(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017433
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】複座弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 1/48 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
F16K1/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120062
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】神丸 直毅
【テーマコード(参考)】
3H052
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA26
3H052CD02
(57)【要約】
【課題】容易かつ確実に複数の弁を同時に閉弁することが可能な複座弁装置を提供すること。
【解決手段】レバーフロート式ドレントラップ1の弁室15内には閉塞部40が設けられており、この閉塞部40に形成された第1弁開口43及び第2弁開口44から、流出口11bに向けて弁室15内のドレンが排出される。第1弁開口43及び第2弁開口44は、各々弁棒20に設けられた第1弁体プラグ21及び第2弁体プラグ22によって開閉される。第1弁体プラグ21は弁棒20に固定されているのに対し、第2弁体プラグ22は弁棒20上で矢印93、94方向に移動可能であり、付勢板28の板バネ28aによって矢印94方向に付勢されている。このため、第2弁体プラグ22が板バネ28aの付勢に抗い板バネ28aを圧縮させ、第1弁体プラグ21と第2弁体プラグ22との位置関係のずれを吸収することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一弁口を形成する第一弁座手段及び第二弁口を形成する第二弁座手段を有する弁本体、
前記弁本体に設けられた第一弁体手段であって、閉弁方向に移動することによって、前記第一弁座手段に接して前記第一弁口を閉弁し、開弁方向に移動することによって、前記第一弁座手段から離れて前記第一弁口を開弁する第一弁体手段、
前記弁本体に設けられた第二弁体手段であって、閉弁方向に移動することによって、前記第二弁座手段に接して前記第二弁口を閉弁し、開弁方向に移動することによって、前記第二弁座手段から離れて前記第二弁口を開弁する第二弁体手段、
前記第一弁体手段と前記第二弁体手段とを連結する連結手段であって、前記弁本体に対して往復移動が可能であり、当該往復移動によって、前記第一弁体手段及び前記第二弁体手段を前記閉弁方向又は前記開弁方向に連動させて移動させる連結手段、
を備えた複座弁装置であって、
前記第一弁体手段又は前記第二弁体手段の少なくとも一方は、前記連結手段に対して往復移動が可能な状態で当該連結手段に取り付けられ、前記閉弁方向に向けて付勢されている、
ことを特徴とする複座弁装置。
【請求項2】
請求項1に係る複座弁装置において、
前記連結手段に対して往復移動が可能な状態で当該連結手段に取り付けられた前記第一弁体手段又は前記第二弁体手段は、前記連結手段に設けられた付勢手段によって前記閉弁方向に向けて付勢されている、
ことを特徴とする複座弁装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に係る複座弁装置において、
前記連結手段に対して往復移動が可能な状態で当該連結手段に取り付けられた前記第一弁体手段又は前記第二弁体手段は、前記第一弁座手段又は前記第二弁座手段に接する球面を有しており、
当該球面が接する前記第一弁座手段に形成された前記第一弁口又は前記第二弁座手段に形成された前記第二弁口は、円形状を有している、
