(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174097
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/32 20060101AFI20241206BHJP
H01Q 9/30 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
H01Q1/32 Z
H01Q9/30
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024169949
(22)【出願日】2024-09-30
(62)【分割の表示】P 2023016892の分割
【原出願日】2017-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】水野 浩年
(72)【発明者】
【氏名】横田 勇介
(57)【要約】
【課題】取付面から50mm以下の低背化が可能な車両用のアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ収容体にFM帯及びAM帯の信号を受信するアンテナエレメントを収容したアンテナ装置1を提供する。アンテナエレメントは、FM帯の信号を受信する第1エレメントと、第1エレメントの周囲でAM帯の信号を受信する第2エレメントとを備える。両エレメントはそれぞれ所定面積の容量板(導体板)を有し、これらが同一又は略同一の平面内に配設される。第1エレメントは、それぞれその一端が当該第1エレメントの容量板12に接続された複数のコイル14a,14bを含み、これらのコイルが容量板12と共にFM帯において直列共振回路として動作する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地導体との間で静電容量を生じさせる導体板と、
それぞれその一端が前記導体板に接続された複数のリアクタンス素子と、を備え、
前記導体板の少なくとも一部は、外周に向かうほど低く成るように配置されている、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記複数のリアクタンス素子は、第1のリアクタンス素子と第2のリアクタンス素子とを含み、
前記第1のリアクタンス素子の他端は給電点に電気的に接続され、前記第2のリアクタンス素子の他端は前記接地導体に電気的に接続される、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記導体板は、前記導体板と前記複数のリアクタンス素子を含むアンテナエレメントに前記静電容量を装荷する、
請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記導体板と前記第1のリアクタンス素子と前記第2のリアクタンス素子とで直列共振回路として動作する、
請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1のリアクタンス素子の前記他端から前記第2のリアクタンス素子の前記他端までの電気長が、前記導体板と前記複数のリアクタンス素子を含むアンテナエレメントの第1周波数帯における共振長である、
請求項2又は4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記複数のリアクタンス素子を保持する保持部と、
前記接地導体と前記給電点を有する基板と、を備え、
前記基板が前記保持部の下方に配置される、
請求項2、4、5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第1のリアクタンス素子と第2のリアクタンス素子は、互いに離間し、重なり合うことなく配置されている、
請求項2、4、5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車体に取付可能な低背型のアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車体に取付可能なFM帯及びAM帯用のアンテナ装置として、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されたアンテナ装置がある。特許文献1に開示されたアンテナ装置は、シャークフィン形状のアンテナケース内に、アンテナベースと2種類のヘリカル部で構成されたアンテナエレメントとを設ける。2種類のヘリカル部は、アンテナベースに近い側の第1ヘリカル部と、アンテナベースから遠い側の第2ヘリカル部とを有する。第1ヘリカル部は線路状パターンあるいは板状の導電性部材で構成される。他方、第2ヘリカル部は、第1ヘリカル部よりも単位長さ当たりの表面積が大きく、線状、べた状パターン、べた状パターンとワイヤ、板状の導電性部材を略コ字状に折り曲げたもの(横長な螺旋形状のエレメント)で構成される。
【0003】
また、特許文献2に開示されたアンテナ装置では、アンテナエレメントは、螺旋状のアンテナ素子と板状素子とで構成される。アンテナ素子はアンテナベースから車両用アンテナ装置の頂部方向に向かう仮想軸の周りに巻回される。板状素子は導電板であり、螺旋状のアンテナ素子の開放端側に、電気的に接続された状態で頂部上を覆い、仮想軸と垂直又は斜めに交差する位置関係となるように配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-161075号公報
