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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174303
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】タービン動翼及びガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/18 20060101AFI20241210BHJP
   F01D 25/12 20060101ALI20241210BHJP
   F02C 7/18 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F01D5/18
F01D25/12 E
F02C7/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092059
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】仁内 隆志
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 俊介
(72)【発明者】
【氏名】赤田 悠輔
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202CA07
3G202CB01
3G202JJ02
3G202JJ22
3G202JJ27
(57)【要約】
【課題】タービン動翼に作用する応力を低減する。
【解決手段】本開示の少なくとも一実施形態に係るタービン動翼は、第2冷却流路と、翼高さ方向に延在し、第2冷却流路よりも前縁側で形成されていて、翼型部の基端側の第1折り返し流路で第2冷却流路と接続されて、第2冷却流路とは仕切り壁で仕切られた第1冷却流路とを含む。腹側内壁面のうち第1冷却流路を区画する第1腹側内壁面と仕切り壁の前縁側壁面とを接続する第1腹側フィレット部、及び、腹側内壁面のうち第2冷却流路を区画する第2腹側内壁面と仕切り壁の後縁側壁面とを接続する第2腹側フィレット部では、翼高さ方向の少なくとも基端側の領域の一部において、翼型部の先端側から基端側に向かうにつれてフィレット半径が漸増する。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の冷却流路を内部に有する翼型部を含む翼体、
を備え、
前記複数の冷却流路は、前記翼型部の後縁側から順に、
翼高さ方向に延在し、翼の根元で開口する第3冷却流路と、
前記翼高さ方向に延在し、前記第3冷却流路よりも前記翼型部の前縁側で形成されていて、前記翼型部の先端側の第2折り返し流路で前記第3冷却流路と接続されている第2冷却流路と、
前記翼高さ方向に延在し、前記第2冷却流路よりも前記前縁側で形成されていて、前記翼型部の基端側の第1折り返し流路で前記第2冷却流路と接続されている第1冷却流路と、
を含み、
前記第1冷却流路と前記第2冷却流路とを仕切る仕切り壁、
を備え、
前記仕切り壁
は、前記翼体の腹側壁部の腹側内壁面及び前記翼体の背側壁部の背側内壁面とフィレット部を介して接続されており、
前記フィレット部は、
前記腹側内壁面のうち前記第1冷却流路を区画する第1腹側内壁面と、前記仕切り壁の前縁側壁面とを接続する第1腹側フィレット部と、
前記背側内壁面のうち前記第1冷却流路を区画する第1背側内壁面と、前記仕切り壁の前縁側壁面とを接続する第1背側フィレット部と、
前記腹側内壁面のうち前記第2冷却流路を区画する第2腹側内壁面と、前記仕切り壁の後縁側壁面とを接続する第2腹側フィレット部と、
前記背側内壁面のうち前記第2冷却流路を区画する第2背側内壁面と、前記仕切り壁の後縁側壁面とを接続する第2背側フィレット部と、
を含み、
前記第1腹側フィレット部、及び、前記第2腹側フィレット部は、前記翼高さ方向の少なくとも前記基端側の領域の一部において、前記先端側から前記基端側に向かうにつれてフィレット半径が漸増する、
タービン動翼。
【請求項2】
前記フィレット部は、
前記腹側内壁面のうち前記第1折り返し流路を区画する第3腹側内壁面と、前記仕切り壁の基端部の端面とを接続する第3腹側フィレット部と、
前記背側内壁面のうち前記第1折り返し流路を区画する第3背側内壁面と、前記端面とを接続する第3背側フィレット部と、
を含み、
前記第1腹側フィレット部と前記第2腹側フィレット部とは、前記第3腹側フィレット部を介して接続されており、
前記第3腹側フィレット部との接続位置における前記第1腹側フィレット部のフィレット半径は、前記第3腹側フィレット部のフィレット半径と等しく、
前記第3腹側フィレット部との接続位置における前記第2腹側フィレット部のフィレット半径は、前記第3腹側フィレット部のフィレット半径と等しい、
請求項1に記載のタービン動翼。
【請求項3】
前記第2冷却流路を前記先端側から前記基端側に向かって辿って行ったときに前記第2腹側フィレット部において前記フィレット半径が漸増を開始する腹側第2位置は、前記第1冷却流路を前記先端側から前記基端側に向かって辿って行ったときに前記第1腹側フィレット部において前記フィレット半径が漸増を開始する腹側第1位置と異なる、
請求項1又は2に記載のタービン動翼。
【請求項4】
前記腹側第2位置は、前記腹側第1位置よりも前記先端側に位置する、
請求項3に記載のタービン動翼。
【請求項5】
前記第1背側フィレット部、及び、前記第2背側フィレット部は、前記翼高さ方向の少なくとも前記基端側の領域の一部において、前記先端側から前記基端側に向かうにつれてフィレット半径が漸増する、
請求項1又は2に記載のタービン動翼。
【請求項6】
前記第2冷却流路を前記先端側から前記基端側に向かって辿って行ったときに前記第2背側フィレット部において前記フィレット半径が漸増を開始する背側第2位置は、前記第1冷却流路を前記先端側から前記基端側に向かって辿って行ったときに前記第1背側フィレット部において前記フィレット半径が漸増を開始する背側第1位置よりも前記先端側に位置する、
請求項5に記載のタービン動翼。
【請求項7】
前記第1腹側フィレット部、及び、前記第2腹側フィレット部は、前記翼高さ方向の少なくとも前記基端側の領域の一部において、前記先端側から前記基端側に向かうにつれてフィレット半径が0.5mm以上4.0mm以下の範囲内で漸増する、
請求項1又は2に記載のタービン動翼。
【請求項8】
