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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017414
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20240201BHJP
【FI】
F16H57/04 J
F16H57/04 Q
F16H57/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120035
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】山中 駿平
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA02
3J063AB02
3J063AB22
3J063AC03
3J063BA11
3J063BB50
3J063CA01
3J063CB38
3J063CB43
3J063XD03
3J063XD33
3J063XD36
3J063XD44
3J063XD62
3J063XD72
3J063XD73
3J063XE15
3J063XE18
(57)【要約】
【課題】ギヤのオイルによる潤滑を効率的に行うことが可能な変速機を提供する。
【解決手段】変速機1は、回転体50と、回転体50に接続された第1回転軸21と、第1回転軸21の外周側に、第1回転軸21に対して相対回転可能に配された外筒部25と、第1回転軸21に支持された第1ギヤ22と、第1回転軸22と隣接して配された第2回転軸31と、第2回転軸21に支持されると共に第1ギヤ22と噛合う第2ギヤ32と、外筒部25の外周に嵌め込まれたブッシュ40と、ブッシュ40及び外筒部25の間の隙間を通じてオイルを流入可能に形成されたオイル流路41と、を備える。変速機1において、オイル流路41は、オイルを排出可能な開口部44を有し、開口部44は、第1回転軸21及び第2回転軸31の間に配されると共に、第1ギヤ22及び第2ギヤ32における歯部22a,32aの少なくとも一方における上方側に配されていることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と、
前記回転体に接続された第1回転軸と、
前記第1回転軸の外周側に、前記第1回転軸に対して相対回転可能に配された外筒部と、
前記第1回転軸に支持された第1ギヤと、
前記第1回転軸と隣接して配された第2回転軸と、
前記第2回転軸に支持されると共に前記第1ギヤと噛合う第2ギヤと、
前記外筒部の外周側に嵌め込まれたブッシュと、
前記ブッシュ及び前記外筒部の間の隙間を通じてオイルを流入可能に形成されたオイル流路と、
を備え、
前記オイル流路は、前記オイルを排出可能な開口部を有し、
前記開口部は、前記第1回転軸及び前記第2回転軸の間に配されると共に、前記第1ギヤ及び前記第2ギヤの少なくとも一方における歯部の上方側に配されていること、を特徴とする変速機。
【請求項2】
前記開口部が、噛合い部における前記第1ギヤ及び前記第2ギヤの接線方向かつ上方側に位置するように配されていること、を特徴とする請求項1に記載の変速機。
【請求項3】
前記開口部は、少なくとも下端側を覆う遮蔽部を備えること、を特徴とする請求項1又は2に記載の変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)や自動変速機(AT:Automatic Transmission)などの変速機が知られている(例えば、特許文献1)。上述した特許文献1に記載の変速機では、各種のギヤ機構が用いられている。前記ギヤ機構におけるギヤやベアリングは、摩耗を防止するために潤滑する必要がある。
【0003】
そのため、従来の変速機には、ベアリングの潤滑用オイルを供給するためのオイルポンプが設けられており、当該オイルポンプによってオイルが強制的にベアリングに供給されている。また、ベアリングに供給されたオイルの一部がギヤに供給されている。これにより、ベアリング及びギヤがオイルで潤滑されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-139592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の変速機は、プライマリ軸がベアリングにより回転可能に支持されており、前記ベアリングと隣接して入力軸ギヤが前記プライマリ軸に支持されている。また、オイルポンプによって供給されるオイルは、ベアリング側から入力軸ギヤに向けて供給されている。従って、オイルポンプによってベアリングに供給されたオイルは、オイルポンプから送出される勢いでベアリングを介して入力軸ギヤに供給されるものとされている。
