(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174186
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】電池処理方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/54 20060101AFI20241206BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20241206BHJP
【FI】
H01M10/54
H01M10/615
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024173182
(22)【出願日】2024-10-02
(62)【分割の表示】P 2022080848の分割
【原出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯村 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】村松 健一郎
(57)【要約】
【課題】環境負荷を軽減しつつ、電極基板から活物質層を分離可能な電池処理方法を提供する。
【解決手段】電池処理方法は、二次電池を放電して電圧を所定値以下とする工程と、二次電池を粉砕して、活物質、バインダ、電解液、および金属箔を含む粉砕物を得る工程と、粉砕物を減圧下において第1温度で加熱して、電解液を蒸発させる工程と、粉砕物をさらに粉砕して、活物質を金属箔から剥離させる工程と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池を放電して電圧を所定値以下とする工程と、
前記二次電池を粉砕して、活物質、バインダ、電解液、および金属箔を含む粉砕物を得る工程と、
前記粉砕物を減圧下において第1温度で加熱して、前記電解液を蒸発させる工程と、
前記粉砕物をさらに粉砕して、前記活物質を前記金属箔から剥離させる工程と、を含む、電池処理方法。
【請求項2】
前記粉砕物を前記バインダの分解開始温度以上かつ前記第1温度以上の温度である第2温度で加熱する工程をさらに含む、請求項1に記載の電池処理方法。
【請求項3】
前記第1温度は、90℃以上110℃以下である、請求項2に記載の電池処理方法。
【請求項4】
前記第2温度は、120℃180℃以下である、請求項3に記載の電池処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極基板から活物質層を剥離する電池処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
筐体内部に電解液と電池要素とが収容された二次電池は、ビデオカメラ、ノートパソコン、携帯電話などの電子機器、あるいは電気自動車やハイブリッド自動車などの電源として広く利用されている。このため、使用済みの二次電池あるいは使用前に廃棄された二次電池などから有価金属等の再生材料を回収することは、資源の有効利用の観点から重要視されている。
【0003】
このように、有価金属等の再生材料を回収する電池処理方法として、特開2012-195073号公報(特許文献1)には、二次電池を粉砕してセパレータを除去した後に、電極基板と活物質層とを含む粉砕物を400℃~550℃の範囲で加熱し、加熱した粉砕物をさらに粉砕する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の電池処理方法では、活物質層に含まれるバインダを分解するために、400℃~550℃で加熱するため、多量の熱エネルギを消費する。またバインダの分解量が多く、二酸化炭素が排出されやすい。このため、環境への負荷が大きくなってしまう。
【0006】
本開示は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的は、環境負荷を軽減しつつ、電極基板から活物質層を剥離可能な電池処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電池処理方法は、電極基板と、樹脂成分を含みかつ上記電極基板に設けられた活物質層と、を含む粉砕物を準備する工程と、上記樹脂成分の分解開始温度以上、かつ、上記樹脂成分の分解ピーク温度よりも小さい温度で、上記粉砕物を加熱する工程と、上記粉砕物を粉砕する工程と、を備える。上記加熱する工程において、上記樹脂成分を軟化させ、上記粉砕する工程において、上記樹脂成分が軟化した状態にある上記粉砕物を粉砕することにより上記電極基板から上記活物質層を剥離する。
