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特開2024-174339スキャナ、プログラム、および、方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174339
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】スキャナ、プログラム、および、方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
H04N1/00 838
H04N1/00 127B
H04N1/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092114
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001058
【氏名又は名称】鳳国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林 寛之
【テーマコード(参考)】
5C062
【Fターム(参考)】
5C062AA02
5C062AA05
5C062AA13
5C062AA29
5C062AB02
5C062AB17
5C062AB23
5C062AB38
5C062AB42
5C062AC02
5C062AC05
5C062AC22
5C062AC23
5C062AC34
5C062AC58
5C062AE03
5C062AE07
5C062AE15
5C062AF01
5C062AF15
(57)【要約】
【課題】スキャン指示が不適切であり得る場合に、対策を講じる
【解決手段】
第1の端末装置からスキャン指示を受信することに応じて、第1のスキャンデータを取得する。第1のスキャン指示を受信した後に、第2の端末装置からスキャン指示を受信することに応じて、第2のスキャンデータを取得する。第1のスキャン画像と第2のスキャン画像とを比較することによって、第2のスキャン画像が第1のスキャン画像と同じであることを示す画像条件が満たされるか否かを判断する。画像条件が満たされ、かつ、第2の端末装置が第1の端末装置と異なる場合に、スキャンの実行に関する特定処理を実行する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキャナであって、
メモリと、
第1の端末装置から第1のスキャン指示を受信することに応じて、第1のスキャン処理を実行することによって第1のスキャンデータを取得する第1のスキャン実行部と、
前記第1のスキャンデータを前記メモリの特定領域に格納する格納制御部と、
前記第1のスキャン指示を受信した後に、第2の端末装置から第2のスキャン指示を受信することに応じて、第2のスキャン処理を実行することによって第2のスキャンデータを取得する第2のスキャン実行部と、
前記第1のスキャンデータによって表現される第1のスキャン画像と、前記第2のスキャンデータによって表現される第2のスキャン画像と、を比較することによって、前記第2のスキャン画像が前記第1のスキャン画像と同じであることを示す画像条件が満たされるか否かを判断する比較部と、
前記画像条件が満たされ、かつ、前記第2の端末装置が前記第1の端末装置と異なる場合に、スキャンの実行に関する特定処理を実行する特定処理部と、
を備える、スキャナ。
【請求項2】
請求項1に記載のスキャナであって、
前記画像条件が満たされ、かつ、前記第2の端末装置が前記第1の端末装置と同一である場合、前記特定処理部は、前記特定処理を実行しない、
スキャナ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスキャナであって、
前記特定処理は、警告情報を出力する出力処理を含む、
スキャナ。
【請求項4】
請求項3に記載のスキャナであって、
前記警告情報は、前記第1の端末装置からの前記第1のスキャン指示が不正である可能性があることと、前記第2の端末装置からの前記第2のスキャン指示が不正である可能性があることと、のうちの一方、または、両方を示す、
スキャナ。
【請求項5】
請求項3に記載のスキャナであって、
前記警告情報は、前記第1の端末装置を示す第1の識別情報と、前記第2の端末装置を示す第2の識別情報と、のうちの一方、または、両方を含む、
スキャナ。
【請求項6】
請求項3に記載のスキャナであって、
前記出力処理は、前記警告情報を外部装置へ出力する処理を含む、
スキャナ。
【請求項7】
請求項3に記載のスキャナであって、さらに、
表示部を備え、
前記出力処理は、前記警告情報を前記表示部へ出力することによって前記警告情報を前記表示部に表示させる処理を含む、
スキャナ。
【請求項8】
請求項1または2に記載のスキャナであって、
前記特定処理は、前記第1の端末装置からの新たなスキャン指示によるスキャン処理の実行と、前記第2の端末装置からの新たなスキャン指示によるスキャン処理の実行と、のうちの一方、または、両方を禁止する処理を含む、
スキャナ。
【請求項9】
請求項1または2に記載のスキャナであって、
前記特定処理は、前記第1の端末装置と前記第2の端末装置とを含む任意の外部装置からの新たなスキャン指示によるスキャン処理の実行を禁止する処理を含む、
スキャナ。
【請求項10】
請求項1または2に記載のスキャナであって、さらに、
前記第1のスキャンデータが前記メモリの前記特定領域に格納された後、特定時間の経過に応じて、前記第1のスキャンデータを前記メモリの前記特定領域から削除する第1削除制御部を備える、
スキャナ。
【請求項11】
請求項1または2に記載のスキャナであって、さらに、
対象物を置くためのフラットベッドと、
前記フラットベッドのカバーと、
前記カバーの開閉を検出するセンサと、
前記第1のスキャンデータを前記メモリの前記特定領域に格納された後、前記カバーが開けられることに応じて、前記第1のスキャンデータを前記メモリの前記特定領域から削除する第2削除制御部と、
を備える、スキャナ。
【請求項12】
メモリを備えスキャナを制御するためのコンピュータのためのプログラムであって、
第1の端末装置から第1のスキャン指示を受信することに応じて、第1のスキャン処理を実行することによって第1のスキャンデータを取得する第1のスキャン実行機能と、
前記第1のスキャンデータを前記メモリの特定領域に格納する格納制御機能と、
前記第1のスキャン指示を受信した後に、第2の端末装置から第2のスキャン指示を受信することに応じて、第2のスキャン処理を実行することによって第2のスキャンデータを取得する第2のスキャン実行機能と、
