(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174288
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニット、及び過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットの制御方法
(51)【国際特許分類】
F03D 7/06 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
F03D7/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092031
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】原 豊
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA15
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB08
3H178CC05
3H178DD51X
3H178DD54X
3H178EE05
3H178EE08
3H178EE12
3H178EE28
(57)【要約】
【課題】ブレーキ用抵抗を必要としない、過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニット、及び同垂直軸風車発電ユニットの制御方法を提供すること。
【解決手段】本発明の過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットは、整流器50から出力される電力を検知する発電機出力検知手段60と、整流器50とDC/AC変換器90との間に配置する開放スイッチ70とを有し、制御部は、発電機出力検知手段60が所定値を検知すると開放スイッチ70を開いてDC/AC変換器90への電力供給を停止することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過回転抑制機構を備えた垂直軸風車と、
前記垂直軸風車の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機と、
前記発電機から出力される交流の電力を直流に変換する整流器と
を備え、
前記整流器から出力される電力をDC/AC変換器に入力する
過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットであって、
前記整流器から出力される前記電力を検知する発電機出力検知手段と、
前記整流器と前記DC/AC変換器との間に配置する開放スイッチと
を有し、
制御部は、前記発電機出力検知手段が所定値を検知すると前記開放スイッチを開いて前記DC/AC変換器への電力供給を停止する
ことを特徴とする過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニット。
【請求項2】
前記垂直軸風車が、
前記発電機を有する基部と、
前記基部に対して垂直軸周りに回転する回転部と、
前記回転部にアームを介して連結されて前記垂直軸周りに回転する複数の風車翼と
を備え、
前記過回転抑制機構が、
前記アームに設けられ、前記回転部と前記風車翼とを結ぶアーム軸の軸周りに回転可能な過回転抑制用の可動部と、
前記可動部に設けられ、前記風車翼の回転時に生じる遠心力、空気力、及び重力の作用によって前記可動部を前記アーム軸周りに傾斜させ、前記風車翼の回転停止時には前記可動部を初期状態に戻す過回転抑制誘導体と
を備え、
前記可動部に働く空気力によって、設定回転数以上では前記垂直軸風車が回転しない
ことを特徴とする請求項1に記載の過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニット。
【請求項3】
前記発電機が、あらかじめ設定された動作点で動作するようにPWM制御される
ことを特徴とする請求項1に記載の過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニット。
【請求項4】
過回転抑制機構を備えた垂直軸風車と、
前記垂直軸風車の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機と、
前記発電機から出力される交流の電力を直流に変換する整流器と
を備え、
前記整流器から出力される電力をDC/AC変換器に入力する
過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットの制御方法であって、
前記整流器から出力される前記電力を検知する発電機出力検知手段と、
前記整流器と前記DC/AC変換器との間に配置する開放スイッチと
を有し、
前記発電機出力検知手段が所定値を検知すると前記開放スイッチを開いて前記DC/AC変換器への電力供給を停止する
ことを特徴とする過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットの制御方法。
