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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174195
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】インパクトドライバ
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/02 20060101AFI20241206BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
B25B21/02 Z
B25F5/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024173428
(22)【出願日】2024-10-02
(62)【分割の表示】P 2022069497の分割
【原出願日】2017-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慈
(72)【発明者】
【氏名】友永 聡
(72)【発明者】
【氏名】林 克名
(72)【発明者】
【氏名】平林 徳夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 友幸
(57)【要約】
【課題】モータの回転を操作部の操作量に応じて制御するよう構成された電動作業機において、モータの制御特性として、操作部の操作量が少ない場合であってもモータを最大回転数で駆動し得る制御特性を設定できるようにする。
【解決手段】電動作業機は、モータと、操作部と、操作部の操作量に応じてモータの回転を制御する制御部と、制御部によるモータの制御特性として、予め登録された複数の制御特性の中の1つを選択的に設定可能な設定部と、を備える。設定部にて設定可能な複数の制御特性の1つは、操作部の操作によってモータを駆動可能な有効操作範囲内で、モータの回転数が最小回転数から最大回転数に達するまでの制御範囲が、有効操作範囲の50%以下となるように設定された特定制御特性である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
工具ビットを装着するための装着部と、
前記モータの回転により前記装着部に装着された前記工具ビットを回転させるアンビルと、
前記アンビルと共に回転し、前記工具ビットから前記アンビルに加わる負荷が高まると前記アンビルとの係合が外れて再係合することにより前記アンビルを打撃するハンマと、
使用者が操作することにより、前記モータの駆動・停止を指令するための操作部と、
前記操作部の操作に応じて前記モータを駆動する制御部と、
を備えたインパクトドライバであって、
使用者により操作されて、当該インパクトドライバの動作モードを、第1モードと第2モードとに切り替えて設定するための動作モード設定スイッチと、
使用者により操作されて、前記モータの回転方向を、前記工具ビットにより対象物を締め付ける正方向と、該対象物の締め付けを緩める逆方向と、の何れかに設定するための正逆切替スイッチと、
を備え、
前記動作モード設定スイッチは、前記動作モードが前記第1モードであるときの前記ハンマによる打撃力として、最も打撃力が大きい第1打撃力、及び、該第1打撃力設定よりも打撃力が小さい第2打撃力、を含む複数の打撃力の1つを設定するための打撃力スイッチを含み、
前記制御部は、
前記動作モードが前記第1モードに設定されているときには、前記操作部の操作量が大きくなるほど、前記モータの回転数が前記打撃力スイッチにより設定された打撃力に応じて大きくなるよう、前記モータを、前記正逆切替スイッチにて設定された回転方向に駆動し、
前記動作モードが前記第2モードに設定されているときには、前記操作部が操作されると、前記第1モードに比べて少ない操作量にて、前記モータの回転数が、前記第1モードでの最大回転数に対応する回転数に到達するよう、前記モータを、前記正逆切替スイッチにて設定された回転方向に駆動する、ように構成され、
しかも、前記動作モードが前記第2モードに設定されているときに、前記制御部が前記モータの回転数を前記最大回転数に到達させる前記モータの制御特性は、前記モータの回転方向が前記正方向であるときと前記逆方向であるときとで同じであり、
前記制御部は、前記第2モードで、前記モータを前記逆方向に回転させているときに、前記モータに加わる負荷が低下すると、前記モータの回転を停止若しくは低減させるよう構成されている、インパクトドライバ。
【請求項2】
前記制御部は、前記モータに加わる負荷の低下を、前記モータの回転数若しくは電流の変化から検出するよう構成されている、請求項1に記載のインパクトドライバ。
【請求項3】
前記動作モード設定スイッチは、前記第1モードとして、前記工具ビットをねじの頭部に設けられた溝に嵌合させた状態で前記モータを回転させるねじ締めモードを設定し、前記第2モードとして、前記工具ビットをボルト又はナットに外嵌させた状態で前記モータを回転させるボルトモードを設定可能に構成されている、請求項1又は請求項2に記載のインパクトドライバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動力源となるモータの回転を操作部の操作量に応じて制御するよう構成された電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動工具等の電動作業機においては、モータの駆動・停止を指令する操作部として、使用者により引き操作されるトリガが備えられ、そのトリガの操作量に応じて、モータの回転を制御するように構成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の電動作業機においては、トリガの引き量が小さいときと大きいときとでモータの回転数が変化し、トリガの引き量が所定量を超えると、モータの回転が最大となるよう、モータの制御特性が予め設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-104969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の電動作業機において、モータの制御特性は、トリガが全引きされて、その引き量が最大引き量付近に達したときに、モータの回転数が最大回転数となるように設定されている。
【0006】
これは、使用者によるトリガ操作でモータの回転数を調整できるようにするためであるが、モータを、制御特性で設定されている最大回転数で回転させるには、使用者は、トリガを全引きする必要がある。
【0007】
このため、電動作業機による作業内容が、モータを頻繁に最大回転数で回転させる必要がある作業内容である場合、使用者は、トリガを頻繁に全引きする必要があり、使用者の指が疲労してしまうという問題がある。
【0008】
例えば、打撃機構を有するインパクトドライバを使ってボルトの締め付け作業を行う場合、モータにより駆動される工具ビットは、ボルトの頭部に嵌合されることから、作業の開始直後からモータを最大回転数で回転させても工具ビットがボルトから外れることはない。
【0009】
