(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174141
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】電解コンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/00 20060101AFI20241206BHJP
H01G 9/145 20060101ALI20241206BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
H01G9/00 290A
H01G9/00 290H
H01G9/145
H01G9/15
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024172441
(22)【出願日】2024-10-01
(62)【分割の表示】P 2022137122の分割
【原出願日】2017-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2016062423
(32)【優先日】2016-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 達治
(72)【発明者】
【氏名】田代 智之
(72)【発明者】
【氏名】下山 由起也
(57)【要約】
【課題】ESRが低く容量の引き出し効果が高い電解コンデンサを製造可能な製造方法を提供する。
【解決手段】開示される製造方法は、陽極箔と、陰極箔と、陽極箔および陰極箔の間に介在するセパレータとを有する巻回体を形成する工程と、導電性高分子と分散媒とを含む高分子分散体を巻回体に含浸させることにより、陽極箔および陰極箔に導電性高分子を付着させてコンデンサ素子を形成する工程と、コンデンサ素子に、液状成分を含浸させる工程と、を有する。当該製造方法は、巻回体を形成する工程の後であって巻回体に導電性高分子を付着させる工程の前に、陽極箔の端面に陽極端面酸化物皮膜を形成する工程と、陽極端面酸化物皮膜よりも薄い陰極端面酸化物皮膜を陰極箔の端面に形成する工程と、をさらに有する。陰極端面酸化物皮膜の厚みを、1.5nm以上10nm以下とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極箔と、陰極箔と、前記陽極箔および前記陰極箔の間に介在するセパレータとを有する巻回体を形成する工程と、
導電性高分子と分散媒とを含む高分子分散体を前記巻回体に含浸させることにより、前記陽極箔および前記陰極箔に前記導電性高分子を付着させてコンデンサ素子を形成する工程と、
前記コンデンサ素子に、液状成分を含浸させる工程と、を有し、
前記巻回体を形成する工程の後であって前記巻回体に前記導電性高分子を付着させる工程の前に、前記陽極箔の端面に陽極端面酸化物皮膜を形成する工程と、前記陽極端面酸化物皮膜よりも薄い陰極端面酸化物皮膜を前記陰極箔の端面に形成する工程と、をさらに有し、
前記陰極端面酸化物皮膜の厚みを、1.5nm以上10nm以下とする、電解コンデンサの製造方法。
【請求項2】
前記巻回体を形成する工程を経た後の前記陰極箔に1V以上10V以下の電圧を印加して化成処理することによって、前記陰極端面酸化物皮膜を形成する、請求項1に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項3】
陽極箔と、陰極箔と、前記陽極箔および前記陰極箔の間に介在するセパレータとを有する巻回体を形成する工程と、
導電性高分子と分散媒とを含む高分子分散体を前記巻回体に含浸させることにより、前記陽極箔および前記陰極箔に前記導電性高分子を付着させてコンデンサ素子を形成する工程と、
前記コンデンサ素子に、液状成分を含浸させる工程と、を有し、
前記巻回体を形成する工程の後であって前記巻回体に前記導電性高分子を付着させる工程の前に、前記陽極箔の端面に陽極端面酸化物皮膜を形成する工程と、前記陰極箔の端面に前記陽極端面酸化物皮膜よりも薄い陰極端面酸化物皮膜を形成する工程と、をさらに有し、
前記巻回体を形成する工程を経た後の前記陰極箔に1V以上10V以下の電圧を印加して化成処理することによって、前記陰極端面酸化物皮膜を形成する、電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰極箔と陽極箔との間に付着した導電性高分子を有するコンデンサ素子と、電解液などの液状成分とを備える電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小型かつ大容量で低ESR(等価直列抵抗)のコンデンサとして、誘電体層を有する陽極箔と陰極箔とを巻回した巻回体と、巻回体に付着した導電性高分子とを備えるコンデンサ素子、および電解液を具備する、電解コンデンサが有望視されている。
【0003】