【請求項5】
前記垂直軸風車が、
前記発電機を有する基部と、
前記基部に対して垂直軸周りに回転する回転部と、
前記回転部にアームを介して連結されて前記垂直軸周りに回転する複数の風車翼と
を備え、
前記過回転抑制機構が、
前記アームに設けられ、前記回転部と前記風車翼とを結ぶアーム軸の軸周りに回転可能な過回転抑制用の可動部と、
前記可動部に設けられ、前記風車翼の回転時に生じる遠心力、空気力、及び重力の作用によって前記可動部を前記アーム軸周りに傾斜させ、前記風車翼の回転停止時には前記可動部を初期状態に戻す過回転抑制誘導体と
を備え、
前記可動部に働く空気力によって、設定回転数以上では前記垂直軸風車が回転しない
ことを特徴とする請求項4に記載の過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットの制御方法。
【請求項6】
前記発電機が、あらかじめ設定された動作点で動作するようにPWM制御される
ことを特徴とする請求項4に記載の過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直軸風車に関するもので、更に詳細には、過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニット、及び同垂直軸風車発電ユニットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風速が強くなると、風車の回転速度が速くなり、風車の強度的な安全や電気回路の保護を図る必要がある。例えば、特許文献1の背景技術(段落番号[0003]
図9)で記載されているように、パワーコンディショナーへの入力電力が所定値を超える場合には、パワーコンディショナーの保護のために、ブレーキ用抵抗で電力を消費し、発電機には高い電流によって制動トルクを発生させて風車を減速させることが行われている。
ところで、水平軸風車は商業的理由から一般的に大型であり、強風に晒される海岸線、山岳地帯等に設置場所が限定される。一方、小型の垂直軸風車は平均風速3.7m/s程度の風でも発電可能であるため、日本中のほぼ全域で設置可能であり、地元で発電し地元で消費する地産地消型に適し、期待度の高い風車である。
出願人は、垂直軸風車として、発電機を有する基部と、基部に対して垂直軸周りに回転する回転部と、回転部にアームを介して連結されて垂直軸周りに回転する複数の風車翼とを備え、アームは、回転部と風車翼とを結ぶアーム軸の軸周りに回転可能な過回転抑制用の可動部を有し、可動部に、風車の回転時に生じる遠心力、空気力、及び重力の作用によって可動部をアーム軸周りに傾斜させ、風車の回転停止時には可動部を初期状態に戻す過回転抑制誘導体を備えた垂直軸風車を既に提案している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-10424号公報
【特許文献2】特開2022-108917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従前のブレーキ用抵抗で電力を消費する方式は、ブレーキ用抵抗を必要とするため、コスト増加の大きな要因であり、小型の垂直軸風車の長所が失われてしまう。
出願人の提案している過回転抑制機構を備えた垂直軸風車は、たとえ強風状態で発電機が無負荷になった場合でも、設定回転数以上では回転しないという特徴を有している。
【0005】
本発明は、ブレーキ用抵抗を必要としない、過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニット、及び同垂直軸風車発電ユニットの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットは、過回転抑制機構を備えた垂直軸風車と、前記垂直軸風車の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機と、前記発電機から出力される交流の電力を直流に変換する整流器とを備え、前記整流器から出力される電力をDC/AC変換器に入力する過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットであって、前記整流器から出力される前記電力を検知する発電機出力検知手段と、前記整流器と前記DC/AC変換器との間に配置する開放スイッチとを有し、制御部は、前記発電機出力検知手段が所定値を検知すると前記開放スイッチを開いて前記DC/AC変換器への電力供給を停止することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットにおいて、前記垂直軸風車が、前記発電機を有する基部と、前記基部に対して垂直軸周りに回転する回転部と、前記回転部にアームを介して連結されて前記垂直軸周りに回転する複数の風車翼とを備え、前記過回転抑制機構が、前記アームに設けられ、前記回転部と前記風車翼とを結ぶアーム軸の軸周りに回転可能な過回転抑制用の可動部と、前記可動部に設けられ、前記風車翼の回転時に生じる遠心力、空気力、及び重力の作用によって前記可動部を前記アーム軸周りに傾斜させ、前記風車翼の回転停止時には前記可動部を初期状態に戻す過回転抑制誘導体とを備え、前記可動部に働く空気力によって、設定回転数以上では前記垂直軸風車が回転しないことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載の過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットにおいて、前記発電機が、あらかじめ設定された動作点で動作するようにPWM制御されることを特徴とする。