ことを特徴とする複座弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は複座弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の弁口を開閉するための複数の弁座及び弁体を備えた弁装置としては、後記特許文献1に開示されたレバーフロート式ドレントラップの複座弁がある。このレバーフロート式ドレントラップには弁室6と出口2とを連通させる弁座部材7が設けられている。そして、弁座部材7の上下には同軸上に開口部を有する第1弁座8及び第2弁座9が設けられている。
【0003】
また、弁座部材7の第1弁座8及び第2弁座9には、それぞれに対応させて、一対の第1プラグ20及び第2プラグ21が配置されている。第1プラグ20及び第2プラグ21は、弁棒18に固定されており、一体的に上下方向に移動することによって第1弁座8及び第2弁座9を同時に開閉する。
【0004】
弁棒18には連結棒16が接続されており、連結棒16はさらに揺動軸12及びレバー13に接続されている。レバー13の先端にはフロート14が固定されており、弁室6内のドレンの水位に応じてフロート14は浮動する。
【0005】
弁室6内のドレンの水位が上昇した場合、フロート14はこれに従って浮上する。フロート14の浮上は、レバー13、揺動軸12及び連結棒16を介して弁棒18に伝達され、弁棒18に固定された第1プラグ20及び第2プラグ21は下方向に移動する。これによって第1弁座8及び第2弁座9は同時に開弁し、弁室6内のドレンは出口2から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前述の特許文献1に開示された複座弁においては、弁棒18に固定された一対の第1プラグ20及び第2プラグ21が一体的に移動し、第1弁座8及び第2弁座9を同時に開閉する。このため、複座弁を確実に閉弁するためには、弁棒18上においてに第1プラグ20と第2プラグ21との位置関係を、第1弁座8及び第2弁座9の間隔に正確に対応させておく必要があり、高度な加工精度が求められる。
【0008】
しかし、実際上、このような高度な加工精度は容易ではなく、第1プラグ20と第2プラグ21との位置関係が不正確になった場合、第1弁座8又は第2弁座9のいずれか一方を閉じることができず、複座弁を確実に閉弁することができないおそれがある。
【0009】
また、第1プラグ20と第2プラグ21との位置関係を正確に加工したとしても、たとえば経年劣化による摩耗や衝撃による変形によって第1プラグ20と第2プラグ21との位置関係にずれが生じ、複座弁を確実に閉弁することができなくなることがある。
【0010】
そこで本願に係る複座弁装置は、これらの問題を解決するため、容易かつ確実に複数の弁を同時に閉弁することが可能な複座弁装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願に係る複座弁装置は、
第一弁口を形成する第一弁座手段及び第二弁口を形成する第二弁座手段を有する弁本体、
前記弁本体に設けられた第一弁体手段であって、閉弁方向に移動することによって、前記第一弁座手段に接して前記第一弁口を閉弁し、開弁方向に移動することによって、前記第一弁座手段から離れて前記第一弁口を開弁する第一弁体手段、
前記弁本体に設けられた第二弁体手段であって、閉弁方向に移動することによって、前記第二弁座手段に接して前記第二弁口を閉弁し、開弁方向に移動することによって、前記第二弁座手段から離れて前記第二弁口を開弁する第二弁体手段、
前記第一弁体手段と前記第二弁体手段とを連結する連結手段であって、前記弁本体に対して往復移動が可能であり、当該往復移動によって、前記第一弁体手段及び前記第二弁体手段を前記閉弁方向又は前記開弁方向に連動させて移動させる連結手段、
を備えた複座弁装置であって、
前記第一弁体手段又は前記第二弁体手段の少なくとも一方は、前記連結手段に対して往復移動が可能な状態で当該連結手段に取り付けられ、前記閉弁方向に向けて付勢されている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願に係る複座弁装置においては、第一弁体手段又は第二弁体手段の少なくとも一方は、連結手段に対して往復移動が可能な状態で当該連結手段に取り付けられ、閉弁方向に向けて付勢されている。
