(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174334
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】PWM制御装置およびPWM制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241210BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M7/48 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092100
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 華子
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA01
5H770BA02
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA41
5H770EA01
5H770GA17
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770HA07Z
5H770LA05X
5H770LA07X
5H770LB05
5H770LB09
(57)【要約】
【課題】デューティ指令が0%または100%の場合においても異常を検出できるとともに、PWM制御装置内で生じたPWM制御の異常を検出することを可能にする。
【解決手段】PWM制御装置100は、PWM制御信号SWの出力パルス幅Wactを取得する出力パルス幅取得手段12と、デューティ指令Drefの指令パルス幅Wrefを算出する指令パルス幅算出手段13と、出力パルス幅Wactと指令パルス幅Wrefとを比較することにより、PWM制御の異常の有無を判定する異常判定手段17とを備える。出力パルス幅取得手段12は、PWM制御信号SWの出力パルス幅を計測し、出力パルスが無いと判定された場合に、出力パルス幅の計測値を補正して、補正された出力パルス幅計測値を出力パルス幅Wactとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PWM制御指令を生成する制御指令生成手段と、
前記PWM制御指令に基づいて、被制御装置を制御するPWM制御信号を生成する制御信号生成手段と、
前記PWM制御信号の出力パルス幅を取得する出力パルス幅取得手段と、
前記PWM制御指令のパルス幅である指令パルス幅を算出する指令パルス幅算出手段と、
前記出力パルス幅と前記指令パルス幅とを比較することにより、PWM制御の異常の有無を判定する異常判定手段とを備え、前記出力パルス幅取得手段は、
前記PWM制御信号の出力パルスの幅の計測値である出力パルス幅計測値を前記PWM制御信号のエッジに基づいて計測するとともに、前記PWM制御信号の出力パルスの有無を判定して前記出力パルスが無いと判定された場合に、前記出力パルス幅計測値を補正して、補正された前記出力パルス幅計測値を前記出力パルス幅とすることを特徴とするPWM制御装置。
【請求項2】
前記出力パルス幅取得手段は、
前記エッジを検出する出力パルスエッジ検出部と、
前記エッジに基づいて前記出力パルス幅計測値を計測する出力パルス幅計測部と、
前記PWM制御信号の出力パルスの有無を判定するパルス有無判定部と、
前記出力パルスが無いと判定された場合に、前記出力パルス幅計測値を補正して、補正された前記出力パルス幅計測値を前記出力パルス幅とする出力パルス幅補正部とを備える請求項1に記載のPWM制御装置。
【請求項3】
前記出力パルス幅取得手段は、前記エッジの検出時刻を取得するエッジ時刻取得部をさらに備え、
前記パルス有無判定部は、前記エッジが最後に検出された時刻である最終エッジ検出時刻と現在時刻との差に基づいて前記出力パルスの有無を判定する請求項2に記載のPWM制御装置。
【請求項4】
前記出力パルス幅取得手段は、前記PWM制御信号の信号レベルを取得する信号レベル取得部をさらに備え、
前記出力パルス幅補正部は、前記最終エッジ検出時刻における前記PWM制御信号の信号レベルに基づいて前記出力パルス幅計測値を補正する請求項3に記載のPWM制御装置。
【請求項5】
前記制御信号生成手段は、PWMパルス周期により前記PWM制御信号を生成し、
前記出力パルス幅補正部は、前記最終エッジ検出時刻における前記PWM制御信号の信号レベルが「ハイ」である場合に、前記出力パルス幅計測値を前記PWMパルス周期に補正し、前記最終エッジ検出時刻における前記PWM制御信号の信号レベルが「ロー」である場合に、前記出力パルス幅計測値をゼロに補正する請求項4に記載のPWM制御装置。
【請求項6】
前記制御信号生成手段は、PWMパルス周期により前記PWM制御信号を生成し、
前記パルス有無判定部は、現在時刻と前記最終エッジ検出時刻との差が前記PWMパルス周期以上である場合に、前記出力パルスが無いと判定する請求項3または4に記載のPWM制御装置。
【請求項7】
前記被制御装置は、前記PWM制御信号に応じて電力を供給されて動作する電動機を有するものであって、
前記PWM制御装置は、前記電動機の回転状態を取得する回転状態取得手段をさらに備え、
前記異常判定手段は、前記出力パルス幅または前記指令パルス幅が一定値を継続する時間であるパルス幅固着時間を計測するパルス幅固着時間計測部を有し、前記回転状態に基づいて決まる時間と前記パルス幅固着時間との比較、および前記PWM制御指令の理想値の時間変動の有無に基づいて、前記PWM制御の異常の有無を判定する請求項1から5のいずれか1項に記載のPWM制御装置。
【請求項8】
前記回転状態取得手段は、少なくとも前記電動機の電気角周期を取得し、
前記異常判定手段は、前記理想値の時間変動があり、かつ、前記パルス幅固着時間が前記電気角周期の2分の1以上である場合に、前記PWM制御に異常があると判定する請求項7に記載のPWM制御装置。
【請求項9】
前記出力パルス幅または前記指令パルス幅が一定値を継続する時間であるパルス幅固着時間を計測するパルス幅固着時間計測部をさらに備え、
前記異常判定手段により前記PWM制御に異常があると判定され、かつ、前記パルス幅固着時間が予め定められた時間以上である場合に、
前記一定値がPWMパルス周期である場合は前記PWM制御の異常をオン固着異常と判定し、前記一定値がゼロである場合は前記PWM制御の異常をオフ固着異常と判定する請求項1から5のいずれか1項に記載のPWM制御装置。
【請求項10】
前記被制御装置は、前記PWM制御信号に応じて電力を供給されて動作する電動機を有するものであって、
前記PWM制御装置は、
前記電動機の回転状態を取得する回転状態取得手段と、
前記PWM制御装置によるPWM制御が正常に動作しているか否かを判定する正常制御判定手段とをさらに備え、
前記正常制御判定手段は、前記異常判定手段の判定結果が異常無しである状態が前記回転状態に基づいて決まる時間以上継続した場合に、前記PWM制御が正常に動作していると判定する請求項1から5のいずれか1項に記載のPWM制御装置。
【請求項11】
前記回転状態取得手段は、少なくとも前記電動機の電気角周期を取得し、前記回転状態に基づいて決まる時間は、前記電気角周期の2分の1である請求項10に記載のPWM制御装置。
【請求項12】
前記異常判定手段により、前記PWM制御装置によるPWM制御に異常があると判定された場合に、前記制御信号生成手段に対して前記PWM制御信号の出力の停止を指示する出力停止指示手段をさらに備えた請求項1から5のいずれか1項に記載のPWM制御装置。
【請求項13】
前記制御信号生成手段は、複数の前記PWM制御信号を生成するものであり、
前記出力停止指示手段は、それぞれの前記PWM制御信号の異常に応じて、それぞれの前記PWM制御信号の出力を停止させる時のそれぞれの前記PWM制御信号の信号レベルを設定する請求項12に記載のPWM制御装置。
【請求項14】
PWM制御信号に応じた電力を供給されて動作する電動機を有する被制御装置に前記PWM制御信号を出力するPWM制御装置であって、
PWM制御指令を生成する制御指令生成手段と、
前記PWM制御指令に基づいて、前記PWM制御信号を生成する制御信号生成手段と、
前記PWM制御信号の出力パルス幅を取得する出力パルス幅取得手段、および前記PWM制御指令のパルス幅である指令パルス幅を算出する指令パルス幅算出手段の少なくとも一方と、
PWM制御の異常の有無を判定する異常判定手段と、
前記電動機の回転状態を取得する回転状態取得手段とを備え、
前記異常判定手段は、前記出力パルス幅または前記指令パルス幅が一定値を継続する時間であるパルス幅固着時間を計測するパルス幅固着時間計測部を有し、前記回転状態に基づいて決まる時間と前記パルス幅固着時間との比較、および前記PWM制御指令の理想値の時間変動の有無に基づいて、前記PWM制御の異常の有無を判定することを特徴とするPWM制御装置。
【請求項15】
前記異常判定手段により前記PWM制御に異常があると判定され、かつ、前記パルス幅固着時間が予め定められた時間以上である場合に、
前記一定値がPWMパルス周期である場合は前記PWM制御の異常をオン固着異常と判定し、前記一定値がゼロである場合は前記PWM制御の異常をオフ固着異常と判定する請求項14に記載のPWM制御装置。
【請求項16】
PWM制御指令を生成する制御指令生成工程と、
前記PWM制御指令に基づいて、被制御装置を制御するPWM制御信号を生成する制御信号生成工程と、
前記PWM制御信号の出力パルス幅を取得する出力パルス幅取得工程と、
前記PWM制御指令のパルス幅である指令パルス幅を算出する指令パルス幅算出工程と、
前記出力パルス幅と前記指令パルス幅とを比較することにより、PWM制御の異常の有無を判定する異常判定工程とを備え、前記出力パルス幅取得工程において、
前記PWM制御信号の出力パルスの幅の計測値である出力パルス幅計測値を前記PWM制御信号のエッジに基づいて計測するとともに、前記PWM制御信号の出力パルスの有無を判定して前記出力パルスが無いと判定した場合に、前記出力パルス幅計測値を補正して、補正された前記出力パルス幅計測値を前記出力パルス幅とすることを特徴とするPWM制御方法。
【請求項17】
前記出力パルス幅取得工程は、前記エッジを検出する出力パルスエッジ検出工程と、
前記エッジに基づいて前記出力パルス幅計測値を計測する出力パルス幅計測工程と、
前記PWM制御信号の出力パルスの有無を判定する出力パルス有無判定工程と、
前記出力パルスが無いと判定した場合に、前記出力パルス幅計測値を補正して、補正された前記出力パルス幅計測値を前記出力パルス幅とする出力パルス幅補正工程とを含む請求項16に記載のPWM制御方法。
【請求項18】
前記出力パルス幅取得工程は、前記エッジの検出時刻を取得するエッジ時刻取得工程をさらに含み、
前記出力パルス有無判定工程において、前記エッジが最後に検出された時刻である最終エッジ検出時刻と現在時刻との差に基づいて前記出力パルスの有無を判定する請求項17に記載のPWM制御方法。
【請求項19】
前記出力パルス幅取得工程は、前記PWM制御信号の信号レベルを取得する信号レベル取得工程をさらに含み、
前記出力パルス幅補正工程において、前記最終エッジ検出時刻における前記PWM制御信号の信号レベルに基づいて前記出力パルス幅計測値を補正する請求項18に記載のPWM制御方法。
【請求項20】
前記制御信号生成工程において、PWMパルス周期により前記PWM制御信号を生成し、
前記出力パルス幅補正工程において、前記最終エッジ検出時刻における前記PWM制御信号の信号レベルが「ハイ」である場合に、前記出力パルス幅計測値を前記PWMパルス周期に補正し、前記最終エッジ検出時刻における前記PWM制御信号の信号レベルが「ロー」である場合に、前記出力パルス幅計測値をゼロに補正する請求項19に記載のPWM制御方法。
【請求項21】
前記制御信号生成工程において、PWMパルス周期により前記PWM制御信号を生成し、
前記出力パルス有無判定工程において、現在時刻と前記最終エッジ検出時刻との差が前記PWMパルス周期以上である場合に、前記出力パルスが無いと判定する請求項18または19に記載のPWM制御方法。
【請求項22】
前記被制御装置は、前記PWM制御信号に応じて電力を供給されて動作する電動機を有するものであって、
前記PWM制御方法は、前記電動機の回転状態を取得する回転状態取得工程をさらに含み、
前記異常判定工程において、前記出力パルス幅または前記指令パルス幅が一定値を継続する時間であるパルス幅固着時間を計測し、前記回転状態に基づいて決まる時間と前記パルス幅固着時間との比較、および前記PWM制御指令の理想値の時間変動の有無に基づいて、前記PWM制御の異常の有無を判定する請求項16から20のいずれか1項に記載のPWM制御方法。
【請求項23】
前記回転状態取得工程において、少なくとも前記電動機の電気角周期を取得し、
前記異常判定工程において、前記理想値の時間変動があり、かつ、前記パルス幅固着時間が前記電気角周期の2分の1以上である場合に、前記PWM制御に異常があると判定する請求項22に記載のPWM制御方法。
【請求項24】
前記出力パルス幅または前記指令パルス幅が一定値を継続する時間であるパルス幅固着時間を計測する工程をさらに備え、
前記異常判定工程において前記PWM制御に異常があると判定し、かつ、前記パルス幅固着時間が予め定められた時間以上である場合に、
前記一定値がPWMパルス周期である場合は前記PWM制御の異常をオン固着異常と判定し、前記一定値がゼロである場合は前記PWM制御の異常をオフ固着異常と判定する請求項16から20のいずれか1項に記載のPWM制御方法。
【請求項25】
前記被制御装置は、前記PWM制御信号に応じて電力を供給されて動作する電動機を有するものであって、
前記PWM制御方法は、
前記電動機の回転状態を取得する回転状態取得工程と、
前記PWM制御方法によるPWM制御が正常に動作しているか否かを判定する正常制御判定工程とをさらに備え、
前記正常制御判定工程において、前記異常判定工程における判定結果が異常無しである状態が前記回転状態に基づいて決まる時間以上継続した場合に、前記PWM制御が正常に動作していると判定する請求項16から20のいずれか1項に記載のPWM制御方法。
【請求項26】
前記回転状態取得工程において、少なくとも前記電動機の電気角周期を取得し、前記回転状態に基づいて決まる時間は、前記電気角周期の2分の1である請求項25に記載のPWM制御方法。
【請求項27】
前記異常判定工程において、前記PWM制御方法によるPWM制御に異常があると判定した場合に、前記PWM制御信号の出力を停止させる請求項16から20のいずれか1項に記載のPWM制御方法。
【請求項28】
前記制御信号生成工程において複数の前記PWM制御信号を生成し、
前記PWM制御信号の出力を停止させる時、それぞれの前記PWM制御信号の異常に応じて、それぞれの前記PWM制御信号の信号レベルを設定する請求項27に記載のPWM制御方法。
【請求項29】
PWM制御信号に応じた電力を供給されて動作する電動機を有する被制御装置に前記PWM制御信号を出力するPWM制御方法であって、
PWM制御指令を生成する制御指令生成工程と、
前記PWM制御指令に基づいて、前記PWM制御信号を生成する制御信号生成工程と、
前記PWM制御信号の出力パルス幅を取得する出力パルス幅取得工程、および前記PWM制御指令のパルス幅である指令パルス幅を算出する指令パルス幅算出工程の少なくとも一方と、
PWM制御の異常の有無を判定する異常判定工程と、
前記電動機の回転状態を取得する回転状態取得工程とを備え、
前記異常判定工程において、前記出力パルス幅または前記指令パルス幅が一定値を継続する時間であるパルス幅固着時間を計測し、前記回転状態に基づいて決まる時間と前記パルス幅固着時間との比較、および前記PWM制御指令の理想値の時間変動の有無に基づいて、前記PWM制御の異常の有無を判定することを特徴とするPWM制御方法。
