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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174283
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
B66B3/00 L
B66B3/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086821
(22)【出願日】2023-05-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 紗由美
【テーマコード(参考)】
3F303
【Fターム(参考)】
3F303BA05
3F303CB24
3F303CB25
3F303CB31
3F303DB12
3F303DC31
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、乗りかご内に鏡が設置されていなくとも、車椅子利用者が後方を確認しながら、安全に降車することができるエレベータシステムを提供することである。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータシステムは、カメラと、判定手段と、生成手段と、投影手段とを備える。前記カメラは、乗りかごの上部に設置され、前記乗りかご内を撮影する。前記判定手段は、前記乗りかご内に車椅子利用者が乗車していることを判定する。前記生成手段は、前記カメラによって撮影された画像に基づいて、前記車椅子利用者を頭上から見た第1視点画像を生成する。前記投影手段は、前記車椅子利用者が前記乗りかごから降車するときに、前記第1視点画像を前記乗りかごの背面に投影する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごの上部に設置され、前記乗りかご内を撮影するカメラと、
前記乗りかご内に車椅子利用者が乗車していることを判定する判定手段と、
前記カメラによって撮影された画像に基づいて、前記車椅子利用者を頭上から見た第1視点画像を生成する生成手段と、
前記車椅子利用者が前記乗りかごから降車するときに、前記第1視点画像を前記乗りかごの背面に投影する投影手段と
を具備するエレベータシステム。
【請求項2】
前記投影手段は、
前記乗りかご内の混雑状況に応じて、前記第1視点画像の投影範囲を変更する
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記投影手段は、
前記乗りかご内が混雑していない状況では、前記第1視点画像の投影範囲を前記乗りかごの背面全体に設定し、前記乗りかご内が混雑している状況では、前記第1視点画像の投影範囲を前記乗りかごの背面上部に設定する
請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記投影手段は、
前記乗りかごの背面と前記乗りかご内にいる利用者との位置関係に応じて、前記第1視点画像の投影範囲を変更する
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記投影手段は、
前記利用者が前記乗りかごの背面付近にいない場合には、前記第1視点画像の投影範囲を前記乗りかごの背面全体に設定し、前記利用者が前記乗りかごの背面付近にいる場合には、前記第1視点画像の投影範囲を前記乗りかごの背面上部に設定する
請求項4に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記投影手段は、
前記利用者が前記乗りかごの背面の一方側にいる場合に、前記第1視点画像の投影範囲を前記乗りかごの背面の他方側に設定する
請求項4に記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記生成手段は、
前記カメラによって撮影された画像に基づいて、前記車椅子利用者を頭上とは別の視点から見た第2視点画像を生成し、
前記投影手段は、
前記第1視点画像と前記第2視点画像とを前記乗りかごの背面に投影する
請求項1記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記投影手段は、
前記乗りかご内の混雑状況に応じて、前記第1視点画像と前記第2視点画像の投影範囲を変更する
請求項7に記載のエレベータシステム。
【請求項9】
前記投影手段は、
前記乗りかご内が混雑していない状況では、前記第1視点画像及び第2視点画像の一方の投影範囲を前記乗りかごの背面全体に設定し、他方の投影範囲を前記乗りかごの背面上部に設定し、
前記乗りかご内が混雑している状況では、前記第1視点画像と前記第2視点画像の投影範囲を前記乗りかごの背面上部に設定する
請求項8に記載のエレベータシステム。
【請求項10】
前記投影手段は、
前記乗りかごの背面と前記乗りかご内にいる利用者との位置関係に応じて、前記第1視点画像と前記第2視点画像の投影範囲を変更する
請求項7に記載のエレベータシステム。
【請求項11】
前記投影手段は、
前記利用者が前記乗りかごの背面付近にいない場合には、前記第1視点画像及び第2視点画像の一方の投影範囲を前記乗りかごの背面全体に設定し、他方の投影範囲を前記乗りかごの背面上部に設定し、
前記利用者が前記乗りかごの背面付近にいる場合には、前記第1視点画像の投影範囲を前記乗りかごの背面上部に設定する
請求項10に記載のエレベータシステム。
【請求項12】
前記投影手段は、
前記利用者が前記乗りかごの背面の一方側にいる場合には、前記第1視点画像と前記第2視点画像の投影範囲を前記乗りかごの背面の他方側に設定する
請求項10に記載のエレベータシステム。
【請求項13】
乗りかごの出入口上部と前記出入口以外の場所に設置され、それぞれに前記乗りかご内を撮影する2台のカメラと、
前記乗りかご内に車椅子利用者が乗車していることを判定する判定手段と、
前記2台のカメラによって撮影された2つの画像に基づいて、前記車椅子利用者を頭上から見た第1視点画像と前記車椅子利用者を頭上とは別視点から見た第2視点画像を生成する生成手段と、
前記車椅子利用者が前記乗りかごから降車するときに、前記第1視点画像と前記第2視点画像とを前記乗りかごの背面に投影する投影手段と
を具備するエレベータシステム。
【請求項14】
