(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174178
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】実生苗の生産方法
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20241206BHJP
A01G 22/00 20180101ALI20241206BHJP
【FI】
A01G7/00 601Z
A01G22/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024173115
(22)【出願日】2024-10-02
(62)【分割の表示】P 2021099483の分割
【原出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮内 謙史郎
(72)【発明者】
【氏名】中浜 克彦
(72)【発明者】
【氏名】浦田 信明
(72)【発明者】
【氏名】根岸 直希
(57)【要約】
【課題】本発明は、播種時期及び出荷時期を調整でき、播種から短期間で品質が均一で良好な苗を生産する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、木本植物の種子を培土に播種し、培土の温度を、その平均値である平均培土温度が20~30℃となるように、かつ、培土の温度と平均培土温度との変動幅が±5℃となるように調整し、発芽した毛苗を得る発芽工程を含む、実生苗の生産方法を提供する。該方法は、発芽工程において得られる毛苗を育苗し、植林可能な実生苗を得る育苗工程をさらに含むことが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木本植物の種子を培土に播種し、培土の温度を、その平均値である平均培土温度が20~30℃となるように、かつ、培土の温度と平均培土温度との変動幅が±5℃となるように、調整し、発芽した毛苗を得る発芽工程を含む、実生苗の生産方法。
【請求項2】
発芽工程は、月平均気温が20℃未満の時期か、又は10月~4月の時期に実施する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
発芽工程の期間は、播種から20~50日間である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
平均培土温度との変動幅が±3℃以内となるように調整する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
培土の温度の調整を、人工気象機、発芽室、または、園芸用保温マットの少なくともいずれか1つにより行う、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
発芽工程において得られる毛苗を育苗し、植林可能な実生苗を得る育苗工程をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の実生苗の生産方法。
【請求項7】
発芽した毛苗を、育苗ポットに植え替えた後に育苗工程を行う、請求項1~6のいずれか1項に記載の実生苗の生産方法。
【請求項8】
育苗工程の期間は、11か月以内である、請求項7に記載の実生苗の生産方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の苗の生産方法により実生苗を生産し、得られた実生苗を植林地へ植えつけする、植林地の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実生苗の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実生苗の生産方法は、畑にて育苗を行う裸苗生産、幼苗移植や直接播種など様々な手法で行うコンテナ苗生産の2通りに分けられる。一般の生産者の多くは露地にて裸苗を生産しているが、播種の時期が3~4月に限定される等の影響により、十分な育苗期間が取れず出荷に2年以上掛かるうえ、出荷時期も2~4月に限定される(非特許文献1を参照)。また、野外環境下等、20℃未満や温度変化の大きな環境下では、発芽に長い期間が必要となる。更に、高温環境下(例えば40℃以上)では、一般に、生理傷害のため、発芽率が低下することが多い。
【0003】
特許文献1には、マルチキャビティコンテナに直接播種または毛苗を移植して実生苗を得るにあたり、肥効調整型肥料を用い、肥効期間が育苗期間より短くなるよう調整し、また、窒素量と培土の各使用量を調整して、1年生の苗木を育成する技術が開示されている。この発明によれば、植林後の定着率及び成長の良い十分発達した地上部と根鉢が形成された苗木が得られ、得苗率が増加することが記載されている。
【0004】
