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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174133
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】鍵盤楽器及び鍵
(51)【国際特許分類】
   G10B 3/12 20060101AFI20241206BHJP
   G10H 1/34 20060101ALI20241206BHJP
   G10C 3/12 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
G10B3/12 100
G10H1/34
G10C3/12 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024172136
(22)【出願日】2024-10-01
(62)【分割の表示】P 2022074166の分割
【原出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 康志
(72)【発明者】
【氏名】谷口 弘和
(57)【要約】
【課題】カウンタウェイト等のウェイトを確実に取り付けつつ、分別作業もし易い鍵盤楽器と、この鍵盤楽器に用いられる鍵を提供する。
【解決手段】鍵盤楽器は、弾性変形しない金属製のウェイト100と、天板301と、天板301の下面で接着剤を用いずにウェイト100の上面が固定された状態における鍵の前後方向の前側の前面、記前面より鍵の前後方向の後側の後面及び上面より鍵の上下方向の下側の下面に当接することによりウェイト100を固定する複数のリブ350、360、370と、を含む鍵ベース部材300と、を有し、ウェイト100の上面の面積は、ウェイトの下面101の面積より大きい、ものとする。

【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形しない金属製のウェイトと、
天板と、前記天板の下面で接着剤を用いずに前記ウェイトの上面が固定された状態における鍵の前後方向の前側の前面、前記前面より前記鍵の前後方向の後側の後面及び前記上面より鍵の上下方向の下側の下面に当接することにより前記ウェイトを固定する複数のリブと、を含む鍵ベース部材と、
を有する鍵を備え、
前記ウェイトの前記上面の面積は、前記ウェイトの前記下面の面積より大きい、
鍵盤楽器。
【請求項2】
前記複数のリブは、前記鍵の前後方向における同一線上に配置されている、
請求項1に記載の鍵盤楽器。
【請求項3】
前記鍵ベース部材は、鍵の配列方向から前記ウェイトを固定する補助リブを有する、
請求項1に記載の鍵盤楽器。
【請求項4】
前記リブは、前記鍵ベース部材の左右の側板を接続する補強リブと接続する、
請求項1に記載の鍵盤楽器。
【請求項5】
黒鍵に対応する前記鍵ベース部材に設けられる前記ウェイトの下面に当接する少なくとも1つのリブは、押鍵に応じて前記押鍵を検出するためのスイッチを押下する、
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の鍵盤楽器。
【請求項6】
弾性変形しない金属製のウェイトと、
天板と、前記天板の下面で接着剤を用いずに前記ウェイトの上面が固定された状態における鍵の前後方向の前側の前面、前記前面より前記鍵の前後方向の後側の後面及び前記上面より鍵の上下方向の下側の下面に当接することにより前記ウェイトを固定する複数のリブと、を含む鍵ベース部材と、
を有し、
前記ウェイトの前記上面の面積は、前記ウェイトの前記下面の面積より大きい、
鍵。
【請求項7】
前記複数のリブは、前記鍵の前後方向における同一線上に配置されている、
請求項6に記載の鍵。
【請求項8】
前記鍵ベース部材は、鍵の配列方向から前記ウェイトを固定する補助リブを有する、