【0006】
しかしながら、従来の変速機においては、オイルポンプによって供給されたオイルがベアリングに供給されるため、供給されたオイルをギヤまで到達させるためには、オイル供給量を増大させる必要があった。従って、従来の変速機においては、オイルポンプの仕事量の増大、かつ、ベアリング等の機械的ロスの増大により、燃費が悪化する問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、ギヤのオイルによる潤滑を効率的に行うことが可能な変速機を提供することを目的とする。また、本発明は、オイルポンプの仕事量の増大を抑制し、かつ、ベアリング等の機械的ロスを低減可能な変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の変速機は、回転体と、前記回転体に接続された第1回転軸と、前記第1回転軸の外周側に、前記第1回転軸に対して相対回転可能に配された外筒部と、前記第1回転軸に支持された第1ギヤと、前記第1回転軸と隣接して配された第2回転軸と、前記第2回転軸に支持されると共に前記第1ギヤと噛合う第2ギヤと、前記外筒部の外周側に嵌め込まれたブッシュと、前記ブッシュ及び前記外筒部の間の隙間を通じてオイルを流入可能に形成されたオイル流路と、を備え、前記オイル流路は、前記オイルを排出可能な開口部を有し、前記開口部は、前記第1回転軸及び前記第2回転軸の間に配されると共に、前記第1ギヤ及び前記第2ギヤの少なくとも一方における歯部の上方側に配されていること、を特徴とするものである。
【0009】
上述した変速機は、オイルを、ブッシュを介してオイル流路に流入させることができる。また、上述した変速機は、前記オイル流路における開口部を通じてオイル流路内のオイルを第1ギヤ及び第2ギヤの少なくとも一方における歯部の上方側に供給(排出)することができる。ここで、オイル流路に流入するオイルは、例えば、回転体の周囲や第1回転軸の周囲のオイル(例えば、リークオイル)とされている。そのため、上述した変速機は、例えば、ベアリング潤滑用オイルポンプ(単に、オイルポンプとも称する)で供給されるベアリング潤滑用のオイルと異なる経路によりオイルを第1ギヤ及び第2ギヤ(単に、ギヤとも称する)に供給できる。言い換えれば、上述した変速機は、例えば、リークオイルをオイル流路に流入させて、ギヤにおける歯部に供給できる。従って、上述した変速機は、オイルポンプの仕事量の増大を抑制し、かつ、ベアリング等の機械的ロスを低減できる。これにより、変速機を利用する車両等の燃費向上が期待できる。また、上述した変速機は、ベアリングへのオイルの供給量の増大を抑制できるので、ベアリングの機械的ロスを軽減できる。このように、上述した変速機は、リークオイル等を有効的に活用して、効率的にギヤを潤滑できる。
【0010】
ここで、第1ギヤ及び第2ギヤは、それぞれ開口部(上方側)に向けて回転されるとよい。上述した変速機は、かかる構成とすることにより、第1ギヤ及び第2ギヤに供給されたオイルが下方側に落下することを低減できる。そのため、上述した変速機は、オイルによる第1ギヤ及び第2ギヤの潤滑をより効率的に行うことができる。
【0011】
ここで、第1ギヤ及び第2ギヤに掛かる負荷は、第1ギヤ及び第2ギヤにおける?合い部において最も大きくなることが想定される。そのため、潤滑のためのオイルは、第1ギヤ及び第2ギヤにおける噛合い部に供給することが望ましいとの知見が得られた。
【0012】
(2)そこで、かかる知見に基づき、上述した本発明の変速機は、前記開口部が、前記第1ギヤ及び前記第2ギヤの噛合い部に向けて突出形成されており、前記開口部が、前記噛合い部の上方側に位置するように配されていること、を特徴とするとよい。
【0013】
上述した変速機は、かかる構成とすることにより、第1ギヤ及び第2ギヤの噛合い部の上方側にオイルを供給できる。そのため、上述した変速機は、第1ギヤ及び第2ギヤの双方にオイルを供給できる。これにより、上述した変速機は、負荷の大きいギヤの噛合い部を確実に潤滑できるので、ギヤの摩耗や損傷を効果的に抑制できる。
【0014】
(3)上述した本発明の変速機は、前記開口部が、前記噛合い部における前記第1ギヤ及び前記第2ギヤの接線方向かつ上方側に位置するように配されていること、を特徴とするとよい。
【0015】