【0013】
したがって、連結手段が移動して第一弁体手段及び第二弁体手段を閉弁方向に連動させて移動させた場合、第一弁体手段又は第二弁体手段の少なくとも一方が付勢に抗って第一弁座手段又は第二弁座手段に接することによって、第一弁体手段と第二弁体手段との位置関係のずれを吸収することができる。このため、容易かつ確実に複数の弁を同時に閉弁することが可能な複座弁装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本願に係る複座弁装置の第1の実施形態であるレバーフロート式ドレントラップ1の全体構成を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す開閉部40近傍の拡大断面図である。
【
図4】
図1に示す第2弁座42及び第2弁体プラグ22近傍の拡大断面図である。
【
図5】本願に係る複座弁装置の第2の実施形態における開閉部40近傍の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る複座弁装置の下記の要素に対応している。
【0016】
レバーフロート式ドレントラップ1・・・複座弁装置
ケーシング11及びケーシング蓋12・・・弁本体
弁棒20・・・連結手段
第1弁体プラグ21、71・・・第一弁体手段
第2弁体プラグ22・・・第二弁体手段
プラグ球面22a、71a・・・球面
板バネ28a、77a・・・付勢手段
第1弁座41・・・第一弁座手段
第2弁座42・・・第二弁座手段
第1弁開口43・・・第一弁口
第2弁開口44・・・第二弁口
矢印94方向・・・閉弁方向
矢印93方向・・・開弁方向
【0017】
[第1の実施形態]
本願に係る複座弁装置の第1の実施形態を、レバーフロート式ドレントラップを例に掲げて説明する。レバーフロート式ドレントラップは、たとえば産業プラントに設置されている蒸気移送のための配管系統に接続され、蒸気から発生する凝縮水(ドレン)を自動的に適宜、配管外に排出する機器である。
【0018】
(レバーフロート式ドレントラップ1の全体構成の説明)
図1は、本実施形態におけるレバーフロート式ドレントラップ1の全体構成を示す断面図である。ケーシング11とケーシング蓋12とは接続されてボルト18で固定され、本体を構成している。ケーシング11とケーシング蓋12との間にガスケット13が介在することによって、内部に形成される弁室15は気密性を保つ。
【0019】
ケーシング11には、弁室15と連通する流入口11aと流出口11bが形成されている。これら流入口11aと流出口11bとは同軸上に配置されており、流入口11aは配管に接続され、流出口11bは排出管に接続される。配管内を圧送されている蒸気は流入口11aから弁室15内に流入し、蒸気から発生するドレンも同様に弁室15内に流入する。
【0020】
弁室15の底部近傍には、開閉部40が設けられている。
図2にも示すように、この開閉部40の内部空間は流出口11bに接続されている。そして、開閉部40の上下部分には、弁室15と流出口11bとを連通させるための第1弁開口43及び第2弁開口44が形成されている。これら第1弁開口43及び第2弁開口44は円形状をなしている。なお、第1弁開口43の開口縁部は第1弁座41として構成され、第2弁開口44の開口縁部は第2弁座42として構成される。
【0021】
弁室15内に滞留したドレンは、第1弁開口43及び第2弁開口44の双方から流出口11bに向けて排出される。レバーフロート式ドレントラップ1は、多量にドレンが発生する配管位置に設置されるため、弁室15内に溜まった多量のドレンを一気に排出することができるように、比較的大きな口径を備えた2つの第1弁開口43及び第2弁開口44が設けられている。
【0022】