【特許文献2】特開2013-106146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたアンテナ装置は、限られたスペース内でアンテナエレメント全体を効率良くアンテナとして機能させることを主眼とする。しかしながら、このようなアンテナ装置では、2種類のヘリカル部が一定間隔をおいて高さ方向に設けられる。特に、第2ヘリカル部を板状の導電性部材で構成する場合、その面部がアンテナベースに対して立設する、いわゆる縦置きの構造となる。そのため、低背化には限界があり、70[mm]程度の高さまでしか実現できない。
【0006】
特許文献2に開示されたアンテナ装置は、アンテナ素子の先端に取り付けられた板状素子の効果により、低背型でありながら広帯域にわたってほぼ一定のアンテナ利得を確保することができる。しかしながら、このアンテナ装置は、単一のアンテナ素子及び板状素子で構成されているため、アンテナの高利得化には限界がある。また、アンテナ高も50mm~70mm程度までしか低背化できないとされている。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑み、50[mm]以下の高さに低背化しても従来のアンテナ装置と同等のアンテナ利得その他のアンテナ性能を維持することができる構造のアンテナ装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアンテナ装置は、取付面から約15mm以下の高さのアンテナ収容体に、第1周波数帯及び前記第1周波数帯よりも低い周波数である第2周波数帯の信号を受信するアンテナエレメントを収容して成る。前記アンテナエレメントは、前記第1周波数帯の信号を受信する第1エレメントと、前記第1エレメントの周囲で前記第2周波数帯の信号を受信する第2エレメントとを備え、前記第1エレメントと前記第2エレメントはそれぞれ所定面積の導体板を有し、これらの導体板が同一又は略同一の平面内に配設されている。
前記第1エレメントは、それぞれその一端が当該第1エレメントの導体板に接続された複数のリアクタンス素子をさらに含み、これらのリアクタンス素子が当該導体板と共に前記第1周波数帯において直列共振回路として動作する。
【発明の効果】
【0009】
第1エレメントの導体板と第2エレメントの導体板とが、同一又は略同一の平面内に配設されているので、突出する部分がなく、アンテナエレメントの低背化が容易になる。また、第1エレメントの導体板に複数のリアクタンス素子が接続され、第1周波数帯において直列共振回路として動作するので、一つのリアクタンス素子を用いた場合よりもVSWRが良くなるため、放射効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係るアンテナ装置の外観斜視図。
【
図2】(a)はアンテナエレメントの上面図、(b)~(e)は側面図。
【
図3】第1実施形態に係るアンテナ装置の分解組立斜視図。
【
図4】第1実施形態における外側板と容量板との位置関係を示す上面図。
【
図5】(a)は容量板と各コイルとの位置関係を示した模式図、(b)は概略図。
【
図6】(a)はリファレンスアンテナが有するリファレンス板とリファレンスコイルの位置関係を示す模式図、(b)は概略図。
【
図7】第1実施形態におけるFM帯の放射効率特性図。
【
図8】(a)はFM帯指向特性図、(b)はAM帯指向特性図。
【
図9】(a)は第2実施形態に係るアンテナエレメントの上面図、(b)はその構造例を示す模式図。
【
図10】(a)は第3実施形態におけるFMアンテナの構造の模式図、(b)は比較例におけるFMアンテナの構造を模式的に示した図。
【
図11】第3実施形態におけるFM帯の放射効率特性図。
【
図12】(a),(b)は第4実施形態におけるFMエレメントの概略図。
【
図13】第4実施形態におけるFM帯の放射効率特性図。
【
図14】(a)は第5実施形態におけるアンテナエレメントの上面図、(b)はこのアンテナエレメントの模式図。
【
図15】(a)は第6実施形態におけるFMエレメントの模式図、(b)は概略図。
【
図16】第6実施形態におけるFM帯の放射効率特性図。
【
図17】(a)は第7実施形態におけるFMエレメントの模式図、(b)は概略図。
【
図18】第7実施形態におけるFM帯の放射効率特性図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
第1実施形態では、本発明をVHF帯、例えばFM帯(76[MHz]~90[MHz])及びMF帯、例えばAM帯(0.520[MHz]~1.710[MHz])において使用可能な低背型のアンテナ装置に適用した場合の例を説明する。このアンテナ装置は、アンテナ収容体の一例となるアンテナケースにアンテナエレメントを収容して構成され、例えば車両ルーフに取り付けて使用されるものである。
【0012】
図1は、第1実施形態に係るアンテナ装置1の外観斜視図である。また、
図2(a)はアンテナ装置1の上面図、(b)~(e)は側面図、
