(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174301
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】非情報領域に意匠データを埋め込んだ2次元コード
(51)【国際特許分類】
G06K 19/06 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
G06K19/06 103
G06K19/06 037
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092051
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】523212324
【氏名又は名称】遠藤 最
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 最
(57)【要約】
【課題】QRコード(登録商標)の非情報領域を意匠を描画する領域として利用した意匠埋め込み2次元コード
【解決手段】QRコード(登録商標)に定められている埋め草領域のビット位置と2次元コードの座標の対応を計算し、入力した意匠に対応した値に変更することで、既存の読み取り装置と互換性を維持しながら意匠を埋め込んだ視覚的な効果をもたらす2次元コードを生成する。情報領域の変更を伴わないことから2次元コードの大きさを変更してもユーザーに表示する情報は同一性を失わず、アニメーションとして映像表現をすることも可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
QRコード(登録商標)読み取り装置で解読される、レベルL,M,H,Qのいずれかの誤り訂正情報を有し、バージョン1から40のいずれかのサイズで作成された2次元コードで、QRコード(登録商標)の埋め草領域に、入力した意匠に対応した情報を格納することでデザイン化された2次元コード。
【請求項2】
QRコード(登録商標)読み取り装置で解読される、レベルL,M,H,Qのいずれかの誤り訂正情報を有し、バージョン1から40のいずれかのサイズで作成された2次元コードで、QRコード(登録商標)の埋め草領域に、入力した意匠に対応した情報を格納することでデザイン化された2次元コードの色を変化させ、視覚的な効果を高めた2次元コード。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2の2次元コードを連続表示させることで、同一情報を利用者に提示しながら意匠を変化させる映像作品。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかの2次元コードにキャラクターを表示させることで収集意欲あるいは広告効果を高めた印刷物および電子的表示。
【請求項5】
請求項3の映像作品において、少数のフレームにだけ異なる情報をコード化することでユーザーに探索の楽しみを提供する映像作品。
【請求項6】
請求項3の映像作品において、映像の内容に伴って変化する情報をコード化することで影像とコード化された情報を連携させる映像作品。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかの2次元コードを利用し、2次元コード内に表現されたキャラクターがコンピュータ装置に内蔵されたカメラで撮影するとコンピュータ装置の画面内に表示される拡張現実装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかの方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかの方法をコンピュータに実行させるコンピュータ・システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非情報領域に画像などの意匠を埋め込むことのできる2次元コードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
QRコード(登録商標)は特許文献1にあるように、デンソーウェーブ株式会社が開発した2次元コードの一形式である。QRコード(登録商標)は読み取り速度と信頼性を両立した優れた方式として普及し、スマートホンでの情報共有などに広く用いられている。
【0003】
QRコード(登録商標)は入力された情報を規則によって符号化するため、どのような意匠になるかはコード作成前に予想しにくい。コード中に意匠を埋め込むことは視覚的に分類しやすくなる、商標権や著作権による保護を受けやすくなる、閲覧者への視覚的アピールになるなどの利点があるため、これまでに複数の方式が提案されてきた。しかしこれらの方法はQRコード(登録商標)のエラー訂正機能を利用して情報の品質を落とす方法やQRコード(登録商標)の情報領域にデータを追加する方法で行われてきた。これらの方式はエラー訂正レベルを高くして格納情報が占める領域を相対的に減らしたり、本来示したい情報と異なる情報を提示することになっていた。
【0004】
特許文献2および非特許文献1のように格納情報以外の情報を付加することで実現する方式は、本来必要のない情報が表示されてしまうという問題があった。これらの方式は本来提示すべき情報の後に不必要なデータを追加することから、本来提示すべき情報とは異なるデータが大量に付加され、情報の一貫性を失うという問題があった。QRコード(登録商標)の規格に言うバージョン、すなわち全体のデータサイズが大きいQRコード(登録商標)に埋め込む場合、追加されたデータが大きくなり、ユーザーが本来の情報を見失うため、バージョンの大きなQRコード(登録商標)には用いられにくかった。また、シフトJIS形式のデータを符号化した場合、未定義の文字を指定し文字化けの原因にもなった。
【0005】