非特許文献2には、スギの実生コンテナ苗の生産において、育苗期間中の施肥量と肥料種を調整することにより、苗高と地際直径の成長が促進され、1年で山出し可能なスギ実生コンテナ苗が生産できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】岩倉 宗弘 他12名「新しいコンテナ苗生産方法の提案」森林総合研究所 第4期中長期計画成果20 2019年3月15日発行 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/documents/4th-chuukiseika20.pdf
【非特許文献2】大平 峰子 他1名「スギの実生コンテナ苗を1年で生産するための施肥技術の開発」森林総合研究所 材木育種センター 研究成果選集 2020年 p.44~46 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2020/documents/p44-45.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記先行文献は、苗の成長を促進する技術ではあるものの、播種時期や出荷時期の調整、品質が均一な苗の効率的な生産には不十分であった。
【0008】
本発明は、播種時期及び出荷時期を調整でき、播種から短期間で品質が均一で良好な苗を生産する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の〔1〕~〔9〕を提供する。
〔1〕木本植物の種子を培土に播種し、培土の温度を、その平均値である平均培土温度が20~30℃となるように、かつ、培土の温度と平均培土温度との変動幅が±5℃となるように、調整し、発芽した毛苗を得る発芽工程を含む、実生苗の生産方法。
〔2〕発芽工程は、月平均気温が20℃未満の時期か、又は10月~4月の時期に実施する〔1〕に記載の方法。
〔3〕発芽工程の期間は、播種から20~50日間である、〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕平均培土温度との変動幅が±3℃以内となるように調整する、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の方法。
〔5〕培土の温度の調整を、人工気象機、発芽室、または、園芸用保温マットの少なくともいずれか1つにより行う、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の方法。
〔6〕発芽工程において得られる毛苗を育苗し、植林可能な実生苗を得る育苗工程をさらに含む、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の実生苗の生産方法。
〔7〕発芽した毛苗を、育苗ポットに植え替えた後に育苗工程を行う、〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の実生苗の生産方法。
〔8〕育苗工程の期間は、11か月以内である、〔7〕に記載の実生苗の生産方法。
〔9〕〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の苗の生産方法により実生苗を生産し、得られた実生苗を植林地へ植えつけする、植林地の生産方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発芽を促進して短期間で毛苗を得ることができ、その後の成長を揃えることができることから、出荷時期に応じて育苗期間を十分確保でき、品質が均一で良好な苗を高い得苗率で生産することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔1.実生苗の生産方法〕
実生苗の生産方法は、以下説明するとおり、発芽工程を含み、さらに育苗工程を含むことが好ましい。
〔発芽工程〕
発芽工程においては、木本植物の種子を播種後、発芽前育苗用容器内の培土の温度を20~30℃に調整する。これにより、種子を発芽させることができる。
【0012】
(対象植物)
対象植物は、木本植物である。例えば、スギ属(Cryptomeria)植物(スギ(Cryptomeria japonica)など)、ヒノキ属(Chamaecyparis)植物(ヒノキ(Chamaecyparis obtusa)など)、マツ科(Pinaceae)植物(マツ属(Pinus)植物(クロマツ(Pinus thunbergii)など)、カラマツ属(Larix)植物(カラマツ(Larix kaempferi)、グイマツ(Larix gmelinii)など)、モミ属(Abies)植物(トドマツ(Abies sachalinensis)など)など)、ユーカリ属(Eucalyptus)植物、サクラ属(Prunus)植物(サクラ(Prunus spp.)