(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174161
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】管路構造及び管路構造の接続方法
(51)【国際特許分類】
F16L 11/12 20060101AFI20241206BHJP
F16L 11/06 20060101ALI20241206BHJP
F16L 47/03 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
F16L11/12 J
F16L11/06
F16L47/03
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024172750
(22)【出願日】2024-10-01
(62)【分割の表示】P 2023067206の分割
【原出願日】2019-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2018022556
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018173987
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】近藤 陸太
(72)【発明者】
【氏名】森高 紘平
(72)【発明者】
【氏名】人見 誠一
(72)【発明者】
【氏名】田中 将成
(57)【要約】
【課題】管本体の外周面を削り取ったことを、様々な向きに配置した状態で視認可能な樹脂管を提供する。
【解決手段】樹脂管1は、オレフィン系樹脂で形成された管本体11と、管本体の外周面に、管本体11の全長にわたって延びるように形成された帯状部13と、を備え、管本体11の周方向のいずれの位置でも、管本体11と帯状部13との境界線13aが視認可能であり、管本体11及び帯状部13それぞれの色における、JIS Z8781-4:2013に規定されたL*a*b*表色系における色差が1以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂管と、
電気融着分岐管と、
を備える管路構造であって、
前記樹脂管は、
オレフィン系樹脂で形成された管本体と、
前記管本体の外周面に、前記管本体の全長にわたって延びるように形成された帯状部と、
を備え、
前記樹脂管を前記管本体の軸線方向に見たときに、前記樹脂管の外周面のうち、周方向に隣り合う、前記管本体と前記帯状部との複数の境界線の間の部分に対する中心角がいずれも180°以下であり、
前記管本体及び前記帯状部それぞれの色における、JIS Z8781-4:2013に規定されたL*a*b*表色系における色差が1以上であり、
前記電気融着分岐管は、前記管本体の外周面に固定され、
前記管本体の外周面に沿った前記帯状部間の前記周方向の長さよりも、前記電気融着分岐管のうち前記管本体の外周面に接触している部分の前記周方向の長さが長い管路構造。
【請求項2】
前記帯状部の厚さが0.02mm以上2.0mm以下であり、
前記管本体の厚さが前記帯状部の厚さよりも厚い、請求項1に記載の管路構造。
【請求項3】
前記帯状部が前記管本体の軸線に直交する平面に対してなす角度であるリード角が85°以上である請求項1又は2に記載の管路構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の管路構造の前記樹脂管と筒状の電気融着継手とを接続する管路構造の接続方法であって、
前記樹脂管の前記帯状部を、前記管本体の軸線方向の端から、前記軸線方向に沿って予め定められた挿入長さよりも長く削り取る削除工程と、
前記削除工程の後で、前記電気融着継手内に前記樹脂管を前記挿入長さ挿入し、前記樹脂管と前記電気融着継手とを電気融着する融着工程と、
を行う管路構造の接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路構造及び管路構造の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水等の流体を搬送するのに、金属に代えてポリエチレン樹脂等のオレフィン系樹脂で形成された樹脂管(管本体)を用いることが検討されている。管をオレフィン系樹脂で形成することにより、管が腐食するのが抑えられる。
オレフィン系樹脂で形成された樹脂管には接着剤が付きにくいため、樹脂管を軸線方向に延長したり分岐したりするのに、電気融着方法が用いられる(例えば、特許文献1参照)。電気融着方法では、樹脂管と電気融着継手等とを互いに接触させた状態で、加熱して互いに溶融させることで、樹脂管と電気融着継手等とが接続される。
【0003】