前記第1冷却流路と前記第2冷却流路と前記第3冷却流路とは、前記前縁側に向かって蛇行しながら延びる前縁側蛇行流路を構成し、
前記翼型部は、前記前縁側蛇行流路とは独立した流路であって、前記前縁側蛇行流路よりも前記後縁側において前記後縁側に向かって蛇行しながら延びる後縁側蛇行流路を内部に有する、
請求項1又は2に記載のタービン動翼。
【請求項9】
前記第1冷却流路は、前記翼型部の前記前縁側の翼壁を介して前縁と隣り合っている、
請求項1又は2に記載のタービン動翼。
【請求項10】
前記複数の冷却流路は、前記第1冷却流路とは独立した流路であって、前記翼高さ方向に延在し、前記第1冷却流路よりも前記前縁側で形成されている冷却流路を含む、
請求項1又は2に記載のタービン動翼。
【請求項11】
請求項1又は2に記載のタービン動翼を備えるガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービン動翼及びガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガスタービンなどに用いられるタービン動翼は、高温の燃焼ガス中で使用されるため、冷却のための冷却流路を内部に備えており、冷却流路に冷却空気を流通させることで翼メタルの温度上昇を抑制している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-177377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスタービンにおける効率向上の観点からは、タービン動翼の冷却空気の流量を抑制することが望ましい。そのため、タービン動翼の冷却空気の流量を抑制しつつもタービン動翼に作用する応力を低減することが求められている。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、タービン動翼に作用する応力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るタービン動翼は、
複数の冷却流路を内部に有する翼型部を含む翼体、
を備え、
前記複数の冷却流路は、前記翼型部の後縁側から順に、
翼高さ方向に延在し、翼の根元で開口する第3冷却流路と、
前記翼高さ方向に延在し、前記第3冷却流路よりも前記翼型部の前縁側で形成されていて、前記翼型部の先端側の第2折り返し流路で前記第3冷却流路と接続されている第2冷却流路と、
前記翼高さ方向に延在し、前記第2冷却流路よりも前記前縁側で形成されていて、前記翼型部の基端側の第1折り返し流路で前記第2冷却流路と接続されている第1冷却流路と、
を含み、
前記第1冷却流路と前記第2冷却流路とを仕切る仕切り壁、
を備え、
前記仕切り壁は、前記翼体の腹側壁部の腹側内壁面及び前記翼体の背側壁部の背側内壁面とフィレット部を介して接続されており、
前記フィレット部は、
前記腹側内壁面のうち前記第1冷却流路を区画する第1腹側内壁面と、前記仕切り壁の前縁側壁面とを接続する第1腹側フィレット部と、
前記背側内壁面のうち前記第1冷却流路を区画する第1背側内壁面と、前記仕切り壁の前縁側壁面とを接続する第1背側フィレット部と、
前記腹側内壁面のうち前記第2冷却流路を区画する第2腹側内壁面と、前記仕切り壁の後縁側壁面とを接続する第2腹側フィレット部と、
前記背側内壁面のうち前記第2冷却流路を区画する第2背側内壁面と、前記仕切り壁の後縁側壁面とを接続する第2背側フィレット部と、
を含み、
前記第1腹側フィレット部、及び、前記第2腹側フィレット部は、前記翼高さ方向の少なくとも前記基端側の領域の一部において、前記先端側から前記基端側に向かうにつれてフィレット半径が漸増する。
【0007】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンは、
上記(1)の構成のタービン動翼を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、タービン動翼に作用する応力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】幾つかの実施形態に係るガスタービンの概略構成図である。
図2】幾つかの実施形態に係るタービン動翼を周方向から見た模式図である。
図3A】幾つかの実施形態に係るタービン動翼についての翼型部のキャンバーラインに沿った断面を模式的に示した図である。
図3B図3Aの要部拡大図である。
図3C図3BのC-C矢視断面図である。
図3D図3BのD-D矢視断面図である。
図4】幾つかの実施形態に係るタービン動翼の基端近傍の翼型部の模式的な断面図であり、図3AのIV-IV矢視断面を模式的に示している。
図5図3CのV-V矢視図である。
図6図3CのVI-VI矢視図である。
図7】他の実施形態に係るタービン動翼についての翼型部のキャンバーラインに沿った断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
(ガスタービン1の全体構成について)
最初に、幾つかの実施形態に係るタービン動翼が適用されるガスタービンの構成について、図1を参照して説明する。図1は、幾つかの実施形態に係るガスタービン1の概略構成図である。
【0012】
図1に示すように、幾つかの実施形態に係るガスタービン1は、圧縮空気を生成するための圧縮機2と、圧縮空気及び燃料を用いて燃焼ガスを発生させるための燃焼器4と、燃焼ガスによって回転駆動されるように構成されたタービン6と、を備える。発電用のガスタービン1の場合、タービン6には不図示の発電機が連結され、タービン6の回転エネルギーによって発電が行われるように構成されている。
【0013】
図1に示すガスタービン1では、圧縮機2は、中心軸AXを中心に回転可能なロータ30と、ロータ30の周囲に配置されるステータ5とを備えている。
【0014】
ステータ5は、圧縮機車室(ケーシング)10と、圧縮機車室10側に固定された複数の圧縮機静翼16とを有する。
ロータ30は、中心軸AXを中心に回転可能なロータシャフト8と、ロータシャフト8に固定された複数のロータディスク31と、複数のロータディスク31のそれぞれに取り付けられた複数の圧縮機動翼18とを有する。
ロータシャフト8は、圧縮機車室10及び後述するタービン車室22を共に貫通するように設けられている。
【0015】