前記第2視点画像は、前記乗りかごの背面側から前記車椅子利用者を見た画像、あるいは、前記乗りかごの出入口側から前記車椅子利用者を見た画像を含む
請求項7又は13に記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータには、車椅子利用者の乗降をサポートするために、乗りかごの背面に鏡を備えた車椅子仕様のエレベータがある。しかし、すべてのエレベータが車椅子仕様ではなく、鏡を備えていないものもある。
【0003】
このような鏡を備えていないエレベータにおいて、乗りかご内にカメラとプロジェクタを設置しておき、カメラで撮影した車椅子利用者の画像をプロジェクタに転送して、乗りかごの背面に投影するシステムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6683173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したシステムでは、乗りかごの出入口から直進してきた車椅子利用者を正面から撮影し、その正面画像を鏡に映った車椅子利用者の姿として乗りかごの背面に投影することが一般的である。しかし、乗りかごの背面に車椅子利用者の正面画像を投影する方法では、車椅子利用者の周囲の状況を確認できても、例えば車椅子利用者の真後ろにある小さな荷物等の物体を確認できないため、安全に降車できないことがある。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、乗りかご内に鏡が設置されていなくとも、車椅子利用者が後方を確認しながら、安全に降車することができるエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るエレベータシステムは、カメラと、判定手段と、生成手段と、投影手段とを備える。前記カメラは、乗りかごの上部に設置され、前記乗りかご内を撮影する。前記判定手段は、前記乗りかご内に車椅子利用者が乗車していることを判定する。前記生成手段は、前記カメラによって撮影された画像に基づいて、前記車椅子利用者を頭上から見た第1視点画像を生成する。前記投影手段は、前記車椅子利用者が前記乗りかごから降車するときに、前記第1視点画像を前記乗りかごの背面に投影する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る乗りかご内の出入口周辺部分の構成例を示す図である。
図3図3は、第1実施形態に係るエレベータシステムの処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、第1実施形態に係る第1視点画像の生成方法の一例について説明するための図である。
図5図5は、第1実施形態に係る第1視点画像の生成方法の一例について説明するための図である。
図6図6は、第1実施形態に係る投影部によって設定される第1視点画像の投影範囲の一例を示す図である。
図7図7は、第1実施形態において、混雑状況に応じて投影範囲を設定する方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、第1実施形態において、背面と乗りかご内の利用者との位置関係に応じて投影範囲を設定する方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、第1実施形態において、利用者が背面の一方側にいる場合に、背面の他方側に投影範囲を設定する方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、車椅子利用者の画像を乗りかごの背面に投影する一般的なシステムに係る乗りかご内の構成例を示す図である。
図11図11は、第1実施形態に係る乗りかご内の構成例を示す図である。
図12図12は、第2実施形態に係る投影部によって設定される第1視点画像及び第2視点画像の投影範囲の一例を示す図である。
図13図13は、第3実施形態に係る乗りかご内の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、各実施形態について説明する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に相当し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施形態に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0010】
図1は、一実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示す図である。なお、ここでは、一台の乗りかごを例にして説明するが、複数台の乗りかごでも同様の構成である。
【0011】
また、本実施形態に係るエレベータシステムは、利用者の携帯端末(例えばスマートフォン)を利用して、乗場にて行先呼びの登録を行うことができるものとする。エレベータの利用者は、予め利用者が所持する携帯端末に呼び登録用のアプリケーションをダウンロードしておくことにより、当該アプリケーションを用いて行先呼びを登録する。行先呼びには、利用者の乗車階と行先階を含む。さらに、行先呼びには、利用者の属性として、車椅子利用者であることを示す情報を含む。
【0012】
乗りかご11の出入口上部にカメラ12が設置されている。具体的には、カメラ12は、乗りかご11の出入口上部を覆う幕板11aの中に、レンズ部分を直下方向に向けて設置される。カメラ12は、例えば車載カメラ等の小型の監視カメラであり、広角レンズ又は魚眼レンズを有し、乗りかご11の出入口付近を含む所定の範囲を撮影する。カメラ12は、1秒間に数コマ(例えば30コマ/秒)の画像を連続的に撮影可能である。なお、カメラ12の設置位置は、乗りかご11の出入口上部に限られず、乗りかご11内の上部であれば、どこでもよい。
【0013】
乗りかご11内の上部には、プロジェクタ16が乗りかご11の背面18に向けて設置される。プロジェクタ16は、画像処理装置20の制御の下で、背面18上の任意の範囲(位置)に画像を投影する。以下の説明において、「画像」は画像を連続的に表示する映像も含むものとする。プロジェクタ16によって投影される画像を「投影画像」とも称する。また、背面18における投影画像が投影される範囲を「投影範囲」と称する。
【0014】