樹脂管の外面には、酸化被膜等が形成される。酸化被膜等が形成された状態では、樹脂管の外面に電気融着継手を接続しにくい。このため、樹脂管の外面における削り取った(スクレープした)部分に、電気融着継手等を電気融着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂管の外面を削り取ったか否かが分かりやすいように、樹脂管の外面に油性のペン等で目印を記載し、この目印の一部を削り取ることが行われている。樹脂管に目印の残部が記載されていると、樹脂管の外面を削り取ったことを視認することができる。
しかしながら、樹脂管に目印を記載する作業は煩雑である。また、樹脂管を様々な向きに配置しても、目印が視認できることが望まれている。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、管本体の外周面を削り取ったことを、様々な向きに配置した状態で視認可能な樹脂管を用いた管路構造、及びこの管路構造の接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の管路構造は、樹脂管と、電気融着分岐管と、を備える管路構造であって、前記樹脂管は、オレフィン系樹脂で形成された管本体と、前記管本体の外周面に、前記管本体の全長にわたって延びるように形成された帯状部と、を備え、前記樹脂管を前記管本体の軸線方向に見たときに、前記樹脂管の外周面のうち、周方向に隣り合う、前記管本体と前記帯状部との複数の境界線の間の部分に対する中心角がいずれも180°以下であり、前記管本体及び前記帯状部それぞれの色における、JIS Z8781-4:2013に規定されたL*a*b*表色系における色差が1以上であり、前記電気融着分岐管は、前記管本体の外周面に固定され、前記管本体の外周面に沿った前記帯状部間の前記周方向の長さよりも、前記電気融着分岐管のうち前記管本体の外周面に接触している部分の前記周方向の長さが長いことを特徴としている。
【0008】
この発明によれば、管本体及び帯状部それぞれの色における色差が1以上であり、周方向のいずれの位置でも管本体と帯状部との境界線が視認可能であるため、樹脂管を様々な向きに配置した状態で、管本体と帯状部との境界線を容易に視認することができる。
従って、帯状部が削り取られていることを視認することにより、管本体の外周面を削り取ったことを、様々な向きに樹脂管を配置した状態で視認することができる。
また、樹脂管と電気融着分岐管とを電気融着により接続する際に、管本体の外周面を、周方向に沿って、電気融着分岐管が管本体の外周面に接触する長さよりも長く削り取る。管本体の外周面に沿った帯状部間の周方向の長さよりも、電気融着分岐管のうち管本体の外周面に接触している部分の周方向の長さが長いため、帯状部の少なくとも一部が削り取られる。このため、電気融着分岐管が電気融着される管本体の外周面を削り取ったことを視認することができる。
【0009】
また、上記の管路構造において、前記帯状部の厚さが0.02mm以上2.0mm以下であり、前記管本体の厚さが前記帯状部の厚さよりも厚くてもよい。
【0010】
また、上記の管路構造において、前記帯状部が前記管本体の軸線に直交する平面に対してなす角度であるリード角が85°以上であってもよい。
この発明によれば、帯状部が管本体の軸線に対して傾き、管本体の全長にわたって延びる帯状部の外観が低下するのを抑制することができる。
【0011】
また、本発明の管路構造の接続方法は、上記のいずれかに記載の樹脂管と筒状の電気融着継手とを接続する樹脂管の接続方法であって、前記樹脂管の前記帯状部を、前記管本体の軸線方向の端から、前記軸線方向に沿って予め定められた挿入長さよりも長く削り取る削除工程と、前記削除工程の後で、前記電気融着継手内に前記樹脂管を前記挿入長さ挿入し、前記樹脂管と前記電気融着継手とを電気融着する融着工程と、を行うことを特徴としている。
この発明によれば、電気融着継手内に樹脂管を挿入する長さよりも帯状部を削り取る長さの方が長い。これにより、樹脂管と電気融着継手とを接続した後でも、帯状部のうち、削り取られた部分と、削り取られずに残った部分との境界線が外部に露出し、樹脂管の外面を削り取ったことを視認することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の管路構造によれば、電気融着分岐管が電気融着される管本体の外周面を削り取ったことを視認することができる。また、本発明の管路構造の接続方法によれば、樹脂管と電気融着継手とを接続した後でも、樹脂管の外面を削り取ったことを視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態の樹脂管の斜視図である。
【
図5】同樹脂管の製造装置を模式的に示す図である。
【
