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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174104
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】水素貯蔵装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/08 20060101AFI20241206BHJP
   B60L 58/30 20190101ALI20241206BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20241206BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20241206BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20241206BHJP
   H01M 8/04694 20160101ALN20241206BHJP
【FI】
F17C13/08 301A
B60L58/30
H01M8/00 Z
H01M8/04 J
H01M8/04313
H01M8/04694
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024170702
(22)【出願日】2024-09-30
(62)【分割の表示】P 2021166366の分割
【原出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】中村 匡
(57)【要約】
【課題】簡便な方法で水素貯蔵タンクを交換可能することが可能である。
【解決手段】車両が、燃料電池(40)に水素を供給するための交換可能な複数個の水素貯蔵タンク(20)を保持する水素貯蔵タンク保持装置(8,9)を具備する。水素貯蔵タンク保持装置(8,9)により保持されている水素貯蔵タンク(20)の中から第1の一対の水素貯蔵タンク(20)が選択され、第1の一対の水素貯蔵タンク(20)の双方から燃料電池(40)に水素が供給される。第1の一対の水素貯蔵タンク(20)のうちの少なくとも一方の水素貯蔵タンク(20)の推定残留水素量が設定された水素量よりも低下したときには、水素貯蔵タンク保持装置(8,9)により保持されている水素貯蔵タンク(20)であって第1の一対の水素貯蔵タンク(20)以外の水素貯蔵タンク(20)の中から第2の一対の水素貯蔵タンク(20)が選択され、第2の一対の水素貯蔵タンク(20)から燃料電池(40)に水素が供給される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池により駆動される車両の水素貯蔵装置において、
該燃料電池に水素を供給するための交換可能な複数個の水素貯蔵タンクを保持する水素貯蔵タンク保持装置と、
該水素貯蔵タンク保持装置により保持されている水素貯蔵タンクから燃料電池への水素の供給を制御する水素供給制御装置とを具備しており、
該水素供給制御装置が、水素貯蔵タンク内の残留水素量を推定する残留水素量推定部を有しており、該水素供給制御装置が、該水素貯蔵タンク保持装置により保持されている水素貯蔵タンクの中から第1の一対の水素貯蔵タンクを選択して、該第1の一対の水素貯蔵タンクの双方から燃料電池に水素を供給させ、該第1の一対の水素貯蔵タンクのうちの少なくとも一方の水素貯蔵タンクの推定残留水素量が設定された水素量よりも低下したときには、該水素貯蔵タンク保持装置により保持されている水素貯蔵タンクであって該第1の一対の水素貯蔵タンク以外の水素貯蔵タンクの中から第2の一対の水素貯蔵タンクを選択して、該第2の一対の水素貯蔵タンクから燃料電池に水素を供給させると共に該第1の一対の水素貯蔵タンクから燃料電池への水素の供給を停止させる水素貯蔵装置。
【請求項2】
水素供給制御装置は、該第1の一対の水素貯蔵タンクのうちの少なくとも一方の水素貯蔵タンクの推定残留水素量が設定された水素量よりも低下したときに、該第1の一対の水素貯蔵タンクを交換すべき表示を行う表示部を有する請求項1に記載の水素貯蔵装置。
【請求項3】
水素貯蔵タンクに水素貯蔵タンク内の貯蔵水素の状態を検出するためのセンサが配置されており、該残留水素量推定部は、該センサの検出信号に基づいて水素貯蔵タンク内の残留水素量を推定する請求項1に記載の水素貯蔵装置。