請求項4記載の本発明の過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットの制御方法は、過回転抑制機構を備えた垂直軸風車と、前記垂直軸風車の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機と、前記発電機から出力される交流の電力を直流に変換する整流器とを備え、前記整流器から出力される電力をDC/AC変換器に入力する過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットの制御方法であって、前記整流器から出力される前記電力を検知する発電機出力検知手段と、前記整流器と前記DC/AC変換器との間に配置する開放スイッチとを有し、前記発電機出力検知手段が所定値を検知すると前記開放スイッチを開いて前記DC/AC変換器への電力供給を停止することを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項4に記載の過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットの制御方法において、前記垂直軸風車が、前記発電機を有する基部と、前記基部に対して垂直軸周りに回転する回転部と、前記回転部にアームを介して連結されて前記垂直軸周りに回転する複数の風車翼とを備え、前記過回転抑制機構が、前記アームに設けられ、前記回転部と前記風車翼とを結ぶアーム軸の軸周りに回転可能な過回転抑制用の可動部と、前記可動部に設けられ、前記風車翼の回転時に生じる遠心力、空気力、及び重力の作用によって前記可動部を前記アーム軸周りに傾斜させ、前記風車翼の回転停止時には前記可動部を初期状態に戻す過回転抑制誘導体とを備え、前記可動部に働く空気力によって、設定回転数以上では前記垂直軸風車が回転しないことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項4に記載の過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットの制御方法において、前記発電機が、あらかじめ設定された動作点で動作するようにPWM制御されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発電機出力検知手段が所定値を検知すると開放スイッチを開くことで、DC/AC変換器を保護できるとともに、過回転抑制機構によって設定回転数以上では垂直軸風車が回転しないため、ブレーキ用抵抗を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施例による過回転抑制機構を備えた垂直軸風車の全体構成図
【
図3】本実施例による過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットを示すブロック図及び動作点の説明図
【
図4】本発明の一実施例による過回転抑制機構を備えた垂直軸風車での発電機特性の設定方法を説明するグラフ
【
図5】風速V = 3 m/sから風速16 m/sの範囲において、無負荷トルクを差し引く前の風車の純粋な軸トルク特性と動作点の近似曲線(
図4(d))を描いたグラフ
【
図6】
図5に示すグラフに、PWM制御及びDC/AC変換器の許容値相当のトルク曲線と発電機の許容最大回転数とを加えたグラフ
【
図7】PWM制御における動作点設定方法の一実施例を示すグラフ
【
図8】
図7に示す動作点設定を行った場合に予想される、風車回転数と風車の軸トルク特性、及び風車のパワーカーブ
【
図9】PWM制御における動作点設定方法の他の実施例を示すグラフ
【
図10】
図9に示す動作点設定を行った場合に予想される、風車回転数と風車の軸トルク特性、及び風車のパワーカーブ
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットは、整流器から出力される電力を検知する発電機出力検知手段と、整流器とDC/AC変換器との間に配置する開放スイッチとを有し、制御部は、発電機出力検知手段が所定値を検知すると開放スイッチを開いてDC/AC変換器への電力供給を停止するものである。