圧縮機動翼18は、複数のロータディスク31のそれぞれの外周部において中心軸AXの周方向に複数配置される。また、ロータディスク31は、中心軸AXと平行な方向に間隔を空けて複数段配置される。したがって、圧縮機動翼18は、中心軸AXと平行な方向に間隔を空けて複数段配置される。
【0016】
圧縮機静翼16は、中心軸AXの周方向に複数配置される。また、圧縮機静翼16は、中心軸AXと平行な方向に間隔を空けて複数段配置される。圧縮機静翼16は、中心軸AXと平行な方向に関して圧縮機動翼18の間に配置されるように複数段配置される。
【0017】
また、図1に示すガスタービン1では、圧縮機2は、圧縮機車室10の入口側に設けられ、空気を取り込むための空気取入口12と、空気取入口12側に設けられた入口案内翼14とを備えている。なお、圧縮機2は、不図示の抽気室等の他の構成要素を備えていてもよい。このような圧縮機2において、空気取入口12から取り込まれた空気は、複数の圧縮機静翼16及び複数の圧縮機動翼18を通過して圧縮されることで圧縮空気が生成される。そして、圧縮空気は圧縮機2から下流側の燃焼器4に送られる。
【0018】
図1に示すガスタービン1では、燃焼器4は、ケーシング(燃焼器車室)20内に配置される。図1に示すように、燃焼器4は、ケーシング20内にロータシャフト8を中心として環状に複数配置されていてもよい。燃焼器4には燃料と圧縮機2で生成された圧縮空気とが供給され、燃料を燃焼させることによって、タービン6の作動流体である高温高圧の燃焼ガスを発生させる。そして、燃焼ガスは燃焼器4から後段のタービン6に送られる。
【0019】
図1に示すガスタービン1では、タービン6は、中心軸AXを中心に回転可能なロータ33と、ロータ33の周囲に配置されるステータ7とを備えている。
ステータ7は、タービン車室(ケーシング)22と、タービン車室22側に固定された複数のタービン静翼26とを有する。
【0020】
ロータ33は、上述したロータシャフト8と、ロータシャフト8に固定された複数のロータディスク35と、複数のロータディスク35のそれぞれに取り付けられた複数のタービン動翼24とを有する。
【0021】
タービン動翼24は、複数のロータディスク35のそれぞれの外周部において中心軸AXの周方向に複数配置される。また、ロータディスク35は、中心軸AXと平行な方向に間隔を空けて複数段配置される。したがって、タービン動翼24は、中心軸AXと平行な方向に間隔を空けて複数段配置される。
【0022】
タービン静翼26は、中心軸AXの周方向に複数配置される。また、タービン静翼26は、中心軸AXと平行な方向に間隔を空けて複数段配置される。タービン静翼26は、中心軸AXと平行な方向に関してタービン動翼24の間に配置されるように複数段配置される。
【0023】
なお、タービン6では、ロータシャフト8は、軸方向(図1における左右方向)に延在し、燃焼ガスは、燃焼器4側から排気車室28側(図1における左側から右側)に向かって流れる。したがって、図1では、図示左側が軸方向上流側であり、図示右側が軸方向下流側である。また、以下の説明では、単に軸方向と記載した場合、中心軸AXと平行な方向を表し、単に径方向と記載した場合、中心軸AXを中心とする径方向を表すものとする。以下の説明では、ロータの周方向、又は単に周方向と記載した場合、中心軸AXを中心とする周方向を表すものとする。
【0024】
タービン動翼24は、タービン静翼26とともにタービン車室22内を流れる高温高圧の燃焼ガスから回転駆動力を発生させるように構成される。この回転駆動力がロータシャフト8に伝達されることで、ロータシャフト8に連結された不図示の発電機が駆動される。
【0025】
タービン車室22の軸方向下流側には、排気車室28を介して排気室29が連結されている。タービン6を駆動した後の燃焼ガスは、排気車室28及び排気室29を通って外部へ排出される。
【0026】
(タービン動翼24の構成)
次に、幾つかの実施形態に係るタービン動翼24について説明する。
図2は、幾つかの実施形態に係るタービン動翼24を周方向から見た模式図である。
図3Aは、幾つかの実施形態に係るタービン動翼24についての翼型部44のキャンバーラインに沿った断面を模式的に示した図である。
図3Bは、図3Aの要部拡大図であり、図3CのIIIB-IIIB矢視図でもある。
図3Cは、図3BのC-C矢視断面図である。
図3Dは、図3BのD-D矢視断面図である。
図4は、幾つかの実施形態に係るタービン動翼24の基端44b近傍の翼型部44の模式的な断面図であり、図3AのIV-IV矢視断面を模式的に示している。
図5は、図3CのV-V矢視図である。
図6は、図3CのVI-VI矢視図である。
図7は、他の実施形態に係るタービン動翼24Aについての翼型部44のキャンバーラインに沿った断面を模式的に示した図である。
【0027】
図2から図4、及び図7に示すように、一実施形態に係るタービン動翼24は、プラットフォーム42と、プラットフォーム42を挟んで翼高さ方向において互いに反対側に位置する翼型部44及び翼根部47と、プラットフォーム42と翼根部47との間に位置するシャンク48と、を備えている。翼型部44、プラットフォーム42、翼根部47及びシャンク48は、鋳造等により一体的に構成されていてもよい。
なお、タービン動翼24がロータディスク35に取り付けられた状態では、タービン動翼24の翼高さ方向は、径方向と一致する。以下の説明では、翼高さ方向における先端44a側は、タービン動翼24がロータディスク35に取り付けられたときの径方向外側であり、翼高さ方向における基端44b側は、タービン動翼24がロータディスク35に取り付けられたときの径方向内側であるものとする。また、以下の説明では、翼高さ方向における先端44a側を単に先端44a側とも称し、翼高さ方向における基端44b側を単に基端44b側とも称する。
【0028】
翼型部44は、ロータディスク35に対して翼高さ方向に延在するように設けられている。翼型部44は、翼高さ方向に沿って延びる前縁45及び後縁46を有するとともに、前縁45と後縁46との間において延在する腹側翼面(圧力面)41及び背側翼面(負圧面)43を有する。
【0029】
タービン6において、翼根部47は、ロータディスク35に設けられた翼溝部37に係合されている。このようにして、タービン動翼24は、タービン6のロータディスク35に植設され、中心軸AXを中心にロータディスク35とともに回転するようになっている。
【0030】