請求項6に記載の鍵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵盤楽器及び鍵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、打鍵時に適度な重量感を得るため、鍵ベース部材にカウンタウェイトとしての錘を設けた鍵盤楽器が開示されている。例えば、特許文献1には、鍵の前後方向に長い直方体形状の錘を、下面側のみ前後方向に長いスリット状の開放部を設けた鍵ベース部材に収納したものが開示されている。この黒鍵は、インサート成形により成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-268654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の黒鍵は、錘の上面、左右の側面、前後面及び、下面は開放部以外の部分が、鍵ベース部材を成す樹脂材料が密着している。よって、錘は、鍵ベース部材から容易に外れることはない。一方、鍵盤楽器の廃棄の際には、金属材料からなる錘と、樹脂材料からなる鍵ベース部材とを分別することがある。この分別作業は、錘の周囲に密着した樹脂材料を剥がして除去する必要があり、容易ではない。
【0005】
本発明は、カウンタウェイト等のウェイトを確実に取り付けつつ、分別作業もし易い鍵盤楽器と、この鍵盤楽器に用いられる鍵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鍵盤楽器は、弾性変形しない金属製のウェイトと、天板と、前記天板の下面で接着剤を用いずに前記ウェイトの上面が固定された状態における鍵の前後方向の前側の前面、前記前面より前記鍵の前後方向の後側の後面及び前記上面より鍵の上下方向の下側の下面に当接することにより前記ウェイトを固定する複数のリブと、を含む鍵ベース部材と、を有する鍵を備え、前記ウェイトの前記上面の面積は、前記ウェイトの前記下面の面積より大きい。
【0007】
本発明に係る鍵は、弾性変形しない金属製のウェイトと、天板と、前記天板の下面で接着剤を用いずに前記ウェイトの上面が固定された状態における鍵の前後方向の前側の前面、前記前面より前記鍵の前後方向の後側の後面及び前記上面より鍵の上下方向の下側の下面に当接することにより前記ウェイトを固定する複数のリブと、を含む鍵ベース部材と、を有し、前記ウェイトの前記上面の面積は、前記ウェイトの前記下面の面積より大きい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カウンタウェイト等のウェイトを確実に取り付けつつ、分別作業もし易い鍵盤楽器と、この鍵盤楽器に用いられる鍵ベース部材の成形方法及び鍵ベース部材の成形用の金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の左側を拡大して示す平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の図2のIII-III断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の図2のIV-IV断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の白鍵を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の白鍵の幅広部付近を下面側から見た一部拡大底面図である。
図7】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の白鍵の図6のVII-VII断面の断面斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の黒鍵を示す斜視図である。
図9】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の黒鍵を下面側から見た底面図である。
図10】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の黒鍵に係る図9のX-X断面図である。
図11】本発明の実施形態に係る鍵ベース部材の成形用の金型を用いた鍵ベース部材の成形方法を説明するための断面模式図であって、ウェイトを挿入する様子を示す。
図12】本発明の実施形態に係る鍵ベース部材の成形用の金型を用いた鍵ベース部材の成形方法を説明するための断面模式図であって、型締めして射出成形している状態を示す。
図13】本発明の実施形態に係る鍵ベース部材の成形用の金型を用いた鍵ベース部材の成形方法を説明するための断面模式図であって、型開きして製品を取り出した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。図1に示す鍵盤楽器10は、複数の鍵としての複数の白鍵30と複数の黒鍵40を備えるフルサイズ(88鍵)の鍵盤50と、ケース20とを備える。なお、以下の説明においては、鍵盤50の鍵の前後方向FBにおける前を前側F、鍵の前後方向FBの後を後側Bとし、鍵盤50に向かって左を左側L、右を右側Rとする。鍵盤50の鍵の配列方向LRは、左右方向である。また、鍵盤楽器10の上下方向ULにおいて上を上側Up、下を下側Loとする。本実施形態の鍵盤楽器10は、電子ピアノについて示しているが、奏者(ユーザ)の押鍵操作に応じて発音する楽器であればその他の鍵盤楽器であってもよい。