本実施の形態によれば、発電機出力検知手段が所定値を検知すると開放スイッチを開いてブレーキ用抵抗に切り替えることなくDC/AC変換器への電力供給を停止することで、DC/AC変換器を保護できるとともに、過回転抑制機構によって設定回転数以上では垂直軸風車が回転しないため、ブレーキ用抵抗を必要としない。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットにおいて、垂直軸風車が、発電機を有する基部と、基部に対して垂直軸周りに回転する回転部と、回転部にアームを介して連結されて垂直軸周りに回転する複数の風車翼とを備え、過回転抑制機構が、アームに設けられ、回転部と風車翼とを結ぶアーム軸の軸周りに回転可能な過回転抑制用の可動部と、可動部に設けられ、風車翼の回転時に生じる遠心力、空気力、及び重力の作用によって可動部をアーム軸周りに傾斜させ、風車翼の回転停止時には可動部を初期状態に戻す過回転抑制誘導体とを備え、可動部に働く空気力によって、設定回転数以上では垂直軸風車が回転しないものである。
本実施の形態によれば、ブレーキ用抵抗を必要とすることなく、DC/AC変換器への電力供給を停止することができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態による過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットにおいて、発電機が、あらかじめ設定された動作点で動作するようにPWM制御されるものである。
本実施の形態によれば、発電機の制御目標を適切に設定でき、年間発電量を大きく減少させることなく発電機を動作させることができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態による過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットの制御方法は、整流器から出力される電力を検知する発電機出力検知手段と、整流器とDC/AC変換器との間に配置する開放スイッチとを有し、発電機出力検知手段が所定値を検知すると開放スイッチを開いてDC/AC変換器への電力供給を停止するものである。
本実施の形態によれば、発電機出力検知手段が所定値を検知すると開放スイッチを開いてブレーキ用抵抗に切り替えることなくDC/AC変換器への電力供給を停止することで、DC/AC変換器を保護できるとともに、過回転抑制機構によって設定回転数以上では垂直軸風車が回転しないため、ブレーキ用抵抗を必要としない。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第4の実施の形態による過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットの制御方法において、垂直軸風車が、発電機を有する基部と、基部に対して垂直軸周りに回転する回転部と、回転部にアームを介して連結されて垂直軸周りに回転する複数の風車翼とを備え、過回転抑制機構が、アームに設けられ、回転部と風車翼とを結ぶアーム軸の軸周りに回転可能な過回転抑制用の可動部と、可動部に設けられ、風車翼の回転時に生じる遠心力、空気力、及び重力の作用によって可動部をアーム軸周りに傾斜させ、風車翼の回転停止時には可動部を初期状態に戻す過回転抑制誘導体とを備え、可動部に働く空気力によって、設定回転数以上では垂直軸風車が回転しないものである。
本実施の形態によれば、ブレーキ用抵抗を必要とすることなく、DC/AC変換器への電力供給を停止することができる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第4の実施の形態による過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットの制御方法において、発電機が、あらかじめ設定された動作点で動作するようにPWM制御されるものである。
本実施の形態によれば、発電機の制御目標を適切に設定でき、年間発電量を大きく減少させることなく発電機を動作させることができる。
【実施例0015】
以下本発明の一実施例による過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットの制御方法について説明する。
図1は本実施例による過回転抑制機構を備えた垂直軸風車の全体構成図、
図2は同垂直軸風車の要部斜視図である。
本実施例による過回転抑制機構を備えた垂直軸風車は、垂直軸風車10と、過回転抑制機構20とから構成されている。
垂直軸風車10は、増速器30(
図3参照)及び発電機40(
図3参照)を備えた基部11と、基部11に対して垂直軸Z周りに回転する回転部12と、回転部12にアーム13を介して連結されて垂直軸Z周りに回転する複数の風車翼14とを備えている。本実施例では、風車翼14を3枚としている。
基部11は、同垂直軸風車の土台となる部分である。基部11は、所定の高さに形成される脚部11aと、増速器30及び発電機40を収容する収容部11bとを備えている。風車翼14は、脚部11aによって設置面から所定の高さに配置される。
風車翼14は、垂直軸Zから離れるにつれて互いの間隔が広くなるように回転部12から延びる一対の斜翼14bと、垂直軸Zに平行な方向に沿って延びる主翼14aとを有する。風車翼14は、側面視で、水平軸Xに対して対称に略三角形状に形成されている。なお、ここでいう略三角形状とは、風車翼14の全体形状が三角形に近い形状であることをいい、三角形の角部が湾曲したものや、三辺のいずれかが湾曲したものを含む。風車翼14は、前縁が湾曲し後縁が尖った流線形の翼断面で形成している。