【請求項4】
水素貯蔵タンクの水素流出部に水素貯蔵タンクからの水素の流出を制御する常時閉鎖型流出制御弁が配置されており、燃料電池への水素流入部に該流出制御弁の開弁制御を行う開弁制御装置が配置されている請求項1に記載の水素貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池により駆動される車両において、水素貯蔵タンクが車両後部のトランクルーム内に着脱可能な水素貯蔵体用ケースにより保持されており、水素貯蔵体用ケースをトランクルーム内に設置したときに、水素貯蔵タンクがクイックコネクタを介して燃料電池に連結される水素貯蔵装置が公知である(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-270707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この水素貯蔵装置では、一個又は複数個の水素貯蔵タンクが燃料電池に連結されているが、水素貯蔵タンクから燃料電池への水素の供給制御に関しては、明確な言及がない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、燃料電池により駆動される車両の水素貯蔵装置において、
燃料電池に水素を供給するための交換可能な複数個の水素貯蔵タンクを保持する水素貯蔵タンク保持装置と、
水素貯蔵タンク保持装置により保持されている水素貯蔵タンクから燃料電池への水素の供給を制御する水素供給制御装置とを具備しており、
水素供給制御装置が、水素貯蔵タンク内の残留水素量を推定する残留水素量推定部を有しており、水素供給制御装置が、水素貯蔵タンク保持装置により保持されている水素貯蔵タンクの中から第1の一対の水素貯蔵タンクを選択して、第1の一対の水素貯蔵タンクの双方から燃料電池に水素を供給させ、第1の一対の水素貯蔵タンクのうちの少なくとも一方の水素貯蔵タンクの推定残留水素量が設定された水素量よりも低下したときには、水素貯蔵タンク保持装置により保持されている水素貯蔵タンクであって第1の一対の水素貯蔵タンク以外の水素貯蔵タンクの中から第2の一対の水素貯蔵タンクを選択して、第2の一対の水素貯蔵タンクから燃料電池に水素を供給させると共に第1の一対の水素貯蔵タンクから燃料電池への水素の供給を停止させる水素貯蔵装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
このように、常に、一対の水素貯蔵タンクから燃料電池に水素を供給させるように構成することによって、何らかの理由により、一方の水素貯蔵タンクから燃料電池への水素の供給が行われなかった場合でも、他方の水素貯蔵タンクから燃料電池への水素の供給が行われ、それにより、水素貯蔵タンクから燃料電池への水素の供給が中断されるのを阻止し得る可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1Aおよび図1Bは夫々、図解的に表した燃料電池により駆動される車両の側面図および平面図である。
図2図2Aは、図解的に表した水素貯蔵タンクの側面断面図、図2Bは、図2Aの側面図、図2Cは、図解的に表した水素貯蔵タンク挿入部の側面断面図、図2Dは、水素貯蔵タンクが水素貯蔵タンク挿入部に挿入されたときを示す図である。
図3図3は、水素供給制御装置を示す図である。
図4図4は、電子制御装置を示す図である。
図5図5は、開弁制御を行うためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
燃料電池により駆動される車両を図解的に表している図1Aおよび図1Bを参照すると、1は車体、2は前輪、3は後輪、4は、開閉可能な前部ボンネット5により覆われた車両内の前方部屋、6は、開閉可能な後部ボンネット7により覆われた車両内の後方部屋、8は、複数個の水素貯蔵タンク挿入部10を有する水素貯蔵タンク保持装置、9は、複数個の水素貯蔵タンク挿入部10を有する水素貯蔵タンク保持装置を夫々示す。水素供給制御装置8は、前方部屋4内において車体1により支持されており、水素供給制御装置9は、後方部屋6内において車体1により支持されている。
【0009】