上述した本発明の変速機は、かかる構成とすることにより、第1ギヤ及び第2ギヤの双方に均等にオイルを供給することができる。これにより、上述した変速機は、第1ギヤ及び第2ギヤの双方を確実に潤滑できる。
【0016】
(4)上述した本発明の変速機は、前記開口部が、少なくとも下端側を覆う遮蔽部を備えること、を特徴とするとよい。
【0017】
上述した変速機は、遮蔽部を備えているので、第1ギヤ及び第2ギヤ(以下、総称してギヤとも称する)によって跳ね上げられたオイルを遮蔽部で反射させて、再びギヤに供することができる。これにより、上述した変速機は、開口部から排出されるオイルを効率的に利用できるので、オイル流路に流入するオイルが少ない場合であっても、効率的にギヤの潤滑を行うことができる。また、上述した変速機は、開口部の下端側が遮蔽部によって覆われているので、ギヤによって跳ね上がられたオイルが開口部から逆流(進入)することを抑制できる。そのため、上述した変速機は、開口部からスムーズにオイルを排出してギヤに供することができる。
【0018】
(5)上述した本発明の変速機は、前記回転体が、トルクコンバータであること、を特徴とするとよい。
【0019】
上述した変速機は、かかる構成とすることにより、トルクコンバータを有する変速機に好ましく利用できる。そのため、変速機の自動化が期待できる。
(6)上述した本発明の変速機は、無段変速機又は自動変速機として構成されていること、を特徴とするとよい。
【0020】
上述した変速機は、上述したような構成とすることにより、無段変速機(CVT)又は自動変速機(AT)に適した構成とすることができる。これにより、無段変速機や自動変速機におけるギヤをオイルにより効率的に潤滑することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ギヤのオイルによる潤滑を効率的に行うことが可能な変速機を提供することができる。また、本発明によれば、オイルポンプの仕事量の増大を抑制し、かつ、ベアリング等の機械的ロスを低減可能な変速機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る変速機の断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る変速機の要部拡大断面図である。
図3】本発明の変速機を構成するオイル流路を開口部側から見た要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る変速ユニット1(変速機1とも称する)について、図1図3を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、変速機1が無段変速機10(CVT10とも称する)として構成されている場合を例として説明する。また、これらの図は模式図であって、必ずしも大きさを正確な比率で記したものではないことに留意されたい。
【0024】
まず、本発明の変速ユニット1について、図1を参照しながら説明する。
【0025】
本実施形態に係る変速ユニット1(動力伝達装置)は、例えば、車両に搭載され、走行用の駆動源としてのエンジン2が発生する動力を変速させるユニットである。なお、本実施形態で例示する変速ユニット1が搭載される車両は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)ベースの2輪駆動車である。なお、トランスファを設けることにより、4WD(four-wheel-drive:4輪駆動)車にも利用することができる。
【0026】
エンジン2は、たとえば、3気筒4ストロークエンジンであり、クランクシャフトが車体の前後方向に対して縦向きになる縦置きで搭載される。エンジン2の気筒数は、3気筒に限らず、4気筒以上であってもよいし、2気筒以下であってもよい。また、エンジン2のストローク数は、4ストロークに限らず、2ストロークであってもよい。
【0027】
変速ユニット1(動力伝達装置)は、ユニットケース11、トルクコンバータ50(回転体50とも称する)、及びCVT10(Continuously Variable Transmission:無段変速機)を有している。また、変速ユニット1には、前進クラッチ93、及び後進クラッチ94が設けられている。
【0028】
変速ユニット1は、収容体をなすユニットケース11内に、トルクコンバータ50、及びCVT10を収容した構成となっている。なお、ユニットケース11は、トルクコンバータ50、CVT10を収容するトランスミッションケース11a、及びトルクコンバータ50とCVT10とを隔てる隔壁11bを含んでいる。
【0029】
<トルクコンバータ>