幾つかの実施形態に係るタービン動翼24では、図3A及び図7に示すように、翼中央部分から前縁45に向かって蛇行しながら延びる蛇行流路(前縁側蛇行流路51)と、翼中央部分から後縁46に向かって蛇行しながら延びる蛇行流路(後縁側蛇行流路52)とを有する。幾つかの実施形態に係るタービン動翼24では、前縁側蛇行流路51、及び後縁側蛇行流路52は、互いに独立した流路である。
幾つかの実施形態に係るタービン動翼24では、前縁側蛇行流路51、及び後縁側蛇行流路52を構成する流路である、例えば6つの冷却流路60が前縁45側から順に設けられており、最後縁側は多数のピンフィン68が設けられた冷却流路67が設けられている。
【0031】
幾つかの実施形態に係るタービン動翼24では、前縁45側から順に設けられた3つの冷却流路60は、順次連結されて、翼中央部分から前縁45に向かって蛇行しながら延びる蛇行流路(前縁側蛇行流路51)を構成する。また、幾つかの実施形態に係るタービン動翼24では、前縁側蛇行流路51よりも後縁46側に設けられた3つの冷却流路60は、後縁46に向かって順次連結された蛇行流路(後縁側蛇行流路52)を構成する。
【0032】
前縁側蛇行流路51を構成する3つの冷却流路60は、後縁46側から順に、翼高さ方向に延在する第3冷却流路63、翼高さ方向に延在し、第3冷却流路63よりも前縁45側で形成されていて、翼型部44の先端44a側の第2折り返し流路72で第3冷却流路63と接続されている第2冷却流路62、及び、翼高さ方向に延在し、第2冷却流路62よりも前縁45側で形成されていて、翼型部の基端44b側の第1折り返し流路71で第2冷却流路62と接続されている第1冷却流路61、である。
なお、前縁側蛇行流路51は、第1折り返し流路71及び第2折り返し流路72を含んでいる。
図3B図5、及び図6では、第1冷却流路61と第1折り返し流路71との接続位置P1、及び、第2冷却流路62と第1折り返し流路71との接続位置P2を一点鎖線にて表している。
【0033】
後縁側蛇行流路52を構成する3つの冷却流路60は、前縁45側から順に、翼高さ方向に延在する第4冷却流路64、翼高さ方向に延在し、第4冷却流路64よりも後縁46側で形成されていて、翼型部44の先端44a側の第3折り返し流路73で第4冷却流路64と接続されている第5冷却流路65、及び、翼高さ方向に延在し、第5冷却流路65よりも後縁46側で形成されていて、翼型部44の基端44b側の第4折り返し流路74で第5冷却流路65と接続されている第6冷却流路66、である。
なお、後縁側蛇行流路52は、第3折り返し流路73及び第4折り返し流路74を含んでいる。
【0034】
第1冷却流路61と第2冷却流路62とは、第1仕切り壁91で仕切られており、第2冷却流路62と第3冷却流路63とは、第2仕切り壁92で仕切られている。第3冷却流路63と第4冷却流路64とは、第3仕切り壁93で仕切られており、第4冷却流路64と第5冷却流路65とは、第4仕切り壁94で仕切られており、第5冷却流路65と第6冷却流路66とは、第5仕切り壁95で仕切られている。
【0035】
前縁側蛇行流路51を構成する第3冷却流路63は、一端側(入口側)の開口である開口部63aが翼の根元、すなわち翼根部47の底部47aに形成されている。同様に、後縁側蛇行流路52を構成する第4冷却流路64は、一端側(入口側)の開口である開口部64aが翼根部47の底部47aに形成されている。
【0036】
幾つかの実施形態に係るタービン動翼24は、フィルム冷却空気を吹き出すフィルム冷却孔として、前縁45の近傍に開口する複数の冷却孔69を有する。例えば、複数の冷却孔69は第1冷却流路61に接続されている。
【0037】
幾つかの実施形態に係るタービン動翼24では、前縁側蛇行流路51において、冷却空気の取り入れ口である開口部63aから供給した冷却空気は、第3冷却流路63から第2冷却流路62を経由して第1冷却流路61に向かって、すなわち前縁45に向かって流れる。
【0038】
第1冷却流路61に流入した冷却空気の一部は、複数の冷却孔69からフィルム冷却空気81として吹き出して翼型部44を外部からフィルム冷却する。また、第1冷却流路61に流入した冷却空気の一部は、翼型部44の先端44aに形成された開口61aからタービン動翼24の外部に吹き出す。
【0039】
幾つかの実施形態に係るタービン動翼24では、後縁側蛇行流路52において、冷却空気の取り入れ口である開口部64aから供給した冷却空気は、第4冷却流路64から第5冷却流路65及び第6冷却流路66を順に経由して冷却流路67に向かって、すなわち後縁46に向かって流れる。この冷却空気は、多数のピンフィン68が設けられた冷却流路67から後縁吹き出し空気82となって吹き出す。
このように幾つかの実施形態に係るタービン動翼24は、複数の冷却流路60を内部に有する翼型部44を含む翼体49を備える。
【0040】
(第1冷却流路61第2冷却流路62、及び第1仕切り壁91について)
第1冷却流路61第2冷却流路62、及び第1仕切り壁91についてさらに詳しく説明する。
幾つかの実施形態に係るタービン動翼24では、第1仕切り壁91は、翼体49の腹側壁部49Pの腹側内壁面49Ps及び翼体49の背側壁部49Sの背側内壁面49Ssとフィレット部110を介して接続されている。
なお、幾つかの実施形態に係るタービン動翼24では、翼体49の腹側壁部49Pは、翼型部44の腹側翼壁96及び腹側翼壁96から連なるタービン動翼24の底部47a側の壁部を含み、翼体49の背側壁部49Sは、翼型部44の背側翼壁97及び背側翼壁97から連なるタービン動翼24の底部47a側の壁部を含む。
【0041】
フィレット部110は、腹側内壁面49Psのうち第1冷却流路61を区画する第1腹側内壁面49Ps1と、第1仕切り壁91の前縁側壁面91Lとを接続する第1腹側フィレット部111Pを含む。フィレット部110は、背側内壁面49Ssのうち第1冷却流路61を区画する第1背側内壁面49Ss1と、第1仕切り壁91の前縁側壁面91Lとを接続する第1背側フィレット部111Sを含む。
フィレット部110は、腹側内壁面49Psのうち第2冷却流路62を区画する第2腹側内壁面49Ps2と、第1仕切り壁91の後縁側壁面91Tとを接続する第2腹側フィレット部112Pを含む。フィレット部110は、背側内壁面49Ssのうち第2冷却流路62を区画する第2背側内壁面49Ss2と、第1仕切り壁91の後縁側壁面91Tとを接続する第2背側フィレット部112Sを含む。
【0042】