【0008】
上記構成を有する場合には、樹脂成分の分解開始温度以上、かつ、樹脂成分の分解ピーク温度よりも小さい温度で粉砕物を加熱するため、熱エネルギの消費を抑制しつつ、低い温度で樹脂成分を軟化させることができる。また、樹脂成分の分解を抑制できるため、排出される二酸化炭素も軽減することができる。さらに、樹脂成分が軟化した状態にある粉砕物を粉砕することにより、電極基板から上記活物質層を剥離することができる。このように、環境負荷を軽減しつつ、電極基板から活物質層を剥離することができる。
【0009】
上記本開示の電池処理方法にあっては、上記活物質層が剥離された上記電極基板の破片を平面的に展開した場合の上記破片の粒子サイズが400mm2以上1000mm2以下であり、上記電極基板からの上記活物質層の剥離率が80%以上であってもよい。
【0010】
上記構成を有することにより、活物質層が剥離された上記電極基板の破片が比較的大きな場合であっても、活物質層を電極基板から効率的に剥離することができる。
【0011】
上記本開示の電池処理方法にあっては、上記加熱する工程と上記粉砕する工程とを同時に実施してもよい。
【0012】
上記構成を有する場合には、加熱と粉砕とが同時に行なわれるため、粉砕物を加熱した後に、加熱された粉砕物を粉砕工程に搬送することが不要となるため、処理工程を簡略化することができる。
【0013】
上記本開示の電池処理方法にあっては、上記加熱する工程と上記粉砕する工程とを繰り返し実施してもよい。
【0014】
上記構成を有することにより、粉砕された電極基板の破片に付着した活物質層に含まれる樹脂成分をさらに軟化させて、電極基板の破片から活物質層をさらに剥離することができる。
【0015】
上記本開示の電池処理方法にあっては、上記準備する工程において、上記粉砕物としてセパレータを含むものを準備することが好ましく、上記粉砕する工程において、上記セパレータと、上記電極基板と、上記活物質層とが分離されることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、低い温度で粉砕物を加熱することができるため、セパレータが活物質層に溶着することを防止でき、粉砕物にセパレータが含まれる場合でも、電極板から活物質層を分離することができる。このため、予めセパレータを除去する工程が不要となり、処理工程を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、環境負荷を軽減しつつ、電極基板から活物質層を分離可能な電池処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態1に係る電池処理方法の工程を示すフロー図である。
【
図2】実施の形態1に係る粉砕物を加熱する工程を示す模式図である。
【
図3】実施の形態1に係る粉砕する工程を示す模式図である。
【
図4】変形例に係る電池処理方法において、粉砕物を加熱する工程と粉砕する工程とを同時に実施する場合の模式図である。
【
図5】実施の形態2に係る電池処理方法の工程を示すフロー図である。
【
図6】実施例に係る電池処理方法および比較例における電池処理方法を用いて行なった実験の条件および結果を示す図である。
【
図7】
図6に示す比較例1-8および実施例1-2の各々において、粒子サイズと剥離率との関係をプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る電池処理方法の工程を示すフロー図である。
図1を参照して、実施の形態1に係る電池処理方法について説明する。
【0021】
実施の形態1に係る電池処理方法は、有価金属等が含まれる活物質層を回収するために用いる方法である。
【0022】
電池処理方法で対象とする電池は、たとえばリチウムイオン電池等の二次電池である。二次電池は、電池要素と、電解液と、当該電池要素および電解液を収容する外装ケースとを含む。