弁室15内には真空破壊筒45が設けられており、この真空破壊筒45は流出口11bに通じている。真空破壊筒45は、多量のドレンが一気に排出されたこと等によって弁室15に生じる真空状態を破壊して解消するための機器であり、真空状態が発生したとき、流出口11bから外気が弁室15内に導入されるようになっている。真空破壊筒45の先端部には逆止弁が設けられており、弁室15内の蒸気が流出口11bから流出することはない。なお、図において真空破壊筒45は断面ではなく側面図として表されている。
【0023】
開閉部40の内部には、第1弁開口43及び第2弁開口44を同時に開閉するための弁軸20が配置されており、弁棒20は第1弁開口43に対応する第1弁体プラグ21、及び第2弁開口44に対応する第2弁体プラグ22を備えている。弁棒20は円柱形状を有しており、第1弁体プラグ21及び第2弁体プラグ22はいずれも略ディスク形状を有している。
【0024】
第1弁体プラグ21は、弁軸20の上端に一体的に固定されており、この第1弁体プラグ21の上面には連結部ブロック37の下面が固定されている。そして、連結ブロック37の上面にはさらに中間ブロック36の下面が固定されている。
【0025】
一方、弁室15内には中空部材で構成されたフロート10が配置されている。このフロート10は、弁室15内に流入するドレンの水位に従って浮上又は下降するようになっており、レバー31の先端に固定されている。レバー31は、開閉部40に固定されている支持ブロック39に揺動軸32を介して取り付けられており、レバー31は揺動軸32を中心に回動方向に揺動自在である。
【0026】
レバー31には、揺動軸32を挟んだ後端側に、連結軸33によって連結片34が回動自在に接続されている。そして、この連結片34はさらに連結軸35によって、前述の中間ブロック36に対して回動自在に接続されている。
【0027】
すなわち、フロート10が、弁室15内に流入するドレンの増加の水位に従って浮上した場合、レバー31は揺動軸32を中心に図において時計回り(矢印91方向)に揺動し、この揺動は連結片34、中間ブロック36及び連結ブロック37を介して弁軸20に伝達され、弁軸20は矢印93方向に直線的に下降して移動する。逆に、フロート10が弁室15内のドレンの減少に従って下降した場合、レバー31は揺動軸32を中心に図において反時計回り(矢印92方向)に揺動し、この揺動の伝達を受けた弁軸20は矢印94方向に直線的に上昇して移動する。なお、図においてフロート10、レバー31、揺動軸32及び中間ブロック36は断面図ではなく側面図として表されている。
【0028】
弁軸20の矢印93、94方向への移動に従って、第1弁開口43は弁軸20に一体的に固定された前述の第1弁体プラグ21によって開閉され、同時に第2弁開口44は弁軸20の下部に取付けられた第2弁体プラグ22によって開閉される。
【0029】
図3に示すように、第2弁体プラグ22の中央部には貫通穴が形成されており、この貫通穴を弁軸20が貫通した状態で、第2弁体プラグ22が弁棒20に取り付けられている。そして、第2弁体プラグ22は、弁軸20に対して矢印93、94方向に往復的に平行移動が可能に保持されている。第2弁体プラグ22の上面にはプラグ球面22aが形成されており、このプラグ球面22aが第2弁座42に接することによって第2弁開口44は閉塞される。
【0030】
図4は、第2弁座42及び第2弁体プラグ22近傍の拡大断面図である。第2弁座42には、円形状を有する第2弁開口44の縁部に相当する部分に、周方向にわたって弁座テーパー面42aが形成されている。この弁座テーパー面42aは、第2弁体プラグ22のプラグ球面22aの曲面に一致する形状をもって湾曲している。
【0031】
弁軸20の最下端には、ディスク形状の付勢板28が設けられている。この付勢板28は、弁軸20に一体的に形成されており、付勢板28は弁軸20に固定されている。この付勢板28は、二か所に板バネ28aが形成されている。2つの板バネ28aは、付勢板28の上面を切り込んで、外周部分を起点に上方向に屈曲させて形成されている。2つの板バネ28aの中心線はラインL2に沿って配置されている。
【0032】