【請求項30】
前記異常判定工程において前記PWM制御に異常があると判定され、かつ、前記パルス幅固着時間が予め定められた時間以上である場合に、
前記一定値がPWMパルス周期である場合は前記PWM制御の異常をオン固着異常と判定し、前記一定値がゼロである場合は前記PWM制御の異常をオフ固着異常と判定する請求項29に記載のPWM制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、PWM制御装置およびPWM制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流量制御バルブまたはモータ等の負荷装置の制御方法として、PWM(Pulse Width Modulation)制御が広く用いられている。PWM制御では、PWM制御装置によって生成したPWM制御信号を駆動回路に送信し、PWM制御信号に応じた駆動信号を生成させる。生成された駆動信号は負荷装置に送信され、駆動信号により負荷装置が駆動される。このようなPWM制御においては、実行中のPWM制御に異常が無いかをチェックする必要がある。ここで、従来の制御回路の異常検出装置として、負荷の動作を制御する出力トランジスタに定周期のチェックパルスを入力し、このチェックパルスの反転パルスを取得して、チェックパルスのパルス幅と反転パルスのパルス幅とを比較することにより異常を検出するものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、PWM制御装置から出力されるPWM制御信号のレベルと駆動回路から出力される駆動信号のレベルとを逐次比較することにより、PWM制御の異常検出を行う手法がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60-119480号公報
【特許文献2】特開平11-143530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような異常検出装置と同様の手法をPWM制御に適用する場合、デューティ指令が0%または100%である場合のように出力パルスが見かけ上は存在しないとき、比較のためのパルス幅を取得できず異常を検出することができない。
また、特許文献2に開示されている手法のようにPWM制御信号のレベルと駆動信号のレベルとを比較する方法では、デューティ指令が0%または100%の場合でも異常検出を行うことができるが、PWM制御装置から出力されるPWM制御信号を異常検出の基準としているため、PWM制御装置内の異常を検出できず、PWM制御装置で定めたデューティ指令どおりのPWM制御信号がPWM制御装置から出力されているか否かは判定できない。
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、デューティ指令が0%または100%の場合においても異常を検出できるとともに、PWM制御装置内で生じたPWM制御の異常を検出することができるPWM制御装置およびPWM制御方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願に開示されるPWM制御装置は、PWM制御指令を生成する制御指令生成手段と、PWM制御指令に基づいて、被制御装置を制御するPWM制御信号を生成する制御信号生成手段と、PWM制御信号の出力パルス幅を取得する出力パルス幅取得手段と、PWM制御指令のパルス幅である指令パルス幅を算出する指令パルス幅算出手段と、出力パルス幅と指令パルス幅とを比較することにより、PWM制御の異常の有無を判定する異常判定手段とを備え、出力パルス幅取得手段は、PWM制御信号の出力パルスの幅の計測値である出力パルス幅計測値をPWM制御信号のエッジに基づいて計測するとともに、PWM制御信号の出力パルスの有無を判定して出力パルスが無いと判定された場合に、出力パルス幅計測値を補正して、補正された出力パルス幅計測値を出力パルス幅とするものである。
【0006】
また、本願に開示される他のPWM制御装置は、PWM制御信号に応じた電力を供給されて動作する電動機を有する被制御装置にPWM制御信号を出力するPWM制御装置であって、PWM制御指令を生成する制御指令生成手段と、PWM制御指令に基づいて、PWM制御信号を生成する制御信号生成手段と、PWM制御信号の出力パルス幅を取得する出力パルス幅取得手段、およびPWM制御指令のパルス幅である指令パルス幅を算出する指令パルス幅算出手段の少なくとも一方と、PWM制御の異常の有無を判定する異常判定手段と、電動機の回転状態を取得する回転状態取得手段とを備え、異常判定手段は、出力パルス幅または指令パルス幅が一定値を継続する時間であるパルス幅固着時間を計測するパルス幅固着時間計測部を有し、回転状態に基づいて決まる時間とパルス幅固着時間との比較、およびPWM制御指令の理想値の時間変動の有無に基づいて、PWM制御の異常の有無を判定するものである。
【0007】
また、本願に開示されるPWM制御方法は、PWM制御指令を生成する制御指令生成工程と、PWM制御指令に基づいて、被制御装置を制御するPWM制御信号を生成する制御信号生成工程と、PWM制御信号の出力パルス幅を取得する出力パルス幅取得工程と、PWM制御指令のパルス幅である指令パルス幅を算出する指令パルス幅算出工程と、出力パルス幅と指令パルス幅とを比較することにより、PWM制御の異常の有無を判定する異常判定工程とを備え、出力パルス幅取得工程において、PWM制御信号の出力パルスの幅の計測値である出力パルス幅計測値をPWM制御信号のエッジに基づいて計測するとともに、PWM制御信号の出力パルスの有無を判定して出力パルスが無いと判定した場合に、出力パルス幅計測値を補正して、補正された出力パルス幅計測値を出力パルス幅とするものである。
【0008】
また、本願に開示される他のPWM制御方法は、PWM制御信号に応じた電力を供給されて動作する電動機を有する被制御装置にPWM制御信号を出力するPWM制御方法であって、PWM制御指令を生成する制御指令生成工程と、PWM制御指令に基づいて、PWM制御信号を生成する制御信号生成工程と、PWM制御信号の出力パルス幅を取得する出力パルス幅取得工程、およびPWM制御指令のパルス幅である指令パルス幅を算出する指令パルス幅算出工程の少なくとも一方と、PWM制御の異常の有無を判定する異常判定工程と、電動機の回転状態を取得する回転状態取得工程とを備え、異常判定工程において、出力パルス幅または指令パルス幅が一定値を継続する時間であるパルス幅固着時間を計測し、回転状態に基づいて決まる時間とパルス幅固着時間との比較、およびPWM制御指令の理想値の時間変動の有無に基づいて、PWM制御の異常の有無を判定するものである。
【発明の効果】
【0009】
本願に開示されるPWM制御装置またはPWM制御方法によれば、デューティ指令が0%または100%の場合においても異常を検出できるとともに、PWM制御装置内で生じたPWM制御の異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1におけるPWM制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る制御指令生成手段の構成を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態1に係る異常判定手段の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態1に係る出力パルス幅取得手段の構成を示すブロック図である。
【
図5】実施の形態1に係るPWM制御信号と出力パルス幅計測値の関係を示す図であり、出力パルス幅計測値の補正をしない場合を示す図である。
【
図6A】実施の形態1に係るPWM制御信号と出力パルス幅計測値の関係を示す図であり、出力パルス幅計測値の補正をする場合を示す図である。
【
図6B】実施の形態1における、出力パルス無し判定の判定時間について説明する図である。
【
図7】実施の形態1に係る制御部を実現するハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図8】実施の形態1におけるPWM制御装置の動作を示すフロー図である。
【
図9】実施の形態1に係る出力パルス幅取得工程を示すフロー図である。
【
図10】実施の形態1に係る異常判定工程を示すフロー図である。
【
図11】実施の形態2に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【
図12】実施の形態2に係る制御部の構成を示すブロック図である。
【
図13】実施の形態2に係る制御指令生成手段の構成を示すブロック図である。
【
図14】実施の形態2に係る回転状態取得手段の構成を示すブロック図である。
【
図15】実施の形態2に係る異常判定手段の構成を示すブロック図である。
【
図16】実施の形態2において、電気角の時間波形とU相上側のPWM制御信号の時間波形とを比較する図である。
【
図17】実施の形態2におけるPWM制御装置の動作を示すフロー図である。
【
図18】実施の形態2に係る異常判定工程を示すフロー図である。
【
図19】実施の形態3に係る制御部の構成を示すブロック図である。
【
図20】実施の形態3に係る異常判定手段の構成を示すブロック図である。
【
図21】実施の形態3におけるPWM制御装置の動作を示すフロー図である。
【
図22】実施の形態3に係る異常判定工程を示すフロー図である。
【
図23】実施の形態4に係る異常判定手段の構成を示すブロック図である。
【
図24】実施の形態4に係る異常判定工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1の実施の形態1に係るPWM制御装置の構成および動作について、
図1から
図10に基づいて説明する。
【0012】
<PWM制御装置の構成>
図1は、実施の形態1におけるPWM制御装置の構成を示すブロック図である。PWM制御装置100は、制御部10を備え、制御部10にて生成したPWM制御信号SWを被制御装置900に送信する。被制御装置900は、PWM制御信号に応じて被制御装置900が制御される。被制御装置900には、PWM制御信号に応じた駆動信号を生成する駆動回路、駆動信号によって動作する電動機等の負荷装置が含まれるが、
図1において被制御装置900の内部構成は省略している。
【0013】
<制御部の機能ブロック>
制御部10は、PWM制御指令としてのデューティ指令Drefを生成し、デューティ指令Drefを指令パルス幅算出手段13および制御信号生成手段19に出力する制御指令生成手段11と、デューティ指令Drefに基づいてPWM制御信号SWを生成し、PWM制御信号SWを被制御装置900および出力パルス幅取得手段12に出力する制御信号生成手段19と、PWM制御信号SWのパルス幅である出力パルス幅Wactを取得し、出力パルス幅Wactを異常判定手段17に出力する出力パルス幅取得手段12と、デューティ指令Drefに基づいて指令パルス幅Wrefを算出し、指令パルス幅Wrefを異常判定手段17に出力する指令パルス幅算出手段13と、出力パルス幅Wactと指令パルス幅Wrefとの比較結果から異常の有無を判定し、結果を状態判定結果ErrStとして出力する異常判定手段17とを備える。また制御部10は、異常判定手段17から状態判定結果ErrStが入力され、状態判定結果ErrStに応じて停止指示信号Stpを制御信号生成手段19に出力する出力停止指示手段18を備える。
【0014】
制御指令生成手段11について説明する。
図2は、実施の形態1に係る制御指令生成手段の構成を示すブロック図である。制御指令生成手段11は、デューティ指令算出部11aを有する。デューティ指令算出部11aは、図示省略した上位コントローラもしくは上位システムからの制御指令、ユーザからの入力、または被制御装置900からのフィードバックなどに基づいて、PWM制御信号SWを生成するためのデューティ指令Drefを算出し、算出したデューティ指令Drefを出力する。
【0015】
出力パルス幅取得手段12の詳細については後述する。
【0016】
指令パルス幅算出手段13は、PWM制御信号SWのあるべきパルス幅を算出するものである。この「あるべきパルス幅」が指令パルス幅Wrefであり、指令パルス幅算出手段13は、指令パルス幅Wrefをデューティ指令Drefに基づいて算出する。
【0017】
異常判定手段17について説明する。
図3は、実施の形態1に係る異常判定手段の構成を示すブロック図である。異常判定手段17は、パルス幅比較部17aと、差分異常判定部17bとを有する。パルス幅比較部17aは、指令パルス幅Wrefおよび出力パルス幅Wactが入力される。パルス幅比較部17aは、指令パルス幅Wrefと出力パルス幅Wactとを比較し、両者の差分WDiffを算出して、差分WDiffを差分異常判定部17bに出力する。差分異常判定部17bは、差分WDiffが閾値Dth以上か否かを判定し、結果に基づいて状態判定結果ErrStを出力する。差分異常判定部17bは、差分WDiffが閾値Dth以上である場合、PWM制御に異常があると判定し、状態判定結果ErrStを「異常」とする。差分WDiffが閾値Dth未満である場合、PWM制御は正常に動作していると判定し、状態判定結果ErrStを「正常」とする。
【0018】
出力パルス幅Wactは、制御信号生成手段19が出力したPWM制御信号SWのパルス幅である。また制御信号生成手段19は、生成したPWM制御信号SWを出力パルス幅取得手段12と被制御装置900のそれぞれに送信している。このため、出力パルス幅取得手段12が受信するPWM制御信号SWは、被制御装置900の内部を通過しておらず、また、PWM制御装置100と被制御装置900との間の伝達経路も通過していない。このため、出力パルス幅取得手段12によって取得される出力パルス幅Wactが指令パルス幅Wrefとの間に差がある場合、この差の原因はPWM制御装置100内で発生していることとなる。このため、差分WDiffが大きい(閾値Dth以上である)場合、PWM制御装置100内で異常が生じていることが示されている。
【0019】
実施の形態1の異常判定手段17のように2つの「パルス幅」を比較することで異常の有無を判定する場合、追加の専用回路を設ける必要はない。なお、特許文献2に記載の技術のように2つの「信号レベル」を比較する場合、専用回路などのハードウェアの追加が必要となる。ハードウェアを追加せずにソフトウェアによる信号レベルの比較も可能であるが、そのような構成は演算装置の処理負荷を増大させるという問題がある。実施の形態1の異常判定手段17は、演算装置の処理負荷を増加させることもなく、専用回路などの追加も必要ない。
【0020】
出力停止指示手段18は、状態判定結果ErrStが示すPWM制御の状態に応じて制御信号生成手段19によるPWM制御信号SWの生成を停止させる。出力停止指示手段18は、状態判定結果ErrStが「正常」である場合は何もせず、状態判定結果ErrStが「異常」である場合は停止指示信号Stpを制御信号生成手段19に出力する。停止指示信号Stpを受信した制御信号生成手段19はPWM制御信号SWの生成および出力を停止する。
【0021】