【0011】
ケース20は、左右方向を長手方向とする略長矩形板状であり、上ケース21と下ケース22に分割される。上ケース21及び下ケース22は、夫々樹脂材料により形成される。ケース20の内部には、基板や電源である電池等が収納される。上ケース21の左側の上面21aには、ボリュームや各種設定用のツマミやダイヤルを備える操作部11が設けられている。また、上ケース21の左側の前面には、イヤフォンジャック12が設けられている。
【0012】
上ケース21の左側において鍵盤50に隣接する上ケース21の上面21a及び右側において鍵盤50に隣接する上ケース21の上面21bは、後方から前方に亘って下る傾斜面とされている。また、上ケース21の中央上部に設けられる左右に長い上面21cも傾斜面とされている。また、図示しないが、上ケース21の背面には、スピーカに対応する孔部が設けられている。
【0013】
図2に示すように、複数の白鍵30は、A~Fの音階に応じた形状で設けられている。以下の説明では、代表的に、白鍵30の説明としてF鍵である白鍵(白鍵30F)について説明するが、本発明は、他の音階の白鍵30についても適用できる。一方、黒鍵40は、全て同じ形状で設けられている。
【0014】
白鍵30の断面を示す図3及び黒鍵40の断面を示す図4に示すように、ケース20は、下ケース22から立設する下ボス部23と、上ケース21から立設する上ボス部24とがボルトにより螺合接合される等して、上ケース21と下ケース22が組み合わされている。ケース20の内部には、内部ケース25が設けられている。内部ケース25は、鍵の配列方向LRに長く設けられ、図3及び図4の断面視においては下側Loに開口側を向けた略コ字状の断面を備えている。内部ケース25には、上面に回路基板60が設けられている。回路基板60には、複数の白鍵30及び黒鍵40に対応して、押鍵を検出するための複数のスイッチ61が設けられている。
【0015】
スイッチ61は、図3のP部を上方から見た斜視図とされる囲み図にも示すように、両端を半円弧状とする鍵の前後方向FBに長い角丸長矩形の略直方体状に設けられている。スイッチ61は、ゴム材料等の弾性材料からなる。スイッチ61は、上面に円形孔が設けられる後押圧部61aと、前押圧部61bとを備える。後押圧部61a、前押圧部61bは、有底の円形凹状に設けられ、底部61a1,61b1を有する。前押圧部61bの底部61b1は、後押圧部61aの底部61a1よりも下側Loに長く設けられている。また、スイッチ61の下側Loは、肉厚が薄く可撓性を有する環状の変形部61cが設けられている。回路基板60上には、後押圧部61a、前押圧部61bの各底部61a1,61b1に対応して、2つのスイッチ接点(不図示)が設けられている。この2つのスイッチ接点が同時に押されたとき、押鍵が検出され、所定の音階が発音される。スイッチ61の構成は、白鍵30用と黒鍵40用とで共通する。
【0016】
図3に示すように、白鍵30には、白鍵30用のスイッチ61に対応する位置にスイッチ押圧部33が設けられている。内部ケース25の後方には、白鍵30を回動自在に支持する支持軸25aが設けられている。支持軸25aは、各白鍵30及び黒鍵40に対応して複数設けられている。内部ケース25内には、複数のハンマー部材70が設けられている。各ハンマー部材70は、後側Bにウェイト部71が設けられている。ウェイト部71から前側Fに延びる腕部72は、内部ケース25に設けられる支持軸25bにより回動自在に支持されている。
【0017】
腕部72の先端には、白鍵30から下側Loに延びるハンマー押圧部31に係合するハンマーキャップ73が設けられている。ハンマー押圧部31には、ハンマーキャップ73が係合する孔部31aが設けられている。また、白鍵30には、前端部に、下側Loに延びて、先端部分が後方に突出する鉤状の規制突起32が設けられている。規制突起32は、後述するが、板状の左規制突起32aと板状の右規制突起32bとを有する。左規制突起32aと右規制突起32bとの間には、内部ケース25の前端部に白鍵ガイド部120が設けられている。白鍵ガイド部120は、左規制突起32aと右規制突起32bの内面と摺動し、規制突起32の上下方向ULの移動をガイドする。従って、白鍵30は、打鍵時における鍵の配列方向LRの横振れが低減されている。