前記第1のスキャンデータによって表現される第1のスキャン画像と、前記第2のスキャンデータによって表現される第2のスキャン画像と、を比較することによって、前記第2のスキャン画像が前記第1のスキャン画像と同じであることを示す画像条件が満たされるか否かを判断する比較機能と、
前記画像条件が満たされ、かつ、前記第2の端末装置が前記第1の端末装置と異なる場合に、スキャンの実行に関する特定処理を実行する特定処理機能と、
をコンピュータに実現させるプログラム。
【請求項13】
スキャナを制御する方法であって、
第1の端末装置から第1のスキャン指示を受信することに応じて、第1のスキャン処理を実行することによって第1のスキャンデータを取得する第1のスキャン実行工程と、
前記第1のスキャンデータをメモリの特定領域に格納する格納制御工程と、
前記第1のスキャン指示を受信した後に、第2の端末装置から第2のスキャン指示を受信することに応じて、第2のスキャン処理を実行することによって第2のスキャンデータを取得する第2のスキャン実行工程と、
前記第1のスキャンデータによって表現される第1のスキャン画像と、前記第2のスキャンデータによって表現される第2のスキャン画像と、を比較することによって、前記第2のスキャン画像が前記第1のスキャン画像と同じであることを示す画像条件が満たされるか否かを判断する比較工程と、
前記画像条件が満たされ、かつ、前記第2の端末装置が前記第1の端末装置と異なる場合に、スキャンの実行に関する特定処理を実行する特定処理工程と、
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、スキャナを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナの機能として、プルスキャン機能が知られている。例えば、特許文献1は、以下の技術を開示している。スキャナを備える Multi Function Peripheral(MFP)は、スマートフォンからのスキャン命令に応じて、スキャナによって画像を読み取り、読み取った画像をスマートフォンに送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-065129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スキャナには、不適切なスキャン指示が提供され得る。例えば、原稿などの対象物は、対象物の所有者の端末装置とは異なる第三者の端末装置からのスキャン指示に応じて、スキャンされ得る。スキャン指示が不適切であり得る場合の処理には、工夫の余地があった。
【0005】
本明細書は、スキャン指示が不適切であり得る場合に、対策を講じることができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示された技術は、以下の適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]スキャナであって、メモリと、第1の端末装置から第1のスキャン指示を受信することに応じて、第1のスキャン処理を実行することによって第1のスキャンデータを取得する第1のスキャン実行部と、前記第1のスキャンデータを前記メモリの特定領域に格納する格納制御部と、前記第1のスキャン指示を受信した後に、第2の端末装置から第2のスキャン指示を受信することに応じて、第2のスキャン処理を実行することによって第2のスキャンデータを取得する第2のスキャン実行部と、前記第1のスキャンデータによって表現される第1のスキャン画像と、前記第2のスキャンデータによって表現される第2のスキャン画像と、を比較することによって、前記第2のスキャン画像が前記第1のスキャン画像と同じであることを示す画像条件が満たされるか否かを判断する比較部と、前記画像条件が満たされ、かつ、前記第2の端末装置が前記第1の端末装置と異なる場合に、スキャンの実行に関する特定処理を実行する特定処理部と、を備える、スキャナ。
【0008】
第1の端末装置からの第1のスキャン指示と、第1の端末装置と異なる第2の端末装置からの第2のスキャン指示と、によって同じスキャン画像が生成される場合、第1のスキャン指示、または、第2のスキャン指示は、不適切であり得る。上記構成によれば、第1のスキャン指示または第2のスキャン指示が不適切であり得る場合に、特定処理の実行によって対策を講じることができる。
【0009】
なお、本明細書に開示の技術は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、スキャナの制御方法および制御装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施例としてのシステムを示す説明図である。
図2】複合機100の一部分の斜視図である。
図3】(A)-(C)は、リスト131、132、133のそれぞれの例を表す図である。
図4】システム1000の動作の例を表すシーケンス図である。
図5】システム1000の動作の例を表すシーケンス図である。
図6】システム1000の動作の例を表すシーケンス図である。
図7】システム1000の動作の例を表すシーケンス図である。
図8】特定処理の例を表すフローチャートである。
図9】特定処理の例を表すフローチャートである。
図10】(A)、(B)は、削除処理の例を表すフローチャートである。
図11】(A)、(B)は、端末条件の別の実施例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.第1実施例:
A1.システムの構成:
図1は、一実施例としてのシステムを示す説明図である。このシステム1000は、複合機100と、第1の端末装置200Aと、第2の端末装置200Bと、管理端末300と、を含む。複合機100と第1の端末装置200Aと第2の端末装置200Bと管理端末300とは、ネットワークLNに接続されている。本実施例では、ネットワークLNは、いわゆるローカルエリアネットワークを含んでいる。ネットワークLNは、更に、いわゆるインターネットを含んでよい。本実施例では、複合機100は、第1の端末装置200Aの第1ユーザと、第2の端末装置200Bの第2ユーザと、を含む複数のユーザによって、使用される。複合機100は、例えば、学校、企業などの複数のユーザが活動する場所に設置される。
【0012】
複合機100は、プロセッサ110と、記憶装置115と、表示部140と、操作部150と、印刷エンジン160と、スキャンエンジン170と、通信インタフェース180と、を備えている。これらの要素は、バスを介して互いに接続されている。