図6】同樹脂管及び電気融着継手を備える管路構造の側面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態の樹脂管の接続方法における削除工程を説明する斜視図である。
【
図8】本発明の第1実施形態の変形例における樹脂管の側面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態の管路構造の斜視図である。
【
図10】同管路構造の樹脂管を平面状に展開した図である。
【
図11】同樹脂管の帯状部の幅を測定する方法を説明する側面図である。
【
図12】本発明の実施例1の樹脂管を示す写真である。
【
図13】本発明の実施例2の樹脂管を示す写真である。
【
図14】本発明の実施例3の樹脂管を示す写真である。
【
図15】本発明の実施例4の樹脂管を示す写真である。
【
図16】本発明の実施例5の樹脂管を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る樹脂管の第1実施形態を、
図1から
図8、及び
図11を参照しながら説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の樹脂管1は、管本体11と、4本の帯状部13と、を備えている。なお、以下の図では、管本体11と帯状部13とを区別するために、帯状部13にドットによるハッチングを付加して示している。
管本体11は、オレフィン系樹脂であるポリエチレン樹脂を用いて管状に形成されている。ポリエチレン樹脂は、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂等でもよい。なお、オレフィン系樹脂は、ポリエチレン樹脂以外に、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂等でもよい。例えば、管本体11の厚さ(管本体11の径方向の長さ)は、5mm以上50mm以下である。管本体11の長さは、5mである。
オレフィン系樹脂はガラス繊維や炭素繊維、ワラストナイト等の無機繊維を含有していてもよい。さらに、管本体11を、無機繊維を含有する層や酸素バリア性の材料を含む層等の他の層と、オレフィン系樹脂層と、が積層された多層管としてもよい。管本体11を多層管とする場合、視認性のため最外層に帯状部13が形成される。電気融着継手と接続するために、オレフィン系樹脂層は他の層よりも外側とされていることが好ましいが、この場合、他の層よりも外層とされたオレフィン系樹脂層に帯状部13が形成される。
以下の説明においては、管本体11の周方向を単に周方向と言い、管本体11の径方向を単に径方向と言う。
【0015】
帯状部13は、管本体11の外周面に形成されている。帯状部13は、管本体11の全長にわたって延びている。この例では、各帯状部13は、管本体11の軸線Cに沿って配置されている。各帯状部13は、軸線C周りに互いに間隔を空けて等角度ごとに配置されている。各帯状部13の厚さ(管本体11の径方向の長さ)は、管本体11の厚さに応じて適宜決定され、例えば、0.02mm以上2.0mm以下が好ましく、0.05mm以上1.0mm以下がより好ましく、0.1mm以上0.5mm以下がさらに好ましい。各帯状部13の厚さをこの範囲とすることにより、厚さが大きすぎず、電気融着継手との接続の際に行う樹脂管1の表面切削作業により帯状部13を消失させて切削を行ったことを容易に確認することができる。また、厚さが小さすぎず、外部から管本体11の色が帯状部13を通して見えず、帯状部13の識別能力が発揮できる。なお、各帯状部13の厚さは、0.3mm以下であってもよい。さらに帯状部13の厚さが、管本体11の厚さと相関していてもよい。例えば、管本体11の厚さT1は呼び径ごとに異なるため、対応する呼び径ごとに好ましい帯状部13の厚さT2が異なっていてもよい。例えば、管本体11の厚さT1と帯状部13の厚さT2との比T1/T2が、10以上200以下、好ましくは20以上150以下であってもよい。この範囲の下限値以上とすることで、管本体11の厚さに対して帯状部13が厚くなりすぎず、帯状部13を削り取るのが容易である。また、この範囲の上限値以下とすることで、帯状部13が十分な厚さであり、帯状部13の識別能力を十分に発揮することができる。さらに、帯状部13は、例えば管本体11と共押出成形により形成されてもよく、管本体11を押出成形した後、管本体11の表面に印刷してもよい。
帯状部13の周方向の長さは、管本体11の軸線C方向の位置によらず一定であることが好ましい。
【0016】
帯状部13の径方向の幅は、管本体11の外径に応じて適宜決定され、4mm以上50mm以下とされ、8mm以上40mm以下が好ましい。また、管本体11の外径に対する帯状部13の幅の比率は、5%以上30%以下とされ、7%以上25%以下が好ましい。ここで言う管本体11の外径に対する帯状部13の幅の比率とは、帯状部13の幅を管本体11の外径で除した値の、100倍の値のことを意味する。帯状部13の幅をこの範囲とすることにより、幅が狭すぎないため、どのような方向から視認しても帯状部13の識別能力を発揮することができる。また、幅が広すぎないため、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0017】