図1Aおよび図1Bに示される例では、水素貯蔵タンク保持装置8は、互いに並列配置された6個の水素貯蔵タンク挿入部10を有しており、水素貯蔵タンク保持装置9も同様に、互いに並列配置された6個の水素貯蔵タンク挿入部10を有している。また、図1Aおよび図1Bに示される例では、水素貯蔵タンク保持装置8の各水素貯蔵タンク挿入部10は車両1の前方方向上方に向けて開口しており、水素貯蔵タンク保持装置9の各水素貯蔵タンク挿入部10は車両1の後方方向上方に向けて開口している。なお、水素貯蔵タンク保持装置8の水素貯蔵タンク挿入部10の個数は任意に設定することができ、水素貯蔵タンク保持装置9の水素貯蔵タンク挿入部10の個数も任意に設定することができる。
【0010】
図2Aは、図1Bに示される水素貯蔵タンク保持装置8の水素貯蔵タンク挿入部10および水素貯蔵タンク保持装置9の水素貯蔵タンク挿入部10のいずれかに挿入される水素貯蔵タンク20の図解的に表した側面断面図を示しており、図2Bは、図2Aに示される水素貯蔵タンク20を右方向から見たときの水素貯蔵タンク20の側面図を示している。
図2Aを参照すると、水素貯蔵タンク20は、タンク本体21と、タンク本体21を包囲する円筒状ケーシング22により構成されている。図2Aに示される例では、タンク本体21内には高圧の水素ガスが充填されている。なお、タンク本体21内には、水素吸蔵合金を配置することもできる。
【0011】
タンク本体21の一端部、即ち、水素貯蔵タンク20の一端部には、水素流出部23が形成されており、水素貯蔵タンク20の他端部には、手で握ることのできるグリップ24、即ち、掌握可能なグリップ24が形成されている。図2Aおよび図2Bに示される例では、円筒状ケーシング22の両端面、即ち、水素貯蔵タンク20の両端面は平坦面から形成されており、水素流出部23は、水素貯蔵タンク20の一方の平坦端面上から凹んだ凹状円筒溝の形をなしている。一方、水素貯蔵タンク20の他方の平坦端面上には、円形の輪郭形状をなす凹溝25が形成されており、この凹溝25内には、掌握可能なように凹溝25の底面から間隔を隔てて凹溝25の対面する上縁部間を延びるグリップ24が形成されている。
【0012】
また、図2Aには、水素流出部23からの水素の流出を制御するためにタンク本体21内に配置された常時閉鎖型流出制御弁26が図解的に示されている。流出制御弁26は、タンク本体21内の圧縮水素圧により、通常、水素流出部23を閉鎖している。一方、図2Cは、図1Aおよび図1Bに示される水素貯蔵タンク挿入部10の拡大側面断面図を示している。図2Cを参照すると、水素貯蔵タンク挿入部10の奥部には、水素貯蔵タンク挿入部10の一端部を覆う端部壁27から水素貯蔵タンク挿入部10内に突出する凸状の水素流入部28が形成されている。この凸状の水素流入部28内には、車両の燃料電池に接続された水素流入通路29が形成されている。
【0013】
一方、図2Dは、水素貯蔵タンク20が水素貯蔵タンク挿入部10内に挿入されたときを示している。水素貯蔵タンク挿入部10への水素貯蔵タンク20の挿入作業は、手でグリップ24を把持し、水素流出部23が形成されている水素貯蔵タンク20の端部を水素貯蔵タンク挿入部10内に挿入して水素貯蔵タンク20を水素貯蔵タンク挿入部10内に押し込むことにより行われる。水素貯蔵タンク20が水素貯蔵タンク挿入部10内に押し込まれると、凹状の水素流出部23が凸状の水素流入部28に嵌合せしめられる。このことを構造的な観点から説明すると、水素貯蔵タンク挿入部10の周囲には、水素貯蔵タンク20を水素貯蔵タンク挿入部10に挿入したときに水素貯蔵タンク20の凹状水素流出部23を凸状水素流入部28に案内するための案内壁が形成されており、水素貯蔵タンク20が水素貯蔵タンク挿入部10に挿入されたときに、この案内壁によって、水素貯蔵タンク20の凹状水素流出部23が凸状水素流入部28に嵌合するように凸状水素流入部28に向けて案内される。
【0014】
この場合、この案内壁は、凹状水素流出部23が凸状水素流入部28に嵌合した状態でもって水素貯蔵タンク20を保持する役割も果たしている。図2Cおよび図2Dに示される例では、この案内壁は円筒壁から形成されている。この場合、この案内壁は必ずしも円筒壁から形成する必要がなく、この案内壁として、例えば、図2Dにおいて、水素貯蔵タンク20の周囲に沿って水素貯蔵タンク挿入部10の長手方向に延びるガイドロッド或いはガイドローラ付きガイドロッドを用いることができる。
【0015】
