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特開2024-174137金属材料の処理剤及び塗膜を有する金属材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174137
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】金属材料の処理剤及び塗膜を有する金属材料
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/83 20060101AFI20241206BHJP
【FI】
C23C22/83
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024172393
(22)【出願日】2024-10-01
(62)【分割の表示】P 2019191878の分割
【原出願日】2019-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000229597
【氏名又は名称】日本パーカライジング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 普之
(72)【発明者】
【氏名】福士 英一
(57)【要約】
【課題】塗装金属材料の耐食性を向上させる新たな手段を提供することを課題とする。
【解決手段】金属材料の表面又は表面上に化成皮膜を形成させる化成処理の後処理に用いられる処理剤であって、該処理剤が、水溶性又は水分散性を示す、-NHを有する化合物又は重合体、-NH及び-NH-を有する化合物又は重合体、並びに-NH-を有する化合物又は重合体から選ばれる1種以上の化合物又は重合体(A)、を含む処理剤により、課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウム化成処理、チタン化成処理、ハフニウム化成処理、及びバナジウム化成処理からなる群から選択されるいずれかの化成処理によって金属材料の表面又は表面上に形成されてなる化成皮膜の後処理に用いられる処理剤であって、該処理剤が、
水溶性又は水分散性を示す、-NHを有する化合物又は重合体、-NH及び-NH-を有する化合物又は重合体、並びに-NH-を有する化合物又は重合体から選ばれる1種以上の化合物又は重合体(A)、
を含む処理剤。
【請求項2】
前記処理剤のpHが7.0以上14.0以下である、請求項1に記載の処理剤。
【請求項3】
モリブデン酸イオン及び/又はタングステン酸イオンから選択される少なくとも1種の金属酸イオン(B)をさらに含む、請求項1に記載の処理剤。
【請求項4】
ジルコニウム化成処理、チタン化成処理、ハフニウム化成処理、及びバナジウム化成処理からなる群から選択されるいずれかの化成処理によって形成されてなる化成皮膜を有する金属材料における前記化成皮膜に、請求項1~3のいずれか一項に記載の処理剤を接触させた後、塗装を行うことにより得られる、塗膜を有する金属材料。
【請求項5】
塗膜を有する塗装金属材料の製造方法であって、
金属材料の表面又は表面上に、ジルコニウム化成処理、チタン化成処理、ハフニウム化成処理、及びバナジウム化成処理からなる群から選択されるいずれかの化成処理によって化成皮膜を形成する工程と、
前記化成皮膜に、処理剤を接触させる化成後処理工程と、
前記化成後処理工程を行った、化成皮膜を有する金属材料の表面上に塗装を行う塗装工程と、を有し、
前記処理剤が、
水溶性又は水分散性を示す、-NHを有する化合物又は重合体、-NH及び-NH-を有する化合物又は重合体、並びに-NH-を有する化合物又は重合体からなる群から選ばれる1種以上の化合物又は重合体(A)を含む、塗装金属材料の製造方法。
【請求項6】
前記処理剤のpHが、7.0以上14.0以下である、請求項5に記載の塗装金属材料の製造方法。
【請求項7】
前記塗装工程が、カチオン電着塗装を行う工程を含む、請求項5又は6に記載の塗装金属材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料の表面又は表面上に化成皮膜を形成する化成処理の後処理に用いられる処理剤、及び塗膜を有する金属材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗装金属材料の耐食性を向上させるために、様々な化成処理剤や下地処理剤が開発されている。例えば、特許文献1では、化成処理の前処理に用いられる前処理剤であって、特定の重合体と水とを配合した金属材料の前処理剤、が開示されている。