トルクコンバータ50は、ユニットケース11内に収容されている。トルクコンバータ50は、図1及び図2に示すように、フロントカバー51、ポンプインペラ52、タービンハブ53、タービンランナ54、ロックアップ機構55、及びステータ56を備えている。
【0030】
フロントカバー51は、車両(車体)の前後方向に延びる入力軸21(第1回転軸21とも称する)を中心に略円板状に延び、その外周端部がエンジン2側と反対側(後述する無段変速機構30側)である後側に屈曲した形状をなしている。フロントカバー51の中心部は、前側に膨出している。この膨出した部分には、エンジン2のクランクシャフトが相対回転不能に結合される。
【0031】
ポンプインペラ52は、フロントカバー51の後側に配置されている。ポンプインペラ52の外周端部は、フロントカバー51の外周端部に接続され、回転軸線を中心にフロントカバー51と一体回転可能に設けられている。ポンプインペラ52の内面には、複数のブレード57が放射状に並べて配置されている。ポンプインペラ52は、入力軸21を中心に略円板状に延び、内周部分が後方側に膨出している。また、ポンプインペラ52は、入力軸21に沿って、後方側に円筒状に突出する後方突出部52aを有している。
【0032】
タービンハブ53は、フロントカバー51とポンプインペラ52との間に配置されている。
【0033】
タービンランナ54は、タービンハブ53に固定されている。タービンランナ54のポンプインペラ52との対向面には、複数のブレード58が放射状に並べて配置されている。
【0034】
ロックアップ機構55は、ロックアップピストン61、及びダンパ機構62を備えている。
【0035】
ロックアップピストン61は、略円環板状をなし、その内周端部がタービンハブ53に外嵌されて、フロントカバー51とタービンランナ54との間に位置している。ロックアップピストン61に対してタービンランナ54側の係合側油室63の油圧がフロントカバー51側の解放側油室64の油圧よりも高いと、その差圧により、ロックアップピストン61がフロントカバー51側に移動する。そして、ロックアップピストン61がフロントカバー51に押し付けられると、ポンプインペラ52とタービンランナ54とが直結(ロックアップオン)される。逆に、解放側油室64の油圧が係合側油室63の油圧よりも高いと、その差圧により、ロックアップピストン61がタービンランナ54側に移動する。ロックアップピストン61がフロントカバー51から離間した状態では、ポンプインペラ52とタービンランナ54との直結が解除(ロックアップオフ)される。
【0036】
ダンパ機構62は、ポンプインペラ52とタービンランナ54との直結時にエンジン2からの振動を減衰するための機構である。
【0037】
ステータ56は、ポンプインペラ52とタービンランナ54との間に配置されている。
【0038】
ロックアップオフの状態において、エンジントルクによりポンプインペラ52が回転すると、ポンプインペラ52からタービンランナ54に向かうオイルの流れが生じる。このオイルの流れがタービンランナ54のブレード58で受けられて、タービンランナ54が回転する。このとき、トルクコンバータ50の増幅作用が生じ、タービンランナ54には、エンジントルクよりも大きなトルクが発生する。
【0039】
<CVT>
CVT10は、図1に示すように、トランスミッションケース11a内に収容されている。トランスミッションケース11aは、トルクコンバータ50の後方側において、径方向に形成された隔壁11bを有している。隔壁11bは、トルクコンバータ50と、CVT10とを隔てるものとされている。
【0040】
CVT10は、入力軸21(第1回転軸21とも称する)、無段変速機構30、出力軸23、及びリバース伝達機構75を備えている。CVT10は、前記の他、ステータシャフト25(外筒部25とも称する)、ブッシュ40及びオイル流路41等を備えている。なお、ブッシュ40及びオイル流路41の詳細については後述する。変速ユニット1は、CVT10の入力軸21が車両の前後方向に延びる縦向きとなる縦置きで配置されている。
【0041】
なお、以下の説明において、入力軸21の軸線が延びる方向を、単に「軸線方向X」と記載して説明する場合がある。
【0042】
また、以下の説明では、動力源となるエンジン2からの入力方向(軸線方向X)において、動力源(エンジン2)から見た手前(前方)を単に「前方Fr」と、奥側(後方)を単に「後方Rr」と記載して説明する場合がある。
【0043】
