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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174338
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20241210BHJP
【FI】
B60L3/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092106
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大翔
(72)【発明者】
【氏名】渡部 智明
(72)【発明者】
【氏名】増田 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】三宅 浩喜
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA20
5H125AB01
5H125AC12
5H125AC22
5H125BA00
5H125BC18
5H125CD02
5H125EE01
5H125EE47
5H125EE48
5H125EE70
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電動作業車両においても適切にメンテナンス時期を把握できる作業車両を提供する。
【解決手段】走行車体を走行する走行用電動機と走行車体に装着する作業機を駆動する作業機用電動機を備えた作業車両において、走行用電動機及び作業機用電動機を駆動する高圧バッテリと車両コントローラに給電する低圧バッテリを備え、キースイッチON後キースイッチOFF操作までの電源ON時間を積算する電源投入時間積算手段を設け、走行用電動機及び作業機用電動機が共に駆動し又は単独で駆動状態にある運転モード中の電動機駆動時間を積算するモータ駆動時間積算手段を設け、前記電源投入時間積算手段による電源投入積算時間とモータ駆動時間積算手段によるモータ駆動積算時間とを記憶する構成とした。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)を走行する走行用電動機(10)と、走行車体(1)に装着する作業機(4)を駆動する作業機用電動機(16)を備えた作業車両において、走行用電動機(10)及び作業機用電動機(16)を駆動する高圧バッテリ(11)と車両コントローラ(20)に給電する低圧バッテリ(13)を備え、キースイッチ(38)ON後キースイッチ(38)OFF操作までの電源ON時間を積算する電源投入時間積算手段(Ss)を設け、走行用電動機(10)及び作業機用電動機(16)が共に駆動し又は単独で駆動状態にある運転モード中の電動機駆動時間を積算するモータ駆動時間積算手段(Sm)を設け、前記電源投入時間積算手段(Ss)による電源投入積算時間(Ts)とモータ駆動時間積算手段(Sm)によるモータ駆動積算時間(Tm)とを記憶する構成としたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記モータ駆動時間積算手段(Sm)によるモータ駆動積算時間(Tm)として、走行用電動機(10)のみの駆動積算時間とした請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記モータ駆動時間積算手段(Sm)によるモータ駆動積算時間(Tm)として、作業機用電動機(16)のみの駆動積算時間とした請求項1に記載の作業車両。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公園等を走行させて園内の芝刈りを行う芝刈作業機のような作業車両に関し、特にバッテリを備えた電動作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電源が入っている時間を積算する作業時間カウンターを備えた作業車両において、走行停止中、エンジン停止中および作業装置の停止中に積算を停止することで作業時間を計測する構成がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-122244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によると、実際にエンジンが駆動している状態、作業車両が作動している状態又は作業装置が作動している状態にある時間が正確にカウントされるため、作業者の作業管理、労務管理に正確に反映させることができる。
【0005】
しかしながら、電動作業車両においては適切なメンテナンス時期を把握するための時間計測はエンジン駆動の作業車両と異なる。
【0006】
本発明は、上記に鑑み、電動作業車両においても適切にメンテナンス時期を把握できる作業車両を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、走行車体1を走行する走行用電動機10と走行車体1に装着する作業機4を駆動する作業機用電動機16を備えた作業車両において、走行用電動機10及び作業機用電動機16を駆動する高圧バッテリ11と車両コントローラ20に給電する低圧バッテリ13を備え、キースイッチ38ON後キースイッチ38OFF操作までの電源ON時間を積算する電源投入時間積算手段Ssを設け、
