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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174302
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】養育毛剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/04 20060101AFI20241210BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20241210BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20241210BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20241210BHJP
   A61K 8/68 20060101ALI20241210BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20241210BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A61K8/04
A61K8/49
A61K8/67
A61K8/64
A61K8/68
A61K8/9789
A61Q7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092053
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】517001000
【氏名又は名称】株式会社マジェスティ
(74)【代理人】
【識別番号】100141427
【弁理士】
【氏名又は名称】飯村 重樹
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 浩美
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AC641
4C083AC841
4C083AC851
4C083AD391
4C083AD411
4C083AD641
4C083AD661
4C083BB01
4C083BB53
4C083CC37
4C083DD23
4C083DD30
4C083DD34
4C083DD39
4C083EE22
4C083FF05
(57)【要約】
【課題】短期間で顕著な養毛あるいは育毛の効果を奏することができる養育毛剤を提供する。
【解決手段】ポリフェノール類、及び親水性の有用成分と界面活性剤とを混合して得られたW/Oエマルジョンを調製した固相が油相中に分散したS/Oエマルジョンを減圧蒸留して得られた多層輸送体を含有する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェノール類、及び親水性の有用成分と界面活性剤とを混合して得られたW/Oエマルジョンを調製した固相が油相中に分散したS/Oエマルジョンを減圧蒸留して得られた多層輸送体を含有する、養育毛剤。
【請求項2】
前記ポリフェノール類は、
ビオフラボノイド、イチゴ果実エキス、シソ種子エキス、ライチ-種子エキス及びキク花エキスを含有する、
請求項1に記載の養育毛剤。
【請求項3】
前記ビオフラボノイド、前記イチゴ果実エキス、前記シソ種子エキス、前記ライチ-種子エキス及び前記キク花エキスがそれぞれ、0.001質量%~0.02質量%の範囲で含有されることを特徴とする請求項2に記載の養育毛剤。
【請求項4】
前記有用成分は、
ビタミンC及びビタミンEを含有する、請求項1または2に記載の養育毛剤。
【請求項5】
前記有用成分は、
ビタミンC、ビタミンE、グルコシルセラミド、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及び水溶性プロテオグリカンを含有する、
請求項1または2に記載の養育毛剤。
【請求項6】
ポリフェノール類、及び親水性の有用成分と界面活性剤とを混合して得られたW/Oエマルジョンを調製した固相が油相中に分散したS/Oエマルジョンを減圧蒸留して得られた生成物を水相に分散したS/O/Wエマルジョンを減圧蒸留して得られた多層輸送体を含有する、養育毛剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養育毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、加齢やストレス等の種々の要因によって、人体には種々の影響が及ぼされる。例えば頭髪に着目すれば、加齢等に起因する脱毛や痩毛等によって薄毛になる場合があり、身体に関する悩みやストレスの大きな要因となることがある。
【0003】