各階の乗場15において、乗りかご11の到着口には乗場ドア14が開閉自在に設置されている。乗場ドア14は、乗りかご11の到着時にかごドア13に係合して開閉動作する。なお、動力源(ドアモータ)は乗りかご11側にあり、乗場ドア14はかごドア13に追従して開閉するだけである。以下の説明においては、かごドア13を戸開している時には乗場ドア14も戸開しており、かごドア13が戸閉しているときには乗場ドア14も戸閉しているものとする。
【0015】
カメラ12によって取得された各画像は、画像処理装置20によってリアルタイムに解析処理される。なお、図1では、便宜的に画像処理装置20を乗りかご11から取り出して示しているが、実際には、画像処理装置20はカメラ12と共に幕板11aの中に収納されている。
【0016】
画像処理装置20には、記憶部21と制御部22とが備えられている。記憶部21は、撮影画像を逐次保存するとともに、制御部22の処理に必要なデータを一時的に保存しておくためのバッファエリアを有する。なお、記憶部21には、撮影画像に対する前処理として、歪み補正や拡大縮小、一部切り取り等の処理が施された画像が保存されるとしても良い。
【0017】
制御部22は、記憶部21に記憶された画像に基づいて投影画像をリアルタイムに生成し、乗りかご11内に現在の乗りかご11内の様子を投影するための処理を行う。制御部22は、判定部23、生成部24、混雑状況検出部25、乗車位置検出部26、投影部27で構成される。
【0018】
判定部23は、乗りかご11内に車椅子利用者が乗車していることを判定する。具体的には、判定部23は、カメラ12の画像を解析処理して、乗りかご11内に車椅子利用者が乗車しているか否かを判定する。あるいは、利用者の携帯端末によって登録された行先呼びに含まれる属性情報に基づいて、乗りかご11内に車椅子利用者が乗車しているか否かを判定することでも良い。
【0019】
生成部24は、車椅子利用者が乗車している場合に、カメラ12の撮影画像に基づいて当該車椅子利用者を頭上から見た第1視点画像60(図6参照)を逐次生成する。第1視点画像60の生成方法については、図4及び図5を用いて後述する。
【0020】
混雑状況検出部25は、乗りかご11内が混雑している状況か、混雑していない状況かを検出する。「乗りかご内が混雑している状況」とは、例えば乗りかご11の積載荷重が予め設定された基準値以上の状況であり、「乗りかご内が混雑していない状況」とは、乗りかご11の積載荷重が基準値未満の状況である。なお、運転中にカメラ12で得られる乗りかご11内の画像と、乗りかご11が無人状態のときの画像との差分によって、混雑状況を判定することでもよい。この場合、上記差分が予め設定された基準値よりも大きい場合には、乗りかご11内が混雑している状況と判定される。
【0021】
乗車位置検出部26は、カメラ12によって取得される画像に基づいて、乗りかご11の背面18と乗りかご11内にいる利用者との位置関係を検出する。具体的には、乗りかご11内の利用者の乗車位置を検出し、当該乗車位置が、背面18付近か否かを判定する。なお、「乗りかご11内にいる利用者」には、一般の利用者の他に、車椅子利用者を含む。詳しくは、図8及び図9を参照して後述する。
【0022】
投影部27は、車椅子利用者が乗りかご11から降車するときに、当該車椅子利用者の第1視点画像60を、プロジェクタ16を介して乗りかご11の背面18に投影する。「車椅子利用者が乗りかご11から降車するとき」とは、車椅子利用者の行先階(降車階)に到着したとき、あるいは、車椅子利用者の行先階に到着する直前である。この時、投影部27は、混雑状況検出部25によって検出される乗りかご11内の混雑状況、あるいは、乗車位置検出部26によって判定される背面18と乗りかご11内にいる利用者との位置関係に基づいて、第1視点画像60の投影範囲を変更する。
【0023】
エレベータ制御装置30は、乗りかご11の昇降動作や乗りかご11に設置される各種機器類(行先階ボタンや照明等)の動作を制御する。また、エレベータ制御装置30は、戸開閉制御部31を備える。戸開閉制御部31は、乗りかご11が乗場15に到着したときのかごドア13の戸開閉を制御する。詳しくは、戸開閉制御部31は、乗りかご11が乗場15に到着したときにかごドア13を戸開し、所定時間経過後に戸閉する。
【0024】
図2は、乗りかご11内の出入口周辺部分の構成例を示す図である。
乗りかご11の出入口にかごドア13が開閉自在に設けられている。図2の例では2枚戸両開きタイプのかごドア13が示されており、かごドア13を構成する2枚のドアパネル13a,13bが間口方向(水平方向)に沿って互いに逆方向に開閉動作する。なお、「間口」とは、乗りかご11の出入口と同じである。
【0025】
正面柱41a,41bの一方あるいは両方に表示器43や、行先階ボタン44などが配設された操作盤45、スピーカ46が設置されている。図2の例では、正面柱41aにスピーカ46、正面柱41bに表示器43、操作盤45が設置されている。
【0026】
ここで、乗りかご11の出入口上部の幕板11aの中央部に、魚眼レンズ等の超広角レンズを有するカメラ12が設置されている。カメラ12は、乗りかご11内と乗りかご11の出入口付近の乗場15とを含む範囲を撮影できるように、幕板11aの下部から下方向に向けて設置される。
【0027】
以下、図3を用いて本実施形態に係るエレベータシステム全体の処理の流れについて説明する。図3は、本実施形態に係るエレベータシステムの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0028】
乗りかご11が任意の階に到着すると(ステップS11のYES)、画像処理装置20に含まれる判定部23は、カメラ12の撮影画像を解析処理して、乗りかご11内に車椅子利用者が乗車しているか否かを判定する(ステップS12)。
【0029】
乗りかご11内に車椅子利用者が乗車していると判定された場合(ステップS12のYES)、生成部24は、カメラ12の撮影画像に基づいて、車椅子利用者を頭上から見た第1視点画像60を生成する(ステップS13)。
【0030】
ここで、生成部24による第1視点画像60の生成方法の一例について、図4図5を用いて説明する。
図4は、乗りかご11内に車椅子利用者が乗車していると判定された場合に、カメラ12によって撮影された画像の一例を示す図である。図中の17は、乗りかご11の床面を示す。カメラ12が乗りかご11の出入口付近に設置されている関係で、撮影画像上では床面17が矩形ではなく、出入口から背面18に向けて狭まる台形になる。生成部24は、この撮影画像に対してエッジ検出処理等を行うことにより、床面17の四隅の座標a~dを取得する。