なお、帯状部13の径方向の幅は、例えば
図11に示すように、公知のノギス71を使用して測定することができる。ノギス71の本体72に沿ってスライダー73を移動し、測定対象となる帯状部13の径方向外側から見た
図11に示す状態のときに、一対のジョウ75,76の外側用測定面75a,76aを、帯状部13の各第1境界線13aにそれぞれ一致させる。このとき、外側用測定面75a,76aが管本体11の軸線Cに沿うように配置されることが好ましい。
ノギス71の表示部77に表示された値や目盛りを読んで、帯状部13の幅を測定する。帯状部13の幅は、このような測定方法により規定される。
【0018】
図1及び
図2に示すように、管本体11の外周面のうち帯状部13が形成されていない管本体11の露出面11aと帯状部13の外面とは、面一である。管本体11の露出面11aと帯状部13の外面との接続部分における径方向の段差は、2.0mm以下であり、実質的に段差がないことが好ましい。周方向において、管本体11の露出面11aの長さと帯状部13の外面の長さとは、互いに同等でもよいし、互いに異なっていてもよい。帯状部13の外面の長さよりも、管本体11の露出面11aの長さが長いことが好ましい。 なお、4本の帯状部13は、軸線C周りに等角度ごとに配置されていなくてもよい。樹脂管1が備える帯状部13の本数は特に限定されず、1本から3本でもよいし、5本以上でもよい。
【0019】
帯状部13は、管本体11と同一の材料で形成されていることが好ましい。
管本体11及び帯状部13それぞれの色における、JIS Z8781-4:2013に規定されたL*a*b*表色系における色差(ΔE)は、1以上である。この色差は、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、30以上であることがより一層好ましい。例えば、管本体11は青色であり、帯状部13は赤色である。
管本体11の色又は帯状部13の色における、JIS Z8781-4:2013に規定されたL*a*b*表色系における明度(L*)は、20以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましい。管本体11の色又は帯状部13の色の明度が20以上であると、樹脂管1が設置されるパイプスペース等の暗所でも、管本体11又は帯状部13を視認できる。なお上記表色系において、Lが40以上(好ましくは50以上)で、aの絶対値およびbの絶対値がいずれも10以下の場合、帯状部13を灰色にすることができる。灰色の樹脂管1は、日本国内では建築構造物における排水管として用いられる。したがって、例えば、帯状部13を灰色とすることで、管本体11そのものを灰色にしなくても、樹脂管1の用途が排水管であることを示唆することができる。その結果、例えば、給水管と排水管とで共通の色(例えば、青色)の管本体11を採用し、排水管として用いる管本体11にのみ、帯状部13を付加することで、給水管と排水管との識別を実現すること等ができる。これにより、例えば、製造コストの低減を図ること等ができる。なお排水管では、内部を流通する流体の圧力が基本的に低く、管本体11の肉厚を薄くすることができる。
【0020】
色差は、分光色差計(ハンディ型分光色差計「NF333」日本電色工業(株)製)を用いて測定できる。暗室等の周囲を暗くした状況で、色差を測定することが好ましい。 ここで、色差(ΔE)は、以下の式(1)で算出される。
ΔE=√((L1-L2)2+(a1-a2)2+(b1-b2)2)・・・(1) なお、式(1)中、L1、a1、b1はそれぞれ帯状部13の明度L、赤色方向の色度a、黄色方向の色度bを表し、L2、a2、b2はそれぞれ管本体11の明度L、赤色方向の色度a、黄色方向の色度bを表す。
【0021】
図3、
図4に、
図2におけるA1方向、A2方向の矢視図を示す。
図3は、管本体11の周方向において、帯状部13に対向する位置から樹脂管1を見た側面図である。
図3は、管本体11の周方向において、管本体11の露出面11aに対向する位置から樹脂管1を見た側面図である。
【0022】
図3及び
図4に示すように、樹脂管1において、管本体11と帯状部13との周方向の境界線である第1境界線(境界線)13aを規定する。各帯状部13に対応して、2つの第1境界線13aが形成されている。樹脂管1の施工作業をする作業者が周方向のいずれの位置から見ても、樹脂管1の外部から第1境界線13aが視認可能である。