このような場合の対策として、養毛や育毛に関する種々の研究が日々積み重ねられており、かつ養毛や育毛の作用を奏することが期待される養毛剤あるいは育毛剤が種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、血管拡張作用を有する化合物及びポリフェノール類を含有する養育毛剤組成物が開示されている。この特許文献1の養育毛剤組成物は、優れた養育毛効果を奏すること、及びその効果が迅速に発現されることを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-12519公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の養毛剤あるいは育毛剤等については、一定の養毛あるいは育毛の効果が認められるものが存在するものの、短期間で顕著な養毛あるいは育毛の効果を達成することについては、未だ改善の余地があると考えられる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、短期間で顕著な養毛あるいは育毛の効果を奏することができる養育毛剤を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
養育毛研究の新たなアプローチとして、毛髪近くの皮膚の表皮に存在する酵素であるテロメラーゼの活性化に注目する知見がある。
【0009】
生体は、細胞分裂を繰り返すことで成長していくところ、細胞分裂の回数には上限があることが知られている。これは、染色体末端部分のテロメアと呼ばれる部分が細胞分裂によるDNA複製ごとに短くなっていくことに起因しており、テロメアが一定の限界を超えて短くなると細胞分裂できなくなるというものである(ヘイフリック限界)。
【0010】
ここで、生殖細胞や幹細胞では、短縮したテロメアを修復する酵素の働きにより細胞分裂を継続できるようにしているところ、このような作用を奏する酵素がテロメラーゼである。
【0011】
毛髪の産生との関係においても、毛母細胞はヒトの細胞で最も早く分裂する細胞であることから、テロメラーゼの活性は重要な要素であると考えられる。養育毛研究の新たなアプローチでは、毛髪を産生する器官である毛包の表皮近くに存在するテロメラーゼが活性化すると、毛包のバルジ領域に存在する幹細胞が活性化し、毛包基底部に毛乳頭細胞を形成し、毛乳頭細胞により栄養供給されて毛母細胞が細胞分裂する。
【0012】
このような作用機序に着目した、上記目的を達成するための本発明に係る養育毛剤は、ポリフェノール類、及び親水性の有用成分と界面活性剤とを混合して得られたW/Oエマルジョンを調製した固相が油相中に分散したS/Oエマルジョンを減圧蒸留して得られた多層輸送体を含有するものである。
【0013】
これによれば、養育毛剤が頭皮に塗布されると、毛包幹細胞が存在するバルジ領域に作用して、好適に配合されたポリフェノール類の養育毛成分が毛乳頭や毛母細胞に運搬されることによって、養育毛の効果が発揮される。
【0014】
さらに、有用成分を含有した多層輸送体が高い浸透力で頭皮に浸透することから、有用成分の作用によって頭皮が保湿されて整肌される。これにより、養育毛の効果が発現しやすくなる。
【0015】
したがって、優れた養育毛の効果が迅速に発揮される。
【0016】
この養育毛剤のポリフェノール類は、ビオフラボノイド、イチゴ果実エキス、シソ種子エキス、ライチ-種子エキス及びキク花エキスを含有するものであり、ビオフラボノイド、イチゴ果実エキス、シソ種子エキス、ライチ-種子エキス及びキク花エキスがそれぞれ、0.001質量%~0.02質量%の範囲で含有されるものである。
【0017】
この養育毛剤の有用成分は、ビタミンC及びビタミンEを含有するものであり、更にグルコシルセラミド、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及び水溶性プロテオグリカンを含有するものである。
【0018】
上記目的を達成するための本発明に係る養育毛剤は、ポリフェノール類、及び親水性の有用成分と界面活性剤とを混合して得られたW/Oエマルジョンを調製した固相が油相中に分散したS/Oエマルジョンを減圧蒸留して得られた生成物を水相に分散したS/O/Wエマルジョンを減圧蒸留して得られた多層輸送体を含有するものである。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、優れた養育毛の効果が迅速に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施の形態に係る多層輸送体の構成の概略を説明する図である。
図2】本発明の第2実施の形態に係る多層輸送体の構成の概略を説明する図である。
図3A】本発明の実施例における養育毛剤の使用前の頭部の画像、使用中の頭部の画像及び使用後の頭部の画像を比較して評価した場合の概略を説明する図である。
図3B】同じく、本実施例における養育毛剤の使用前の頭部の画像、使用中の頭部の画像及び使用後の頭部の画像を比較して評価した場合の概略を説明する図である。