フィレット部110は、腹側内壁面49Psのうち第1折り返し流路71を区画する第3腹側内壁面49Ps3と、第1仕切り壁91の基端部91aの端面91asとを接続する第3腹側フィレット部113Pと、背側内壁面49Ssのうち第1折り返し流路71を区画する第3背側内壁面49Ss3と、基端部91aの端面91asとを接続する第3背側フィレット部113Sと、を含んでいる。第1腹側フィレット部111Pと第2腹側フィレット部112Pとは、第3腹側フィレット部113Pを介して接続されている。第1背側フィレット部111Sと第2背側フィレット部112Sとは、第3背側フィレット部113Sを介して接続されている。
【0043】
なお、図5には、第1腹側フィレット部111P、第2腹側フィレット部112P、及び第3腹側フィレット部113Pの腹側の端部の形状が図中央のハッチングを付した領域として現れており、図6には、第1背側フィレット部111S、第2背側フィレット部112S、及び第3背側フィレット部113Sの背側の端部の形状が図中央のハッチングを付した領域として現れている。
【0044】
幾つかの実施形態に係るタービン動翼24では、翼の根元の開口部63aから第3冷却流路63に冷却空気を供給して、第3冷却流路63から第2冷却流路62、第2冷却流路62から第1冷却流路61へと順次冷却空気を流通させて翼体49を冷却できる。冷却空気は、各冷却流路63、62、61を順次流れることで温度が上昇する。そのため、翼体49の温度は、第3冷却流路63から前縁45側に向かうにつれて高くなる傾向がある。
また、前縁45から後縁46までの翼型部44の表面に沿った長さは、翼型部44の腹側よりも背側の方が長い。そのため、タービン動翼24の温度上昇により熱膨張が生じると、腹側壁部49Pの翼弦方向への熱膨張量が背側壁部49Sの翼弦方向への熱膨張量よりも大きいため、腹側壁部49Pの応力が高くなる傾向がある。
【0045】
そこで、腹側壁部49Pの応力を低減すべく、幾つかの実施形態に係るタービン動翼24では、第1腹側フィレット部111P、及び、第2腹側フィレット部112Pは、翼高さ方向の少なくとも基端44b側の領域の一部において、先端44a側から基端44b側に向かうにつれてフィレット半径Rが漸増するようにタービン動翼24を構成した。
これにより、翼体49の腹側壁部49Pの腹側内壁面49Psと第1仕切り壁91との接続部、すなわちフィレット部110に生じる応力の集中を基端44b側で緩和でき、タービン動翼24、24Aに作用する応力を低減できる。
【0046】
同様に、幾つかの実施形態に係るタービン動翼24では、第1背側フィレット部111S、及び、第2背側フィレット部112Sは、翼高さ方向の少なくとも基端44b側の領域の一部において、先端44a側から基端44b側に向かうにつれてフィレット半径Rが漸増するとよい。
これにより、翼体49の背側壁部49Sの背側内壁面49Ssと第1仕切り壁91との接続部、すなわちフィレット部110に生じる応力の集中を基端44b側で緩和でき、タービン動翼24、24Aに作用する応力を低減できる。
【0047】
幾つかの実施形態に係るタービン動翼24では、第3腹側フィレット部113Pと第1腹側フィレット部111Pとの接続位置121Pにおける第1腹側フィレット部111Pのフィレット半径R1Pは、第3腹側フィレット部113Pのフィレット半径R3Pと等しい。第3腹側フィレット部113Pと第2腹側フィレット部112Pとの接続位置122Pにおける第2腹側フィレット部112Pのフィレット半径R2Pは、第3腹側フィレット部113Pのフィレット半径R3Pと等しい。
これにより、第1腹側フィレット部111Pと第3腹側フィレット部113Pとの接続部131P、及び、第2腹側フィレット部112Pと第3腹側フィレット部113Pとの接続部132Pでフィレット半径Rの急変がないので、第1腹側フィレット部111Pと第3腹側フィレット部113Pとの接続部131P、及び、第2腹側フィレット部112Pと第3腹側フィレット部113Pとの接続部132Pの応力の集中が生じ難くなるので、タービン動翼24に作用する応力を低減できる。
【0048】
同様に、幾つかの実施形態に係るタービン動翼24では、第3背側フィレット部113Sと第1背側フィレット部111Sとの接続位置121Sにおける第1背側フィレット部111Sのフィレット半径R1Sは、第3背側フィレット部113Sのフィレット半径R3Sと等しい。第3背側フィレット部113Sと第2背側フィレット部112Sとの接続位置122Sにおける第2背側フィレット部112Sのフィレット半径R2Sは、第3背側フィレット部113Sのフィレット半径R3Sと等しい。
これにより、第1背側フィレット部111Sと第3背側フィレット部113Sとの接続部131S、及び、第2背側フィレット部112Sと第3背側フィレット部113Sとの接続部132Sでフィレット半径Rの急変がないので、第1背側フィレット部111Sと第3背側フィレット部113Sとの接続部131S、及び、第2背側フィレット部112Sと第3背側フィレット部113Sとの接続部132Sの応力の集中が生じ難くなるので、タービン動翼24に作用する応力を低減できる。
【0049】
上述したように前縁45から後縁46までの翼型部44の表面に沿った長さが翼型部44の背側よりも腹側の方が短いため、翼体49の腹側壁部49Pの腹側内壁面49Psの面積は翼体49の背側壁部49Sの背側内壁面49Ssよりも小さい。さらに翼体49の腹側壁部49Pの湾曲した形状のため、第1腹側内壁面49Ps1よりも第2腹側内壁面49Ps2の方が腹側内壁面49Psの面積が小さい。そのため、第1腹側内壁面49Ps1よりも第2腹側内壁面49Ps2の方が強度の余裕が小さくなる場合がある。
一方、第1冷却流路61は冷却空気の流れに関して第2冷却流路62の下流側になる。そのため、第1冷却流路61を流れる冷却空気の温度は第2冷却流路62を流れる冷却空気の温度よりも高い。そのため、第2腹側内壁面49Ps2よりも第1腹側内壁面49Ps1の方が強度の余裕が小さくなる場合がある。
【0050】
そこで、幾つかの実施形態に係るタービン動翼24では、第2冷却流路62を先端44a側から基端44b側に向かって辿って行ったときに第2腹側フィレット部112Pにおいてフィレット半径R2Pが漸増を開始する腹側第2位置142Pは、第1冷却流路61を先端44a側から基端44b側に向かって辿って行ったときに第1腹側フィレット部111Pにおいてフィレット半径R1Pが漸増を開始する腹側第1位置141Pと異なっていてもよい。