、ウメ(Prunus mume)、ユスラウメ(Prunus tomentosa)など)、マンゴー属(Mangifera)植物(マンゴー(Mangifera indica)など)、アカシア属(Acacia)植物、ヤマモモ属(Myrica)植物、クヌギ属(Quercus)植物(クヌギなど(Quercus acutissima))、ブドウ(Vitis)属植物、リンゴ(Malus)属植物、バラ属(Rosa)植物、ツバキ属(Camellia)植物(チャ(Camellia sinensis)など)、ジャカランダ属(Jacaranda)植物(ジャカランダ(Jacaranda mimosifolia)など)、ワニナシ属(Persea)植物(アボカド(Persea americana)など)、ナシ属(Pyrus)植物(ナシ(Pyrus serotina Rehder、Pyrus pyrifolia)など)、ビャクダン属(Santalum)植物(ビャクダン(サンダルウッド;Santalum album)など)が例示される。このうち、スギ、ヒノキ、マツ(クロマツ、カラマツ、グイマツ、トドマツなど)、ユーカリ、サクラ、マンゴー、アボカド、アカシア、ヤマモモ、クヌギ、ブドウ、リンゴ、バラ、ツバキ、チャ、ウメ、ユスラウメ、ジャカランタが挙げられ、中でもスギ属植物、ヒノキ属植物、マツ科植物(マツ属植物、カラマツ属植物、モミ属植物など)、ユーカリ属植物、ツバキ属植物、マンゴー属植物、ワニナシ属植物が好ましく、山林苗、すなわち、スギ属植物、ヒノキ属植物、マツ属植物、カラマツ属植物、モミ属植物、ユーカリ属植物がより好ましく、スギ属植物、ヒノキ属植物、マツ属植物、カラマツ属植物、モミ属植物がさらに好ましく、スギ属植物、ヒノキ属植物、カラマツ属植物がさらにより好ましい。
【0013】
(培土の温度)
培土の温度の調整は、その平均値(発芽工程における培土の温度の平均値:平均培土温度)の下限が、通常、20℃以上、好ましくは21℃以上、より好ましくは22℃以上となるように行う。これにより、短期間で種子を発芽させることができる。上限は通常、30℃以下、好ましくは28℃以下、より好ましくは27℃以下である。これにより、種子が乾くことによる発芽の抑制を防ぐことができる。従って、平均培土温度は、20~30℃、好ましくは21~28℃、より好ましくは22~27℃、更により好ましくは22~26℃又は23~27℃に調整する。
【0014】
培土の温度は、発芽工程を通じて平均培土温度に保たれてもよく、又は、変動してもよい。平均培土温度に対する培土の温度の変動幅(最高温度と最低温度の、平均培土温度との差)は、通常、±5℃、好ましくは±4℃、より好ましくは±3℃、更に好ましくは±2℃、更により好ましくは±1℃である。これにより発芽を早めることができ、発芽のばらつきを抑えることができる。培土の温度が変動する場合、最高温度と最低温度は、20~30℃の範囲内であることが好ましい。
【0015】
(温度調整手段)
培土の温度の調整は、温度調整手段を用いて行うことができる。温度調整手段としては、例えば、発芽室、人工気象器、園芸用保温マットが挙げられる。このうち、園芸用保温マットを用いると、培土を直に温度調整することができ、また苗の品質が良く、得苗率が高いので好ましい。
【0016】
培土の温度の確認は、温度センサーを用いた定期的な測定(例えば8~15分間隔)によればよい。温度センサーは、培土の表面から1~3cmの位置に設置すればよい。
【0017】
(培土)
発芽工程で用いる培土は、温度調整が可能であればよく、例えば、砂、土(例、赤玉土、鹿沼土)等の自然土壌;籾殻燻炭、ココナッツ繊維、バーミキュライト、パーライト、ピートモス、ガラスビーズ、籾殻等の人工土壌;発泡フェノール樹脂、ロックウール等の多孔性成形品;固化剤(例、寒天又はゲランガム)、これらのうち2以上の組み合わせが挙げられ、自然土壌が好ましく、土がより好ましく、赤玉土が更に好ましい。自然土壌の粒子のサイズは特に限定されないが、細粒(通常、粒径1~2mm)が好ましい。これにより、良好な保水性が得られ、発芽が促進され得る。ココナッツ繊維は、ココピート(ココナツハスク:ココヤシの果皮から得られる繊維及びその残渣の粉砕物)が好ましい。
【0018】
(容器)
培土は、通常、容器に収容して利用する。これにより、培土の温度管理が容易となり得る。容器は、培土を収容できる収容部を備える容器であればよく、略底部に開口を備える容器が好ましい。例えば、プランター、およびバット(底面または側面に開口を有する箱型容器など)、育苗箱、コンテナ(例、特開2017-079706号公報に記載されたコンテナ、マルチキャビティコンテナ(JFA-150、JFA-300:非特許文献1参照)等)、セルトレー、育苗ポットが挙げられる。容器のサイズは、播種数、播種密度、植物種等の育苗条件に基づき適宜選択でき、一粒播種用でもよいし多粒播種用でもよく、後者(例えば、プランター、バット、育苗箱)が好ましい。これにより、一度に複数の種子を播種し発芽させることができ、効率よく育苗を行うことができる。発芽前育苗用容器の材質は特に限定はなく、例えば、樹脂、ガラス、木材が挙げられる。
【0019】
(播種)