電解コンデンサでは、陽極箔の表面には化成により誘電体層が形成されている一方、陰極箔の化成についてはほとんど検討されていない。
特許文献1では、化成処理した陽極箔および陰極箔を用いて、二酸化マンガンからなる固体電解質を含む固体電解コンデンサを組み立てているが、陰極箔の端面に酸化物皮膜を形成することについては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のコンデンサでは、低ESR、および高容量化の点で未だ改善の余地がある。これは、陰極箔と陽極箔との間に導電性高分子を付着させる工程において、導電性高分子が誘電体層を十分に覆う均質な膜を形成できていないことによるものと考えられる。
【0006】
上記に鑑み、本発明は、ESRが低減され、容量の引き出し効果が高い電解コンデンサおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面は、陰極箔と、主面に誘電体層を有する陽極箔と、前記陰極箔および前記陽極箔の間において前記誘電体層の少なくとも一部を覆う導電性高分子と、前記導電性高分子と接触する液状成分と、を含み、前記陰極箔は、端面に、第1酸化物皮膜を有する、電解コンデンサに関する。
本発明の他の一局面は、陽極箔と陰極箔とが前記陽極箔と前記陰極箔との間にセパレータを介して巻回された巻回体と、前記陽極箔と前記陰極箔との間に付着した導電性高分子と、前記導電性高分子と接触する液状成分と、を含み、
前記陰極箔の端面が、第1酸化物皮膜を有し、
前記第1酸化物皮膜の厚みは、0.3nm以上15nm以下である電解コンデンサに関する。
【0008】
本発明の他の局面は、陰極箔と、主面に誘電体層を有する陽極箔と、前記陰極箔および前記陽極箔の間に介在するセパレータとを有する巻回体を形成する工程と、
前記陰極箔と前記陽極箔との間において、前記誘電体層の少なくとも一部を覆うように導電性高分子を付着させてコンデンサ素子を形成する工程と、
前記コンデンサ素子に、液状成分を含浸させる工程と、
前記巻回体に前記導電性高分子を付着させる工程の前に、前記陰極箔の端面に第1酸化物皮膜を形成する工程と、を有する、電解コンデンサの製造方法に関する。
本発明の他の局面は、陽極箔と、陰極箔と、前記陽極箔および前記陰極箔の間に介在するセパレータとを有する巻回体を形成する工程と、
導電性高分子と分散媒とを含む高分子分散体を前記巻回体に含浸させることにより、前記陽極箔および前記陰極箔に前記導電性高分子を付着させてコンデンサ素子を形成する工程と、
前記コンデンサ素子に、液状成分を含浸させる工程と、を有し、
前記巻回体を形成する工程の後であって前記巻回体に前記導電性高分子を付着させる工程の前に、前記陽極箔の端面に陽極端面酸化物皮膜を形成する工程と、前記陽極端面酸化物皮膜よりも薄い陰極端面酸化物皮膜を前記陰極箔の端面に形成する工程と、をさらに有し、
前記陰極端面酸化物皮膜の厚みを、1.5nm以上10nm以下とする、電解コンデンサの製造方法に関する。
本発明の他の局面は、陽極箔と、陰極箔と、前記陽極箔および前記陰極箔の間に介在するセパレータとを有する巻回体を形成する工程と、
導電性高分子と分散媒とを含む高分子分散体を前記巻回体に含浸させることにより、前記陽極箔および前記陰極箔に前記導電性高分子を付着させてコンデンサ素子を形成する工程と、
前記コンデンサ素子に、液状成分を含浸させる工程と、を有し、
前記巻回体を形成する工程の後であって前記巻回体に前記導電性高分子を付着させる工程の前に、前記陽極箔の端面に陽極端面酸化物皮膜を形成する工程と、前記陰極箔の端面に前記陽極端面酸化物皮膜よりも薄い陰極端面酸化物皮膜を形成する工程と、をさらに有し、
前記巻回体を形成する工程を経た後の前記陰極箔に1V以上10V以下の電圧を印加して化成処理することによって、前記陰極端面酸化物皮膜を形成する、電解コンデンサの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、電解コンデンサにおいて、ESRを大きく低減できるとともに、容量の引き出し効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図である。
【
図2】
図1の電解コンデンサに含まれる巻回体の構成を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る電解コンデンサは、陰極箔と、主面に誘電体層を有する陽極箔と、陰極箔および陽極箔の間において誘電体層の少なくとも一部を覆う導電性高分子と、導電性高分子と接触する液状成分と、を含む。陰極箔は、端面に、酸化物皮膜(第1酸化物皮膜)を有する。
【0012】
本発明の実施形態に係る電解コンデンサの製造方法は、陰極箔と、主面に誘電体層を有する陽極箔と、陰極箔および陽極箔の間に介在するセパレータとを有する巻回体を形成する工程と、陰極箔と陽極箔との間において、誘電体層の少なくとも一部を覆うように導電性高分子を付着させてコンデンサ素子を形成する工程と、コンデンサ素子に、液状成分を含浸させる工程と、巻回体に導電性高分子を付着させる工程の前に、陰極箔の端面に酸化物皮膜(第1酸化物皮膜)を形成する工程と、を有する。