【0016】
過回転抑制機構20は、過回転抑制用の可動部21と、過回転抑制誘導体22とを備えている。
可動部21は、アーム13の一部に設けられている。可動部21は、回転部12と風車翼14とを結ぶアーム軸13aの軸周りに回転可能である。
過回転抑制誘導体22は、可動部21に設けられている。過回転抑制誘導体22は、風車翼14の回転時に生じる遠心力、空気力、及び重力の作用によって可動部21をアーム軸13a周りに傾斜させ、風車翼14の回転停止時には可動部21を初期状態に戻す。
このように、過回転抑制機構20は、回転部12と風車翼14とを結ぶアーム軸13aの軸周りに回転可能な過回転抑制用の可動部21と、可動部21に設けられ、風車翼14の回転時に生じる遠心力、空気力、及び重力の作用によって可動部21をアーム軸13a周りに傾斜させ、風車翼14の回転停止時には可動部21を初期状態に戻す過回転抑制誘導体22とを備え、可動部21に働く空気力によって、設定回転数以上では垂直軸風車10が回転しないので、ブレーキ用抵抗を必要とすることなく、DC/AC変換器90への電力供給を停止することができる。
本実施例では、可動部21及び過回転抑制誘導体22は、風車翼14と同一形状とした翼断面で形成しているが、風車翼14と異なる形状とした翼断面で形成してもよい。
【0017】
図2(a)は過回転抑制を行っていない状態での同垂直軸風車の要部斜視図、
図2(b)は過回転抑制を行っている状態での同垂直軸風車の要部斜視図である。
風速が高くなり、風車翼14が高回転数状態になってくると、過回転抑制誘導体22に働く遠心力の回転方向成分F1が大きくなり、過回転抑制誘導体22に働く遠心力の回転方向成分F1による頭上げのモーメントが大きくなれば、傾斜角θ
2は増加する。
傾斜角θ
2が増加することで、可動部21の風車回転方向から見た投影面積が大きくなり、可動部21には、空気力による大きな制動力F2が作用し、風車の過回転を抑制する。強風状態では、低い回転数状態においても、大きな制動力を生み出す。その結果として、強風状態では、風車翼14は低い回転数に抑制される。
【0018】
図3(a)は本実施例による過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットを示すブロック図である。
本実施例による過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットは、過回転抑制機構20を備えた垂直軸風車10と、垂直軸風車10の回転を増速する増速器30と、垂直軸風車10の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機40と、発電機40から出力される交流の電力を直流に変換する整流器50と、整流器50から出力される電力を検知する発電機出力検知手段60と、整流器50とDC/AC変換器90との間に配置する開放スイッチ70と、発電機40を設定した動作点で動作させるPWM制御手段80とを備えている。ここで、垂直軸風車10は、それぞれの風速(
図3(b)に示すV
0、V
1、V
2)に対する垂直軸風車特性を有している。例えば、風速V
2での特性では、過回転抑制機構20が回転数Nxで動作するため、この回転数Nxにて軸トルクが減少する。また、発電機出力検知手段60は発電機40の軸トルクと回転数の乗算から求める電力値を検知する手段である。
整流器50から出力される電力は、DC/AC変換器90の許容入力値以下であれば、DC/AC変換器90に入力し、DC/AC変換器90の許容入力値を超える所定値になると、DC/AC変換器90への電力供給を停止する。
発電機出力検知手段60では、整流器50から出力される電力を検知し、所定値を検知すると、開放スイッチ70を開いて、DC/AC変換器90への電力供給を停止する。
このように、制御部は、発電機出力検知手段60が所定値を検知すると開放スイッチ70を開くことで、DC/AC変換器90を保護できる。
PWM制御手段80は、発電機40の回転数に応じてPWMのパルス幅を変更する。即ち、発電機40の回転数が小さい時は通電電流がONとなるパルス幅を小とし、発電機40の回転数が大きい時は通電電流がONとなるパルス幅を大とすることで、R
0、R
1、R
2のように、通電電流がONとなるパルス幅に等価な抵抗値を変えることで、発電機40から見た出力側の負荷トルクQと回転数Nとの関係を変えることができる(R
0>R
1>R
2)。負荷トルクQの回転数依存性を風車特性に合わせることで、発電機40の負荷特性を設定する。
このように、それぞれの回転数に対して、対応するパルス幅を設定することで、風車の特性に合わせた発電機特性を設定することができる。
【0019】
図4は、本発明の一実施例による過回転抑制機構を備えた垂直軸風車での発電機特性の設定方法を説明するグラフである。なお、以下の説明においては、増速器30及び発電機40の無負荷トルク(引きずりトルク)は考慮しない。