このため、こうした締め付け作業を行う場合、使用者は、打撃機構によりボルトをしっかりと締め付けるために、作業開始直後からトリガを全引きすることになるが、このようにすると、指が疲労するため、長時間作業を継続することができなくなる。
【0010】
本開示の一局面は、モータの回転を操作部の操作量に応じて制御するよう構成された電動作業機において、モータの制御特性として、操作部の操作量が少ない場合であってもモータを最大回転数で駆動し得る制御特性を設定できるようにすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一局面の電動作業機は、モータと、モータの駆動・停止を指令するための操作部と、操作部の操作量に応じて、操作量が大きいほどモータの回転数が大きくなるように
制御する制御部と、制御部によるモータの制御特性を設定する設定部とを備える。
【0012】
設定部は、予め登録された複数の制御特性の中の1つを、制御部によるモータの制御特性として設定する。そして、設定部にて設定可能な複数の制御特性の1つは、操作部の操作によってモータを駆動可能な有効操作範囲内で、モータの回転数が当該制御特性での最小回転数から最大回転数に達するまでの制御範囲が、他の制御特性よりも狭く、有効操作範囲の50%以下となるように設定された特定制御特性である。
【0013】
このため、本開示の電動作業機によれば、制御部がモータを制御する際の制御特性として、特定制御特性を設定すれば、操作部のわずかな操作で、モータの回転数が最大回転数に到達することになる。
【0014】
従って、使用者は、モータを最大回転数で回転させる作業を行うときに、設定部を介して特定制御特性を設定するようにすれば、操作部を最大操作量付近まで操作することなく、モータを最大回転数で回転させることができるようになる。このため、使用者は、操作部の操作によって指の疲労を感じることなく、この作業を長時間実施できるようになる。
【0015】
ここで、設定部は、モータにより駆動される工具ビットをボルト又はナットに外嵌させた状態でモータを回転させるボルトモードで、特定制御特性を設定するよう構成されていてもよい。
【0016】
つまり、ボルトモードでは、上記のように、作業開始直後からモータを高速回転させることで、作業効率を高めることができる。従って、このボルトモードで、特定制御特性を設定するようにすれば、使用者は、操作部のわずかな操作でモータを高速回転させることができるようになり、指の疲労を軽減することが可能となる。
【0017】
なお、この場合、特定制御特性は、ボルトモードで、ボルト又はナットの締め付けを緩めるためにモータを逆回転させているときに、モータに加わる負荷が低下すると、モータの回転を停止若しくは低減させる制御を含んでいてもよい。
【0018】
このようにすれば、モータを逆回転させて、ボルト又はナットの締め付けを緩めているとき、その締め付けが緩んでモータに加わる負荷が低下した際に、モータが継続して回転されて、ボルト又はナットが工具ビットから外れ、落下するのを抑制できるようになる。
【0019】
また、この特定制御特性にて、モータを制御するためには、制御部は、モータの逆回転時に負荷の低下を検出する必要があるが、負荷の低下は、例えば、モータの回転数若しくは電流の変化から検出することができる。
【0020】
また、電動作業機が、出力軸を打撃する打撃機構を備えた電動工具である場合には、制御部は、上記特定制御特性でモータを逆回転させているときに、打撃が発生しなくなると、負荷が低下したと判断するよう、構成されていてもよい。
【0021】
また、設定部は、モータにより駆動されるねじ締め用の工具ビットをねじの頭部に設けられた溝に嵌合させた状態でモータを回転させるねじ締めモードで、特定制御特性とは異なる他の制御特性を設定するよう構成されていてもよい。このようにすれば、ねじ締め作業を実施する場合に、使用者はモータの回転を操作部の操作によって調整できるようになる。
【0022】
またこの場合、ねじ締めモードで設定される他の制御特性は、モータの最大回転数が異なる複数の制御特性を含んでいてもよい。このようにすれば、使用者は、ねじ締め作業を
実施するときのモータの最大回転数を、ねじの大きさや対象物の種類等の作業条件、或いは、使用者の好み、に応じて選択できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態の充電式インパクトドライバの全体構成を表す斜視図である。
図2】モータ駆動装置の電気的構成を表すブロック図である。
図3】操作パネルにおけるスイッチ及びLEDの配置を表す平面図である。
図4】制御部にてモータの回転制御に利用される制御特性を表し、図4Aは制御特性を表すグラフ、図4Bは制御特性に基づく回転制御に用いられるマップ、である。
図5図4に示す制御特性にてモータを制御した通常時の回転数の変化を表すタイムチャートである。
図6】テクスモードの制御特性にてモータを制御したときの回転数の変化を表すタイムチャートである。
図7】木材モードの制御特性にてモータを制御したときの回転数の変化を表すタイムチャートである。
図8】ボルトモードでモータを逆回転させる制御特性にてモータを制御したときの回転数の変化を表すタイムチャートである。
図9】モータ制御処理の前半部分を表すフローチャートである。
図10】モータ制御処理の後半部分を表すフローチャートである。
図11】スイッチの操作確認処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明において、「テクス」は登録商標である。
本実施形態では、本開示の電動作業機として、電動工具の一つである充電式インパクトドライバ1について説明する。
【0025】
図1に示すように、充電式インパクトドライバ1は、左右の半割ハウジング2,3を組み付けることにより構成され、下方にグリップ部4が延設された本体ハウジング5を備える。そして、本体ハウジング5において、グリップ部4の下端には、バッテリパック6を着脱自在に装着するためのバッテリ装着部9が設けられている。
【0026】
本体ハウジング5の後方(図1の右側)は、充電式インパクトドライバ1の動力源となるモータ30(図2参照)を収納するモータ収納部7となっており、モータ収納部7よりも前方には、減速機構及び打撃機構が収納されている。
【0027】
そして、本体ハウジング5の先端には、モータ30により駆動される出力軸にドライバビットやソケットビット等の各種工具ビット(図示略)を装着するためのチャックスリーブ8が設けられている。
【0028】
打撃機構は、例えば、減速機構を介して回転されるスピンドルと、スピンドルと共に回転し、且つ、軸方向へ移動可能なハンマと、ハンマの前方にあって先端に工具ビットが取り付けられるアンビルと、を備える。
【0029】
すなわち、打撃機構においては、モータ30の回転に伴いスピンドルが回転すると、ハンマを介してアンビルが回転して、チャックスリーブ8(延いては工具ビット)を回転させる。
【0030】
そして、工具ビットによるねじ締めが進み、アンビルへの負荷が高まると、ハンマがコイルばねの付勢力に抗して後退してアンビルから外れ、そこからスピンドルと共に回転し
つつコイルばねの付勢力で前進してアンビルに再係合する。
【0031】
この結果、アンビルに間欠的な打撃が加えられ、工具ビットによるねじの増し締めが行われる。なお、この打撃機構については、従来から知られているため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0032】