制御信号生成手段19は、デューティ指令Drefに応じて、被制御装置900を制御するためのPWM制御信号SWを生成し出力する。また制御信号生成手段19は、例えばPWMパルス周期によりPWM制御信号SWを生成し出力する。制御信号生成手段19によるPWM制御信号SWの生成は、デューティ指令Drefと搬送波(キャリア)とを比較することにより行われる。より具体的には、例えば、上昇速度と下降速度とが互いに等しい二等辺三角形の形状を有する三角波をキャリアとする三角波比較方式、または、直線的な増加と急降下を周期的に繰り返す鋸波をキャリアとする鋸波比較方式等を用いてPWM制御信号SWが生成される。なお上述したように、出力停止指示手段18から停止指示信号Stpを受信した場合、制御信号生成手段19はPWM制御信号SWの生成および出力を停止する。なお、上記PWMパルス周期は、予め定めてもよいし、負荷装置の状態に応じて設定してもよい。
【0022】
出力パルス幅取得手段12について説明する。
図4は、実施の形態1に係る出力パルス幅取得手段の構成を示すブロック図である。出力パルス幅取得手段12は、PWM制御信号SWの出力パルスのエッジの検出を通知する出力パルスエッジ検出部12aと、PWM制御信号SWの出力パルス幅を計測し、出力パルス幅計測値Wmonとして出力パルス幅補正部12fに出力する出力パルス幅計測部12bと、時刻カウンタによりエッジタイミングの時刻を取得し、エッジ時刻EdgTとしてパルス有無判定部12dに出力するエッジ時刻取得部12cと、PWMパルス周期における出力パルスの有無を判定し、結果をパルス有無判定結果EdgRとして出力パルス幅補正部12fに出力するパルス有無判定部12dと、PWM制御信号SWのエッジタイミングにおける信号レベルを取得し、信号レベルEdgLevとして出力パルス幅補正部12fに出力する信号レベル取得部12eと、パルス有無判定結果EdgRに応じて出力パルス幅計測値Wmonの補正をし、あるいは補正をしないで出力パルス幅Wactとして出力する出力パルス幅補正部12fとを有する。
【0023】
出力パルスエッジ検出部12aは、PWM制御信号SWを受信し、PWM制御信号SWの出力パルスの立上がりおよび立下がり(エッジ)を検出する。出力パルスエッジ検出部12aは、上記のようにPWM制御信号SWのエッジを検出したタイミング(エッジタイミング)でエッジ検出信号Edgを出力する。エッジ検出信号Edgは、出力パルス幅計測部12b、エッジ時刻取得部12cおよび信号レベル取得部12eに入力される。このように、出力パルスエッジ検出部12aは、エッジ検出信号Edgの出力により、PWM制御信号SWの出力パルスのエッジの検出を通知する。エッジ検出信号Edgはエッジタイミングで出力され、エッジ検出信号Edgの受信側ではエッジタイミングでエッジ検出信号Edgを受信する。
【0024】
出力パルス幅計測部12bは、エッジ検出信号Edgを受信し、PWM制御信号SWのエッジタイミングでカウンタを動作させて、立上がりから立下がりまでのカウント値からPWM制御信号SWの出力パルス幅を計測する。出力パルス幅計測部12bは、計測した出力パルス幅を出力パルス幅計測値Wmonとして出力する。なお、実施の形態1では立上がりから立下がりまでのカウント値からPWM制御信号SWの出力パルス幅を計測する構成としたが、立下がりから立上がりまでのカウント値からPWM制御信号SWの出力パルス幅を計測する構成としてもよい。
【0025】
なお、制御部10を例えばマイクロコンピュータで構成する場合、マイクロコンピュータの入力タイマ機能を利用して出力パルスエッジ検出部12aおよび出力パルス幅計測部12bを実現することができる。
【0026】
エッジ時刻取得部12cは、エッジ検出信号Edgを受信し、エッジタイミングで時刻カウンタを動作させて、エッジタイミングの時刻を取得する。エッジ時刻取得部12cは、取得した時刻をPWM制御信号SWの出力パルスのエッジ時刻EdgTとして出力する。
【0027】
パルス有無判定部12dは、最後のエッジタイミングからの経過時間に基づいてPWM制御信号SWの出力パルスの有無を判定するものである。より具体的には、パルス有無判定部12dは、エッジ時刻EdgTを受信し、現在の時刻とエッジ時刻EdgTとの差分から、最後のエッジタイミング、すなわち最終エッジ検出時刻からの経過時間を計測する。パルス有無判定部12dは、最後のエッジタイミングからの経過時間がPWMパルス周期以上の場合には、出力パルスなしと判定する。パルス有無判定部12dは上記の判定をPWMパルス周期で実行する。すなわち、パルス有無判定部12dは、PWMパルス周期毎に出力パルスの有無を判定する。パルス有無判定部12dは判定の結果をパルス有無判定結果EdgRとして出力する。
【0028】
なお、パルス有無判定部12dは、PWMパルス周期とは異なる周期および異なるタイミングで動作させることとしてもよい。この場合、出力パルスの有無の判定期間(判定の対象となる期間)は、パルス有無判定部12dの判定の実行周期および実行タイミングに応じた値に設定すればよい。これにより、パルス有無判定部12dによる判定の実行をPWMパルス周期に限定されることなく設定できる。
【0029】
信号レベル取得部12eは、エッジ検出信号Edgを受信し、エッジタイミングにおけるPWM制御信号SWのレベルを「ハイ」または「ロー」で取得し、エッジ検出時の信号レベルEdgLevとして出力する。
【0030】
出力パルス幅補正部12fは、出力パルス幅計測値Wmon、パルス有無判定結果EdgRおよびエッジ検出時の信号レベルEdgLevが入力される。出力パルス幅補正部12fは、出力パルスがあると判定されている(パルス有無判定結果EdgRが「パルスあり」である)場合、出力パルス幅計測値Wmonを補正せず、そのまま出力パルス幅Wactとして出力する。出力パルスが無いと判定されている(パルス有無判定結果EdgRが「パルス無し」である)場合、出力パルス幅計測値Wmonを補正した上で出力パルス幅Wactとして出力する。
【0031】
出力パルス幅補正部12fによる出力パルス幅の補正方法は以下のとおりである。すなわち、信号レベルEdgLevが「ロー」である場合、出力パルス幅補正部12fは出力パルス幅計測値Wmonをゼロに補正し、「出力パルス幅Wactの値=0」として出力パルス幅Wactを出力する。信号レベルEdgLevが「ハイ」である場合、出力パルス幅補正部12fは出力パルス幅計測値WmonをPWMパルス周期と同じ値に補正し、「出力パルス幅Wactの値=PWMパルス周期」として出力パルス幅Wactを出力する。
【0032】
なお、実施の形態1における信号レベル取得部12eは、エッジタイミングでPWM制御信号SWのレベルを取得しているが、信号レベルEdgLevは出力パルス幅の補正が行われるときに取得されていればよいので、信号レベル取得部12eは、出力パルス幅補正部12fが補正を行う際にPWM制御信号SWのレベルを取得してもよい。
【0033】
上述したように、実施の形態1におけるPWM制御装置100は、PWM制御信号SWの出力パルス幅の取得において2つの特徴を持つ。1つ目は、出力パルス幅取得手段12においてPWM制御信号SWの出力パルスのエッジ(立上がりおよび立下がり)を検出することにより出力パルス幅を計測するとともに、PWM制御信号SWの出力パルスがない場合は出力パルス幅計測値Wmonを補正する点である。
【0034】
2つ目は、出力パルス幅計測値Wmonの補正において、PWM制御信号SWのエッジの検出時(エッジタイミング)におけるPWM制御信号SWのレベル(「ハイ」または「ロー」)に応じて、出力パルス幅計測値WmonをPWMパルス周期またはゼロに補正する点である。これにより、PWM制御信号SWの出力パルスがない場合、エッジの検出時におけるPWM制御信号SWのレベルに応じて、出力パルス幅WactもPWMパルス周期またはゼロとなる。
【0035】
上記のようなエッジの検出から出力パルス幅計測値Wmonの補正までの動作は、通常のPWM制御において行われる動作と同様に実施できる。すなわち、出力パルス幅取得手段12を実現するために追加の専用回路を設ける必要はない。
【0036】
<出力パルス幅計測値の補正による効果の説明>
出力パルス幅補正部12fによる出力パルス幅計測値Wmonの補正について詳細に説明する。まず、比較例として、補正を行わない場合について
図5を用いて説明する。
図5において、グラフの横軸は時刻を示す。また、上側のグラフの縦軸はPWM制御信号SWおよびPWM生成用三角波(キャリア)のレベルを示す。PWM制御信号SWは、「1」場合が「ハイ」、「0」の場合が「ロー」となる。下側のグラフの縦軸は、出力パルス幅計測値Wmonを示している。
【0037】
実施の形態1では、PWM生成用三角波が谷になったタイミングで出力パルス幅計測値Wmonの更新を行い、その時点での最終の出力パルス幅に更新される。例えば、時刻0.0164付近では出力パルス幅がT1となっているため、時刻0.0165秒において出力パルス幅計測値WmonがT1に更新されている。また、時刻0.0166秒で立下がる出力パルスの出力パルス幅はT2であるため、時刻0.0167秒において出力パルス幅計測値WmonがT2に更新されている。
【0038】
ただし、
図5において一点鎖線で囲った領域Aのように出力パルスが無い場合、出力パルス幅計測値Wmonの更新は行われない。これは、デューティ指令Drefが0%または100%の場合に、出力パルスのエッジが検出されず、出力パルス幅計測値Wmonが更新されないことを意味する。出力パルス幅計測値Wmonが更新されない場合、現在の正しい出力パルス幅Wactを取得することができないので、指令パルス幅Wrefと出力パルス幅Wactの比較による異常判定も正しく行うことができない。このことは、出力パルス幅をデューティ出力に換算して考える場合も同様である。すなわち、デューティ指令Drefが0%または100%であるにも関わらず出力パルス幅計測値Wmonの更新を行わない場合、PWM制御が正常であるにも関わらず、デューティ指令とデューティ出力との間に差異が生じてしまい、適切に異常を検出することができない。
【0039】
図6Aは、実施の形態1に係るPWM制御信号と出力パルス幅計測値の関係を示す図であり、出力パルス幅計測値の補正をする場合を示す図である。また
図6Bは、実施の形態1における、出力パルス無し判定の判定時間について説明する図である。
図6Aにおいても
図5の例の場合と同様に、時刻0.0167秒において出力パルス幅計測値WmonがT2に更新されている。また、領域Aに含まれる期間では出力パルスが無い点も同様である。一方、
図6Aにおいては最後のエッジ、すなわち、時刻0.0166秒における立下がりFにおけるPWM制御信号SWの信号レベル(ロー)を取得し、これに応じて出力パルス幅計測値Wmonを補正している。
図6Aの下側のグラフでは、時刻0.0168秒までは補正前の出力パルス幅計測値Wmon(実線)と補正後の出力パルス幅計測値Wmon(破線)は等しいが、時刻0.0168秒において補正が行われ、補正後の出力パルス幅計測値Wmonはゼロになっている。
【0040】
出力パルス無しの判定については、
図6Bより説明される。
図6Bでは、出力パルス無し判定の閾値thをPWMパルス周期と同じ100マイクロ秒と設定しており、最後のエッジ検出からの経過時間が閾値thを上回ったときに出力パルスが無いと判定される。最後のエッジ検出からの経過時間は、
図6Bの下側のグラフに示すように時刻カウント値を測定することで取得する。すなわち、現在時刻Ptにおける時刻カウント値と最終エッジ検出時刻Ftにおける時刻カウント値の差分dc(図示省略)から経過時間を取得する。
図6Bの上側のグラフを見ると分かるように、時刻カウント値から経過時間への換算(経過時間の更新)は、0.0001秒毎に行われる。
図6Aおよび
図6Bにおいて、最終エッジ検出時刻Ftは0.0166秒であることから時刻0.0168秒において経過時間が閾値thを上回る。このため、時刻0.0168秒で「出力パルス無し」と判定し、上記した出力パルス幅計測値Wmonの補正が行われる。
【0041】
以上のように、最後のエッジ検出からの経過時間に基づいて出力パルス無しの判定をし、最後のエッジ検出時のPWM制御信号SWのレベル(ロー)に基づいて出力パルス幅計測値Wmonをゼロに補正することにより、出力パルス幅Wactを正確に取得することができる。最後のエッジ検出時のPWM制御信号SWのレベルが「ハイ」である場合も同様で、この場合は出力パルス幅計測値WmonをPWMパルス周期に補正する。このことは、デューティ指令が0%または100%で、出力パルスのエッジが検出されない場合でもPWM制御信号SWの出力パルス幅Wactを正確に取得できることを意味し、また、指令パルス幅Wrefと出力パルス幅Wactの比較による異常判定を正しく行うことができることを意味する。
【0042】
なお、
図5、
図6Aの説明では出力パルス幅計測値Wmonの更新タイミングをPWM生成用三角波の谷のタイミングとしたが、更新タイミングはこれに限られるものではない。ただし、PWM生成用三角波の山、もしくは谷のタイミングで出力パルス幅計測値Wmonの更新を行う場合、一般的なPWM制御の更新タイミングと同タイミングで出力パルス幅計測値Wmonの更新を行うこととなるため、出力パルス幅計測値Wmonの更新用のタイマを別途設ける必要が無いという利点がある。
【0043】
<制御部のハードウェア構成>
次に、実施の形態1に係る制御部を実現するハードウェア構成について説明する。
図7は、実施の形態1に係る制御部を実現するハードウェア構成の一例を示す図である。制御部10の各機能は、制御部10が備えた処理回路により実現される。具体的には、制御部10は、CPU等の演算処理装置81と、演算処理装置81からのデータを記憶し、また、記憶しているデータを演算処理装置81に読み込ませる記憶装置82と、外部の機器等からの信号を演算処理装置81に入力する入力回路83と、演算処理装置81からの信号を外部の機器等に出力する出力回路84とを備えている。演算処理装置81、記憶装置82、入力回路83および出力回路84の間のデータ、信号の伝送は、バス85を介して行われる。また、図示を省略しているが、上述のように制御部10をマイコンで構成する場合、制御部10はタイマも備える
【0044】
演算処理装置81としては、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、IC(Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、またはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いることができる。また、各種の論理回路および信号処理回路の組み合わせにより構成される演算処理回路を用いてもよい。さらに、上記で挙げた演算処理装置または演算処理回路を複数組み合わせ、それぞれの演算処理装置および演算処理回路が各処理を分担して実行する構成にしてもよい。
【0045】
記憶装置82は、演算処理装置81からデータを読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(Random Access Memory)、演算処理装置81からデータを読み出し可能に構成されたROM(Read only Memory)等が備えられている。
【0046】
入力回路83は、被制御装置900の状態をモニタするセンサ71およびスイッチ72が接続され、センサ71およびスイッチ72の出力信号を演算処理装置81に入力するものであり、AD変換部、入力回路のインターフェース回路等(いずれも図示省略)を備えている。
【0047】
出力回路84は、被制御装置900と接続され、演算処理装置81からの出力信号を変換して出力するインターフェース回路等(図示省略)を備えている。
【0048】
制御部10が備える各機能は、演算処理装置81が、ROM等の記憶装置82に記憶されたソフトウェアプログラムを実行し、記憶装置82、入力回路83、および出力回路84等の制御部10の他のハードウェアと協働することにより実現される。なお、制御部10が用いる閾値等の設定データは、ソフトウェアプログラムの一部またはソフトウェアプログラムとは別のデータとして、ROM等の記憶装置82に記憶されている。