【0018】
図4に示すように、黒鍵40は、黒鍵40用のスイッチ61に対応するスイッチ押圧部43が設けられている。また、黒鍵40に対しても、夫々ハンマー部材80が設けられている。黒鍵40用のハンマー部材80も、夫々、ウェイト部81、腕部82、ハンマーキャップ83を備えている。ハンマーキャップ83は、黒鍵40に設けられるハンマー押圧部41の孔部41aに係合している。黒鍵40のハンマー押圧部41は、後述するが、下方に延設される左右の側板403を含む。この延設された左右の側板403の間には、内部ケース25に設けられる黒鍵ガイド部220が設けられている。黒鍵ガイド部220は、延設された左右の側板403の各内側面に摺動し、黒鍵40の上下方向ULの移動をガイドする。従って、黒鍵ガイド部220により、黒鍵40は、打鍵時における鍵の配列方向LRの横振れが低減されている。
【0019】
白鍵30を押下すると、白鍵30のハンマー押圧部31がハンマーキャップ73を押し下げる。すると、ハンマーキャップ73と支持軸25bを挟んで対向して設けられるハンマー部材70のウェイト部71は上昇する。このようにして、白鍵30は、本物のピアノと同様の重みを感じながら打鍵することができる。そして、上昇したウェイト部71は、内部ケース25に設けられるハンマー用の上クッション26に当接する。
【0020】
一方、白鍵30の押下により規制突起32は押し下げられて、規制突起32に対応して設けられる下クッション29に当接する。また白鍵30を押下したとき、白鍵30に設けられるスイッチ押圧部33によりスイッチ61が押下され、押下した白鍵30に対応する音が発音される。そして、白鍵30から手を離すと、ハンマー部材70のウェイト部71が下がって下クッション27に当接し、規制突起32の顎部は上クッション28と当接し、図3の状態となる。
【0021】
また、黒鍵40も同様に、黒鍵40が押下すると、ハンマー部材80が回動し、本物のピアノと同様の重みを感じながら打鍵することができる。黒鍵40に対するウェイト部81も白鍵30用のウェイト部71と同様に、上昇限及び下降限にて上クッション26、下クッション27と当接する。
【0022】
白鍵30、黒鍵40が打鍵されると、スイッチ押圧部33,43によりスイッチ61の上面が押下され、打鍵した白鍵30、黒鍵40に対応する発音がなされる。白鍵30、黒鍵40が打鍵されると、初期には、スイッチ61の後側の上面にスイッチ押圧部33,43が当接する。すると、変形部61cが撓んで、後押圧部61aの底部61a1が先に下降する。打鍵した白鍵30、黒鍵40が略水平になると、スイッチ押圧部33,43が鍵の前後方向FBに亘ってスイッチ61の上面に当接する。すると、後押圧部61a、前押圧部61bの底部61a1,61b1の下面位置は略同じとなり、底部61a1,61b1の下面により2つのスイッチ接点が同時に押下され、打鍵した鍵に対応する発音がなされる。
【0023】
更に、白鍵30、黒鍵40には、夫々、カウンタウェイトとしてのウェイト100,200が設けられている。ウェイト100,200は、打鍵時の感触を向上させるものである。すなわち、弱打の際には、ハンマー部材70,80に対する反力を指先に与え、鍵を押す力を軽く感じることができる。一方、強打の際には、ウェイト100,200によって生じる慣性力によって鍵を押す力を重く感じることができる。ウェイト100,200は、何れも錐台形状とされている。白鍵30には、円錐台形状のウェイト100が設けられている。黒鍵40には、鍵の前後方向FBに長い四角錐台形状のウェイト200が設けられている。
【0024】
図5図7に基づいて、白鍵30におけるウェイト100の取付箇所について説明する。なお、図5図7は、F鍵の白鍵30Fを例として示している。図5に示すように、白鍵30は、左側L、右側Rに夫々設けられる取付部材としての木質部材310,320と、鍵ベース部材300とを備える(木質部材320は図6図7参照)。鍵ベース部材300は、天面とされる上面301pが打鍵面とされる天板301を含む。鍵ベース部材300の天板301は、右側Rに段部305が設けられている。段部305は、鍵盤50に配置される白鍵30における黒鍵40に対応する部分である。段部305よりも前側Fの天板301は幅広部301aとされ、後側Bは幅狭部301bとされている。
【0025】
天板301の前端部の下面301qからは、下側Loの下方に延設する前板302が設けられている。前板302は、前後方向FBに板面を向けて配置され、天板301の幅広部301aと略同幅に設けられている。規制突起32は、前板302の後面において板状に、左規制突起32aと右規制突起32bが設けられている。