次に、グリップ部4は、使用者が当該充電式インパクトドライバ1を使用する際に把持するための把持部であり、グリップ部4の上方先端側にはトリガ10が設けられている。トリガ10は、使用者がグリップ部4を把持した状態で、指で引き操作するためのものである。
【0033】
トリガ10には、トリガ10が引き操作されているときにオン状態となるメインスイッチ10A(図2参照)、及び、トリガ10の引き量(換言すれば操作量)を検出するための操作量検出部10B(図2参照)が設けられている。なお、操作量検出部10Bは、トリガ10の引き量に応じて抵抗値が変化する可変抵抗にて構成されている。
【0034】
また、トリガ10の上方(グリップ部4の上端側)には、本開示の第2設定部として、充電式インパクトドライバ1の動作モードを所望の動作モードに1回の操作で切り替えるためのモード切替スイッチ14が設けられている。
【0035】
また、グリップ部4において、モード切替スイッチ14よりも後方には、モータ30の回転方向を、ねじの締め付け方向である正方向又は逆方向へと切り替えるための正逆切替スイッチ12が設けられている。
【0036】
また、本体ハウジング5には、前方を照射する照射部として、チャックスリーブ8を挟むように、左右一対の照明LED16が設けられている。なお、この照明LED16は、モード切替スイッチ14が操作されて、その操作入力が制御回路80(図2参照)で受け付けられたときに、点灯して、その旨を報知する、第2報知部としても機能する。
【0037】
また次に、本体ハウジング5において、グリップ部4よりも下方に設けられたバッテリ装着部9には、操作パネル20が設けられている。
操作パネル20には、本開示の第1設定部として、充電式インパクトドライバ1の動作モードを、予め設定された8種類の動作モードの中から選択的に設定するための打撃力スイッチ22及び特殊スイッチ26が設けられている。また、操作パネル20には、照明LED16を点灯又は消灯させるのに用いられる照明スイッチ24も設けられている。
【0038】
また、図3に示すように、操作パネル20には、動作モードの設定状態を表示するための表示部として、打撃力モード表示部42、特殊モード表示部44、及び、設定表示LED46が設けられている。
【0039】
なお、打撃力モード表示部42は、打撃力スイッチ22を介して設定された動作モードを表示するためのものであり、打撃力スイッチ22の操作によって順次切り替えられる4種類の打撃力モードを表示するための4つの表示LEDが設けられている。
【0040】
また、特殊モード表示部44は、特殊スイッチ26を介して設定された動作モードを表示するためのものであり、特殊スイッチ26の操作によって順次切り替えられる4種類の動作モードを表示するための4つの表示LEDが設けられている。
【0041】
また、設定表示LED46は、打撃力モード表示部42若しくは特殊モード表示部44に表示された現在の動作モードが、モード切替スイッチ14を介して設定された動作モー
ドであるときに点灯して、その旨を報知するためのものである。なお、設定表示LED46は、本開示の第1報知部として機能する。
【0042】
なお、打撃力スイッチ22及び特殊スイッチ26を介して設定される8種類の動作モードについては、図4図8を用いて、後に詳しく説明する。
次に、バッテリパック6に収容されたバッテリは、本実施形態では、例えばリチウムイオン電池など、繰り返し充電可能な2次電池である。
【0043】
また、モータ30は、本実施形態では、U,V,W各相の電機子巻線を備えた3相ブラシレスモータにて構成されている。そして、モータ30には、モータ30の回転位置(角度)を検出するための回転センサ32(図2参照)が設けられている。
【0044】
なお、回転センサ32は、例えば、モータ30の各相に対応して配置される3つのホール素子を備え、モータ30の所定回転角度毎に回転検出信号を発生するよう構成されたホールIC等にて構成される。
【0045】
また、グリップ部4の内部には、バッテリパック6から電力供給を受けて、モータ30を駆動制御するモータ駆動装置50(図2参照)が設けられている。
このモータ駆動装置50には、図2に示すように、駆動回路52、電流検出回路56、ロータ位置検出回路58、表示回路60、制御回路用電源回路62、及び制御回路80が設けられている。
【0046】
駆動回路52は、バッテリパック6から電源供給を受けて、モータ30の各相巻線に電流を流すためのものであり、本実施形態では、6つのスイッチング素子Q1~Q6からなる3相フルブリッジ回路として構成されている。なお、各スイッチング素子Q1~Q6は、本実施形態ではMOSFETである。
【0047】
駆動回路52において、3つのスイッチング素子Q1~Q3は、モータ30の各端子U,V,Wと、バッテリパック6の正極側に接続された電源ラインとの間に、いわゆるハイサイドスイッチとして設けられている。
【0048】
また、他の3つのスイッチング素子Q4~Q6は、モータ30の各端子U,V,Wと、バッテリパック6の負極側に接続されたグランドラインとの間に、いわゆるローサイドスイッチとして設けられている。
【0049】
そして、バッテリパック6の正極側から駆動回路52に至る電力供給経路には、バッテリ電圧の電圧変動を抑制するためのコンデンサC1が設けられている。
また、駆動回路52からバッテリパック6の負極側に至る電力供給経路には、この経路を導通・遮断するためのスイッチング素子Q7、及び、電流検出用の抵抗R1が設けられている。そして、電流検出回路36は、抵抗R1の両端電圧を電流検出信号として制御回路80に出力する。
【0050】
次に、ロータ位置検出回路58は、回転センサ32からの検出信号に基づき、モータ30の回転位置を検出するためのものであり、回転位置の検出信号を制御回路80に出力する。
【0051】
また、表示回路60は、制御回路80からの指令に従い、操作パネル20の打撃力モード表示部42及び特殊モード表示部44に設けられたLEDや設定表示LED46、及び、左右一対の照明LED16を点灯させるためのものである。
【0052】
また制御回路用電源回路62は、モータ駆動装置50内の各部に電源供給を行うためのものであり、バッテリパック6から電力供給を受けて、所定の電源電圧(定電圧)Vccを生成する。そして、この生成された電源電圧Vccは、制御回路80、表示回路60、上述した各種スイッチからの入力経路に設けられたプルアップ抵抗、等に供給される。
【0053】
なお、制御回路用電源回路62は、動作停止時、メインスイッチ10Aがオンされることにより起動し、メインスイッチ10A又はモード切替スイッチ14、打撃力スイッチ22、特殊スイッチ26の操作停止期間が一定時間以上経過すると、動作を停止する。
【0054】
次に、制御回路80は、CPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータ(マイコン)にて構成されており、上述した各動作モードでのモータ30の制御特性等が記憶された記憶部92が備えられている。なお、この記憶部92は、データを書き換え可能な不揮発性メモリにて構成されている。
【0055】