【0013】
表示部140は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの、画像を表示するように構成された装置である。操作部150は、ボタン、レバー、表示部140上に重ねて配置されたタッチスクリーンなどの、ユーザによる操作を受け取るように構成された装置である。通信インタフェース180は、他の装置と通信するように構成されたインタフェースである(例えば、有線LAN、IEEE802.11の無線LAN、のうちの1種以上のインタフェースを含む)。本実施例では、通信インタフェース180は、ネットワークLNに接続されている。
【0014】
印刷エンジン160は、画像を印刷する装置である。本実施例では、印刷エンジン160は、いわゆるインクジェットプリンタである(レーザープリンタなど、他の方式で画像を印刷する装置が採用されてもよい)。スキャンエンジン170は、文書などの対象物を光学的に読み取って、読み取った対象物を表すスキャンデータを生成する。
【0015】
プロセッサ110は、データを処理するように構成された装置である。プロセッサ110は、例えば、Central Processing Unit(CPU)、または、System on a chip(SoC)である。記憶装置115は、揮発性記憶装置120と、不揮発性記憶装置130とを、含んでいる。揮発性記憶装置120は、例えば、DRAMであり、不揮発性記憶装置130は、例えば、フラッシュメモリである。
【0016】
不揮発性記憶装置130には、プログラムP1と、認証リスト131と、スキャンリスト132と、禁止リスト133と、のそれぞれのデータを格納している。以下、不揮発性記憶装置130の記憶領域のうち、スキャンリスト132を表す部分領域を、特定領域SAと呼ぶ。プログラムP1は、複合機100の製造事業者によって、ファームウェアとして、不揮発性記憶装置130に予め格納されている。プログラムP1に従ってプロセッサ110によって実行される処理は、印刷エンジン160とスキャンエンジン170とを制御する処理と、通信インタフェース180を通じて外部装置と通信する処理と、複合機100の設定を行う処理とを、それぞれ含んでいる。本実施例では、プロセッサ110は、外部装置からのスキャン要求に応じて、スキャンエンジン170に対象物を読み取らせ、読み取られた対象物を表すスキャンデータを外部装置に送信する処理を実行可能である(このような処理は、プルスキャンとも呼ばれる)。
【0017】
図2は、複合機100の一部分の斜視図である。複合機100は、筐体190と、筐体190の上部に配置されたスキャンエンジン170と、を有している。スキャンエンジン170は、筐体190の上部に開閉可能に取り付けられたカバー174と、カバーセンサ176と、を有している。図2では、カバー174は、上方向に向けて開けられている。カバーセンサ176は、カバー174の開閉を検出する。本実施例では、スキャンエンジン170は、いわゆるフラットベッド式のスキャナである。スキャンエンジン170は、筐体190の上方向側の面に配置された支持台172を備えている。支持台172は、カバー174を上方向側に向けて開くことによって現れる。支持台172は、矩形状の台であり、透明板(例えば、ガラス板)を使用して構成されている。支持台172の上面は、読取の対象物(例えば、原稿)を支持する支持面172sを形成する。支持面172sは、スキャンエンジンのうちのスキャンの対象物を配置すべき配置部分の例である。
【0018】
スキャンエンジン170は、筐体190の内部に配置されたセンサユニット178と搬送装置(図示省略)とを有している。センサユニット178は、支持台172の下方向側から対象物を光学的に読み取る一次元イメージセンサである(例えば、Contact Image Sensor(CIS))。センサユニット178は、図示しない搬送装置によって搬送される。これにより、センサユニット178は、支持面172sの全体に亘って、対象物を読み取ることができる。
【0019】
次に、端末装置200A、200B(図1)について説明する。端末装置200A、200Bは、第1と第2のユーザによってそれぞれ使用される端末装置である(例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、など)。本実施例では、端末装置200A、200Bは、類似するハードウェア構成を有している。端末装置200A、200Bは、プロセッサ210A、210Bと、記憶装置215A、215Bと、表示部240A、240Bと、操作部250A、250Bと、通信インタフェース280A、280Bとを、それぞれ有している。各端末装置200A、200Bにおいて、これらの要素は、図示しないバスを介して互いに接続されている。
【0020】
表示部240A、240Bは、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの、画像を表示するように構成された装置である。操作部250A、250Bは、ボタン、レバー、表示部240A、240B上に重ねて配置されたタッチスクリーンなどの、ユーザによる操作を受け取るように構成された装置である。通信インタフェース280A、280Bは、他の装置と通信するように構成されたインタフェースである(例えば、有線LAN、IEEE802.11の無線LAN、のうちの1種以上のインタフェースを含む)。本実施例では、通信インタフェース280A、280Bは、ネットワークLNに接続されている。
【0021】
プロセッサ210A、210Bは、データを処理するように構成された装置である。プロセッサ210A、210Bは、例えば、CPU、または、SoCである。記憶装置215A、215Bは、揮発性記憶装置220A、220Bと、不揮発性記憶装置230A、230Bとを、それぞれ含んでいる。揮発性記憶装置220A、220Bは、例えば、DRAMであり、不揮発性記憶装置230A、230Bは、例えば、フラッシュメモリである。
【0022】
不揮発性記憶装置230A、230Bは、プログラムP2A、P2Bと、ユーザ識別子UID1、UID2と、認証情報PW1、PW2と、のデータを、それぞれ格納している。プログラムP2A、P2Bは、複合機100を使用するプルスキャンのためのアプリケーションのプログラムである。アプリケーションのプログラムP2A、P2Bは、例えば、複合機100の製造事業者によって、提供される。以下、アプリケーションのプログラムP2A、P2Bが、端末装置200A、200Bにインストール済であることとする。