【0026】
鍵ベース部材300は、図6及び図7に示すように、天板301の下面から垂下して左右に設けられる側板303(左側板303a、右側板303b)を備える。側板303は、天板301の幅広部301aに対応して設けられている。左側Lに設けられる側板303の左側板303aと、右側Rに設けられる側板303の右側板303bとは、対向して設けられている。
【0027】
鍵ベース部材300は、段部305の後側Bに、幅狭部301bに対応して、縦板306が設けられている。左側板303aの側面303a1と、縦板306の左側の側面306aは、略連続した面とされている。一体的に構成される木質部材310は、左側板303aの側面303a1と、縦板306の左側の側面306aに亘って設けられている。一方、右側板303bは、段部305において、右側板303bに直交する接続板305aを介して縦板306と接続している。前側の右側板303bの側面303b1には、木質部材320の前木質部材321が設けられ、後側の縦板306の右側の側面306bには、木質部材320の後木質部材322が設けられている。
【0028】
なお、図7に示すように、左側板303a、右側板303bには、夫々上下2か所に凹溝部110が設けられている。凹溝部110には、木質部材310,320を接着剤で左側板303aの側面303a1及び右側板303bの側面303b1に取り付ける際に生じる余分な接着剤が貯留される。また、右側板303bの下端や縦板306の後側Bの下端において、外方に水平に突出する突起板307は、木質部材310,320が、万が一、脱落した場合に、鍵盤楽器10の内部に脱落してしまわないようにする、木質部材310,320の受部である。また、鍵ベース部材300の後端部には、支持軸25aに軸支される回転孔部308が設けられている。
【0029】
図6及び図7に示すように、鍵ベース部材300には、天板301の下面301qに、ウェイト100と、ウェイト100を固定するリブ500が設けられている。リブ500は、第1リブ350、第2リブ360を含む。また、鍵ベース部材300は、補助リブ370(左補助リブ371、右補助リブ372)を有する。
【0030】
リブ500の第1リブ350、第2リブ360は、天板301の下面301qにおける鍵の前後方向FBに夫々配置されている。リブ500(第1リブ350、第2リブ360)は、鍵の前後方向FBにおいて、ウェイト100の少なくとも前方及び後方の何れか一方を固定する。具体的には、第1リブ350はウェイト100の前側Fに設けられ、第2リブ360はウェイト100の後側Bに設けられている。第1リブ350、第2リブ360は略鉤状であってウェイト100の外形に沿って設けられる保持部351,361を有する。保持部351,361は、ウェイト100の外周面102に沿って設けられる外周壁部351a,361aと、ウェイト100の下面101側に設けられて外周壁部351a,361aと略同幅とされる下面壁部351b,361bを有する。外周壁部351aの後面、外周壁部361aの前面(ウェイト100側の面)は、ウェイト100の外周面102に当接する。下面壁部351b,361bの上面(ウェイト100側の面)は、ウェイト100の下面101に当接する。
【0031】
なお、ウェイト100の下面101及び外周面102への当接は、第1リブ350、第2リブ360の少なくとも一方が当接して設けられていればよい。また、保持部351,361は、第1リブ350、第2リブ360の少なくとも一方に設けられていればよい。
【0032】
保持部351の外周壁部351aの前面及び保持部361の外周壁部361aの後面(夫々、ウェイト100と反対側の面)には、夫々リブ部352,362が設けられている。リブ部352,362は、夫々、ウェイト100の鍵の前後方向FBの中央線に配置され、天板301の下面301qから立設するようにして、板面を鍵の前後方向FBに平行に配置する板状に設けられている。換言すれば、リブ500(リブ部352,362)は、ウェイト100における鍵の前後方向FBの中央線に平行な鉛直面上に配置されている。第1リブ350のリブ部352は、その前端が、左右の側板303を接続する補強リブ304の後面と接続されている。補強リブ304は、側板303の鍵の配列方向LRを補強する。このようにして、第1リブ350は、鍵ベース部材300の左右の側板303を接続する補強リブ304と接続する。第2リブ360のリブ部362は、その後端を接続板305aの前面と接続している。図7に示すように、各リブ部352,362の対向する角部は、C面取部352a,362aとされている。