また、特許文献2では、鋼、亜鉛メッキ鋼、アルミニウム、マグネシウム、および/または亜鉛-マグネシウム合金を含む金属表面を抗腐食前処理するための方法であって、金属表面を、特定のモノマー単位を含むコポリマーを特定量含む水性組成物A、及びチタン、ジルコニウム、およびハフニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む酸性水性組成物B、と接触させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/087320号
【特許文献2】特表2019-518874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塗装金属材料の耐食性を向上させるため、上記前処理剤が提案されているものの、更に他の手段の開発も求められている。本発明は、塗装金属材料の耐食性を向上させる新たな手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有する重合体を含有する処理剤を用いて化成処理の後処理を行うことにより、化成後処理後に形成した塗膜を有する金属材料において優れた耐食性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1]金属材料の表面又は表面上に化成皮膜を形成させる化成処理の後処理に用いられる処理剤であって、該処理剤が、
水溶性又は水分散性を示す、-NHを有する化合物又は重合体、-NH及び-NH-を有する化合物又は重合体、並びに-NH-を有する化合物又は重合体から選ばれる1種以上の化合物又は重合体(A)、
を含む処理剤。
[2]モリブデン酸イオン及び/又はタングステン酸イオンから選択される少なくとも1種の金属酸イオン(B)をさらに含む、[1]に記載の処理剤。
[3][1]又は[2]に記載の処理剤を、化成皮膜を有する金属材料における前記化成皮膜に接触させた後、塗装を行うことにより得られる、塗膜を有する金属材料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、化成皮膜上に塗膜を形成させた場合に耐食性を向上させることができる処理剤、及びその処理剤を、化成皮膜を有する金属材料における前記化成皮膜に接触させた後、塗装を行うことにより得られる、塗膜を有する金属材料を提供することができる
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態に係る処理剤は、金属材料の表面又は表面上に化成皮膜を形成させる化成処理の後に行う後処理に用いられる処理剤である。該処理剤は塗装前処理剤でもある。すなわち、該処理剤は化成処理後、且つ塗装前に用いられる。該処理剤は、水溶性又は水分散性を示す、-NHを有する化合物又は重合体、-NH及び-NH-を有する化合物又は重合体、並びに-NH-を有する化合物又は重合体から選ばれる1種以上の化合物又は重合体(A)、を配合した処理剤である。
以下、本実施形態に係る処理剤、その処理剤を用いた金属材料の後処理方法、及び化成皮膜を有する金属材料の製造方法等を、順に説明する。なお、本発明は、その要旨を含む範囲で任意に変更可能であり、以下で説明する具体的な実施形態のみに限定されない。
【0009】
<化合物又は重合体(A)>
化合物又は重合体(A)は、-NHを有する化合物又は重合体、-NH及び-NH-を有する化合物又は重合体、並びに-NH-を有する化合物又は重合体から選ばれる1種以上を含む。そして、いずれも水溶性又は水分散性を示し、分岐鎖を有してもよく、環状構造を有してもよく、分岐鎖と環状構造の両方を有してもよい。重合体は、単重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。なお、単重合体及び共重合体は塩を形成するものであってもよい。塩としては塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩などを挙げることができる。なお「水分散性」とは水に対して濡れ性を有することをいう。
【0010】
-NHを有する化合物又は重合体としては、化合物又は重合体における副単位の置換基の少なくとも一部が、-NHを有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、エチレンジアミン、3,3-ジメチル-2-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等を挙げることができるがこれらに制限されるものではない。
-NH及び-NH-を有する化合物又は重合体としては、化合物又は重合体における副単位の置換基の少なくとも一部が、-NH及び-NH-を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N,N’-ビス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘプタエチレンオクタミン、ノナエチレンデカミン等を挙げることができるがこれらに制限されるものではない。