【0013】
本実施形態では、陰極箔の端面に第1酸化物皮膜を形成することにより、ESRの低減効果を向上できるとともに、容量の引き出し効果を高めることができることを見出した。その理由は定かではないが、陰極箔の端面に第1酸化物皮膜を形成することで、導電性高分子を陽極箔および陰極箔(またはこれらの電極箔を含む巻回体など)に付与する際に、導電性高分子(または導電性高分子を含む分散体)に対する陰極箔の濡れ性が大きく高まると考えられる。これにより、陽極箔と陰極箔との間への導電性高分子の含浸性が高まり、導電性高分子を付着させ易くなり、導電性高分子の適度な皮膜が形成され易くなる。よって、低ESRや高い容量引き出し効果が得られると考えられる。また、導電性高分子の含浸性が高まることで、導電性高分子を付与する際の時間を短縮することができるため、電解コンデンサの生産性を高めることができる。
【0014】
本実施形態に係る電解コンデンサは、陰極箔の主面に酸化物皮膜(第2酸化物皮膜)を有してもよい。陰極箔の端面に加え、さらに主面に酸化物皮膜が形成されることで、ESRの低減効果および容量の引き出し効果がさらに高くなる。また、逆電圧に対する耐性も高くなる。
【0015】
陰極箔の端面に形成された第1酸化物皮膜の厚みは、陰極箔の主面に形成された第2酸化物皮膜の厚みと同じであってもよく、第2酸化物皮膜の厚みより大きくてもよい。第2酸化物皮膜にムラが生じることを抑制して、耐電圧特性を高める観点からは、第1酸化物皮膜の厚みは、第2酸化物皮膜の厚みより小さいことが好ましい。
【0016】
陰極箔の端面に形成された第1酸化物皮膜の厚みは、例えば、0.3nm~15nmであり、0.5nm~10nmであることが好ましい。陰極箔の主面に形成された第2酸化物皮膜の厚みは、例えば、1.0nm~20nmであり、1.5nm~10nmであることが好ましい。
【0017】
陽極箔の主面に形成された誘電体層(後述の第2誘電体層)の厚みは、陰極箔の主面に形成された第2酸化物皮膜の厚みよりも大きいことが好ましい。この場合、高い耐電圧特性を確保し易くなるとともに、容量の低下を抑制することができる。
【0018】
なお、陰極箔や陽極箔の主面とは、これらの電極箔の表面のうち、最も広い面積を占める2つの面である。陰極箔や陽極箔の端面とは、これらの電極箔の主面以外の端部に存在する面であり、大判の電極箔を裁断した場合には、裁断面も含む。巻回体では、周面以外の天面や底面に配される電極箔の面は端面である。
【0019】
以下、適宜図面を参照しながら、本実施形態をより具体的に説明する。ただし、以下の実施形態は本発明を限定するものではない。
図1は、本実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図であり、
図2は、同電解コンデンサに係る巻回体の一部を展開した概略図である。
【0020】
電解コンデンサは、例えば、コンデンサ素子10と、コンデンサ素子10を収容する有底ケース11と、有底ケース11の開口を塞ぐ封止部材12と、封止部材12を覆う座板13と、封止部材12から導出され、座板13を貫通するリード線14A、14Bと、リード線14A、14Bとコンデンサ素子10の電極とを接続するリードタブ15A、15Bと、液状成分(図示せず)とを備える。コンデンサ素子10は、液状成分とともに、有底ケース11に収容される。有底ケース11の開口端近傍は、内側に絞り加工されており、開口端は封止部材12にかしめるようにカール加工されている。
【0021】
コンデンサ素子10は、例えば、
図2に示すような巻回体に、導電性高分子を付着させることにより作製される。巻回体は、少なくとも主面に誘電体層を有する陽極箔21と、陰極箔22と、これらの間に介在するセパレータ23と、を備えている。導電性高分子は、陽極箔21と陰極箔22との間において、陽極箔21の誘電体層の表面の少なくとも一部を覆うように付着している。コンデンサ素子10は、さらに、陽極箔21と接続されたリードタブ15Aと、陰極箔22に接続されたリードタブ15Bと、を備える。
【0022】
陽極箔21および陰極箔22は、セパレータ23を介して巻回されている。巻回体の最外周は、巻止めテープ24により固定される。なお、
図2は、巻回体の最外周を止める前の、一部が展開された状態を示している。
【0023】
陽極箔21は、表面が凹凸を有するように粗面化された金属箔を具備し、凹凸を有する金属箔上に誘電体層が形成されている。陰極箔22は、金属箔を具備し、端面に第1酸化物皮膜が形成されており、主面に第2酸化物皮膜が形成されていてもよい。
【0024】
以下、本実施形態に係る電解コンデンサの製造方法の一例について、工程ごとに説明するとともに、電解コンデンサの構成について説明する。