【0049】
制御部10の内部に搭載された各機能は、それぞれソフトウェアのモジュールで構成されるものであってもよいが、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせによって構成されるものであってもよい。
【0050】
<PWM制御装置の動作>
次に、動作について説明する。
図8は、実施の形態1におけるPWM制御装置の動作を示すフロー図である。まず、制御指令としてのデューティ指令Drefを生成する(ステップST101:制御指令生成工程)。上述したように、デューティ指令Drefは、上位コントローラからの制御指令、ユーザからの入力、または被制御装置900からのフィードバックなどに基づいて生成する。
【0051】
次に、デューティ指令Drefに応じて、PWM制御信号SWを生成する(ステップST102:制御信号生成工程)。上述したように、PWM制御信号SWの生成は、デューティ指令Drefと搬送波(キャリア)との比較により行う。
【0052】
次に、PWM制御信号SWの出力パルス幅Wactを取得する(ステップST103:出力パルス幅取得工程)。上述したとおり、出力パルス幅Wactは、出力パルス幅計測値Wmonに基づいて決まるものであり、出力パルス幅計測値Wmonは、PWM制御信号SWのエッジを検出することで計測される。また、出力パルスの有無に応じて出力パルス幅計測値Wmonの補正を行う点も上述したとおりである。出力パルス幅取得工程の詳細は後述する。
【0053】
次に、デューティ指令Drefに基づいて指令パルス幅Wrefを算出する(ステップST104:指令パルス幅算出工程)。なお、指令パルス幅Wrefの算出はデューティ指令Drefがあれば行えるので、制御指令生成工程の後、後述する異常判定工程の前であれば、任意のタイミングで指令パルス幅算出工程を実施すればよい。
【0054】
次に、出力パルス幅Wactと指令パルス幅Wrefとを比較することにより、PWM制御における異常の有無を判定する(ステップST105:異常判定工程)。異常判定工程の詳細については後述する。
【0055】
次に、異常判定工程において異常があると判定した場合はステップST107に進み、異常が無いと判定した場合は処理を終了する(ステップST106)。
【0056】
異常判定工程において異常があると判定した場合、PWM制御信号SWの生成および出力を停止する(ステップST107:出力停止指示工程)。
【0057】
<出力パルス幅取得工程のフロー>
出力パルス幅取得工程について説明する。
図9は、実施の形態1に係る出力パルス幅取得工程を示すフロー図である。まず、PWM制御信号SWのエッジを検出する(ステップST1031:出力パルス検出工程)。
【0058】
次に、エッジタイミングで時刻カウンタを動作させて、エッジ時刻EdgTを取得する(ステップST1032:エッジ時刻取得工程)。
【0059】
次に、エッジタイミングにおけるPWM制御信号SWの信号レベルEdgLevを「ハイ」または「ロー」で取得する(ステップST1033:信号レベル取得工程)。
【0060】
次に、エッジタイミングでカウンタを動作させ、立上がりから立下がり(または立下がりから立上がり)までのカウント値から出力パルス幅計測値Wmonを計測する(ステップST1034:出力パルス幅計測工程)。
【0061】
次に、最後のエッジタイミングからの経過時間に基づいてPWM制御信号SWの出力パルスの有無を判定する(ステップST1035:出力パルス有無判定工程)。より具体的には、現在の時刻とエッジ時刻EdgTとの差分から、最後のエッジタイミング、すなわち最終エッジ検出時刻からの経過時間を計測し、最後のエッジタイミングからの経過時間がPWMパルス周期以上の場合には、出力パルスなしと判定する。
【0062】
出力パルスが無いと判定した場合はステップST1037に進み、出力パルスがあると判定した場合は出力パルス幅計測値Wmonを出力パルス幅Wactとして処理を終了する(ステップST1036)。
【0063】
出力パルスが無いと判定した場合、出力パルス幅計測値Wmonを補正し、補正された出力パルス幅計測値Wmonを出力パルス幅Wactとする(ステップST1037:出力パルス幅補正工程)。より具体的には、信号レベルEdgLevが「ロー」である場合、出力パルス幅計測値Wmonをゼロに補正し、「出力パルス幅Wactの値=0」とする。信号レベルEdgLevが「ハイ」である場合、出力パルス幅計測値WmonをPWMパルス周期と同じ値に補正し、「出力パルス幅Wactの値=PWMパルス周期」とする。
【0064】
<異常判定工程のフロー>
異常判定工程について説明する。
図10は、実施の形態1に係る異常判定工程を示すフロー図である。まず、出力パルス幅Wactと指令パルス幅Wrefの差分WDiffを算出し、差分WDiffと閾値Dthとを比較する(ステップST1051:パルス幅比較工程)。
【0065】
次に、差分WDiffが閾値Dth以上である場合は異常があると判定し、差分WDiffが閾値Dth未満である場合は異常が無い(正常)と判定する(ステップST1052:差分異常判定工程)。
【0066】
実施の形態1によれば、デューティ指令が0%または100%の場合においても異常を検出できるとともに、PWM制御装置内で生じたPWM制御の異常を検出することができる。より具体的には、PWM制御装置は、PWM制御信号の出力パルス幅を取得する出力パルス幅取得手段と、デューティ指令のパルス幅である指令パルス幅を算出する指令パルス幅算出手段と、出力パルス幅と指令パルス幅とを比較することにより、PWM制御の異常の有無を判定する異常判定手段とを備え、出力パルス幅取得手段は、PWM制御信号の出力パルスの幅の計測値である出力パルス幅計測値をPWM制御信号のエッジに基づいて計測するとともに、PWM制御信号の出力パルスの有無を判定して出力パルスが無いと判定された場合に、出力パルス幅計測値を補正して、補正された出力パルス幅計測値を出力パルス幅とする。出力パルス幅と指令パルス幅との間に閾値より大きい差異がある場合、PWM制御装置内で何らかの異常が発生したことを示されている。このため、PWM制御装置内で生じたPWM制御の異常を検出することができる。
【0067】
また、出力パルス幅の取得において出力パルスが無いと判定された場合に、出力パルス幅計測値を補正して、補正された出力パルス幅計測値を出力パルス幅とする。これにより、出力パルス幅がある場合はエッジに基づいて計測した出力パルス幅計測値を出力パルス幅とするとともに、デューティ指令が0%または100%のように出力パルスが無い場合は、最後に計測された出力パルス幅計測値を補正した値を出力パルス幅とする。これにより、デューティ指令が0%または100%のような場合でも出力パルス幅を取得することができ、指令パルス幅との比較による異常の検出を行うことができる。
【0068】
また、異常判定のための追加の専用回路またはハードウェアを設ける必要がない。より具体的には、異常判定手段は、2つのパルス幅を比較することで異常の有無を判定し、信号レベルの比較は行わない。このため、信号レベルを比較するための専用回路などは不要である。
【0069】
なお、実施の形態1では、指令パルス幅と出力パルス幅の比較によりPWM制御の異常を判定する構成としたが、出力パルス幅をPWMパルス周期に応じてデューティ出力に換算し、デューティ指令とデューティ出力との比較によりPWM制御の異常を判定する構成であってもよい。
【0070】
実施の形態2.
次に、実施の形態2を
図11から
図18に基づいて説明する。実施の形態2は、被制御装置が電動機を含み、PWM制御装置は、上記電動機を動作させるための電力変換装置に含まれている。すなわち、電動機を動作させるための電力変換装置に、実施の形態1と同様のPWM制御装置を適用している。より詳細には、実施の形態2のPWM制御装置は、電動機を制御するために複数のPWM制御信号を出力し、電動機の回転状態を取得する回転状態取得手段を備え、電動機の回転状態に応じてPWM制御の異常判定および正常判定を行い、また、異常判定時に複数のPWM制御信号の制御状態に応じて、PWM制御の出力を停止するための信号レベルを設定するようにしている。
【0071】
以下、実施の形態2のPWM制御装置の構成および動作について、実施の形態1との差異を中心に説明する。なお、実施の形態1と同一あるいは相当部分は、同一の符号を付している。
【0072】
<電力変換装置の構成>
図11は、実施の形態2に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。電力変換装置1000は、電動機901に交流電力を供給して電動機901を動作させる電力変換装置であり、PWM制御信号を生成するPWM制御装置200と、PWM制御装置200より供給されるPWM制御信号から、三相のインバータ回路902を駆動する駆動信号を生成する駆動回路903とを備える。また電力変換装置1000は、インバータ回路902と電動機901とを接続する三相(U相、V相、W相)の交流母線904と、交流母線904を流れる電流を検出し、それぞれの相の電流検出値(U相電流検出値Iu、V相電流検出値Iv、W相電流検出値Iw、以下、三相電流検出値Iu、Iv、Iwと記載)を出力する電流センサ905とを備える。さらに、電力変換装置1000は、直流電源51からインバータ回路902の直流母線(図示省略)に入力される直流電圧を検出し、入力電圧Vpnとして出力する電圧センサ906を備える。三相電流検出値Iu、Iv、Iwおよび入力電圧Vpnは、PWM制御装置200の制御部20に入力される。なお、電力変換装置1000は、例えば電気自動車およびプラグインハイブリッド自動車などの電動車両で使用され、動力となる電動機を高電圧バッテリの電力で駆動するための電力変換装置を想定している。
【0073】
被制御装置900は、実施の形態1と同様にPWM制御装置200の制御対象であり、一部の構成が電力変換装置1000と重複している。被制御装置900には、電動機901、インバータ回路902、駆動回路903が含まれる。電動機901は、負荷(図示省略)を回転駆動するとともに、負荷の回転エネルギーを電気エネルギーとして回生可能な電動機であり、例えば永久磁石三相交流同期モータまたは三相ブラシレスモータを含む。電動機901には、電動機901のロータ回転角θmを検出する回転角センサ907が設けられている。回転角センサ907は、レゾルバまたはエンコーダ等により電動機901のロータ(図示省略)のロータ回転角θmを検出するものである。回転角センサ907で検出されたロータ回転角θmはPWM制御装置200の制御部20に出力される。また、上記した交流母線904、電流センサ905および電圧センサ906も被制御装置900に含まれている。
【0074】
電動機901は、インバータ回路902により交流電流を供給されることで動作する。また、電動機901の回生状態においては、発生した回生電力はインバータ回路902を介して直流電源51に充電される。なお、PWM制御装置200の制御対象は、電動機に限るものではなく、電動機以外であってもよい。
【0075】
インバータ回路902は、例えば、正極側の直流母線および負極側の直流母線(いずれも図示省略)によって直流電源51と接続されており、駆動電力を直流電源51から供給されるとともに、回生電力を直流電源51に供給する。また、インバータ回路902は、交流母線904により電動機901と接続され、駆動電力を電動機901に供給するとともに、電動機901から回生電力が供給される。図示を省略しているが、インバータ回路902は、一般的によく知られている6つのスイッチング素子をフルブリッジ接続したインバータであり、U相上側、V相上側、W相上側、U相下側、V相下側およびW相下側のスイッチング素子を有する。それぞれのスイッチング素子は、例えばソース・ドレイン間にダイオードが内蔵されたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの半導体スイッチング素子である。なお、半導体スイッチング素子の種類、個数はこれに限定されたものでなく、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)およびSiC-MOSFET等の半導体スイッチング素子を用いてもよい。
【0076】
駆動回路903は、PWM制御装置200の制御部20からPWM制御信号を受信し、PWM制御信号に応じた6つの駆動信号(図示省略)を生成する。インバータ回路902の各スイッチング素子は、駆動回路903が生成した駆動信号によりオンオフが切り替えられる。インバータ回路902は、各スイッチング素子のオンオフが切り替えられることにより、直流電源51から供給される直流電力を交流に変換し、三相の交流電流を電動機901に供給する。
【0077】
<PWM制御装置の構成>
PWM制御装置200は、制御部20を備え、制御部20にて生成したPWM制御信号を被制御装置900に送信する。制御部20は、インバータ回路902の各スイッチング素子に対応するPWM制御信号、すなわち、U相上側のスイッチング素子に対応するPWM制御信号SW_UH、V相上側のスイッチング素子に対応するPWM制御信号SW_VH、W相上側のスイッチング素子に対応するPWM制御信号SW_WH、U相下側のスイッチング素子に対応するPWM制御信号SW_UL、V相下側のスイッチング素子に対応するPWM制御信号SW_VLおよびW相下側のスイッチング素子に対応するPWM制御信号SW_WLを生成し、駆動回路903に出力する。
【0078】
なお、以後では上記6つのPWM制御信号をまとめてPWM制御信号SW**と記載する。また、「_UH」を付した符号はインバータ回路902のU相上側のスイッチング素子、あるいはU相上側のスイッチング素子を制御するPWM制御信号に対応するものであることを示す。同様に、「_VH」を付した符号はV相上側、「_WH」を付した符号はW相上側、「_UL」を付した符号はU相下側、「_VL」を付した符号はV相下側、「_WL」を付した符号はW相下側にそれぞれ対応するものとする。
【0079】
<制御部の機能ブロック>
図12は、実施の形態2に係る制御部の構成を示すブロック図である。制御部20は、制御指令としての三相デューティ指令、すなわち、U相デューティ指令Dref_u、V相デューティ指令Dref_vおよびW相デューティ指令Dref_w(以下、三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wと記載)を生成し、三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wを指令パルス幅算出手段23および制御信号生成手段29に出力する制御指令生成手段21と、三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wに基づいてPWM制御信号SW**を生成し、PWM制御信号SW**を被制御装置900(
図12では図示省略)および出力パルス幅取得手段22に出力する制御信号生成手段29と、それぞれのPWM制御信号SW**のパルス幅である出力パルス幅Wact**(Wact_UH、Wact_VH、Wact_WH、Wact_UL、Wact_VL、Wact_WL)を取得し、出力パルス幅Wact**を異常判定手段27に出力する出力パルス幅取得手段22と、三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wに基づいて指令パルス幅Wref**(Wref_UH、Wref_VH、Wref_WH、Wref_UL、Wref_VL、Wref_WL)を算出し、指令パルス幅Wref**を異常判定手段27に出力する指令パルス幅算出手段23とを備える。