図3C】同じく、本実施例における養育毛剤の使用前の頭部の画像、使用中の頭部の画像及び使用後の頭部の画像を比較して評価した場合の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態に係る養育毛剤について説明する。
【0022】
(第1実施の形態)
まず、第1実施の形態に係る養育毛剤について説明する。
【0023】
本実施の形態の養育毛剤は、ポリフェノール類及び多層輸送体を含有する液状で調製され、例えばスプレー、ローション、乳液、クリーム、ジェル、ヘアトニック、オイル等の種々の剤形が採用可能であって、対象となる部位に塗布されて使用される。
【0024】
養育毛剤が塗布される対象となる部位は、本実施の形態では頭皮であって、頭髪の養育毛に供されるものであるが、例えばまつ毛や眉毛等の養育毛に供されるものであってもよい。
【0025】
この養育毛剤は、本実施の形態では、水、プロパンジオール、BG、ベンチレングリコール、スクワラン、パルミチン酸エチルヘキシル、ステアリン酸グリセリル、ビオフラボノイド、イチゴ果実エキス、シソ種子エキス、ライチ-種子エキス、キク花エキス、リン酸アスコルビルMg、酢酸トコフェロール、αグルカン、グルコシルセラミド、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、加水分解ヒアルロン酸、水溶性プロテオグリカン、ホホバ種子油、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6、トコフェロール、アセルチルチロシン、フラーレン、ビサポロール、センブリエキス、オタネニンジン根エキス、セイヨウニンジンボク果実エキス、ポリクオタニウム-51、トマト果汁、ラクトフェリン(牛乳)、グリセリン、ジラウロイルグルタミン酸リシンNa、パルミトイルトリペプチド-1、パルミトイルテトラペプチド-7、乳酸Na、乳酸、PEG-60水添ヒマシ油、ポリソルベート20、PVP、ヒドロキシエチルセルロース、カルボマー、ペタイン、エチルヘキシルグリセリン、エタノール、フェノキシエタノール、PEG-20ソルビタンココエート、ポリソルベート60、セスキオレイン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタンを主要な配合成分としている。
【0026】
これらの成分のうち、ポリフェノール類は、2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物及びその誘導体を示すものであって、細胞障害をもたらす可能性のある活性酸素の作用を抑制する抗酸化作用によって、細胞障害の改善に資するものである。
【0027】
本実施の形態では、ポリフェノール類としては、上記のように、ビオフラボノイド、イチゴ果実エキス、シソ種子エキス、ライチ-種子エキス及びキク花エキスが含有される。
【0028】
ビオフラボノイドは、オレンジ等の柑橘類に含まれるビタミン様のポリフェノールであって、毛細血管の透過性を減少させるといった生理的な効果を奏するものである。特に、本実施の形態では、保湿作用、スキンケア及び還元作用等によって頭皮を清潔に維持するといった効果を奏することが期待される。
【0029】
ビオフラボノイドは、例えば、柑橘類の果皮が粗粉砕され、場合によっては水や酵素液等が添加されて任意の抽出方法で抽出される。
【0030】
キク花エキスは、菊から抽出されるポリフェノールであって、体内での尿酸の生成を抑制するとともに体内からの尿酸の排出を促進するといった生理的な効果を奏するものである。特に、本実施の形態では、頭皮を保護して頭皮の肌荒れを防止することによって、頭皮の健康を維持するといった効果を奏することが期待される。
【0031】
キク花エキスは、例えば、植物から有効成分を抽出する一般的な手法で抽出される。抽出物には、抽出液の希釈液を乾燥して得られる乾燥物、あるいはこれらの粗精製物や精製物が含まれる。
【0032】
シソ種子エキスは、紫蘇から抽出されるポリフェノールであって、ロズマリン酸等を含有し、例えば、ウイルスに対する免疫力を向上させてアレルギーに対する効果を発揮することが知られている。特に、本実施の形態では、頭皮の肌荒れを防止して調整することによって、頭皮を整えるといった効果を奏することが期待される。
【0033】
シソ種子エキスは、例えば、植物から有効成分を抽出する一般的な手法で抽出される。抽出物には、抽出液の希釈液を乾燥して得られる乾燥物、あるいはこれらの粗精製物や精製物が含まれる。
【0034】
ライチ-種子エキスは、ライチから抽出されるポリフェノールであって、ロイコシアニジン等を含有し、血管の活性化や血行促進といった作用を奏するものである。特に、本実施の形態では、頭皮の弾力を向上させるとともに頭皮を保湿する作用を有することから、頭皮の環境を好適に保持するといった効果を奏することが期待される。
【0035】
ライチ-種子エキスは、例えば、ライチの果実が含水エタノールで抽出され、緑茶抽出物と混合されて低分子化されることによって得られる。
【0036】