培土への播種は、通常の方法で行えばよい。播種は、一粒播種および多粒播種のいずれでもよいが、育苗効率を考慮すると多粒播種が好ましい。単位面積当たりの播種数は、発芽率によって調整することができ、例えば、発芽率20~30%の種子の場合、通常1.3粒/cm2以上、好ましくは1.8粒/cm2以上である。上限は、通常3.5粒/cm2以下、好ましくは3.0粒/cm2以下である。
【0020】
(発芽工程の実施場所)
発芽工程は、培土の温度調整が可能な場所で実施でき、解放空間(例えば、屋外)及び閉鎖空間(例えば、ビニールハウス内、人工太陽光室内、炭酸ガス培養室内、温室内、屋内)のいずれでもよい。
【0021】
(発芽工程の期間)
発芽工程は、少なくとも発芽が観察されるまで続ければよく、通常、20日以上、好ましくは25日以上である。上限は、通常、45日以下、好ましくは40日以下である。従って、通常は20日~45日、25日~40日が好ましく、約1ヶ月がより好ましい。
【0022】
(発芽工程の実施時期)
発芽工程は、寒冷時に行うことが好ましい。寒冷時とは、月平均気温が20℃未満の時期、又は、10月~4月を意味する。寒冷時に発芽工程を行うことにより、発芽期間を短縮でき、その後の育苗期間を十分に取ることができるので、実生苗の出荷目標時期に応じた実生苗の生産が可能となる。例えば、秋ごろ(例えば10月頃)に出荷可能な実生苗を得ることもできるので、一般的な春植栽だけでなく、秋植栽も可能となり、より柔軟な苗の需給を実現することができる。
【0023】
発芽工程により、播種した種子を発芽させ毛苗を得ることができる。毛苗は、通常、子葉が展開した程度であり、そのサイズは、通常、地上部の大きさが1~3cm程度であり、地下部を含む全体の大きさは、根の長さによるが、3~5cm程度である。
【0024】
〔育苗工程〕
発芽工程の後、育苗工程をさらに行うことが好ましい。育苗工程は、発芽工程において得られる毛苗を育苗する工程である。
【0025】
(培土)
育苗工程においては、発芽工程で用いた培土から毛苗を別の培土へ移植することが好ましい。培土は、発芽工程で用い得る培土の例の中から、保水性、排水性、保肥性等を考慮して、適宜選択して用いることができ、好ましくは、少なくとも1種の人工土壌と少なくとも1種の自然土壌との組み合わせ、又は、少なくとも2種の人工土壌の組み合わせである。自然土壌は、土が好ましく、赤玉土及び鹿沼土がより好ましい。土のサイズは、小粒(例えば、粒径3~6mm)が好ましい。これにより、排水性を高めることができる。人工土壌は、ココナッツ繊維、ピートモス及びバーミキュライトが好ましい。バーミキュライトは、粗粒(例えば、7.0~2.5mmの粒度分布が50%以上)、中粒(例えば、2.5~1.2mmの粒度分布が50%以上)、細粒(例えば、1.2mm以下の粒度分布が50%以上)のいずれでもよいが、粗粒、中粒が好ましい。培土は、ピートモス、鹿沼土及び赤玉土の組み合わせ、又は、ココナッツ繊維、バーミキュライト(中粒、細粒)の組み合わせが好ましい。
【0026】
(育苗用容器)
育苗工程においては、通常、培土を収容する容器(育苗用容器)を用いる。育苗用容器は、発芽工程で用い得る容器の具体例の中から適宜選択すればよいが、マルチキャビティコンテナ(JFA-150、JFA-300:非特許文献1参照)等)、セルトレー、育苗ポット等、1苗ずつ分けて植え付けるタイプの容器が好ましく、マルチキャビティコンテナ又はセルトレーがより好ましい。これにより、コンテナ苗、ポット苗等、植林に適した苗を効率よく得ることができる。
【0027】
(育苗工程の期間)
育苗工程は、通常、11か月以内、好ましくは10か月以内である。期間の下限は、山出し可能な苗が得られる程度まで行えばよく、通常は7か月以上、好ましくは8か月以上が好ましい。
【0028】
(発芽工程から育苗工程完了までの期間)
発芽工程から育苗工程まで(播種から山出し可能な実生苗を得るまで)の期間は、13か月以内が好ましく、12か月以内がより好ましい。これにより、出荷時期の調整が容易になる。
【0029】
(育苗工程の実施時期)
育苗工程の実施時期は、特に制限はないが、通常、月平均気温が5℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上である時期が好ましい。これにより、凍結や霜による凍害の懸念を避けることができる。
【0030】
(育苗の場所)
育苗工程は、解放空間(例えば、屋外)及び閉鎖空間(例えば、ビニールハウス内、炭酸ガス培養室内、温室内、屋内)のいずれで実施してもよい。育苗工程は、発芽した個体(毛苗)を育苗ポットに植え替えた後に行うことが好ましい。発芽した個体(毛苗)のみを選択して育苗できるので、得苗率を向上することができる。また、育苗状況を見ながら環境を調整することができるため、品質が均一で良好な苗を得ることができる。
【0031】
〔任意条件〕
【0032】
-他の成分(元肥など)-