周方向のいずれの位置でも第1境界線13aが視認可能であることは、例えば、周方向に隣り合う第1境界線13a間の樹脂管1の外周面に沿った距離が、樹脂管1の全周にわたる外周面の長さの半分以下となることを意味する。また言い換えれば、
図2に示すように、樹脂管1の外周面のうち、周方向に隣り合う第1境界線13aの間の部分に対する中心角θ
1がいずれも180°以下であることを意味する。この例では、4本の帯状部13が軸線C周りに90°ごとに配置されているため、周方向のいずれの位置でも第1境界線13aが視認可能である。
【0023】
第1境界線13aは、管本体11の軸線C方向の端部において、周方向のいずれの位置でも視認可能であればよい。第1境界線13aは、管本体11の軸線C方向の位置によらず、周方向のいずれの位置でも視認可能であることがより好ましい。
【0024】
図1に示すように、管本体11の露出面11aには、ステンシル(指標部)15が設けられている。ステンシル15は、例えば樹脂管1の商品名、型番等を表す。ステンシル15は、管本体11に近い材料等により形成されたインクを用いた印刷等により形成されている。ステンシル15は、軸線Cに沿って配置されている。
【0025】
次に、以上のように構成された樹脂管1を製造する製造装置について説明する。
図5に示すように、製造装置51は、共押出成形機52と、冷却部53と、引取り機54と、印刷機55と、切断機56と、を備えている。なお、
図5では、後述する成形金型52aのうち第2流路52cを形成する部分を、内部が見やすいように二点鎖線で示している。共押出成形機52、冷却部53、引取り機54、印刷機55、及び切断機56は、この順で樹脂管1(後述する連続樹脂管1A)が搬送される上流側から下流側に向かって並べて配置されている。
【0026】
共押出成形機52が有する成形金型52aには、第1流路52b及び第2流路52cが形成されている。本実施形態では、成形金型52aに4つの第2流路52cが形成されている。4つの第2流路52cは、第1流路52bに第1流路52bの側方から合流する。第1流路52bには、管本体11を形成する樹脂材料が溶融した状態で供給される。第2流路52cには、帯状部13を形成する樹脂材料が溶融した状態で供給される。
成形金型52aから下流側には、連続樹脂管1Aが押し出される。連続樹脂管1Aは、樹脂管1が軸線C方向に連続的に連なったものである。
【0027】
冷却部53は、水槽等で構成されている。冷却部53は、共押出成形機52で成形された連続樹脂管1Aを水等を用いて冷却する。
図示はしないが、引取り機54は複数の無限軌道を有している。複数の無限軌道は、連続樹脂管1Aの軸線周りに互いに間隔を空けて配置されている。複数の無限軌道は、連続樹脂管1Aの外周面に接触している。各無限軌道が所定の方向に回転すると、連続樹脂管1Aが下流側に引き取られる。
【0028】
印刷機55は、連続樹脂管1Aの露出面11a等にステンシル15を印刷する。なお、印刷機55は冷却部53と引取り機54との間に配置されてもよい。切断機56は、連続樹脂管1Aを所定の長さに切断して、樹脂管1にする。
以上説明した製造装置51により、樹脂管1が製造される。
【0029】
次に、以上のように構成された樹脂管1と電気融着継手とを接続する樹脂管1の接続方法について説明する。
ここで、電気融着継手について説明する。
図6に示すように、電気融着継手21は、公知のものであり円筒状に形成されている。電気融着継手21は、継手本体22と、一対のコネクタ取付け部23と、図示しない電熱線と、を有している。
【0030】
継手本体22は、樹脂管1と同一の樹脂材料で円筒状に形成されている。継手本体22の内径と管本体11の外径とは、互いに同程度である。継手本体22の端部は、継手本体22の受け口となる。
継手本体22の内周面における継手本体22の軸線方向の中心には、ストッパ25が設けられている。例えば、ストッパ25は環状に形成されている。例えば、継手本体22の軸線方向において、継手本体22の長さからストッパ25の長さを引いた値を2で割った長さが、電気融着継手21内に樹脂管1を挿入する挿入長さL1である。挿入長さL1は、電気融着継手21及び樹脂管1の仕様等に応じて予め定められている。
【0031】
継手本体22の外面の色は、挿入される樹脂管1の管本体11または帯状部13の色のいずれかと略同一とされている。これにより、樹脂管1どうしを接続している電気融着継手の用途が樹脂管1と同一であることが容易に判断できる。なお、継手本体22の外面の色が樹脂管1の管本体11または帯状部13の色と略同一であるとは、互いの色差が10未満であることを意味し、8未満であることが好ましく、5未満であることがより好ましい。
