましい。また、モアレが発生しないように、規則的に並べた穴Hのx方向のピッチX2が画素のx方向のピッチX1の倍数又は約数にならず、かつ、規則的に並べた穴Hのy方向のピッチY2が画素のy方向のピッチY1の倍数又は約数にならないように穴Hを設けることが好ましい。
【0045】
図11は、本発明の第2の実施の形態によるタッチセンサ2に含まれる共通電極32の平面構成を示す図である。また、図12(a)は、図11に示したE-E線に対応するディスプレイパネル4の断面図であり、図12(b)は、図11に示したF-F線に対応するディスプレイパネル4の断面図である。本実施の形態によるタッチセンサ2は、ディスプレイパネル4が補助電極35を有する点で、第1の実施の形態によるタッチセンサ2と異なっている。以下では、第1の実施の形態によるタッチセンサ2との相違点に着目して、本実施の形態によるディスプレイパネル4の構造を詳しく説明する。
【0046】
補助電極35は共通電極32の低抵抗化のために設けられる透明な導体であり、図12(a)及び図12(b)に示すように、透明な絶縁体である保護層34を介して、共通電極32の上面に形成される。補助電極35と共通電極32とは、絶縁層15の上方に相当する位置で、保護層34を貫通するビア導体35aにより相互に接続される。補助電極35を設けることで、共通電極32の低抵抗化を実現できる一方で、補助電極35を設けない場合に比べて垂直方向寄生キャパシタンスは大きくなる。
【0047】
本実施の形態による穴Hは、図12(a)に示すように、補助電極35、保護層34、及び共通電極32を貫通するように形成される。したがって、水平方向に見て1以上の穴Hが設けられる位置には、共通電極32だけでなく補助電極35も配置されない。
【0048】
補助電極35に接地電位が供給されずフローティング導体となる部分が生じないようにするため、本実施の形態による1以上の穴Hは、少なくともフローティング導体である補助電極35が生じない範囲でビア導体35aを残すように形成される。図11に示した穴Hの配置は、そのような穴Hの配置の一例である。同図の例では、赤に対応する画素と緑に対応する画素の間に穴Hを配置する行と、緑に対応する画素と青に対応する画素の間に穴Hを配置する行と、青に対応する画素と赤に対応する画素の間に穴Hを配置する行とがディスプレイパネル4のy方向一端側から順に繰り返し並ぶこととなるよう、穴Hが配置される。これによれば、補助電極35にフローティング導体となる部分が生じてしまうことを防止できる。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態によるタッチセンサ2によれば、垂直方向キャパシタンスの一方の電極の大部分を構成する共通電極32及び補助電極35の面積を削減できるので、ディスプレイパネル4内に補助電極35を設ける場合においても、垂直方向寄生キャパシタンスそれ自体を低減することが可能になる。したがって、図1に示した距離dを大きくすることができなくても、ディスプレイ駆動信号に起因してセンサコントローラ52による位置検出の精度が悪化することを防止できるようになる。
【0050】
また、本実施の形態によるタッチセンサ2によれば、補助電極35と共通電極32の電気的な接続を維持できるので、共通電極32は勿論、補助電極35についても、接地電位が供給されずフローティング導体になってしまう部分が生ずることを回避できる。さらに、赤、緑、青のそれぞれに対して穴Hを均一に配置しているので、領域による色の異なり(色のムラ)を抑制することも可能になる。
【0051】
図13は、本実施の形態の第1の変形例による共通電極32の平面構成を示す図である。本変形例では、y方向に隣接する2つの画素の間に、x方向の幅が画素にほぼ等しい穴Hが設けられる。これによれば、ビア導体35aをすべて残しつつ、3つの色のそれぞれに対して穴Hを均一に配置することが可能になる。したがって、補助電極35にフローティング導体となる部分が生ずることを回避しつつ、領域による色の異なり(色のムラ)を抑制することが可能になる。
【0052】
図14は、本実施の形態の第2の変形例による共通電極32の平面構成を示す図である。本変形例では、y方向に隣接する2つの画素の間の領域と、これら2つの画素の両側の領域とを利用して、H型の穴Hが形成される。このH型の穴Hは、x方向に見て1列おきに、y方向に並べて配置される。また、x方向に隣接する2つのH型の穴Hの列では、1画素分、穴Hの位置がずれている。以上のような構成とすることにより、本変形例によっても、補助電極35にフローティング導体となる部分が生ずることを回避しつつ、領域による色の異なり(色のムラ)を抑制することが可能になる。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0054】
例えば、上記各実施の形態では、有機ELディスプレイであるディスプレイパネル4を有するタッチセンサ2に本発明を適用した例を説明したが、本発明は、他の種類のディスプレイであるディスプレイパネル4を有するタッチセンサ2にも適用可能である。例えば、ディスプレイパネル4が液晶ディスプレイである場合を例に取って説明すると、この例では、複数の画素のそれぞれに、対応する画素電極と共通電極との間の電位差に応じて光の通過を制御する材料(具体的には、液晶層)が含まれる。そして、これら複数の画素それぞれの少なくとも一部が共通電極に覆われた状態を維持するように、穴Hが形成される。こうすることで、上記各実施の形態と同様、距離dを大きくすることができなくても、ディスプレイ駆動信号に起因してセンサコントローラ52による位置検出の精度が悪化することを防止できるようになる。また、発光層31から射出される光の透過率の均一性に影響を与えないように穴Hを設けることができ、かつ、共通電極32の一部が接地電位の供給されないフローティング導体になってしまうことも回避できる。
【0055】
また、上記各実施の形態では、オンセル型のタッチセンサ2に本発明を適用した例を説明したが、本発明は、アウトセル型のタッチセンサにも同様に適用可能である。
【0056】
また、上述した第2の実施の形態では、共通電極32の上側に補助電極35が形成される場合の例を説明したが、本発明は、画素電極30の下側に補助電極が形成される場合にも適用可能である。この場合における穴Hは、第2の実施の形態と同様、共通電極32と補助電極とを接続するビア導体を補助電極内にフローティング導体が生じない範囲で残しつつ、共通電極32を貫通するように形成することが好ましい。この場合には、補助電極をも貫通するように穴Hを形成することは必ずしも必要でないが、補助電極をも貫通するように穴Hを形成しても構わない。
【0057】
また、上記各実施の形態では、導体面積抑制部として穴Hを用いる例を説明したが、他の手段により共通電極32(及び補助電極)の面積を削減することとしてもよい。例えば、不純物のイオン注入によって共通電極32(及び補助電極)の一部を高抵抗化することにより、導体面積抑制部を形成することとしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 電子機器
2 タッチセンサ
2a タッチ面
3 ガラス基板
4 ディスプレイパネル
5 ガラス基板
6 タッチパネル
7 偏光板
8 空気ギャップ
9 ガラス基板
10~15 絶縁層
20,24 ゲート
21,25 チャネル
22,27 ソース
23,26 ドレイン
30 画素電極
31 発光層
32 共通電極
33 絶縁層
34 保護層
35 補助電極
35a ビア導体
50 ホストプロセッサ
51 メモリ
52 センサコントローラ
EL 有機発光ダイオード
GL ゲート線
GND 接地電位
H 穴
Ha ブリッジ
PX OLEDセル
SL ソース線
Td 駆動トランジスタ
Ts スイッチングトランジスタ
VL 電源線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
図11
図12
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図14