また、制御回路80には、メインスイッチ10A、操作量検出部10B、正逆切替スイッチ12、モード切替スイッチ14、打撃力スイッチ22、照明スイッチ24、及び、特殊スイッチ26が接続されている。
【0056】
制御回路80は、CPUが実行するプログラムにより、SW入力部82、速度指令部84、表示制御部86、回転速度演算部88、PWM生成部90、及び、モータ駆動制御部94、として機能する。
【0057】
SW入力部82は、メインスイッチ10A、モード切替スイッチ14、打撃力スイッチ22、照明スイッチ24、及び、特殊スイッチ26のオン・オフ状態を検出して、上述した動作モードや、各種LEDの点灯・消灯状態を設定するものである。
【0058】
そして、SW入力部82にて設定された動作モードは、記憶部92に記憶され、PWM生成部90がPWM信号を生成するのに用いられる。また、各種LEDの点灯・消灯状態は、表示制御部86に出力される。なお、表示制御部86は、SW入力部82からの入力に従い、表示回路60を介して各種LEDの点灯・消灯状態を制御する。
【0059】
また、速度指令部84は、操作量検出部10Bからの入力信号に基づきトリガ10の操作量を検出し、モータ駆動時の速度指令としてPWM生成部90に出力する。
また、回転速度演算部88は、ロータ位置検出回路58からの検出信号に基づき、モータ30の回転速度を演算し、演算結果をPWM生成部90に出力する。
【0060】
次にPWM生成部90は、SW入力部82にて設定された動作モードに対応した制御特性を記憶部92から読み出し、その制御特性に従いモータ30を駆動するための制御信号であるPWM信号を生成する。
【0061】
つまり、PWM生成部90は、記憶部92から読み出した制御特性と、速度指令部84から入力される速度指令(換言すればトリガ10の操作量)と、回転速度演算部88から入力されるモータ30の回転速度とに基づき、PWM信号を生成する。
【0062】
また、PWM生成部は、電流検出回路56からの検出信号に基づき、モータ30に流れる電流を監視し、モータ30に過電流が流れたときには、モータ30の回転を停止又は低減するようにモータ駆動制御部94に指令する。
【0063】
次に、モータ駆動制御部94は、PWM生成部90にて生成されたPWM信号に従い、駆動回路52を構成する各スイッチング素子Q1~Q6をオン/オフさせることで、モー
タ30の各相巻線に電流を流し、モータ30を回転させるものである。
【0064】
なお、正逆切替スイッチ12からの入力信号は、モータ駆動制御部94に入力され、モータ駆動制御部94は、その入力信号に基づき、モータ30の回転方向を切り替える。
次に、打撃力スイッチ22及び特殊スイッチ26を介して設定される動作モードについて説明する。
【0065】
図3に示すように、本実施形態の充電式インパクトドライバ1では、動作モードとして、「最速」、「強」、「中」、「弱」の4種類の打撃力モードと、「木材」、「ボルト」、「テクス(薄)」、「テクス(厚)」の4種類の特殊モードとが設定されている。
【0066】
これらの動作モードは、モータ30の制御方法を規定するものであり、各動作モードで規定された制御方法を実現するため、記憶部92には、各動作モードでモータ30を制御するのに必要な制御特性が予め記憶(登録)されている。
【0067】
そして、「最速」、「強」、「中」、「弱」の4種類の打撃力モードは、打撃力スイッチ22を操作することにより、最速→強→中→弱→最速…、というように順次切り換え可能である。
【0068】
また、「木材」、「ボルト」、「テクス(薄)」、「テクス(厚)」の4種類の特殊モードは、特殊スイッチ26を操作することで、木材→ボルト→テクス(薄)→テクス(厚)→木材…というように順次切り換え可能である。
【0069】
図4A図4Bに例示するように、「最速」、「強」、「中」、「弱」の4種類の打撃力モードは、一般的なねじ締めモードである。そして、これら4種類の打撃力モードでは、トリガ10の引き量(操作量)に応じてモータ30駆動時の制御信号(PWM信号)のデューティ比を設定するための制御特性が設定されている。
【0070】
つまり、最速の打撃力モードでの制御特性は、例えば、トリガ引き量を「1」から「10」迄の10段階に分割した際、トリガ引き量が最も大きい「10」の領域で、PWM信号のデューティ比が最大となり、モータ30を最速で回転させるように設定される。
【0071】
そして、「強」、「中」、「弱」の打撃力モードでの制御特性は、トリガ引き量が最も大きい「10」の領域で、PWM信号のデューティ比が順に小さくなるように設定されている。このため、「強」、「中」、「弱」の打撃力モードでは、使用者がトリガ10を、引き量が最大となるように操作した際のモータ30の最大回転数は、「最速」の打撃力モードに比べて順に小さくなる。
【0072】
また、打撃力モードでの制御特性は、「最速」、「強」、「中」、「弱」の何れであっても、トリガ引き量が最小の引き量である「1」に達したときに、PWM信号のデューティ比が0付近の最小値となる。そして、トリガ引き量が「1」から増加するに従い、トリガ引き量が「10」に達したときのデューティ比まで、徐々に上昇するように設定されている。
【0073】
このため、打撃力モードでは、トリガ引き量が「1」以上となる操作範囲が、モータ30を駆動可能な有効操作範囲となり、その有効操作範囲内で、トリガ引き量が「10」に達するまでの領域が、モータ30の回転数を調整可能な制御範囲となる。
【0074】
この結果、打撃力モードでトリガ10が引き操作されると、図5に示すように、所謂ソフトスタート制御によってモータ30の回転数は徐々に増加し、モータ30が無負荷状態
であれば、トリガ10の引き量に対応した一定回転数となる。
【0075】
そして、ねじ締め等によりモータ30に負荷が加わると、その負荷に応じてモータ30の回転数が低下し、その後、打撃が発生すると、モータ30に加わる負荷が一時的に低下するため、モータ30の回転数が変動する。
【0076】
なお、上記説明では、トリガ引き量を10段階に分割して、有効操作範囲及び制御範囲を設定した例について説明したが、有効操作範囲及び制御範囲は、トリガ10の全操作領域に対し適宜設定すればよく、上記設定方法に限定されるものではない。
【0077】
次に、特殊モードのうち、「テクス(薄)」、「テクス(厚)」のテクスモードは、先端部分に、被加工材にねじ孔を開けるためのドリルが設けられたテクスねじを締め付けるための動作モードである。
【0078】
そして、テクス(厚)モードでは、図6に示すように、モータ30の駆動開始後、打撃が発生するまでは、打撃力モードと同様、トリガ10の引き量に応じた所定デューティ比のPWM信号にてモータを駆動する。そして、打撃が所定回発生すると、被加工材にねじ孔が形成されたものと判断して、PWM信号のデューティ比を小さくし、モータ30の回転数を低下させる。
【0079】
この結果、モータ30の駆動開始後、被加工材にねじ孔が形成されるまではモータ30を高速で回転させ、その後、モータ30の回転数を低下させることで、ねじ締めを安定して実施できるようになる。
【0080】
なお、打撃は、例えば、モータ30の回転数や電流の変動(振幅)、或いは、電動工具に加わる振動、等から検出することができる。また、テクスねじによりねじ孔を形成できたことは、打撃の発生回数だけでなく、打撃検出後の経過時間等でも判定できる。また、打撃の判定に用いる閾値は、バッテリ電圧やモータの回転数等、モータの駆動状態に応じて変更するようにしてもよい。