走行用電動機10及び作業機用電動機16が共に駆動し又は単独で駆動状態にある運転モード中の電動機駆動時間を積算するモータ駆動時間積算手段Smを設け、
前記電源投入時間積算手段Ssによる電源投入積算時間Tsとモータ駆動時間積算手段Smによるモータ駆動積算時間Tmとを記憶する構成とした。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記モータ駆動時間積算手段Smによるモータ駆動積算時間Tmとして、走行用電動機10のみの駆動積算時間とした。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記モータ駆動時間積算手段Smによるモータ駆動積算時間Tmとして、作業機用電動機16のみの駆動積算時間とした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、電源投入時間積算手段Ssによる電源投入積算時間Tsを表示することによって、高圧バッテリ11及び低圧バッテリ13のメンテナンス時期を管理でき、モータ駆動時間積算手段Smによるモータ駆動積算時間Tmを表示することによって、走行用電動機10及び作業機用電動機16のメンテナンス時期を管理できる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の効果に加え、走行用電動機10のみの駆動積算時間とすることで、駆動輪等走行系のメンテナンス時期を正確に計測できる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の効果に加え、作業機用電動機16のみの駆動積算時間とすることで、PTO軸や作業機回転部等作業計のメンテナンス時期を正確に計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態にかかる作業車両の左側面図である。
図2】同作業車両のボンネットカバーを開放姿勢にした作業車両の左側面図である。
図3】同作業車両の外装を省略した作業車両の斜視図である。
図4】同作業車両の駆動系統のブロック図である。
図5】同作業車両の操縦部メータの正面図である。
図6】同操縦部メータの通信のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、作業車両は、走行車体1と、走行車体1の前部に左右一対の前輪2が設けられ、走行車体1の後部に左右一対の後輪3が設けられ、走行車体1の下側における前輪2と後輪3の間に芝等を刈取る作業機4が設けられた乗用芝刈り機としている。また、走行車体1の上側の前部に収容部5が設けられ、収容部5の後側には操縦者が搭乗する操縦部6が設けられ、操縦部6の後側には操縦者を保護する安全フレーム(ロプス)8が設けられ、安全フレーム8の下部には作業機4で刈取られた芝等を貯留する集草容器7が設けられている。
【0015】
図2図5に示すように、収容部5には、後輪3を駆動する走行用電動機10等に供給する電力を蓄電する高圧バッテリ11が設けられ、高圧バッテリ11はボンネットカバー12で覆われている。
【0016】
併設された前記走行用電動機10と高圧バッテリ11の前部には低圧バッテリ13を配設している。この低圧バッテリ13は、操縦部メータや前照灯等の各種ランプ類、制御部等に給電しうる構成である。この低圧バッテリ13もボンネットカバー12で覆うことができる。
【0017】
前記走行用電動機10の出力回転は、伝動ベルト14等を経由して車体1中央に配置する静油圧無段変速装置(以下、HST)15を駆動すべく構成している。そしてHST15は公知の構成で油圧ポンプの圧油を受けた油圧モータ出力をもって適宜に変速され後輪3及び前輪2を回転駆動する構成である。
【0018】
また、HST15のポンプ軸は後方に延長されエアコンプレッサ17を駆動できる。
【0019】
さらに前記作業機4を駆動する作業機用電動機16は、車体1後下部の適所に配設されており、この作業機用電動機16と作業機4との間に連結軸を介して駆動力が伝達される構成としている。
【0020】
安全フレーム8は、上下方向に延在する左支柱部8Lと、上下方向に延在する右支柱部8Rと、左支柱部8Lと右支柱部8Rの上部を連結する逆U字形状の連結部8Aから形成されている。
【0021】
次いで、高圧バッテリ11(例えば48V)から供給される高圧電圧によって走行用電動機10及び作業機用電動機16を駆動する制御部について説明する。図4に示すように、走行用電動機10は、相互にCAN(コントローラエリアネットワーク)通信で情報授受が可能に接続された車両コントローラ20と走行用ドライバーユニット21を通じて制御される。一方作業機用電動機16は相互にCAN通信で情報授受が可能に接続された車両コントローラ20と作業機用ドライバーユニット22を通じて制御される。なお、走行用電動機10や作業機用電動機16は、これら電動機10,16がOFFに切り替わると、走行する車体1の慣性力や作業機刈刃の慣性力で回生ブレーキが作動し、回生ブレーキ作動時には高圧バッテリ11を充電する充電装置としての機能を有する。
