(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017432
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】除塵装置
(51)【国際特許分類】
E02B 5/08 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
E02B5/08 102Z
E02B5/08 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120060
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野村 章夫
(57)【要約】
【課題】回転式であっても十分な洗浄効果を達成した除塵装置を提供する。
【解決手段】上下一対のスプロケットホイールと、前記スプロケットホイールにより駆動されるキャリングチェーンと、前記キャリングチェーンに設けられ、このキャリングチェーンとともに駆動されて水路の塵芥を除去するスクリーンとを備え、前記上下一対のスプロケットホイールのうち、上方のスプロケットホイールは大気中に設けられるととともに、下方のスプロケットホイールは前記水路中に浸漬され、前記スクリーンの内周側に、水を汲み上げる汲み上げ手段を設け、前記汲み上げ手段は、鉛直上方が開放されることとした。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下一対のスプロケットホイールと、
前記スプロケットホイールにより駆動されるキャリングチェーンと、
前記キャリングチェーンに設けられ、このキャリングチェーンとともに駆動されて水路の塵芥を除去するスクリーンと
を備え、
前記上下一対のスプロケットホイールのうち、上方のスプロケットホイールは大気中に設けられるととともに、下方のスプロケットホイールは前記水路中に浸漬され、
前記スクリーンの内周側に、水を汲み上げる汲み上げ手段を設け、
前記汲み上げ手段は、鉛直上方が開放されること
を特徴とする除塵装置。
【請求項2】
請求項1に記載の除塵装置において、
前記上方スプロケットホイールとともに回転する軸を備え、
前記軸の外周に立板を設け、
前記立板は、前記上方スプロケットホイールの軸方向に延在すること
を特徴とする除塵装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の除塵装置において、
前記キャリングチェーンの内周側に、散水手段を備えたこと
を特徴とする除塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路の塵芥を除去する除塵装置の洗浄に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1の除塵装置にあっては、水中に設けられた固定式の棚板において塵芥を補足し、補足された塵芥を掻き取るレーキ部材を備えている。このレーキ部材は搬送部材によって駆動されるとともに水を汲み上げる水収容部を備えており、この水収容部によって汲み上げられた水が散水されることで、レーキ部材自身を洗浄している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記特許文献1の除塵装置は固定式の棚板により塵芥を捕捉するものであり、チェーンとともに塵芥補足用のスクリーンが回転する回転式の除塵装置には適用できない、という問題があった。
【0005】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、回転式であっても十分な洗浄効果を達成した除塵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上下一対のスプロケットホイールと、前記スプロケットホイールにより駆動されるキャリングチェーンと、前記キャリングチェーンに設けられ、このキャリングチェーンとともに駆動されて水路の塵芥を除去するスクリーンとを備え、前記上下一対のスプロケットホイールのうち、上方のスプロケットホイールは大気中に設けられるととともに、下方のスプロケットホイールは前記水路中に浸漬され、前記スクリーンの内周側に、水を汲み上げる汲み上げ手段を設け、前記汲み上げ手段は、鉛直上方が開放されることとした。
【発明の効果】
【0007】
よって、回転式の除塵装置にあっても十分な洗浄を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】上部スプロケットホイール及び軸を示す図である。
【
図5】上部スプロケットホイールにおける軸の部分断面図である。
【
図7】変形例におけるスプロケットホイール付近の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
[実施形態1]
(全体構成)
図1は本願における除塵装置の全体構成図である。除塵装置1は、上下一対の上部スプロケットホイール10及び下部スプロケットホイール20、スクリーン30、及びキャリングチェーン40を備えている。
【0010】
上部スプロケットホイール10は大気中に設けられ、動力源2の動力により回転されてキャリングチェーン40を駆動する。下部スプロケットホイール20は水路50の水中に設けられ、キャリングチェーン40により駆動される。各スプロケットホイール10,20はそれぞれ軸110,210により支持される。