【0081】
また、テクスモードでの「テクス(薄)」と「テクス(厚)」の違いは、被加工材の厚みであり、使用者が適宜選択可能である。
そして、テクス(薄)モードでは、テクス(厚)モードに比べて、被加工材が薄いので、テクスねじによる被加工材の孔開け及び締め付けを短時間で行うことができる。このため、テクス(薄)モードでは、モータの駆動開始後、打撃が所定回発生すると、モータ30の駆動を停止するように設定される。
【0082】
また、特殊モードのうち、「木材」の特殊モード(木材モード)では、トリガ10が引き操作されると、その引き量に応じてPWM信号のデューティ比を設定する。なお、このデューティ比は、「低速」若しくは「中速」の打撃力モードのように、「最速」の打撃力モードよりも小さくなるように設定される。
【0083】
そして、モータ30の駆動開始後、打撃が所定回発生すると、図7に示すように、PWM信号のデューティ比を徐々に増加させる。これは、木材へねじを固定する場合、モータ30の駆動開始直後には、ねじは木材に食い込んでいないため、ねじをゆっくりと回転させて、木材に食い込ませる必要があるためである。
【0084】
つまり、木材モードでは、モータ30の駆動開始後はモータ30を低回転数で駆動し、その後、所定回打撃が発生すると、ねじが木材に食い込んだものとして、モータ30の回転を徐々に増加させる。この結果、木材へのねじの固定及び締め付けを短時間で効率よく
実施できるようになる。
【0085】
次に、特殊モードのうち、ボルトモードは、ボルト(若しくはナット)の締め付け若しくは取り外しを行う際の動作モードである。
すなわち、モータ30を回転させてボルト(若しくはナット)の締め付け若しくは取り外しを行う際には、工具ビットをボルトの頭部(若しくはナット)に外嵌させるため、ねじを締め付けるときのように、工具ビットがボルト(若しくはナット)から外れることはない。
【0086】
このため、ボルトモードでは、図3A図3Bに示すように、PWM信号のデューティ比(換言すればモータ30の回転数)が最大となるトリガ引き量が、打撃力モードでの引き量に比べて小さくなるように、制御特性が設定されている。
【0087】
つまり、ボルトモードでは、トリガ引き量が「4」以上でPWM信号のデューティ比(換言すればモータ30の回転数)が最大となるように、モータ30の制御特性が、本開示の特定制御特性として設定されている。
【0088】
また、ボルトモードでは、ボルト(若しくはナット)の締め付け若しくは取り外しを速やかに実施できるようにするため、トリガ引き量が「4」以上になったときのPWM信号のデューティ比は、「最速」の打撃力モードと同じ(若しくは略同じ)最大値に設定されている。
【0089】
このため、ボルトモードでは、最速の動作モードに比べ、トリガ10を少し引いただけで、モータ30が最速で回転することになり、ボルト(若しくはナット)の締め付け若しくは取り外しを短時間で効率よく行うことができることになる。
【0090】
また、使用者は、トリガ10を最大引き量付近まで引き操作することなく、モータを高速回転させることができる。このため、ボルト(若しくはナット)の締め付け若しくは取り外し作業を行う際に、トリガ10の操作によって使用者の指が疲労し、長時間、作業を継続することができなくなる、という問題を防止できる。
【0091】
また、ボルトモードにおいて、モータ30を逆回転させて、ボルト(若しくはナット)の締め付けを緩める際には、モータ30の駆動を開始すると、ボルト(若しくはナット)から負荷が加わるので、直ぐに打撃が発生する。
【0092】
そして、その打撃によって、ボルト(若しくはナット)の締め付けが緩むと、モータ30に加わる負荷が低下し、モータ30の回転数が上昇する。
そこで、ボルトモードにおいて、モータ30の逆回転時には、図8に示すように、モータ30の駆動を開始してから、打撃が検出され、その後、所定時間打撃が検出されなくなると、モータ30の駆動を停止(若しくは低減)させるように、制御特性が設定される。
【0093】
このため、ボルト(若しくはナット)の締め付けを緩める際には、モータ30を必要以上に回転させて、ボルト(若しくはナット)が工具ビットから落下するのを抑制できる。
なお、モータ30に加わる負荷の低下は、モータ30の回転数若しくは電流の変化によっても検出できることから、打撃に代えて、これらのパラメータを利用し、モータ30に加わる負荷の低下を検出するようにしてもよい。そして、このようにすれば、打撃機構を備えていない電動作業機であっても、上記ボルトモードの制御特性にてモータ30を駆動できるようになる。
【0094】
次に、制御回路80において、モータ30の回転を制御するために実行される制御処理
について説明する。なお、図2に示した制御回路80における各機能は、制御回路80を構成するCPUが以下に説明する制御処理(プログラム)を実行することにより、実現される。
【0095】
図9図10に示すように、制御回路80が起動されて、CPUが制御処理を開始すると、まず、S110にて、現在設定されている動作モードやその動作モードでの制御特性等、各種設定を記憶部92から読み出す。
【0096】
そして、続くS120では、メインスイッチ10Aからの入力信号に基づき、トリガ10が操作されているか否かを判断し、トリガ10が操作されていればS130に移行して、モータ30を駆動するための駆動処理を実行する。
【0097】
この駆動処理では、S131にて、操作量検出部10Bからトリガ10の引き量(操作量)を取得し、S132にて、S110で読み出した制御特性に基づきモータ30を制御するための各種演算処理を行う。
【0098】
次に、S133では、S132の演算結果に基づき、モータ30を駆動するための制御信号であるPWM信号のデューティ比(指令PWM Duty)を決定する。
そして、続くS134では、S133で決定したデューティ比のPWM信号にて、駆動回路52を構成する各スイッチング素子Q1~Q6をオン/オフさせる、モータ駆動制御部94としてのPWM出力処理を実行し、S120に移行する。
【0099】
一方、S120にて、トリガ10は操作されていないと判断されると、S140、S150、S160にて、モード切替スイッチ14、打撃力スイッチ22、及び、特殊スイッチ26の操作状態を順次確認する。
【0100】
なお、S140、S150、S160での確認処理は、対象となるスイッチのオン・オフ状態を確認するだけでなく、そのスイッチの操作(押下)時間から、スイッチが長押しされたか、短押しされたかを判定する。
【0101】
このため、S140、S150、S160での確認処理は、図11に示す手順で実行される。
すなわち、S140、S150、S160の確認処理では、まずS411にて、対象となるスイッチがオン状態であるかオフ状態であるかを判定し、スイッチがオフ状態であれば、S412に移行して、オン時間を計時するためのオンカウンタをクリアする。
【0102】
そして、続くS413では、オフカウンタをインクリメントすることによりオフ時間を計時し、続くS414にて、オフカウンタによる計時時間(オフ時間)が所定時間(例えば10ms)を超えたか否かを判断する。
【0103】
S414にて、オフ時間が所定時間を超えていないと判断されると、当該確認処理を一旦終了し、S414にて、オフ時間が所定時間を超えていると判断されると、S415に移行する。