一方、凹状水素流出部23および凸状水素流入部28は、図2Dに示されるように凹状水素流出部23が凸状水素流入部28に嵌合せしめられた後に、凹状水素流出部23を水素貯蔵タンク20の長手中心軸線回りに回転させると凹状水素流出部23が凸状水素流入部28上に結合される結合構造を有している。この結合構造としては、例えば、凹状水素流出部23の内周面上および凸状水素流入部28の外周面上に夫々、ねじ山を形成したねじ構造とされる。従って、図2Cおよび図2Dに示される例では、水素貯蔵タンク20が水素貯蔵タンク挿入部10内に挿入されて凹状の水素流出部23が凸状の水素流入部28に嵌合せしめられた後、手で把持しているグリップ24を水素貯蔵タンク20の長手中心軸線回りに回転させることにより、凹状水素流出部23が凸状水素流入部28上に結合される。
【0016】
一方、水素貯蔵タンク20を交換するときには、手でグリップ24を把持して水素貯蔵タンク20を回転させることにより凹状水素流出部23と凸状水素流入部28との結合を解除し、次いで、水素貯蔵タンク20を水素貯蔵タンク挿入部10から引き抜き。新たな水素貯蔵タンク20が水素貯蔵タンク挿入部10内に挿入される。引き抜かれた水素貯蔵タンク20には、水素充填装置により、新たな水素が水素流出部23から注入される。
【0017】

このように、水素貯蔵タンク挿入部10内への水素貯蔵タンク20の挿入作業および凹状水素流出部23と凸状水素流入部28との結合作業が、グリップ24を掌握することにより達成できるので、水素貯蔵タンク保持装置8への水素貯蔵タンク20の設置作業および取り外し作業、即ち、水素貯蔵タンク20の交換作業を容易に行うことが可能となる。また、手でグリップ24を把持することにより水素貯蔵タンク20を容易に運搬することができる。また、水素貯蔵タンク20の両端部が平坦面から形成されているので、水素貯蔵タンク20を床上に立てておくことができ、また、水素貯蔵タンク20同志を立てた状態で容易に積み重ねることができる。従って、水素貯蔵タンク20の保管が容易となる。
【0018】
このように、本発明による実施例では、水素貯蔵装置が、車両により支持されかつ複数個の水素貯蔵タンク挿入部10を有する水素貯蔵タンク保持装置8,9と、車両の燃料電池に水素を供給するために各水素貯蔵タンク挿入部10に挿入された交換可能な水素貯蔵タンク20とにより構成されており、各水素貯蔵タンク挿入部10の奥部に燃料電池に接続された水素流入部28が形成されている。水素貯蔵タンク20を水素貯蔵タンク挿入部10に挿入したときに水素流入部28に結合される水素流出部23が各水素貯蔵タンク20の一端部に形成されていると共に各水素貯蔵タンク20の他端部に掌握可能なグリップ24が形成されており、グリップ24を掌握することにより水素貯蔵タンク挿入部10内への水素貯蔵タンク20の挿入作業および水素流入部28と水素流出部23との結合作業が行われる。この場合、本発明による実施例では、グリップ24を掌握して水素貯蔵タンク20を回転させることにより、水素流入部28と水素流出部23との結合作業が行われる。
【0019】
一方、常時閉鎖型流出制御弁26の開弁制御を行う開弁制御装置30が凸状水素流入部28に配置される。図2Cおよび図2Dには、この開弁制御装置30が図解的に示されおり、図2Cおよび図2Dに示される例では、この開弁制御装置30は、流出制御弁26と係合可能な制御ロッド31と,制御ロッド31を駆動するための、例えば、ソレノイドからなるアクチュエータ32とにより構成される。ソレノイドが付勢されると、制御ロッド31が流出制御弁26に当接して流出制御弁26を押し上げる。その結果、流出制御弁26が開弁し、タンク本体21内の高圧の貯蔵水素が水素流入部28の水素流入通路29内に流入する。ソレノイドが消勢されると、流出制御弁26は閉弁し、タンク本体21からの貯蔵水素の流出が停止する。
【0020】
また、図2Aおよび図2Dに示されるように、水素流出部23と反対側のタンク本体21の端部、即ち、水素流出部23と反対側の水素貯蔵タンク20の端部側に水素貯蔵タンク20内の貯蔵水素の状態を検出するためのセンサ33が配置されている。このセンサ33は、圧力および温度の少なくとも一方を検出するセンサからなる。図2Cおよび図2Dに示される例では、センサ33が検出信号を外部に送信する送信装置を内蔵している。この場合、センサ33の検出信号を信号線を介して外部に伝えることもできる。
【0021】