図3はアンテナ装置1の分解組立斜視図である。これらの図を参照すると、アンテナ装置1は、アンテナケースの高さが、接地電位となる車両の取付面から15mm~12mmである。アンテナケースは、電波透過性のカバー部10と樹脂ベース部30とを含んで構成される。カバー部10は開口面を有する有底筒状であり、その内壁(底部)が平面状又は略平面状に形成されている。
【0013】
アンテナケースに収容されるアンテナエレメントは、それぞれ所定面積の2つの導体板と、2つのリアクタンス素子とを含む。一方の導体板は主としてFM帯の受信に用いるものであり、対向する面が接地電位の面、すなわち車両の取付面と対向する。これにより取付面との間で生じる静電容量を自己に装荷する(容量装荷)。そのため、以後、この導体板を「容量板」と称する。他方の導体板はAM帯の受信に用いるものであり、容量板の外側に配置される。そのため、以後、外側の導体板を「外側板」と称する。容量板12は14850[mm
2](=110[mm]×135[mm])の面積を有する矩形状の導体板である。外側板11は5700[mm
2](=(15[mm]×150[mm])+(10[mm]×120[mm])+(15[mm]×150[mm]))を有するコの字状(方形の一辺がない形状)の導体板である。外側板11と容量板12は、カバー部10の内壁に固定される。つまり、アンテナエレメントのうち外側板11と容量板12は同一又は略同一の平面内に配設される。なお、
図3の例では外側板11と容量板12にはそれぞれ複数の孔が形成されているが、これらはネジ孔や位置決め用のガイド孔であり、電気的特性にはほとんど影響しないものである。
【0014】
2つのリアクタンス素子は、本実施形態の例ではいずれもヘリカル状に巻回された線状導体である。第1実施形態では、リアクタンス素子として、それぞれ容量板12を挟んでカバー部10の内壁に固定される樹脂製のホルダ13a,13bに保持された線状導体を用いる。つまり、リアクタンス素子の例としては、誘電体に線状導体を巻回して小型化を図る場合もあるが、第1実施形態では、線状導体だけでリアクタンス素子を構成する場合の例を示す。そのため、説明の便宜上、2つのリアクタンス素子をそれぞれ「コイル」と称する。
【0015】
第1コイル14aは、第1ホルダ13aの表面に巻回されて保持される。第2コイル14bは、第2ホルダ13bの表面に巻回されて保持される。第1コイル14aは、その一端が容量板12の第1端部に接続され、他端が給電点に接続される。第2コイル14bは、その一端が上記の第1端部と異なる当該容量板12の第2端部に接続され、他端が接地導体に接続される。これらの接続形態については、後で詳しく説明する。
【0016】
外側板11は、さまざまな周波数の電波を受信することができる。第1実施形態では、この外側板11をAM帯の信号(AM信号)の受信に用いる。つまり、外側板11は、それ自体でAMエレメントを構成する。この外側板11で受信したAM信号は、その端部の給電部111を通じて後述するプリント基板(Printed Circuit Board)16に導かれる。これに対して、容量板12は、第1コイル14a及び第2コイル14bと接続されることによりFM帯の信号(FM信号)の受信が可能となる。つまり、容量板12と2つのコイル14a,14bとでFM帯で共振するFMエレメントを構成する。受信したFM帯の信号は、第1コイル14aが接続された給電点を通じてプリント基板16に導かれる。
【0017】
プリント基板16は、第1ホルダ13a,13bの下部に配置される。プリント基板16には、電子回路が実装される。電子回路は、例えば外側板11で受信したAM信号を入力する第1入力端子、第1コイル14aの給電点と導通する第2入力端子を含む。また、第1入力端子から入力されたAM信号を増幅するAM増幅回路、第2入力端子から入力されたFM信号を増幅するFM増幅回路を含む。さらに、AM増幅回路で増幅されたAM信号及びFM増幅回路で増幅されたFM信号を出力する出力端子を含む。出力端子の前段に、AM信号及びFM信号を合成する合成回路が設けられる場合もある。なお、AM増幅回路の前段にフィルタや同調回路などを設けても良い。
プリント基板16には、各増幅回路などの接地端子と導通するGNDパターンも形成されている。GNDパターンには、金属製の一対のGNDターミナル15a,15bが固定されている。GNDターミナル15a,15bは、金属製の導電ベース19と導通させる部品である。プリント基板16の裏面には第1出力端子及び第2出力端子と電気的に接続された信号ケーブルを保持するケーブルホルダ17が固定されている。
【0018】
樹脂ベース部30には、その外周よりもやや内側から上方に突出する枠301と、この枠301で囲まれた底部302とが一体に形成されている。枠301は、カバー部10の開口面とほぼ同じサイズに形成される。枠301は外側面を有しており、その外側面には全周にわたって溝が形成されている。この溝には弾性部材で形成されるOリング20が嵌着される。溝の深さはOリング20の外径よりも浅い。そのためOリング20は、樹脂ベース部30にカバー部10が被嵌されるときに、底部302内の空間を水密に封止させる。
【0019】
樹脂ベース部30の底部302には、プリント基板16を収容して固定するための窪み303と、プリロック18及び導電ベース19を下方に突出させるための孔部304とが形成されている。プリロック18は、アンテナ装置1を車両ルーフなどに取り付ける際に、仮止め固定するための部品である。底部302には、プリロック18及び導電ベース19をネジ止め固定するための固定台305が固着されている。導電ベース19はアンテナ装置1を車両ルーフなどに強固に固定するとともに、取付時に、GNDターミナル15a,15bを通じて、プリント基板16のGNDパターンを接地電位にするものである。