【0023】
電池要素は、正極と負極とが、それらの間にセパレータを介在させつつ積層されることによって構成される。
【0024】
正極は、電極基板としてのシート状部材と、正極活物質層とを含む。シート状部材は、たとえば、アルミニウム箔等の金属箔によって構成されている。正極活物質層は、シート状部材の両面に形成されていてもよい。正極活物質層は、正極活物質、および樹脂成分としてのバインダを含む。
【0025】
正極活物質は、典型的にはリチウム(Li)含有金属酸化物である。具体的には、正極活物質は、たとえば、リチウムコバルト酸化物系のものや、リチウムマンガン酸化物系のもの、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物系のものである。
【0026】
バインダは、たとえば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)等であってもよい。
【0027】
負極は、シート状部材と、負極活物質層とを含む。シート状部材は、たとえば、銅箔等の金属箔によって構成されている。負極活物質層は、シート状部材の両面に形成されていてもよい。
【0028】
負極活物質層は、負極活物質と、バインダとを含む。負極活物質は、たとえば、黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素等の炭素系負極活物質でもよいし、珪素(Si)、錫(Sn)等を含有する合金系負極活物質でもよい。
【0029】
バインダは、上述同様に、たとえば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)等であってもよい。
【0030】
セパレータは、電気絶縁性の多孔質フィルムである。セパレータは、たとえば、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)等の樹脂から構成されている。PEの多孔質フィルムの単独により、セパレータが構成されてもよいし、PEの多孔質フィルムおよびPPの多孔質フィルムが組み合わさって、セパレータが構成されてもよい。たとえば、PPの多孔質フィルム、PEの多孔質フィルムおよびPPの多孔質フィルムがこの順序で積層されることにより、セパレータが構成されてもよい。たとえば、セパレータは、PE製の多孔質膜と、PP製の多孔質膜とが積層されて構成されていてもよい。
【0031】
電解液は、例えば六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等のリチウム塩を、エチレンカーボネート(EC)-ジメチルカーボネート(DMC)等の混合溶媒に溶解したものが使用されるが、他の組成のものであってもよい。外装ケースは、たとえば、アルミニウム等の金属から構成されている。
【0032】
図1に示すように、実施の形態1に係る電池処理方法を実施するにあたり、まず、工程(S10)にて、粉砕物を準備する。
【0033】
工程(S10)を実施するにあたり、まず、工程(S11)にて、二次電池を失活化させる。具体的には、放電等を行ない、二次電池の電圧を所定以下にし、電池として機能しなくなるようにする。
【0034】
続いて、工程(S12)にて、二次電池を粉砕する。例えば一軸剪断破砕機、あるいは二軸剪断破砕機などを用いて二次電池を破砕してもよいし、ハンマーミル、その他の破砕機械を用いて二次電池を破砕してもよい。
【0035】
続いて、工程(S13)にて、電解液を回収する。具体的には、工程(S12)で得られた粉砕物を減圧下で加熱して電解液を蒸留する。この際、電解液に含まれるDMC、EMC(エチルメチルカーボネート)等の90℃~110℃程度の比較的低い沸点を有する溶媒が回収されやすく、電解液に含まれるEC等の240℃程度の比較的高い沸点を有する溶媒は回収されずに残留してもよい。
【0036】
以上のような工程を経て、上記シート状部材と、バインダを含みかつ上記シート状部材に設けられた活物質層と、を含む粉砕物1(
図2参照)を準備する。より特定的には、正極活物質および正極用シート部材が含まれた粉砕物1を準備する。粉砕物1には、セパレータが含まれていてもよい。実施の形態1において、準備される粉砕物1は、二次電池が粉砕された一次粉砕物である。