【0080】
制御部20は、さらに、それぞれの出力パルス幅Wact**とそれぞれの指令パルス幅Wref**との比較結果などからPWM制御の異常の有無を判定し、結果を状態判定結果ErrSt**(ErrSt_UH、ErrSt_VH、ErrSt_WH、ErrSt_UL、ErrSt_VL、ErrSt_WL)として出力する異常判定手段27と、異常判定手段27から状態判定結果ErrSt**が入力され、状態判定結果ErrSt**に応じて停止指示信号Stpを制御信号生成手段29に出力する出力停止指示手段18を有する。なお、異常判定手段27は、U相上側等のそれぞれについて出力パルス幅Wact**と指令パルス幅Wref**との比較による異常判定を行うなどして、U相上側等のそれぞれについて異常の有無を判定する。
【0081】
また、制御部20は、ロータ回転角θmに基づいて電気角θeおよび電気角周期Tωを算出し、電気角θeを制御指令生成手段21に出力するとともに、電気角周期Tωを正常制御判定手段26に出力する回転状態取得手段25と、電気角周期Tωおよび状態判定結果ErrSt**に基づいて、PWM制御が正常に動作していることを判定する正常制御判定手段26とを備える。
【0082】
制御指令生成手段21について説明する。
図13は、実施の形態2に係る制御指令生成手段の構成を示すブロック図である。電動機901を制御するための制御指令としては、例えば、トルク指令、電流指令、電圧指令等が挙げられるが、実施の形態2では一例としてトルク指令Trq*を制御指令として採用している。制御指令生成手段21は、トルク指令Trq*に基づいて、d-q軸座標系の電流指令、すなわち、d軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*を生成する電流指令生成部21aと、三相電流検出値Iu、Iv、Iwをd-q軸座標系の電流検出値、すなわち、d軸電流検出値Idおよびq軸電流検出値Iqに変換する三相二相変換部21cと、d軸電流指令Id*とd軸電流検出値Idの偏差ΔId(図示省略)、およびq軸電流指令Iq*とq軸電流検出値Iqの偏差ΔIq(図示省略)にそれぞれ基づいて、d-q軸座標系の電圧指令、すなわち、d軸電圧指令Vdcおよびq軸電圧指令Vqcを生成する電圧指令生成部21bと、d軸電圧指令Vdcおよびq軸電圧指令Vqcを三相の電圧指令、すなわち、U相電圧指令Vuc、V相電圧指令VvcおよびW相電圧指令Vwc(以下、三相電圧指令Vuc、Vvc、Vwcと記載)に変換する二相三相変換部21dと、三相電圧指令Vuc、Vvc、Vwcに基づいて、三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wを算出するデューティ指令算出部21eとを備える。
【0083】
電流指令生成部21aは、図示省略した上位コントローラもしくは上位システムからトルク指令Trq*が入力され、トルク指令Trq*に基づいてd軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*を生成する。d-q軸座標系において、d軸は電動機901の磁極位置、すなわち磁束の方向を示し、q軸は電気的にd軸と直交する方向を示す。d-q軸座標系は回転座標系であり、磁石を有する電動機901のロータが回転すると、d-q軸座標系も回転する。
【0084】
電圧指令生成部21bは、d-q軸座標系の電流指令について電流フィードバック演算を行うものであり、d軸電流についての偏差ΔIdおよびq軸電流についての偏差ΔIqがそれぞれゼロに収束するようにd軸電圧指令Vdcおよびq軸電圧指令Vqcを生成する。
【0085】
三相二相変換部21cは、電流センサ905および回転状態取得手段25から三相電流検出値Iu、Iv、Iwおよび電気角θeが入力され、電気角θeを用いて三相電流検出値Iu、Iv、Iwをd-q軸座標系の電流検出値であるd軸電流検出値Idおよびq軸電流検出値Iqに変換する。
【0086】
二相三相変換部21dは、電圧指令生成部21bからd軸電圧指令Vdcおよびq軸電圧指令Vqcが入力されるとともに、回転状態取得手段25から電気角θeが入力され、電気角θeを用いてd軸電圧指令Vdcおよびq軸電圧指令Vqcを三相電圧指令Vuc、Vvc、Vwcに変換する。なお、三相電圧指令Vuc、Vvc、Vwcは、インバータ回路902に入力される入力電圧Vpn以下となるように設定されることが好ましい。
【0087】
デューティ指令算出部21eは、二相三相変換部21dから三相電圧指令Vuc、Vvc、Vwcが入力されるとともに、電圧センサ906から入力電圧Vpnが入力され、三相電圧指令Vuc、Vvc、Vwcと入力電圧Vpnとから、三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wを生成する。この際、デューティ指令算出部21eは、最適補正制御指令に対応した三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wを生成する。デューティ指令算出部21eは、生成した三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wを制御信号生成手段29に出力する。
【0088】
出力パルス幅取得手段22は、出力パルス幅Wact**を取得する。上述したように、出力パルス幅Wact**は6つの出力パルス幅が含まれる。それぞれの出力パルス幅の取得については、実施の形態1の出力パルス幅取得手段12と同様である。
【0089】
指令パルス幅算出手段23は、指令パルス幅Wref**を算出する。上述したように、指令パルス幅Wref**には6つの指令パルス幅が含まれる。それぞれの指令パルス幅の算出については、実施の形態1の指令パルス幅算出手段13と同様である。
【0090】
回転状態取得手段25について説明する。
図14は、実施の形態2に係る回転状態取得手段の構成を示すブロック図である。回転状態取得手段25は、電動機901のロータ回転角θmが回転角センサ907から入力され、電動機901の極対数に基づいてロータ回転角θmを電気角θeに換算する電気角算出部25aと、電気角θeから電気角周期Tωを算出する電気角周期算出部25bとを備える。電気角算出部25aは、算出した電気角θeを制御指令生成手段21および電気角周期算出部25bに出力する。電気角周期算出部25bは、算出した電気角周期Tωを異常判定手段27および正常制御判定手段26に出力する。電気角周期Tωは、電動機901の回転状態に基づいて決まる時間の一例である。
【0091】
正常制御判定手段26は、異常判定手段27による判定結果と、回転状態取得手段25が取得した電動機901の回転状態に基づいて、PWM制御信号SW**が固着などすることなく、PWM制御が正常に動作していることを判定するものである。ここで「固着」とは、PWM制御信号SW**が意図しない形で「ハイ」または「ロー」の状態を維持し続けることを示し、PWM制御信号SW**の信号レベルを正常に切り替えることができない異常な状態を示す。PWM制御信号SW**の固着は、PWM制御装置200の入力回路の異常などによりセンサ等からの入力を取り込めない場合、メモリの書き換えが正常に行われない場合、演算装置が正常に動作していない場合などに起こり得る。また、制御部20をマイクロコンピュータで構成する場合は、マイクロコンピュータの出力回路に異常がある(PWM制御に用いる出力タイマのレジスタ値が正常に更新されないなど)場合にもPWM制御信号SW**の固着は起こり得る。
【0092】
正常制御判定手段26は、後述する異常判定手段27による状態判定結果ErrSt**が「正常」である状態が電気角周期Tωの2分の1(以下では「Tω/2」と記載)以上継続した場合に、PWM制御が正常であると判定する。PWM制御の正常判定の詳細については後述する。
【0093】
異常判定手段27について説明する。
図15は、実施の形態2に係る異常判定手段の構成を示すブロック図である。異常判定手段27は、指令パルス幅Wref**と出力パルス幅Wact**との差分WDiff**(WDiff_UH、WDiff_VH、WDiff_WH、WDiff_UL、WDiff_VL、WDiff_WL)を算出するパルス幅比較部27aと、差分WDiff**の異常の有無を判定し、結果を差分異常判定結果ErrD**(ErrD_UH、ErrD_VH、ErrD_WH、ErrD_UL、ErrD_VL、ErrD_WL)として出力する差分異常判定部27bと、出力パルス幅Wact**が同じ値を継続した時間をパルス幅固着時間FixT**(FixT_UH、FixT_VH、FixT_WH、FixT_UL、FixT_VL、FixT_WL)として計測するパルス幅固着時間計測部27cと、PWM制御指令の理想値の時間変動の有無を判定する回転変動判定部27dと、PWM制御の制御指令の異常の有無を判定し、結果を制御指令異常判定結果ErrR**(ErrR_UH、ErrR_VH、ErrR_WH、ErrR_UL、ErrR_VL、ErrR_WL)として出力する制御指令異常判定部27eと、差分異常判定結果ErrD**および制御指令異常判定結果ErrR**に基づいて異常の有無を判定し、結果を異常判定結果Err**(Err_UH、Err_VH、Err_WH、Err_UL、Err_VL、Err_WL)として出力する異常有無判定部27fとを備える。
【0094】
また異常判定手段27は、PWM制御信号SW**の出力パルスのオン固着判定をし、結果をオン固着判定結果FixON**(FixON_UH、FixON_VH、FixON_WH、FixON_UL、FixON_VL、FixON_WL)として出力するオン固着判定部27gと、PWM制御信号SW**の出力パルスのオフ固着判定をし、結果をオフ固着判定結果FixOFF**(FixOFF_UH、FixOFF_VH、FixOFF_WH、FixOFF_UL、FixOFF_VL、FixOFF_WL)として出力するオフ固着判定部27hと、異常判定結果Err**、オン固着判定結果FixON**およびオフ固着判定結果FixOFF**に基づいてPWM制御の状態の判定をし、結果を状態判定結果ErrSt**として出力する制御状態判定部27iとを備える。
【0095】
パルス幅比較部27aは、指令パルス幅Wref**および出力パルス幅Wact**がそれぞれ指令パルス幅算出手段23および出力パルス幅取得手段22から入力される。上述したとおり、指令パルス幅Wref**および出力パルス幅Wact**は、U相上側など、インバータ回路902の各スイッチング素子に対応する6つの指令パルス幅および出力パルス幅を含んでいる。パルス幅比較部27aは、それぞれ対応する指令パルス幅と出力パルス幅の差分を算出し、差分WDiff**を算出する。パルス幅比較部27aは、差分WDiff**を差分異常判定部27bに出力する。
【0096】
差分異常判定部27bは、差分WDiff**に含まれる6つの差分それぞれについて、閾値Dth以上か否かをそれぞれ判定する。これにより、差分異常判定結果ErrD**は、U相上側など、各スイッチング素子それぞれについての差分異常の有無が示されている。差分異常判定部27bは、差分異常判定結果ErrD**を異常有無判定部27fに出力する。
【0097】
パルス幅固着時間計測部27cは、出力パルス幅取得手段22から出力パルス幅Wact**が入力され、出力パルス幅Wact**に含まれるそれぞれの出力パルス幅について、同じ値が継続した時間をパルス幅固着時間として計測する。パルス幅固着時間計測部27cは、パルス幅固着時間FixT**を制御指令異常判定部27eおよびオン固着判定部27gに出力する。なお、PWMパルス周期を変動させる場合は、出力パルス幅の上限値が変動するため、パルス幅固着時間計測部27cは、出力パルス幅の上限値が継続した時間も固着時間として計測する。
【0098】
回転変動判定部27dは、出力されるべきPWM制御指令(三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_w)の理想値の時間変動の有無を判定するものである。回転変動判定部27dは、図示を省略した上位コントローラもしくは上位システムからトルク指令Trq*が入力され、トルク指令Trq*がゼロの場合、「時間変動なし」と判定し、トルク指令Trq*が非零の場合は「時間変動あり」と判定する。回転変動判定部27dは、上記の判定結果を時間変動有無Ref_vとして制御指令異常判定部27eに出力する。なお、実施の形態2では、PWM制御指令の理想値の時間変動の有無をトルク指令Trq*に応じて判定しているが、PWM制御信号SW**の理想値の時間変動の有無をデューティ指令(三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_w)に応じて判定する構成としてもよい。例えば、デューティ指令が50%の場合において「時間変動なし」と判定してもよい。
【0099】
制御指令異常判定部27eは、パルス幅固着時間計測部27cおよび回転状態取得手段25からパルス幅固着時間FixT**および電気角周期Tωが入力され、回転変動判定部27dから時間変動有無Ref_vが入力される。制御指令異常判定部27eは、時間変動有無Ref_vが「時間変動あり」の場合、かつ、パルス幅固着時間FixT**がTω/2以上の場合、「制御指令異常あり」と判定し、上記の条件が満たされない場合、すなわち、時間変動有無Ref_vが「時間変動なし」またはパルス幅固着時間FixT**がTω/2未満である場合、「制御指令異常無し」と判定する。
【0100】
なお、制御指令異常判定部27eは、電動機901の回転速度が予め定められた回転速度以下では判定を行わないものとしてもよい。この場合、制御指令異常判定部27eは、電動機901の回転速度が予め定められた回転速度よりも大きい場合のみ制御指令異常の判定を行う。三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wの値は、電気角θeに応じて決まるものであるが、電気角θeは、電動機901の回転により変化するので、電動機901の回転が無ければ電気角θeが固定値となり、PWM制御が正常であっても三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wの値が同じ値を継続する可能性がある。上記のように電動機901の回転速度が予め定められた回転速度よりも大きい場合のみ制御指令異常の判定を行うこととすれば、電動機901が回転していない場合の異常の誤検出を防ぐことができる。なお、電動機901の回転速度は、回転状態取得手段25にて、ロータ回転角θmの時間変化を算出することで取得すればよい。
【0101】
また、実施の形態2の制御指令異常判定部27eは、出力パルス幅Wact**の固着時間を用いて制御指令異常の有無を判定しているが、指令パルス幅Wref**の固着時間を用いて制御指令異常の有無を判定してもよい。この場合、パルス幅固着時間計測部27cには指令パルス幅Wref**が入力され、パルス幅固着時間計測部27cは、指令パルス幅Wref**に含まれるそれぞれの指令パルス幅について、同じ値が継続した時間をパルス幅固着時間として計測する。
【0102】
また、パルス幅固着時間FixT**がTω/2以上の場合に「制御指令異常あり」と判定しているが、制御指令異常の判定において、Tω/2よりも小さな時間を判定値としてもよい。この場合、より早期に制御指令異常が検出される。
【0103】