これにより、第1腹側内壁面49Ps1及び第2腹側内壁面49Ps2の強度の余裕の度合いに応じて腹側第1位置141Pと腹側第2位置142Pとを異ならせることで、第1腹側フィレット部111P及び第2腹側フィレット部112Pに生じる応力の集中を効果的に緩和できる。
【0051】
同様に、幾つかの実施形態に係るタービン動翼24では、第2冷却流路62を先端44a側から基端44b側に向かって辿って行ったときに第2背側フィレット部112Sにおいてフィレット半径R2Sが漸増を開始する背側第2位置142Sは、第1冷却流路61を先端44a側から基端44b側に向かって辿って行ったときに第1背側フィレット部111Sにおいてフィレット半径R1Sが漸増を開始する背側第1位置141Sと異なっていてもよい。
これにより、第1背側内壁面49Ss1及び第2背側内壁面49Ss2の強度の余裕の度合いに応じて背側第1位置141Sと背側第2位置142Sとを異ならせることで、第1背側フィレット部111S及び第2背側フィレット部112Sに生じる応力の集中を効果的に緩和できる。
【0052】
上述したように前縁45から後縁46までの翼型部44の表面に沿った長さが翼型部44の背側よりも腹側の方が短いため、翼体49の腹側壁部49Pの腹側内壁面49Psの面積は翼体49の背側壁部49Sの背側内壁面49Ssよりも小さい。さらに翼体49の腹側壁部49Pの湾曲した形状のため、第1腹側内壁面49Ps1よりも第2腹側内壁面49Ps2の方が内壁面の面積が小さい。そのため、第1腹側内壁面49Ps1よりも第2腹側内壁面49Ps2の方が強度の余裕が小さくなる場合がある。
また、第1冷却流路61が比較的前縁45に近い位置に形成されている場合、例えば図4に示すように翼高さ方向に直交する断面に表れる冷却流路60の流路面積は、第1冷却流路61の方が第2冷却流路62よりも小さくなる。そのため、第1冷却流路61の流路面積を確保する観点から、腹側第1位置141Pは、できるだけ第1仕切り壁91の基端部91aに近い位置であることが望ましい。
【0053】
そこで、幾つかの実施形態に係るタービン動翼24では、腹側第2位置142Pは、腹側第1位置141Pよりも先端44a側に位置するとよい。
これにより、第2冷却流路62におけるフィレット半径Rが大きくなる領域を第1冷却流路61におけるフィレット半径Rが大きくなる領域よりも大きくすることができ、第2腹側フィレット部112Pに生じる応力の集中を効果的に緩和できる。
さらに幾つかの実施形態に係るタービン動翼24によれば、腹側第1位置141Pが腹側第2位置142Pよりも基端44b側に位置することで、第1冷却流路61の流路面積を確保し易くなる。
【0054】
同様に、幾つかの実施形態に係るタービン動翼24では、第2冷却流路62を先端44a側から基端44b側に向かって辿って行ったときに第2背側フィレット部112Sにおいてフィレット半径R2Sが漸増を開始する背側第2位置142Sは、第1冷却流路61を先端44a側から基端44b側に向かって辿って行ったときに第1背側フィレット部111Sにおいてフィレット半径R1Sが漸増を開始する背側第1位置141Sよりも先端44a側に位置していてもよい。
これにより、背側第1位置141Sが背側第2位置142Sよりも基端44b側に位置することで、第1冷却流路61の流路面積を確保し易くなる。
【0055】
フィレット半径Rが大きくなるほど、フィレット部110への応力集中を緩和できる。しかし、フィレット半径Rが大きくなるほど、翼高さ方向に直交する断面に表れる冷却流路60の流路面積は小さくなる。そのため、フィレット部110への応力集中の緩和と冷却流路60の流路面積の確保とは、フィレット半径Rに関してトレードオフの関係にある。
【0056】
そこで、幾つかの実施形態に係るタービン動翼24では、第1腹側フィレット部111P、及び、第2腹側フィレット部112Pは、翼高さ方向の少なくとも基端44b側の領域の一部において、先端44a側から基端44b側に向かうにつれてフィレット半径Rが0.5mm以上4.0mm以下の範囲内で漸増するとよい。
このように、フィレット半径Rを漸増させる際のフィレット半径Rの下限を0.5mmとし、上限を4.0mmとすることで、フィレット部110への応力集中の緩和と冷却流路60の流路面積の確保との両立を図ることができる。
【0057】
図3A、及び図7に示すように、幾つかの実施形態に係るタービン動翼24では、翼型部44は、前縁側蛇行流路51とは独立した流路であって、前縁側蛇行流路51よりも後縁46側において後縁46側に向かって蛇行しながら延びる後縁側蛇行流路52を内部に有するとよい。
これにより、翼型部44の前縁45側の領域を前縁側蛇行流路51に冷却空気を流通させることで冷却でき、翼型部44の後縁46側の領域を後縁側蛇行流路52に冷却空気を流通させることで冷却できる。
【0058】
図3Aに示すように、幾つかの実施形態に係るタービン動翼24では、第1冷却流路61は、翼型部44の前縁45側の翼壁44Wを介して前縁45と隣り合っているとよい。
これにより、第1冷却流路61とは独立した流路であって、翼高さ方向に延在し、第1冷却流路61よりも前縁45側で形成されている冷却流路60を翼型部44が有する場合と比べて、翼型部44の冷却のために使用される冷却空気の空気量を低減できる。
【0059】
また、図7に示すように、幾つかの実施形態に係るタービン動翼24Aでは、複数の冷却流路60は、第1冷却流路61とは独立した流路であって、翼高さ方向に延在し、第1冷却流路61よりも前縁45側で形成されている冷却流路85を含んでいてもよい。
例えば図7に示すタービン動翼24Aでは、冷却流路85は、一端側(入口側)の開口である開口部85aが翼の根元、すなわち翼根部47の底部47aに形成されている。図7に示すタービン動翼24Aでは、複数の冷却孔69は冷却流路85に接続されている。
【0060】
図7に示すタービン動翼24Aでは、冷却流路85において、冷却空気の取り入れ口である開口部85aから供給した冷却空気は、基端44b側から先端44a側に向かって流れる。
冷却流路85に流入した冷却空気の一部は、複数の冷却孔69からフィルム冷却空気81として吹き出して翼型部44を外部からフィルム冷却する。また冷却流路85に流入した冷却空気の一部は、翼型部44の先端44aに形成された開口85bからタービン動翼24Aの外部に吹き出す。
【0061】
図7に示すタービン動翼24Aによれば、翼型部44の前縁45側の領域の翼メタルの温度上昇を一層抑制できる。