【0023】
管理端末300は、複合機100の管理者によって使用される端末装置である(例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、など)。図示を省略するが、管理端末300には、電子メールを扱うためのアプリケーションがインストールされている。
【0024】
A2.リスト131、132、133:
図3(A)-図3(C)は、リスト131、132、133のそれぞれの例を表す図である。認証リスト131(図3(A))は、ユーザ識別子UIDと、認証情報UAIと、の対応関係を表している。ユーザ識別子UIDは、複合機100を使用するためのユーザ認証で使用される識別子である。認証情報UAIは、ユーザ認証で使用される認証情報である(例えば、パスワードのハッシュ値)。ユーザ識別子UIDと認証情報UAIとのセットは、予め、認証リスト131に登録される。例えば、複合機100の管理者は、管理端末300を通じて、登録の要求を複合機100に供給する。複合機100のプロセッサ110は、要求に従って、ユーザ識別子UIDと認証情報UAIとのセットを認証リスト131に登録する。ユーザ識別子UIDと、認証情報UAIに対応付けられる情報(例えば、パスワード)と、を表すユーザデータは、ユーザの端末装置に格納される。例えば、管理端末300は、ユーザデータを、ユーザの端末装置に送信する。ここで、第1の端末装置200Aの不揮発性記憶装置230Aには、第1ユーザ識別子UID1と、第1ユーザ識別子UID1に対応付けられる認証情報PW1と、が格納されていることとする。また、第2の端末装置200Bの不揮発性記憶装置230Bには、第2ユーザ識別子UID2と、第2ユーザ識別子UID2に対応付けられる認証情報PW2と、が格納されていることとする。
【0025】
スキャンリスト132(図3(B))は、ユーザ識別子UIDと、スキャンデータSDと、タイムスタンプTSと、の対応関係を表している。複合機100のプロセッサ110は、ユーザ識別子UIDに対応付けられるスキャン指示に応じて、スキャンエンジン170を使用するスキャンを行う。プロセッサ110は、スキャンに応じて、ユーザ識別子UIDと、スキャンデータSDと、タイムスタンプTSとを、スキャンリスト132に登録する。プロセッサ110は、図示しないタイマを参照して、現在日時をタイムスタンプTSとして取得する。登録された情報は、新たなスキャン指示の適否の判断に使用される(後述)。
【0026】
禁止リスト133(図3(C))は、プルスキャンが禁止されている装置に対応付けられる識別子DIDを表している(禁止識別子DIDと呼ぶ)。後述するように、複合機100のプロセッサ110は、スキャン指示が不適切であり得る場合に、不適切なスキャン指示に関連する装置によるプルスキャンを禁止する。禁止識別子DIDとしては、ユーザ識別子UID、MACアドレス、ホスト名、など、装置を識別可能な種々の識別子が登録され得る。MACアドレスは、通信インタフェースに付与されたアドレスである。ホスト名は、ネットワーク上で使用される装置の名前である。本実施例で使用されるホスト名は、ローカルエリアネットワークの管理者によって設定される名前(すなわち、ローカルエリアネットワーク内で使用される名前)である。これに代えて、ホスト名は、Domain Name System(DNS)によって定められる名前であってよい。
【0027】
A3.システム1000の動作:
図4図7は、システム1000の動作の例を表すシーケンス図である。S110では、第1の端末装置200Aの第1ユーザは、第1原稿を、複合機100(図2)の支持面172sに載せる。S115では、第1ユーザは、第1の端末装置200Aの操作部250Aを操作することによって、スキャン指示を入力する。ここで、第1ユーザは、プレビューではなく通常のスキャン指示を入力することとする(プレビュー用のスキャンについては、後述する)。第1の端末装置200Aのプロセッサ210Aは、指示に応じて、プログラムP2Aに従って、スキャンのための処理を開始する。S120では、プロセッサ210Aは、スキャン指示を複合機100に送信する。スキャン指示は、第1ユーザ識別子UID1と認証情報PW1とを表すデータを含んでいる。
【0028】
複合機100のプロセッサ110は、第1の端末装置200Aからのスキャン指示に応じて、プログラムP1に従って、スキャンのための処理を開始する。S125では、プロセッサ110は、第1の端末装置200Aからのスキャン指示によるスキャンが許容されるか否かを判断する。許容条件は、種々の条件であってよい。本実施例では、許容条件は、以下の条件C1、C2のすべてが満たされることである。
(第1条件C1)ユーザ認証が成功する。
(第2条件C2)スキャン指示の送信装置に対応付けられる識別子が禁止リスト133(図3(C))に含まれていない。
【0029】
第1条件C1の判断のために、プロセッサ110は、認証リスト131(図3(A))を参照して、S120のスキャン指示に含まれる第1ユーザ識別子UID1に対応付けられる第1認証情報UAI1を取得する。プロセッサ110は、認証情報PW1が第1認証情報UAI1と整合する場合に、ユーザ認証が成功する(すなわち、第1条件C1が満たされる)と判断する。なお、第1ユーザ識別子UID1が認証リスト131に登録されていない場合、プロセッサ110は、ユーザ認証が失敗する(すなわち、第1条件C1が満たされない)と判断する。
【0030】
第2条件C2の判断のために、プロセッサ110は、S120のスキャン指示の送信装置である第1の端末装置200Aに関連する識別子を取得する。本実施例では、プロセッサ110は、スキャン指示に対応付けられる第1ユーザ識別子UID1と、第1の端末装置200AのMACアドレスと、第1の端末装置200Aのホスト名と、を取得する。プロセッサ110は、取得された識別子の全てが禁止リスト133に含まれない場合に、第2条件C2が満たされると判断する。
【0031】
許容条件が満たされない場合(S125:No)、プロセッサ110は、処理を終了する。ここで、プロセッサ110は、スキャンが許容されないことを表す情報を、第1の端末装置200Aに送信してよい。以下、許容条件が満たされることとする。
【0032】