【0020】
外側板11と容量板12との位置関係を
図4に示す。
図3に示された複数の孔については省略してある。
図4を参照すると、外側板11は、容量板12の外周のほぼ3/4の部分を囲み、かつ、それぞれ対向端部が重ならないように所定の間隙で配置される。上述したように、これらは同一又は略同一の平面内に配設されているため、突出する部分がなく、カバー部10の外観をシンプルにするとともにアンテナ装置1の低背化に寄与することができる。外側板11と容量板12との対向端部同士が離間し、重ならないため、干渉も生じない。
【0021】
第1実施形態のアンテナ装置1は、アンテナエレメント、特にFMエレメントの構成に特徴の一つがあるので、以下、これらについて詳しく説明する。
図5(a)はアンテナ装置1が有する容量板12と第1コイル14a及び第2コイル14bとの位置関係を示した模式図であり、同(b)はその概略図である。プリント基板16は、容量板12と相似形で、ややサイズが大きいが、サイズの差は、さほど問題ではない。
図5(b)に示される接地導体GNDは、
図3に示したGNDターミナル15a,15b及び導電ベース19と導通する車両ルーフの一部である。第1ホルダ13a、第2ホルダ13b、その他の部品については、便宜上省略してある。
【0022】
容量板12のサイズについては上述した通りであり、接地導体GNDからの高さは約10[mm]である。第1コイル14a及び第2コイル14bは、それぞれ、その長径及び短径が容量板12の略1/2の大きさ(105[mm]×70[mm])で、所定の巻回ピッチで巻かれたものであり、インダクタンス値は、同じである。互いに5[mm]程度離間し、重なり合うことなく配置されている。
なお、第1コイル14a及び第2コイル14bの長径及び短径あるいはそれらの形状・サイズは,上記例に限定されず、設置スペースなどに応じて任意に変更しても良い。第1コイル14aと第2コイル14bとの離間距離も同様である。
【0023】
第1コイル14aの一端141aは容量板12の第1端部に接続され、他端142aはプリント基板16の配線パターンを介して給電点50に接続される。また、第2コイル14bの一端141bは上記の第1端部とは異なる容量板12の第2端部(第1端部の対向端部)に接続され、他端142bはプリント基板16のGNDパターンを介して接地導体GNDに接続される。これにより第1コイル14a及び第2コイル14bが容量板12と共にFM帯において直列共振回路として動作する。つまり、第1コイル14aの他端142aから容量板12を経て第2コイル14bの他端142bまでの電気長がFM帯における共振長(FM帯で使用する周波数の波長λの1/2の電気長、以下同じ)となる。給電点50からは、FM信号の取り出しが可能となる。
【0024】
本発明者らは、電気的特性の比較のため、リファレンスアンテナを作成した。リファレンスアンテナは、アンテナ装置1が有する容量板12と同じ材質で同じ面積のリファレンス板と、第1コイル14a,14bと同じ線材、同じ線径、かつ、それぞれの外径の和で画定される面積が同じになる外径の一つのリファレンスコイルとを有する。
図6(a)は、リファレンスアンテナ1Rが有するリファレンス板(容量板12に対応する導体板)61Rとリファレンスコイル(リアクタンス素子)64Rの位置関係を示す模式図、同(b)は概略図である。
図6(a)では、便宜上、リファレンス板61Rは透過表示にしてある。リファレンスコイル64Rは、その一端641Rがリファレンス板61Rの端部に接続され、他端642Rが給電点50と接続されている。なお、プリント基板66Rの材質及びサイズ比、リファレンスコイル64Rと給電点50との接続状態、接地導体GNDとリファレンスコイル64Rの基端及び先端との距離、及び、リファレンスコイル64Rの先端とリファレンス板61Rの下面との距離は、それぞれアンテナ装置1と同じである。
【0025】
このリファレンスアンテナ1Rにおいて、リファレンスコイル64Rに流れる電流をI1、アンテナインピーダンスをZ1、放射電力(受信電力と同義、以下同じ)をP1とすると、P1は、Z1×I1
2で表すことができる。アンテナインピーダンスは、例えばスミスチャートを用いたときの実軸上のインピーダンス値であり、給電のインピーダンス(本実施形態においては、50[Ω])に近いほど放射効率(受信効率と同義、以下同じ)が高まり、電力が大きくなる。本発明者らのシミュレーション実験によれば、リファレンスアンテナ1Rのアンテナインピーダンスは0.06Ωであった。
これに対し、第1実施形態のアンテナ装置1が有するFMアンテナでは、放射電力P2をリファレンスアンテナ1Rの放射電力P1と同じとし、第1コイル14a及び第2コイル14bに流れる電流をI2とすると、各電流I2は電流I1の1/2となる。そのため、アンテナインピーダンスZ2はZ1の4倍となった。つまり、コイルが1つのリファレンスアンテナ1Rに対して、コイルの数の2乗倍に比例して増加する。本発明者らは、第1実施形態のFMアンテナのアンテナインピーダンスがリファレンスアンテナ1Rのアンテナインピーダンスの4倍となる0.23Ωに増加することを確認した。
【0026】