図3は、水素供給制御装置の全体図を示している。図3には、水素貯蔵タンク保持装置8、9の水素貯蔵タンク挿入部10に挿入されている水素貯蔵タンク20が示されている。なお、図3に示す例では、説明の便宜上、水素貯蔵タンク保持装置8の水素貯蔵タンク挿入部10に挿入されている各水素貯蔵タンク20に対して夫々、No.1―A、No.1―B、No.2―A、No.2―B、No.3―A、No.3―Bの符号付けがなされており、水素貯蔵タンク保持装置9の水素貯蔵タンク挿入部10に挿入されている各水素貯蔵タンク20に対して夫々、No.4―A、No.4―B、No.5―A、No.5―B、No.6―A、No.6―Bの符号付けがなされている。
【0022】
図3に示されるように、全ての水素貯蔵タンク20は、実線で示される水素流入通路29を介して車両を駆動するための燃料電池40に接続されており、各水素貯蔵タンク挿入部10に設けられている開弁制御装置30は、破線で示されるように電子制御装置50に接続されている。一方、図4は、図3の電子制御装置50を示している。図4に示されるように、この電子制御装置50内には電子制御ユニット51が設けられている。この電子制御ユニット51はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス52によって互いに接続されたCPU(マイクロプロセッサ)53、ROMおよびRAMからなるメモリ54および入出力ポート55を具備する。
【0023】
また、電子制御装置50には通信装置56が設けられており、この通信装置56は電子制御ユニット51に接続されている。各水素貯蔵タンク20のセンサ33から発せられる検出信号は、通信装置56を介しては電子制御ユニット51に入力される。また、図4に示されるように、開弁制御装置30は電子制御ユニット51に接続されており、電子制御ユニット51の出力信号に基づいて、開弁制御装置30による流出制御弁26の開弁制御が行われる。また、表示画面を有する表示装置57が電子制御ユニット51に接続されており、電子制御ユニット51の出力信号に基づいて、表示装置57の表示画面上の表示の制御が行われる。
【0024】
本発明による実施例では、一対の水素貯蔵タンク20から燃料電池40に水素が供給され、これら一対の水素貯蔵タンク20内の残留水素量が少なくなると、新たな一対の水素貯蔵タンク20からの燃料電池40への水素の供給が開始され、これまで用いられてきた一対の水素貯蔵タンク20からの燃料電池40への水素の供給が停止される。従って、
燃料電池40への水素の供給は停止されることなく継続可能となり、従って、燃料電池40は継続して出力を発生し続けることができる。
【0025】
図5は、常時閉鎖型流出制御弁26の開弁制御を行うための開弁制御ルーチンを示しており、このルーチンは、電子制御ユニット51において繰り返し実行される。
図5を参照すると、まず初めに、ステップ60では、No.mの一対の水素貯蔵タンク20の流出制御弁26が開弁しているか否かが判別される。今、m=1であったとすると、
No.1―Aの水素貯蔵タンク20の流出制御弁26およびNo.1―Bの水素貯蔵タンク200の流出制御弁26が開弁しているか否かが判別される。No.mの一対の水素貯蔵タンク20の流出制御弁26が開弁していないと判別されたときには、ステップ66にジャンプする。これに対し、ステップ60において、No.mの一対の水素貯蔵タンク20の流出制御弁26が開弁していると判別されたときには、ステップ61に進む。
【0026】
ステップ61では、No.mの一対の水素貯蔵タンク20のセンサ33により検出されたNo.mの一対の水素貯蔵タンク20内の貯蔵水素の圧力Pが取得される。図5に示される例では、この圧力Pが、水素貯蔵タンク20内の残留水素量を推定する値として用いられている。次いで、ステップ62では、No.mの一対の水素貯蔵タンク20の少なくとも一方の水素貯蔵タンク20内の貯蔵水素の圧力Pが、残留水素量の許容限界値を示す設定圧力PXよりも低下したか否か、即ち、水素貯蔵タンク20の推定残留水素量が設置された水素量よりも低下したか否かが判別される。No.mの一対の水素貯蔵タンク20の少なくとも一方の水素貯蔵タンク20内の貯蔵水素の圧力Pが設定圧力PXよりも低下していないと判別されたときには、ステップ66にジャンプする。これに対し、ステップ62において、No.mの一対の水素貯蔵タンク20の少なくとも一方の水素貯蔵タンク20内の貯蔵水素の圧力Pが設定圧力PXよりも低下したと判別されたときには、ステップ63に進む。