【0037】
図2は、実施の形態1に係る粉砕物を加熱する工程を示す模式図である。
図1および
図2に示すように、続いて、工程(S20)において、バインダの分解開始温度以上、かつ、バインダの分解ピーク温度よりも小さい温度で、粉砕物1を加熱する。バインダの分解開始温度は、たとえば、120℃程度であり、バインダの分解ピーク温度は、たとえば、400℃程度である。
【0038】
なお、工程(S20)では、より低い熱エネルギでバインダを軟化させるために、粉砕物を加熱する温度範囲は、120℃~180℃程度であることが好ましい。また、粉砕物がセパレータを含む場合には、セパレータの溶融を抑制するために、120℃~160℃程度であることが好ましく、120℃~140℃程度であることがさらに好ましい。さらに、粉砕物1がセパレータを含む場合には、バインダの分解開始温度以上、セパレータの融点以下で粉砕物1を加熱することがより好ましい。
【0039】
なお、粉砕物1を加熱する際には、たとえば、加熱室10に粉砕物1を収容し、ヒータ等の熱源20によって粉砕物1を加熱する。粉砕物1の加熱は、ヒータによる加熱に限定されず、対流加熱、遠赤外線加熱、水蒸気加熱等の適宜の加熱方式を採用することができる。加熱時間は、たとえば、1時間程度である。
【0040】
上述の温度範囲で粉砕物1を加熱することにより、バインダが軟化するため、シート状部材から活物質層を分離しやすくなる。
【0041】
図3は、実施の形態1に係る粉砕する工程を示す模式図である。
図1および
図3に示すように、続いて、工程(S30)において、加熱された粉砕物1を粉砕する。具体的には、たとえば、粉砕室30内に加熱された粉砕物1を収容し、粉砕機40を用いて、粉砕物1を粉砕する。なお、粉砕機40は、ハンマークラッシャー等の適宜の粉砕機を用いることができる。ハンマークラッシャーを用いる場合には、粉砕物1に付与される摩擦を大きくすることができる。
【0042】
工程(S30)では、バインダが軟化した状態で粉砕物1を粉砕するため、粉砕物1に付与される衝撃によって、シート状部材から活物質層を剥離することができる。
【0043】
なお、上述においては、工程(S20)の後に工程(S30)が実施される場合を例示したが、変形例に示すように、工程(S20)と工程(S30)とが同時に実施されてもよい。この場合には、粉砕物1の加熱と粉砕とが同時に行なわれるため、粉砕物1を加熱した後に、加熱された粉砕物1を粉砕工程に搬送することが不要となるため、処理工程を簡略化することができる。
【0044】
図4は、変形例に係る電池処理方法において、粉砕物を加熱する工程と粉砕する工程とを同時に実施する場合の模式図である。粉砕物を加熱する工程と粉砕する工程とを同時に実施する場合には、
図4に示すように、粉砕室30にヒータ等の熱源20を設置し、粉砕物1を加熱しながら、粉砕物1を粉砕機40によって粉砕する。なお、上述同様に、粉砕物1の加熱は、ヒータによる加熱に限定されず、対流加熱、遠赤外線加熱、水蒸気加熱等の適宜の加熱方式を採用することができる。
【0045】
続いて、工程(S35)において、上記工程(S20)および工程(S30)が、所定の回数行われたかを確認する。所定の回数は、1回でもよいし、2回以上であってもよい。
【0046】
上記工程(S20)および工程(S30)が、所定の回数行われた場合(工程(S35):YES)には、工程(S40)が実施される。
【0047】
一方で、上記工程(S20)および工程(S30)が、所定の回数行われていない場合(工程(S35):NO)には、所定の回数に到達するまで工程(S20)および工程(S30)を繰り返し実施する。
【0048】
このように工程(S20)および工程(S30)を繰り返し実施する場合には、粉砕された電極基板の破片に付着した活物質層に含まれる樹脂成分をさらに軟化させて、当該破片を粉砕することで、電極基板の破片から活物質層をさらに剥離することができる。
【0049】
続いて、工程(S40)において、粉砕された粉砕物1を分別する。具体的には、篩等を用いて、シート状部材と、活物質層とを分別する。この際、シート状部材、活物質層の他にも、セパレータ、および外装ケースを構成する部材等も分別される。実施の形態1において分別される粉砕物1は、上記一次粉砕物が粉砕されることで生成される二次粉砕物であり、工程(S40)では、二次粉砕物が分別される。