【0104】
S415では、現在、スイッチのオン判定中か否かを判断し、現在、オン判定中でなければ、S416にて、スイッチの短押し判定をオフにし、S419にて、スイッチの長押し判定をオフにする。そして、続くS420にて、現在、スイッチのオフ判定中であることを記憶し、当該確認処理を一旦終了する。
【0105】
また、S415で、現在、オン判定中であると判断されると、S417に移行し、現在
、スイッチの長押し判定中(長押し判定オン)であるか否かを判断する。そして、長押し判定中であれば、S419に移行し、長押し判定中でなければ、S418にて、短押し判定をオンにした後、S419に移行する。
【0106】
また、S411にて、スイッチがオン状態であると判断された場合には、S421に移行し、スイッチのオフ時間を計時するためのオフカウンタをクリアし、続くS422にて、オンカウンタをインクリメントすることによりオン時間を計時する。
【0107】
次に、S423では、オンカウンタによる計時時間(オン時間)が所定時間(例えば10ms)を超えたか否かを判断する。そして、オン時間が所定時間を超えていないと判断されると、S425に移行し、オン時間が所定時間を超えていると判断されると、現在、スイッチのオン判定中であることを記憶した後、S425に移行する。
【0108】
S425では、スイッチのオン時間が、長押し判定用の設定時間(例えば1sec)を超えているか否かを判断する。そして、オン時間が長押し判定用の設定時間を超えていなければ、当該確認処理を一旦終了し、オン時間が長押し判定用の設定時間を超えていれば、スイッチが長押しされたと判断して、S426にて、長押し判定をオンにし、当該確認処理を一旦終了する。
【0109】
このように、S140、S150、S160の確認処理では、対象となるスイッチが操作されてオン状態となると、オン時間が計時されて、その計時時間に基づき、スイッチが長押しされたか否かが判断される。また、長押しが判定されずに、スイッチがオフ状態になると、オフ状態が所定時間経過した後、スイッチが短押しされたことが判定される。
【0110】
こうして、S140、S150、S160の確認処理にて、モード切替スイッチ14、打撃力スイッチ22、及び、特殊スイッチ26の操作状態が確認されると、S170に移行し、モード切替スイッチ14は、長押し操作されたか否かを判断する。
【0111】
そして、モード切替スイッチ14が長押しされていれば、S180に移行し、打撃力スイッチ22も長押し操作されているか否かを判断し、打撃力スイッチ22も長押し操作されていれば、S190に移行する。
【0112】
S190では、モード切替スイッチ14の操作によって切り替えるべき動作モード(登録モード)として、現在設定されている動作モードを、記憶部92に記憶(登録)する。
つまり、本実施形態では、モード切替スイッチ14と打撃力スイッチ22が同時に長押しされた場合に、モード切替スイッチ14の操作によって切り替えるべき動作モード(登録モード)が、記憶部92に登録される。
【0113】
そして、このように登録モードが記憶部92に登録されると、S200に移行し、例えば、操作パネル20にて表示中の現在の動作モードのLEDと、設定表示LED46を、長押し操作中点滅させることで、登録モードを設定若しくは更新した旨を報知する。
【0114】
次に、S200での報知が終了するか、S170にてモード切替スイッチ14は長押しされていないと判断されるか、或いは、S180にて、打撃力スイッチ22は長押しされていないと判断されると、図10に示すS210に移行する。
【0115】
S210では、モード切替スイッチ14が短押し操作されたか否かを判断し、モード切替スイッチ14が短押しされていなければ、S290に移行し、モード切替スイッチ14が短押しされていれば、S220に移行する。
【0116】
S220では、現在、モータ制御用として設定されている動作モード(換言すれば制御特性)が登録モードであるか否かを判断する。そして、現在設定されている動作モードが登録モードでない場合には、現在設定されている動作モード、つまり、打撃力スイッチ22又は特殊スイッチ26を介して設定された動作モードを、前回値として記憶部92に格納し、S240に移行する。
【0117】
S240では、モータ制御用の動作モードとして、S190にて設定した登録モードを選択することで、動作モードを登録モードに切り替える。そして、続くS250では、操作パネル20の設定表示LED46を点灯させることで、その旨を報知し、S260に移行する。
【0118】
また、S220にて、現在、モータ制御用の動作モードとして登録モードは設定されていないと判断されると、S270に移行して、記憶部92に前回値として格納されている動作モードを読み出し、モータ制御用の動作モードとして設定する。
【0119】
そして、続くS280では、設定表示LED46を消灯することで、現在の動作モードは、モード切替スイッチ14の操作によって切り替えられた登録モードではないことを報知し、S260に移行する。
【0120】
また、S260では、照明LED16を一定時間点滅させることで、モード切替スイッチ14の操作によって、動作モードが切り替えられたことを報知し、S290に移行する。
【0121】
次に、S290では、打撃力スイッチ22が短押し操作されたか否かを判断し、打撃力スイッチが短押しされていなければ、S320に移行して、特殊スイッチ26が短押し操作されたか否かを判断する。そして、特殊スイッチ26が短押し操作されていなければ、図9のS120に移行し、上記一連の処理を再度実行する。
【0122】
また、S290にて、打撃力スイッチ22が短押しされたと判断されると、S300に移行する。そして、S300では、打撃力モードとして設定可能な「最速」、「強」、「中」、「弱」の4種類の動作モードの中から、現在打撃力モードとして選択されている動作モードの次の動作モードを選択する。
【0123】
また、S300では、その選択した動作モードを、モータ制御用の動作モードとして設定することで、動作モードを切り替え、S310に移行する。
なお、S300では、切り替え後の現在の動作モードを、記憶部92に記憶する。また、打撃力モード表示部42に設けられた4つのLEDのうち、今回設定した打撃力モードに対応したLEDを点灯させることで、現在の動作モードを報知する。
【0124】
そして、続くS310では、設定表示LED46を消灯することで、現在の動作モードは、モード切替スイッチ14の操作によって切り替えられた登録モードではないことを報知し、S320に移行する。
【0125】
また、S320にて、特殊スイッチが短押しされたと判断されると、S330に移行する。そして、S330では、特殊モードとして設定可能な「木材」、「ボルト」、「テクス(薄)」、「テクス(厚)」の4種類の動作モードの中から、現在特殊モードとして選択されている動作モードの次の動作モードを選択する。
【0126】
また、S330では、その選択した動作モードを、モータ制御用の動作モードとして設定することで、動作モードを切り替え、S340に移行する。
なお、S330では、S300と同様、切り替え後の動作モードを、記憶部92に記憶し、特殊モード表示部44に設けられた4つのLEDのうち、今回設定した特殊モードに対応したLEDを点灯させることで、現在の動作モードを報知する。