陰極箔および誘電体層を有する陽極箔は、それぞれ、巻回体を形成する工程に先立って準備される。誘電体層は、陽極箔の化成処理により形成できる。陽極箔の化成処理は、陽極箔を準備する工程で行なわれるが、巻回体を形成した後で行なってもよく、コンデンサ素子を封止した後において行なってもよい。また、陰極箔に酸化物皮膜を形成する工程(化成処理)は、巻回体に導電性高分子を付着させる工程の前に行えばよい。例えば、陰極箔に酸化物皮膜を形成する工程は、陰極箔を準備する工程において行なってもよく、巻回体を形成する工程において行ってもよい。
【0025】
(i)誘電体層を有する陽極箔21を準備する工程
まず、陽極箔21の原料である金属箔を準備する。金属の種類は特に限定されないが、誘電体層の形成が容易である点から、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。
【0026】
次に、金属箔の表面を粗面化する。粗面化により、金属箔の表面に、複数の凹凸が形成される。粗面化は、金属箔をエッチング処理することにより行うことが好ましい。エッチング処理は、例えば直流電解法や交流電解法により行えばよい。
【0027】
次に、粗面化された金属箔の表面に誘電体層を形成する。形成方法は特に限定されないが、金属箔を化成処理することにより形成することができる。化成処理により、陽極箔の主面に誘電体層が形成される。このとき、陽極箔の端面にも誘電体層を形成してもよい。本明細書では、陽極箔の端面に形成された誘電体層を第1誘電体層、陽極箔の主面に形成された誘電体層を第2誘電体層とも言う。
【0028】
化成処理は、例えば、化成液を用いて行うことができる。化成処理は、金属箔を化成液に浸漬し、熱処理することにより行うことができる。このときの温度は、例えば、50~85℃である。また、金属箔を化成液に浸漬し、電圧を印加することで化成処理を行ってもよい。化成処理する際に、熱処理と電圧の印加との双方を行ってもよい。
【0029】
化成液としては、リン酸塩、アジピン酸塩、ホウ酸塩などの塩を含む水溶液が挙げられる。リン酸塩としては、リン酸アンモニウム塩、リン酸カリウム塩、リン酸ナトリウム塩などが例示される。リン酸アンモニウム塩としては、リン酸一水素二アンモニウム、リン酸二水素一アンモニウムなどが例示される。アジピン酸塩やホウ酸塩としても、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩などが例示できる。化成液は、これらの塩を一種含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。作業性などの観点からは、リン酸二水素一アンモニウム水溶液などのリン酸アンモニウム水溶液や、アジピン酸アンモニウム水溶液などを用いることが好ましい。
【0030】
通常、量産性の観点から、大判の弁作用金属などの箔(金属箔)の主面に対して、粗面化処理および化成処理が行われる。その場合、処理後の箔を所望の大きさに裁断することによって、陽極箔21が準備される。裁断後の陽極箔21は、主面に誘電体層(第2誘電体層)を有している。
【0031】
必要に応じて、陽極箔の主面に第2誘電体層を形成した後に所定幅に裁断した陽極箔に、さらに化成処理を行い、陽極箔の端面に第1誘電体層を形成してもよい。第1誘電体層を形成するには、所定幅に裁断した陽極箔を巻回した状態(つまり、陽極箔の端面が巻回物の天面および底面に配された状態)で、化成液に浸漬し、熱処理および/または電圧を印加してもよい。なお、所定幅に裁断した陽極箔にリード端子を接続した後、巻回したものに対し、化成処理を行ってもよい。熱処理の温度は、上記の範囲から適宜選択できる。
化成処理後の陽極箔は、必要に応じて、洗浄および乾燥してもよい。
【0032】
(ii)陰極箔22を準備する工程
陰極箔22には、陽極箔21と同様、金属箔を用いることができる。金属の種類は特に限定されないが、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。必要に応じて、金属箔の表面を粗面化してもよい。
【0033】
この工程において、金属箔に化成処理を施し、陰極箔に酸化物皮膜(第1酸化物皮膜、第2酸化物皮膜)を形成してもよい。この工程で化成処理を行う場合には、陰極箔の主面に第2酸化物皮膜を形成することが好ましい。この場合、さらに陰極箔の端面に第1酸化物皮膜を形成してもよい。
【0034】
化成処理は、例えば、化成液を用いて行うことができる。化成処理は、金属箔を化成液に浸漬し、プラスの電圧を印加することにより行うことができる。このとき、必要に応じて、例えば、50~85℃(好ましくは60~75℃)の温度条件で化成処理を行ってもよい。
【0035】
化成液としては、陽極箔の化成処理について例示したものから適宜選択できる。
化成処理の際に、陰極箔に印加される電圧は、例えば、1~10Vであり、2~5Vであることが好ましい。印加電圧がこのような範囲である場合、適度な厚みの酸化物皮膜(特に、第2酸化物皮膜)を形成し易いため、高容量化の観点から有利である。化成処理する際の印加電圧の大きさを調節することで、酸化物皮膜(特に、第2酸化物皮膜)の厚みを調節することができる。