2つの板バネ28aの先端部分は、第2弁体プラグ22の下面に接して第2弁体プラグ22を上昇方向(矢印94方向)に付勢している。そして、第2弁体プラグ22の上面側には、ラインL3に沿ってストッパー24が固定されている。このストッパー24は弁軸20を貫通し、弁軸20から両方向に同じ長さをもって突出している。ラインL3は、弁棒20の中心線L1に直角に配置された仮想線であり、ストッパー24の軸線であるラインL3は、板バネ28aの中心線であるラインL2に直行するように配置されている。
【0033】
第2弁体プラグ22の上面がストッパー24に当接した状態が、第2弁体プラグ22の上昇の限界位置である。通常時においては、第2弁体プラグ22は板バネ28aの付勢を受け、ストッパー24に当接した限界位置にある。
【0034】
この状態から第2弁体プラグ22が矢印93方向に押圧された場合、第2弁体プラグ22は2つの板バネ28aの付勢に抗って矢印93方向に下降し、板バネ28aを圧縮する。そして、第2弁体プラグ22の下面が付勢板28に当接した状態が、第2弁体プラグ22の下降の限界位置である。すなわち、
図3に示す可動長さa2が第2弁体プラグ22の矢印93、94方向への可動範囲である。
【0035】
ところで、第1弁座41に当接する第1弁体プラグ21の上面と、第2弁座42に当接する第2弁体プラグ22のプラグ球面22a部分との間の長さa1(
図3)は、第1弁座41と第2弁座42との間の長さb1(
図2)よりも、差c(
図3)だけ短く設定されている。そして、前述の第2弁体プラグ22の可動長さa2は、この差cよりも大きく設定されている。したがって、長さa1と長さb1との差cを可動長さa2で吸収することが可能である。
【0036】
(レバーフロート式ドレントラップ1の動作の説明)
続いて、レバーフロート式ドレントラップ1の動作を説明する。弁室15内にドレンが滞留しておらずフロート10が下降している状態(
図1及び
図2の状態)においては、弁棒20は矢印94方向の限界位置に達して、第1弁開口43及び第2弁開口44は各々、第1弁体プラグ21及び第2弁体プラグ22によって閉塞されている。
【0037】
この状態から、流入口11aを通じて弁室15内にドレンが矢印98方向に流入し、弁室15内のドレンの水位が上昇すると、これに従ってフロート10は矢印91方向に浮上する。このフロート10の浮上によってレバー31は揺動軸32を中心に矢印91方向に揺動し、この揺動の伝達を受けた弁軸20は矢印93方向に直線的に下降する。
【0038】
弁棒20の下降によって、第1弁体プラグ21及び第2弁体プラグ22は、第1弁座41及び第2弁座42から離れて第1弁開口43及び第2弁開口44を開放する。なお、このとき第2弁体プラグ22は、弁棒20に固定されているストッパー24によって矢印93方向に押し下げられる。第1弁開口43及び第2弁開口44の開放によって、弁室15内に滞留していたドレンは、配管内の高圧の勢いを受けて第1弁開口43及び第2弁開口44を通って流出口11bから排出管に向け、矢印99方向に一気に排出される。
【0039】
弁室15内のドレンの排出による水位の低下に従って、フロート10は自重によって矢印92方向に下降を始める。フロート10の下降によってレバー31は揺動軸32を中心に矢印92方向に揺動し、この揺動の伝達を受けた弁軸20は矢印94方向に向けて直線的な上昇を開始する。そして、まず第2弁体プラグ22のプラグ球面22aが、第2弁座42の弁座テーパー面42aに当接し(
図4参照)、第2弁体プラグ22が第2弁座42に着座して第2弁開口44を閉塞する。
【0040】
ここで、弁棒20は前述のようにレバー31の揺動が伝達されることによって直線的に移動するため、特に弁棒20の先端部分に位置する第2弁体プラグ22には、移動の際に水平面に対する斜め方向のずれが生じることがある。また、第2弁体プラグ22は2つの板バネ28aの付勢を受けているため付勢力に偏りが生じ、第2弁体プラグ22が水平面から斜めにずれことがある。
【0041】
この点、本実施形態においては、前述のように第2弁体プラグ22の上面にプラグ球面22aが形成されており、他方、第2弁座42には、このプラグ球面22aの曲面に一致する形状に湾曲した弁座テーパー面42aが形成されている。このため、第2弁体プラグ22に水平面からのずれが生じたとしても、第2弁体プラグ22のプラグ球面22aが第2弁座42の弁座テーパー面42aに十分に密着し、確実に第2弁開口44を閉塞することができる。