イチゴ果実エキスは、イチゴから抽出されるポリフェノールであって、アントシアニンやエラグ酸等を含有し、例えば、皮脂の分泌を抑制する効果を発揮することが知られている。特に、本実施の形態では、加齢に応じて頭皮を保護することによって、毛髪を保湿するといった効果を奏することが期待される。
【0037】
イチゴ果実エキスは、例えば、イチゴの果実が乾燥されて破砕され、エタノール水溶液が添加されて任意の抽出方法で抽出される。
【0038】
これらビオフラボノイド、イチゴ果実エキス、シソ種子エキス、ライチ-種子エキス及びキク花エキスはそれぞれ、本実施の形態では、0.001質量%~0.02質量%の範囲で含有されることが好ましく、この範囲内において、養育毛の効果や頭皮を健全な状態に導く効果が認められる。
【0039】
特に、ビオフラボノイド、イチゴ果実エキス、シソ種子エキス、ライチ-種子エキス及びキク花エキスが0.01質量%、含有されていることが好ましい。
【0040】
このような構成の養育毛剤が頭皮に塗布されると、毛包幹細胞が存在するバルジ領域に作用して、好適に配合されたポリフェノール類の養育毛成分が毛乳頭や毛母細胞に運搬されることによって、養育毛の効果が発揮される。
【0041】
次に、本実施の形態に係る多層輸送体について説明する。
【0042】
図1は、多層輸送体の構成の概略を説明する図である。図示のように、多層輸送体1は、固相10及びこの固相10を被覆する油相20によって生成される。
【0043】
固相10は、本実施の形態では、有用成分11及びこの有用成分11と混合された界面活性剤12によって生成される。
【0044】
有用成分11は、頭皮用あるいは毛髪用の組成物を組成する親水性の成分であって、生理活性を有する成分であれば特に限定されるものではないが、生理活性の機能の発揮を目的として配合される成分であることが好ましい。
【0045】
特に、生理活性の機能を有するものの、その配合量や配合方法等の観点から、その生理活性の発揮を目的として配合されていないものは、本実施の形態の有用成分11には含まれない。
【0046】
この有用成分11は、本実施の形態では、ビタミンC、ビタミンE、グルコシルセラミド、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及び水溶性プロテオグリカンを含有するものである。
【0047】
ビタミンCは、本実施の形態では、リン酸アスコルビルMgであることが好適であって、0.8質量%~3質量%の範囲で含有されることが好ましく、この範囲内において、発育毛の効果や頭皮を健全な状態に導く効果が認められる。
【0048】
ビタミンEは、本実施の形態では、酢酸トコフェロールであることが好適であって、0.01質量%~3質量%の範囲で含有されることが好ましく、この範囲内において、発育毛の効果や頭皮を健全な状態に導く効果が認められる。
【0049】
特に、本実施の形態では、これらビタミンC及びビタミンEによって、頭皮への有用成分11の浸透性が向上することが期待される。
【0050】
グルコシルセラミドは、果皮、種皮あるいは胚芽等から得られるスフィンゴ脂質のひとつであるセラミドに、中性糖のひとつであるグルコースが結合されたスフィンゴ糖脂質であって、頭皮に浸透するとセラミドが生成され、セラミド産生量が増加することによってバリア機能が強化されることから、外部の刺激から頭皮が保護される。
【0051】
ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)は、生体内に自然に存在し老化を抑制するサーチュイン遺伝子を活性化する働きをするニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の前駆体であって、加齢に伴い減少する一方で外部から直接的に補うことが困難とされるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を実質的に補うことができる抗老化物質として、近年、高い注目を集めている。
【0052】
このニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)は、枝豆、ブロッコリー、アボカドなどの野菜やフルーツ等の食品から摂取できるものの、そもそも、食品中の含有量がさほど多くなく、体内でニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を合成する能力が加齢とともに衰えてくることから、外部から補うことがより有効であると考えられている。
【0053】
ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を、養育毛剤の有用成分11とした含めた場合、サーチュイン遺伝子が活性化されることによって、毛髪の産生において重要な毛包幹細胞、毛乳頭細胞または毛母細胞のうちの少なくとも1つが活性化されると考えられることから、有意な養育毛効果を奏することが期待できる。
【0054】
ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)は、本実施の形態では、0.1質量%~0.3質量%の範囲で含有されることが好ましく、この範囲内において、発育毛の効果や頭皮を健全な状態に導く効果が認められる。特に、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)が0.1質量%、含有されていることが好ましい。
【0055】
水溶性プロテオグリカンは、自然環境では皮膚、軟骨、血管、臍帯、角膜等といった結合組織に存在しており、一般的には魚類の鼻の軟骨から抽出して得られるものである。
【0056】
この水溶性プロテオグリカンは、頭皮の表面に水分を含んだ膜を形成することによって、外部からの物理的あるいは化学的な影響から頭皮を保護するとともに頭皮の水分が過剰に蒸散することを防止することが期待できる。
【0057】
界面活性剤12は、本実施の形態では、皮膚外用剤に用いられるものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤あるいは胆汁酸塩等を用いることができる。
【0058】
非イオン性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、デカグリセリンエステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油及び硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル(ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルチミン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖混合脂肪酸エステル)等が好ましい。
【0059】
これらの非イオン性界面活性剤から一種類を選択して用いる、あるいは二種類以上を選択して用いることができる。
【0060】
これらの非イオン性界面活性剤としては、エルカ酸やオレイン酸等の不飽和脂肪酸を原料とするエステル化合物が好適であり、より好ましくは、ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖混合脂肪酸エステルを挙げることができる。
【0061】
さらに、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油及び硬化ヒマシ油からなる群から選択される一種類あるいは二種類以上を用いることができる。
【0062】
陰イオン性界面活性剤としては、アルキル酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩またはリン酸エステル塩等を挙げることができる。
【0063】
陽イオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、自アルキルメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩またはアミン塩類等を挙げることができる。
【0064】
両性界面活性剤としては、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタインまたはアルキルアミンオキシド等を挙げることができる。
【0065】
これらの界面活性剤12は、一種類あるいは二種類以上を選択して用いることができる。
【0066】
界面活性剤12の配合量は、本発明の効果が発揮される範囲内において適宜設定されるものであって、例えば、有用成分11と界面活性剤12との重量比(有用成分:界面活性剤)を1:0.5~1:100とすることが好ましく、この場合、有用成分11の経皮吸収性を高めることができる。
【0067】
有用成分11の経皮吸収性を更に高める観点からは、有用成分11と界面活性剤12との重量比(有用成分:界面活性剤)を1:0.5~1:50とすることがより好ましく、1:0.5~1:30とすることが更に好ましい。
【0068】
界面活性剤12は、本実施の形態では、HLB価10以下という疎水性の高いものを用いることが好ましい。
【0069】
油相20は、本実施の形態では、皮膚外用剤に用いられるものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、植物油、動物油、中性脂質(モノ置換、ジ置換またはトリ置換のグリセリド)、長鎖脂肪酸エステル、合成油脂、ステロール誘導体等を用いることができる。
【0070】