【0031】
図5は、説明の便宜上、乗りかご11の床面17を抜き出した図である。生成部24は、カメラ12の設置位置(乗りかご11の出入口側)から得た床面17の四隅の座標a~dが、乗りかご11の天井面の中心付近から見たときの座標a´~d´となるように、撮影画像に対して射影変換処理を行う。このように、図5の上図に示すような台形状の床面画像を、図5の下図に示すような矩形状の床面画像に射影変換することによって、乗りかご11内にいる車椅子利用者を頭上から見た画像(第1視点画像60)を疑似的に生成することができる。
【0032】
なお、上述した処理方法では、第1視点画像60に歪みが発生する可能性はあるが、乗りかご11内の車椅子利用者の位置と車椅子利用者の真後ろにある物体との距離感を把握できれば、多少歪んでいても問題ない。
【0033】
また、乗りかご11内の奥行、高さ、幅、カメラ12の設置位置、カメラ12の設置角度等は既知である。これらの値から、カメラ12の撮影画像に映る車椅子利用者の実空間上の位置を推測することにより、第1視点画像60を生成してもよい。あるいは、2次元画像から深度(奥行)を推定可能な学習モデルを用いて、より自然な第1視点画像60を生成してもよい。なお、上述した第1視点画像60の生成方法は一例であり、他の方法を用いて頭上からの視点の画像を生成してもよい。
【0034】
再び図3のフローチャートに戻る。乗りかご11は、戸閉後に利用者の行先階に向けて出発する(ステップS14)。ここで、乗りかご11が利用者の行先階に到着したとき、エレベータ制御装置30は、その到着階が車椅子利用者の行先階であるか否かを判定する(ステップS15)。
【0035】
本実施形態では、行先呼びに利用者の属性情報が含まれているので、その属性情報から一般の利用者が登録した行先階であるか、車椅子利用者が登録した行先階かを容易に知ることができる。なお、乗りかご11内に設置された車椅子利用者用の行先階ボタンの押下によって登録された行先階を車椅子利用者の行先階であると判定してもよい。
【0036】
車椅子利用者用の行先階で、乗りかご11が戸開を開始すると(ステップS16)、投影部27は、混雑状況検出部25又は乗車位置検出部26による検出結果に基づいて、第1視点画像60の投影範囲を設定する(ステップS17)。
【0037】
図6は、投影部27によって設定される第1視点画像の投影範囲の一例を示す図である。図中の60は第1視点画像を示す。第1視点画像60の投影範囲は、例えば背面18の全体(図6(a))、上部(図6(b))、左側(図6(c))、右側(図6(d))のいずれかであり、混雑状況あるいは利用者の乗車位置に応じて設定される。なお、投影範囲の設定方法については、図7図9を用いて後述する。
【0038】
投影範囲を設定した後、投影部27は、プロジェクタ16を介して乗りかご11の背面18に現在の車椅子利用者の第1視点画像60を投影する(ステップS18)。投影部27は乗りかご11が戸開している間、第1視点画像60の投影を続け、乗りかご11が全戸閉したときに(ステップS19のYES)、第1視点画像60の投影を終了する(ステップS20)。
【0039】
なお、第1視点画像60の生成(ステップS13)及び投影範囲の設定(ステップS17)は、車椅子利用者の行先階に到着する直前に行われてもよい。
【0040】
次に、図7図9を用いて、図3のフローチャートのステップS17に対応する第1視点画像60の投影範囲の設定方法について説明する。以下、投影範囲の設定方法として、(1)混雑状況に応じて設定する方法、(2)背面18と乗りかご11内にいる利用者の乗車位置との位置関係に応じて設定する方法についてそれぞれ説明する。
【0041】
(1)混雑状況に応じて投影範囲を設定する方法
車椅子利用者が第1視点画像60を容易に確認できるように、例えば背面18の全体又は中央付近に第1視点画像60の投影範囲を設定することが好ましい。しかし、乗りかご11内が混雑している場合、背面18全体又は中央付近に第1視点画像60を投影すると、プロジェクタ16と背面18との間にいる利用者が障害となり、車椅子利用者が背面18に投影された第1視点画像60を確認することができないことがある。
【0042】
そこで、乗りかご11内が混雑している場合、投影部27は、第1視点画像60の投影範囲を乗りかご11の背面18の上部に設定し、プロジェクタ16と背面18との間にいる利用者を避けて投影する。これにより、車椅子利用者は、乗りかご11内が混雑している場合であっても、第1視点画像60を確認することができる。
【0043】
図7は、混雑状況に応じて投影範囲を設定する方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、以下の説明においては、カメラ12で得られる乗りかご11内の画像と、乗りかご11が無人状態のときの画像との差分によって、混雑状況を判定するものとして説明するが、他の情報(例えば、乗りかご11の積載荷重値)を用いて混雑状況を判定してもよい。
【0044】
投影範囲の設定処理が開始されると、画像処理装置20に含まれる混雑状況検出部25は、カメラ12の撮影画像を取得する(ステップS21)。混雑状況検出部25は、ステップS21において取得された撮影画像に基づいて、乗りかご11内の混雑状況を検出する(ステップS22)。詳しくは、予め取得された乗りかご11が無人状態の時の画像と、ステップS21において取得された画像との差分が基準値以上であるか否かを判定する。
【0045】
上記差分が基準値以上である場合(ステップS23のYES)、混雑状況検出部25は「乗りかご11内が混雑している状況」であることを検出する(ステップS24)。乗りかご11内が混雑している状況である場合、投影部27は、図6(b)に示すように、第1視点画像60の投影範囲を、背面18の上部に設定する(ステップS25)。
【0046】
上記差分が基準値未満である場合(ステップS23のNO)、混雑状況検出部25は「乗りかご11内が混雑していない状況」であることを検出する(ステップS26)。乗りかご11内が混雑していない状況である場合、投影部27は、図6(a)に示すように、第1視点画像60の投影範囲を、背面18の全体に設定する(ステップS27)。
【0047】
(2)背面18と乗りかご11内の利用者の乗車位置との位置関係に応じて、投影範囲を設定する方法