【0036】
量産性の観点からは、通常、大判の弁作用金属などの箔(金属箔)に対して、粗面化処理や化成処理が行われる。その場合、処理後の箔を所望の大きさに裁断することによって、陰極箔が準備される。
【0037】
また、陰極箔の主面に第2酸化物皮膜を形成した後に所定幅に裁断した陰極箔に、さらに化成処理を行い、陰極箔の端面に第1酸化物皮膜を形成してもよい。第1酸化物皮膜を形成するには、所定幅に裁断した陰極箔を巻回した状態(つまり、陰極箔の端面が巻回物の天面および底面に配された状態)で、化成液に浸漬し、電圧を印加すればよい。印加される電圧や温度条件は上記の範囲から適宜選択できる。なお、所定幅に裁断した陰極箔にリード端子を接続した後、巻回したものに対し、化成処理を行ってもよい。
化成処理後の陰極箔は、必要に応じて、洗浄および乾燥してもよい。
【0038】
(iii)巻回体を形成する工程
次に、陽極箔21および陰極箔22を用いて巻回体を作製する。
まず、陽極箔21と陰極箔22とを、セパレータ23を介して巻回する。このとき、リードタブ15A、15Bを巻き込みながら巻回することにより、
図2に示すように、リードタブ15A、15Bを巻回体から植立させることができる。
【0039】
セパレータ23の材料は、例えば、合成セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ビニロン、ナイロン、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、レーヨン、ガラス質などを主成分とする不織布を用いることができる。
【0040】
リードタブ15A、15Bの材料も特に限定されず、導電性材料であればよい。リードタブ15A、15Bの各々に接続されるリード線14A、14Bの材料についても、特に限定されず、導電性材料であればよい。
【0041】
次に、巻回された陽極箔21、陰極箔22およびセパレータ23のうち、最外層に位置する陰極箔22の外側表面に、巻止めテープ24を配置し、陰極箔22の端部を巻止めテープ24で固定する。
【0042】
この工程において、巻回体を化成処理(再化成処理)することで、陽極箔に誘電体層の少なくとも一部を形成してもよい。また、陰極箔に酸化物皮膜(第1酸化物皮膜、第2酸化物皮膜)の少なくとも一部を形成してもよい。
【0043】
中でも、工程(i)において、陽極箔21を大判の金属箔を裁断することによって準備した場合には、巻回体をさらに化成処理(再化成処理)することで、陽極箔21の端面に誘電体層(第1誘電体層)が形成される。このときも化成処理は、化成液を用いて行うことができる。化成処理は、例えば、巻回体を化成液に浸漬させた状態で熱処理することにより行なってもよい。また、巻回体とともに第3電極を化成液に浸漬させた状態で、第3電極を対極として巻回体の陽極箔にプラスの電圧を印加することにより行ってもよい。熱処理と電圧の印加との双方を行ってもよい。化成処理の条件は、工程(i)について記載したものから適宜決定できる。
【0044】
この工程で陰極箔を化成処理する場合、例えば、巻回体とともに第3電極を化成液に浸漬させた状態で、第3電極を対極として、巻回体の陰極箔にプラスの電圧を印加して、表面を酸化させればよい。陰極箔に印加される電圧は、例えば、第3電極に対して、0.2~10Vであり、0.5~5Vであることが好ましい。陰極箔の端面に第1酸化物皮膜を優先的に形成する場合には、第3電極を巻回体の天面および/または底面に対向させて配置し、陰極箔に電圧を印加してもよい。化成液としては、工程(i)について記載したものから、化成処理の温度は、工程(ii)について記載したものから、それぞれ適宜決定できる。
【0045】
第1酸化物皮膜を優先的に形成する場合、印加する電圧を、第2酸化物皮膜を形成する際(具体的には、工程(ii)で第2酸化物皮膜を形成する際)の電圧以下とすると、既に形成された第2酸化物皮膜上に、副生物であるガスが付着して第2酸化物皮膜にムラが生じることを抑制できる。よって、耐電圧特性の低下を抑制できる。なお、第3電極を用いる代わりに、陽極箔を対電極として陰極箔に電圧を印加してもよい。
【0046】
化成処理は、巻回体の全体を化成液に浸漬させた状態で行ってもよく、巻回体の少なくとも天面や底面を化成液に浸漬させた状態で行ってもよい。陰極箔の化成を後者の方法で行う場合、陰極箔の端面に集中して酸化物皮膜が形成され易くなるため、第1酸化物皮膜の厚みを大きくする上では有利である。
なお、化成処理後の巻回体は、必要に応じて、洗浄および乾燥される。
【0047】
(iv)導電性高分子を巻回体に付着させる工程