【0027】
ステップ63では、No.m+1の一対の水素貯蔵タンク20の流出制御弁26が開弁せしめられ、次いで、ステップ64では、No.mの一対の水素貯蔵タンク20の流出制御弁26が閉弁せしめられる。次いで、ステップ65では、No.mの一対の水素貯蔵タンク20の交換が必要である旨の表示、例えば、No.m―Aタンク、No.m―Bタンク交換要の表示が表示装置57の表示画面に表示される。次いで、ステップ66に進む。ステップ66では、No.mの一対の水素貯蔵タンク20の交換が行われたか否かが判別される。No.mの一対の水素貯蔵タンク20の交換が行われていないと判別されたときには、ステップ68にジャンプする。これに対し、ステップ66において、No.mの一対の水素貯蔵タンク20の交換が行われたと判別されたときには、ステップ67に進んで、No.mの一対の水素貯蔵タンク20の交換が必要である旨の表示が終了される。次いで、ステップ68に進む。
【0028】
なお、各No.mの一対の水素貯蔵タンク20の交換が行われたときに、例えば、新たな一対の水素貯蔵タンク20のセンサ33の検出信号が、No.mの一対の水素貯蔵タンク20のセンサ33の検出信号であると認識し得るように、例えば、水素貯蔵タンク20のセンサ33からは、検出信号と共に水素貯蔵タンク20の番号No.m―Aタンク、No.m―Bタンクを示す情報が送信され、ステップ66では、この情報に基づいて、No.mの一対の水素貯蔵タンク20の交換が行われたか否かが判別される。
【0029】
ステップ68では、mが1だけインクリメントされ、次いで、ステップ69では、mが7になったか否かが判別される。m=7ではないと判別されたときには処理サイクルを終了する。これに対し、m=7であると判別されたときにはステップ70に進んで、mが1とされ、次いで、処理サイクルを終了する。従って、No.1の一対の水素貯蔵タンクNo.1―A、No.1―BからNo.6の一対の水素貯蔵タンクNo.6―A、No.6―Bまでの常時閉鎖型流出制御弁26の開弁制御が繰り返し実行される。
【0030】
なお、このように、常に、一対の水素貯蔵タンク20から貯蔵水素を供給させるように制御すると、何らかの理由により、一方の水素貯蔵タンク20から貯蔵水素の供給が行われなかった場合でも、他方の水素貯蔵タンク20から貯蔵水素の供給が行われる。従って、水素貯蔵タンク20からの貯蔵水素の供給が中断されるのを阻止し得る可能性が高くなるという利点がある。
【0031】
このように、本発明による実施例では、水素貯蔵タンク20から燃料電池40への水素の供給を制御する水素供給制御装置を具備している。この水素供給制御装置が、水素貯蔵タンク20内の残留水素量を推定する残留水素量推定部を有しており、水素貯蔵タンク20内の推定残留水素量に基づいて燃料電池40への水素の供給を行う水素貯蔵タンク20が選択される。この場合、電子制御ユニット51がこの残留水素量推定部を形成している。
【0032】
また、この場合、本発明による実施例では、水素貯蔵タンク保持装置8,9により保持されている水素貯蔵タンク20の中から一対の水素貯蔵タンク20が選択されて、選択された一対の水素貯蔵タンク20から燃料電池40に水素が供給され、選択された一対の水素貯蔵タンク20のうちの少なくとも一方の水素貯蔵タンク20の推定残留水素量が設置された水素量よりも低下したときには、水素貯蔵タンク保持装置8,9により保持されている水素貯蔵タンク20の中から次の一対の水素貯蔵タンク20が選択され、選択された該次の一対の水素貯蔵タンク20から燃料電池40に水素が供給される。
【0033】
また、本発明による実施例では、水素供給制御装置は、水素貯蔵タンク20の推定残留水素量が、設置された水素量よりも低下したときに、水素貯蔵タンク20を交換すべき表示を行う表示装置57を有している。また、本発明による実施例では、水素流出部23と反対側の水素貯蔵タンク20の端部側に水素貯蔵タンク20内の貯蔵水素の状態を検出するためのセンサ33が配置されており、上述の残留水素量推定部は、センサ33の検出信号に基づいて水素貯蔵タンク20内の残留水素量を推定する。
【符号の説明】
【0034】
1 車体
8,9 水素貯蔵タンク保持装置
10 水素貯蔵タンク挿入部
20 水素貯蔵タンク
23 水素流出部
24 グリップ
26 常時閉鎖型流出制御弁26
28 水素流入部
30 開弁制御装置
40 燃料電池
図1
図2
図3
図4
図5