(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017425
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】シール噛込み検知機能を備えた自動包装機
(51)【国際特許分類】
B65B 51/10 20060101AFI20240201BHJP
B65B 57/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B65B51/10 200
B65B57/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120049
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000148162
【氏名又は名称】株式会社川島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108567
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】三好 聖一
【テーマコード(参考)】
3E094
【Fターム(参考)】
3E094AA12
3E094CA01
3E094DA07
3E094DA08
3E094EA03
3E094GA07
3E094GA10
3E094GA22
3E094GA23
3E094HA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シール手段の閉じ動作中におけるサーボモータの駆動電流の基準駆動電流との偏差が閾値を超えない程度である場合でも、判定手段がシール予定部分における異物の噛み込みを見逃してしまうことのないシール噛込み検知機能を備えた自動包装機を提供する。
【解決手段】シール手段を駆動するサーボモータの駆動電流Iと基準駆動電流Irとの電流偏差ΔIを時間経過に従って累積した累積偏差Ac(ΔI)が、当該累積偏差について設定される累積閾値と比較される。判定手段は累積偏差Ac(ΔI)が累積閾値を超えたことに応じて、シールにおける異物の噛み込みが生じたと判定する。したがって、シールに噛み込まれた異物が柔らかい物である、或いは包装材が弾力性を備える場合のように、電流偏差ΔIが急激で且つ大きな上昇を示さないようなときであっても、異物の噛み込みが生じたことを見逃すことがなく噛み込みが生じたと判定できる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装材を挟み込んでシールを施すシール手段を駆動するサーボモータについて、当該サーボモータの動作データを基準動作データと比較し、当該比較結果に基づいて前記シールにおける異物の噛み込みを検知する検知機能を備えた自動包装機において、
前記動作データと前記基準動作データとの比較の際に前記シールにおける異物の噛み込みが生じたと判定される閾値を設定可能な設定手段と、
前記シール手段の運転開始後に検出手段によって検出した前記シール手段の閉じ動作中の前記サーボモータの前記動作データと前記基準動作データとの前記比較結果と前記閾値との対比に基づいて前記シールにおける異物の噛み込みが生じたか否かを判定する判定手段と、を備え、
前記サーボモータの前記動作データと前記基準動作データとの前記比較結果は前記基準動作データからの前記動作データの偏差を時間経過に従って累積した累積偏差であり、
前記閾値は前記累積偏差について予め設定される累積閾値であり、
前記判定手段は、前記累積偏差が前記累積閾値を超えたことに応じて、前記シールにおける異物の噛み込みが生じたと判定する
ことから成るからなるシール噛込み検知機能を備えた自動包装機。
【請求項2】
前記判定手段は、前記自動包装機が一連の包装動作から成る包装サイクルを繰り返す中で前記累積閾値について必要となった更新を行い、前記累積閾値の更新後には当該更新後の前記累積閾値を用いて前記シールにおける異物の噛み込みの判定を行う
ことから成る請求項1に記載のシール噛込み検知機能を備えた自動包装機。
【請求項3】
前記サーボモータの前記動作データは、前記自動包装機の包装速度に関わらず一定のサンプリング周期で検出して取得された離散動作データであり、
前記累積偏差の算出に対する当該サンプリング周期の影響を緩和或いは取り除くため、前記判定手段は、前記累積偏差をその累積期間中に行われたサンプリングのサンプリング回数で除した修正累積偏差に基づいて前記シールにおける異物の噛み込みの判定を行う
ことから成る請求項1に記載のシール噛込み検知機能を備えた自動包装機。
【請求項4】
前記サーボモータの前記動作データと前記基準動作データとの前記比較結果には前記基準動作データからの前記動作データの偏差が含まれており、
前記閾値には前記偏差について予め設定される一つ又は値が異なる二つ以上の偏差閾値が含まれている
ことから成る請求項1記載のシール噛込み検知機能を備えた自動包装機。
【請求項5】
前記設定手段と前記判定手段とに接続されている表示手段を備えており、
前記表示手段は、前記設定手段における前記動作データと前記閾値との設定の際に、当該動作データと当該閾値を表示可能であり、
前記表示手段は、前記判定手段において前記累積偏差が前記累積閾値を超えたとされたこと又は前記偏差が前記偏差閾値を超えたとされたことに基づいてされた一方又は両方の異物の噛み込みの判定に応じて、前記判定手段からの表示制御に基づいて、当該判定結果を表示する
ことから成る請求項4記載のシール噛込み検知機能を備えた自動包装機。
【請求項6】
前記設定手段は、前記基準動作データと前記動作データとの比較に際して、前記基準動作データに基づいて前記動作データが正常と判定される正常判定範囲を設定可能であり、 前記判定手段は、前記動作データが前記正常判定範囲内であると判定することに応答して、前記動作データを前記基準動作データとして更新する
ことから成る請求項1~5のいずれか一項に記載のシール噛込み検知機能を備えた自動包装機。
【請求項7】
前記正常判定範囲は、前記シール手段の運転開始から所定時間までは、前記動作データを前記基準動作データとする更新からの経過時間に応じて定められる
ことから成る請求項6に記載のシール噛込み検知機能を備えた自動包装機。
【請求項8】
前記自動包装機の電源投入時における初期の前記基準動作データは、製品が封入されない複数の空き袋を製造するときの前記サーボモータの平均的な前記動作データに基づいて作成される
ことから成る請求項1~5のいずれか一項に記載のシール噛込み検知機能を備えた自動包装機。
【請求項9】
前記判定手段が正常でないとした判定結果を受けて、当該判定結果に応じて前記シール手段を駆動する前記サーボモータを停止させる等の制御を行うシール手段駆動制御手段を備えている
ことから成る請求項1~5のいずれか一項に記載のシール噛込み検知機能を備えた自動包装機。
【請求項10】
前記サーボモータの前記動作データは、前記サーボモータを駆動する駆動電流の電流値データである
ことから成る請求項1~5のいずれか一項に記載のシール噛込み検知機能を備えた自動包装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動包装機において製品を収容した袋を封鎖するためにシール手段によって当該袋にシールを施す際に、当該シール手段を駆動するサーボモータの作動データに基づいてシール部分に異物を噛み込んでいるか否かを検知するシール噛込み検知機能を備えた自動包装機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、縦型製袋充填包装機やピロー包装機においては、ウェブ状の包装材から筒状包装材を成形し、筒状包装材から袋を形成しながらその中に包装物である製品を投入・充填し、袋底や袋頂部を形成するために筒状包装材を横断的にシール(例えば、ヒートシール)することで、当該製品が収容された袋包装体が連続的に製造される。このような包装機においては、当該シールを施す横シール手段について、光電センサによる距離に基づくシール部の厚みや、シールに要する負荷としてのシールバーを駆動するトルクの大きさ、或いはシーラの回転角の遅れを検出するなどにより、シールバーの動作時にシール部分への製品(製品の一部や欠片)の噛み込みを検出して、このような噛み込みに起因したシール異常を生じた袋包装品を正常な袋包装品から除外可能とするものが提案されている。