-NH-を有する化合物又は重合体としては、化合物又は重合体における副単位の置換基の少なくとも一部が、-NH-を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N-エチルメチルアミン、N-メチルイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ポリジアリルアミン、カチオン性アクリル樹脂、カチオン性ウレタン樹脂等を挙げることができるがこれらに制限されるものではない。
【0011】
上記共重合体としては、例えば、ビニルアミン、アリルアミン、ジアリルアミン等を含む共重合体であれば特に制限されるものではなく、アリルアミンとジアリルアミンの共重合体、ビニルアミンとアリルアミンの共重合体、ビニルアミンとジアリルアミンの共重合体等を挙げることができる。その他カチオン性ウレタンポリマーを含む共重合体も挙げることができる。なお、共重合体は、交互共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよい。
【0012】
前記化合物又は重合体(A)は、本実施形態に係る処理剤に一種又は二種以上用いることができる。二種以上の組み合わせとしては、例えば、ポリアリルアミンとポリエチレン
イミン、ポリアリルアミンとポリジアリルアミン、ポリアリルアミンとポリビニルアミン、ポリエチレンイミンとポリジアリルアミン、ポリエチレンイミンとポリビニルアミン、ポリジアリルアミンとポリビニルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
本実施形態に用いる化合物又は重合体(A)の重量平均分子量は、通常、60~300000、好ましくは60~100000を挙げることができる。
【0014】
水溶性又は水分散性を示す、上記-NHを有する重合体として、ポリアリルアミンを用いる場合、その重量平均分子量としては、300~5000程度を挙げることができる。
水溶性又は水分散性を示す、上記-NH及び-NH-を有する重合体として、ポリエチレンイミンを用いる場合、その重量平均分子量としては、300~100000程度を挙げることができる。
水溶性又は水分散性を示す、上記-NH-を有する重合体として、ポリジアリルアミンを用いる場合、その重量平均分子量としては、300~50000程度を挙げることができる。
水溶性又は水分散性を示す、上記-NH-を有する重合体として、カチオン性ウレタン樹脂を用いる場合、その重量平均分子量としては、1000~1000000程度を挙げることができる。
なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透カラムクロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレンで換算した値である。
【0015】
本実施形態に係る処理剤の調製に使用可能な化合物又は重合体(A)の配合量としては、特に制限されるものではないが、処理剤の全量に対して、好適には固形分質量として1~20000mg/Lの範囲内であり、より好適には、固形分質量として5~10000mg/Lの範囲内である。
【0016】
<金属酸イオン(B)>
本実施形態の処理剤は、モリブデン酸イオン及び/又はタングステン酸イオンから選択される少なくとも1種の金属酸イオン(B)を含有することが好ましい。金属酸イオン(B)の供給源は、水性媒体に混合させることで金属酸イオン(B)を提供できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸カルシウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸リチウム、タングステン酸カルシウムなどがあげられる。これらは1種のみを用いてもよいが、2種以上を用いてもよい。
処理剤における金属酸イオン(B)の含有量は特に限定されないが、モリブデン及び/又はタングステン換算で通常0.01~1000mmоl/Lの範囲内であり、好ましくは0.1~500mmоl/Lの範囲内である。
【0017】
(有機酸)
本実施形態に係る処理剤は、以下の有機酸をさらに含んでもよい。本実施形態に係る処理剤が有機酸をさらに含むと、本発明の効果が一層向上する。
有機酸としては特に制限されるものではなく、例えば1つのカルボキシル基及び/又はメシル基を有する炭素数3以下の有機酸であってよい。1つのカルボキシ基及び/又はメシル基を有する炭素数3以下の有機酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などが挙げられる。