【0011】
スクリーン30は水路50の流れに対し概略直交する平面状の網であって、水路50に浮遊する塵芥を除去する。このスクリーン30はキャリングチェーン40の外周側に設けられ、各スプロケットホイール10,20とキャリングチェーン40が噛み合う際に干渉しないものとなっている。
【0012】
またスクリーン30は水平方向の両端側(軸110,210の両端側)においてキャリングチェーン40に接続されており(
図3参照)、キャリングチェーン40の駆動・回転に伴ってスクリーン30も移動・回動する。上部スプロケットホイール10は大気中、下部スプロケットホイール20は水路50の水中に設けられている。
【0013】
キャリングチェーン40及びスクリーン30は
図1において時計回りに回転し、水路50の上流側において塵芥を捕捉する。捕捉された塵芥は下流側の大気中にて除去される。スクリーン30が移動・回転しながら水中と大気中を交互に行き来することにより、水路50における塵芥を捕捉、除去可能となっている。
【0014】
なおキャリングチェーン40の内周側であって上部スプロケットホイール10の鉛直下方側には散水ノズル60(散水手段)が設けられている。この散水ノズル60は図外のポンプから水の供給を受け、スクリーン30の裏側に水を散布・洗浄して塵芥を除去する。
【0015】
上部スプロケットホイール10と係合しているキャリングチェーン40は、回転に伴って係合が解かれて離間する。これに伴いスクリーン30と上部スプロケットホイール10も離間する。
【0016】
よって、散水ノズル60を上部スプロケットホイール10の鉛直下方側に設け、上部スプロケットホイール10と離間した後のスクリーン30に対し、内周側から散水・洗浄可能とすることで、効率的に塵芥を除去するものである。本願のような回転式の除塵装置にあってはスクリーン30の外周に塵芥が付着するため、このような内周側からの散水が好適である。
【0017】
(スクリーンの詳細)
図2はスクリーン30の鉛直方向断面図、
図3は正面図である。
図2ではスクリーン30がキャリングチェーン40に係止された状態を示す。スクリーン30は移動・回動方向の両端部31a,31b(例えば
図7参照)付近においてキャリングチェーン40と回動可能に接続する。
【0018】
なお、
図2及び
図3ではスクリーン30が水中から大気中に移動する際の図を示す。したがって、
図2及び
図3における下側が鉛直下方側(下部スプロケットホイール20側)となる。
【0019】
上述のとおりスクリーン30は水中の塵芥を捕捉可能に設けられた網であり、枠31及び網体32を有する。加えてスクリーン30の内周側(キャリングチェーン40の内周側)には水を汲み上げ可能な汲み上げ部材300(汲み上げ手段)が設けられており、スクリーン30が水中から大気中に移動する際に水を汲み上げて保持する。
【0020】
汲み上げ部材300はスクリーン30における枠31の鉛直下方側に固定され、スクリーン30の水平方向に亘って延在するカップ状の部材である。この汲み上げ部材300は鉛直上方側が開口しており、開口部301において水の汲み上げ及び排出を行う。これによりスクリーン30が上部スプロケットホイール10を通過して上下反転する際に内部の水を排出可能となっている。
【0021】
(上部スプロケットホイールにおける軸の詳細)
図4、
図5は上部スプロケットホイール10の軸110を示す図である。
図4(a)は斜視図、
図4(b)は軸方向正面図である。また
図5は軸110の部分断面図である。
上部スプロケットホイール10は歯112を有し、この歯112においてキャリングチェーン40と係合してキャリングチェーン40を駆動する。
【0022】
軸110は両端部において一対の上部スプロケットホイール10と接続し、この上部スプロケットホイール10と一体で回転可能である。また軸110の外周には、軸方向に延在する立板111が設けられている。
【0023】
立板111は軸110の外周側に向けて立ち上がる1枚の板状部材であり、1対の上部スプロケットホール10の間に亘って軸方向に延在している。また立板111の軸方向両端には略三角形状の立板端部113が設けられ、この立板端部113は立板111および軸110と液密に接続する。一方で立板111の径方向外側は開放されており、開放端である立板開口部114が形成される。
【0024】
実施形態1の立板111は、軸110の外周面であって上部スプロケットホイール10の歯間115に対応する位置に設けられている。なお立板111の位置は、回転時に他の部材と干渉しない位置であれば特に限定されない。
【0025】
(立板による水の保持とスクリーンの洗浄)
図6はスクリーン30の洗浄を示す図である。
図6(a)は汲み上げ部材300による水の汲み上げを示し、
図6(b)は汲み上げ部材300からの水の排出及び立板111による水の保持を示す。説明のため、
図6(b)では立板端部113は省略する。
【0026】
汲み上げられた水は、汲み上げ部材300により保持されたままキャリングチェーン40の駆動に伴ってスクリーン30とともに鉛直上方に移動する。スクリーン30が上部スプロケットホイール10を通過する際に汲み上げ部材300の上下が反転し、汲み上げ部材300の開口301から水が排出される。