この工程では、導電性高分子を含む処理液を、巻回体に付与して、巻回体に導電性高分子を付着させる。陽極箔21と陰極箔22との間において、導電性高分子は、陽極箔21の誘電体層(第1誘電体層、第2誘電体層)の表面に膜状に付着して、導電性高分子層(または固体電解質層)を形成していてもよいが、この場合に限らない。導電性高分子は、陰極箔22の第1酸化物皮膜および/または第2酸化物皮膜の少なくとも一部を覆うように付着していてもよい。また、導電性高分子は、セパレータ23の表面の少なくとも一部を被覆していてもよい。
【0048】
導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェンおよびポリアニリンなどが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上のモノマーの共重合体でもよい。導電性高分子の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば1000~100000である。
【0049】
なお、本明細書では、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどは、それぞれ、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどを基本骨格とする高分子を意味する。したがって、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどには、それぞれの誘導体も含まれ得る。例えば、ポリチオフェンには、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などが含まれる。
【0050】
導電性高分子には、ドーパントを添加してもよい。導電性高分子からの脱ドープを抑制する観点からは、高分子ドーパントを用いることが望ましい。高分子ドーパントとしては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸などのアニオンが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらは単独重合体であってもよく、2種以上のモノマーの共重合体であってもよい。なかでも、ポリスチレンスルホン酸(PSS)が好ましい。
【0051】
ドーパントの重量平均分子量は、特に限定されないが、均質な固体電解質層を形成しやすい点で、例えば1000~100000であることが好ましい。
【0052】
導電性高分子は、モノマー、ドーパントおよび酸化剤などを含有する溶液を巻回体に付与し、その場で、化学重合もしくは電解重合させる方法で巻回体に付着させてもよい。また、導電性高分子を含む処理液(以下、単に高分子分散体とも言う)を巻回体に付与する方法により、導電性高分子を巻回体に付着させてもよい。
【0053】
高分子分散体に含まれる導電性高分子の濃度は、0.5~10質量%が好ましい。また、導電性高分子の平均粒径D50は、例えば0.01~0.5μmが好ましい。ここで、平均粒径D50は、動的光散乱法による粒度分布測定装置により求められる体積粒度分布におけるメディアン径である。
【0054】
高分子分散体は、液状分散媒と、液状分散媒に分散する導電性高分子とを含む。高分子分散体は、液状分散媒に導電性高分子が溶解した溶液でもよく、液状分散媒に導電性高分子の粒子が分散した分散液でもよい。処理液を巻回体に含浸させた後は、通常、乾燥させて、液状分散媒の少なくとも一部を揮発させる。
【0055】
導電性高分子の脱ドープを抑制するために、液状分散媒に酸を溶解してもよい。酸としては、フタル酸、安息香酸、ニトロ安息香酸、サリチル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などが好ましい。
【0056】
高分子分散体は、例えば、液状分散媒に導電性高分子を分散させる方法、液状分散媒中で前駆体モノマーを重合させ、導電性高分子の粒子を生成させる方法などにより得ることができる。好ましい高分子分散体としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸(PSS)がドープされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、すなわちPEDOT/PSSを含むことが好ましい。なお、導電性高分子の酸化防止剤を添加してもよいが、PEDOT/PSSは、ほとんど酸化しないため、酸化防止剤を用いる必要はない。
【0057】
液状分散媒は、水でもよく、水と非水溶媒との混合物でもよく、非水溶媒でもよい。非水溶媒は、特に限定されないが、例えば、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒を用いることができる。プロトン性溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類、ホルムアルデヒド、1,4-ジオキサンなどのエーテル類などが例示できる。非プロトン性溶媒としては、N-メチルアセトアミド,N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド類や、酢酸メチルなどのエステル類、メチルエチルケトンなどのケトン類などが例示できる。