【0003】
図6には、シール噛込み検知機能が適用可能な自動包装機の一例として、縦型製袋充填包装機1が示されている。図示されている縦型製袋充填包装機1は、公知の構造の包装機であり、包装材ロールFrから巻き戻されつつ繰り出されるウェブ状包装材Fwは、幾つかのガイドローラ9に案内されるとともに張力付与機構10を経て製袋充填包装機本体に向けて供給される。供給途上のウェブ状包装材Fwには必要な印字が施され、当該印刷されたマークがセンサで読み取られ、当該読み取りに応じてタイミングを計って、ウェブ状包装材Fwのフォーマ11への供給、袋の形成及び袋内部への製品の充填が行われる。縦型製袋充填包装機1は、更に、筒状に曲成されたウェブ状包装材Fwをその両側端縁に縦シールを施して筒状包装材Ftに成形する縦シール手段15と、サーボモータによって駆動され筒状包装材Ftの縦シール部を含む横断領域を挟み込んで横シールを施して袋を形成する横シール手段16を備えている。
【0004】
縦型製袋充填包装機1においては、フォーマ11内に製品を案内するための投入筒12が貫通配置されており、投入筒12の上部には、上方から投入された製品が投入筒12内に導かれるように断面が下方に向かうに従って窄んだホッパ13が接続されている。フォーマ11によってその内部に筒状に曲成された包装材は、投入筒12の周囲を取り巻くように案内され、包装材送り手段14に備わる同期して作動する左右一対のベルト送り機構14a,14bによって、下方へ紙送りされる。図示の縦型製袋充填包装機1の包装動作は間欠作動式であるので、紙送りは間欠的に行われる。筒状に曲成された包装材は、投入筒12の周囲を下方に送られる間、間欠動作の停止中に縦シール手段15によって、端縁同士がヒートシール(熱溶着)され、筒状包装材Ftに成形される。図示の例では、縦シール手段15は、当該端縁同士に合掌貼りを施すので、当該端縁同士を挟んでヒートシールを施す一対の縦ヒートシールバー15a,15bを備えている。
【0005】
投入筒12の下端から下方へ送り出されて製品が投入・充填された筒状包装材Ftは、横シール手段16によってシールが施されて、袋底や袋頂部を形成するための横シール部S、即ち、袋の天シール部と次の袋の底シール部とが形成される。横シール手段16は、筒状包装材Ftを横断方向に挟み込んで筒状包装材Ftの内面同士にヒートシールを施す一対の横ヒートシールバー16a,16bを備えている。筒状包装材Ftから形成される袋内に製品を充填し、袋に横シールを施すことを繰り返すことで、製品が収容された袋包装体Pが順次製造される。横シール手段16においては、袋包装体Pを筒状包装材から切り離すカッター手段を設けることができる。即ち、一方の横ヒートシールバー16aには、横シール部に対して進退駆動されて当該横シール部Sを突き切るカッター刃が備わっており、他方の横ヒートシールバー16bには、進出したカッター刃が入り込むことができる溝が形成されている。
【0006】
図7は、自動包装機に備わる横シール手段を作動させるサーボモータの速度と駆動電流の時間変化の一例を概略的に示すグラフである。
図7の(イ)がサーボモータの速度の時間変化を示しており、(ロ)がサーボモータの駆動電流の電流値の時間変化を示している。
図7に示すように、自動包装機が実行する各包装サイクルにおいて、横シール手段の動作は、時間軸に沿って順次、大きくは3つのステージの期間で行われる動作、即ち、閉じ動作期間における閉じ動作、シール期間におけるシール動作及び開き動作期間における開き動作から成っている。駆動電流は、開き動作時や閉じ動作時のようにモータ速度が加減速する時に大きな変化を示し、シール期間では大きな値を示す。駆動電流は、サーボモータを動作させるために当該サーボモータに供給される電流であり、モータの動きや負荷によって電流値は変化する。
【0007】
袋のシール部分への製品の噛み込みを検出可能とした製袋包装機の一例として、一対のシールジョーを対接・離反させるために駆動されるサーボモータに関して、その回転量に対応して発生されるパルス値を検出するエンコーダを備えており、離反状態のシールジョーが接近を開始した後、対接してトルク制御に移行してから所定時間後にエンコーダによって検出されたパルス値を読み込み、該パルス値と予め設定された閾値との比較結果に基づいて、シール部分への製品の噛み込みを判定するものが提案されている(特許文献1参照)。その場合、検出したパルス値が閾値より大きければ正常(噛み込みがない)と判定し、小さければ異常(噛み込みがあった)と判定される。
【0008】
包装材のシール部に入り込んだ介在物(例えば、包装すべき製品の欠片)の有無の判定方法として、包装機の動作を開始した時点で所定時間の間、包装物を投入することなく幾つかの回数分について包装材を封止して包装袋を形成し、その際の平均的な封止部の厚みに比例したデータを標準データとして記憶しておき、次いで、包装物を投入しつつ行う通常の包装封止時において封止部の厚みに比例したデータを検出し、このデータを、先に記憶しておいた標準データと比較することによって、包装材の封止部における介在物の有無を判定するものがある(特許文献2参照)。この判定方法によれば、包装材の長手方向の厚みについてのバラつき等に影響されることなく、封止部に入り込んだ包装物や包装材の皺等の有無を検知することを図っている。
【0009】
シール部における異物等の噛み込みを検出する方法において、サーボモータの正常動作時にその動作データを基準動作データとして記録しておき、その後のサーボモータの動作データを、記録した基準動作データと比較し、サーボモータの異常動作データを検出することにより、シール部における異物の噛み込みを検出するものがある。自動包装機の機構各部品、特にヒータによる加熱を伴うシール手段においては、例えば自動包装機の運転開始から運転時間が経過するに伴って温度上昇が暫く継続し、温度による膨張・収縮の熱変形は、ゆっくりと変化する。サーボモータの動作においてもこの温度上昇の影響は免れず、充分な動作時間の経過後では、正常な動作データであっても当初に記録した基準動作データから離れた値となる。動作データが当初記録した基準動作データから乖離すると、正常な動作データであるにもかかわらず異常と判定される、或いは逆に異常な動作データが正常な動作データであると判定される、という誤判定を引き起こす原因となる。
【0010】
そこで、本出願人は、サーボモータで駆動されるシール機構を備えた自動包装機において、判定の基準となる基準動作データにシール機構の温度変化を反映させることにより、シールの良否を判定するに際して上記の誤判定を無くすことができる自動包装機におけるシール良否判定方法と装置を提供している(特許文献3、4参照)。
即ち、包装材を挟み込んでシールを施すシール機構を駆動するサーボモータの動作データを基準動作データと比較し、当該比較結果に基づいて動作データが正常か否かに応じてシールの良否を判定する自動包装機のシール良否判定装置は、動作データと基準動作データとの比較に際して、基準動作データと比較された動作データが正常と判定される正常判定範囲を判定データとして設定する設定手段と、シール機構の運転開始後に検出手段によって検出したシール機構の閉じ動作中のサーボモータの動作データが基準動作データから正常判定範囲内であるか否かを判定する判定手段と、を備えており、判定手段は、動作データが正常判定範囲内であると判定することに応答して、その正常と判定された動作データを新たな基準動作データとして更新している。
【0011】
図8は、上記の本出願人によって提案されている自動包装機におけるシール良否判定装置において、横シール手段における異物噛み込み判定を行うためのブロック図である。