異常有無判定部27fは、差分異常判定結果ErrD**および制御指令異常判定結果ErrR**が差分異常判定部27bおよび制御指令異常判定部27eからそれぞれ入力され、差分異常判定結果ErrD**および制御指令異常判定結果ErrR**の少なくとも一方が異常ありの場合に異常があると判定し、いずれも異常無しの場合は異常が無いと判定して、結果を異常判定結果Err**として制御状態判定部27iに出力する。差分異常判定結果ErrD**および制御指令異常判定結果ErrR**は、いずれもインバータ回路902の各スイッチング素子に対応する6つの判定結果を含んでいる。このため、異常有無判定部27fによる異常の有無の判定もそれぞれについて行われる。例えば、U相上側について「差分異常判定結果:異常あり」「制御指令異常判定結果:異常無し」であり、V相上側について「差分異常判定結果:異常無し」「制御指令異常判定結果:異常無し」である場合、異常判定結果Err**において、U相上側については「異常あり」、V相上側については「異常無し」となる。
【0104】
上記のように、指令パルス幅と出力パルス幅の差分に基づく異常判定と、制御指令についての異常判定とを組み合わせることにより、制御部20内においてメモリの書き換えが正常に行われない場合、または、演算装置が正常に動作していない場合などについてもPWM制御の異常を検出することができる。
【0105】
オン固着判定部27gは、出力パルス幅Wact**およびパルス幅固着時間FixT**が出力パルス幅取得手段22およびパルス幅固着時間計測部27cからそれぞれ入力され、出力パルス幅Wact**およびパルス幅固着時間FixT**に基づいて、インバータ回路902の各スイッチング素子についてのオン固着の有無を判定し、結果をオン固着判定結果FixON**として制御状態判定部27iに出力する。オン固着判定部27gは、パルス幅固着時間FixT**が予め定められた時間以上(例えばTω/2以上)であり、かつ、出力パルス幅Wact**がPWMパルス周期である場合に、オン固着が起こっている(PWM制御信号が意図しない形でハイの状態を維持している)と判定する。なお上記のように、オン固着の有無の判定はインバータ回路902の各スイッチング素子についてそれぞれ行われる。このため、オン固着判定結果FixON**には、例えばU相上側など、6つのオン固着判定結果が含まれる。
【0106】
オフ固着判定部27hは、出力パルス幅Wact**およびパルス幅固着時間FixT**が出力パルス幅取得手段22およびパルス幅固着時間計測部27cからそれぞれ入力され、出力パルス幅Wact**およびパルス幅固着時間FixT**に基づいて、インバータ回路902の各スイッチング素子についてのオフ固着の有無を判定し、結果をオフ固着判定結果FixOFF**として制御状態判定部27iに出力する。オフ固着判定部27hは、パルス幅固着時間FixT**が予め定められた時間以上(例えばTω/2以上)であり、かつ、出力パルス幅Wact**がゼロである場合に、オフ固着が起こっている(PWM制御信号が意図しない形でローの状態を維持している)と判定する。なお上記のように、オフ固着の有無の判定はインバータ回路902の各スイッチング素子についてそれぞれ行われる。このため、オフ固着判定結果FixOFF**には、例えばU相上側など、6つのオフ固着判定結果が含まれる。
【0107】
制御状態判定部27iは、異常判定結果Err**が異常有無判定部27fから入力され、オン固着判定結果FixON**およびオフ固着判定結果FixOFF**がオン固着判定部27gおよびオフ固着判定部27hからそれぞれ入力される。制御状態判定部27iは、異常判定結果Err**、オン固着判定結果FixON**およびオフ固着判定結果FixOFF**に基づいてPWM制御の状態を判定し、状態判定結果ErrSt**として、出力停止指示手段28および正常制御判定手段26に出力する。
【0108】
状態判定結果ErrSt**には、「正常」、「オン固着異常」、「オフ固着異常」および「パルス異常」がある。制御状態判定部27iは、異常判定結果Err**が「異常無し」の場合、状態判定結果ErrSt**を「正常」とする。また、異常判定結果Err**が「異常あり」の場合で、かつ、オン固着判定結果FixON**が「オン固着あり」の場合は状態判定結果ErrSt**を「オン固着異常」とし、異常判定結果Err**が「異常あり」の場合で、かつ、オフ固着判定結果FixOFF**が「オフ固着あり」の場合は状態判定結果ErrSt**を「オフ固着異常」とする。また、異常判定結果Err**が「異常あり」の場合で、かつ、オン固着判定結果FixON**およびオフ固着判定結果FixOFF**がそれぞれ「オン固着無し」および「オフ固着無し」の場合、制御状態判定部27iは状態判定結果ErrSt**を「パルス異常」とする。
上記のように、「オン固着異常」および「オフ固着異常」は、異常判定手段27によりPWM制御に異常があると判定された場合に、どのような異常かを示すものであり、オン固着の有無およびオフ固着の有無の判定は、PWM制御の異常の有無の判定とは別に実行してもよい。このため、オン固着判定部27gおよびオフ固着判定部27hは、必ずしも異常判定手段27に設ける必要はない。また、パルス幅固着時間計測部27cも、出力パルス幅Wact**のパルス幅固着時間を計測するもので、それ自体が異常判定をするものではないから、必ずしも異常判定手段27に設ける必要はない。
【0109】
なお、状態判定結果ErrSt**も、例えばU相上側など、インバータ回路902の各スイッチング素子にそれぞれ対応する6つの状態判定結果を含む。
【0110】
出力停止指示手段28は、実施の形態1の出力停止指示手段18と同様に、状態判定結果ErrSt**が示すPWM制御の状態に応じて、制御信号生成手段29によるPWM制御信号SW**の生成を停止させる。なお、上述しように状態判定結果ErrSt**は、例えばU相上側の状態判定結果など、インバータ回路902の各スイッチング素子に対応する6つの状態判定結果が含まれる。このため、出力停止指示手段28は、各スイッチング素子に対応するそれぞれのPWM制御信号の状態に応じた停止指示信号Stpを生成する。
【0111】
また、実施の形態2では電動機901を動作させるための電力変換装置1000にPWM制御装置200を適用しており、複数のPWM制御信号SW**のそれぞれの制御状態に応じてPWM制御信号のレベルを設定するような停止指示信号Stpを生成する。たとえば、電動機901の相電流をインバータ回路902内で止め、インバータ回路902の入力側に電力を回生させないようにするため、インバータ回路902の上側スイッチング素子のすべてまたは下側スイッチング素子のすべてをオンにし、電動機901の各相を互いに短絡させた、いわゆる三相短絡の状態にするようにPWM制御信号SW**の出力停止を行う場合がある。
【0112】
例えば、U相上側のPWM制御信号SW_UHについての状態判定結果ErrSt_UHが「オフ固着異常」である場合、インバータ回路902の上側スイッチング素子の全てをオン、下側スイッチング素子の全てをオフで三相短絡するようにPWM制御信号SW**の出力停止を指示しても、U相上側のスイッチング素子はオフのままのため、三相短絡ができない。このため、出力停止指示手段28は、複数のPWM制御信号SW**の正常または異常状態に応じた停止指示信号Stpを生成し、制御信号生成手段29に出力する。
【0113】
状態判定結果ErrSt**が全て「正常」である場合、出力停止指示手段28は、出力停止の指示を出さない。
【0114】
上側のいずれかのスイッチング素子(例えばU相上側)についての状態判定結果ErrSt**が「オン固着異常」である場合、出力停止指示手段28は、上側の全てのスイッチング素子に対するPWM制御信号、すなわち、PWM制御信号SW_UH、SW_VH、SW_WHの信号レベルを「ハイ」とし、下側の全てのスイッチング素子に対するPWM制御信号、すなわち、PWM制御信号SW_UL、SW_VL、SW_WLの信号レベルを「ロー」とするような停止指示信号Stpを生成する。下側のいずれかのスイッチング素子についての状態判定結果ErrSt**が「オン固着異常」である場合も同様である。
【0115】
上側のいずれかのスイッチング素子(例えばU相上側)についての状態判定結果ErrSt**が「オフ固着異常」である場合、出力停止指示手段28は、上側の全てのスイッチング素子に対するPWM制御信号、すなわち、PWM制御信号SW_UH、SW_VH、SW_WHの信号レベルを「ロー」とし、下側の全てのスイッチング素子に対するPWM制御信号、すなわち、PWM制御信号SW_UL、SW_VL、SW_WLの信号レベルを「ハイ」とする停止指示信号Stpを生成する。下側のいずれかのスイッチング素子についての状態判定結果ErrSt**が「オフ固着異常」である場合も同様である。
【0116】
上記のように、「オン固着異常」の場合は、「オン固着異常」と判定されたスイッチング素子と同じ側(上側または下側)のスイッチング素子に対する全てのPWM制御信号を「ハイ」にし、反対側(下側また上側)のスイッチング素子に対する全てのPWM制御信号を「ロー」とする。「オフ固着異常」の場合は、「オフ固着異常」と判定されたスイッチング素子と同じ側(上側または下側)のスイッチング素子に対する全てのPWM制御信号を「ロー」にし、反対側(下側また上側)のスイッチング素子に対する全てのPWM制御信号を「ハイ」とする。このように、出力停止指示手段28は、出力停止時のスイッチング素子の状態を、異常の種類に応じて設定する
【0117】
状態判定結果ErrSt**が「パルス異常」であるスイッチング素子に対するPWM制御信号について、出力停止指示手段28は、PWM制御信号の出力を停止させる停止指示信号Stpを生成する。
【0118】
制御信号生成手段29は、三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wに応じて、被制御装置900を制御するためのPWM制御信号SW**を生成し出力する。制御信号生成手段29によるPWM制御信号SWの生成は、実施の形態1の制御信号生成手段19と同様で、三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wとキャリアの比較により行うが、制御信号生成手段29は、インバータ回路902の各スイッチング素子に対応する、6つのPWM制御信号SW**を生成する。また制御信号生成手段29は、出力停止指示手段28から停止指示信号Stpを受信した場合、停止指示信号Stpの内容に応じて、PWM制御信号SW**の一部または全部の生成および出力を停止する。あるいは、信号のレベルを「ハイ」または「ロー」に設定する。
【0119】
上記の構成により、電動機901を制御対象とした場合において、複数のPWM制御信号SW**の制御状態に応じてPWM制御信号の出力停止を指示し、PWM制御に異常が生じている場合に電動機901を早期に停止することができる。
【0120】
実施の形態2におけるPWM制御装置200が持つ3つの特徴について説明する。1つ目は、上述した正常制御判定手段26による正常判定である。上述したように、異常判定手段27による異常判定結果と、回転状態取得手段25が取得した電動機901の回転状態(電気角周期Tω)に基づいて、PWM制御が正常であることを判定する。これにより、PWM制御信号SW**が固着することなく、PWM制御が正常に動作していることが確認される。
【0121】
2つ目は、異常判定手段27において、出力パルス幅Wact**と指令パルス幅Wref**に差異がない場合でも、回転状態取得手段25で取得した電動機901の回転状態(電気角周期Tω)と出力パルス幅Wact**とから、PWM制御の異常を判定する点である。
【0122】
3つ目は、異常判定手段27において、出力パルス幅が一定になっている時間を計測ことでPWM制御信号SW**のオン固着異常およびオフ固着異常を判定し、出力停止指示手段28は、各スイッチング素子に対応するそれぞれのPWM制御信号SW**信号の異常状態に応じた停止指示信号Stpを生成する点である。
【0123】
実施の形態2においても実施の形態1と同様に、デューティ指令が0%または100%の場合においても、出力パルス幅計測値Wmonを補正することにより正確な出力パルス幅Wact**を取得できる。このため、指令パルス幅Wref**と出力パルス幅Wact**との比較結果(差分WDiff**)に基づく異常判定を正しく行うことができる点は実施の形態1と同様である。
【0124】
しかしながら、PWMデューティ指令が0%または100%の場合、指令パルス幅Wref**と出力パルス幅Wact**に差異がなくても、例えば上述したような、PWM制御信号SW**の固着が生じている可能性がある場合、実際にデューティ指令どおりにPWM制御が動作しているのかは定かではないことになる。実施の形態2の正常制御判定手段26は、このような場合でも正常なPWM制御が行われていること判定するものである。以下、説明する。
【0125】
図16は、実施の形態2において、電気角の時間波形とU相上側のPWM制御信号の時間波形とを比較する図であり、上側のグラフが電気角θeの時間波形を示し、下側のグラフがU相上側のPWM制御信号SW_UHを示している。上述したように、三相電圧指令Vuc、Vvc、Vwcは、d軸電圧指令Vdcおよびq軸電圧指令Vqcと、電気角θeに基づいて算出されるため、三相電圧指令Vuc、Vvc、Vwcに基づいて算出される三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_w、および、三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wに基づいて生成されるPWM制御信号SW**は、電気角周期Tωで変動する。このような場合、PWM制御が正常に動作していれば、デューティ指令が0%または100%の状態がTω/2以上継続することはない。すなわち、異常判定手段27の出力である状態判定結果ErrSt**が「正常」の状態がTω/2以上継続していれば、PWM制御信号SW**の信号レベルが「ハイ」または「
ロー」に固着することなく、PWM制御が正常に動作していると言える。
図16では、時刻0.017秒付近にPWM制御信号の出力パルスが無い期間T3があるが、期間T3がTω/2以上となることはない。正常制御判定手段26による判定において、状態判定結果ErrSt**が「正常」である状態がTω/2以上継続した場合に、PWM制御が正常であると判定しているのはこのためである。
【0126】
差分異常判定部27bによる異常判定、すなわち、指令パルス幅Wref**と出力パルス幅Wact**の比較に基づく異常判定は、指令パルス幅Wref**が正しことを前提としているため、指令パルス幅Wref**の算出根拠となっている三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wの生成までに発生した異常は検出できない。実施の形態2のように、電動機901を動作させるための電力変換装置1000にPWM制御装置200を適用している場合、三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wの生成までの異常も検出する必要がある。実施の形態2では、PWM制御が正常に動作していればを制御部20内の制御指令(三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wを含む)が同じ値をTω/2以上継続することはない点に着目し、制御部20の出力であるPWM制御信号SW**の出力パルス幅Wact**がTω/2以上同じ値を継続した場合は、制御指令異常判定部27e、オン固着判定部27gおよびオフ固着判定部27hにより、制御部20内における制御指令の演算停止、メモリの固着などの異常が発生していると判定するものである。
【0127】