前記有機酸は、本実施形態に係る処理剤に一種又は二種以上を用いることができる。二
種以上の組み合わせとしては、例えば、ギ酸と酢酸、ギ酸と乳酸、ギ酸とメタンスルホン酸、酢酸と乳酸、酢酸とメタンスルホン酸、乳酸とメタンスルホン酸などが挙げられる。
【0018】
有機酸の配合量としては、特に限定されるものではないが、処理剤の全量に対して、好適には10~10000mg/Lの範囲であり、より好適には100~5000mg/Lの範囲内である。
【0019】
本実施形態に係る処理剤のpHは、特に制限されるものではないが、通常7.0以上であり、8.0以上であってよく、9.0以上であってよく、10.0以上あってよく、また通常14.0以下であり、13.0以下であってよく、12.0以下であってよい。ここで、本明細書でのpHは、pHメーターを用い、25℃での処理剤について測定した値である。処理剤のpHを前記範囲にするために、pH調整剤を用いてもよい。pHを上昇させたい場合に使用可能なpH調整剤は、特に制限されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液、水酸化カリウムの水溶液、アンモニア水、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等が好ましい。一方、pHを下げたい場合に使用可能なpH調整剤は、特に制限されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、硝酸、乳酸、メタンスルホン酸等が好ましい。なお、これらのpH調整剤は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0020】
本実施形態に係る処理剤は液体として調製される。その液の製造方法については特に制限されるものではないが、例えば、上記化合物又は重合体(A)と水とを配合して調製でき、さらに必要に応じて上記金属酸イオン(B)の供給源や、上記有機酸を配合することにより調製できる。液体媒体としては、特に限定されるものではないが、水(脱イオン水、蒸留水)が好ましい。また、液体媒体としては、上記化合物又は重合体(A)が溶解又は分散可能である限り、親水性溶媒(例えば低級アルコール)を水に混合した混合溶媒を用いてもよい。
【0021】
なお、本実施形態に係る処理剤を用いて化成皮膜を有する金属材料を後処理すると、化成皮膜を有する金属材料の一部が溶解して処理剤中に金属成分が混入する場合があるが、それゆえ、処理剤には、Fe、Zn、Al、Mgなどの金属成分が含まれていてもよい。また、操業上、不回避的に混入してくる成分、たとえばZrなども同様である。これら成分は処理剤に不可避的に混入されていてもよく、処理剤に意図的に含ませてもよい。そして、前記金属成分調整用の化合物を供給源とする対イオンおよびpH調整用の酸化合物を供給源とする酸成分の例として、炭酸イオン、硝酸イオン、珪酸イオン、スルホン酸イオンなどを酸や塩のアニオン成分として混入してもよい。
【0022】
(金属材料の後処理方法)
本発明の別の実施形態は、上述した処理剤を、化成皮膜を有する金属材料に接触させる後処理方法にも関する。
【0023】
後処理方法は、化成皮膜を有する金属材料の表面又は表面上に、本発明の実施形態に係る処理剤を接触させる後処理工程を含む。なお、後処理工程の後に化成皮膜を有する金属材料の水洗が含まれていてもよい。また、後処理工程の前、且つ化成処理工程後に化成皮膜を有する金属材料の水洗が含まれていてもよい。
更に、化成処理工程前に前処理工程が含まれていてもよい。前処理工程の前には、脱脂と称される金属材料の表面の油分及び付着物の除去を行う脱脂処理工程を含んでいてもよい。脱脂処理工程は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。脱脂処理工程の後に水洗を行ってもよいし、行わなくてもよい。また、前処理工程の前に、酸洗と称される金属材料の表面の酸化鉄及び酸化亜鉛などの除去を行う酸洗処理及び/又は酸化膜除去処理を含んでいてもよい。酸洗処理及び/又は酸化膜除去処理の方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。
【0024】
化成皮膜を有する金属材料と処理剤との接触方法としては、公知の接触方法、例えば、浸漬処理法、スプレー処理法、流しかけ処理法、又はこれらの組み合わせ等の処理法が挙げられる。処理剤の接触は、所定の温度で一定時間行うことが好ましい。接触温度は、5℃以上60℃以下が好ましく、10℃以上50℃以下がより好ましいが、これらの温度に制限されるものではない。また、接触時間は、5~600秒が好ましく、10~300秒がより好ましいが、これらの処理時間に制限されるものではない。