図8に示すように、制御手段24に関連して、横シール手段16を駆動するサーボモータ20と、サーボモータ20の動作データを検出する検出手段21が設けられている。また、初期の動作データの良否を判断すべき基準となる初期基準動作データと、動作データと基準動作データと対比して異物噛み込みと判定するための閾値と、詳細については後述する正常判定範囲とをそれぞれ判定データとして設定するための設定手段23が設けられている。ディスプレイ等の表示手段22は、設定手段23との間で相互にデータを遣り取りをしながら設定手段23で設定されるデータを表示する。制御手段24においては、設定手段23で設定された判定データを記憶する判定データ記憶手段25が設けられている。判定データ記憶手段25は、初期基準動作データ、正常判定範囲及び閾値をそれぞれ記憶する、基準動作データ記憶手段25a、正常判定範囲記憶手段25b及び閾値記憶手段25cを備えている。判定手段26は、動作データが各種の判定データと比較して正常か否かの判定を行う。検出手段21は、サーボモータ20について、横シール手段16の横シール動作の際に生じる包装材の挟み込み抵抗に相当する動作データを検出する。各データは、検出手段21が検出した駆動電流又はそれに基づいて得られるデータとすることができる。サーボモータ20の作動データは駆動するために供給される駆動電流であり、検出手段21はサーボモータ20の駆動電流を検出する。また、基準動作データは基準駆動電流であり、初期基準動作データは、時間変化する駆動電流のテーブル、マップ、式等のデータとして記憶される。
【0012】
図9は、動作データが予め定められている閾値との比較に基づいて、シール部分での異物の噛み込みの判定を説明する図である。
図9は、
図7(ロ)に示した横シール手段を作動させるサーボモータの駆動電流の時間変化の一例を示すグラフと同等である。
図8に示すブロック図の記載も併せて参照すると、サーボモータ20の駆動電流Iは、基本的には基準駆動電流(基準動作データ)として図示されているような波形を描く。サーボモータ20の実際の動作において、検出手段21が検出する駆動電流Iが、閾値記憶手段25cに記憶されている電流閾値Th(I)と検出の各瞬間において比較され、判定手段26において横シール手段16におけるシール不良があったか否かが判定される。即ち、横シール手段16が閉じ動作を開始して異物が横ヒートシールバー16a,16b間に挟まれると、サーボモータ20の負荷が増大して駆動電流Iが破線で図示するように急上昇する。駆動電流Iが電流閾値Th(I)と比較されて電流閾値Th(I)を超えるとされることに応じて、判定手段26はその時に包装材のシール部分に異物噛み込みがあったと判定する。横シール手段16が閉じ動作中に駆動電流が上昇しても、駆動電流Iの値が閾値Th(I)を超えなければ判定手段26は異物噛み込みがあったと判定することはない。判定手段26の異物噛み込みとの判定結果があった場合、その判定結果が横シール駆動制御手段27に出力され、横シール駆動制御手段27は制御信号をサーボモータ20に出力し、横シール手段16を停止させる等の制御を行う。
【0013】
設定手段23において設定された初期基準動作データIri及び電流閾値Th(I)の信号を受けて、設定手段23とこれらを記憶する判定データ記憶手段25との間でこれらのデータの遣り取りが行われる。また、判定手段26には、判定データ記憶手段25に備わる基準動作データ記憶手段25a、正常判定範囲記憶手段25b及び閾値記憶手段25cとの間でそれぞれ記憶されている初期基準動作データIri、正常判定範囲Njr及び電流閾値Th(I)のデータが入力される。閾値は、電流閾値Th(I)の代わりに駆動電流の偏差閾値Th(ΔI)であってもよい。即ち、駆動電流Iと基準駆動電流Irとを比較したときの電流変動分ΔIが偏差閾値Th(ΔI)を超えたか否かに基づいて異物噛み込みがあったか否かを判定することが、より現実的な対比・判定とされる。
【0014】
基準動作データ記憶手段25aに記憶される基準動作データ(基準駆動電流Ir)がその時々に更新される場合には、動作データ(駆動電流I)が、更新された基準動作データ(更新された基準駆動電流Ir)と比較され、その比較に基づく偏差が予め定められている偏差閾値と比較され、当該偏差が偏差閾値を超えるとき、異物の噛み込みがあったと判定される。判定手段26の初期動作においては、初期動作データ(初期駆動電流Ii)と初期基準動作データ(初期基準駆動電流Iri)とが比較される。この比較は、例えば、両者の瞬間的な差(絶対値)の最大値が、正常判定範囲記憶手段25bに記憶され且つそこから読み出された正常判定範囲Njrを超えるか否かで行うことができる。例えば、初期動作データ(初期駆動電流Ii)と初期基準動作データ(初期基準駆動電流Iri)との差が正常判定範囲Njr内であれば、この初期動作データが基準動作データ記憶手段25aにおいて更新された基準動作データ(基準駆動電流Ir)として記憶される。なお、正常判定範囲内とされた連続する複数の動作データを平均した平均動作データを基準動作データとして更新してもよい。正常判定範囲Njrを超える動作データは、基準動作データ記憶手段25aに更新して記憶されることはない。更新された基準動作データ(基準駆動電流Ir)が、時間経過で変化する次の動作データの正常・異常判定の際に読み出され、異物の噛み込みがあったか否かの判定に用いられる。
【0015】
図8に示される異物噛み込み判定機能のためのブロック図に対応して、異物噛み込み判定機能における異物噛み込み判定を実行するフローチャートが
図10に示されている。
図10に示されているフローチャートについてステップ毎に説明をする。
先ず、スタート(ステップ20;「S20」と略す。以下同じ)から開始して、正常判定範囲及び閾値の読込みが行われる(S21)。即ち、設定手段23において設定された閾値が閾値記憶手段25cにおいて記憶されるので、S21においては、閾値記憶手段25cに記憶されている当該閾値が読み込まれる。閾値としては、比較的大きな噛み込みAの閾値(以下、「噛み込みA閾値」という)と比較的小さな噛み込みBの閾値(以下、「噛み込みB閾値」という)とを設定することができる。
【0016】
次に、基準動作データの読込みが行われる(S22)。即ち、設定手段23において初期基準動作データが設定され、その初期基準動作データが制御手段24の基準動作データ記憶手段25aに記憶されているので、S22においては、当初は、当該初期基準動作データが基準動作データとして読み込まれる。
次に、動作データの読込みが行われる(S23)。即ち、検出手段21は横シール手段16を駆動するサーボモータ20に供給される駆動電流を検出しており、その検出データが動作データとして制御手段24の判定手段26に入力される。
【0017】
次に、判定手段26においては、S23で読み込まれた動作データ(駆動電流)とS22で読み込まれた基準動作データ(基準駆動電流)との比較が行われて、偏差(駆動電流値-電流基準値)が求められ、当該偏差が噛み込みA閾値よりも大きいか否かの判定(S24)と、当該偏差が噛み込みB閾値よりも大きいか否かの判定(S25)が行われる。 判定S24において、当該偏差が噛み込みA閾値よりも大きいと判定される場合には、サーボモータ20に供給される駆動電流が急激に大きく上昇したことを示しているので、包装材のシール部分に異物の噛み込みがあったとされ、包装機が停止する(S26)。
判定S25において、当該偏差が噛み込みB閾値よりも大きいと判定される場合には、サーボモータ20に供給される駆動電流が比較的大きく上昇したことを示しているので、包装材のシール部分に異物の噛み込みがあったとされ、横シール手段16に組み込まれているカッターが停止される、或いは包装機が停止する(S28)。
判定S24において当該偏差が噛み込みA閾値よりも大きくなく、その結果、「NO」と判定される場合、判定S25において当該偏差が噛み込みB閾値よりも大きくなく、その結果、「NO」と判定される場合、及びS28においてカッター又は包装機が停止した場合には、噛み込みは無いとしてそれぞれ動作データの蓄積が行われる(S29)。
【0018】