継手本体22の内面の色は管本体11の色または帯状部13の色のいずれであってもよく、これらとは別の色であってもよい。また、継手本体22の外面の色は管本体11および帯状部13の色の両方を備えていてもよい。さらに、継手本体22とは別に設けた識別部材が管本体11または帯状部13の色を備えていてもよく、識別部材は電気融着条件を表すバーコードやそれが書き込まれるバーコード台紙、これらを継手本体22に取り付けるためのタグであってもよい。
【0032】
電熱線は、継手本体22の内周面側に埋設されている。電熱線は、電流が流れると発熱する。
各コネクタ取付け部23は、継手本体22の軸線方向の端部における外周面にそれぞれ取付けられている。コネクタ取付け部23は、電熱線の端部に電気的に接続されている。
【0033】
続いて、樹脂管1の接続方法について説明する。
まず、削除工程(ステップS1)において、
図7に示すように、作業者は樹脂管1の外周面を削り取る。削り取るのには、公知のスクレーパが用いられる。スクレーパは、管本体11の外周面を削り取る機械である。
削り取る軸線C方向の長さは、管本体11の軸線C方向の端から、軸線C方向に沿った長さL
2(以下、削り取り長さL
2と言う)である。管本体11の外周面を削り取る際には、削り取り長さL
2に対応する範囲における4本の帯状部13を全て削り取る。すなわち、例えば、管本体11の外周面を約0.3mm削り取る。
図6に示すように、削り取り長さL
2は挿入長さL
1よりも長い。
一般的なスクレーパでは、1回当たりに削り取れる管本体11の厚さは約0.15mmである。スクレーパで管本体11の外周面を全周にわたって2回削ると、管本体11の外周面が約0.3mm削り取られる。
【0034】
次に、融着工程(ステップS3)において、
図6に示すように、電気融着継手21の継手本体22内に樹脂管1の管本体11を挿入長さL
1挿入し、樹脂管1と電気融着継手21とを電気融着する。削り取り長さL
2は挿入長さL
1よりも長いため、帯状部13のうち、削り取られた部分と、削り取られずに残った部分との軸線C方向の境界線である第2境界線13bが外部に露出し、外部から第2境界線13bを視認できる。
電気融着をする際には、図示しない接合用コントローラのコネクタをコネクタ取付け部23に接続する。接合用コントローラを操作して、コネクタ及びコネクタ取付け部23を通して電気融着継手21の電熱線に電流を流す。電熱線が発熱して電気融着継手21の継手本体22及び樹脂管1の管本体11が一時的に溶融し、一対の樹脂管1が電気融着継手21を介して接続される。この融着工程S3は、前述の削除工程S1の後で行われる。 以上で、樹脂管1の接続方法の全工程が終了する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の樹脂管1によれば、管本体11及び帯状部13それぞれの色における色差が1以上であり、周方向のいずれの位置でも管本体11と帯状部13との第1境界線13aが視認可能であるため、樹脂管1を様々な向きに配置した状態で第1境界線13aを容易に視認することができる。
従って、帯状部13が削り取られていることを視認することにより、管本体11の外周面を削り取ったことを、様々な向きに樹脂管1を配置した状態で視認することができる。これにより、樹脂管1を他の種類の樹脂管に接続する、いわゆるクロスコネクションを防止することができる。
【0036】
また、本実施形態の樹脂管1の接続方法によれば、挿入長さL1よりも削り取り長さL2の方が長い。これにより、樹脂管1と電気融着継手21とを接続した後でも、帯状部13の第2境界線13bが外部に露出し、樹脂管1の外面を削り取ったことを視認することができる。
【0037】
なお、
図8に示す樹脂管1Bのように、帯状部13が管本体11の外周面に螺旋状に形成されていて、帯状部13が管本体11の軸線Cに直交する平面Pに対してなす角度であるリード角θ
2が85°以上90°未満であってもよい。なお、帯状部13が管本体11の軸線Cに沿って配置されている場合は、リード角θ
2は90°になる。このように構成することで、帯状部13が管本体11の軸線Cに対して傾き、管本体11の全長にわたって延びる帯状部13の外観が低下するのを抑制することができる。
【0038】
樹脂管1の帯状部13の厚さは、0.30mm以下であってもよい。一般的に、スクレーパを用いると、1回当たりに削り取れる樹脂管の厚さは約0.15mmである。樹脂管をスクレーパで削ったときに削りムラが生じることがあるため、樹脂管の外周面を2回削ることがある。樹脂管1をスクレーパにより、削りムラ対策を含めて削り取る作業の中で、樹脂管1の外周面を約0.3mm削り取るため、スクレーパを用いた通常の作業の範囲内で、樹脂管1の端部から帯状部13を削り取ることができる。
樹脂管1の帯状部13の厚さは、0.15mm以下であってもよい。このように構成することで、管本体11の外周面をスクレーパで全周にわたって1回削り取るだけで、管本体11から帯状部13を削り取ることができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図9及び