【0058】
高分子分散体を巻回体に付与する(含浸させる)方法としては、例えば、容器に収容された高分子分散体に巻回体を浸漬させる方法が簡易で好ましい。また、高分子分散体に浸漬させながら、巻回体または高分子分散体に超音波振動を付与してもよい。高分子分散体から巻回体を引上げた後の乾燥は、例えば50~300℃で行うことが好ましい。高分子分散体を巻回体に付与する工程と、巻回体を乾燥させる工程とは、2回以上繰り返してもよい。これらの工程を複数回行うことにより、巻回体における導電性高分子の被覆率を高めることができる。
【0059】
以上により、陽極箔21と陰極箔22との間に導電性高分子が付着された、コンデンサ素子10が得られる。なお、誘電体層の表面に形成された導電性高分子は、事実上の陰極材料として機能する。
【0060】
(v)コンデンサ素子10に液状成分を含浸させる工程
次に、コンデンサ素子10に、液状成分を含浸させる。これにより、誘電体層の修復機能に優れた電解コンデンサが得られる。コンデンサ素子10に液状成分を含浸させる方法は特に限定されない。例えば、容器に収容された液状成分にコンデンサ素子10を浸漬させる方法が簡易で好ましい。含浸は、減圧下、例えば10~100kPaの雰囲気で行うことが好ましい。
【0061】
液状成分としては、非水溶媒であってもよく、非水溶媒とこれに溶解させたイオン性物質(溶質、例えば、有機塩)との混合物(つまり、電解液)であってもよい。非水溶媒は、有機溶媒でもよく、イオン性液体でもよい。非水溶媒としては、高沸点溶媒が好ましい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール類、スルホラン(SL)などの環状スルホン類、γ-ブチロラクトン(γBL)などのラクトン類、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド類、酢酸メチルなどのエステル類、炭酸プロピレン(PC)などのカーボネート化合物、1,4-ジオキサンなどのエーテル類、メチルエチルケトンなどのケトン類、ホルムアルデヒドなどを用いることができる。有機塩とは、アニオンおよびカチオンの少なくとも一方が有機物を含む塩である。有機塩としては、例えば、マレイン酸トリメチルアミン、ボロジサリチル酸トリエチルアミン、フタル酸エチルジメチルアミン、フタル酸モノ1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム、フタル酸モノ1,3-ジメチル-2-エチルイミダゾリニウムなどを用いてもよい。
【0062】
(vi)コンデンサ素子10を封止する工程
次に、コンデンサ素子10を封止する。具体的には、まず、リード線14A、14Bが有底ケース11の開口する上面に位置するように、コンデンサ素子10を有底ケース11に収納する。有底ケース11の材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、鉄、真鍮などの金属あるいはこれらの合金を用いることができる。
【0063】
次に、リード線14A、14Bが貫通するように形成された封止部材12を、コンデンサ素子10の上方に配置し、コンデンサ素子10を有底ケース11内に封止する。次に、有底ケース11の開口端近傍に、横絞り加工を施し、開口端を封止部材12に加締めてカール加工する。そして、カール部分に座板13を配置することによって、
図1に示すような電解コンデンサが完成する。その後、定格電圧を印加しながら、エージング処理を行ってもよい。
【0064】
封止部材12は、ゴム成分を含む弾性材料で形成されている。ゴム成分としては、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、ハイパロンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどを用いることができる。封止部材12は、カーボンブラック、シリカなどのフィラーを含んでもよい。
【0065】
なお、コンデンサ素子10を封止した後に、さらに化成処理を行い、第1酸化物皮膜や誘電体層を形成してもよい。このときの化成処理は、電解液を用いて行うことができる。化成処理は、例えば、コンデンサ素子10を電解液に浸漬した状態で、陽極箔や陰極箔にプラスの電圧を印加させることにより行うことができる。このとき、通常、加熱処理も合わせて行われる。加熱処理の温度は、例えば、100~150℃である。コンデンサ素子10を封止した後に、陰極箔の化成処理を行うと、逆電圧に対する耐性を高くすることができる。
【0066】
上記の実施形態では、巻回型の電解コンデンサについて説明したが、本発明の適用範囲は上記に限定されず、他の電解コンデンサ、例えば、陽極体として金属の焼結体を用いるチップ型の電解コンデンサや、金属板を陽極体として用いる積層型の電解コンデンサにも適用することができる。