【0025】
本発明の別の実施形態は、上述した処理剤を金属材料の表面に接触させる前に、金属材料に化成皮膜を形成させる化成処理工程を含む、化成皮膜を有する金属材料の製造方法にも関する。
化成処理工程は、化成皮膜を形成する処理であれば特段限定されず、例えば、ジルコニウム化成処理工程、チタン化成処理工程、ハフニウム化成処理工程、バナジウム化成処理工程、等が挙げられる。上記各種化成処理工程は、1つの工程のみ行ってもよく、2以上の工程を組み合わせて順次行ってもよい。また、上記2以上の工程を複数組み合わせる場合は、各種後工程後に水洗を行ってもよいし、行わなくてもよいし、一部の水洗を省略してもよい。 化成処理工程における処理温度、接触時間は、化成処理工程の種類、化成処理剤の濃度等に応じて、適宜設定できる。
【0026】
本発明の実施形態は、上記化成皮膜を有し、化成後処理を行った化成皮膜を有する金属材料の表面上に、塗装を行う塗装工程を含む、塗装金属材料の製造方法にも関する。また、上記製造方法により得られた化成皮膜を有する金属材料の表面上に、塗膜を有する塗装金属材料にも関する。塗装方法は特に限定されず、公知の方法、例えば、転がし塗り、電着塗装(例えば、カチオン電着塗装)、スプレー塗装、ホットスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電塗装(例えば、静電粉体塗装)、ローラーコーティング、カーテンフローコーティング、ハケ塗り、バーコーティング、流動浸漬法等の方法を適用することができる。なお、塗装工程後に、塗装した金属材料の表面上における塗料を乾燥させる乾燥工程(焼付工程や硬化工程を含む)などを行ってもよい。
また、塗装工程前に、化成皮膜を有し、化成後処理を行った化成皮膜を有する金属材料の表面上を、水洗してもよいし、水洗しなくてもよい。また、塗装工程前に、水洗後の、或いは、未水洗の、化成皮膜を有する金属材料における表面を乾燥してもよいし、乾燥しなくてもよい。
【0027】
上記塗料としては、例えば、油性塗料、繊維素誘導体塗料、フェノール樹脂塗料、アルキド樹脂塗料、アミノアルキド樹脂塗料、尿素樹脂塗料、不飽和樹脂塗料、ビニル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、シリコン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、さび止めペイント、防汚塗料、粉体塗料、カチオン電着塗料、アニオン電着塗料、水系塗料、溶剤塗料等の、公知の塗料が挙げられる。なお、塗装工程は、同一又は異なる各種塗料を用いて、1の塗装を行っても、2以上の塗装を行ってもよい。なお、乾燥工程は、塗装した塗料を乾燥して硬化させる処理である。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、減圧乾燥、対流型熱乾燥(例えば、自然対流型熱乾燥、強制対流型熱乾燥)、輻射型乾燥(例えば、近赤外線乾燥、遠赤外線乾燥)、紫外線硬化乾燥、電子線硬化乾燥、ベーポキュア、焼付乾燥等の乾燥方法が挙げられる。なお、これらの乾燥方法は、1つ実施してもよいし、2以上を組み合わせて実施してもよい。
【0028】
上記カチオン電着塗装としては、公知の方法を適用できる。例えば、塗料として、アミン付加エポキシ樹脂と、硬化成分としてブロック化ポリイソシアネート硬化剤とを含有するカチオン電着塗料を用い、この塗料に化成皮膜を有する金属材料を浸漬する方法等が挙げられる。カチオン電着塗装は、例えば、塗料の温度を所定の温度に保持し、塗料を攪拌した状態で、整流器を用いて化成皮膜を有する金属材料に電圧を陰極方向に印加すること
により行われる。このようにカチオン電着塗装を行った上記金属材料に対して、水洗及び焼き付けを実施することにより化成皮膜上に塗膜を形成させることができる。焼き付けは、所定の温度範囲で一定時間行われる。具体的には、170℃で20分間行われる。尚、カチオン電着塗料を用いたカチオン電着塗装方法を適用する場合には、例えば、脱脂工程、前処理工程、各種化成処理工程、化成後処理工程等で用いる処理剤中のナトリウムイオン濃度を質量基準で500ppm未満に制御することが好ましい。
【0029】
粉体塗料を用いた、スプレー塗装、静電粉体塗装、流動浸漬法等の塗装方法としては、公知の方法が適用できる。粉体塗料としては、例えば、ポリエステル樹脂と、硬化剤として、ブロックイソシアネート硬化剤、β-ヒドロキシアルキルアミド硬化剤(例えば、特開2011-88083号公報参照)又はトリグリシジルイソシアヌレートとを含有するものを挙げることができる。焼き付けは、所定の温度範囲で一定時間行われる。具体的には、150~250℃で20分間行われる。