【0042】
なお、ストッパー24の軸線であるラインL3は、板バネ28aの中心線であるラインL2に直行するように配置されているため、板バネ28aの付勢力の偏りによる第2弁体プラグ22斜め方向へのずれを可能な限り抑制することができる。
【0043】
前述のように、第1弁体プラグ21と第2弁体プラグ22との間の長さa1は、第1弁座41と第2弁座42との間の長さb1よりも短く設定されている。したがって、第2弁体プラグ22が第2弁開口44を閉塞した時点では、厳密には第1弁体プラグ21は未だ第1弁座41に着座しておらず、第1弁開口43は開放されたままであるが、フロート10が引き続き下降することによって第2弁体プラグ22が板バネ28aを圧縮しながら、弁棒20は矢印94方向へ上昇を続ける。
【0044】
そして、第1弁体プラグ21が第1弁座41に着座し、第1弁開口43を閉塞するに至り、第1弁開口43及び第2弁開口44の双方が実質的に同時に閉塞されてレバーフロート式ドレントラップ1は完全に閉弁する。これによって、ドレンの排出後、レバーフロート式ドレントラップ1から蒸気が漏れ出すことはない。なお、第1弁開口43及び第2弁開口44の双方が閉塞された状態においては、第2弁体プラグ22は弁棒20に対して矢印93方向に移動しており、第2弁体プラグ22の上面はストッパー24から離れ、下面で板バネ28aを圧縮している状態にある。
【0045】
このように、本実施形態においては、第1弁体プラグ21が弁棒20に固定されているのに対し、第2弁体プラグ22は弁棒20上で移動可能に取り付けられ、板バネ28aの付勢に抗って移動して第2弁開口44を閉塞する。このため、第1弁体プラグ21と第2弁体プラグ22との位置関係のずれを吸収することができ、容易かつ確実に第1弁開口43及び第2弁開口44を同時に閉塞することができる。
【0046】
[第2の実施形態]
次に、本願に係る複座弁装置の第2の実施形態を
図5及び
図6に基づいて説明する。図において第1の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し、構成や動作の説明を省略する。本実施形態においては、前述の第1の実施形態で示した第1弁体プラグ21の代わりに第1弁体プラグ71を設けている。この第1弁体プラグ71は、第2弁体プラグ22と同様の構成を備えている。
【0047】
すなわち、
図6に示すように、第1弁体プラグ71の中央部には貫通穴が形成されており、この貫通穴を弁軸20が貫通した状態で、第1弁体プラグ71が弁棒20に取り付けられている。そして、第1弁体プラグ71は、弁軸20に対して矢印93、94方向に往復的に平行移動が可能に保持されている。第1弁体プラグ71の上面にはプラグ球面71aが形成されており、このプラグ球面71aが第1弁座41に接することによって第1弁開口43は閉塞される。
【0048】
第1弁座41には、第2弁座42と同様、周方向にわたって弁座テーパー面が形成されており、この弁座テーパー面は、第1弁体プラグ71のプラグ球面71aの曲面に一致する形状をもって湾曲している。
【0049】
第1弁体プラグ71の下方には、弁軸20に一体的に形成されたディスク形状の付勢板77が設けられている。付勢板77には、中心線がラインL4に沿って配置された2つの板バネ77aが形成されており、2つの板バネ77aの先端部分は、第1弁体プラグ71の下面に接して第1弁体プラグ71を上昇方向(矢印94方向)に付勢している。なお、ラインL4は、弁棒20の中心線L1に直角に配置された仮想線である。
【0050】
本実施形態においては、弁棒20の上端面が連結ブロック79の下端面に固定されている。
図6に示すように、連結ブロック79は円柱形状を有している。そして、連結ブロック79は弁棒20よりも太く形成されており、弁棒20と連結ブロック79との接続部分に段差が形成される。このため、第1弁体プラグ71の矢印94方向への移動は、この段差部分によって規制され、第1弁体プラグ71の上面が段差における連結ブロック79の下面に当接した状態が第1弁体プラグ71の矢印94方向への移動の限界位置である。