具体的には、大豆油、綿実油、菜種油、ゴマ油、コーン油、落花生油、サフラワー油、サンフラワー油、オリーブ油、ナタネ油、シソ油、ウイキョウ油、カカオ油、ケイヒ油、ハッカ油、ベルガモット油等の植物油;牛脂、豚油、魚油等の動物油;中鎖脂肪酸トリグリセリド、トリオレイン、トリリノレイン、トリパルミチン、トリステアリン、トリミリスチン、トリアラキドニン等の中性脂質;アゾン等の合成脂質;コレステリルオレエート、コレステリルリノレート、コレステリルミリステート、コレステリルパルミデート、コレステリルアラキデート等のステロール誘導体;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸セチル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル等の長鎖脂肪酸エステル;乳酸エチル、乳酸セチル等の乳酸エステル;クエン酸トリエチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル等の多価カルボン酸エステル;2-エチルヘキサン酸セチル等のその他のカルボン酸のエステル;ワセリン、パラフィンスクワラン等の炭化水素類;シリコン類等を挙げることができる。
【0071】
これらの油相20は、一種類を選択して用いてもよいし、二種類以上を選択して混合して用いてもよい。
【0072】
好適には、大豆油、綿実油、菜種油、ゴマ油、コーン油、落花生油、サフラワー油、サンフラワー油、オリーブ油、ナタネ油及びシソ油からなる群から選択される一種類あるいは二種類以上を用いることができる。
【0073】
特に好適には、トリグリセリドやこれを主成分とする植物油を用い、実用的には大豆油が好ましく、特に、高度に精製されて純度が高められた大豆油が好ましい。
【0074】
一方、中性脂質または長鎖脂肪酸エステルも好適に用いることができ、より好ましくは長鎖脂肪酸エステル、さらに好ましくはミリスチン酸イソプロピル(IPM)も用いることができる。
【0075】
次に、本実施の形態に係る多層輸送体1の製造方法について説明する。
【0076】
まず、有用成分11を含む水相と界面活性剤12を含む油相とを混合して撹拌して、有用成分11を含む水相を油相に分散させて、W/Oエマルションを調製する(第1工程)。本実施の形態では、ホモジュナイザによる高速撹拌、プロペラミキサによる撹拌あるいはディスパによる撹拌によって水相と油相とが混合される。
【0077】
続いて、第1工程で調製したW/Oエマルションから水相及び油相を除去して、固相10を得る(第2工程)。水相及び油相の除去は、本実施の形態では、凍結乾燥あるいは減圧乾燥によって除去する。
【0078】
その後、第2工程で得た固相10を油相に分散して、S/Oエマルションを調製する(第3工程)。油相への分散は、本実施の形態では、ホモジュナイザによる高速撹拌、プロペラミキサによる撹拌あるいはディスパによる撹拌によって実施される。
【0079】
さらに、必要に応じて、撹拌とともに超音波を照射して分散を実施することもできる。
【0080】
続いて、第3工程で調製したS/Oエマルションを減圧蒸留して、多層輸送体1を得る(第4工程)。S/Oエマルションの減圧蒸留は、本実施の形態では、ロータリエバポレータで実施する。
【0081】
このようにして得られた多層輸送体1及びポリフェノール類を含有する本実施の形態の養育毛剤が頭皮に塗布されると、毛包幹細胞が存在するバルジ領域に作用して、好適に配合されたポリフェノール類の養育毛成分が毛乳頭や毛母細胞に運搬されることによって、養育毛の効果が発揮される。
【0082】
さらに、有用成分11を含有した多層輸送体1が高い浸透力で頭皮に浸透することから、有用成分11の作用によって頭皮が保湿されて整肌される。これにより、養育毛の効果が発現しやすくなる。
【0083】
したがって、優れた養育毛の効果が迅速に発揮される。
【0084】
(第2実施の形態)
次に、本発明の第2実施の形態に係る養育毛剤について説明する。
【0085】
本実施の形態の養育毛剤は、含有される多層輸送体の構造が第1実施の形態の多層輸送体1と異なっており、それ以外の成分は第1実施の形態と異なることがないから、多層輸送体の説明のみを行い、それ以外の成分の説明を省略する。
【0086】
なお、図2において、第1実施の形態と同様の構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0087】
図2は、多層輸送体の構成の概略を説明する図である。図示のように、多層輸送体2は、多層輸送体1及びこの多層輸送体1を被覆する、界面活性剤が含まれた水相30によって生成される。
【0088】
水相30は、本実施の形態では、皮膚外用剤に用いられるものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、純水、精製水、蒸留水、生理食塩水、緩衝液等を用いることができる。
【0089】
次に、本実施の形態に係る多層輸送体2の製造方法について説明する。
【0090】
まず、第1実施の形態で説明した第1行程~第4行程で得られた生成物である多層輸送体1を水相30に分散して、S/O/Wエマルションを調製する(第5工程)。
【0091】
続いて、第5工程で調製したS/O/Wエマルションを減圧蒸留して、多層輸送体2を得る(第6工程)。S/O/Wエマルションの減圧蒸留は、本実施の形態では、ロータリエバポレータで実施する。
【実施例0092】
以下、図3A図3Cに基づいて、実施例によって本発明を説明する。
【0093】
〔試験方法〕
上記の実施の形態で特定された養育毛剤を、31名の被験者が8週間(2ヶ月)に亘って使用し、使用前と使用後とを比較する試験を実施した。