図7はFM帯における放射効率特性図である。図中、実線は第1実施形態によるアンテナ装置1のFM帯での放射効率、破線はリファレンスアンテナ1Rの放射効率である。放射効率は、太線で示される日本のFM帯において、リファレンスアンテナ1Rでは平均で-25.2[dB]であったのに対し、第1実施形態によるFMアンテナでは、平均で-19.6[dB]であった。このように、容量板12に接続されるコイルの数を増やし、アンテナインピーダンスを増加させることで、FM帯での受信利得と放射効率が格段に向上した。なお、図示を省略したが、AM帯の平均の放射効率は-70.0[dB]であった。
【0027】
図8(a)は、第1実施形態のアンテナ装置1におけるFM帯垂直偏波水平面内の指向特性図、同(b)はAM帯垂直偏波水平面内の指向特性図である。これらの特性図から明らかな通り、第1実施形態のアンテナ装置1は、FM帯垂直偏波水平面内において無指向性であり、かつ、AM帯垂直偏波水平面内においても無指向性である。
【0028】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態のアンテナ装置1が有する外側板11と容量板12を、これらの材質及び厚みを変えず、形状及びレイアウトだけを変形させたものである。第1コイル14a,14bを含む他の部品の構造については、第1実施形態と同様となるため同一名称及び同一符号を付し、重複部分については説明を省略する。
図9(a)は、第2実施形態に係るアンテナ装置2が有するアンテナエレメントの上面図、同(b)はこのアンテナエレメントの構造を示す模式図である。
図9(b)において容量板は透過表示にしてある。第2実施形態のアンテナ装置2は、矩形状の容量板22と、容量板22の全周を同一平面又は略同一平面上で囲う矩形環状の外側板21とを備える。外側板21と容量板22は、各対向端部が重ならないように、5mm程度空けて配置した。容量板22の面積は14400[mm
2](=120[mm]×120[mm])である。また、外側板21の面積は5600[mm
2](=(10[mm]×150[mm])+(10[mm]×130[mm])+(10[mm]×150[mm])+(10[mm]×130[mm]))である。接地導体GNDと外側板21及び容量板22との距離は第1実施形態のアンテナ装置1と同じである。なお、樹脂ベース部230は、外側板21よりもわずかに大きいサイズである。
【0029】
外側板21で受信したAM信号は、その端部の給電部211を通じて、樹脂ベース230上のプリント基板26の電子回路へ導かれる。つまり、外側板21は、第1実施形態と同様、AMエレメントとして動作する。
第1コイル14aの一端141aは容量板22の第1端部に接続され、他端142aはプリント基板26の配線パターンを介して給電点50に接続される。また、第2コイル14bの一端141bは上記第1の端部とは異なる容量板22の第2端部(第1端部の対向端部)に接続され、他端142bはプリント基板26のGNDパターンを介して接地導体GNDに接続される。これにより、第1実施形態と同様、第1コイル14a及び第2コイル14bが容量板22と共にFM帯において直列共振回路として動作する。給電点50からは、FM信号が取り出し可能となる。
【0030】
本発明者らの実測によれば、日本のFM帯での平均の放射効率や垂直偏波水平面内の指向性は第1実施形態のアンテナ装置1とほぼ同じであった。アンテナインピーダンスも第1実施形態とほとんど変わらなかった。つまり、FM帯の放射効率等は第1実施形態のアンテナ装置1とほとんど同じになった。AM帯においても垂直偏波水平面内の指向性は第1実施形態のアンテナ装置1と変わらず、放射効率も第1実施形態のアンテナ装置1と同等であった。
【0031】
このように、第2実施形態のアンテナ装置2では、矩形状の容量板22の全周を同一平面又は略同一平面上で矩形環状の外側板21で囲う構成としているが、AM帯の放射効率は第1実施形態のアンテナ装置1と同等の放射効率を実現することができる。また、外側板11の形状及びサイズ(面積)さえ決まれば、容量板22を打ち抜きなどで単純に成型することができるので、製造過程が簡略化される効果がある。
【0032】
なお、外側板21の面積を変えずにその外縁の一部又は全部を外周に向かうほど低く成るように成型しても良い。この場合、外側板21の高さの一部が低くなるため、AM帯での放射効率が僅かに低くなるが、実用上はさほど問題にならない。このような構成は、例えば第1実施形態のアンテナ装置1が有するカバー部10をより小型化することができる利点がある。
【0033】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態のアンテナ装置3は、所定面積の導体板と2つのリアクタンス素子とを含むFMエレメントにおいて、隣り合う第1コイル34aと第2コイル34bの巻回方向を逆にしたものである。外側板11、容量板12、その他の部品の構造については第1実施形態と同様となるため同一名称及び同一符号を付し、重複部分については説明を省略する。
【0034】
図10(a)は第3実施形態のアンテナ装置3におけるFMアンテナの構造を模式的に示した図であり、同(b)は比較例のアンテナ装置9におけるFMアンテナの構造を模式的に示した図である。便宜上、容量板12は透過表示にしてある。