【0051】
弁室15内のドレンの排出による水位の低下に従ってフロート10が下降し、レバー31が揺動軸32を中心に矢印92方向に揺動したとき、この揺動は連結片34、中間ブロック36及び連結ブロック79を介して弁軸20に伝達され、弁軸20は矢印94方向に向けて直線的に上昇する。
【0052】
そして、第1弁開口43及び第2弁開口44を閉塞する際、本実施形態においては第1弁体プラグ71及び第2弁体プラグ22の双方がそれぞれ板バネ22a及び板バネ77aの付勢に抗い、板バネ22a及び板バネ77aを圧縮させながら移動する。このため、第1弁体プラグ71と第2弁体プラグ22との位置関係のずれをより確実に吸収することができ、容易かつ確実に第1弁開口43及び第2弁開口44を同時に閉塞することができる。
【0053】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、複座弁装置としてレバーフロート式ドレントラップ1を例示したが、これに限定されるものではなく、複数の弁口を開閉するための複数の弁座及び弁体を備えたものであれば、他の装置に本願に係る複座弁装置を適用することができる。
【0054】
また、前述の実施形態においては、第一弁体手段として第1弁体プラグ21、71を例示し、第二弁体手段として第2弁体プラグ22を例示したが、第一弁口(第1弁開口43等)及び第二弁口(第2弁開口44等)を開閉するものであれば、それぞれについて他の形状、構造のものを用いてもよい。
【0055】
さらに、前述の実施形態においては、第一弁座手段として第1弁座41を例示し、第二弁座手段として第2弁座42を例示したが、それぞれについて他の形状、構造のものを用いてもよい。また、前述の実施形態においては、第一弁口として第1弁開口43を例示し、第二弁口として第2弁開口44を例示したが、それぞれについて他の形状、構造のものを用いてもよい。
【0056】
また、前述の実施形態においては、連結手段として弁棒20を例示したが、第一弁体手段(第1弁体プラグ21、71等)と第二弁体手段(第2弁体プラグ22等)とを連結し、弁本体に対して往復移動することによって、第一弁体手段及び第二弁体手段を閉弁方向又は開弁方向に連動させて移動させるものであれば、他の形状、構造のものを用いてもよい。
【0057】
さらに、前述の実施形態においては、付勢手段として付勢板28の上面を切り込んで屈曲させて形成した板バネ28a、77aを例示したが、他の形状、構造のものを用いてもよい。たとえば、コイルバネやゴム等の弾性部材を用いて第一弁体手段(第1弁体プラグ21、71等)と第二弁体手段(第2弁体プラグ22等)の少なくとも一方を閉弁方向に向けて付勢してもよい。
【0058】
また、前述の第1の実施形態においては、弁棒20の上方に固定された第1弁体プラグ21と弁棒20の下方に移動可能に保持された第2弁体プラグ22を示し、第2の実施形態においては弁棒20の上方と下方にそれぞれ移動可能に保持された第1弁体プラグ71及び第2弁体プラグ22を示した。
【0059】
この点、他の実施形態として、第1の実施形態とは逆に、弁棒20の上方に移動可能に保持された第一弁体手段と弁棒20の下方に固定された第二弁体手段を採用してもよい。ただし、移動可能に保持された側の弁体手段を先に弁座に着座させる必要があるため、この場合、第一弁座手段と第二弁座手段との間の長さ(第1の実施形態におけるb1に相当する長さ)よりも、第一弁体手段と第二弁体手段との間の長さ(第1の実施形態におけるa1に相当する長さ)を長く設定する必要がある。
【符号の説明】
【0060】
1:レバーフロート式ドレントラップ 11:ケーシング 12:ケーシング蓋
20:弁棒 21、71:第1弁体プラグ 22:第2弁体プラグ
22a、71a:プラグ球面 28a、77a:板バネ 41:第1弁座 42:第2弁座
43:第1弁開口 44:第2弁開口