発芽工程、及び必要に応じて行う育苗工程において、培土は、他の成分と共に用いられてもよい。他の成分としては、例えば、元肥、保存剤が挙げられることが好ましい。元肥を含めることにより、苗の生長を促進できる。元肥は特に限定されず、速効性肥料又は緩効性肥料でもよく、無機肥料、有機肥料、化成肥料のいずれでもよい。施肥量は特に限定されず、用いる肥料に適した量が選択できる。元肥に含まれる成分としては、例えば、無機成分、銀イオン、抗酸化剤、炭素源、ビタミン類、アミノ酸類、植物ホルモン類等の植物の栄養素の供給源となり得る成分が挙げられる。元肥の形態は特に限定されず、固形物(例、粉剤、粒剤)、又は液体(例、液肥)のいずれでもよい。
【0033】
無機成分としては、窒素、リン、カリウム、硫黄、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛、ホウ素、モリブデン、塩素、ヨウ素、コバルト等の元素や、これらを含む無機塩が例示される。該無機塩としては例えば、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、リン酸1水素カリウム、リン酸2水素ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ホウ酸、三酸化モリブデン、モリブデン酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、塩化コバルト等やこれらの水和物が挙げられる。無機成分として、上記具体例の中から1種を選択して、或いは2種以上を組み合わせて用いうる。本発明で用いられる液体培地においては、窒素、リン、カリウムが必須元素として含まれることが好ましい。よって、これら無機成分の具体例のうち、窒素、リン、カリウム、窒素を含む無機塩、リンを含む無機塩、及びカリウムを含む無機塩が好ましく、窒素、リン、カリウム、窒素を含む無機塩がより好ましい。無機成分は、液体培地中の濃度が、1種の場合は約1μM~約100mMとなるように添加することが好ましく、約0.1μM~約100mMとなるように添加することがより好ましい。2種以上の組み合わせの場合はそれぞれ約0.1μM~約100mMとなるよう添加することが好ましく、約1μM~約100mMとなるように添加することがより好ましい。
【0034】
銀イオンとしては、例えば、チオ硫酸銀(STS、AgS4O6)、硝酸銀等の銀化合物(銀イオン源)が挙げられ、1種単独でも2種以上の組み合わせでもよく、STSが好ましい。STSは培地中で、チオ硫酸銀イオンの形態を取り、マイナスに帯電していると推測され、これにより健全な根の発根及び伸長を促進に寄与することができる。銀イオンを含む場合、銀イオンの量は、0.5μM~6μMが好ましく、2μM~6μMがより好ましい。
【0035】
抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、亜硫酸塩が挙げられ、アスコルビン酸が好ましい。アスコルビン酸は、培地への残留性が低いため、環境汚染を抑制できる。抗酸化剤を含む場合、その量は、5mg/l~200mg/lが好ましく、20mg/l~100mg/lがより好ましい。
【0036】
炭素源としては、例えば、ショ糖等の炭水化物とその誘導体;脂肪酸等の有機酸;エタノール等の1級アルコール、などの化合物が挙げられる。炭素源として、上記具体例の中から1種を選択して、或いは2種以上を組み合わせて用いうる。炭素源を含む場合、その量は、1g/l~100g/lが好ましく、10g/l~100g/lがより好ましい。
【0037】
ビタミン類としては、例えば、ビオチン、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB4)、ピリドキサール、ピリドキサミン、パントテン酸カルシウム、イノシトール、ニコチン酸、ニコチン酸アミド及びリボフラビン(ビタミンB2)が挙げられる。ビタミン類として、上記具体例の中から1種を選択して、或いは2種以上を組み合わせて用いうる。ビタミン1種を含む場合、その量は、0.01mg/l~200mg/lが好ましく、0.02mg/l~100mg/lがより好ましい。2種以上の組み合わせを添加する場合、それぞれの量は、0.01mg/l~150mg/lが好ましく、0.02mg/l~100mg/lがより好ましい。
【0038】
アミノ酸類としては、例えば、グリシン、アラニン、グルタミン酸、システイン、フェニルアラニン及びリジン等が挙げられる。アミノ酸類は、1種を選択して、或いは2種以上を組み合わせて用いうる。アミノ酸類1種を含む場合、その量は、0.1mg/l~1000mg/lが好ましく、2種以上の組み合わせを含む場合、その合計量は、0.2mg/l~1000mg/lが好ましい。
【0039】