【0027】
汲み上げ部材300から排出された水は軸110に落下する。ここで軸110には立板111及び立板端部113が設けられているため、排出された水はこの立板111及び立板端部113により保持される。したがって汲み上げられた水が不必要に流出することなく、立板111及び立板端部113によって効率的に保持されることとなる。
【0028】
その後軸110の回転に伴い、立板111の角度が水平に近づくに連れて立板111の開口部114から水が順次排出され、立板開口部114が水平よりも鉛直下方側(
図6(b)参照)を向いたときに全ての水が流出する。その際、キャリングチェーン40は上部スプロケットホイール10との係合が解かれてスクリーン30と軸110とが離間を開始するため(
図6(b)の領域A付近)、スクリーン30の内周側に立板111からの水が散布されることとなり、この水によってスクリーン30が内周側から洗浄される。
【0029】
このように、立板111によってスクリーン30と軸110との離間が開始される位置付近まで水を保持・運搬することが可能となり、スクリーン30を効率的に洗浄することができる。立板111を設けない場合、汲み上げ部材300から排出された水は軸110の表面を伝わってそのまま鉛直下方に流出するためスクリーン30の洗浄にはあまり寄与しないが、本願では立板111によって水が保持されることで、汲み上げた水によってスクリーン30の洗浄を効果的に行うことができるものである。
【0030】
本願のような回転式の除塵装置にあっては、塵芥はスクリーン30の外周に付着するため、内周側から散水できる本願の効果はより顕著である。加えて本願のようにスクリーン30を洗浄するために別途散水ノズル60を設ける場合、汲み上げた水による洗浄効果を見込めるため、散水ノズル60の能力を削減することができる。特にポンプ駆動により散水を行う場合、ポンプの動力を低減して省エネを図ることが可能となっている。
【0031】
(効果)
(1)上下一対のスプロケットホイール10,20と、
スプロケットホイール10,20により駆動されるキャリングチェーン40と、
キャリングチェーン40に設けられ、このキャリングチェーン40とともに駆動されて水路50の塵芥を除去するスクリーン30とを備え、
上下一対のスプロケットホイール10,20のうち、上方のスプロケットホイール10は大気中に設けられるととともに、下方のスプロケットホイール20は水路50中に浸漬され、
スクリーン30の内周側に、水を汲み上げる汲み上げ部材300(汲み上げ手段)を設け、
汲み上げ部材300は、鉛直上方が開放されることとした。
【0032】
スクリーン30は上方スプロケットホイール10を通過する際に上下が逆転する。その際に汲み上げ部材300上方の開口部301から水が排出され、この水によってスクリーン300に付着した塵芥を洗浄することができる。塵芥はスクリーン30の外周側に付着するため、内周側に設けられた汲み上げ部材300から水が解放・散布されることで、効率的に塵芥を除去できるものである
【0033】
(2)上方スプロケットホイール10とともに回転する軸110を備え、軸110の外周に立板111を設け、立板111は、上方スプロケットホイール10の軸方向に延在することとした。
スクリーン30に付着した塵芥の除去にはスクリーン30の裏側からの散水が望ましいが、汲み上げ部材300の水は上方スプロケットホイール10の頂部付近で解放されるためスクリーン30の裏側に供給されづらい。そのため上部スプロケットホイール10の外周に立板111を設けることで汲み上げ部材300から解放された水を一時的に保持し、上方スプロケットホイール10及び軸110の回転に伴って徐々に散水させることで、スクリーン30の裏側に効率よく散水することができる。
【0034】
(3)キャリングチェーン40の内周側に、散水ノズル60(散水手段)を備えた。
ポンプ駆動の散水ノズル60と併せることで、より効率的にスクリーン30の洗浄を行うことができる。また、汲み上げ部材300からの散水によりスクリーン30の塵芥が一定程度除去されるため、ポンプ駆動の散水ノズル60による散水を低減させてもスクリーン30の洗浄が可能となる。よってポンプ出力を抑制して省エネを図ることができる。
【0035】
(変形例)
図7は変形例におけるスプロケットホイール付近の部分断面図である。
図7においては軸110に設けられる立板の形状を変更して立板111’とする。上述の実施形態1における立板111は径方向外側に立ち上がる板であったが、変形例の立板111’では径方向先端部分を軸110の回転方向に曲げている。
これにより立板111’による水の保持効果がより向上するものである。また
図7のように、立板111’を上部スプロケットホイール10の歯112と対応する位置に設けてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 除塵装置
2 動力源
10 上部スプロケットホイール
20 下部スプロケットホイール
30 スクリーン
31 枠
31a,31b 両端部
32 網
40 キャリングチェーン
50 水路
60 散水ノズル(散水手段)
110 軸
111 立板
112 歯
113 立板端部
114 立板開口部
115 歯間
210 軸
300 汲み上げ部材(汲み上げ手段)
301 開口部