次に、1回のシール動作(横シール手段16が行った今回のシール動作)が終了したか否かの判定が行われる(S30)。S30の判定の結果が「NO」である場合には、フローはS23に戻り、横シール手段16のシール動作における動作データの読込みから再開される。S30の判定の結果が「YES」である場合には、今回読み込んだ動作データが、S21で読み込んだ正常判定範囲内であるか否かが判定される(S31)。
S31の判定結果が「YES」である場合、即ち、今回の動作データが比較の対象とした基準動作データ(初回の場合には初期基準動作データ)から異常な程にはかけ離れていないと判明した場合には、今回の動作データを基準動作データ記憶手段25aに記憶される新たな基準動作データとして更新とし(S32)、フローはS22に戻り、横シール手段16の次回のシール動作は、更新された当該基準動作データの読込みから再開される。S31の判定結果が「NO」である場合、即ち、今回の動作データが比較の対象とした基準動作データから異常にかけ離れていると判明した場合には、基準動作データの更新を行わず(S33)、S22に戻って基準動作データの読込みからフローを再開する。
【0019】
図2及び
図3を参照して、横シール手段における駆動電流の時間変化について説明する。
図2は横シール手段における駆動電流の時間変化特性図であり、横軸が横シール手段における横シール閉じ動作の経過時間を示し、縦軸は横シール手段に費やされる駆動電流の大きさを示している。
図3は、
図2と同様に、横軸を経過時間とした横シール手段における駆動電流の時間変化特性図であるが、縦軸については駆動電流の電流基準値に対する変動分(電流偏差)を示している。なお、
図2及び
図3には、本件発明におけるシール手段における駆動電流の時間変化の内容も含んでいるが、ここでは従来の横シール手段における駆動電流の時間変化特性についてのみ説明する。
【0020】
図2に示されているように、基準駆動電流は、例えば二点鎖線で示す波形のように変化していく。サーボモータ20によって駆動される横シール手段16が筒状包装材Ftを挟み込んで横シールを施す横シール動作においては、ヒートシールバー16a,16bが筒状包装材Ftの挟み込みを開始して後、筒状包装材Ftが押し潰されるに従って、包装材の圧縮が高まっていく。これに伴い、包装材は圧縮変形しづらくなり、包装材をより圧縮させようとするには挟圧力が一層高くなることと、そのためのサーボモータ駆動用に通電される駆動電流の値が次第に大きくなっていく。
【0021】
包装材のシール部分に包装物である製品の欠片等の硬さがある程度大きい異物が付着していると、シール手段が包装材を挟み込んだときに、異物が簡単には潰れないために、ヒートシール動作の行程終了を目指してシールバーが異物を押し潰そうとして、
図2及び
図3(a)の噛み込みA(実線で示す波形の噛み込みピーク)や噛み込みB(点線で示す波形の噛み込みピーク)で示すように、駆動電流が急激に大きくなる現象が生じる。検知時間内において、急激に大きくなる駆動電流が基準駆動電流に対して予め定められた閾値を超えることが検知されることで、シール部分に異物の噛み込みが生じたことの検出が可能となることは、上記したとおりである。噛み込みBの駆動電流のピークは噛み込みAの場合と比べてピーク値は低くても、検知時間内において基準駆動電流に比べて予め定められた閾値を超えてさえいれば、異物の噛み込みがあったと判定可能である。
【0022】
しかしながら、包装材のシール部分に付着した異物が柔らかい物である場合や、付着した異物の硬さが大きくても使用する包装材が柔らかく圧縮性がある材質で作られたものであるときには、シール手段がシールバー間に包装材を挟み込んだとき、
図2及び
図3(a)の噛み込みAや噛み込みBで示すような駆動電流の急激な上昇変化は生じず、
図2及び
図3(a)の噛み込みC(破線で示す波形)に示すように、駆動電流は基準駆動電流に対してゆっくりで且つなだらかに変動する。即ち、シール部分に異物の噛み込みがあるにもかかわらず、駆動電流が急激に大きくなるピークが生じず予め定められた閾値を超えることがないので、異物の噛み込みがあると判定されない、という現象が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2005-104512号公報
【特許文献2】特許第3473861号公報
【特許文献3】特許第4897346号公報
【特許文献4】特許第5068891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
図2に示す噛み込みCでは、検知時間内において駆動電流のピークが生じてはおらず且つ閾値を超えてはいないが、
図3に示すように噛み込みCが生じている場合の駆動電流の基準駆動電流からの変動分については、時間経過に伴って正の値の成分が連続的に生じていることが判る。
そこで、横シール手段が閉じ動作中に駆動電流に急激な上昇変化がない、即ち、駆動電流の電流値が瞬間的にでも基準駆動電流から明らかに跳ね上がるような乖離を示すことがない場合であっても、噛み込み検知を可能にする点で解決すべき課題がある。
【0025】
この発明の目的は、上記課題を解決することであり、横シール手段の閉じ動作中にサーボモータの駆動電流が基準駆動電流を超える上昇をするが、その上昇が急激ではなく瞬間的にでも基準駆動電流から明らかに跳ね上がって予め定められた閾値を超えるようなものでない場合であっても、判定手段がシール部分における異物の噛み込みを見逃してしまうことのないシール噛込み検知機能を備えた自動包装機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記の課題を解決するため、この発明によるシール噛込み検知機能を備えた自動包装機は、包装材を挟み込んでシールを施すシール手段を駆動するサーボモータについて、当該サーボモータの動作データを基準動作データと比較し、当該比較結果に基づいて前記シールにおける異物の噛み込みを検知する検知機能を備えた自動包装機において、
前記動作データと前記基準動作データとの比較の際に前記シールにおける異物の噛み込みが生じたと判定される閾値を設定可能な設定手段と、
前記シール手段の運転開始後に検出手段によって検出した前記シール手段の閉じ動作中の前記サーボモータの前記動作データと前記基準動作データとの前記比較結果と前記閾値との対比に基づいて前記シールにおける異物の噛み込みが生じたか否かを判定する判定手段と、を備え、
前記サーボモータの前記動作データと前記基準動作データとの前記比較結果は前記基準動作データからの前記動作データの偏差を時間経過に従って累積した累積偏差であり、
前記閾値は前記累積偏差について予め設定される累積閾値であり、
前記判定手段は、前記累積偏差が前記累積閾値を超えたことに応じて、前記シールにおける異物の噛み込みが生じたと判定する
ことから成っている。
【0027】
このシール噛込み検知機能を備えた自動包装機によれば、
動作データと基準動作データとの比較の際にシールに異物の噛み込みが生じたか否かの判定に用いられる閾値が設定手段によって設定され、サーボモータによって駆動されるシール手段が包装材を挟み込んでシールを施す際に、当該検知機能によって、サーボモータの動作データが基準動作データと比較され、当該比較結果に基づいてシールにおける異物の噛み込みが判定される。
また、判定手段は、シール手段の運転開始後に検出手段によって検出したシール手段の閉じ動作中のサーボモータの動作データと基準動作データとの比較結果と、設定手段によって設定された閾値との対比に基づいて、シールにおける異物の噛み込みが生じたか否かを判定する。
更に、本自動包装機によれば、サーボモータの動作データと基準動作データとの比較結果は基準動作データからの動作データの偏差を時間経過に従って累積した累積偏差とされ、閾値は当該累積偏差について設定される累積閾値であるとされ、判定手段は累積偏差が累積閾値を超えたことに応じて、シールにおける異物の噛み込みが生じたと判定する。