入力軸21は、中空軸として形成されており、軸線がトルクコンバータ50の回転軸線と一致するように配置されている。また、入力軸21には、入力軸ギヤ22(第1ギヤ22とも称する)が一体に形成されている。入力軸21の前方Frの端部は、トルクコンバータ50内に挿入されており、タービンハブ53とスプライン嵌合している。これにより、トルクコンバータ50と入力軸21とが接続される。また、入力軸21は、ベアリング70,73により回転可能に支持されている。
【0044】
入力軸21の軸心位置に形成された貫通孔には、ポンプ軸26が挿通されている。ポンプ軸26は、入力軸21の内周面と隙間を空けて挿通されている。ポンプ軸26の前端部は、トルクコンバータ50のフロントカバー51に達し、そのフロントカバー51の中心部に相対回転不能に接続されている。これにより、エンジン2の動力によりフロントカバー51が回転すると、フロントカバー51と一体にポンプ軸26及びポンプギヤ28が回転し、オイルポンプ27から油圧が発生する。
【0045】
ステータシャフト25(外筒部25)は、円筒状に形成されており、ユニットケース11に圧入により支持されている。ステータシャフト25には、入力軸21が相対回転可能に挿通されている。また、ステータシャフト25の前端側における外周側には、ステータ56が支持されている。
【0046】
ベアリング70には、適宜のオイル供給路(図示せず)を介してオイルポンプ27が接続されている。従って、ベアリング70には、オイルポンプ27を介して潤滑用のオイルが供給される。また、図2に示すように、ベアリング70の前方Fr側には、オイルシール71が設けられている。
【0047】
オイルシール71は、ゴム等を素材として環状に形成されており、後述するブッシュ40の外周に嵌め込まれている。また、オイルシール71は、隔壁11bから前方Fr側に向けて環状に突出形成されたリブ11dによって挟持されている。これにより、オイルシール71は、ブッシュ40に供給されたオイルが、前方Fr側(トルクコンバータ50側)に流出することを抑制している。
【0048】
出力軸23は、図1に示すように、入力軸21に対して後方Rrに間隔を空けて配置されている。出力軸23は、軸線が入力軸21の軸線と沿うように配置されている。言い換えれば、入力軸21と出力軸23とは、軸線方向Xに間隔を空けて、車両の前後方向に沿った縦向きに延びる共通の軸線を有するように配置されている。出力軸23には、出力軸ギヤ24が一体に形成されている。出力軸ギヤ24は、後述するセカンダリ出力ギヤ35と噛み合っている。
【0049】
なお、出力軸ギヤ24は、はすば歯車となっている。そのため、出力軸ギヤ24がセカンダリ出力ギヤ35から回転動力を受けて回転すると、出力軸23には、軸線方向Xに沿って後方Rrに向けた力(スラスト方向の力)が作用する。
【0050】
無段変速機構30は、プライマリ軸31(第2回転軸31とも称する)、セカンダリ軸33、プライマリプーリ36、セカンダリプーリ39、及びベルト49を備えている。
【0051】
プライマリ軸31(第2回転軸31)は、軸線が入力軸21(第1回転軸21)の軸線と沿うように(平行に)配置されている。また、プライマリ軸31は、入力軸21に対して径方向に離間した位置に設けられている。プライマリ軸31には、プライマリ入力ギヤ32(第2ギヤ32とも称する)が相対回転可能に取り付けられている。プライマリ入力ギヤ32(第2ギヤ32)は、入力軸ギヤ22(第1ギヤ22とも称する)と噛み合うことにより、噛合い部45(図2参照)を構成している。
【0052】
セカンダリ軸33は、軸線が入力軸21の軸線と沿うように(平行に)配置されている。また、セカンダリ軸33は、入力軸21の軸心に対して径方向に離間した位置に設けられている。セカンダリ軸33には、セカンダリ入力ギヤ34、及びセカンダリ出力ギヤ35が取り付けられている。
【0053】
セカンダリ入力ギヤ34は、セカンダリ軸33の前方Fr側に設けられており、セカンダリ軸33に対して相対回転可能となっている。
【0054】
セカンダリ出力ギヤ35は、セカンダリ軸33の後方Rr側に設けられている。また、セカンダリ出力ギヤ35は、セカンダリ軸33に対して相対回転不能に取り付けられている。セカンダリ出力ギヤ35は、出力軸23に設けられた出力軸ギヤ24と噛み合っている。
【0055】
プライマリプーリ36は、プライマリ固定シーブ36a、及びプライマリ可動シーブ36bを備えている。プライマリ固定シーブ36aは、プライマリ軸31に固定されている。また、プライマリ可動シーブ36bは、プライマリ固定シーブ36aにベルト49を挟んで対向するよう配置されており、プライマリ軸31の軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されている。プライマリ可動シーブ36bの前方Frには、シリンダ37が設けられている。また、プライマリ可動シーブ36bとシリンダ37との間には、油圧室38(ピストン室38)が形成されている。