【0062】
幾つかの実施形態に係るガスタービン1は、上述した幾つかの実施形態に係るタービン動翼24を備えるので、タービン動翼24、24Aに作用する応力を低減できる。
これにより、ガスタービン1のメンテナンス頻度を抑制でき、ガスタービン1のメンテナンスコストを抑制できる。
【0063】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0064】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るタービン動翼24、24Aは、複数の冷却流路60を内部に有する翼型部44を含む翼体49、を備える。複数の冷却流路60は、翼型部44の後縁46側から順に、翼高さ方向に延在し、翼の根元(底部47a)で開口する第3冷却流路63と、翼高さ方向に延在し、第3冷却流路63よりも翼型部44の前縁45側で形成されていて、翼型部44の先端44a側の第2折り返し流路72で第3冷却流路63と接続されている第2冷却流路62と、翼高さ方向に延在し、第2冷却流路62よりも前縁45側で形成されていて、翼型部44の基端44b側の第1折り返し流路71で第2冷却流路62と接続されている第1冷却流路61と、を含む。本開示の少なくとも一実施形態に係るタービン動翼24、24Aは、第1冷却流路61と第2冷却流路62とを仕切る仕切り壁(第1仕切り壁91)、を備える。仕切り壁(第1仕切り壁91)は、翼体49の腹側壁部49Pの腹側内壁面49Ps及び翼体の背側壁部49Sの背側内壁面49Ssとフィレット部110を介して接続されている。フィレット部110は、腹側内壁面49Psのうち第1冷却流路61を区画する第1腹側内壁面49Ps1と、仕切り壁(第1仕切り壁91)の前縁側壁面91Lとを接続する第1腹側フィレット部111Pを含む。フィレット部110は、背側内壁面49Ssのうち第1冷却流路61を区画する第1背側内壁面49Ss1と、仕切り壁(第1仕切り壁91)の前縁側壁面91Lとを接続する第1背側フィレット部111Sを含む。フィレット部110は、腹側内壁面49Psのうち第2冷却流路62を区画する第2腹側内壁面49Ps2と、仕切り壁(第1仕切り壁91)の後縁側壁面91Tとを接続する第2腹側フィレット部112Pを含む。フィレット部110は、背側内壁面49Ssのうち第2冷却流路62を区画する第2背側内壁面49Ss2と、仕切り壁(第1仕切り壁91)の後縁側壁面91Tとを接続する第2背側フィレット部112Sを含む。第1腹側フィレット部111P、及び、第2腹側フィレット部112Pは、翼高さ方向の少なくとも基端44b側の領域の一部において、先端44a側から基端44b側に向かうにつれてフィレット半径Rが漸増する。
【0065】
上記(1)の構成によれば、先端44a側から基端44b側に向かうにつれてフィレット半径Rが漸増するように第1腹側フィレット部111P、及び、第2腹側フィレット部112Pを構成したので、翼体49の腹側壁部49Pの腹側内壁面49Psと仕切り壁(第1仕切り壁91)との接続部(フィレット部110)に生じる応力の集中を基端44b側で緩和できる。これにより、タービン動翼24、24Aに作用する応力を低減できる。
【0066】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、フィレット部110は、腹側内壁面49Psのうち第1折り返し流路71を区画する第3腹側内壁面49Ps3と、仕切り壁(第1仕切り壁91)の基端部91aの端面91asとを接続する第3腹側フィレット部113Pと、背側内壁面49Ssのうち第1折り返し流路71を区画する第3背側内壁面49Ss3と、端面91asとを接続する第3背側フィレット部113Sと、を含んでいてもよい。第1腹側フィレット部111Pと第2腹側フィレット部112Pとは、第3腹側フィレット部113Pを介して接続されているとよい。第3腹側フィレット部113Pとの接続位置121Pにおける第1腹側フィレット部111Pのフィレット半径R1Pは、第3腹側フィレット部113Pのフィレット半径R3Pと等しいとよい。第3腹側フィレット部113Pとの接続位置122Pにおける第2腹側フィレット部112Pのフィレット半径R2Pは、第3腹側フィレット部113Pのフィレット半径R3Pと等しいとよい。
【0067】
上記(2)の構成によれば、第1腹側フィレット部111Pと第3腹側フィレット部113Pとの接続部131P、及び、第2腹側フィレット部112Pと第3腹側フィレット部113Pとの接続部132Pでフィレット半径Rの急変がないので、第1腹側フィレット部111Pと第3腹側フィレット部113Pとの接続部131P、及び、第2腹側フィレット部112Pと第3腹側フィレット部113Pとの接続部132Pの応力の集中が生じ難くなるので、タービン動翼24に作用する応力を低減できる。
【0068】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、第2冷却流路62を先端44a側から基端44b側に向かって辿って行ったときに第2腹側フィレット部112Pにおいてフィレット半径R2Pが漸増を開始する腹側第2位置142Pは、第1冷却流路61を先端44a側から基端44b側に向かって辿って行ったときに第1腹側フィレット部111Pにおいてフィレット半径R1Pが漸増を開始する腹側第1位置141Pと異なっていてもよい。
【0069】
上記(3)の構成によれば、第1腹側内壁面49Ps1及び第2腹側内壁面49Ps2の強度の余裕の度合いに応じて腹側第1位置141Pと腹側第2位置142Pとを異ならせることで、第1腹側フィレット部111P及び第2腹側フィレット部112Pに生じる応力の集中を効果的に緩和できる。
【0070】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、腹側第2位置142Pは、腹側第1位置141Pよりも先端44a側に位置するとよい。
【0071】
上記(4)の構成によれば、腹側第2位置142Pが腹側第1位置141Pよりも先端側に位置することで、第2冷却流路62におけるフィレット半径Rが大きくなる領域を第1冷却流路61におけるフィレット半径Rが大きくなる領域よりも大きくすることができ、第2腹側フィレット部112Pに生じる応力の集中を効果的に緩和できる。
さらに上記(4)の構成によれば、腹側第1位置141Pが腹側第2位置142Pよりも基端44b側に位置することで、第1冷却流路61の流路面積を確保し易くなる。