許容条件が満たされる場合(S125:Yes)、S130で、プロセッサ110は、スキャン処理を実行することによって、スキャンデータを取得する。本実施例では、プロセッサ110は、スキャンエンジン170に対象物(ここでは、第1原稿)を読み取らせる。スキャンエンジン170は、読み取った対象物を表すスキャンデータを生成する。プロセッサ110は、スキャンエンジン170からスキャンデータを取得する(スキャンデータSDaと呼ぶ)。スキャンデータのデータ形式は、種々の形式であってよい。本実施例では、スキャンデータは、カラーのビットマップデータである。なお、スキャンデータは、スキャンエンジン170からデータを使用して、プロセッサ110によって生成されてもよい。
【0033】
スキャンデータの取得後、プロセッサ110は、現行スキャン画像と比較スキャン画像とを比較する。現行スキャン画像は、現行のスキャン処理で取得されたスキャンデータによって表現されるスキャン画像である。比較スキャン画像は、スキャンリスト132(図3(A))に格納されるスキャンデータSDによって表現されるスキャン画像である。S135では、現行スキャン画像は、S130で取得されるスキャンデータSDaによって表現されるスキャン画像である。また、S135では、スキャンリスト132に、スキャンデータSDxのみが格納されていることとする。スキャンデータSDxは、前回のスキャン処理(図示省略)によって生成されたスキャンデータである。この場合、比較スキャン画像は、スキャンデータSDxによって表現されるスキャン画像である。プロセッサ110は、この比較結果に基づいて、比較スキャン画像が現行スキャン画像と同じであることを示す画像条件が満たされるか否かを判断する。スキャンリスト132に複数のスキャンデータが格納されている場合、プロセッサ110は、最新のタイムスタンプTSを有するスキャンデータを使用する。スキャンリスト132にスキャンデータが格納されていない場合、プロセッサ110は、画像条件が満たされないと判断する。
【0034】
画像条件は、比較スキャン画像が現行スキャン画像と同じであることを示す種々の条件であってよい。例えば、画像条件は、2枚のスキャン画像の間の類似度が所定の閾値以上であることであってよい。類似度は、例えば、差分二乗和(Sum of Squared Difference)、差分絶対値和(Sum of Absolute Difference)、正規化相互相関(Normalized Cross-Correlation)、Zero-means Normalized Cross-Correlationと呼ばれる正規化相互相関、のいずれかであってよい。
【0035】
いずれの場合も、2枚のスキャン画像の間で解像度(すなわち、画素密度)が異なる場合、プロセッサ110は、現行スキャン画像と比較スキャン画像とのうちの一方、または、両方の解像度変換を行い、同じ解像度の現行スキャン画像と比較スキャン画像とを比較してよい。
【0036】
ここで、S130のスキャン処理は、第1原稿の初めてのスキャン処理であることとする。この場合、現行スキャン画像は、比較スキャン画像と同じではない。S140で、プロセッサ110は、画像条件は満たされないと判断する。
【0037】
画像条件が満たされない場合、プロセッサ110は、スキャンデータに関連する情報を、スキャンリスト132(図3(B))に登録する。図4の処理では、S145で、スキャンデータSDaに関連する情報(ここでは、第1ユーザ識別子UID1と、スキャンデータSDaと、タイムスタンプTSa)が登録される。S145で、プロセッサ110は、図示しないタイマを参照して、現在日時をタイムスタンプTSaとして取得する。これらの情報の登録により、情報UID1、SDa、TSaを表すデータが、不揮発性記憶装置130の特定領域SAに格納される。
【0038】
S155では、プロセッサ110は、スキャンデータSDaを第1の端末装置200Aに送信する。第1の端末装置200Aのプロセッサ210Aは、受信したスキャンデータSDaを、記憶装置215A(例えば、不揮発性記憶装置230A)に格納する。以上により、S120のスキャン指示に対応付けられる処理は、終了する。
【0039】
S210(図5)では、第1ユーザは、第1原稿を複合機100(図2)の支持面172sから取り出し、第2原稿を支持面172sに載せる。そして、S215で、第1ユーザは、第1の端末装置200Aにスキャン指示を入力する。ここで、第1ユーザは、プレビュー用のスキャン指示を入力することとする。本実施例では、プレビュー用のスキャンでは、通常のスキャンと比べて、低解像度で対象物が読み取られる。そして、スキャンデータは、スキャン画像のプレビューに使用される。
【0040】
S220-S255は、図4のS120-S155に、それぞれ対応している。以下、図4の処理と同じ部分の説明を省略して、説明する。
【0041】
S220のスキャン指示は、第1ユーザ識別子UID1と認証情報PW1とに加えて、プレビュー要求を示すデータを含んでいる。S225では、許容条件は、満たされる。S230のスキャン処理では、プロセッサ110は、プレビュー用の解像度で、スキャンエンジン170に対象物(ここでは、第2原稿)を読み取らせる。プロセッサ110は、スキャンエンジン170からスキャンデータを取得する(スキャンデータSD1と呼ぶ)。スキャンデータSD1の解像度は、通常のスキャン(例えば、S130(図4))での解像度よりも粗い。
【0042】
S235では、プロセッサ110は、現行スキャン画像と比較スキャン画像とを比較する。現行スキャン画像は、スキャンデータSD1によって表現される第2原稿スキャン画像である。比較スキャン画像は、スキャンデータSDa(図3(B))によって表現される第1原稿のスキャン画像である。現行スキャン画像は、比較スキャン画像と同じではない。S240で、プロセッサ110は、画像条件は満たされないと判断する。
【0043】
S245で、プロセッサ110は、スキャンデータSD1に関連する情報(ここでは、第1ユーザ識別子UID1と、スキャンデータSD1と、タイムスタンプTS1)を、スキャンリスト132(図3(B))に登録する。これらの情報UID1、SD1、TS1を表すデータは、不揮発性記憶装置130の特定領域SAに格納される。
【0044】
S255で、プロセッサ110は、スキャンデータSD1を第1の端末装置200Aに送信する。S260では、第1の端末装置200Aのプロセッサ210Aは、スキャンデータSD1のスキャン画像を、表示部240Aに表示する。以上により、S220のスキャン指示に対応付けられる処理は、終了する。
【0045】