【0056】
セカンダリプーリ39は、セカンダリ固定シーブ39a、及びセカンダリ可動シーブ39bを備えている。セカンダリ固定シーブ39aは、セカンダリ軸33に固定されている。また、セカンダリ可動シーブ39bは、セカンダリ固定シーブ39aにベルト49を挟んで対向するよう配置されており、セカンダリ軸33の軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されている。セカンダリ可動シーブ39bの後方Rrには、ピストン47が設けられている。また、セカンダリ可動シーブ39bとピストン47との間には、油圧室48が形成されている。
【0057】
ベルト49は、無端状に形成されている。ベルト49は、プライマリプーリ36及びセカンダリプーリ39に巻き掛けられている。より詳細に説明すると、ベルト49は、プライマリプーリ36側では、プライマリ固定シーブ36aとプライマリ可動シーブ36bとの間に挟まれた状態でプライマリプーリ36に巻き掛けられている。また、ベルト49は、セカンダリプーリ39側では、セカンダリ固定シーブ39aとセカンダリ可動シーブ39bとの間に挟まれた状態でセカンダリプーリ39に巻き掛けられている。
【0058】
無段変速機構30では、プライマリプーリ36及びセカンダリプーリ39の各油圧室38,48に供給される油圧が制御されて、プライマリプーリ36及びセカンダリプーリ39の各溝幅が変更されることにより、ベルト変速比(プライマリプーリ36とセカンダリプーリ39とのプーリ比)が一定の変速比範囲内で、連続的に無段階で変更される。
【0059】
リバース伝達機構75は、入力軸21の動力(回転)をセカンダリ入力ギヤ34に伝達する機構である。リバース伝達機構75は、リバースアイドラ軸76、第1リバースギヤ77、及び第2リバースギヤ78を備えている。第1リバースギヤ77は、リバースアイドラ軸76と一体に形成されて、入力軸ギヤ22と噛み合っている。第2リバースギヤ78は、第1リバースギヤ77の後方Rrにおいて、リバースアイドラ軸76と一体に形成され、セカンダリ入力ギヤ34と噛み合っている。詳細は省略するが、リバース伝達機構75は、車両を後退させる際の動力を伝達するものとされている。
【0060】
以上が変速ユニット1の構成であり、次に本発明のCVT10(変速機1)におけるブッシュ40及びオイル流路41(第1ギヤ22及び第2ギヤ32の潤滑)についての詳細を説明する。
【0061】
図2に示すように、ステータシャフト25(外筒部25)の外周側には、ブッシュ40が嵌め込まれている。また、ブッシュ40は、ステータシャフト25との間に隙間(図示せず)を有しており、当該隙間と連通するようにオイル流路41(オイル抜穴41とも称する)が形成されている。
【0062】
ブッシュ40は、例えば、金属、樹脂、ゴム等を素材として円筒状に形成されており、トルクコンバータ50における後方突出部52aの内周側に嵌め込まれている。従って、ブッシュ40は、トルクコンバータ50を支持するものとされている。言い換えると、トルクコンバータ50は、ブッシュ40を介してステータシャフト25に支持されている。
【0063】
また、後方突出部52aの外周側には、後述するオイルシール71が配されている。
【0064】
ブッシュ40及びステータシャフト25の間の隙間は、トルクコンバータ50側からオイルを流入させることができる。ここで、オイル流路41に流入するオイルは、例えば、トルクコンバータ50の周囲や入力軸21の周囲のオイル(例えば、リークオイル)とされている。
【0065】
オイル流路41は、一端側が、入力軸21の上方側において前記隙間(ブッシュ40)の後端側と連通している。オイル流路41は、前記隙間から隔壁11bの内部に導かれる。オイル流路41は、リークオイル等のオイル抜穴41としての機能も果たすものとされている。ここで、隔壁11bには、前方側の第1ギヤ22に向けて突出するようにボス43が形成されている。ボス43は、突出端(前端)が、第1ギヤ22における歯部22aの上方側に突出形成されている。言い換えると、ボス43は、突出端が、第1ギヤ22の歯部22aにおける上方側の少なくとも一部を覆う長さで突出形成されている。オイル流路41は、隔壁11bの内部で上方側に立ち上げられると共に、中間部分で前方側(ベアリング70側)に向けて屈曲され、ボス43の内部に導かれる。また、オイル流路41は、他端側に開口部44を有している。