植物ホルモン類としては、例えば、オーキシン類及び/又はサイトカイニン類を使用することができる。オーキシン類としては、ナフタレン酢酸(NAA)、インドール酢酸(IAA)、p-クロロフェノキシ酢酸、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4D)、インドール酪酸(IBA)及びこれらの誘導体等が例示され、これらから選択される1種以上又は2種以上を組み合わせて用い得る。また、サイトカイニン類としてはベンジルアデニン(BA)、カイネチン、ゼアチン及びこれらの誘導体等が例示され、これらから選択される1種以上又は2種以上を組み合わせて用い得る。植物ホルモン類としては、オーキシン類のみ、サイトカイニン類のみ、或いはオーキシン類とサイトカイニン類の両方を組み合わせて用いうる。植物ホルモンを1種類含む場合、その量は0.001mg/l~10mg/lが好ましく、0.01mg/l~10mg/lがより好ましい。2種以上の組み合わせの場合、それぞれの量は0.001mg/l~10mg/lが好ましく、0.01mg/l~10mg/lがより好ましい。
【0040】
(施肥)
発芽工程、及び必要に応じて行う育苗工程においては、育苗の途中で施肥を行ってもよく、育苗工程においては行うことが好ましい。これにより苗の生長を促進できる。肥料としては、元肥として説明したものと同様の具体例が挙げられる。施肥量、時期、施肥方法等の施肥条件は特に限定されず、用いる肥料に適した方法が選択できる。
【0041】
-灌水-
発芽工程、及び必要に応じて行う育苗工程を通じて、通常、適宜灌水を行う。灌水方法は、頭上灌水及び底面灌水のいずれでもよい。底面灌水の方法としては、例えば、育苗容器(開口を有する育苗容器)を水に浸漬する方法、吸水性部材を介して挿し穂に灌水する方法が挙げられる。
【0042】
(温度)
発芽工程、及び必要に応じて行う育苗工程を通じて、温度条件は、特に限定されないが、必要があれば調整してもよい。発芽工程における温度は、例えば、日中温度15~35℃(好ましくは20~35℃)、夜間温度10~25℃(好ましくは10~20℃、より好ましくは15~20℃)に調整してもよい。
【0043】
(湿度)
湿度は植物の種類等栽培条件に応じて調整することができるが、通常は、50%以上、好ましくは60%以上である。これにより、発芽を促進し、育苗を効率よく行うことができる。上限については特に制限はない。
【0044】
(光強度)
発芽工程、及び必要に応じて行う育苗工程を通じて、光強度を調整してもよい。光強度の調整は、光合成有効光量子束密度が好ましくは10μmol/m2/s~1000μmol/m2/s、より好ましくは50μmol/m2/s~500μmol/m2/sがとなるように、例えばLED等の照射装置を用いて行えばよい。波長成分の調整は、650nm~670nmの波長成分と450nm~470nmの波長成分とを含む光が照射されるように、例えば光質変換フィルム等の農業用フィルムを用いて調整することが好ましい。発根の際の炭酸ガス濃度は、通常は300~2000ppm、好ましくは800~1500ppmとなるよう、二酸化炭素透過性の膜を備えた培養容器を人工気象器などの設備内に載置して調整できる。湿度は通常60%以上、好ましくは80%以上に調整できる。
【0045】
〔2.植林地の生産方法〕
得られた実生苗は、植林地又は植林予定地に植え付けることにより、植林地を生産、維持することができる。
【実施例0046】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
[実施例1]
2019年12月に赤玉土細粒(簗島商事(株)製)を敷き詰めた育苗箱(縦30×横50cm×深さ10cm)にスギ種子を播種し、人工気象器(BioTRON NC350、日本医化器械製作所製)にて培土温度を24±2℃の範囲になるよう管理し発芽させた。播種数は、種子の規定の発芽率から、発芽苗数が500苗を超える程度となるように調整した。温度管理は、おんどとり(T&D社製)を用い、センサーを深さ2cmの位置に設置して10分間隔で測定を行った。発芽期間中、適宜頭上灌水を行った。
【0048】
約1ヵ月後に発芽した毛苗を得た。毛苗は、子葉が展開した程度であり、地上部の大きさが約1~3cm、全体のサイズが3~5cm程度であった。毛苗を、ピートモス((株)サン&ホープ製)、鹿沼小粒土(あかぎ園芸(株)製)と赤玉小粒土(簗島商事(株)製)を4:1:1(容量比)を混合した培土を充填した育苗コンテナ容器(特開2017-79706号公報:35cm×45cm四方に24穴)に、1容器あたり1苗ずつ移植し、ビニールハウス内に設置した。育苗期間中、適宜頭上灌水を行うとともに、ハイポネックス原液((株)ハイポネックスジャパン製)を500~2000倍希釈で毎週1回散布した。
【0049】
2020年11月に苗高および根元径を測定した。平均がそれぞれ30cm以上、3.5mm以上であれば、山出し可能なコンテナ苗と判断した。
【0050】
[実施例2]
播種後において、培土の管理を発芽室にて行ったこと、及び、培土温度を23±3℃になるよう管理したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0051】
[実施例3]