まず、本実施例による過回転抑制機構を備えた垂直軸風車が、設定回転数以上で回転しないように、過回転抑制機構の動作開始点を、設置場所での年間風速を考慮して決定する。
例えば、年平均風速V=3.7m/s程度の場所における年間の風速出現率は、
図4(a)に示すように期待されるが、風速V=8 m/sのレベル(7.5 m/s ~ 8.5 m/s)では、2.33 %、風速V=9 m/sのレベル(8.5 m/s ~ 9.5 m/s)では、0.99 %となる。このように、風速V=9 m/sのレベルでは、年間の風速出現率は1%未満となることが予想される。
ちなみに、風速V=5 m/sのレベル(4.5 m/s ~ 5.5 m/s)では、13.67 %、最大出現率を示す風速V=4 m/sのレベル(3.5 m/s ~ 4.5 m/s)では、18.33 %となる。
従って、年平均風速V=3.7m/s程度の場所における年間の風速出現率が2 %以上となる風速レベル(1m/s間隔を仮定)は風速V=8 m/sのレベル以下となるため、風速V=8 m/sの理想動作点を過回転抑制機構20の最大回転数における動作点として選定する。
図4(b)は、風速V = 5 m/s及び風速V =8 m/sにおける風車が発生するトルク特性(風車ロータのみの純粋なトルク)である。この時の理想動作点(最大出力に相当するトルクと毎分回転数の状態)は
図4(c)の表に示すとおりである。
なお、
図4(b)において、風車軸トルク曲線が急激に低下しているのは、過回転抑制機構20による動作によるものである。
同様に、風速V = 3 m/sから風速V =8 m/sの範囲で理想動作点を求め、それらを近似する曲線を求めると毎分回転数Nの二次式が得られる(
図4(d))。
【0020】
図5は、風速V = 3 m/sから風速16 m/sの範囲において、無負荷トルクを差し引く前の風車の純粋な軸トルク特性と動作点の近似曲線(
図4(d))を描いたグラフである。
図が煩雑になることを避けるために、風速V = 17 m/s以上のトルク曲線を描いていないが、想定する風車では、風速V =9m/sから風速V =16m/sの範囲で示すように、過回転抑制機構20が機能するため、高い風速値におけるトルク曲線は、低い回転数において、動作曲線と交点を持ち、低い回転数で動作することが予想される。
例えば、DC/AC変換器90の定格出力容量が9.9kWであり、DC/AC変換器90の入力許容値が11kWであるならば、整流器50からの出力が11kWを超える場合は、一般的には、DC/AC変換器90の保護のため、自動的に整流器50の出力先が、ブレーキ用抵抗に切り替えられ、DC/AC変換器90には電力が送られない仕組みとなる。
しかし、本実施例では、過回転抑制機構20が機能するため、
図5に示される最大動作点の状態(風速V=8m/s, 風車回転数N=44rpm)においても、発電機40の出力が許容値11kWを超えた場合に、ブレーキ用抵抗で電気ブレーキをかけて風車を減速する必要はない。この場合、整流器50において、発電機40からの電力をブレーキ用の抵抗に流すのではなく、発電機40の出力端を開放し電流を流さなくする。つまり、発電機40は無負荷状態となり、加速して回転数が増加するが、過回転抑制機構20が働くことで、空気力学的ブレーキ(空力ブレーキ)が動作し、風車は、
図5の各風速のトルク曲線が横軸と交わる状態の回転数(終局回転数)で動作する。すなわち、例えば風速V=8m/sでは45rpm、風速V=7m/sでは46rpm、風速V=9m/sでは44rpmで動作するため、風車に構造的な影響を与えない。すなわち、ブレーキ用抵抗を省いて、風車システムのコストを低減することができる。
【0021】
図6は、
図5に示すグラフに、DC/AC変換器の許容値相当のトルク曲線tと発電機の許容最大回転数を示す直線sとを加えたグラフである。
図6に示すPWM制御及びDC/AC変換器の設定限界相当として描いている曲線tは、PWM制御及びDC/AC変換器の許容値相当のトルク曲線であり、この曲線より高いトルクでは、PWM制御及びDC/AC変換器の許容値を超えることになる。なお、曲線tは垂直軸風車10の軸トルクと回転数の乗算で求められる曲線である。
また
図6に示す発電電圧限界回転数として描いている直線sは、発電機40の許容最大回転数に相当する風車の許容最大回転数であり、ここでは風車の許容最大回転数を33rpmとしている。この事から、曲線tの下方領域(矢印方向)と直線sの左側領域(矢印方向)の重畳範囲で、垂直軸風車発電ユニットが動作することが望ましいと云える。即ち、この重畳範囲に動作点があれば、発電機出力検知手段60により開放スイッチ70を動作させることもなく、
図6で図示している風速16m/s以下の風速範囲では過回転抑制機構20による回転制御も行われない。
【0022】
図7は、PWM制御における動作点設定方法の一実施例を示すグラフである。
図7では、風車回転数N=30rpmまでは、
図5で示す理想動作点とほぼ同じトルクに設定し、風車回転数N=30~32rpmの範囲では、発電機40の負荷トルクが急激に増加するように設定し、風車回転数N=32rpm以上では、
図6で示すDC/AC変換器の許容値相当のトルク特性になるように設定している。なお、