乗りかご11が混雑していない場合であっても、プロジェクタ16と背面18との間に利用者がいる場合は、(1)と同様に当該利用者が障害となることがある。車椅子利用者自身が背面18付近にいる場合においても同様である。そこで、背面18付近に利用者がいる場合、投影部27は、投影範囲を背面18上部に設定し、利用者のいない範囲に第1視点画像60を投影する。
【0048】
図8は、背面18と乗りかご11内にいる利用者との位置関係に応じて、投影範囲を設定する方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
投影範囲の設定処理が開始されると、画像処理装置20に含まれる乗車位置検出部26は、カメラ12の撮影画像を取得し(ステップS31)、乗りかご11内にいる利用者の乗車位置を検出する(ステップS32)。
【0049】
利用者の乗車位置を検出する方法の一例として、動き検知処理が挙げられる。動き検知処理では、カメラ12によって撮影された画像を、予め所定のブロック単位でマトリックス状に分割し、これらのブロックの中で動きのあるブロックを検出する。
【0050】
より詳しくは、記憶部21に保持された各画像を時系列順に1枚ずつ読み出し、これらの画像内の平均輝度値をブロック毎に算出する。その際、初期値として最初の画像が入力されたときに算出されたブロック毎の平均輝度値を記憶部21内の図示せぬバッファエリアに保持しておくものとする。2枚目以降の画像が送られると、乗車位置検出部26は、現在の画像ブロック毎の平均輝度値と上記バッファエリアに保持された一つ前の画像のブロック毎の平均輝度値とを比較する。その結果、現在の画像の中であらかじめ設定された値(閾値)以上の輝度差を有するブロックが存在した場合には、乗車位置検出部26は当該ブロックを動きありのブロックとして判定する。現在の画像に対する動きの有無を判定すると、乗車位置検出部26は、当該画像のブロック毎の平均輝度値を次の画像との比較用として上記バッファエリアに保持する。
【0051】
以降同様にして、乗車位置検出部26は、各画像の輝度値を時系列順にブロック単位で比較しながら動きの有無を判定することを繰り返す。乗車位置検出部26は、動きありブロックが存在する位置を、利用者の乗車位置として検出する。
【0052】
なお、利用者の乗車位置は、上述した動き検知処理に限られず、他の手法を用いてもよい。例えば、カメラ12の撮影画像を解析処理して、乗りかご11内の利用者を検出し、当該利用者の位置を乗車位置として検出してもよい。
【0053】
乗車位置検出部26は、ステップS32によって検出された利用者の乗車位置に基づいて、背面18付近に利用者がいるか否かを判定する(ステップS33)。具体的には、乗車位置検出部26は、予め設定された背面18付近とされる所定の範囲内に、利用者の乗車位置があるか否かを判定する。
【0054】
背面18付近に利用者がいる場合(ステップS33のYES)、投影部27は、図6(b)に示すように、第1視点画像60の投影範囲を背面18の上部に設定する(ステップS34)。背面18付近に利用者がいない場合(ステップS33のNO)、投影部27は、図6(a)に示すように、第1視点画像60の投影範囲を背面18の全体に設定する(ステップS35)。
【0055】
図8では、乗車位置検出部26は、背面18付近に利用者がいるか否かを判定したが、利用者が背面18付近の一方側にいるか否かを判定してもよい。背面18付近の一方側に利用者がいる場合、投影部27は、利用者がいない背面18の他方側に、第1視点画像60の投影範囲を設定する。
【0056】
図9は、利用者が背面18の一方側にいる場合に、背面18の他方側に投影範囲を設定する方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
投影範囲の設定処理が開始されると、画像処理装置20に含まれる乗車位置検出部26は、カメラ12の撮影画像を取得し(ステップS41)、乗りかご11内の利用者の乗車位置を検出する(ステップS42)。利用者の乗車位置の検出方法は、図8におけるステップS32と同様である。
【0057】
乗車位置検出部26は、背面18付近の右側に利用者がいるか否かを判定する(ステップS43)。具体的には、乗車位置検出部26は、背面18付近の右側に予め設定された所定の範囲内に、利用者の乗車位置があるか否かを判定する。
【0058】
背面18付近の右側に利用者がいる場合(ステップS43のYES)、乗車位置検出部26は、さらに、背面18付近の左側にも利用者がいるか否かを判定する(ステップS44)。具体的には、背面18付近の左側に予め設定された所定の範囲内に、利用者の乗車位置があるか否かを判定する。
【0059】
背面18付近の左側には利用者がいない場合(ステップS44のNO)、投影部27は、図6(c)に示すように、第1視点画像60の投影範囲を利用者のいない背面18の左側に設定する(ステップS45)。
【0060】
背面18付近の左側にも利用者がいる場合(ステップS44のYES)、投影部27は、図6(b)に示すように、第1視点画像60の投影範囲を、利用者を避けた背面18の上部に設定する(ステップS46)。
【0061】
一方、背面18付近の右側に利用者がいない場合であって(ステップS43のNO)、背面18付近の左側に利用者がいる場合(ステップS47のYES)、投影部27は、図6(d)に示すように、第1視点画像60の投影範囲を、利用者のいない背面18の右側に設定する(ステップS48)。
【0062】
背面18付近の右側に利用者がいない場合であって(ステップS43のNO)、背面18付近の左側にも利用者がいない場合(ステップS47のNO)、投影部27は、図6(a)に示すように、第1視点画像60の投影範囲を、背面18の全体に設定する(ステップS49)。
【0063】
ここで、例えば車椅子利用者の画像を鏡の代わりに乗りかご11の背面に投影する一般的なシステムでは、図10に示すように、乗りかご11の背面付近にカメラ1を設置して、乗りかご11の出入口から直進してきた車椅子利用者の正面画像を撮影する。この正面画像を鏡に映った車椅子利用者の姿として、プロジェクタ2によって背面18に投影する。しかし、このような一般的なシステムでは、カメラ1の死角となる車椅子利用者の真後ろに小さな荷物40が存在した場合に、車椅子利用者がそれを確認することができないといった欠点がある。
【0064】