第3実施形態のアンテナ装置3では、第2コイル34bを比較例のアンテナ装置9が有する第2コイル94bと逆方向に巻回した。線状導体の材質、長さ(巻回ピッチ)、外径は、第1コイル34aと同じである。第1コイル34aの一端341aは容量板12の第1端部に接続され、他端342aはプリント基板36の配線パターンを介して図示しない給電点に接続される。第2コイル34bの一端341bは上記の第1端部とは異なる容量板12の第2端部(第1端部の対向端部)に接続され、他端342bはプリント基板36のGNDパターンを介して接地導体GNDに接続される。このような構成にすると、第1コイル34aに流れる電流iaと第2コイル34bに流れる電流ibとが隣り合う部分で同じ方向となる。これに対し、比較例のアンテナ装置9では、第1コイル94aに流れる電流i1と第2コイル94bに流れる電流i2とが隣り合う部分で逆方向となり、相殺される。
【0035】
図11は、FM帯における放射効率特性図である。実線は第3実施形態のアンテナ装置3、破線は比較例のアンテナ装置9のものである。この特性図から明らかなように、比較例のアンテナ装置9の場合、第1コイル94aと第2コイル94bとが同一方向に巻回されていることにより、電流i1と第2電流i2とが相殺されている。そのため、インダクタンス値が低下し、第3実施形態のアンテナ装置3と比較して、周波数特性が高域側へと移動していることがわかる。一方、第3実施形態のアンテナ装置3の場合、隣り合うコイルに流れる電流が打ち消されない分、インダクタンス値の低下を抑制することができる。これは、所望周波数で共振させる際のコイル長が短くなり、その結果、比較例のアンテナ装置9と比較して、導体損が小さくなり、放射効率が高まることを意味する。
【0036】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態について説明する。第1実施形態では、2つのコイルの巻回ピッチ(コイル長)がそれぞれ同一(5:5)であることを前提として説明した。第1コイル14aの他端142aから容量板12を経て第2コイル14bの他端142bまでの電気長がFM帯の共振長(使用周波数の波長λの1/2)であれば、2つのコイル14a,14bの巻回ピッチは必ずしも同一でなくとも良い。第4実施形態では、第1実施形態のアンテナ装置1において巻回ピッチが他のコイルの巻回ピッチと異なる場合の例について説明する。外側板11、容量板12、その他の部品の構造については第1実施形態と同様となるため同一名称及び同一符号を付し、重複部分については説明を省略する。
【0037】
図12は第4実施形態のアンテナ装置4のうちFMエレメントの概略図である。
図12(a)は第1コイル44aと第2コイル44bの巻回ピッチを6:4としたアンテナ装置4、同(b)は第1コイル54aと第2コイル54bの巻回ピッチを4:6としたアンテナ装置5である。
図13は、FM帯における放射効率特性図である。実線はアンテナ装置4、長破線は巻回ピッチが5:5である第1実施形態のアンテナ装置1、短破線はアンテナ装置5の特性である。太線で示される日本のFM帯における平均の放射効率は、アンテナ装置4が-19.1[dB]、アンテナ装置1が-19.6[dB]、アンテナ装置5が-20.2[dB]である。つまり、給電点50に近いコイル(本実施形態においては、第1コイル)のインダクタンス量が多くなるように設定する(具体的には、例えば、巻回数を多くする)。これにより、FM帯での平均の放射効率を高めることができる。
【0038】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態について説明する。第2実施形態では、矩形状の容量板22と、容量板22の全周を同一平面又は略同一平面上で囲う矩形環状の外側板21を有するアンテナ装置2の例を説明したが、外側板21及び容量板22とそれぞれ同じ面積であれば、これらの導体板の形状は任意である。第5実施形態では、容量板を円板状とし、その全周に沿って配置される外側板を円環状とした場合の例を説明する。その他の部品の構造については第1実施形態と同様となるため同一名称及び同一符号を付し、重複部分については説明を省略する。
【0039】
図14(a)は第5実施形態に係るアンテナ装置6のアンテナエレメントの上面図、同(b)はこのアンテナエレメントの構造を模式的に示す図である。
このアンテナ装置6は、円板状の容量板62と、その外周に沿って配置された円環状の外側板61とを有する。容量板62とその周囲の外側板61は、重ならないように5mm程度空けて配置されている。容量板62の面積は14527[mm
2](=外径68[mm])である。外側板61の面積は5426[mm
2](=外径84[mm]、幅11[mm])である。
図14(b)では、容量板62と外側板61は透過表示されている。第1コイル64aと第2コイル64bは、それぞれ外径が半円形であり、その外径により画定される面積の総和が容量板62とほぼ同じである。
【0040】
第1実施形態で説明したプリント基板16と同等のプリント基板66は、外側板61と略同じ形状及びサイズに成型されているが、その形状及びサイズは任意である。また、その下部の樹脂ベース部630は、アンテナエレメント及びプリント基板66を収容するため、それらよりも大きいサイズに成型されている。なお、図示を省略したが、第1実施形態のカバー部10に相当する部品もまた、有底円筒状となる。
【0041】