ただし、三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wの値の時間変動幅が小さくなる場合もある。実施の形態2では、制御指令生成手段21に入力されたトルク指令Trq*に基づいて三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wが生成されるが、例えばトルク指令がゼロの場合、生成されるデューティ指令の値は50%付近となり、PWM制御が正常に動作していても同じ値を継続する場合がある。このような場合、出力パルス幅Wact**のパルス幅固着時間FixT**に基づく異常判定は行わないこととすればよい。これにより、異常の誤検出を防ぐことができる。
【0128】
上述したように、実施の形態2の制御指令異常判定部27eは、時間変動有無Ref_vが「時間変動あり」の場合、かつ、パルス幅固着時間FixT**がTω/2以上の場合、「制御指令異常あり」と判定している。トルク指令Trq*がゼロの場合、時間変動有無Ref_vは「時間変動無し」となり、パルス幅固着時間FixT**に関わらず「制御指令異常無し」となる。このため、上記した三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wの値の時間変動幅が小さくなる場合における異常の誤検出が防がれる。
【0129】
以上に説明したように、実施の形態2のPWM制御装置は、電動機を動作させるための電力変換装置にPWM制御装置を適用した場合において、PWM制御信号が固着することなく、PWM制御が正常に動作していることを確認できる。また、制御指令の演算停止、メモリの固着などの異常が発生した場合にもPWM制御の異常を検出できる。さらに、複数のPWM制御信号の制御状態に応じて適切にPWM制御信号の出力の停止を指示し、適切なタイミングで電動機の動作を停止することができる。
【0130】
なお、実施の形態2では、PWM制御装置200の出力であるPWM制御信号SW**をモニタし、PWM制御信号SW**の出力パルス幅を取得する構成としたが、駆動回路903の出力である駆動信号をモニタし、駆動信号の出力パルス幅を取得する構成であってもよい。この場合、異常判定において駆動信号の出力パルス幅と指令パルス幅Wref**とを比較することとなり、PWM制御装置200から電動機901までの伝達経路において生じた異常も検出できる。また、マイクロコンピュータの出力先のステートバッファICまたはゲートドライバが故障している場合などは、駆動回路903の出力である駆動信号の固着が起こり得る。このため、駆動回路903の出力である駆動信号をモニタし、駆動信号の出力パルス幅を取得する構成とすることで、駆動信号の固着の有無を判定することができる。
【0131】
また、実施の形態2に係る電力変換装置は、直流電力から交流電力へ変換するインバータ(Inverter)を想定して記載したが、電力変換装置の種類はこれに限るものでは無く、半導体スイッチング素子を備え電力の出力形態を変換する電力変換装置であればよい。例えば、交流電力を直流電力へ変換するAC/DCコンバータ(Alternate Current/Direct Current Converter)、または直流電力の電圧と電流のレベルを変化させて出力するDC/DCコンバータ(Direct Current/Direct Current Converter)であってもよい。
【0132】
<PWM制御装置の動作>
次に、動作について説明する。
図17は、実施の形態2におけるPWM制御装置の動作を示すフロー図である。まず、電動機901の回転状態を取得する(ステップST201:回転状態取得工程)。より具体的には、回転角センサ907より電動機901のロータ回転角θmを取得し、ロータ回転角θmに基づいて電気角θeおよび電気角周期Tωを算出する。
【0133】
次に、制御指令としての三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wを生成する(ステップST202:制御指令生成工程)。
【0134】
次に、三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wに応じて、6つのPWM制御信号SW**を生成する(ステップST203:制御信号生成工程)。
【0135】
次に、PWM制御信号SW**のそれぞれの出力パルス幅Wact**を取得する(ステップST204:出力パルス幅取得工程)。それぞれの出力パルス幅Wact**の取得については、実施の形態1で説明した出力パルス幅取得工程と同様である。
【0136】
次に、三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_wに基づいて6つの指令パルス幅Wref**を算出する(ステップST205:指令パルス幅算出工程)。
【0137】
次に、PWM制御における異常の有無を判定する(ステップST206:異常判定工程)。異常判定工程の詳細については後述する。
【0138】
次に、異常判定工程において異常があると判定した場合、すなわち、6つの状態判定結果ErrSt**のいずれかが「オン固着異常」、「オフ固着異常」、または「パルス異常」である場合はステップST208に進み、異常が無いと判定した場合、すなわち、6つの状態判定結果ErrSt**が全て「正常」である場合はステップST209に進む(ステップST207)。
【0139】
異常判定工程において異常があると判定した場合、PWM制御信号SW**の生成および出力を停止する(ステップST208:出力停止指示工程)。上述したように、実施の形態2では電動機901を動作させるための電力変換装置1000にPWM制御装置200を適用しており、入力側に電力を回生させないよう三相短絡の状態でPWM制御信号SW**の出力停止をするなど、異常の種類および異常が発生しているスイッチング素子に応じてPWM制御信号SW**の出力停止を行う。PWM制御信号SW**の出力停止についての詳細は上述したとおりである。
【0140】
異常判定工程において異常がないと判定した場合、電動機901の回転状態(電気角周期Tω)に基づいて、PWM制御が正常に動作していることを判定する(ステップST209:正常判定工程)。より具体的には、6つの状態判定結果ErrSt**全てが「正常」である状態がTω/2以上継続した場合に、PWM制御が正常に動作していると判定する。
【0141】
<異常判定工程のフロー>
実施の形態2における異常判定工程について説明する。
図18は、実施の形態2に係る異常判定工程を示すフロー図である。まず、出力パルス幅Wact**に含まれるそれぞれの出力パルス幅と、指令パルス幅Wref**に含まれるそれぞれの指令パルス幅の差分WDiff**をそれぞれ算出し、それぞれの差分WDiff**と閾値Dthとを比較する(ステップST2061:パルス幅比較工程)。
【0142】
次に、差分WDiff**に含まれるそれぞれの差分について、閾値Dth以上である場合は異常があると判定し、差分WDiffが閾値Dth未満である場合は異常が無いと判定することにより、判定結果として差分異常判定結果ErrD**を得る(ステップST2062:差分異常判定工程)。
【0143】
次に、出力パルス幅Wact**に含まれるそれぞれの出力パルス幅について、同じ値が継続した時間をパルス幅固着時間FixT**として計測する(ステップST2063:パルス幅固着時間計測工程)。PWMパルス周期を変動させる場合は、出力パルス幅の上限値が変動するため、出力パルス幅の上限値が継続した時間も固着時間として計測する。
【0144】
次に、図示省略した上位コントローラもしくは上位システムが出力するトルク指令Trq*に基づき、PWM制御指令(三相デューティ指令Dref_u、Dref_v、Dref_w)の理想値の時間変動の有無を判定し、判定結果として時間変動有無Ref_vを得る(ステップST2064:回転変動判定工程)。回転変動判定工程において、トルク指令Trq*がゼロの場合、「時間変動なし」と判定し、トルク指令Trq*が非零の場合は「時間変動あり」と判定する。
【0145】
次に、パルス幅固着時間FixT**、電気角周期Tω、および時間変動有無Ref_vに基づいて、制御指令の異常の有無を判定し、判定結果として制御指令異常判定結果ErrR**を得る(ステップST2065:制御指令異常判定工程)。:制御指令異常判定工程においては、時間変動有無Ref_vが「時間変動あり」の場合、かつ、パルス幅固着時間FixT**がTω/2以上の場合、「制御指令異常あり」と判定し、上記の条件が満たされない場合、すなわち、時間変動有無Ref_vが「時間変動なし」またはパルス幅固着時間FixT**がTω/2未満である場合、「制御指令異常無し」と判定する。なお、上述したように、電動機901の回転速度が予め定められた回転速度以下のときは制御指令異常判定工程を実施しないものとしてもよい。この場合、電動機901の回転速度が予め定められた回転速度よりも大きい場合のみ制御指令異常判定工程を実施する。
【0146】
次に、差分異常判定結果ErrD**および制御指令異常判定結果ErrR**に基づいて異常の有無を判定し、判定結果として異常判定結果Err**を得る(ステップST2066:異常有無判定工程)。異常有無判定工程において、差分異常判定結果ErrD**および制御指令異常判定結果ErrR**の少なくとも一方が異常ありの場合に異常があると判定し、いずれも異常無しの場合は異常が無いと判定する。上述したように、差分異常判定結果ErrD**および制御指令異常判定結果ErrR**は、いずれもインバータ回路902の各スイッチング素子に対応する6つの判定結果を含んでいるので、異常の有無を判定もそれぞれについて行われる。
【0147】
次に、出力パルス幅Wact**およびパルス幅固着時間FixT**に基づいて、インバータ回路902の各スイッチング素子についてのオン固着の有無を判定し、判定結果としてオン固着判定結果FixON**を得る。(ステップST2067:オン固着判定工程)。オン固着判定工程において、パルス幅固着時間FixT**が予め定められた時間以上(例えばTω/2以上)であり、かつ、出力パルス幅Wact**がPWMパルス周期である場合に、オン固着が起こっていると判定する。
【0148】
次に、出力パルス幅Wact**およびパルス幅固着時間FixT**に基づいて、インバータ回路902の各スイッチング素子についてのオフ固着の有無を判定し、判定結果としてオフ固着判定結果FixOFF**を得る(ステップST2068:オフ固着判定工程)。オフ固着判定工程において、パルス幅固着時間FixT**が予め定められた時間以上(例えばTω/2以上)であり、かつ、出力パルス幅Wact**がゼロである場合に、オフ固着が起こっていると判定する。
【0149】
次に、異常判定結果Err**、オン固着判定結果FixON**およびオフ固着判定結果FixOFF**に基づいてPWM制御の状態を判定し、判定結果として状態判定結果ErrSt**を得る(ステップST2069:制御状態判定工程)。上述したとおり、状態判定結果ErrSt**には、「正常」、「オン固着異常」、「オフ固着異常」および「パルス異常」がある。
【0150】
実施の形態2によれば、電動機を制御する電力変換装置に適用されるPWM制御装置において、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
また、電動機の回転状態と、PWM制御指令(三相デューティ指令)の理想値に基づき、PWM制御指令の異常も検出する構成とした。このため、指令パルス幅に異常があり、出力パルス幅と指令パルス幅の比較のみではPWM制御の異常判定を正しく行うことができない場合であっても、PWM制御指令の異常を検出し、異常判定を正しく行うことができる。
【0151】
また、複数のPWM制御信号についてそれぞれ異常判定をし、異常があると判定されてPWM制御信号の出力停止を指示する場合に、異常の種類、異常が発生したPWM制御信号に応じて出力停止時の信号レベルを設定する。これにより、電動機を適切に停止させることができる。
【0152】
実施の形態3.
次に、実施の形態3を
図19から
図22に基づいて説明する。実施の形態3は、電力変換装置の構成およびPWM制御装置の全体構成については実施の形態2と同様であるが、異常判定手段において差分異常判定の実施を省略しており、制御部および異常判定手段の構成が実施の形態2と異なる。
【0153】
以下、実施の形態3のPWM制御装置の構成および動作について、実施の形態2との差異を中心に説明する。なお、実施の形態2と同一あるいは相当部分は、同一の符号を付している。
【0154】
<制御部の機能ブロック>
図19は実施の形態3に係る制御部の構成を示すブロック図である。制御部30は、実施の形態2の制御部20から、指令パルス幅算出手段23が省略されている。このため、異常判定手段37への指令パルス幅Wref**の入力もない。
【0155】
異常判定手段37について説明する。
図20は、実施の形態3に係る異常判定手段の構成を示すブロック図である。異常判定手段37は、実施の形態2の異常判定手段27から、パルス幅比較部27aおよび差分異常判定部27bを省略したものである。パルス幅固着時間計測部27c、回転変動判定部27d、制御指令異常判定部27eについては実施の形態2と同様である。異常有無判定部37fは、制御指令異常判定結果ErrR**のみに基づいて異常の有無を判定し、結果を異常判定結果Err**として制御状態判定部27iに出力する。オン固着判定部27g、オフ固着判定部27hおよび制御状態判定部27iは実施の形態2と同様である。
【0156】
<PWM制御装置の動作>
次に、動作について説明する。
図21は、実施の形態3におけるPWM制御装置の動作を示すフロー図である。
図17と
図21を比較すると分かるように、実施の形態3におけるPWM制御装置の動作においては、指令パルス幅算出工程が省略されている。ステップST301からステップST304はステップST201からステップST204に対応し、ステップST305からステップST308はステップST206からステップST209に対応しており、それぞれの工程については実施の形態2と同様である。
【0157】
<異常判定工程のフロー>
実施の形態3における異常判定工程について説明する。
図22は、実施の形態3に係る異常判定工程を示すフロー図である。
図18と
図22を比較すると分かるように、実施の形態3における異常判定工程においては、パルス幅比較工程および差分異常判定工程が省略されているのみで、ステップST3051からステップST3057は、ステップST2063からステップST2069に対応している。それぞれの工程について、ステップST3054の異常有無判定工程では制御指令異常判定結果ErrR**のみに基づいて異常の有無を判定する点がステップST2066と異なるが、その他の工程については実施の形態2と同様である。
【0158】
実施の形態3によれば、差分異常の判定を行わないとすることにより、指令パルス幅の算出も省略した。このため、判定実施の形態2よりも構成を簡単にしつつ、PWM制御指令の異常を検出することを通じて、PWM制御の異常を検出することができる。
【0159】
なお、実施の形態3では出力パルス幅Wact**により、制御指令の異常判定、オン固着およびオフ固着の判定をしているが、出力パルス幅Wact**の代わりに指令パルス幅Wref**を用いることも考えられる。この場合、制御部に指令パルス幅算出手段を追加する必要があるが、出力パルス幅取得手段を省略することができる。すなわち、実施の形態3においては、出力パルス幅取得手段22および指令パルス幅算出手段23の少なくとも一方を備えればよい。異常判定手段37について、指令パルス幅Wref**を用いる場合は
図20の出力パルス幅Wact**を指令パルス幅Wref**に置き換えればよい。異常判定工程についても同様である。
【0160】
実施の形態4.