図7では、このように設定した動作点を動作点1としている。
【0023】
図8は、
図7に示す動作点設定を行った場合に予想される、風車回転数と風車の軸トルク特性、及び風車のパワーカーブである。
図8(a)では、
図7に示す動作点設定を行った場合に予想される風速V(2~60m/s)に対する風車回転数と軸トルク特性を示し、
図8(b)では、
図7に示す動作点設定を行った場合に予想される風車のパワーカーブを示している。予想される年間発電量は平均風速3.7m/sにおいて、21227 kWh(PWM制御及びDC/AC変換器での損失を考慮後)となっている。
図7に示す動作点設定を行った場合には、回転数N=32rpmにおいて、風速V = 60 m/s以下のすべての風速において予想される風車軸トルクよりも、動作点トルクは大きくなっているため、理論的には、風車の回転数Nは、32rpm以上にはならないと予想される(
図8(a)参照)。
しかし、
図8(a)及び
図8(b)で示されるように、風速V=13~17 m/sの範囲では回転数が急減して出力が低下する。これは、風速V=13~17 m/sの範囲で風車の回転トルクが
図7に示す動作点のトルクよりも小さいためである。
ここで行っている予測は、定常状態を仮定した予測であるため、時間的挙動は、一度、回転数が大きく減少すると、風車の慣性モーメントが大きい場合には、回転数が増加するまでに時間を要するため、
図8(a)及び
図8(b)で示されるような風速V=13~17m/sの範囲における回転数の落ち込みは好ましくない。
【0024】
図9は、PWM制御における動作点設定方法の他の実施例を示すグラフである。
図7で示す動作点では、回転数を発電機40の限界値以下に制限できるが、風速V=13~17m/sの範囲における回転数の落ち込みが予想される。また、回転数N=32rpm前後において、動作点が風車トルクよりも大きくなる設定となっているが、マージンが大きくないため、マージンを大きくすることが好ましい。
そこで、風車回転数N=24rpmまでは、
図5で示す理想動作点とほぼ同じトルクに設定し、風車回転数N=25~28rpmの範囲では、
図7に示す動作点1よりもトルクを小さく、かつトルクの増加率を小さく設定し、風車回転数N=28~32rpmの範囲では、発電機40の負荷トルクを急激に増加させ、風車回転数N=32rpm以上では、
図6で示すDC/AC変換器の許容値相当のトルク特性になるように設定している。なお、
図9では、このように設定した動作点を動作点2としている。
【0025】
図10は、
図9に示す動作点設定を行った場合に予想される、風車回転数と風車の軸トルク特性、及び風車のパワーカーブである。
図10(a)では、
図9に示す動作点設定を行った場合に予想される風速V(2~60m/s)に対する風車回転数と軸トルク特性を示し、
図10(b)では、
図9に示す動作点設定を行った場合に予想される風車のパワーカーブを示している。予想される年間発電量は平均風速3.7 m/sにおいて、19746 kWh(DC/AC変換器での損失を考慮後)となっている。
年間発電量は
図7に示す動作点1の場合に比べて、
図9に示す動作点2では少なく見積もられているが、
図10(a)に示すように、風速V=13~17 m/sの範囲における回転数の急減は無くなり、回転数N=28rpm程度で一定を保つと予想される。また、
図10(a)及び
図10(b)に示されるように、トルクと出力の減少も、動作点1の場合に比べると小さくなり、風車挙動は安定すると期待される。
【0026】
図11は、
図7に示す動作点と
図9に示す動作点との比較を示すグラフである。
参考として、風速V=8m/sとV=15m/sの場合の風車のトルク曲線を表示している。
過回転抑制機構20を装備することで、電気ブレーキ用抵抗を不要にできるが、これに加えて、発電機40の回転数上限等により回転数に制限を加える必要がある場合は、
図11のAで示すように、その上限回転数の近傍で、全ての風速における風車の正味回転トルクよりも大きくなるように、動作点を設定することが望ましい。
さらに、定格風速(本例ではV =8m/s)を多少超えた中風速領域において、回転数の急激な減少が見られる場合は、
図11のBで示すように、動作点のトルクを若干小さくする方向に変更することが望ましい。
また、
図11のAとBにおける動作点の風車トルクからの上あるいは下への突出量(マージン)を大きくすると、期待される動作の確実性が増すため、風車の効率(あるいは年間発電量)が大きく減少しない範囲において、その突出量(マージン)を大きくするように、動作点を設定することが望ましい。
更に、
図11のAとBの間の回転数に対するトルクの増加率が大きいことは、DC/AC変換器90等の制御機器にとって好ましくないため、
図11に示した動作点1から動作点2への修正のように、AとBの間の回転数に対するトルクの増加率を小さくする(傾斜を緩やかにする)ことが望ましい。
本発明の過回転抑制機構を備えた垂直軸風車発電ユニットの制御方法によれば、ブレーキ用抵抗を必要とすることなく、DC/AC変換器への電力供給を停止することができる。