【0066】
開口部44は、図2及び図3に示すように、ボス43の突出端において開口されており、オイル流路41に流入したオイルを排出することができる。開口部44は、入力軸21(第1回転軸21)及びプライマリ軸31(第2回転軸31)の間に配されている。開口部44は、第1ギヤ22及び第2ギヤ32における歯部22a,32aの少なくとも一方の上方側に配されているとよい。これにより、オイル流路41に流入したオイルが、第1ギヤ22及び第2ギヤ32に供給される。従って、第1ギヤ22及び第2ギヤ32が効率的に潤滑される。
【0067】
ここで、本実施形態では、開口部44が、第1ギヤ22及び第2ギヤ32において最も負荷が掛かると想定される第1ギヤ22及び第2ギヤ32の噛合い部45の上方側に位置するように配されている。すなわち、開口部44が、第1ギヤ22及び第2ギヤ32の噛合い部45に向けて突出形成されることにより、開口部44が、噛合い部45の上方側に位置するように配されている。従って、上述した変速ユニット1は、第1ギヤ22及び第2ギヤ32の噛合い部45の上方側にオイルを供給できる。そのため、上述した変速ユニット1は、第1ギヤ22及び第2ギヤ32の双方(単にギヤとも称する)にオイルを供給できる。これにより、上述した変速ユニット1は、負荷の大きいギヤの噛合い部45を確実に潤滑できるので、ギヤの摩耗や損傷を効果的に抑制できる。
【0068】
なお、開口部44は、噛合い部45における第1ギヤ22及び第2ギヤ32の接線方向(図3参照)かつ上方側に位置するように配されているとよい。かかる構成とすることにより、上述した変速ユニット1は、第1ギヤ22及び第2ギヤ32の双方に均等にオイルを供給することができる。これにより、上述した変速ユニット1は、第1ギヤ22及び第2ギヤ32の双方を確実に潤滑できる。
【0069】
また、開口部44は、上述したようにボス43の突出端に開口されている。従って、開口部44の少なくとも下端側が覆われている。これにより、開口部44の下端側に、遮蔽部46が形成されている。
【0070】
このように、上述した変速ユニット1は、遮蔽部46を備えているので、第1ギヤ22及び第2ギヤ32(単にギヤとも称する)によって跳ね上げられたオイルを遮蔽部46で反射させて、再びギヤに供することができる。これにより、上述した変速ユニット1は、開口部44から排出されるオイルを効率的に利用できるので、オイル流路41に流入するオイルが少ない場合であっても、効率的にギヤの潤滑を行うことができる。また、上述した変速ユニット1は、開口部44の下端側が遮蔽部46によって覆われているので、ギヤによって跳ね上がられたオイルが開口部44から逆流(進入)することを抑制できる。そのため、上述した変速ユニット1は、開口部44からスムーズにオイルを排出してギヤに供することができる。
【0071】
以上が、本発明の変速ユニット1の実施形態であり、次に本発明の変速ユニット1の作用効果について以下に説明する。
【0072】
上述した変速ユニット1は、オイルを、ブッシュ40を介してオイル流路41に流入させ、オイル流路41における開口部44を通じて第1ギヤ22及び第2ギヤ32の少なくとも一方における歯部の上方側に供給(排出)することができる。そのため、上述した変速ユニット1は、例えば、オイルポンプ27で供給されるベアリング潤滑用のオイルと異なる経路によりオイルを第1ギヤ22及び第2ギヤ32に供給できる。言い換えれば、上述した変速ユニット1は、例えば、リークオイルをオイル流路41に流入させて、ギヤにおける歯部22a,32aに供給できる。従って、上述した変速ユニット1は、オイルポンプ27の仕事量の増大を抑制し、かつ、ベアリング等の機械的ロスを低減できる。これにより、変速ユニット1を利用する車両等の燃費向上が期待できる。このように、上述した変速ユニット1は、リークオイル等を有効的に活用して、効率的にギヤを潤滑できる。
【0073】
また、第1ギヤ22及び第2ギヤ32が、それぞれ開口部44(上方側)に向けて回転するように構成することにより、第1ギヤ22及び第2ギヤ32に供給されたオイルが、下方側に落下することを低減できる。これにより、上述した変速ユニット1は、オイルによる第1ギヤ22及び第2ギヤ32の潤滑をより効率的に行うことができる。
【0074】
以上が、本発明の変速ユニット1の実施形態の構成及び作用効果であるが、本発明の変速ユニット1は、上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変形を行うことができる。