したがって、サーボモータの動作データが、噛み込まれた異物が硬い物であった場合に生じるような急激で且つ大きな上昇を示さないとき、例えば、噛み込んだ異物が柔らかい物である、或いは包装材が弾力性を備える場合のように、基準動作データからの動作データの偏差が小さいながらもゆっくりと続くようなときであっても、判定手段は、当該偏差を時間経過に従って累積した変動分である累積偏差を指標とし、当該累積偏差が予め設定された累積閾値を超えるようなことがあれば、シールにおける異物の噛み込みが生じたと判定する。
【0028】
このシール噛込み検知機能を備えた自動包装機において、
前記判定手段は、前記自動包装機が一連の包装動作から成る包装サイクルを繰り返す中で前記累積閾値について必要となった更新を行い、前記累積閾値の更新後には当該更新後の前記累積閾値を用いて前記シールにおける異物の噛み込みの判定を行うことができる。 自動包装機が包装サイクルを繰り返す包装動作の経過に伴って、シール手段が包装材にシールを施すときのサーボモータの作動データの値は、例えば、製造する包装体の数の増加や自動包装機本体の温度上昇等に起因して、包装サイクルが進むに伴って変化する。
こうしたサーボモータの作動データの値の変化に応じて、累積閾値について更新を行うことが必要であるときには当該累積閾値についての更新が行われるので、自動包装機の状態に応じて、シールにおける異物の噛み込みの判定をより適切に行うことができる。
【0029】
このシール噛込み検知機能を備えた自動包装機において、
前記サーボモータの前記動作データは、前記自動包装機の包装速度に関わらず一定のサンプリング周期で検出して取得された離散動作データであり、
前記累積偏差の算出における当該サンプリング周期の影響を緩和或いは取り除くため、前記判定手段は、前記累積偏差をその累積期間中に行われたサンプリングのサンプリング回数で除した修正累積偏差に基づいて前記シールにおける異物の噛み込みの判定を行うことができる。
自動包装機においては、動作データの取得をサンプリングで行っている場合には、自動包装機の設計・製作上、通常そのサンプリング周期は自動包装機の包装速度(例えば、単位時間当たりの包装サイクル数)に関わらず一定とされる。したがって、例えば、自動包装機の包装速度が速く(遅く)なるに従って、包装サイクル毎の動作データの取得回数は少なく(大きく)なるので、累積偏差の算出値にはサンプリングの影響が避けられない。累積偏差をその累積期間中に行われたサンプリングのサンプリング回数で除して得られる修正累積偏差に基づいてシールにおける異物の噛み込みの判定を行うことで、累積偏差の評価の際における当該サンプリング周期の影響を緩和或いは取り除くことができ、シールにおける異物の噛み込みについての判定の信頼性を向上することができる。
【0030】
このシール噛込み検知機能を備えた自動包装機において、
前記サーボモータの前記動作データと前記基準動作データとの前記比較結果には前記基準動作データからの前記動作データの偏差が含まれており、
前記閾値には前記偏差について予め設定される一つ又は値が異なる二つ以上の偏差閾値が含まれるものとすることができる。
判定手段のよるシールの噛み込みの判定には、累積偏差が累積閾値を超えたか否かによる判定に加えて、偏差自体が偏差閾値を超えたか否かによる判定の両方を併用することができるので、偏差自体が偏差閾値を超えてはいないが累積偏差が累積閾値を超えた場合のみならず、逆に累積偏差が累積閾値を超えてはいないが、偏差が偏差閾値を超えた場合にも、異物の噛み込みを検知することができる。
【0031】
このシール噛込み検知機能を備えた自動包装機において、
前記設定手段と前記判定手段とに接続されている表示手段を備えており、
前記表示手段は、前記設定手段における前記動作データと前記閾値との設定の際に、当該動作データと当該閾値を表示可能であり、
前記表示手段は、前記判定手段において前記累積偏差が前記累積閾値を超えたとされたこと又は前記偏差が前記偏差閾値を超えたとされたことに基づいてされた一方又は両方の異物の噛み込みの判定に応じて、前記判定手段からの表示制御に基づいて、当該判定結果を表示することができる。
累積偏差が累積閾値を超えたか否かによる判定に加えて、偏差自体が偏差閾値を超えたか否かによる判定の両方を併用する場合、表示手段において、判定手段における判定結果を表示することで、累積偏差が累積閾値を超えたとされるときと、偏差が偏差閾値を超えたとされるときのいずれか一方又は両方において、自動包装機のオペレータは、異物噛み込みについていずれの事態であるか又は両方の事態であるかを容易に把握することができるとともに、異物の噛み込みへの対応を取りやすくなる。
【0032】
このシール噛込み検知機能を備えた自動包装機において、
前記設定手段は、前記基準動作データと前記動作データとの比較に際して、前記基準動作データに基づいて前記動作データが正常と判定される正常判定範囲を設定可能であり、 前記判定手段は、前記動作データが前記正常判定範囲内であると判定することに応答して、前記動作データを前記基準動作データとして更新することができる。
自動包装機においては、例えば、運転開始後の経過時間に応じてシール手段を構成する部品の温度変化によって部品自体の熱変形、即ち、温度膨張・収縮が生じ、シール手段には次第に温度上昇が生じて閉じ動作中の動作データが少しずつゆっくりと変化する。
判定手段は、動作データが設定手段において設定された正常判定範囲内であると判定されることに応答して、動作データを基準動作データとして更新する。サーボモータの動作データの比較基準となる基準動作データが自動的に更新されるので、シールでの噛み込みが生じたか否かの判定をより正確に行うことが可能になる。
【0033】
このシール噛込み検知機能を備えた自動包装機において、
前記正常判定範囲は、前記シール手段の運転開始から所定時間までは、前記動作データを前記基準動作データとする更新からの経過時間に応じて定めることができる。
基準動作データとの比較に基づく動作データの正常・異常の判定を定める正常判定範囲については、所定時間までは当該更新からの経過時間に応じて定めることができる。シール機構の温度上昇は、運転開始直後は比較的急であるが、その後の運転経過中にはゆっくり生じている。そこで、基準動作データの更新後の経過時間に応じて正常判定範囲を定めることで、運転開始直後には比較的頻繁に更新を行って温度上昇に追従するが、その後においては頻繁な更新を回避するように定めることができる。例えば、温度上昇が飽和する所定時間までは当該更新からの経過時間が長くなるほど、サーボモータの動作データが正常と判定される範囲を狭くなるように定めることができる。
【0034】
このシール噛込み検知機能を備えた自動包装機において、
前記自動包装機の電源投入時における初期の前記基準動作データは、製品が封入されない複数の空き袋を製造するときの前記サーボモータの平均的な前記動作データに基づいて作成することができる。
自動包装機を電源投入してその運転を開始する際には、運転の試みとして製品が封入されない複数の空き袋が製造される。自動包装機の初期の基準動作データは、この空袋を製造する運転を利用して、サーボモータの平均的な動作データに基づいて作成されるので、電源投入の際の基準動作データが実際に則した基準動作データが得られる。
【0035】
このシール噛込み検知機能を備えた自動包装機において、
前記判定手段が正常でないとした判定結果を受けて、当該判定結果に応じて前記シール手段を駆動する前記サーボモータを停止させる等の制御を行うシール手段駆動制御手段を備えることができる。
判定手段の判定結果が正常でないとされるときには、シール機構の動作が異常である可能性があるので、シール機構を駆動するサーボモータを停止させて、異常な状態の点検・解消を図ることが好ましい。
【0036】
このシール噛込み検知機能を備えた自動包装機において、
前記サーボモータの前記動作データは、前記サーボモータを駆動する駆動電流の電流値データであるとすることができる。
サーボモータの動作状態を表すトルクは駆動電流に関連しているので、駆動電流の電流値データを注視することでサーボモータの動作状態に対応することができる。
【発明の効果】
【0037】