【0127】
そして、続くS310では、設定表示LED46を消灯することで、現在の動作モードは、モード切替スイッチ14の操作によって切り替えられた登録モードではないことを報知し、図9のS120に移行する。
【0128】
以上説明したように、本実施形態の充電式インパクトドライバ1においては、記憶部92に、モータ30の制御方法を規定する8種類の動作モード(制御特性)が記憶されている。そして、使用者は、打撃力スイッチ22、特殊スイッチ26、若しくは、モード切替スイッチ14を操作することで、モータ制御に用いる動作モードを、8種類の動作モードの中から選択することができる。
【0129】
また、打撃力スイッチ22及び特殊スイッチ26は、使用者が操作することにより、各スイッチに対応した4種類の動作モード(打撃力モード及び特殊モード)の中から、設定する動作モードを順に切り替えることができる。
【0130】
これに対し、モード切替スイッチ14は、操作することにより切り替えられる動作モードを、登録モードとして予め登録しておくことができる。また、モード切替スイッチ14は、使用者が操作する度に、モータ制御に用いる動作モードを、特殊モードと、打撃力スイッチ22若しくは特殊スイッチ26を介して設定された動作モードとの間で、交互に切り替えることができる。
【0131】
従って、使用者は、登録モードとして、所望の動作モードを登録しておくことで、動作モードの切り替えを極めて簡単に行うことができるようになり、充電式インパクトドライバ1の使い勝手を向上できる。
【0132】
また、上記8種類の動作モードのうち、ボルトモードでは、最速モードと同様に、モータ30を最大速度で駆動できるが、最大速度を実現するのに要するトリガ10の引き量が、最速モードよりも少なくなるように設定されている。
【0133】
具体的には、ボルトモードの制御特性は、トリガ10の引き操作によってモータ30を駆動可能な有効操作範囲に対し、50以下の引き量(本実施形態では約40%の引き量)で、PWM信号のデューティ比が最大となるように設定されている。このため、モータ30の回転数も、この引き量で最大回転数となる。
【0134】
このため、ボルト(若しくはナット)の締め付け若しくは取り外しを行う際に、使用者はトリガ10を全引きする必要がなく、操作性を向上できる。
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0135】
例えば、上記実施形態では、本開示の電動作業機の一例として、充電式インパクトドライバ1を例にとり説明した。しかし、本開示の電動作業機は、動力源としてモータを備え、そのモータの回転数を、トリガ等の操作部の操作量に応じて制御するよう構成された電動作業機であれば、上記実施形態と同様に適用して、同様の効果を得ることができる。
【0136】
また、上記実施形態では、モータ30は、3相ブラシレスモータにて構成されるものとして説明したが、本開示の技術は、電動作業機の動力源が、ブラシ付きモータであっても、交流モータであっても適用できる。
【0137】
また、上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0138】
1…充電式インパクトドライバ、4…グリップ部、5…本体ハウジング、6…バッテリパック、9…バッテリ装着部、10…トリガ、10A…メインスイッチ、10B…操作量検出部、12…正逆切替スイッチ、14…モード切替スイッチ、16…照明LED、20…操作パネル、22…打撃力スイッチ、24…照明スイッチ、26…特殊スイッチ、30…モータ、32…回転センサ、36…電流検出回路、42…打撃力モード表示部、44…特殊モード表示部、46…設定表示LED、50…モータ駆動装置、52…駆動回路、56…電流検出回路、58…ロータ位置検出回路、60…表示回路、62…制御回路用電源回路、80…制御回路、82…スイッチ入力部、84…速度指令部、86…表示制御部、88…回転速度演算部、90…PWM生成部、92…記憶部、94…モータ駆動制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-10-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
工具ビットを装着するための装着部と、
前記モータの回転により前記装着部に装着された前記工具ビットを回転させるアンビルと、
前記アンビルと共に回転し、前記工具ビットから前記アンビルに加わる負荷が高まると前記アンビルとの係合が外れて再係合することにより前記アンビルを打撃するハンマと、
使用者が操作することにより、前記モータの駆動・停止を指令するための操作部と、
前記操作部の操作に応じて前記モータを駆動する制御部と、
使用者により操作されて、当該インパクトドライバの動作モードを、第1モードと第2モードとに切り替えて設定するための動作モード設定スイッチと、
を備え、
前記制御部は、
前記動作モードが前記第1モードに設定されているときには、前記操作部の操作量が大きくなるほど前記モータの回転数が大きくなるよう、前記モータを駆動し、
前記動作モードが前記第2モードに設定されているときには、前記操作部が操作されると、前記第1モードに比べて少ない操作量にて、前記モータの回転数が、前記第1モードでの最大回転数に到達するよう、前記モータを駆動し、
しかも、前記動作モードが前記第1モードであるときの前記モータの制御特性を、前記モータの回転数を前記最大回転数に到達させる第1制御特性と、前記モータの回転数を前記最大回転数よりも低い回転数に到達させる第2制御特性と、を含む、複数の制御特性の何れかに設定可能に構成されている、インパクトドライバ。
【請求項2】
使用者により操作されて、前記モータの回転方向を、前記工具ビットにより対象物を締め付ける正方向と、該対象物の締め付けを緩める逆方向と、の何れかに設定するための正逆切替スイッチをさらに備え、
前記制御部が前記操作部の操作量に応じて前記モータを制御する際の前記モータの制御特性は、前記モータの回転方向が前記正方向であるときと前記逆方向であるときとで同じである、請求項1に記載のインパクトドライバ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本開示は、動力源となるモータの回転を操作部の操作量に応じて制御するよう構成されたインパクトドライバに関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本開示の一局面は、モータの回転を操作部の操作量に応じて制御するよう構成されたインパクトドライバにおいて、モータの制御特性として、操作部の操作量が少ない場合であってもモータを最大回転数で駆動し得る制御特性を設定できるようにすることが望ましい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本開示の一局面のインパクトドライバは、モータと、工具ビットを装着するための装着部と、モータの回転により装着部に装着された工具ビットを回転させるアンビルと、アンビルと共に回転し、工具ビットからアンビルに加わる負荷が高まるとアンビルとの係合が外れて再係合することによりアンビルを打撃するハンマと、使用者が操作することにより、モータの駆動・停止を指令するための操作部と、操作部の操作に応じて前記モータを駆動する制御部と、使用者により操作されて、当該インパクトドライバの動作モードを、第1モードと第2モードとに切り替えて設定するための動作モード設定スイッチと、を備える。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