【0030】
上記溶剤塗料を用いた、スプレー塗装、静電塗装、バーコーティング等の塗装方法としては、公知の方法が適用できる。溶剤塗料としては、例えば、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂と、シンナー等の有機溶剤とを含有するものを挙げることができる。焼き付けは、所定の温度範囲で一定時間行われる。具体的には、130℃で20分間行われる。
【0031】
塗装工程により得られる塗膜は、単層であっても複層であってもよい。複層である場合、各種塗膜を形成するための塗料、該塗料を用いた塗装方法、塗装した金属材料の乾燥方法等は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0032】
本実施形態において、後処理工程の対象として使用可能な金属材料の種類については、特に限定されない。その例には、鉄鋼材料(例えば、冷間圧延鋼板、熱間圧延鋼板、高張力鋼板、工具鋼、合金工具鋼、球状化黒鉛鋳鉄、ねずみ鋳鉄等);めっき材料、例えば、亜鉛めっき材(例えば、電気亜鉛めっき、溶融亜鉛めっき等)、亜鉛合金めっき材(例えば、合金化溶融亜鉛めっき、Zn-Al合金めっき、Zn-Al-Mg合金めっき、電気亜鉛合金めっき等)、アルミめっき材等;アルミニウム材又はアルミニウム合金材(例えば、1000系、2000系、3000系、4000系、5000系、6000系、アルミニウム鋳物、アルミニウム合金鋳物、ダイキャスト材等);マグネシウム材又はマグネシウム合金材;亜鉛材料、例えば純亜鉛材、亜鉛合金材;錫材料、例えば純錫材、錫合金材;鉛材料、例えば純鉛材、鉛合金材;が含まれる。
【0033】
化成皮膜を有する金属材料は、上記化成皮膜を有する金属材料の製造方法により製造することができる。化成皮膜としては、例えば、ジルコニウム化成皮膜、チタン化成皮膜、ハフニウム化成皮膜、バナジウム化成皮膜、などが挙げられる。化成皮膜は1層でも2層以上でもよい。ここで、ジルコニウム化成皮膜、チタン化成皮膜、ハフニウム化成皮膜及び/又はバナジウム化成皮膜を形成した場合、形成された化成皮膜の質量は、金属材料表面の単位面積あたり、化成皮膜におけるジルコニウム、チタン、ハフニウム、又はバナジウムの質量で5mg/m以上500mg/m以下であることが好ましく、10mg/m以上250mg/m以下であることがより好ましいが、この範囲に制限されるものではない。2種以上の金属が含まれる場合は、その合計が前記範囲内であるのが好ましい。
【0034】
ジルコニウム化成皮膜、チタン化成皮膜、ハフニウム化成皮膜、バナジウム化成皮膜等の化成皮膜におけるジルコニウム、チタン、ハフニウム、又はバナジウムの量は、化成皮膜を濃硝酸にて溶解した後、ICP発光分光分析により測定することができる。また、化成皮膜を有する金属材料を蛍光X線法で分析することにより測定することができる。
【0035】
塗装金属材料は、上記塗装金属材料の製造方法により製造することができる。ここで、塗装金属材料に形成された塗膜は、単層であっても複層であってもよい。複層である場合、各種層の塗料、塗装方法、乾燥方法等は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。また、塗膜の厚さは100μmを超えるような厚いものでもよいし、5μmを下回るような薄いものでもよい。例えば電着塗装の場合、塗膜の厚さは、一般的には、約10~30μmとなるように塗装されるが、100μmのように厚くてもよく、3μmのように薄くてもよい。
【実施例0036】
以下、実施例により本発明の効果を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。
【0037】
<化成後処理剤の調製>
表1に示すとおり、化合物又は重合体(A)と、金属酸イオン(B)の供給源と、を所定モル濃度となるように水に添加することにより、化成後処理剤1~33を調製した。なお、化成後処理剤の調製には、化合物又は重合体(A)及び金属酸イオン(B)の供給源として、下記A1~A15及びB1~B4を用いた。化成後処理剤のpHは10とした。
A1;エチレンジアミン 東京化成工業(株)
A2;ジエチレントリアミン 東京化成工業(株)
A3;トリエチレンテトラミン 東京化成工業(株)
A4;テトラエチレンペンタミン 東京化成工業(株)
A5;ペンタエチレンヘキサミン 東京化成工業(株)
A6;エポミン(登録商標)SP-200 (株)日本触媒
A7;1,3-ジアミノペンタン 東京化成工業(株)
A8;2-メチル-1,3-プロパンジアミン 東京化成工業(株)
A9;3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン 東京化成工業(株)