この発明によるシール噛込み検知機能を備えた自動包装機は、上記のように構成されているので、基本的にはサーボモータによって駆動されるシール手段が包装材を挟み込んでシールを施す際に、当該検知機能によって、サーボモータの動作データが基準動作データと比較され、当該比較結果に基づいてシールにおける異物の噛み込みが検知される。
動作データと基準動作データとの比較の際にシールに異物の噛み込みが生じたか否かの判定に用いられる閾値が設定手段によって設定され、シール手段の運転開始後に検出手段によって検出したシール手段の閉じ動作中のサーボモータの動作データと基準動作データとの比較結果と、設定手段によって設定された閾値との対比に基づいて、判定手段がシールにおける異物の噛み込みが生じたか否かを判定する。
サーボモータの動作データと基準動作データとの比較結果は基準動作データからの動作データの偏差を時間経過に従って累積した累積偏差とされ、閾値は当該累積偏差について設定される累積閾値であるとされ、判定手段は累積偏差が累積閾値を超えたことに応じて、シールにおける異物の噛み込みが生じたと判定する。
したがって、サーボモータの動作データが、噛み込まれた異物が硬い物であった場合に生じるような急激で且つ大きな上昇を示さないとき、例えば、噛み込んだ異物が柔らかい物である、或いは包装材が弾力性を備える場合のように、基準動作データからの動作データの偏差が小さいながらもゆっくりと続くようなときには、当該偏差を時間経過に従って累積した累積偏差が予め設定された累積閾値を超えるようなことがあれば、判定手段はそれに応じて、シールにおける異物の噛み込みが生じたと判定する。
その結果、本発明による自動包装機によれば、従前の自動包装機であれば見逃してしまうような異物の噛み込みを検知することができ、シール不良の包装体を発見・排除することができるので、そうしたシール不良の包装体が流通段階に搬出されるのを未然に防止することができ、流通に供される包装体の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、本発明によるシール噛込み検知機能を備えた自動包装機において、当該検知機能を司るシール装置における異物噛み込み判定を行うためのブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明によるシール噛込み検知機能に関して、自動包装機に備わる横シール手段における駆動電流の時間変化特性図である。
【
図3】
図3は、
図2に関して、縦軸を駆動電流の電流基準値に対する変動分とした横シール手段における駆動電流の時間変化特性図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す異物噛み込み判定機能のためのブロック図に対応して、異物噛み込み判定機能において異物噛み込み判定を実行するためのフローチャートである。
【
図5】
図5は、累積偏差へのサンプリング周期の影響とその回避について説明する図である。
【
図6】
図6は、本発明によるシール噛込み検知機能が適用可能な自動包装機の一例を概略図示する斜視図面である。
【
図7】
図7は、自動包装機に備わる横シール手段を作動させるサーボモータの速度と出力電流の時間変化の一例を概略的に示すグラフである。
【
図8】
図8は、従来の自動包装機におけるシール良否判定装置における異物噛み込み判定を行うためのブロック図である。
【
図9】
図9は、動作データと予め定められている閾値との比較に基づいて従来行われているシール部分での異物の噛み込みの判定を説明する図である。
【
図10】
図10は、
図8に示す異物噛み込み判定機能のためのブロック図に対応して、異物噛み込み判定機能において異物噛み込み判定を実行するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付した図面に基づいて、この発明によるシール噛込み検知機能を備えた自動包装機の実施例について説明する。本発明による自動包装機の実施例の説明においては、シール手段として横シール手段を例に取って、横シール手段を駆動するサーボモータに供給される駆動電流の時間変化について説明をする。
図1は、本発明によるシール噛込み検知機能を備えた自動包装機において、当該検知機能を司るシール装置における異物噛み込み判定を行うためのブロック図である。
【0040】
図1に示すブロック図において、自動包装機に備わる制御手段30に関連して、その周囲には、
図8に示す従来のブロック図の場合と同様に、横シール手段16、横シール手段16を駆動するサーボモータ20、サーボモータ20の動作データとして当該サーボモータ20に供給される駆動電流を検出する検出手段21、初期基準動作データ及び閾値の設定手段23及び表示手段22が関連配置されている。検出手段21は、横シール手段16を開閉動作させるためにサーボモータ20に供給される駆動電流を検出する。以下、サーボモータ20の動作データはサーボモータ20を駆動するために供給される駆動電流であり、サーボモータ20の基準動作データは当該駆動電流の基準となる基準駆動電流であるとして説明する。
【0041】
制御手段30は、判定データ記憶手段25として、基準動作データ記憶手段25a、正常判定範囲記憶手段25b及び閾値記憶手段25cを備えており、また判定手段31の判定結果に基づいて横シール手段16の駆動を制御するために、サーボモータ20に制御信号を与える横シール手段駆動制御手段27を備えている。これらの各手段等には、従来のシール噛込み検知機能に対応するブロック図である
図8に付した符号と同じ番号の符号を付すことで、再度の詳細な説明を省略する。本発明に関する制御手段30に備わる判定手段31においては、閾値として、詳細については後述する累積的な閾値である累積閾値と瞬間的な閾値としての偏差閾値を併用している。本発明による検知機能は、この点において
図8に示す従来のシール噛込み検知機能と異なる。
【0042】
設定手段23では、ディスプレイ等の表示手段22と連係して、サーボモータ20の駆動電流をその基準となる基準駆動電流と対比して異物噛み込みと判定するための閾値を設定可能である。設定手段23においては、駆動電流と基準駆動電流との比較に際して駆動電流が正常と判定される正常判定範囲を設定可能である。自動包装機のオペレータは、表示手段22における表示を見ながら、各種のデータや閾値を設定可能である。正常判定範囲は、例えば、温度変化によって自動包装機の部品自体の熱変形等を考慮するものであって、そのときに検出した駆動電流を新たな基準駆動電流として更新することが許される判定範囲である。判定手段31は、基準駆動電流から見て、駆動電流が正常判定範囲内であると判定することに応じて駆動電流を基準駆動電流として更新する。駆動電流が正常判定範囲内でなければ基準駆動電流は更新されない。基準駆動電流が自動包装機の状態に応じて更新されることで、異物の噛み込みの有無を常に正確に判定することが可能になる。
【0043】
設定手段23では、従来と同様に、自動包装機が作動停止した後の作動再開のため包装動作パラメータに応じて、当該閾値を設定可能であり、設定手段23で設定された閾値が、テーブル、マップ、式等のデータとして判定データ記憶手段25に記憶される。検出手段21が検出する駆動電流は、横シール動作の際にヒートシールバーが異物等を挟み込もうとするときに異物等から受ける抵抗に応じて上昇する。判定手段31は、この際、検出手段21によって検出した駆動電流とサーボモータ20の基準駆動電流との偏差それ自体、或いは当該偏差に基づいて算出される値を設定手段23で設定された閾値と対比することで、横シール手段16における異物の噛み込みを判定する。判定手段31の判定結果が横シール手段駆動制御手段27に出力され、横シール手段駆動制御手段27は、判定手段26の判定結果に応じて横シール手段16のためのサーボモータ20を駆動する。
【0044】