そして、制御部は、動作モードが第1モードに設定されているときには、操作部の操作量が大きくなるほどモータの回転数が大きくなるよう、モータを駆動し、動作モードが第2モードに設定されているときには、操作部が操作されると、第1モードに比べて少ない操作量にてモータの回転数が第1モードでの最大回転数に到達するよう、モータを駆動する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
このため、本開示のインパクトドライバによれば、動作モードとして、第2モードが設定されていれば、操作部のわずかな操作で、モータの回転数が第1モードでの最大回転数に到達することになる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
従って、使用者は、動作モード設定スイッチを介して、動作モードを第2モードに設定すれば、操作部を最大操作量付近まで操作することなく、モータを最大回転数で回転させることができるようになる。このため、使用者は、操作部の操作によって指の疲労を感じることなく、この作業を長時間実施できるようになる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
ここで、第2モードは、モータにより駆動される工具ビットをボルト又はナットに外嵌させた状態でモータを回転させるボルトモード、として設定されてもよい。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
つまり、ボルトモードでは、上記のように、作業開始直後からモータを高速回転させることで、作業効率を高めることができる。従って、このボルトモードを、第2モードとして設定すれば、使用者は、操作部のわずかな操作でモータを最大回転数に到達させることができるようになり、指の疲労を軽減することが可能となる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
なお、この場合、制御部は、第2モードで、ボルト又はナットの締め付けを緩めるためにモータを逆回転させているときに、モータに加わる負荷が低下すると、モータの回転を停止若しくは低減させる制御を実施するように構成されてもよい。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
また、このように第2モードでモータを制御するためには、制御部は、モータの逆回転時に負荷の低下を検出する必要があるが、負荷の低下は、例えば、モータの回転数若しくは電流の変化から検出することができる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
また、制御部は、第2モードでモータを逆回転させているときに、ハンマによる打撃が発生しなくなると、負荷が低下したと判断するよう、構成されていてもよい。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
一方、第1モードは、モータにより駆動されるねじ締め用の工具ビットをねじの頭部に設けられた溝に嵌合させた状態でモータを回転させるねじ締めモード、として設定されてもよい。このようにすれば、ねじ締め作業を実施する場合に、使用者はモータの回転を操作部の操作によって調整できるようになる。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
また、制御部は、動作モードが第1モードであるときのモータの制御特性を、モータの回転数を前記最大回転数に到達させる第1制御特性と、モータの回転数を最大回転数よりも低い回転数に到達させる第2制御特性と、を含む、複数の制御特性の何れかに設定可能に構成されている。このため、使用者は、ねじ締め作業を実施するときの操作部の操作量に対するモータの回転数を、ねじの大きさや対象物の種類等の作業条件、或いは、使用者の好み、に応じて、最速、中速、というように選択できるようになる。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0086
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0086】
このため、ボルトモードでは、図4A図4Bに示すように、PWM信号のデューティ比(換言すればモータ30の回転数)が最大となるトリガ引き量が、打撃力モードでの引き量に比べて小さくなるように、制御特性が設定されている。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0107
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0107】
次に、S423では、オンカウンタによる計時時間(オン時間)が所定時間(例えば10ms)を超えたか否かを判断する。そして、オン時間が所定時間を超えていないと判断されると、S425に移行し、オン時間が所定時間を超えていると判断されると、S424にて、現在、スイッチのオン判定中であることを記憶した後、S425に移行する。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0116
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0116】
S220では、現在、モータ制御用として設定されている動作モード(換言すれば制御特性)が登録モードであるか否かを判断する。そして、現在設定されている動作モードが登録モードでない場合には、S230にて、現在設定されている動作モード、つまり、打撃力スイッチ22又は特殊スイッチ26を介して設定された動作モードを、前回値として記憶部92に格納し、S240に移行する。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0118
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0118】
また、S220にて、現在、モータ制御用の動作モードとして登録モードが設定されている判断されると、S270に移行して、記憶部92に前回値として格納されている動作モードを読み出し、モータ制御用の動作モードとして設定する。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0127
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0127】
そして、続くS340では、設定表示LED46を消灯することで、現在の動作モードは、モード切替スイッチ14の操作によって切り替えられた登録モードではないことを報知し、図9のS120に移行する。
【手続補正20】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図11
【補正方法】変更
【補正の内容】
図11