【0033】
鍵ベース部材300は、鍵の配列方向LRからウェイト100を固定する補助リブ370(左補助リブ371、右補助リブ372)を有する。補助リブ370は、鉤状の板状に設けられている。補助リブ370は、板面をリブ部352,362と直交するように(鍵の配列方向LRに平行に)設けられている。補助リブ370の左補助リブ371の背面側(ウェイト100の反対側)は、左側板303aの内側面(右側面)と接続している。補助リブ370の右補助リブ372の背面側(ウェイト100の反対側)は、側面303b1の内側面(左側面)と接続している。補助リブ370は、先端部の鉤状部分で、ウェイト100を下面101から保持して、鍵ベース部材300に固定している。ウェイト100は、上面103(図3参照)を天板301の下面301qに当接させて固定されている。
【0034】
また、補強リブ304(第1リブ350)の前側Fには、補強リブ304と、天板301と、左右の側板303と、前板302とで囲まれる空間部380が設けられている。空間部380は、鍵盤楽器10の組立の際に、白鍵ガイド部120と摺接する左規制突起32a、右規制突起32bの内面にグリスを塗布する塗布ノズル等を挿入する等、組立時に利用されるスペースである。
【0035】
図8図10及び図4も参照して、黒鍵40について説明する。図8に示すように、黒鍵40は、鍵ベース部材400と、ウェイト200(図4参照)とを有する。黒鍵40は、下側Loを開放し、鍵の前後方向FBに長い略直方体状とされ、後端部には、支持軸25aに軸支される回転孔部408が設けられている。鍵ベース部材400は、上面401pが打鍵面とされる天板401と、天板401の前側Fに設けられる前板402と、天板401の左右縁部から垂下して設けられる左右の側板403(左側板403a、右側板403b)と、を含む。前板402は、上部が傾斜前板402aとされている。前板402及び側板403の前側Fの部分は、下側Loに向けて延在し、ハンマー押圧部41を画成する。
【0036】
図9図10に示すように、鍵ベース部材400は、ウェイト200と、天板401の下面401qにおける鍵の前後方向FBの前後に夫々配置されてウェイト200を固定するリブ510(第1リブ450、第2リブ460)とを有する。
【0037】
図4に示すように、前側Fに配置される板状の第1リブ450は、板面を鍵の前後方向FBに平行に配置され、先端部(下端部)が鉤状に設けられている。第1リブ450のウェイト200側は、ウェイト200の下面201と、外周面202に当接している。一方、後側Bに配置される板状の第2リブ460は、板面を鍵の前後方向FBに平行に配置され、鉤状に設けられるウェイト200側(前側F)の部分を含み、ウェイト200の下面201と外周面202(図9参照)に当接している。ウェイト200の上面203は、天板401の下面401qに当接している。このようにして、ウェイト200は、黒鍵40に係る鍵ベース部材400に固定されている。なお、ウェイト200の下面201及び外周面202への当接は、第1リブ450、第2リブ460の少なくとも一方が当接して設けられていればよい。すなわち、黒鍵40においても、リブ510(第1リブ450、第2リブ460)は、鍵の前後方向FBにおいて、ウェイト200の少なくとも前方及び後方の何れか一方を固定する。そして、リブ510(第1リブ450、第2リブ460)は、ウェイト200における鍵の前後方向の中央線に平行な鉛直面上に配置されている。
【0038】
図9に示すように、第2リブ460には、直交する2枚の板状のリブであるスイッチ押下用リブ461が設けられている。スイッチ押下用リブ461は、左右の側板403と接続されている。2枚のスイッチ押下用リブ461の間隔は、スイッチ61の後押圧部61aと前押圧部61bの中心の間隔と合致して配置されている。すなわち、図9に示すように、スイッチ押下用リブ461は、後押圧部61a及び前押圧部61bの中心に配置され、図10に示すように、第2リブ460の板厚方向の中心は、スイッチ61の左右方向の中心線CL(ウェイト200の中央線でもある)に合致するように配置されている。従って、2枚のスイッチ押下用リブ461と第2リブ460が直交する箇所(2箇所)は、後押圧部61a、前押圧部61bの円形孔の中心軸に配置される。このようにして、第2リブ460(スイッチ押下用リブ461)は、スイッチ61に対応して設けられている。なお、第2リブ460の鍵の前後方向FBの長さは、当接するスイッチ61の上面における鍵の前後方向FBの長さよりも十分に長く設けられている。