【0050】
以上のように、実施の形態1に係る電池の処理方法では、樹脂成分の分解開始温度以上、かつ、樹脂成分の分解ピーク温度よりも小さい温度で粉砕物を加熱するため、熱エネルギの消費を抑制しつつ、低い温度で活物質層に含まれる樹脂成分を軟化させることができる。また、樹脂成分の分解を抑制できるため、排出される二酸化炭素も軽減することができる。さらに、樹脂成分が軟化した状態にある粉砕物を粉砕することにより、電極基板から上記活物質層を剥離することができる。このように、環境負荷を軽減しつつ、電極基板から活物質層を剥離することができる。
【0051】
なお、活物質層(より特定的には正極活物質層)が剥離されたシート状部材(正極用シート状部材)の破片を平面的に展開した場合の当該破片の粒子サイズが400mm2以上1000mm2以下であり、シート状部材からの活物質層の剥離率は、80%以上であることが好ましい。
【0052】
上記破片の粒子サイズは、以下のように算出することができる。まず、工程(S40)において、活物質層が剥離した複数個のシート状部材の破片(粒子)をサンプリングし、これら複数個のシート状部材の破片を平面的に展開する。そして、展開された複数個のシート状部材の破片のサイズを画像解析ソフトWinROOF(三谷商事株式会社製)を用いて算出する。
【0053】
粒子サイズ(mm
2)は、たとえば、粒子ごとの面積(投影面積)を、複数の粒子の総面積(総投影面積)で割ることで得られる値の総和を算出することで得られる。より具体的には、以下の式(1)によって算出することができる。
【0054】
また、剥離率は、上記複数個のシート状部材の破片(粒子)に残留する活物質層の総面積を上記画像解析ソフトを用いて算出し、下記式(2)を用いることによって算出することができる。
【0055】
剥離率(%)=(複数個(n個)の粒子の総面積-複数個(n個)の粒子に残留する活物質層の総面積)/複数の粒子の総面積×100・・・(式2)
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2に係る電池処理方法の工程を示すフロー図である。
図5を参照して、実施の形態2に係る電池処理方法について説明する。
【0056】
図5に示すように、実施の形態2に係る電池処理方法は、実施の形態1に係る電池処理方法と比較した場合に、粉砕物を準備する工程(S10A)が相違する。その他の工程については、ほぼ同様である。
【0057】
実施の形態2に係る電池処理方法を実施するにあたり、まず、工程(S10A)にて、粉砕物を準備する。工程(S10A)を実施するにあたり、実施の形態1とほぼ同様に、工程(S11)から工程(S13)を実施する。
【0058】
続いて、工程(S14)において、粉砕された二次電池をさらに粉砕する。具体的には、工程(S13)を経て生成された一次粉砕物を粉砕する。工程(S14)においては、適宜の粉砕機を用いて、一次粉砕物を粉砕する。
【0059】
続いて、工程(S15)において、工程(S14)で粉砕された二次電池を分別する。具体的には、一次粉砕物が粉砕されることで生成される二次粉砕物を分別する。これにより、シート状部材と、バインダを含みかつ上記シート状部材に設けられた活物質層と、を含む粉砕物を準備する。このように、実施の形態2で準備される粉砕物は、二次粉砕物から分別された上記活物質層が設けられたシート部材である。なお、シート状部材としては、正極用シート部材であることが好ましく、また、活物質層としては、バインダを含む正極活物質層であることが好ましい。なお、準備される粉砕物において、セパレータが含まれていてもよい。
【0060】
続いて、実施の形態1とほぼ同様に、工程(S20)から工程(S40)を実施する。上述のように、実施の形態2に係る電池処理方法を実施する場合であっても、実施の形態1とほぼ同様の効果が得られる。なお、工程(S20)から工程(S40)では、上述のように、粉砕物として、活物質層が設けられたシート部材が用いられるため、工程(S40)を実施することにより、シート部材と活物質層とが分別される。
【0061】
(検証実験)
図6は、実施例に係る電池処理方法および比較例における電池処理方法を用いて行なった実験の条件および結果を示す図である。
図7は、