外側板61で受信したAM信号は、その端部の給電部611を通じてプリント基板66の電子回路へ導かれる。第1コイル64aの一端641aは容量板62の第1端部に接続され、他端642aはプリント基板66の配線パターンを介して図示しない給電点に接続される。また、第2コイル64bの一端641bは上記第1端部とは異なる容量板62の第2端部(第1端部の対向端部)に接続され、他端642bはプリント基板66のGNDパターンを介して接地導体GNDに接続される。これにより、第1実施形態と同様、第1コイル64a及び第2コイル64bが容量板62と共にFM帯において直列共振回路として動作する。給電点からはFM信号が出力される。なお、接地導体GNDと外側板61及び容量板62との距離は第1実施形態のアンテナ装置1と同じである。
【0042】
このような構造のアンテナ装置6のFM帯での平均の放射効率は-19.5[dB]であり、第1実施形態のアンテナ装置1と同等の放射効率を実現することができる。AM帯内の平均の放射効率は-70.0[dB]であり、第1実施形態のアンテナ装置1と同等の放射効率を実現することができる。指向性は、AM帯及びFM帯とも、垂直偏波水平面内において無指向性である。
【0043】
第5実施形態のアンテナ装置6において、第1コイル64aと第2コイル64bの巻回方向を互いに逆方向にしても良く、また、巻回ピッチの比率を変える構成であっても良い。また、容量板62は、略円板状、略楕円状であっても良い。この場合、外側板61、第1コイル64a,第2コイル64bもまた、容量板62の形状に合わせた形状となる。
【0044】
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態について説明する。第6実施形態は第1実施形態の変形例であり、部品の構造については第1実施形態とほぼ同様となるため同一名称及び同一符号を付し、重複部分については説明を省略する。
図15(a)は、第6実施形態のアンテナ装置7のFMエレメントの構造を模式的に示す図、同(b)は概略図である。第6実施形態のアンテナ装置7のFMエレメントは、それぞれFM帯で共振する第1FMエレメントと第2FMエレメントとを含んで構成される。
第1FMエレメントは、接地導体GNDとの間で静電容量を生じさせ、該静電容量を当該第1FMエレメントに装荷するように配置された第1容量板721と、それぞれその一端が第1容量板721に接続された第1コイル74a及び第2コイル74bとを有する。
第2FMエレメントは、接地導体GNDとの間で静電容量を生じさせ、該静電容量を当該第2FMエレメントに装荷するように配置された第2容量板722と、それぞれその一端が第2容量板722に接続された第3コイル74c及び第4コイル74dとを有する。
図15(a)の例では、説明の便宜上、第1容量板721と第2容量板722は透過表示にしてあるが、ともに7350[mm
2](=105[mm]×70[mm])であり、2つで第1実施形態のアンテナ装置1が有する容量板12と略同じ面積となる。接地導体GNDからの高さは、約10[mm]である。
【0045】
第1FMエレメントにおいて、第1コイル74aの一端741aは第1容量板721の第1端部に接続され、他端742aはプリント基板76の配線パターンを介して給電点50に接続される。第2コイル74bは、その一端741bが上記の第1端部とは異なる第1容量板721の第2端部(第1容量板721の第1端部の対向端部)に接続され、他端742bはプリント基板76のGNDパターンを介して接地導体GNDに接続される。
また、第2FMエレメントにおいて、第3コイル74cは、その一端741cは第2容量板722の第1端部に接続され、他端742cはプリント基板76のGNDパターンを介して接地導体GNDに接続される。第4コイル74dは、その一端741dが上記の第1端部とは異なる第2容量板722の第2端部(第2容量板722の第1端部の対向端部)に接続され、他端742dはプリント基板76のGNDパターンを介して接地導体GNDに接続される。
各コイル74a~74dは、それぞれその外径により画定される面積が容量板721,722の略1/2(長辺105[mm]×短辺30[mm])の面積であり、所定の巻回ピッチにヘリカル状に巻回される。また、各コイル74a~74dは、互いに5~10[mm]程度空けて、重なり合うことなく配置される。
【0046】
第1FMエレメントと第2FMエレメントは、接地導体GNDを介して直列共振回路として動作する。つまり、第1FMエレメントと第2FMエレメントは、それぞれ所望の周波数(例えば84[MHz])において共振するが、第1FMエレメント及び第2FMエレメントの全体が、直列共振回路として当該周波数で共振するように設計されている。
第6実施形態におけるコイルの数は、第1実施形態におけるコイルの数の2倍である。すなわち、第1コイル74a、第2コイル74b、第3コイル74c及び第4コイル74dに流れる各々の電流は、第1実施形態における第1コイル14a及び第2コイル14bに流れる各々の電流の1/2と同等である。そのため、第1実施形態のアンテナ装置1のアンテナインピーダンスが0.23Ωであった場合と比較して、第6実施形態のアンテナ装置7では、アンテナインピーダンスは、0.86Ωとなり、さらにその4倍近く増加した。
【0047】
図16は、FM帯における放射効率特性図であり、実線は第6実施形態のアンテナ装置7、破線は第1実施形態のアンテナ装置1のものである。