【0039】
また、第1リブ450と第2リブ460との間には、側板403の鍵の配列方向LRを補強する補強リブ404が設けられている。補強リブ404は、左側板403aと右側板403bと接続して、第1リブ450、第2リブ460と直交するように設けられる板状のリブである。補強リブ404は、ウェイト200の外周面202及び下面201に当接し、ウェイト200に亘って設けられている。
【0040】
また、第1リブ450の前側Fには、空間部480が設けられている。空間部480は、鍵盤楽器10の組立の際に、摺接する黒鍵ガイド部220とハンマー押圧部41に向けて延設される左右の側板403間にグリスを塗布する塗布ノズル等を挿入する等、組立時に利用することができる。
【0041】
次に、図11図13に基づいて、金型800を用いた黒鍵40の鍵ベース部材400の成形方法を説明する。金型800は、コア型600と、キャビティ型700とを備える。鍵ベース部材400は、金型800を用いた樹脂材料の射出成形により成形される。コア型600は、略板状のコアブロック650を備える。コアブロック650は、ハンマー押圧部41を成形するためのハンマー押圧部成形部601や回転孔部408を成形するための回転孔部成形部608、ウェイト挿入部630等を備えている。
【0042】
ウェイト挿入部630は、四角錐台形状のウェイト200の底面のうち、面積の大きい底面側(上面203)を外側(上側)としてウェイト200を載置可能な凹状に設けられている。ウェイト挿入部630は、リブ成形部651としての第1リブ成形部610及び第2リブ成形部620を含む。第1リブ成形部610と第2リブ成形部620は、鍵の前後方向FBにおいて前側に第1リブ成形部610が配置され、後側Bに第2リブ成形部620が配置され、両者は対向配置されている。
【0043】
第1リブ成形部610及び第2リブ成形部620には、夫々、ウェイト200の外周面202から面積の小さい底面(下面201)に亘って溝状に設けられている。第1リブ成形部610及び第2リブ成形部620には、溶融樹脂が流入されて、第1リブ450、第2リブ460が成形される。
【0044】
また、キャビティ型700には、黒鍵40の外形形状の凹孔状に設けられるキャビティ710を含む。
【0045】
金型800を用いた射出成形による鍵ベース部材400の成形方法は、先ず、図12に示すように、金型800のコア型600に設けられるウェイト挿入部630にウェイト200を挿入して配置する工程を行う。ウェイト200の挿入は、下面201側(錐台形状における面積の小さい底面側)から行う。従って、ウェイト200とウェイト挿入部630の位置が若干ズレていても、傾斜する外周面202により自動で位置合わせされ、ウェイト200はウェイト挿入部630に良好に配置される。
【0046】
そして、コア型600とキャビティ型700とを型締めする工程を行う。このとき、コアブロック650がキャビティ710内に挿入される。次に、型締めした金型800に溶融樹脂を射出して、鍵の前後方向FBの前後に夫々配置されウェイト200を固定する第1リブ450及び第2リブ460を含む鍵ベース部材400を成形する工程を行う。
【0047】
次に、図13に示すように、キャビティ型700とコア型600とを型開きして、成形された鍵ベース部材400を取り出す製品取出し工程を行う。このようにして、ウェイト200は、インサート成形の要領で、鍵ベース部材400に取り付けられる。なお、ウェイト100を備える白鍵30も同様にインサート成形の要領で成形することができる。
【0048】
白鍵30、黒鍵40は、廃棄の際、以下のようにして樹脂製の鍵ベース部材300,400と、金属製のウェイト100,200とを分別することができる。白鍵30では、例えば、補強リブ304を2か所程度、ニッパーで切断して前側Fに倒せば、ウェイト100を取り外すことができる。又は、第1リブ350や第2リブ360のリブ部352,362や補助リブ370をニッパーで切断し切り取るか、保持部351を左右方向に倒してずらすことで、ウェイト100を取り外すことができる。
【0049】
黒鍵40の場合も同様に、第1リブ450や、第2リブ460のウェイト200に近い箇所をニッパーで切断し切り取るか、左右方向に倒してずらすことで、ウェイト200を取り外すことができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態によれば、鍵盤楽器10は、ウェイト100,200と、ウェイト100,200を固定するリブ500,510を含む鍵ベース部材300,400と、を有する。