この問題の改善策として、QRコード(登録商標)の仕様における埋め草領域と称される非情報領域に画像などの意匠を記録する方式がある。埋め草領域は、規定されたデータサイズに揃えるために付加された無意味なデータ列であり、読み取り装置によって無視される情報である。QRコード(登録商標)の仕様では16進数表現でEC11、2進数表現で1110110000010001が規定されている。埋め草領域を仕様に定められた値から変更することは標準的なQRコード(登録商標)から乖離することになるが、多くの読み取りアプリケーションでは変更による不正な結果にはならなかった。特許文献3にあるように、埋め草領域を第2の情報領域として用いる技術は既にあり、既存のQRコード(登録商標)との互換性は確認されているため、埋め草領域に独自の値を用いることはQRコード(登録商標)の機能に実用上問題がない。
【0006】
図1は埋め草領域に変更を加えることでQRコード(登録商標)に画像を埋め込んだ実施例である。この2次元コードでは利用者に呈示する情報には手を加えず、埋め草領域のみを変更することで意匠を変化させており、2次元コードに欠損も生じないため誤り訂正符号を最小にしても試験した全ての読み取り装置で問題なく情報の解読ができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07−254037 2次元コード
【0008】
【特許文献2】特開2009−230729 ビジュアルなQRコード
【0009】
【特許文献3】特開2008−299422 二次元コードの生成方法およびその読取装置
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】https://research.swtch.com/qart QArt Codec
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする問題点は、QRコード(登録商標)をユーザーの印象に残るよう意匠を加えたいという需要があるにも関わらず、現在普及している読み取り装置と互換性があり、データの一貫性に影響しないまま意匠を埋め込む方法が乏しい点である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、埋め草領域を変更することで、情報の一貫性と既存の読み取り装置との互換性を保ったまま意匠を埋め込むことを主な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の2次元コード生成法は、既存のQRコード(登録商標)読み取り装置に変更を加えることなく、任意の画像を取り入れた記号を作成及び表示することができ、視覚的に印象的な意匠を持つ2次元コードを作成できるという利点がある。
【0014】
ユーザーに提示する情報の一貫性を失わず、エラー訂正情報も最小ですむため、効率的かつ意匠領域を最大化した2次元コードや、同一情報を提示しながら上映するアニメーションを作成することができる。
【0015】
意匠を表示した2次元コードの状態で符号化がされエラー訂正情報が付加されているため、正しい意匠を復元することができ、意匠を変更することで知的所有権に基づく請求を回避する手段に対する防御策となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は本発明の2次元コードを作成する処理手順である。(実施例1)
【0017】
【
図2】
図2は本発明に基づいて作成した2次元コードであり、「QR girl」という情報を表現している。(実施例2)
【0018】
【
図3】
図3は本発明に基づいて作成した2次元コードであり、シフトJIS形式で符号化された日本語文章、「猫のコード」という情報を表現している。(実施例2)
【0019】
【
図4】
図4は本発明に基づいて、アニメーション化して画像を入れ替えながらも情報の一貫性を担保した2次元コードである。また、アニメーションが人間の視覚に自然に認識されやすいよう、誤り訂正情報の表示領域を下部にするため、標準的な2次元コードの向きから90度回転させて表示している。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【実施例0020】
2次元コード内に画像を表示させるためには、コード内の各位置と埋め草データのビット列の対応関係を算出する必要がある。この対応関係は、コード生成時に計算で求める手法と予め対応表を記録しておく方法がある。この対応関係によって算出したマスク情報と現在記録されている値との比較によって指定した描画を行うことができる。
図1は作成装置における手順例を示す。この装置によって作成された、エラーを導入することなく情報列を維持した2次元コードの例を
図2および
図3に示す。
【0021】
QRコード(登録商標)の画素とデータ列はQRコード(登録商標)のバージョン及びエラー訂正レベルによって一対一で対応しているため、予め対応表を用意しない都度計算の場合は一度描画処理そのもの、あるいは同等の対応関係算出処理を行う。埋め草データがどこから始まりどこで終わるかは格納するデータのサイズによって変化する。
【0022】
QRコード(登録商標)は解読を容易にするため数種類のマスクが定義されているが、規定されたパターンとデータ列以外は埋め草領域の変更で変化するためマスクの選択は必ずしも必要ない。入力画像に読み取り装置を誤作動させるパターンが存在する場合、マスクの変更ではなく画像にノイズを加えるなどの変形処理を行うことで対処できる。より読み取り効率を上げるために、ノイズではなく禁止パターンを減らすために画像を加工し、読み取り効率を高める画像処理に変えることもできる。
【0023】
2次元コード内に描画したい画像を読み込み、埋め草データのビット位置と対応する位置のマスク情報を用いて変更する必要があるかを判断し、描画する。この処理はビット演算としては排他的論理和に相当する。
【0024】
得られた埋め草データを入力情報に付加してQRコード(登録商標)の規則に則って2次元コードの作成を行う。この時、エラー訂正情報はQRコード(登録商標)の一辺に集中するため、意匠を強調するために適宜回転することもできる。