次に、実施の形態4を
図23および
図24に基づいて説明する。実施の形態4は、実施の形態3の異常判定手段から、オン固着判定部およびオフ固着判定部を省略したものである。
図23は、実施の形態4に係る異常判定手段の構成を示すブロック図である。異常判定手段47は、実施の形態3の異常判定手段37から、オン固着判定部27gおよびオフ固着判定部27hが省略されている。また、オン固着判定部27gおよびオフ固着判定部27hの省略に伴いオン固着判定結果FixON**およびオフ固着判定結果FixOFF**も無くなったので、状態判定結果ErrSt**は「異常あり」か「異常無し」しかなく、異常判定結果Err**と実質的に同じとなった。このため、制御状態判定部27iも省略し、異常有無判定部47fが状態判定結果ErrSt**を出力する構成としている。
【0161】
<PWM制御装置の動作(異常判定工程のフロー)>
次に、動作について説明する。異常判定工程以外は実施の形態3と同様であるので、異常判定工程のフローのみ説明する。
図24は、実施の形態4に係る異常判定工程を示すフロー図である。
図22と
図24を比較すると分かるように、実施の形態4における異常判定工程においては、オン固着判定工程、オフ固着判定工程および制御状態判定工程が省略されているのみで、ステップST4051からステップST4054は、ステップST3051からステップST3054に対応している。ただし、上述したように実施の形態4では状態判定結果ErrSt**がErr**と実質的に同じであることから、ステップST4054の異常有無判定工程は、ステップST3057の制御状態判定も含むものとなっている。その他の工程については実施の形態3と同様である。
【0162】
実施の形態4によれば、オン固着判定およびオフ固着判定も省略したことにより、実施の形態3よりもさらに構成を簡単にしつつ、PWM制御指令の異常を検出することを通じて、PWM制御の異常を検出することができる。
【0163】
なお、実施の形態4においても出力パルス幅Wact**の代わりに指令パルス幅Wref**を用いることが考えられる点は実施の形態3と同様である。
【0164】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0165】
例えば、実施の形態4は制御指令の異常判定のみを行う構成となっているが、オン固着のみ、あるいはオフ固着のみを判定することにより、PWM制御の異常を検出する形態も考えられる。
【0166】
また、実施の形態2のような正常制御判定手段を実施の形態1に適用することも考えられる。この場合、正常判定のための閾値を別途設定し、異常判定の結果である状態判定結果が「正常」である状態がこの閾値以上継続した場合に、PWM制御が正常に動作していると判定する。
【0167】
また、実施の形態2、3に示したようなオン固着判定手段およびオフ固着判定手段について、「オン固着あり」または「オフ固着あり」と判定するための予め定められた時間は、必ずしも電動機の回転状態を示す値に基づく必要はない。このため、被制御装置が電動機を有しない場合であってもオン固着判定およびオフ固着判定を実施することは可能である。例えば、実施の形態1の異常判定手段にパルス幅固着時間計測部、オン固着判定部およびオフ固着判定部を追加することも考えられる。この場合、差分異常判定の判定結果からPWM制御に異常があると判定された場合に、その異常が「オン固着異常」であるのか「オフ固着異常」であるのかを判定する。なお、上述したように、PWM制御に異常はあるがオン固着もオフ固着も無い場合は「パルス異常」となる。
【0168】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
PWM制御指令を生成する制御指令生成手段と、
前記PWM制御指令に基づいて、被制御装置を制御するPWM制御信号を生成する制御信号生成手段と、
前記PWM制御信号の出力パルス幅を取得する出力パルス幅取得手段と、
前記PWM制御指令のパルス幅である指令パルス幅を算出する指令パルス幅算出手段と、
前記出力パルス幅と前記指令パルス幅とを比較することにより、PWM制御の異常の有無を判定する異常判定手段とを備え、前記出力パルス幅取得手段は、
前記PWM制御信号の出力パルスの幅の計測値である出力パルス幅計測値を前記PWM制御信号のエッジに基づいて計測するとともに、前記PWM制御信号の出力パルスの有無を判定して前記出力パルスが無いと判定された場合に、前記出力パルス幅計測値を補正して、補正された前記出力パルス幅計測値を前記出力パルス幅とすることを特徴とするPWM制御装置。
(付記2)
前記出力パルス幅取得手段は、
前記エッジを検出する出力パルスエッジ検出部と、
前記エッジに基づいて前記出力パルス幅計測値を計測する出力パルス幅計測部と、
前記PWM制御信号の出力パルスの有無を判定するパルス有無判定部と、
前記出力パルスが無いと判定された場合に、前記出力パルス幅計測値を補正して、補正された前記出力パルス幅計測値を前記出力パルス幅とする出力パルス幅補正部とを備える付記1に記載のPWM制御装置。
(付記3)
前記出力パルス幅取得手段は、前記エッジの検出時刻を取得するエッジ時刻取得部をさらに備え、
前記パルス有無判定部は、前記エッジが最後に検出された時刻である最終エッジ検出時刻と現在時刻との差に基づいて前記出力パルスの有無を判定する付記2に記載のPWM制御装置。
(付記4)
前記出力パルス幅取得手段は、前記PWM制御信号の信号レベルを取得する信号レベル取得部をさらに備え、
前記出力パルス幅補正部は、前記最終エッジ検出時刻における前記PWM制御信号の信号レベルに基づいて前記出力パルス幅計測値を補正する付記3に記載のPWM制御装置。
(付記5)
前記制御信号生成手段は、PWMパルス周期により前記PWM制御信号を生成し、
前記出力パルス幅補正部は、前記最終エッジ検出時刻における前記PWM制御信号の信号レベルが「ハイ」である場合に、前記出力パルス幅計測値を前記PWMパルス周期に補正し、前記最終エッジ検出時刻における前記PWM制御信号の信号レベルが「ロー」である場合に、前記出力パルス幅計測値をゼロに補正する付記4に記載のPWM制御装置。
(付記6)
前記制御信号生成手段は、PWMパルス周期により前記PWM制御信号を生成し、
前記パルス有無判定部は、現在時刻と前記最終エッジ検出時刻との差が前記PWMパルス周期以上である場合に、前記出力パルスが無いと判定する付記3または4に記載のPWM制御装置。
(付記7)
前記被制御装置は、前記PWM制御信号に応じて電力を供給されて動作する電動機を有するものであって、
前記PWM制御装置は、前記電動機の回転状態を取得する回転状態取得手段をさらに備え、
前記異常判定手段は、前記出力パルス幅または前記指令パルス幅が一定値を継続する時間であるパルス幅固着時間を計測するパルス幅固着時間計測部を有し、前記回転状態に基づいて決まる時間と前記パルス幅固着時間との比較、および前記PWM制御指令の理想値の時間変動の有無に基づいて、前記PWM制御の異常の有無を判定する付記1から6のいずれか1項に記載のPWM制御装置。
(付記8)
前記回転状態取得手段は、少なくとも前記電動機の電気角周期を取得し、
前記異常判定手段は、前記理想値の時間変動があり、かつ、前記パルス幅固着時間が前記電気角周期の2分の1以上である場合に、前記PWM制御に異常があると判定する付記7に記載のPWM制御装置。
(付記9)
前記出力パルス幅または前記指令パルス幅が一定値を継続する時間であるパルス幅固着時間を計測するパルス幅固着時間計測部をさらに備え、
前記異常判定手段により前記PWM制御に異常があると判定され、かつ、前記パルス幅固着時間が予め定められた時間以上である場合に、
前記一定値がPWMパルス周期である場合は前記PWM制御の異常をオン固着異常と判定し、前記一定値がゼロである場合は前記PWM制御の異常をオフ固着異常と判定する付記1から6のいずれか1項に記載のPWM制御装置。
(付記10)
前記被制御装置は、前記PWM制御信号に応じて電力を供給されて動作する電動機を有するものであって、
前記PWM制御装置は、
前記電動機の回転状態を取得する回転状態取得手段と、
前記PWM制御装置によるPWM制御が正常に動作しているか否かを判定する正常制御判定手段とをさらに備え、
前記正常制御判定手段は、前記異常判定手段の判定結果が異常無しである状態が前記回転状態に基づいて決まる時間以上継続した場合に、前記PWM制御が正常に動作していると判定する付記1から6のいずれか1項に記載のPWM制御装置。
(付記11)
前記回転状態取得手段は、少なくとも前記電動機の電気角周期を取得し、前記回転状態に基づいて決まる時間は、前記電気角周期の2分の1である付記10に記載のPWM制御装置。
(付記12)
前記異常判定手段により、前記PWM制御装置によるPWM制御に異常があると判定された場合に、前記制御信号生成手段に対して前記PWM制御信号の出力の停止を指示する出力停止指示手段をさらに備えた付記1から11のいずれか1項に記載のPWM制御装置。
(付記13)
前記制御信号生成手段は、複数の前記PWM制御信号を生成するものであり、
前記出力停止指示手段は、それぞれの前記PWM制御信号の異常に応じて、それぞれの前記PWM制御信号の出力を停止させる時のそれぞれの前記PWM制御信号の信号レベルを設定する付記12に記載のPWM制御装置。
(付記14)
PWM制御信号に応じた電力を供給されて動作する電動機を有する被制御装置に前記PWM制御信号を出力するPWM制御装置であって、
PWM制御指令を生成する制御指令生成手段と、
前記PWM制御指令に基づいて、前記PWM制御信号を生成する制御信号生成手段と、
前記PWM制御信号の出力パルス幅を取得する出力パルス幅取得手段、および前記PWM制御指令のパルス幅である指令パルス幅を算出する指令パルス幅算出手段の少なくとも一方と、
PWM制御の異常の有無を判定する異常判定手段と、
前記電動機の回転状態を取得する回転状態取得手段とを備え、
前記異常判定手段は、前記出力パルス幅または前記指令パルス幅が一定値を継続する時間であるパルス幅固着時間を計測するパルス幅固着時間計測部を有し、前記回転状態に基づいて決まる時間と前記パルス幅固着時間との比較、および前記PWM制御指令の理想値の時間変動の有無に基づいて、前記PWM制御の異常の有無を判定することを特徴とするPWM制御装置。
(付記15)
前記異常判定手段により前記PWM制御に異常があると判定され、かつ、前記パルス幅固着時間が予め定められた時間以上である場合に、
前記一定値がPWMパルス周期である場合は前記PWM制御の異常をオン固着異常と判定し、前記一定値がゼロである場合は前記PWM制御の異常をオフ固着異常と判定する付記14に記載のPWM制御装置。
(付記16)
PWM制御指令を生成する制御指令生成工程と、
前記PWM制御指令に基づいて、被制御装置を制御するPWM制御信号を生成する制御信号生成工程と、
前記PWM制御信号の出力パルス幅を取得する出力パルス幅取得工程と、
前記PWM制御指令のパルス幅である指令パルス幅を算出する指令パルス幅算出工程と、
前記出力パルス幅と前記指令パルス幅とを比較することにより、PWM制御の異常の有無を判定する異常判定工程とを備え、前記出力パルス幅取得工程において、
前記PWM制御信号の出力パルスの幅の計測値である出力パルス幅計測値を前記PWM制御信号のエッジに基づいて計測するとともに、前記PWM制御信号の出力パルスの有無を判定して前記出力パルスが無いと判定した場合に、前記出力パルス幅計測値を補正して、補正された前記出力パルス幅計測値を前記出力パルス幅とすることを特徴とするPWM制御方法。
(付記17)
前記出力パルス幅取得工程は、前記エッジを検出する出力パルスエッジ検出工程と、
前記エッジに基づいて前記出力パルス幅計測値を計測する出力パルス幅計測工程と、
前記PWM制御信号の出力パルスの有無を判定する出力パルス有無判定工程と、
前記出力パルスが無いと判定した場合に、前記出力パルス幅計測値を補正して、補正された前記出力パルス幅計測値を前記出力パルス幅とする出力パルス幅補正工程とを含む付記16に記載のPWM制御方法。
(付記18)
前記出力パルス幅取得工程は、前記エッジの検出時刻を取得するエッジ時刻取得工程をさらに含み、
前記出力パルス有無判定工程において、前記エッジが最後に検出された時刻である最終エッジ検出時刻と現在時刻との差に基づいて前記出力パルスの有無を判定する付記17に記載のPWM制御方法。
(付記19)
前記出力パルス幅取得工程は、前記PWM制御信号の信号レベルを取得する信号レベル取得工程をさらに含み、
前記出力パルス幅補正工程において、前記最終エッジ検出時刻における前記PWM制御信号の信号レベルに基づいて前記出力パルス幅計測値を補正する付記18に記載のPWM制御方法。
(付記20)
前記制御信号生成工程において、PWMパルス周期により前記PWM制御信号を生成し、
前記出力パルス幅補正工程において、前記最終エッジ検出時刻における前記PWM制御信号の信号レベルが「ハイ」である場合に、前記出力パルス幅計測値を前記PWMパルス周期に補正し、前記最終エッジ検出時刻における前記PWM制御信号の信号レベルが「ロー」である場合に、前記出力パルス幅計測値をゼロに補正する付記19に記載のPWM制御方法。
(付記21)
前記制御信号生成工程において、PWMパルス周期により前記PWM制御信号を生成し、
前記出力パルス有無判定工程において、現在時刻と前記最終エッジ検出時刻との差が前記PWMパルス周期以上である場合に、前記出力パルスが無いと判定する付記18または19に記載のPWM制御方法。
(付記22)
前記被制御装置は、前記PWM制御信号に応じて電力を供給されて動作する電動機を有するものであって、
前記PWM制御方法は、前記電動機の回転状態を取得する回転状態取得工程をさらに含み、
前記異常判定工程において、前記出力パルス幅または前記指令パルス幅が一定値を継続する時間であるパルス幅固着時間を計測し、前記回転状態に基づいて決まる時間と前記パルス幅固着時間との比較、および前記PWM制御指令の理想値の時間変動の有無に基づいて、前記PWM制御の異常の有無を判定する付記16から21のいずれか1項に記載のPWM制御方法。
(付記23)
前記回転状態取得工程において、少なくとも前記電動機の電気角周期を取得し、
前記異常判定工程において、前記理想値の時間変動があり、かつ、前記パルス幅固着時間が前記電気角周期の2分の1以上である場合に、前記PWM制御に異常があると判定する付記22に記載のPWM制御方法。
(付記24)
前記出力パルス幅または前記指令パルス幅が一定値を継続する時間であるパルス幅固着時間を計測する工程をさらに備え、
前記異常判定工程において前記PWM制御に異常があると判定し、かつ、前記パルス幅固着時間が予め定められた時間以上である場合に、
前記一定値がPWMパルス周期である場合は前記PWM制御の異常をオン固着異常と判定し、前記一定値がゼロである場合は前記PWM制御の異常をオフ固着異常と判定する付記16から21のいずれか1項に記載のPWM制御方法。
(付記25)
前記被制御装置は、前記PWM制御信号に応じて電力を供給されて動作する電動機を有するものであって、
前記PWM制御方法は、
前記電動機の回転状態を取得する回転状態取得工程と、
前記PWM制御方法によるPWM制御が正常に動作しているか否かを判定する正常制御判定工程とをさらに備え、
前記正常制御判定工程において、前記異常判定工程における判定結果が異常無しである状態が前記回転状態に基づいて決まる時間以上継続した場合に、前記PWM制御が正常に動作していると判定する付記16から21のいずれか1項に記載のPWM制御方法。
(付記26)
前記回転状態取得工程において、少なくとも前記電動機の電気角周期を取得し、前記回転状態に基づいて決まる時間は、前記電気角周期の2分の1である付記25に記載のPWM制御方法。
(付記27)
前記異常判定工程において、前記PWM制御方法によるPWM制御に異常があると判定した場合に、前記PWM制御信号の出力を停止させる付記16から26のいずれか1項に記載のPWM制御方法。
(付記28)
前記制御信号生成工程において複数の前記PWM制御信号を生成し、
前記PWM制御信号の出力を停止させる時、それぞれの前記PWM制御信号の異常に応じて、それぞれの前記PWM制御信号の信号レベルを設定する付記27に記載のPWM制御方法。
(付記29)
PWM制御信号に応じた電力を供給されて動作する電動機を有する被制御装置に前記PWM制御信号を出力するPWM制御方法であって、
PWM制御指令を生成する制御指令生成工程と、
前記PWM制御指令に基づいて、前記PWM制御信号を生成する制御信号生成工程と、
前記PWM制御信号の出力パルス幅を取得する出力パルス幅取得工程、および前記PWM制御指令のパルス幅である指令パルス幅を算出する指令パルス幅算出工程の少なくとも一方と、
PWM制御の異常の有無を判定する異常判定工程と、
前記電動機の回転状態を取得する回転状態取得工程とを備え、
前記異常判定工程において、前記出力パルス幅または前記指令パルス幅が一定値を継続する時間であるパルス幅固着時間を計測し、前記回転状態に基づいて決まる時間と前記パルス幅固着時間との比較、および前記PWM制御指令の理想値の時間変動の有無に基づいて、前記PWM制御の異常の有無を判定することを特徴とするPWM制御方法。
(付記30)
前記異常判定工程において前記PWM制御に異常があると判定され、かつ、前記パルス幅固着時間が予め定められた時間以上である場合に、
前記一定値がPWMパルス周期である場合は前記PWM制御の異常をオン固着異常と判定し、前記一定値がゼロである場合は前記PWM制御の異常をオフ固着異常と判定する付記29に記載のPWM制御方法。
【符号の説明】
【0169】
10、20、30 制御部、11、21 制御指令生成手段、11a、21e デューティ指令算出部、12、22 出力パルス幅取得手段、12a 出力パルスエッジ検出部、12b 出力パルス幅計測部、12c エッジ時刻取得部、12d パルス有無判定部、12e 信号レベル取得部、12f 出力パルス幅補正部、13、23 指令パルス幅算出手段、17、27、37、47 異常判定手段、17a、27a パルス幅比較部、17b、27b 差分異常判定部、18、28 出力停止指示手段、19、29 制御信号生成手段、25 回転状態取得手段、25b 電気角周期算出部、27c パルス幅固着時間計測部、27e 制御指令異常判定部、27f、37f、47f 異常有無判定部、27g オン固着判定部、27h オフ固着判定部、100、200 PWM制御装置、900 被制御装置、901 電動機、Dref デューティ指令、Dref_u、Dref_v、Dref_w 三相デューティ指令、EdgLev 信号レベル、EdgR パルス有無判定結果、EdgT エッジ時刻、ErrSt、ErrSt** 状態判定結果、FixT** パルス幅固着時間、Ft 最終エッジ検出時刻、Pt 現在時刻、Stp 停止指示信号、SW、SW_UH、SW_VH、SW_WH、SW_UL、SW_VL、SW_WL、SW** PWM制御信号、Tω 電気角周期、Wact、Wact** 出力パルス幅、Wref、Wref** 指令パルス幅、Wmon 出力パルス幅計測値