図10を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図9及び
図10に示すように、本実施形態の管路構造2は、前述の樹脂管1と、電気融着分岐管31と、を備えている。なお、
図10では、管本体11の外周面に電気融着分岐管31の後述する支持板32が接触している範囲を、二点鎖線で示している。
電気融着分岐管31は、支持板32と、分岐管33と、コネクタ取付け部34と、図示しない電熱線と、を有している。
【0040】
支持板32は、板材が半円筒状に湾曲した形状に形成されている。支持板32の内側の面の内径(管本体11の周方向の曲率半径)と管本体11の外径とは、互いに同程度である。
分岐管33は、支持板32の外側の面から外側に突出している。分岐管33は、支持板32を貫通している。分岐管33の外径は、樹脂管1の管本体11の外径よりも小さい。 電熱線は、支持板32の内側の面側に埋設されている。各コネクタ取付け部34は、支持板32の外側の面に、分岐管33を軸線C方向に挟むように取付けられている。コネクタ取付け部34は、電熱線の端部に電気的に接続されている。
電気融着分岐管31の支持板32は、電気融着により管本体11の外周面に固定されている。
【0041】
樹脂管1の外周面は、公知のハンドスクレーパ等により、周方向において部分的に削り取られている。ここで、電気融着分岐管31のうち管本体11の外周面に接触している部分である、支持板32の内側の面の周方向の長さを、接触長さL4とする。接触長さL4は、樹脂管1の外周面が削り取られた範囲である削除領域Rの周方向の長さである削除長さL5よりも短い。樹脂管1の削除領域R内に電気融着分岐管31の支持板32を配置するため、接触長さL4は削除長さL5よりも短くなる。同様に、支持板32の内側の面の軸線C方向の長さは、削除領域Rの軸線C方向の長さよりも短い。
また、接触長さL4は、管本体11の外周面に沿った帯状部13間の周方向の長さである帯状部間長さL6よりも長い。このため、樹脂管1に削除領域Rを形成する際に、帯状部13の少なくとも一部が削り取られる。従って、帯状部13のうち、削り取られた部分と、削り取られずに残った部分との第3境界線13cが形成される。この第3境界線13cは、樹脂管1と電気融着分岐管31とを電気融着により接続した後でも、外部から視認できる。樹脂管1と電気融着分岐管31とを接続すると、樹脂管1の管本体11内の管路と電気融着分岐管31の分岐管33内の管路とが、互いに連通する。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の管路構造2によれば、樹脂管1と電気融着分岐管31とを電気融着により接続する際に、管本体11の外周面を周方向に沿って、電気融着分岐管31が管本体11の外周面に接触する接触長さL4よりも長い削除長さL5にわたって削り取る。帯状部間長さL6よりも接触長さL4の方が長いため、帯状部13の少なくとも一部が削り取られる。このため、電気融着分岐管31が電気融着される管本体11の外周面を削り取ったことを、第3境界線13cにより視認することができる。
【0043】
以上、本発明の第1実施形態及び第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
例えば、前記第1実施形態及び第2実施形態では、樹脂管にステンシル15が設けられなくてもよい。
【実施例0044】
次に、上記第1実施形態に係る樹脂管1の実施例1~5について説明する。なお実施例1~5では、後述する表1に示すように、互いの口径(呼び径)が異なっている。
【0045】
実施例1~5(各樹脂管10A~10E)の帯状部13におけるL*a*b*表色系の各計測値を表1に示す。なお表1において、各実施例について3種類のL*a*b*表色系の計測値が記載されている。これらはそれぞれ、帯状部13において異なる3か所で計測した結果を示す。
【0046】
【0047】
実施例1~5の管本体11におけるL*a*b*表色系の各計測値を表2に示す。
【0048】
【0049】
実施例1~5の帯状部13と管本体11との色差△Eを表3に示す。なお表3において、各実施例について3種類の色差△Eが記載されている。これらはそれぞれ、帯状部13および管本体11それぞれにおいて異なる3か所で計測した結果を示す。
【0050】
【0051】
上記実施例1~5の各樹脂管10A~10Eを、
図12~
図16に示す。肉眼で確認したところ、管本体11は青色、帯状部13は灰色であることが認められ、両者間の境界線13aについても認識することができた。
【0052】
なお参考に、従来の排水管に用いられる灰色の樹脂管について、5つの試験体におけるL*a*b*表色系の各値を表4に示す。
【0053】