これに対し、本実施形態では、図11に示すように、乗りかご11の出入口上部に設置されたカメラ12の撮影画像に基づいて、仮想的に頭上からの視点12aの画像(第1視点画像60)が生成されて、背面18に投影される。したがって、車椅子利用者は、降車時に向きを変えなくても、背面18に投影された第1視点画像60を見れば、真後ろにある小さな荷物40を容易に確認することができ、安全に降車することができる。
【0065】
さらに、乗りかご11内の混雑状況や乗りかご11内の利用者の乗車位置に応じて、第1視点画像60の投影範囲が変更される。したがって、車椅子利用者自身又は他の利用者の乗車位置に影響されずに、第1視点画像60を見ることできる。また、プロジェクタ16の光によって、背面18近くにいる利用者が不快に感じることを防ぐことができる。
【0066】
(第2実施形態)
以下、本実施形態の第2実施形態について説明する。
第2実施形態は、第1視点画像60とは異なる視点から車椅子利用者を見た第2視点画像61(図12参照)を、第1視点画像60と共に乗りかご11の背面18に投影する点において、第1実施形態と相違する。第2実施形態に係るエレベータシステムの構成及び処理の流れは第1実施形態と同様であるが、生成部24及び投影部27の処理が異なる。以下では、第1実施形態とは異なる部分について主に説明する。
【0067】
第2実施形態に係る生成部24は、カメラ12によって撮影された車椅子利用者の画像に基づいて、第1視点画像60に加えて、第2視点画像61を生成する。第2視点画像61とは、例えば、乗りかご11の背面18側から車椅子利用者を見た画像である。車椅子利用者が乗りかご11の出入口から向きを変えずに直進して入ってきた場合には、第2視点画像は、車椅子利用者の正面画像として生成される。
【0068】
また、第2視点画像61は、乗りかご11の出入口側から車椅子利用者を見た画像であってもよい。車椅子利用者が乗りかご11の出入口から向きを変えずに直進して入ってきた場合には、第2視点画像61は、車椅子利用者の背面画像として生成される。
【0069】
第1視点画像60に加えて、このような第2視点画像61を投影することにより、車椅子利用者の周囲の様子をより詳細に確認することができる。なお、第2視点画像61は、乗りかご11の背面18側あるいは出入口側から車椅子利用者を見た画像に限られず、第1視点画像60とは異なる視点から車椅子利用者を見た画像であればよい。
【0070】
また、第2視点画像61は、カメラ12から取得される画像に基づいて生成される画像である。第2視点画像61は、第1視点画像60と同様、射影変換処理を用いて生成されてもよいし、乗りかご11内の既知の値から車椅子利用者の実空間上の位置を推測して生成されてもよいし、深度を推測可能な学習モデルを用いて生成されてもよい。第2視点画像61は、乗りかご11内における車椅子利用者の周囲の環境(出入口までの距離、他の利用者との距離等)を把握できればよい。したがって、車椅子利用者の前面等、カメラ12によって撮影することができない部分については、正確に表示されなくとも問題ない。
【0071】
投影部27は、第1視点画像60と第2視点画像とを乗りかご11の背面18に投影する。また、投影部27は、乗りかご11内の混雑状況、あるいは、背面18と乗りかご11内の利用者との位置関係に基づいて第1視点画像60と第2視点画像61の投影範囲を変更する。
【0072】
以下、図12を参照して、乗りかご11内の混雑状況に基づいて第1視点画像60と第2視点画像61の投影範囲を変更する方法、及び背面18と乗りかご11内の利用者との位置関係に基づいて第1視点画像60と第2視点画像61の投影範囲を変更する方法についてそれぞれ説明する。
【0073】
図12は、投影部27によって設定される第1視点画像と第2視点画像の投影範囲の一例を示す図である。図中の60は第1視点画像、61は第2視点画像を示す。この例では、第2視点画像61として車椅子利用者の正面の画像を生成した場合を示す。
【0074】
まず、乗りかご11内の混雑状況に応じて投影範囲を変更する例を説明する。
図12(a)に示すように、乗りかご11内が混雑していない状況では、投影部27は、第2視点画像61の投影範囲を乗りかご11の背面18全体に設定し、第1視点画像60の投影範囲を乗りかご11の背面18上部に設定する。具体的には、第2視点画像61上の右上部分に第1視点画像60が配置された画像を生成し、背面18全体に投影する。
【0075】
図12(a)のように、2つの視点画像60,61が投影されることで、車椅子利用者は、車椅子利用者の目線よりも上方で頭上から見た画像(第1視点画像60)と、車椅子利用者の目線と同じ高さで正面からの画像(第2視点画像61)を確認できる。このように、車椅子利用者の目線の位置と画像が示す視点の位置とが対応するため、車椅子利用者は、自分の位置を容易に把握することができる。
【0076】
なお、投影部27は、第1視点画像60の投影範囲を乗りかご11の背面18全体に設定し、第2視点画像61の投影範囲を乗りかご11の背面上部に設定してもよい。
【0077】
図12(b)に示すように、乗りかご11内が混雑している状況では、第1視点画像60と第2視点画像61の投影範囲が乗りかご11の背面18上部に設定される。具体的には、第1視点画像60と第2視点画像61とが左右に隣接して配置された画像を生成し、乗りかご11の背面18上部に投影する。なお、図12(b)の第1視点画像60と第2視点画像61の左右の配置を入れ替えてもよい。
【0078】
乗りかご11内の混雑状況の検出方法や、処理手順については、図7を用いて上述した第1実施形態と同様である。
【0079】
次に、背面18と乗りかご11内の利用者との位置関係に基づいて投影範囲を変更する例を説明する。
図12(a)に示すように、投影部27は、乗りかご11内の利用者が乗りかご11の背面付近にいない場合、第2視点画像61の投影範囲を乗りかご11の背面18全体に設定し、第1視点画像60の投影範囲を乗りかご11の背面18上部に設定する。具体的には、第2視点画像61上の右上部分に第1視点画像60が配置された画像を生成し、背面18全体に投影する。
【0080】
図12(b)に示すように、投影部27は、利用者が乗りかご11の背面18付近にいる場合、第1視点画像60と第2視点画像61の投影範囲を乗りかご11の背面18上部に設定する。具体的には、第1視点画像60と第2視点画像61とが左右に隣接して配置された画像を生成し、乗りかご11の背面18上部に投影する。
【0081】