設定手段23で設定される正常判定範囲については、横シール手段16の運転開始から所定時間までは、更新(駆動電流を基準駆動電流とする更新)からの経過時間に応じて定められる。例えば、横シール手段16の温度は運転開始直後には比較的急速に上昇するのと比べてその後はゆっくりと上昇するので、運転開始後の温度上昇が飽和する所定時間までは、サーボモータ20の駆動電流が正常と判定される範囲を基準駆動電流の更新後の経過時間に従って定めることができる。このようにすることで、運転開始直後には温度上昇に追従すべく基準駆動電流は頻繁に更新されるが、温度上昇が飽和する所定時間までにおいては、例えば当該経過時間に従って正常範囲を狭く定めることで、基準駆動電流の頻繁な更新を回避することができる。また、自動包装機の運転開始の際には、通常、運転の試みとして製品の封入がない複数の空袋が製造される。この空袋製造運転時のサーボモータの平均的な動作データに基づいて運転再開の際の初期の基準動作データを作成することにより、当該基準動作データを実際に則したものとすることができる。
【0045】
図2及び
図3に図示のもののうち、既に説明した部分については概略な記述に止め、再度の詳細な説明を省略する。
図2及び
図3はサーボモータに供給される駆動電流Iの時間変化特性図であり、横軸が横シール手段16における横シール閉じ動作の経過時間Tを示す。横軸に示した時間範囲は、横シール手段16の閉じ動作期間に相当しており、横シール手段16において異物の噛み込みの検知を行う噛み込み検知時間範囲Tsとされている。縦軸は、
図2ではサーボモータに供給される駆動電流Iの大きさを示しているが、
図3では駆動電流Iの基準駆動電流Irに対する変動分である電流偏差ΔIを示している。
【0046】
図2及び
図3に示す各波形はサーボモータ20を駆動するために供給される電流を検出手段21で検出した駆動電流Iの波形である。二点鎖線で示す波形は、異物の噛み込みを生じていないときにサーボモータ20に供給される駆動電流の基準となる基準駆動電流Irの波形である。実線で示す波形は、包装材のシール予定部分において硬い異物を噛み込むことに起因して大きく上昇する噛み込みAのときの駆動電流Iaの波形である。点線で示す波形は、同様に異物を噛み込むことに起因して比較的小さく上昇する噛み込みBのときの駆動電流Ibの波形である。破線で示す波形は、柔らかい異物を噛み込んでいるとき等の急激ではなくゆるやかに上昇する噛み込みCのときの駆動電流Icの波形である。
【0047】
図3(b)に示すように、本発明の噛込み検知機能によれば、噛み込み検知時間Ts内において、サーボモータ20を駆動するために供給される駆動電流が急激に上昇して基準駆動電流Irに対する電流偏差ΔIが予め定められた閾値を超えることが検知されることで、シール部分に異物の噛み込みが生じたことの検出が可能となる。駆動電流Iと基準駆動電流Irとについて行われる比較の態様の一つは、従来での比較と同様に、電流偏差(=駆動電流-基準駆動電流)ΔIである。判定手段31は、電流偏差ΔIと設定手段23によって設定される偏差閾値Th(ΔI)とを対比し、対比の結果によりシールにおける異物の噛み込みが生じたか否かを判定する。
【0048】
噛み込みAの場合、電流偏差ΔIaが偏差閾値Th(ΔIa)を超えることが判定されたときには、異物の噛み込みがあったと判定される。噛み込みBの場合、駆動電流Ibのピークは噛み込みAの場合の駆動電流Iaと比べてピーク値は低くても、電流偏差ΔIbが偏差閾値Th(ΔIb)を超えることが判定されたときには、包装材のシール部分に異物の噛み込みがあったと判定される。設定手段23によって偏差閾値Th(ΔIa)と偏差閾値Th(ΔIb)が共に設定されていて、両閾値とも判定手段31でアクティブ状態とされていれば、電流偏差ΔIaの場合には偏差閾値Th(ΔIa)との比較において異物の噛み込みが検知され、電流偏差ΔIbの場合には偏差閾値Th(ΔIb)との比較において異物の噛み込みが検知される。
【0049】
本発明においては、
図3(b)に示すように、サーボモータの動作データ(駆動電流I)と基準動作データ(基準駆動電流Ir)との比較の態様は、両者の電流偏差ΔIを時間経過に従って累積した累積偏差Ac(ΔI)である。累積の具体的な例は、横軸と電流偏差の波形とで囲まれる面積(時間積分)であるが、電流偏差ΔIが所定のサンプリング周期ΔT毎の時間Ti(i=0,1,2…)に算出される場合には、各時間Tiに算出された電流偏差ΔIi(i=0,1,2…)にサンプリング周期ΔTを乗じた値の総和(Σ[ΔIi×ΔT](i=0,1,2…))、即ち、階段状の面積としてよい。
【0050】
累積偏差Ac(ΔI)について設定される閾値は累積閾値Th(AcΔI)である。判定手段31において、電流偏差ΔIを時間経過に従って累積した累積偏差Ac(ΔI)が、予め設定された累積閾値Th(AcΔI)を超えたと判定されることに応じて、横シールのシール部分に異物の噛み込みが生じたと判定される。例えば、包装材の横シール部分に噛み込んだ異物が柔らかい物である、或いは異物の硬さがそれほどでなくても包装材が柔らかく弾力性のある素材で作られている場合には、電流偏差ΔIは、噛み込まれた異物が硬い物であった場合に生じるような急激で且つ大きな上昇を示さない。このような場合、シール部分に異物の噛み込みがあるにもかかわらず、駆動電流Iの電流偏差ΔIは、
図3の噛み込みA(ΔIa)や噛み込みB(ΔIb)で示すような急激な上昇をせず、
図3の噛み込みCで示す電流偏差ΔIcのように基準電流値Irに対して小さい値で且つゆっくりと変動する。電流偏差ΔIcには急激に大きくなるピークが現れず予め定められた偏差閾値Th(ΔIa)やTh(ΔIb)を超えることがないので、異物の噛み込みがあると判定されない。
【0051】
電流偏差ΔIが急上昇するような場合には、累積偏差Ac(ΔI)が充分な値にまでならないうちに、偏差閾値Th(ΔIa)或いは偏差閾値Th(ΔIb)を超えるときには、そのときに噛み込みが生じたと判定されることもある。逆に、電流偏差ΔIaが偏差閾値Th(ΔIa)又は偏差閾値Th(ΔIb)を超えることなく、累積偏差Ac(ΔI)が累積閾値Th(AcΔI)を超えることで、噛み込みが生じたと判定されることもある。更に、同時ではないが僅かな時間差を置いて、電流偏差ΔIaが偏差閾値Th(ΔIa)や偏差閾値Th(ΔIb)を超えるとともに、累積偏差Ac(ΔI)が累積閾値Th(AcΔI)を超えることもある。表示手段22には、駆動電流I と基準駆動電流Irの比較において、どのような偏差がどのような閾値を超えることで噛み込み判定がなされたのかを表示することが好ましい。オペレータは、表示手段22において、具体的にどの態様で且つどの程度の噛み込みが生じたのかを知ることで、対処がしやすくなる。
【0052】
自動包装機が包装サイクルを繰り返す包装動作の経過に伴って、横シール手段16が包装材にシールを施すときのサーボモータ20の駆動電流Iの値は、例えば、製造する包装体の数の増加や自動包装機本体の温度上昇等に起因して、包装サイクルが進むに伴って変化する。例えば、包装機本体の温度上昇に起因して横シール手段16の横ヒートシールバー16a,16bが膨張すると、横ヒートシールバー16a,16bのシール面同士が包装材に当接するタイミングが僅かではあるが早くなっていく。横シール手段16の駆動制御としては、横ヒートシールバー16a,16bをタイミングが早くなる前に定められていた位置まで移動させて然るべきトルクを出力させようとするため、駆動電流Iが僅かに高い値の方向に振れる。こうした自動包装機の包装動作の経過に伴って生じる温度上昇に起因したサーボモータ20の駆動電流Iの値の変化に応じて、累積閾値Th(AcΔI)について必要な更新を行う、即ち、高めの閾値に補正して異物の噛み込みが無いにもかかわらず噛み込みがあるとする誤判定を防止することが好ましい。累積閾値Th(AcΔI)について必要となったときに当該更新を行うことで、自動包装機の状態に応じて、シールにおける異物の噛み込みの判定をより適切に行うことができる。
【0053】
図1に示される本発明に基づく異物噛み込み判定機能のためのブロック図に対応して、本発明に基づく異物噛み込み検知機能が行う異物噛み込み判定のフローチャートが
図4に示されている。
図4に示されているフローチャートについてステップ毎に説明をする。
図4に示すフローチャートのステップ番号について、
図10に示すステップと共通するステップについては、同じステップ番号を付す。
【0054】