図16から明らかなように、アンテナ装置7の放射効率特性は、アンテナ装置1よりも急峻であり、帯域幅が狭いが、所望の周波数(84MHz)では放射効率がアンテナ装置1よりも大きくなる。太線で示されるFM帯においても、平均の放射効率は-18.1[dB]であり、アンテナ装置1よりも向上する。指向性も、アンテナ装置1と同様、FM帯において、垂直偏波水平面内で無指向性であった。
【0048】
なお、第6実施形態では、第1容量板721、第2容量板722のそれぞれに2つのコイルを接続した場合の例であるが、1つの容量板の少なくとも一方に3つのコイルを接続しても良い。この場合、真ん中のコイルについては、それ以外のコイルと逆方向に巻回することが望ましい。また、複数のコイルの巻回ピッチの比率を変えるようにしても良い。
【0049】
[第7実施形態]
本発明の第7実施形態について説明する。第7実施形態は、第1実施形態の変形例であり、部品の構造については第1実施形態とほぼ同様となるため同一名称及び同一符号を付し、重複部分については説明を省略する。
図17(a)は、第7実施形態のアンテナ装置8のFMエレメントの構造を模式的に示す図であり、(b)は概略図である。
第7実施形態のアンテナ装置8のFMエレメントは、1つの容量板12に3つのコイル84a、84b、84cを同一平面又は略同一平面上で同一方向に並べて配置し、かつ、真ん中の第2コイル84bの巻回方向を他のコイル84a、84cと逆にしたものである。便宜上、容量板12は透過表示にしてある。各コイル84a、84b、84cの外径で画定される面積の総和は、容量板12の面積(15750[mm
2](=105[mm]×150[mm])と略同じである。つまり、各コイル84a、84b、84cは容量板12の略1/3(=105[mm]×40[mm])の大きさであり、互いに重なり合うことなく配置される。接地導体GNDから容量板12までの高さは第1実施形態と同じである。プリント基板86は容量板12よりもやや大きい矩形状である。
【0050】
第1コイル84aは、その一端841aが容量板12に接続され、他端842aがプリント基板86の配線パターンを介して給電点50に接続される。第2コイル84b及び第3コイル84cは、それぞれその一端841b,841cが容量板12に接続され、他端842b,842cがプリント基板86のGNDパターンを介して接地導体GNDに接続される。第2コイル84bの一端841bは、容量板12の略中央部に電気的に接続される。第1コイル84aの他端842aから第3コイル84cの他端842cまでの電気長は、FM帯における共振長となり、第1実施形態のアンテナ装置1と同様、FM帯において直列共振回路として動作する。
【0051】
また、このアンテナ装置8のアンテナインピーダンスは0.86Ωであり、第1実施形態のアンテナ装置1と比較して、アンテナインピーダンスが増加した。
図18は、FM帯における放射効率特性図である。実線はアンテナ装置8、破線は第1実施形態のアンテナ装置1のものである。
図18から明らかなように、アンテナ装置8の放射効率は所望の周波数(84MHz)に近づくほど急峻となり、その周波数では第1実施形態のアンテナ装置1よりも高くなる。また、放射効率の平均利得も向上している。太線で示される日本のFM帯の平均でも-18.0[dB]であり、アンテナ装置1よりも向上している。従って、1つの容量板12に接続されるコイルの数を増やした場合、FM帯における所望の周波数についてはその放射効率を格段に高めることが可能となる。
【0052】
[変形例]
第1ないし第7実施形態では、接地導体GNDから容量板12等の高さを約10mmとしたが、容量板12の面積(複数の場合はその総和)が略同じである場合、接地導体GNDから容量板の高さは少しでも高い方が放射効率が高まる。例えば、第1実施形態のアンテナ装置1において、接地導体GNDから容量板12の裏面までの高さを14.9mm(カバー部10の外壁までは約15mm以下)としても良い。この場合、FM帯における平均の放射効率は-16.6[dB]、AM帯の平均の放射効率は-67.5[dB]であり、10mmの場合(FM帯で平均-19.6[dB]、AM帯で平均69.9[dB])よりもさらに高くすることができる。
【0053】
また、第1実施形態では、容量板12の外周に沿ってその三方を外側板11で囲い、第2実施形態では容量板22の外周の全てを外側板21で囲った場合の例を示したが、容量板の一辺と同じ辺の長さで当該容量板の一辺と所定間隔をおいて外側板を配置する構成であっても良い。この場合、外側板の面積(高さ)を第1実施形態のアンテナ装置1などが有する外側板1等と同程度の面積(高さ)にすれば、形状が異なっていてもさほど放射効率は変わらない。つまり、外側板の配置を、カバー部10の形状に合わせて任意に変えることができ、設計のフレキシビリティを高めることができる。
【0054】
また、上記各実施形態では、VHF帯としてFM帯の例を挙げて説明したが、セルラー帯(800[MHz]~900[MHz])においてもサイズが異なるだけで、同様に適用が可能である。
【0055】
第1実施形態では、アンテナ収容体が、カバー部10と樹脂ベース部30とを含むアンテナケースである場合の例を説明したが、独立して存在するアンテナケースではなく、車体の任意の部位に形成された収容空間をアンテナ収容体としても良い。