乗りかご11内の利用者が乗りかご11の背面付近にいるか否かの判定方法や、処理手順については、図8を用いて上述した第1実施形態と同様である。
【0082】
また、乗りかご11内の利用者が背面18付近の一方側にいることをさらに検出してもよい。図12(c)に示すように、乗りかご11内の利用者が乗りかご11の背面18の右側にいる場合には、投影部27は、第1視点画像60と第2視点画像61の投影範囲を、乗りかご11の背面18の左側に設定する。具体的には、投影部27は、第1視点画像60と第2視点画像61が上下に隣接して配置された画像を生成し、乗りかご11の背面18左側に投影する。
【0083】
なお、図12(c)の第1視点画像60と第2視点画像61の上下の配置を入れ替えてもよいが、車椅子利用者の目線よりも上方に第1視点画像60を配置した方が頭上から見た画像であることを認識しやすい。
【0084】
一方、図12(d)に示すように、利用者が乗りかご11の背面18の左側にいる場合には、投影部27は、第1視点画像60と第2視点画像61の投影範囲を、乗りかご11の背面18左側に設定する。具体的には、生成部24によって生成された第1視点画像60と第2視点画像61とが上下に隣接して配置された画像を生成し、背面18左側に投影する。
【0085】
なお、図12(d)の第1視点画像60と第2視点画像61の入れ替えてもよいが、車椅子利用者の目線よりも上方に第1視点画像60を配置した方が頭上から見た画像であることを認識しやすい。
【0086】
利用者が乗りかご11の背面18の一方側にいることの判定方法や、処理手順については、図9を用いて説明した第1実施形態と同様である。
【0087】
上述したように第2実施形態では、第1視点画像60に加えて、第1視点画像60とは異なる視点からの第2視点画像61を投影する。これにより、車椅子利用者は、自身の周囲を詳細に確認することができ、より安全に降車することができる。
【0088】
(第3実施形態)
第2実施形態では、1台のカメラ12の撮影画像に基づいて第1視点画像60及び第2視点画像61が生成されたが、複数台のカメラの撮影画像に基づいて第1視点画像60及び第2視点画像61が生成されてもよい。
【0089】
第3実施形態では、2台のカメラによって撮影された2つの画像に基づいて、車椅子利用者を頭上から見た第1視点画像60と、車椅子利用者を頭上とは別視点から見た第2視点画像61とを生成及び投影する点において、第1及び第2実施形態と相違する。
【0090】
図13は、第3実施形態に係る乗りかご11内の構成例を示す図である。第3実施形態では、乗りかご11内に、カメラ12とは別のカメラ19が設置される。カメラ19は乗りかご11の背面18の内部に、レンズ部分を出入口方向に向けて設置される。
【0091】
第3実施形態に係る生成部24は、乗りかご11の出入口上部に設置されたカメラ12の撮影画像に基づいて、車椅子利用者を頭上からの見た第1視点画像60を生成する。加えて、背面18の内部に設置されたカメラ19の撮影画像を、第2視点画像61として生成する。
【0092】
なお、カメラ19の設置位置は、乗りかご11の背面18に限られず、他の場所であってもよい。例えば、カメラ19は、乗りかご11の天井の中央部に、レンズ部分を乗りかご11の床面方向に向けて設置されてもよい。この場合、生成部24は、カメラ19の撮影画像を、車椅子利用者を頭上から見た第1視点画像60として生成する。加えて、乗りかご11の出入口上部に設置されたカメラ12の撮影画像に基づいて、乗りかご11の背面18側あるいは出入口側から車椅子利用者を見た第2視点画像61を生成する。
【0093】
第3実施形態に係る投影部27は、第1視点画像60と第2視点画像61を、プロジェクタ16を介して乗りかご11の背面18に投影する。また、第2実施形態と同様に、乗りかご11内の混雑状況、あるいは、背面18と乗りかご11内の利用者との位置関係に基づいて、第1視点画像60と第2視点画像61の投影範囲を変更する。投影部27によって設定される投影範囲の例は、図12を用いて説明した第2実施形態と同様である。第3実施形態のその他の構成や処理の流れについては、第2実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0094】
上述したように第3実施形態では、カメラ12以外の他のカメラ19を用いることにより、第1視点画像60又は第2視点画像61を正確に生成できるので、車椅子利用者は、この第2視点画像61を第1視点画像60とともに見ながら、より安全に降車できる。
【0095】
なお、第1~第3実施形態では、1つのプロジェクタ16を介して背面18に画像を投影する例を示したが、複数のプロジェクタを用いてもよい。例えば、投影範囲を乗りかご11の背面18の全体に設定する第1プロジェクタと、投影範囲を背面18の上部に設定する第2プロジェクタとを備え、投影部27は、第1プロジェクタと第2プロジェクタとを切り替えることによって、視点画像(第1実施形態では第1視点画像60、第2及び第3実施形態では第1視点画像60と第2視点画像61)の投影範囲を変更してもよい。
【0096】
この場合、投影部27は、乗りかご11内が混雑していない状況では、第1プロジェクタを使用して背面18の全体に視点画像を投影する。乗りかご11内が混雑している状況では、第2プロジェクタを使用して、背面18の上部に視点画像を投影する。
【0097】
あるいは、投影部27は、車椅子利用者以外の利用者が乗りかご11の背面付近にいない場合には、第1プロジェクタを使用して、背面18の全体に視点画像を投影する。車椅子利用者以外の利用者が乗りかご11の背面付近にいる場合には、第2プロジェクタを使用して、背面18の上部に視点画像を投影する。
【0098】
投影範囲が異なる2つのプロジェクタを用いることにより、投影範囲の設定毎に角度調整やピント調整を行う必要がなく、投影範囲を簡単に変更できる。
【0099】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、乗りかご内に鏡が設置されていなくとも、車椅子利用者が後方を確認しながら、安全に降車することができるエレベータシステムを提供することができる。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0101】
11…乗りかご、11a…幕板、12…カメラ、13…かごドア、14…乗場ドア、