図6に示す比較例1-8および実施例1-2の各々において、粒子サイズと剥離率との関係をプロットした図である。
図6および
図7を参照して、検証実験について説明する。
【0062】
図6に示すように、比較例1から比較例6においては、上述した実施の形態1に係る電池処理方法の工程と比較して、加熱する工程(S20)を省略し、準備する工程(S10)で準備した粉砕物を、加熱することなく粉砕する工程(S30)で粉砕した。なお、比較例1から6では、粒子サイズの異なる破片(粒子)が得られるように粉砕条件を変更した。粉砕後に、篩等を用いて、シート状部材(正極用シート状部材)と、活物質層(正極活物質)とを分別し、上述の算出方法を用いて、シート状部材の破片の粒子サイズと、活物質層の剥離率を算出した。
【0063】
比較例7、8においては、上述した実施の形態1に係る電池処理方法の工程と比較して、加熱する工程(S20)で粉砕物を加熱する温度を、樹脂成分(バインダ)の分解開始温度より低い110℃とし、110℃で加熱された粉砕物を粉砕する工程(S30)で粉砕した。比較例7、8では、粒子サイズの異なる破片(粒子)が得られるように粉砕条件を変更した。粉砕後に、篩等を用いて、シート状部材と、活物質層とを分別し、上述の算出方法を用いて、シート状部材の破片の粒子サイズと、活物質層の剥離率を算出した。
【0064】
実施例1,2では、上述した実施の形態1に係る電池処理方法の工程に基づいて電池処理を行なった。この際、加熱する工程(S20)ので粉砕物を加熱する温度を、180℃、300℃とした。これらの温度は、いずれも樹脂成分の分解開始温度以上、かつ、樹脂成分の分解ピーク温度よりも小さい温度である。
【0065】
180℃、300℃で加熱された粉砕物を粉砕する工程(S30)で粉砕した。粉砕後に、篩等を用いて、シート状部材と、活物質層とを分別し、上述の算出方法を用いて、シート状部材の破片の粒子サイズと、活物質層の剥離率を算出した。
【0066】
図6および
図7に示すように、比較例2のように、粒子サイズが略149.3mm
2となる場合には、略87.4%の剥離率が得られた。しかしながら、粒子サイズが小さくなるように粉砕することで、活物質層に外装ケースを構成する材料、あるいは負極を構成する銅等も混入し、これらと活物質層との分離性が悪化した。
【0067】
活物質層への異物の混入を抑制するために、比較例1,3-6のように粒子サイズを大きくした場合には、加熱を省略したことにより、活物質層が高い粘着性を有しており、粒子サイズが大きくなるにつれて、剥離率が低下する傾向が得られた。具体的には、粒子サイズが380mm2を超えると、剥離率は、50%よりも低くなった。
【0068】
比較例7のように、粒子サイズが略140.7mm2となる場合には、略81.8%の剥離率が得られた。しかしながら、粒子サイズが小さくなることにより、活物質層に外装ケースを構成する材料、あるいは負極を構成する銅等も混入し、これらと活物質層との分離性が悪化した。
【0069】
活物質層への異物の混入を抑制するために、比較例8のように粒子サイズを大きくした場合には、比較例8に対して剥離率が低下し、剥離率は、略59.0%となった。
【0070】
これに対して、実施例1では、粒子サイズが略404.6mm2であり、剥離率は、88.6%と、比較例1~8よりも高い値となった。同様に、実施例2では、粒子サイズが略909.5mm2であり、剥離率は、95.2%と、比較例1~8よりも高い値となった。
【0071】
また、実施例1、2では、粒子サイズが比較的大きいため、外装ケースを構成する材料、あるいは負極を構成する銅等が活物質層に混入することも抑制することができた。
【0072】
以上のように、樹脂成分の分解開始温度以上、かつ、樹脂成分の分解ピーク温度よりも小さい温度で粉砕物を加熱して、熱エネルギの消費を抑制しつつ、低い温度で活物質層に含まれる樹脂成分を軟化させ、粉砕物を粉砕することにより、環境負荷を軽減しつつ、シート状部材から活物質層を剥離することができることが、実験的にも確認された。
【0073】
以上、今回開示された実施の形態および変形例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1 粉砕物、10 加熱室、20 熱源、30 粉砕室、40 粉砕機。