播種後において、培土の管理を、ビニールハウス内で、農電園芸マット(園芸用保温マット、1-306(単相100V 160W、0.9m×1.8m)、日本ノーデン(株)製)を育苗箱の下に敷いて行ったこと、培土温度を25±2℃になるよう管理したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0052】
[実施例4]
播種時期を1月、移植時期を2月としたこと、及び、培土温度を22±2℃になるよう管理したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0053】
[実施例5]
播種時期を2月、移植時期を3月としたこと、及び、培土温度を26±2℃になるよう管理したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0054】
[実施例6]
播種時期を3月、移植時期を4月としたこと、及び、培土温度を28±2℃になるよう管理したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0055】
[比較例1]
培土温度の管理を行わなかったこと、発芽した毛苗の移植を翌年5月に行ったこと以外は、実施例1と同様に実施した。発芽までの培土温度は、5±15℃であった。
【0056】
[比較例2]
培土温度の管理を行わなかったこと、播種から移植までは温室で管理したこと以外は、実施例1と同様に実施した。発芽までの培土温度は、10±15℃であった。
【0057】
[比較例3]
播種時期を1月としたこと以外は、比較例1と同様に実施した。発芽までの培土温度は、5±15℃であった。
【0058】
[比較例4]
播種時期を2月としたこと以外は、比較例1と同様に実施した。発芽までの培土温度は、5±15℃であった。
【0059】
[比較例5]
播種を3月としたこと以外は、比較例1と同様に実施した。発芽までの培土温度は、5±15℃であった。
【0060】
表1に、実施例1~6及び比較例1~5における結果を示す。なお、得苗率は、コンテナに移植した毛苗(育苗本数)に対する、育苗後の、苗高30cm以上、根元径3.5mm以上に達した苗の数(得苗数)の比率である(以下同じ)。
【0061】
【0062】
比較例では、1か月後にはほとんど発芽していなかったのに対し、実施例では、ほとんどの種子が発芽し、播種した種子の規定の発芽率に近い値となった。表1から明らかなように、比較例1~5と比較して、実施例1~6では、播種から発芽までの期間が1ヶ月であるにもかかわらず、育苗後、平均苗高が30cm以上、かつ平均根元径が3.5mm以上の苗を得ることができ、山出し可能なコンテナ苗の基準を上回っていた。
【0063】
また、比較例1~5では得苗率が50%以下であったのに対し、実施例1~3では80%以上と高い得苗率が観察された。
【0064】
[実施例7]
2019年12月に赤玉土細粒(簗島商事(株)製)を敷き詰めた育苗箱にヒノキ種子を播種し、人工気象器にて培土温度を24±2℃の範囲になるよう管理し発芽させた。播種数、人工気象器の商品情報、温度管理の方法、灌水の方法は、実施例1と同様とした。
【0065】
約1ヵ月後に発芽した毛苗(実施例1の毛苗と同程度のサイズであった)について、ピートモス((株)サン&ホープ製)、鹿沼小粒土(あかぎ園芸(株)製)と赤玉小粒土(簗島商事(株)製)を4:1:1(容量比)を混合した培土を充填した育苗コンテナ容器に移植し、ビニールハウス内に設置した。育苗期間中、適宜頭上灌水を行うとともに、ハイポネックス原液((株)ハイポネックスジャパン製)を500~2000倍希釈で毎週1回散布した。育苗コンテナ容器は、実施例1で用いたものと同様のものを用いた。
【0066】
2020年11月に苗高および根元径を測定した。平均がそれぞれ30cm以上、3.5mm以上であれば、山出し可能なコンテナ苗と判断した。
【0067】
[実施例8]
播種後において、培土の管理を発芽室にて行ったこと、及び、培土温度を23±3℃になるよう管理したこと以外は、実施例7と同様に実施した。
【0068】
[実施例9]
播種後において、培土の管理を、ビニールハウス内で、農電園芸マット(実施例3と同様)を育苗箱の下に敷いて行ったこと、及び、培土温度を25±2℃になるよう管理したこと以外は、実施例7と同様に実施した。
【0069】
[実施例10]
播種時期を1月、移植時期を2月としたこと、及び、培土温度を22±2℃になるよう管理したこと以外は、実施例7と同様に実施した。
【0070】
[実施例11]
播種時期を2月、移植時期を3月としたこと、及び、培土温度を26±2℃になるよう管理したこと以外は、実施例7と同様に実施した。
【0071】
[実施例12]
播種時期を3月、移植時期を4月としたこと、及び、培土温度を28±2℃になるよう管理したこと以外は、実施例7と同様に実施した。
【0072】
[比較例6]
培土温度の管理を行わなかったこと、発芽した毛苗の移植を翌年5月に行ったこと以外は、実施例7と同様に実施した。発芽までの培土温度は、5±15℃であった。
【0073】
[比較例7]
培土の温度の管理を行わなかったこと、播種から移植までは温室で管理したこと以外は、実施例7と同様に実施した。発芽までの培土温度は、10±15℃であった。