15…乗場、16…プロジェクタ、17…床面、18…背面、19…カメラ、20…画像処理装置、21…記憶部、22…制御部、23…判定部、24…生成部、25…混雑状況検出部、26…乗車位置検出部、27…投影部、30…エレベータ制御装置、31…戸開閉制御部、60…第1視点画像、61…第2視点画像。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2024-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごの上部に設置され、前記乗りかご内を撮影するカメラと、
前記乗りかご内に車椅子利用者が乗車していることを判定する判定手段と、
前記カメラによって撮影された画像に基づいて、前記車椅子利用者を頭上から見た第1視点画像を生成する生成手段と、
前記車椅子利用者が前記乗りかごから降車するときに、前記第1視点画像を前記乗りかごの背面に投影する投影手段と
を具備し
前記投影手段は、
前記乗りかご内の混雑状況に応じて、前記第1視点画像の投影範囲を変更する
エレベータシステム。
【請求項2】
前記投影手段は、
前記乗りかご内が混雑していない状況では、前記第1視点画像の投影範囲を前記乗りかごの背面全体に設定し、前記乗りかご内が混雑している状況では、前記第1視点画像の投影範囲を前記乗りかごの背面上部に設定する
請求項に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
乗りかごの上部に設置され、前記乗りかご内を撮影するカメラと、
前記乗りかご内に車椅子利用者が乗車していることを判定する判定手段と、
前記カメラによって撮影された画像に基づいて、前記車椅子利用者を頭上から見た第1視点画像を生成する生成手段と、
前記車椅子利用者が前記乗りかごから降車するときに、前記第1視点画像を前記乗りかごの背面に投影する投影手段と
を具備し、
前記投影手段は、
前記乗りかごの背面と前記乗りかご内にいる利用者との位置関係に応じて、前記第1視点画像の投影範囲を変更す
レベータシステム。
【請求項4】
前記投影手段は、
前記利用者が前記乗りかごの背面付近にいない場合には、前記第1視点画像の投影範囲を前記乗りかごの背面全体に設定し、前記利用者が前記乗りかごの背面付近にいる場合には、前記第1視点画像の投影範囲を前記乗りかごの背面上部に設定する
請求項に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記投影手段は、
前記利用者が前記乗りかごの背面の一方側にいる場合に、前記第1視点画像の投影範囲を前記乗りかごの背面の他方側に設定する
請求項に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
乗りかごの上部に設置され、前記乗りかご内を撮影するカメラと、
前記乗りかご内に車椅子利用者が乗車していることを判定する判定手段と、
前記カメラによって撮影された画像に基づいて、前記車椅子利用者を頭上から見た第1視点画像を生成する生成手段と、
前記車椅子利用者が前記乗りかごから降車するときに、前記第1視点画像を前記乗りかごの背面に投影する投影手段と
を具備し、
前記生成手段は、
前記カメラによって撮影された画像に基づいて、前記車椅子利用者を頭上とは別の視点から見た第2視点画像を生成し、
前記投影手段は、
前記第1視点画像と前記第2視点画像とを前記乗りかごの背面に投影す
レベータシステム。
【請求項7】
前記投影手段は、
前記乗りかご内の混雑状況に応じて、前記第1視点画像と前記第2視点画像の投影範囲を変更する
請求項に記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記投影手段は、
前記乗りかご内が混雑していない状況では、前記第1視点画像及び第2視点画像の一方の投影範囲を前記乗りかごの背面全体に設定し、他方の投影範囲を前記乗りかごの背面上部に設定し、
前記乗りかご内が混雑している状況では、前記第1視点画像と前記第2視点画像の投影範囲を前記乗りかごの背面上部に設定する
請求項に記載のエレベータシステム。
【請求項9】
前記投影手段は、
前記乗りかごの背面と前記乗りかご内にいる利用者との位置関係に応じて、前記第1視点画像と前記第2視点画像の投影範囲を変更する
請求項に記載のエレベータシステム。
【請求項10】
前記投影手段は、
前記利用者が前記乗りかごの背面付近にいない場合には、前記第1視点画像及び第2視点画像の一方の投影範囲を前記乗りかごの背面全体に設定し、他方の投影範囲を前記乗りかごの背面上部に設定し、
前記利用者が前記乗りかごの背面付近にいる場合には、前記第1視点画像の投影範囲を前記乗りかごの背面上部に設定する
請求項に記載のエレベータシステム。
【請求項11】
前記投影手段は、
前記利用者が前記乗りかごの背面の一方側にいる場合には、前記第1視点画像と前記第2視点画像の投影範囲を前記乗りかごの背面の他方側に設定する
請求項に記載のエレベータシステム。
【請求項12】
乗りかごの出入口上部と前記出入口以外の場所に設置され、それぞれに前記乗りかご内を撮影する2台のカメラと、
前記乗りかご内に車椅子利用者が乗車していることを判定する判定手段と、
前記2台のカメラによって撮影された2つの画像に基づいて、前記車椅子利用者を頭上から見た第1視点画像と前記車椅子利用者を頭上とは別視点から見た第2視点画像を生成する生成手段と、
前記車椅子利用者が前記乗りかごから降車するときに、前記第1視点画像と前記第2視点画像とを前記乗りかごの背面に投影する投影手段と
を具備するエレベータシステム。
【請求項13】
前記第2視点画像は、前記乗りかごの背面側から前記車椅子利用者を見た画像、あるいは、前記乗りかごの出入口側から前記車椅子利用者を見た画像を含む
請求項又は12に記載のエレベータシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
一実施形態に係るエレベータシステムは、カメラと、判定手段と、生成手段と、投影手段とを備える。前記カメラは、乗りかごの上部に設置され、前記乗りかご内を撮影する。前記判定手段は、前記乗りかご内に車椅子利用者が乗車していることを判定する。前記生成手段は、前記カメラによって撮影された画像に基づいて、前記車椅子利用者を頭上から見た第1視点画像を生成する。前記投影手段は、前記車椅子利用者が前記乗りかごから降車するときに、前記第1視点画像を前記乗りかごの背面に投影する。前記投影手段は、前記乗りかご内の混雑状況に応じて、前記第1視点画像の投影範囲を変更する。