【0072】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、第1背側フィレット部111S、及び、第2背側フィレット部112Sは、翼高さ方向の少なくとも基端44b側の領域の一部において、先端44a側から基端44b側に向かうにつれてフィレット半径Rが漸増するとよい。
【0073】
上記(5)の構成によれば、先端44a側から基端44b側に向かうにつれてフィレット半径Rが漸増するように第1背側フィレット部111S、及び、第2背側フィレット部112Sを構成したので、翼体49の背側壁部49Sの背側内壁面49Ssと仕切り壁(第1仕切り壁91)との接続部(フィレット部110)に生じる応力の集中を基端44b側で緩和できる。これにより、タービン動翼24、24Aに作用する応力を低減できる。
【0074】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、第2冷却流路62を先端44a側から基端44b側に向かって辿って行ったときに第2背側フィレット部112Sにおいてフィレット半径R2Sが漸増を開始する背側第2位置142Sは、第1冷却流路61を先端44a側から基端44b側に向かって辿って行ったときに第1背側フィレット部111Sにおいてフィレット半径R1Sが漸増を開始する背側第1位置141Sよりも先端44a側に位置していてもよい。
【0075】
上記(6)の構成によれば、背側第1位置141Sが背側第2位置142Sよりも基端44b側に位置することで、第1冷却流路61の流路面積を確保し易くなる。
【0076】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、第1腹側フィレット部111P、及び、第2腹側フィレット部112Pは、翼高さ方向の少なくとも基端44b側の領域の一部において、先端44a側から基端44b側に向かうにつれてフィレット半径Rが0.5mm以上4.0mm以下の範囲内で漸増するとよい。
【0077】
上記(7)の構成によれば、フィレット半径Rを漸増させる際のフィレット半径Rの下限を0.5mmとし、上限を4.0mmとすることで、フィレット部110への応力集中の緩和と冷却流路60の流路面積の確保との両立を図ることができる。
【0078】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、第1冷却流路61と第2冷却流路62と第3冷却流路63とは、前縁45側に向かって蛇行しながら延びる前縁側蛇行流路51を構成するとよい。翼型部44は、前縁側蛇行流路51とは独立した流路であって、前縁側蛇行流路51よりも後縁46側において後縁46側に向かって蛇行しながら延びる後縁側蛇行流路52を内部に有するとよい。
【0079】
上記(8)の構成によれば、翼型部44の前縁45側の領域を前縁側蛇行流路51に冷却空気を流通させることで冷却でき、翼型部44の後縁46側の領域を後縁側蛇行流路52に冷却空気を流通させることで冷却できる。
【0080】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかの構成において、第1冷却流路61は、翼型部44の前縁45側の翼壁44Wを介して前縁45と隣り合っているとよい。
【0081】
上記(9)の構成によれば、第1冷却流路61とは独立した流路であって、翼高さ方向に延在し、第1冷却流路61よりも前縁45側で形成されている冷却流路85を翼型部44が有する場合と比べて、翼型部44の冷却のために使用される冷却空気の空気量を低減できる。
【0082】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかの構成において、複数の冷却流路60は、第1冷却流路61とは独立した流路であって、翼高さ方向に延在し、第1冷却流路61よりも前縁45側で形成されている冷却流路85を含んでいてもよい。
【0083】
上記(10)の構成によれば、翼型部44の前縁45側の領域の翼メタルの温度上昇を一層抑制できる。
【0084】
(11)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンは、上記(1)乃至(10)の何れかの構成のタービン動翼24、24Aを備える。
【0085】
上記(11)の構成によれば、タービン動翼24、24Aに作用する応力を低減できるので、ガスタービン1のメンテナンス頻度を抑制でき、ガスタービン1のメンテナンスコストを抑制できる。
【符号の説明】
【0086】
1 ガスタービン
6 タービン
ステータ7
24、24A タービン動翼
41 腹側翼面(圧力面)
42 プラットフォーム
43 背側翼面(負圧面)
44 翼型部
44a 先端
44b 基端
44W 翼壁
45 前縁
46 後縁
47 翼根部
48 シャンク
49 翼体
49P 腹側壁部
49Ps 腹側内壁面
49Ps1 第1腹側内壁面
49Ps2 第2腹側内壁面
49Ps3 第3腹側内壁面
49S 背側壁部
49Ss 背側内壁面
49Ss1 第1背側内壁面
49Ss2 第2背側内壁面
49Ss3 第3背側内壁面
51 蛇行流路(前縁側蛇行流路)
52 蛇行流路(後縁側蛇行流路)
60 冷却流路
61 第1冷却流路
62 第2冷却流路
63 第3冷却流路
63a 開口部
64 第4冷却流路
65 第5冷却流路
66 第6冷却流路
67 冷却流路
69 冷却孔
71 第1折り返し流路
72 第2折り返し流路
73 第3折り返し流路
74 第4折り返し流路
85 冷却流路
91 第1仕切り壁
91a 基端部
91as 端面
91L 前縁側壁面
91T 後縁側壁面
92 第2仕切り壁
93 第3仕切り壁
94 第4仕切り壁
95 第5仕切り壁
96 腹側翼壁
97 背側翼壁
110 フィレット部
111P 第1腹側フィレット部
111S 第1背側フィレット部
112P 第2腹側フィレット部
112S 第2背側フィレット部
113P 第3腹側フィレット部
113S 第3背側フィレット部
121P 接続位置
121S 接続位置
122P 接続位置
122S 接続位置
131P 接続部
131S 接続部
132P 接続部
132S 接続部
141P 腹側第1位置
141S 背側第1位置
142P 腹側第2位置
142S 背側第2位置
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7