第1ユーザは、S260で表示されるスキャン画像を観察することによって、適切なスキャンが可能か否かを判断できる。仮に、スキャン画像が不適切である場合(例えば、第2原稿の意図されていないページが読み取られる場合)、第1ユーザは、支持面172s上に原稿を置き直して、再び、スキャン指示を第1の端末装置200Aに入力してよい。以下、スキャン画像が適切であり、第1ユーザは、続けて、通常のスキャンを進行することとする。
【0046】
S315(図6)では、第1ユーザは、第1の端末装置200Aにスキャン指示を入力する。ここで、第1ユーザは、プレビューではなく通常のスキャン指示を入力することとする。
【0047】
S320-S335は、図4のS120-S135に、それぞれ対応している。以下、図4の処理と同じ部分の説明を省略して、説明する。
【0048】
S320のスキャン指示は、S120(図4)のスキャン指示と同様に、第1ユーザ識別子UID1と認証情報PW1とを含み、プレビュー要求を示すデータを含んでない。S325では、許容条件は、満たされる。S330のスキャン処理では、プロセッサ110は、通常の解像度で、スキャンエンジン170に対象物(ここでは、第2原稿)を読み取らせる。プロセッサ110は、スキャンエンジン170からスキャンデータを取得する(スキャンデータSD1bと呼ぶ)。
【0049】
S335では、プロセッサ110は、現行スキャン画像と比較スキャン画像とを比較する。現行スキャン画像は、スキャンデータSD1bによって表現される第2原稿のスキャン画像である。比較スキャン画像は、スキャンリスト132(図3(B))に登録済のスキャンデータSD1によって表現される第2原稿のスキャン画像である。現行スキャン画像は、比較スキャン画像と同じである。S340で、プロセッサ110は、画像条件は満たされると判断する。
【0050】
画像条件が満たされる場合、プロセッサ110は、端末条件が満たされるか否かを判断する(S350)。端末条件は、現行のスキャン処理のスキャン指示の送信装置(現行装置と呼ぶ)が、比較スキャン画像に対応付けられるスキャン指示の送信装置(比較装置と呼ぶ))と、同一であることを示す条件である。
【0051】
本実施例では、送信装置を示す情報として、ユーザ識別子UIDが使用される。ここで、現行装置を示すユーザ識別子UIDを、現行識別子と呼び、比較装置を示すユーザ識別子UIDを、比較識別子と呼ぶ。S350では、プロセッサ110は、現行識別子として、現行のスキャン指示(S320)に含まれる第1ユーザ識別子UID1を使用する。また、プロセッサ110は、比較識別子として、スキャンリスト132(図3(B))によって比較スキャン画像に対応付けられるユーザ識別子UIDを使用する(ここでは、スキャンデータSD1に対応付けられる第1ユーザ識別子UID1)。このように、現行識別子と比較識別子とは同じである。S350で、プロセッサ110は、現行装置が比較装置と同じである、と判断する。
【0052】
画像条件が満たされ、かつ、現行装置が比較装置と同じである場合、S355で、プロセッサ110は、スキャンデータSD1bを第1の端末装置200Aに送信する。第1の端末装置200Aのプロセッサ210Aは、受信したスキャンデータSD1bを、記憶装置215A(例えば、不揮発性記憶装置230A)に格納する。以上により、S320のスキャン指示に対応付けられる処理は、終了する。
【0053】
S415(図7)では、第2の端末装置200Bの第2ユーザが、第2の端末装置200Bの操作部250Bを操作することによって、スキャン指示を入力する。ここで、支持面172s(図2)上には、第2原稿が残っていることとする。
【0054】
同じスキャン対象物(例えば、原稿)に対して、互いに異なる2個の端末装置からスキャン指示が発行される場合、一方の端末装置からのスキャン指示は、スキャン対象物の持ち主とは異なるユーザによるスキャン指示であり得る。スキャン対象物の持ち主とは異なるユーザによるスキャンは、持ち主の意図に反している場合がある。持ち主の意図に反する不正なスキャン指示に基づくスキャンデータの提供を、行わないことが好ましい。以下に説明するように、本実施例では、プロセッサ110は、同じスキャン対象物に対して互いに異なる2個の端末装置からスキャン指示が発行される場合、特定処理を実行する。
【0055】
S420-S440は、図6のS320-S340に、それぞれ対応している。以下、図6の処理と同じ部分の説明を省略して、説明する。
【0056】
第2の端末装置200Bのプロセッサ210Bは、S415の指示に応じて、プログラムP2Bに従って、スキャンのための処理を開始する。S420では、プロセッサ210Bは、スキャン指示を複合機100に送信する。スキャン指示は、第2ユーザ識別子UID2と認証情報PW2とを表すデータを含んでいる。このスキャン指示は、通常のものと、プレビュー用のものと、のいずれであってもよい。
【0057】
複合機100のプロセッサ110は、第2の端末装置200Bからのスキャン指示に応じて、プログラムP1に従って、スキャンのための処理を開始する。S425では、許容条件が満たされることとする。S430のスキャン処理では、プロセッサ110は、スキャンエンジン170に対象物(ここでは、第2原稿)を読み取らせる。プロセッサ110は、スキャンエンジン170からスキャンデータを取得する(スキャンデータSD2と呼ぶ)。
【0058】
S435では、プロセッサ110は、現行スキャン画像と比較スキャン画像とを比較する。現行スキャン画像は、スキャンデータSD2によって表現される第2原稿のスキャン画像である。比較スキャン画像は、スキャンリスト132(図3(B))に登録済のスキャンデータSD1によって表現される第2原稿のスキャン画像である。このように、現行スキャン画像は、比較スキャン画像と同じである。S440で、プロセッサ110は、画像条件は満たされると判断する。
【0059】
S450では、プロセッサ110は、現行装置の現行識別子が比較装置の比較識別子と同じであるか否かを判断する。S450では、現行識別子は、現行のスキャン指示(S420)に含まれる第2ユーザ識別子UID2である。比較識別子は、スキャンリスト132(図3(B))によって比較スキャン画像(ここでは、スキャンデータSD1)に対応付けられる第1ユーザ識別子UID1である。このように、現行識別子は、比較識別子と異なっている。S450で、プロセッサ110は、現行装置が比較装置と異なっている、と判断する。
【0060】
画像条件が満たされ、かつ、現行装置が比較装置と異なる場合、プロセッサ110は、スキャンデータSD2を第2の端末装置200Bに送信せずに、特定処理を開始する(S460)。S460の終了後、S420のスキャン指示に対応付けられる処理は、終了する。
【0061】
A4.特定処理:
図8図9は、特定処理の例を表すフローチャートである。図9は、図8の続きを示している。図中には、S505と、第1処理(S510)と、第2処理(S520)と、第3処理(S533)と、第4処理(S536)と、が示されている。特定処理は、第1-第4処理から予め任意に選択される1以上の処理を含んでよい。以下、図7のS460で特定処理が実行されることとして、各処理について、説明する。
【0062】
S505では、複合機100のプロセッサ110は、警告情報を生成する。警告情報は、スキャン指示が不正であり得ることを表す任意の情報を含んでよい。本実施例では、警告情報は、以下の情報W1-W3を含んでいる。
(第1情報W1)被疑ユーザ識別子
(第2情報W2)被疑MACアドレス
(第3情報W3)被疑ホスト名
【0063】
第1情報W1の被疑ユーザ識別子は、不正なスキャン指示を発行した可能性を有するユーザである被疑ユーザのユーザ識別子UIDを表している。不正なスキャン指示は、正当なスキャン指示よりも先に発行され得る。現行装置に対応付けられるユーザと、比較装置に対応付けられるユーザと、のいずれもが、被疑ユーザであり得る。被疑ユーザ識別子は、現行装置に対応付けられるユーザ識別子UID(ここでは、第2ユーザ識別子UID2)と、比較装置に対応付けられるユーザ識別子UID(ここでは、第1ユーザ識別子UID1)と、のうちの一方、または、両方を含んでよい。
【0064】
第2情報W2の被疑MACアドレスは、不正なスキャン指示を発行した可能性を有する装置である被疑装置のMACアドレスを表している。被疑MACアドレスは、現行装置のMACアドレスと、比較装置のMACアドレスと、のうちの一方、または、両方を含んでよい。
【0065】
第3情報W3の被疑ホスト名は、被疑装置のホスト名を表している。被疑ホスト名は、現行装置のホスト名と、比較装置のホスト名と、のうちの一方、または、両方を含んでよい。
【0066】
警告情報は、現行装置に対応付けられる情報と、比較装置に対応付けられる情報と、の両方が不正であり得ることを表してよい。これに代えて、警告情報は、現行装置に対応付けられる情報と、比較装置に対応付けられる情報と、から予め選択された一方のみを表してよい。いずれの場合も、警告情報は、警告情報によって示される装置からのスキャン指示が不正である可能性があることを表すメッセージを含んでよい。
【0067】
S510では、プロセッサ110は、第1処理を実行する。第1処理では、プロセッサ110は、複合機100の管理者の連絡先に警告情報を送信する。本実施例では、複合機100には、管理者の電子メールアドレスが、予め、登録されている(例えば、不揮発性記憶装置130は、電子メールアドレスのデータを格納している)。プロセッサ110は、警告情報を含む電子メールを、管理者の電子メールアドレス宛に送信する。本実施例では、プロセッサ110は、警告情報を含む電子メールを、管理端末300に送信する。電子メールの送信は、図示しないメールサーバを介して行われてよい。警告情報を受け取った管理者は、警告情報によって表される装置のユーザにスキャン指示について問い合わせる等、対策を講じることができる。
【0068】
S520では、プロセッサ110は、第2処理を実行する。本実施例では、第2処理は、S522、S524、S526、S528、S529を含んでいる。S522では、プロセッサ110は、警告情報のデータを表示部140に出力することによって、表示部140に警告情報を表示する。通常は、複合機100の支持面172s(図2)に原稿を載せたユーザは、原稿を回収するまでは、複合機100の近くにいる。従って、原稿の持ち主は、表示部140を観察することによって、不正なスキャン指示の可能性を知ることができる。
【0069】
S524では、プロセッサ110は、ユーザインタフェース画面を、表示部140に表示する。図示を省略するが、ユーザインタフェース画面は、「続行」と「通知」との2つの選択肢を表している。「続行」は、スキャンデータの送信を示し、「通知」は、管理者に対する警告情報の通知を示している。複合機100の近くのユーザ(通常は、原稿の持ち主)は、複合機100の操作部150を操作することによって、いずれかの選択肢を選択できる。
【0070】
S526では、プロセッサ110は、ユーザによって選択される選択肢を、操作部150を通じて取得する。「続行」が選択される場合、S528で、プロセッサ110は、スキャンデータを、現行装置(ここでは、第2の端末装置200B)に送信する。そして、S520は終了する。「通知」が選択される場合、プロセッサ110は、S529の処理を実行する。S529は、S510と同じである(プロセッサ110は、複合機100の管理者の連絡先に警告情報を送信する)。そして、S520は終了する。
【0071】
S530(図9)は、第3処理(S533)と第4処理(S536)とから予め選択された1つを含んでいる。S533の第3処理では、プロセッサ110は、スキャン指示を送信可能な装置を制限する。制限処理は、種々の処理であってよい。本実施例では、制限処理は、以下の処理R1-R3を含んでいる。
(第1制限処理R1)ユーザ識別子UIDの制限
(第2制限処理R2)MACアドレスの制限
(第3制限処理R3)ホスト名の制限
【0072】
第1制限処理R1では、プロセッサ110は、被疑ユーザのユーザ識別子UIDを、禁止リスト133(図3(C))に登録する。登録すべきユーザ識別子UIDは、現行装置に対応付けられるユーザ識別子UID(ここでは、第2ユーザ識別子UID2)と、比較装置に対応付けられるユーザ識別子UID(ここでは、第1ユーザ識別子UID1)と、のうちの一方、または、両方を含んでよい。
【0073】
第2制限処理R2では、プロセッサ110は、被疑装置のMACアドレスを、禁止リスト133に登録する。登録すべきMACアドレスは、現行装置のMACアドレスと、比較装置のMACアドレスと、のうちの一方、または、両方を含んでよい。
【0074】
第3制限処理R3では、プロセッサ110は、被疑装置のホスト名を、禁止リスト133に登録する。登録すべきホスト名は、現行装置のホスト名と、比較装置のホスト名と、のうちの一方、または、両方を含んでよい。
【0075】
上述したように、不正なスキャン指示は、正当なスキャン指示よりも先に発行され得る。そのため、比較装置(すなわち、先にスキャン指示を発行した装置)に対応付けられる情報が禁止リスト133に登録される。ただし、変形例では、禁止リスト133に登録される情報は、現行装置に対応付けられる情報と、比較装置に対応付けられる情報と、の両方を含んでよい。これに代えて、禁止リスト133に登録される情報は、現行装置に対応付けられる情報と、比較装置に対応付けられる情報と、から予め選択された一方のみであってよい。