フローチャートの開始(ステップ20;「S20」と略す。以下同じ)の後、先ず、正常判定範囲及び閾値の読込みが行われる(S21)。即ち、
図1に示される設定手段23において設定された閾値が閾値記憶手段25cにおいて記憶されるので、S21においては、閾値記憶手段25cに記憶されている当該閾値が読み込まれる。閾値としては、既に記載したとおり、比較的大きな噛み込みAの閾値(Th(ΔIa))と比較的小さな噛み込みBの閾値(Th(ΔIb))、及び累積閾値(Th(AcΔI))を設定することができる。
【0055】
次に、基準動作データ(基準駆動電流Ir)の読込みが行われる(S22)。即ち、設定手段23において初期基準動作データ(基準駆動電流Ir)が設定され、その初期基準動作データが制御手段30の基準動作データ記憶手段25aに記憶されるので、S22においては、当初は、当該初期基準動作データが基準動作データとして読み込まれる。
次に、動作データ(駆動電流I)の読込みが行われる(S23)。即ち、検出手段21は横シール手段16を駆動するサーボモータ20に供給される駆動電流Iを検出しており、その検出データが動作データとして制御手段30の判定手段31に入力される。
【0056】
次に、判定手段31においては、S23で読み込まれた動作データ(駆動電流I)とS22で読み込まれた基準動作データ(電流基準値Ir)との比較が行われて、電流偏差ΔI(駆動電流I-基準駆動電流Ir)が求められ、電流偏差ΔIが噛み込みAの偏差閾値Th(ΔIa)よりも大きいか否かの判定(S24)と、電流偏差ΔIが噛み込みBの偏差閾値Th(ΔIb)よりも大きいか否かの判定(S25)とが行われる。即ち、噛み込みAによる噛み込み判定と噛み込みBによる噛み込み判定とが併用されている。
【0057】
判定S24において、電流偏差ΔIが噛み込みAの偏差閾値Th(ΔIa)よりも大きいと判定される場合には、
図3においてサーボモータ20に供給される駆動電流Iが駆動電流Iaに示すように急激に大きく上昇したことを示しているので、包装材のシール予定部分に異物の噛み込みがあったとされ、包装機が停止される(S26)。
判定S25において、当該偏差が噛み込みBの偏差閾値Th(ΔIb)よりも大きいと判定される場合には、
図3においてサーボモータ20に供給される駆動電流Iが駆動電流Ibに示すように比較的大きく上昇したことを示しているので、包装材のシール予定部分に異物の噛み込みがあったとされ、横シール手段16に組み込まれているカッターが停止される、或いは包装機が停止する(S28)。
判定S25において、電流偏差ΔIが噛み込みBの偏差閾値Th(ΔIb)よりも大きくなく、その結果、「NO」と判定される場合であっても、累積偏差Ac(ΔI)が噛み込みCについての累積閾値Th(AcΔI)よりも大きいか否かの判定(S27)が行われる。
【0058】
判定S27において、累積偏差Ac(ΔI)が噛み込みCについての累積閾値Th(AcΔIc)よりも大きいと判定される場合には、サーボモータ20に供給される駆動電流Iが、
図3において駆動電流Icとして示すように、瞬間的には大きく上昇してはいないけれども、時間経過に伴って累積するとある程度の大きさの駆動電流が長い経過時間に亙って連続していたことを示している。したがって、包装材のシール部分に、例えば比較的柔らかい異物の噛み込みがあったと判定でき、S25の判定結果が「YES」であった場合と同様に、横シール手段16に組み込まれているカッターが停止される、或いは包装機が停止される(S28)。ここでは、判定する態様として、噛み込みB閾値による噛み込み判定と、噛み込みC累積閾値による噛み込み判定とが併用されている。
判定S24において電流偏差ΔIaが噛み込みAについての偏差閾値ΔIcよりも大きくなく、その結果、「NO」と判定される場合、判定S27において電流偏差ΔIaが噛み込みBについての偏差閾値ΔIbよりも大きくなく、その結果、「NO」と判定される場合、及びS28においてカッター又は包装機が停止したときには、噛み込みA~Cが無いとして、それぞれ動作データ(駆動電流I、基準駆動電流Ir)の蓄積が行われる(S29)。
【0059】
次に、1回のシール動作(横シール手段11が行った今回のシール動作)が終了したか否かの判定が行われる(S30)。S30の判定の結果が「NO」である場合には、フローはS23に戻り、横シール手段16の次回のシール動作における動作データ(駆動電流I)の読込みから再開される。S30の判定の結果が「YES」である場合には、今回読み込んだ動作データ(駆動電流I)が、S21で読み込んだ正常判定範囲内であるか否かが判定される(S31)。
【0060】
S31の判定結果が「YES」である場合、即ち、今回の動作データ(駆動電流I)が比較の対象とした基準動作データ(基準駆動電流Ir;初回の場合には初期基準動作データ(初期基準駆動電流))から異常な程にはかけ離れていないと判明した場合には、今回の動作データ(駆動電流I)を基準動作データ記憶手段25aに記憶されている基準動作データ(基準駆動電流Ir)に置き換えて更新された基準動作データ(基準駆動電流Ir)とし(S32)、フローはS22に戻り、横シール手段16の次回のシール動作は、更新された当該基準動作データ(基準駆動電流Ir)の読込みから再開される。S31の判定結果が「NO」である場合、即ち、今回の動作データ(駆動電流I)が比較の対象とした基準動作データ(基準駆動電流Ir)から異常にかけ離れていると判明した場合には、基準動作データ記憶手段25aに記憶されている基準動作データ(基準駆動電流Ir)の更新は行わず(S33)、S22に戻って基準動作データ(基準駆動電流Ir)の読込みからフローを再開する。
【0061】
自動包装機においては、サーボモータ20に供給される駆動電流Iについて電流値データの取得をサンプリングで行っている場合には、自動包装機の設計・製作上、通常そのサンプリング周期は自動包装機の包装速度(例えば、単位時間当たりの包装サイクル数)に関わらず一定とされる。したがって、自動包装機の包装速度が、
図5(a)に示す速度から、
図5(b)に示すように速くなる(約倍の速度)と、包装サイクル毎の動作データの取得回数は相対的に少なくなる。その結果、累積偏差の算出値(階段状の積算値)は粗い値となり、サンプリングの影響が避けられない。そこで、累積偏差Ac(ΔI)をその累積期間中に行われたサンプリングのサンプリング回数で除して得られる修正累積偏差に基づいてシールにおける異物の噛み込みの判定を行うことで、累積偏差の評価の際における当該サンプリング周期の影響を緩和或いは取り除くことができ、シールにおける異物の噛み込みについての判定の信頼性を向上することができる。
【0062】
この発明が適用される自動包装機として、縦型製袋充填包装機として説明したが、これに限らず、横型製袋充填包装機、あるいは個別的に袋の開口をシールする袋包装機にも適用可能であることは明らかである。
【符号の説明】
【0063】
1 縦型製袋充填包装機
9 ガイドローラ 10 張力付与機構
11 フォーマ 12 投入筒
13 ホッパ
14 包装材送り手段 14a,14b ベルト送り機構
15 縦シール手段 15a,15b 縦ヒートシールバー
16 横シール手段 16a,16b 横ヒートシールバー
20 サーボモータ 21 検出手段
22 表示手段 23 設定手段
24 制御手段(従来) 25 判定データ記憶手段
25a 基準動作データ記憶手段 25b 正常判定範囲記憶手段
25c 閾値記憶手段
26 判定手段(従来) 27 横シール駆動制御手段
30 制御手段(本発明) 31 判定手段(本発明)
Ir 基準駆動電流
I(Ia,Ib,Ic) 駆動電流 Th(I) 電流閾値
ΔI(ΔIa,ΔIb,ΔIc) 電流偏差
Th(ΔI)(Th(ΔIa),Th(ΔIb)) 偏差閾値
Ac(ΔI) 累積偏差 Th(AcΔI) 累積閾値
Ii 初期駆動電流(初期動作データ)
Iri 初期基準駆動電流(初期基準動作データ)
Njr 正常判定範囲
Ts 時間軸範囲(検知時間範囲) ΔT サンプリング周期
Fr 包装材ロール Fw ウェブ状包装材
Ft 筒状包装材
S 横シール部 P 袋包装体