【0075】
本実施形態では、回転体50がトルクコンバータ50として構成されているが、回転体50は、トルクコンバータ50だけではなく、デファレンシャルギア等の各種のものを利用することができる。また、本実施形態では、変速機1(変速ユニット1)がCVT10として構成されている場合を例示したが、本発明の変速機1は、CVT10だけではなく、各種の変速機に利用することができる。例えば、変速機1が、自動変速機(AT)や手動式の変速機として構成されていてもよい。また、本実施形態では、変速機1が、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)ベースの2輪駆動の車両に搭載される場合を例示したが、例えば、FRベースの4WD(four-wheel-drive:4輪駆動)車にも利用することができる。かかる場合は、トランスファを設けるとよい。また、変速機1は、横置き式エンジン車やFF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式の2輪駆動車等にも利用できる。また、本発明の変速機1は、各種の車両や装置等の動力駆動機構に利用することができる。
【0076】
本実施形態では、ブッシュ40及びステータシャフト25(外筒部25)の間の隙間を通じてオイル流路41にオイルが流入するものとしたが、ブッシュ40は、各種の形状・大きさ・材質(例えば、金属、ゴム、樹脂等)のものが利用できる。また、ブッシュ40及びステータシャフト25の間の隙間の形状や間隔は、流入するオイルの性状等に応じて変更することが可能である。また、オイル流路41に流入するオイルもリークオイルだけではなく、各種のオイル(例えば、強制的に送液されるオイル)を流入させることが可能である。また、オイル流路41の形状は、第1ギヤ22及び第2ギヤ32の歯部22a,32aの少なくとも一方の上方側からオイルを排出可能なものであれば、各種の形状や大きさのものが利用できる。また、本実施形態では、開口部44がボス43として形成されているが、開口部44の形状や大きさは、オイルの性状やギヤの配置に応じて、変更することが可能である。また、本実施形態では、ブッシュ40及びステータシャフト25の間の隙間としてステータシャフト25の上方側の隙間を利用しているが、隙間は、オイルをオイル流路41に導くことができる各種の位置に配されたものを利用することができる。また、本実施形態では、第1回転軸21が中空に形成されているが、これには限定されず、第1回転軸21には、各種の形態のもの(例えば、中空でないもの)を利用できる。
【0077】
また、本実施形態では、開口部44が、第1ギヤ22及び第2ギヤ32の噛合い部45に向けて突出形成されており、開口部44が、噛合い部45の上方側に位置するように配されているが、開口部44は、噛合い部45の上方側だけではなく、噛合い部45から外れた位置の上方側に配されていてもよい。開口部44は、第1ギヤ22及び第2ギヤ32が潤滑されるものであれば、各種の位置に配することができる。
【0078】
また、本実施形態では、開口部44の下端側に遮蔽部46が設けられているが、遮蔽部46の形状や大きさは、オイルの性状や第1ギヤ22及び第2ギヤ32の回転方向等を考慮して、適宜、変更することが可能である。また、開口部44が、遮蔽部46を有しないものとすることもできる。また、開口部44の開口方向は、水平方向を向くものだけではなく、オイルの流出を阻害しない範囲で、各種の方向(例えば、上方、下方、左側、右側、斜め方向等)のものを採用できる。
【0079】
以上が、本発明に係る変速ユニット1の実施形態や変形例であるが、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の変速機は、無段変速機(CVT)や自動変速(AT)等の各種の変速機に利用することができる。また、本発明の変速機は、自動車等の各種の車両や動力伝達機構(デファレンシャルギヤ)等に利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 :変速ユニット(変速機)
10 :無段変速機(CVT)
21 :入力軸(第1回転軸)
22 :入力軸ギヤ(第1ギヤ)
22a:歯部
25 :ステータシャフト(外筒部)
31 :プライマリ軸(第2回転軸)
32 :プライマリ入力ギヤ(第2ギヤ)
32a:歯部
40 :ブッシュ
41 :オイル流路(オイル抜穴)
44 :開口部
45 :噛合い部
46 :遮蔽部
50 :トルクコンバータ(回転体)
70 :ベアリング
図1
図2
図3