A10;トリス(3-アミノプロピル)アミン 東京化成工業(株)
A11;1,3-ジアミノ-2-プロパノール 東京化成工業(株)
A12;PAA-01 ニットーボーメディカル(株)
A13;PAS-410C ニットーボーメディカル(株)
A14;スーパーフレックス620 第一工業製薬(株)
A15;PAS-21CL ニットーボーメディカル(株)
B1;モリブデン酸ナトリウム二水和物 純正化学(株)
B2;モリブデン酸アンモニウム(4水和物) キシダ化学(株)
B3;タングステン酸ナトリウム二水和物 ナカライテスク(株)
B4;パラタングステン酸アンモニウム 日本無機化学工業(株)
【0038】
【表1】
【0039】
[塗装金属材料の作製]
<金属材料>
金属材料として、JIS G3141:2011で規定された冷間圧延軟鋼板(SPC
C:厚さ0.8mm)、JIS G3302:2012で規定された溶融亜鉛めっき鋼板
(SGCC:厚さ0.8mm)、JIS G3302:2012で規定された合金化溶融
亜鉛めっき鋼板(SCGA:厚さ0.8mm)、およびJIS H4000:2014で
規定されたアルミニウム合金板(A6061:厚さ0.8mm)を準備し、それぞれを縦70mm×横150mmのサイズに切断したものを用いた。後述の塗装金属材料の評価では、金属材料のエッジ部に生じたバリが存在する面を、評価面とした。このとき生じたバリの高さは凡そ100μmであった。
【0040】
<金属材料に対する脱脂処理>
各種金属材料を、アルカリ脱脂剤[ファインクリーナーE2093(日本パーカライジング株式会社製)の、A剤を13g/L、B剤を11g/Lとそれぞれなるように水に混合した水溶液]に、45℃で2分間浸漬し、金属材料の表面上における油分や汚れを取り除いた。その後、金属材料の表面を水洗した。
【0041】
<化成処理>
上記脱脂処理を行った各種金属材料を、ジルコニウム化成処理剤(パルシード1500、日本パーカライジング株式会社製)の50g/L水溶液に40℃で120秒間浸漬して、ジルコニウム化成皮膜が形成された金属材料を作製した。
なお、実施例36では、脱脂処理を行った金属材料(SCGA)を、ジルコニウム化成処理剤(パルシード1500、日本パーカライジング株式会社製)の50g/L水溶液にKBM-603(信越化学工業(株))を100mg/L添加した水溶液に、40℃で120秒間浸漬して、ジルコニウム化成皮膜が形成された金属材料を作製した。
また、実施例37では、脱脂処理を行った金属材料(SCGA)を、ジルコニウム化成処理剤(パルシード1500、日本パーカライジング株式会社製)の50g/L水溶液に硫酸銅(II)五水和物(ナカライテスク(株))を銅として10mg/L添加した水溶液に、40℃で120秒間浸漬して、ジルコニウム化成皮膜が形成された金属材料を作製した。
【0042】
<金属材料に対する後処理>
上記化成処理を施した各種金属材料(実施例1~37及び比較例2)を、表2に示す各種化成後処理剤に25℃で90秒間浸漬させて後処理を行った。
【0043】
<金属材料に対する電着塗装処理>
上記ジルコニウム化成皮膜が形成された金属材料を純水で水洗した後、各種金属材料を陰極とし、カチオン電着塗料(GT-100、関西ペイント社製)を用いて、200Vに定めた電圧にて180秒間の電解を行い、金属材料の全表面に塗膜成分を析出させた。その後、純水で水洗し、170℃(PMT:焼付け時の金属材料の最高温度)で20分間焼き付けて塗装金属材料を作製した。なお、塗装金属材料の塗膜厚は20μmとなるように調整した。このとき作製した塗装金属材料を表2、3に示す通り、実施例1~37及び比較例1、2とした。なお、比較例1では、化成後処理を実施していない。
【0044】
【表2】


【0045】
【表3】
【0046】
<耐食性能評価>
上記準備した実施例1~37及び比較例1、2の各塗装金属材料のエッジのバリ部における耐食性能を確認するため、各塗装金属材料を、複合サイクル試験機に入れ、JASO-M609-91に則り複合サイクル試験を100サイクル実施した。100サイクル実施後、切断時に生じたバリからの最大膨れ幅を測定し、以下に示す評価基準に従ってエッジのバリ部耐食性を評価した。なお、エッジのバリについて評価を行うため、各種塗装金属材料のエッジ及び裏面にはテープシールを行っていない。結果を表4及び5に示す。なお、評価基準B以上を実用可能範囲とした。
(評価基準)
S:最大膨れ幅が1.5mm未満である。(最も優れる)
A:最大膨れ幅が1.5mm以上2.5mm未満である。
B:最大膨れ幅が2.5mm以上5.0mm未満である。
C:最大膨れ幅が5.0mm以上である。
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】