【0022】
前記車両コントローラ20には車載充電器23、高圧バッテリ11の温度、充電状態、電圧保護、各セル短絡状態を監視するバッテリ監視装置(BMS)24が接続される。そして、この車両コントローラ20は、低圧バッテリ(例えば12V)13に接続されて給電される構成であり、この低圧バッテリ13には、前記高圧バッテリ11からの高圧がDC-DCコンバータ25を経由して降圧されて給電され、充電できる構成である。
【0023】
なお、前記高圧バッテリ11には、車両コントローラ20の出力側に配設する車載充電器23用リレーやバッテリ監視装置24用のリレー(共に図示せず)等のリレー接点を内蔵しており、車両コントローラ20の指令信号に基づいてリレー接点をON,OFFできるよう構成している。
【0024】
次いで、図5の操縦部メータ30について説明する。液晶表示部31を備え、中央の表示部31aに大きい文字表示で高圧バッテリ11の残量をパーセント表示で行う構成としている。この中央表示部31aの上部に上側表示部31bを設け、例えば作業機用電動機16の回転数や車速を切替表示する。中央表示部31aの下部に下側表示部31cを設け、やや小さい文字表示によって後述の電源投入時間又はモータ駆動時間を表示する構成である。
【0025】
図6に示すように、操縦部メータ30と車両コントローラ20とは有線通信線33によって接続されている。前記バッテリ監視装置(BMS)24から充電率(SOC)情報を受けた車両コントローラ20は、バッテリ残量を計算できる。充電率は、バッテリ監視装置24の数値を受けるものである。そして充電率(%)=(残容量/満充電時の容量)×100の関係式によって充電率(SOC)からバッテリ残量計算部34はバッテリ残量(%)を演算できる。計算されたバッテリ残量(%)は、有線通信線33を介して液晶表示部31の中央表示部31aに表示される。
【0026】
また、走行用ドライバーユニット21から走行用電動機10の回転数情報を受けることができ、この回転数情報から車速演算部35にて車速が演算される。車速は液晶表示部31の上側表示部31bにて表示できる。同様に、作業機用ドライバーユニット22から作業機用電動機16の回転数情報を受けることができ、この回転数は液晶表示部31の上側表示部31bに表示できる。なお、上側表示部31bに車速表示するか回転数表示するかを選択スイッチ36で任意に選択できる構成としている。
【0027】
前記液晶表示部31の下側表示部31cには、前記のように電源投入時間又はモータ駆動時間を表示する。その選択は前記選択スイッチ36とは左右対称位置に配置した第2の選択スイッチ37操作に基づく。ところで電源投入積算時間Tsは、電源投入時間積算手段Ssによって電源ON時間を積算するもので、電源スイッチとしてのキースイッチ38ON後キースイッチ38OFF操作までの時間をカウントし、その累積時間を積算する。
【0028】
一方モータ駆動積算時間Tmは、モータ駆動時間積算手段Smによって運転モードにおける走行用電動機10又は作業機用電動機16の駆動時間を積算するもので、走行用ドライバーユニット21又は作業機用ドライバーユニット22からの駆動出力信号及び駆動停止信号を入力できるタイマ手段によって走行用電動機駆動時間及び作業機用電動機駆動時間を積算する。そして、走行用電動機10及び作業機用電動機16が共に駆動し又は単独で駆動状態にある所謂運転モード中の電動機駆動時間を積算し、この運転モード中の電動機駆動時間をモータ駆動積算時間Tmとして表示する構成である。
【0029】
前記の電源投入時間積算手段Ssによる電源投入積算時間Tsを表示することによって、高圧バッテリ11及び低圧バッテリ13のメンテナンス時期を管理でき、モータ駆動時間積算手段Smによるモータ駆動積算時間Tmを表示することによって、走行用電動機10及び作業機用電動機16のメンテナンス時期を管理できる。
【0030】
前記モータ駆動時間積算手段Smによるモータ駆動積算時間Tmの管理について、次のようにしてもよい。すなわち、モータ駆動積算時間Tmとして、走行用電動機10のみの駆動積算時間としたり、あるいは作業機用電動機16のみの駆動積算時間とするものである。走行用電動機10のみの駆動積算時間とすることで、駆動輪等走行系のメンテナンス時期を正確に計測でき、また作業機用電動機16のみの駆動積算時間とすることで、PTO軸や作業機回転部等作業計のメンテナンス時期を正確に計測できる。
【0031】
更に以下のように構成してもよい。上記の場合は、運転モード中において、すなわち走行用電動機10及び作業機用電動機16が共に駆動し又は単独で駆動状態の積算をするから、充電モード中は積算しない構成であるが、この充電モード中も積算するよう構成してもよい。このように充電中を含めると運転モード中・充電モード中の全体のバッテリの使用時間を把握できる。
【符号の説明】
【0032】
1 車体
4 作業機
10 走行用電動機
11 高圧バッテリ
13 低圧バッテリ
16 作業機用電動機
20 車両コントローラ
38 キースイッチ
Ss 電源投入時間積算手段
Sm モータ駆動時間積算手段
Ts 電源投入積算時間
Tm モータ駆動積算時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6