【0074】
[比較例8]
播種時期を1月としたこと以外は、比較例6と同様に実施した。発芽までの培土温度は、5±15℃であった。
【0075】
[比較例9]
播種時期を2月としたこと以外は、比較例6と同様に実施した。発芽までの培土温度は、5±15℃であった。
【0076】
[比較例10]
播種時期を3月としたこと以外は、比較例6と同様に実施した。発芽までの培土温度は、5±15℃であった。
【0077】
表2に、実施例7~12及び比較例6~10における結果を示す。
【0078】
【0079】
比較例では、1か月後にはほとんど発芽していなかったのに対し、実施例では、ほとんどの種子が発芽し、播種した種子の規定の発芽率に近い値となった。表2から明らかなように、比較例6~10と比較して、実施例7~12では、播種から発芽までの期間が1ヶ月であるにもかかわらず、育苗後、平均苗高が30cm以上、かつ平均根元径が3.5mm以上であり、山出し可能なコンテナ苗の基準を回っていた。
【0080】
また、比較例6~10では得苗率が50%に満たなかったのに対し、実施例7~12では70%以上と高い得苗率が観察された。
【0081】
[実施例13]
2019年12月に赤玉土細粒(簗島商事(株)製)を敷き詰めた育苗箱にカラマツ種子を播種し、人工気象器にて培土温度を24±2℃の範囲になるよう管理し発芽させた。播種数、人工気象器の商品情報、温度管理の方法、灌水の方法は、実施例1と同様とした。
【0082】
約1ヵ月後に発芽した毛苗(実施例1の毛苗と同程度のサイズであった)について、ピートモス((株)サン&ホープ製)、鹿沼小粒土(あかぎ園芸(株)製)と赤玉小粒土(簗島商事(株)製)を4:1:1(容量比)を混合した培土を充填した育苗コンテナ容器に移植し、ビニールハウス内に設置した。育苗期間中、適宜頭上灌水を行うとともに、育苗期間中は、ハイポネックス原液((株)ハイポネックスジャパン製)を500~2000倍希釈で毎週1回散布した。育苗コンテナ容器は、実施例1で用いたものと同様のものを用いた。
【0083】
2020年11月に苗高および根元径を測定した。平均がそれぞれ30cm以上、3.5mm以上であれば、山出し可能なコンテナ苗と判断した。
【0084】
[実施例14]
播種後において、培土の管理を発芽室にて行ったこと、及び、培土温度を23±3℃になるよう管理したこと以外は、実施例13と同様に実施した。
【0085】
[実施例15]
播種後において、培土の管理を、ビニールハウス内で、農電園芸マット(実施例3と同様)を育苗箱の下に敷いて行ったこと、及び、培土温度を25±2℃になるよう管理したこと以外は、実施例13と同様に実施した。
【0086】
[実施例16]
播種時期を1月、移植時期を2月としたこと、及び、培土温度を22±2℃になるよう管理したこと以外は、実施例13と同様に実施した。
【0087】
[実施例17]
播種時期を2月、移植時期を3月としたこと、及び、培土温度を26±2℃になるよう管理したこと以外は、実施例13と同様に実施した。
【0088】
[実施例18]
播種時期を3月、移植時期を4月としたこと、及び、培土温度を28±2℃になるよう管理したこと以外は、実施例13と同様に実施した。
【0089】
[比較例11]
培土温度の管理を行わなかったこと、発芽した毛苗の移植を翌年5月に行ったこと以外は、実施例13と同様に実施した。発芽までの培土温度は、5±15℃であった。
【0090】
[比較例12]
培土の温度調整を行わなかったこと、播種から移植までは温室で管理したこと以外は、実施例13と同様に実施した。発芽までの培土温度は、10±15℃であった。
【0091】
[比較例13]
播種時期を1月としたこと以外は、比較例11と同様に実施した。発芽までの培土温度は、5±15℃であった。
【0092】
[比較例14]
播種時期を2月としたこと以外は、比較例11と同様に実施した。発芽までの培土温度は、5±15℃であった。
【0093】
[比較例15]
播種時期を3月としたこと以外は、比較例11と同様に実施した。発芽までの培土温度は、5±15℃であった。
【0094】
表3に、実施例13~18及び比較例11~15における結果を示す。
【0095】
【0096】
比較例では、1か月後にはほとんど発芽していなかったのに対し、実施例では、ほとんどの種子が発芽し、播種した種子の規定の発芽率に近い値となった。表3から明らかなように、比較例11~15と比較して、実施例13~18では、播種から発芽までの期間が1ヶ月であるにもかかわらず、育苗後、平均苗高が30cm以上、かつ平均根元径が3.5mm以上であり、山出し可能なコンテナ苗の基準を上回っていた。
【0097】
また、比較例11~15では得苗率が50%に満たなかったのに対し、実施例13~18では70%以上と高い得苗率が観察された。
【0098】
これらの結果は、本発明によれば、播種後に所定温度調節によって、短期間で効率よく品質が安定した苗を生産できることを示している。