【0094】
なお、試験の期間中は、対象となる部位に影響を及ぼすような施術を受けないこと、海水浴や登山や日光浴といった屋外での活動による紫外線の過剰な曝露を回避すること、新たなサプリメントの摂取を開始しないこと及び暴飲暴食を避けて通常の生活を維持すること、を被験者に指示した。
【0095】
〔養育毛剤の使用方法〕
1日1回の洗髪の後、頭髪を十分に乾かしてから養育毛剤をスプレーで12~14回ほど頭皮に噴霧し、対象となる部位になじませるようにして使用した。
【0096】
〔評価方法〕
試験の開始に際して、被験者が改善を要すると評価している部位を目視で確認のうえ、頭皮の状態を記録するとともに頭部全体を撮影した。さらに、頭皮の任意の部分をマイクロスコープで確認した。
4週間後の途中経過観察日及び8週間後の観察日に、頭皮の状態の観察、頭部の画像の評価及びマイクロスコープによる確認を行い、評価を行った。
【0097】
評価に関して、31名の被験者のいずれについても有意な改善が認められたものの、本実施例では、特に有意な改善が認められた9名の被験者を示す。
【0098】
〔被験者1〕
図3Aにおける使用前、使用中及び使用後の撮像画像をそれぞれ対比すると、使用後の撮影画像において、加齢に伴う毛髪のうねりが改善し、細毛が太毛となるとともに毛髪が増量したことが確認できた。したがって、有意な改善が認められたものと評価した。
【0099】
〔被験者2〕
図3Aにおける使用前、使用中及び使用後の撮像画像をそれぞれ対比すると、使用後の撮影画像において、加齢に伴う毛髪のうねりが改善し、細毛が太毛となるとともに毛髪が増量したことが確認できた。さらに、マイクロスコープでの確認によれば、毛穴が大きくなったことが認められたとともに、頭皮の血流及び弾力が改善したことも認められた。したがって、有意な改善が認められたものと評価した。
【0100】
〔被験者3〕
図3Aにおける使用前、使用中及び使用後の撮像画像をそれぞれ対比すると、使用後の撮影画像において、加齢に伴う毛髪のうねりが改善し、毛髪が増量して頭皮の地肌が見えにくくなったことが確認できた。さらに、マイクロスコープでの確認によれば、頭皮の血流が改善したことも認められた。したがって、有意な改善が認められたものと評価した。
【0101】
〔被験者4〕
図3Bにおける使用前、使用中及び使用後の撮像画像をそれぞれ対比すると、使用後の撮影画像において、頭部全体で毛髪が増量したことが確認できた。特に、一般的には発毛が困難な部位である生え際の発毛も確認できた。さらに、マイクロスコープでの確認によれば、閉止寸前であった毛穴が大きくなったことが認められたとともに、頭皮の血流及び弾力が改善したことも認められた。したがって、有意な改善が認められたものと評価した。
【0102】
〔被験者5〕
図3Bにおける使用前、使用中及び使用後の撮像画像をそれぞれ対比すると、使用後の撮影画像において、加齢に伴う毛髪のうねりが改善し、毛髪が増量して頭皮の地肌が見えにくくなったことが確認できた。さらに、マイクロスコープでの確認によれば、毛穴が大きくなったことが認められた。したがって、有意な改善が認められたものと評価した。
【0103】
〔被験者6〕
図3Bにおける使用前、使用中及び使用後の撮像画像をそれぞれ対比すると、使用後の撮影画像において、細毛が太毛となるとともにつむじ周辺の産毛が抜けて待機毛の早期出現がみられる等といった顕著な発毛が確認できた。さらに、マイクロスコープでの確認によれば、毛穴が大きくなったことが認められたとともに、頭皮の血流が改善したことも認められた。したがって、有意な改善が認められたものと評価した。
【0104】
〔被験者7〕
図3Cにおける使用前、使用中及び使用後の撮像画像をそれぞれ対比すると、使用後の撮影画像において、加齢に伴う毛髪のうねりが改善し、細毛が太毛となるとともに毛髪が増量したことが確認できた。さらに、マイクロスコープでの確認によれば、頭皮の血流及び弾力が改善したことも認められた。したがって、有意な改善が認められたものと評価した。
【0105】
〔被験者8〕
図3Cにおける使用前、使用中及び使用後の撮像画像をそれぞれ対比すると、使用後の撮影画像において、加齢に伴う毛髪のうねりが改善し、細毛が太毛となるとともに毛髪が増量したことが確認できた。さらに、マイクロスコープでの確認によれば、頭皮の血流が改善したとともに脂漏性の頭皮が正常の頭皮に改善したことも認められた。したがって、有意な改善が認められたものと評価した。
【0106】
〔被験者9〕
図3Cにおける使用前、使用中及び使用後の撮像画像をそれぞれ対比すると、使用後の撮影画像において、頭部全体で毛髪が増量したことが確認できた。マイクロスコープでの確認によれば、毛穴の密度及び頭皮の血流が改善したことも認められた。したがって、有意な改善が認められたものと評価した。
【0107】
このように、本実施例によれば、上記の実施の形態で特定された養育毛剤を使用することによって、8週間という短期間で、被験者に顕著な発毛あるいは育毛の効果が発現したことが認められた。
図1
図2
図3A
図3B
図3C