【0051】
これにより、ウェイト100,200を鍵ベース部材300,400に確実に取り付けることができると共に、リブ500,510(第1リブ350,450又は第2リブ360,460)の切断のみで容易にウェイト100,200を取り外すことができる。よって、廃棄の際に分別のし易い鍵盤50を備える鍵盤楽器10を提供することができる。
【0052】
また、リブ500,510は、鍵の前後方向FBにおいて、ウェイト100,200の少なくとも前方及び後方の何れか一方を固定する。これにより、更に確実にウェイト100,200を鍵ベース部材300,400に取り付けることができる。
【0053】
また、リブ500,510は、ウェイト100,200における鍵の前後方向FBの中央線に平行な鉛直面上に配置されている。これにより、ウェイト100,200をバランスよく固定することができ、カウンタウェイトとして好適に用いることができる。
【0054】
また、また、鍵ベース部材300は、鍵の配列方向LRからウェイト100を固定する補助リブ370を有する。これにより、更に確実にウェイト100を鍵ベース部材300に取り付けることができる。
【0055】
また、リブ500(第1リブ350)は、鍵ベース部材300の左右の側板303を接続する補強リブ304と接続する。これにより、補強リブ304の切断によっても、容易にウェイト100を取り外すことができる。
【0056】
また、リブ500,510は、黒鍵40に設けられるリブ510を含み、黒鍵40に設けられるリブ510は、押鍵を検出するためのスイッチ61に対応して配置されるリブである第2リブ460(スイッチ押下用リブ461)を含む。これにより、スイッチ61の押下を確実に行うことができる。
【0057】
また、鍵ベース部材300,400の成形方法は、金型800のコア型600に設けられるウェイト挿入部630にウェイト100,200を挿入して配置する工程と、金型800のコア型600とキャビティ型700とを型締めする工程と、型締めした金型800に溶融樹脂を射出して、ウェイト100,200を固定するリブ500,510を含む鍵ベース部材300,400を成形する工程と、を備える。
【0058】
これにより、確実にウェイト100,200を固定しつつ、リブ500,510(第1リブ350,450及び第2リブ360,460)を切断するだけで容易にウェイト100,200を取り外して分別することができる鍵ベース部材300,400の成形方法を提供することができる。
【0059】
また、鍵ベース部材300,400の成形用の金型800は、キャビティ型700に設けられるキャビティ710と、コア型600に設けられるコアブロック650と、を有し、コアブロック650は、リブ成形部651を含むウェイト挿入部630を有し、ウェイト挿入部630は、面積の大きい底面側を外側とする錐台形状の凹状に設けられ、リブ成形部651は、ウェイト挿入部630の錐台形状の外周面から面積の小さい底面に亘って溝状に設けられる。
【0060】
これにより、確実にウェイト100,200を固定しつつ、リブ500,510(第1リブ350,450及び第2リブ360,460)を切断するだけで容易にウェイト100,200を取り外して分別することができる鍵ベース部材300,400の成形用の金型800を提供することができる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
10 鍵盤楽器 11 操作部 20 ケース 21 上ケース 22 下ケース 30 白鍵 30F 白鍵 31 ハンマー押圧部 40 黒鍵 50 鍵盤 100 ウェイト 101 下面 102 外周面 110 凹溝部 300 鍵ベース部材 301 天板 303 側板 303a 左側板 303a1 側面 303b 右側板 303b1 側面 305 段部 305a 接続板 307 突起板 310 木質部材 320 木質部材 321 前木質部材 322 後木質部材 350 第1リブ 351 保持部 351a 外周壁部 351b 下面壁部 352 リブ部 352a 面取部 360 第2リブ 361 保持部 361a 外周壁部 361b 下面壁部 362 リブ部 362a 面取部 370 補助リブ 371 左補助リブ 372 右補助リブ
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13