【実施例0067】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
実施例1
本実施例では、定格電圧35V、定格静電容量47μFの巻回型の電解コンデンサ(直径6.3mm×長さ5.8mm)を作製した。以下に、電解コンデンサの具体的な製造方法について説明する。
【0069】
(陽極箔の準備)
厚み120μmのAl箔を準備した。このAl箔に直流エッチング処理を行い、表面を粗面化した。次いで、Al箔に化成処理を施して誘電体層(厚み:約70nm)を形成することにより陽極箔を得た。誘電体層は、アジピン酸アンモニウム溶液にAl箔を浸漬させ、Al箔に50Vの電圧を印加しながら、70℃で30分間化成処理を行うことにより形成した。その後、陽極箔を所定サイズに裁断して、陽極箔を準備した。
【0070】
(陰極箔の準備)
厚み50μmのAl箔にエッチング処理を行い、Al箔の表面を粗面化した。
次いで、Al箔に化成処理を施して、酸化物皮膜(主に第2酸化物皮膜)を形成した。酸化物皮膜は、アジピン酸アンモニウム溶液にAl箔を浸漬させ、Al箔に3Vの電圧を印加しながら、70℃で30分間化成処理を行うことにより形成した。その後、Al箔を裁断して、陰極箔を準備した。
【0071】
(巻回体の作製)
陽極箔および陰極箔に、リード線が接続された陽極リードタブおよび陰極リードタブをそれぞれ接続し、陽極箔と陰極箔とを、リードタブを巻き込みながら、セパレータを介して巻回し、外側表面を巻止めテープで固定することで巻回体を作製した。
【0072】
作製した巻回体を、アジピン酸アンモニウム溶液に浸漬させ、陽極箔に対して、50Vの電圧を印加しながら、70℃で60分間再度化成処理を行うことにより、陽極箔の端面に誘電体層を形成した。
【0073】
次いで、巻回体をアジピン酸アンモニウム水溶液に浸漬させた状態で、陰極箔に3Vの電圧を印加することにより、陰極箔の端面に第1酸化物皮膜を形成した。第1酸化物皮膜の厚みは3nmであり、陰極箔の主面に形成された第2酸化物皮膜の厚みは5nmであった。
【0074】
(高分子分散体の調製)
3,4-エチレンジオキシチオフェンと、ドーパントとしてのポリスチレンスルホン酸とを、イオン交換水に溶かした混合溶液を調製した。得られた混合溶液を撹拌しながら、イオン交換水に溶かした硫酸鉄(III)(酸化剤)を添加し、重合反応を行った。反応後、得られた反応液を透析して、未反応モノマーおよび過剰な酸化剤を除去し、約5質量%のポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンを含む高分子分散体を得た。
【0075】
(コンデンサ素子の作製)
減圧雰囲気(40kPa)中で、所定容器に収容された高分子分散体に巻回体を5分間浸漬し、その後、高分子分散体から巻回体を引き上げた。次に、高分子分散体を含浸した巻回体を、150℃の乾燥炉内で20分間乾燥させ、導電性高分子を巻回体の陽極箔と陰極箔との間に付着させた。このようにして、コンデンサ素子を完成させた。
【0076】
(電解液の含浸)
コンデンサ素子に、減圧雰囲気(40kPa)中で電解液を含浸させた。電解液としては、PEG:γBL:SL:フタル酸モノ(エチルジメチルアミン)(溶質)=25:25:25:25(質量比)で混合した溶液を用いた。
【0077】
(コンデンサ素子の封止)
電解液を含浸させたコンデンサ素子を封止して、電解コンデンサを完成させた。その後、定格電圧を印加しながら、130℃で2時間エージング処理を行った。
【0078】
得られた電解コンデンサについて、下記の手順で、静電容量およびESR値を求めた。
4端子測定用のLCRメータを用いて、電解コンデンサの周波数120Hzにおける静電容量(初期静電容量)(μF)を測定した。
4端子測定用のLCRメータを用いて、電解コンデンサの周波数100kHzにおけるESR値(初期ESR値)(mΩ)を測定した。
静電容量およびESR値は、それぞれ、ランダムに選択した120個の電解コンデンサについて測定し、平均値を算出した。
【0079】
比較例1
巻回体の陽極箔の端面に誘電体層を形成した後、陰極箔の端面に第1酸化物皮膜を形成することなく、高分子分散体を付与した。このこと以外は、実施例1と同様に電解コンデンサを作製し、評価を行った。
実施例および比較例の結果を表1に示す。実施例1はA1であり、比較例1はB1である。
【0080】
【0081】
表1に示されるように、陰極箔の端面に第1酸化物皮膜が形成されている実施例の電解コンデンサでは、第1酸化物皮膜を有さない比較例の電解コンデンサに比べて、ESRが低く、容量が高くなった。
10:コンデンサ素子、11:有底ケース、12:封止部材、13:座板、14A,14B:リード線、15A,15B:リードタブ、21:陽極箔、22:陰極箔、23:セパレータ、24:巻止めテープ