【0076】
S536の第4処理では、プロセッサ110は、プルスキャンを無効化する。すなわち、プロセッサ110は、任意の外部装置(端末装置200A、200Bを含む)からの新たなスキャン指示によるスキャン処理の実行を禁止する。この後、プロセッサ110は、外部装置から新たなスキャン指示を受信しても、スキャン処理を実行しない。プロセッサ110は、さらに、スキャンが禁止されていることを、スキャン指示の送信装置に通知してよい。
【0077】
以上により、特定処理は、終了する。なお、第2処理(S520)が採用される場合、第1処理(S510)は、省略されてよい。第3処理(S533)が採用される場合、第4処理(S536)は省略される。第4処理(S536)が採用される場合、第3処理(S533)は省略される。第1処理(S510)と第2処理(S520)とが省略される場合、S505も省略されてよい。
【0078】
以上のように、本実施例では、複合機100(図1)は、スキャンエンジン170を備えている。複合機100は、スキャナの例である。複合機100は、記憶装置115(例えば、不揮発性記憶装置130)を備えている。複合機100のプロセッサ110は、以下の処理を実行する。S220(図5)では、プロセッサ110は、第1の端末装置200Aからスキャン指示(第1のスキャン指示と呼ぶ)を受信する。プロセッサ110は、第1のスキャン指示を受信することに応じて、S230を実行する。S230では、プロセッサ110は、スキャン処理(第1のスキャン処理と呼ぶ)を実行することによって、スキャンデータSD1(第1のスキャンデータSD1と呼ぶ)を取得する。S245では、プロセッサ110は、第1のスキャンデータSD1を記憶装置115の特定領域(ここでは、不揮発性記憶装置130の特定領域SA)に格納する。
【0079】
第1のスキャン指示を受信(S220)した後に、S420(図7)で、プロセッサ110は、第2の端末装置200Bからスキャン指示(第2のスキャン指示と呼ぶ)を受信する。プロセッサ110は、第2のスキャン指示を受信することに応じて、S430を実行する。S430では、プロセッサ110は、スキャン処理(第2のスキャン処理と呼ぶ)を実行することによって、スキャンデータSD2(第2のスキャンデータSD2と呼ぶ)を取得する。
【0080】
S435では、プロセッサ110は、第1のスキャンデータSD1によって表現されるスキャン画像(第1のスキャン画像と呼ぶ)と、第2のスキャンデータSD2によって表現されるスキャン画像(第2のスキャン画像と呼ぶ)と、を比較する。プロセッサ110は、この比較によって、第2のスキャン画像が第1のスキャン画像と同じであることを示す画像条件が満たされるか否かを判断する。
【0081】
画像条件が満たされ(S440)、かつ、第2の端末装置200Bが第1の端末装置200Aと異なる場合(S450)に、プロセッサ110は、S460で、スキャンの実行に関する特定処理を実行する。この構成によれば、プロセッサ110は、第1のスキャン指示または第2のスキャン指示が不適切であり得る場合に、特定処理の実行によって対策を講じることができる。
【0082】
また、本実施例では、図6に示すように、画像条件が満たされ(S340)、かつ、現行装置が比較装置と同一である場合(S350)、プロセッサ110は、特定処理を実行しない。画像条件が満たされ、かつ、現行装置が比較装置と同一である場合、第1のスキャン指示または第2のスキャン指示が不適切である可能性は低い。プロセッサ110は、特定処理の不適切な実行の可能性を低減できる。なお、図6の処理では、第1のスキャン指示を受信(S220(図5))した後に、S320(図6)で、プロセッサ110は、第1の端末装置200Aからスキャン指示を受信する。S330では、プロセッサ110は、このスキャン指示の受信に応じて、スキャン処理を実行する(スキャンデータSD1bが取得される)。S335、S340では、スキャンデータSD1bによって表現されるスキャン画像と、第1のスキャンデータSD1によって表現される第1のスキャン画像と、が比較される。S350では、現行装置は、S320で受信されるスキャン指示を送信した第1の端末装置200Aである。現行装置は、比較装置と同じである
【0083】
また、本実施例では、特定処理(図8図9)は、図8のS510とS522とのうちの一方または両方を含んでよい。S510では、プロセッサ110は、管理者の連絡先に警告情報を送信する。本実施例では、電子メールとして、警告情報が出力される。S522では、プロセッサ110は、警告情報のデータを表示部140に出力する。このように、警告情報の表示のために、表示部140に警告情報が出力される。このように、S510、S522は、警告情報を出力する出力処理の例である。プロセッサ110は、警告情報を出力することによって(例えば、S510とS522とのうちの一方または両方を実行することによって)、種々の対策を講じることができる。例えば、プロセッサ110は、複合機100に関連する人(管理者、ユーザなど)に、対策を促すことができる。
【0084】
また、本実施例では、図8のS505で説明したように、警告情報は、現行装置に対応付けられる情報と、比較装置に対応付けられる情報と、のうちの一方、または、両方が不正であり得ることを表している。現行装置は、例えば、第2の端末装置200Bであり、比較装置は、例えば、第1の端末装置200Aである。このように、警告情報は、第1の端末装置200Aからの第1のスキャン指示が不正である可能性があることと、第2の端末装置200Bからの第2のスキャン指示が不正である可能性があることと、のうちの一方、または、両方を示している。プロセッサ110は、このような警告情報を出力することによって、種々の対策を講じることができる。例えば、プロセッサ110は、複合機100に関連する人に、適切な対策を促すことができる。
【0085】
なお、複合機100に関連する人は、警告情報に基づいて種々の対策を行ってよい。対策は、例えば、警告情報に含まれる情報に対応付けられるユーザに、不適切なスキャンを行わないよう警告を通知することを含んでよい。また、管理者は、警告情報に含まれる情報に対応付けられるユーザ識別子UIDを、認証リスト131(図3(A))から削除してよい。
【0086】
また、本実施例では、図8のS505で説明したように、警告情報は、ユーザ識別子UIDと、MACアドレスと、ホスト名と、を含んでいる。これらの情報は、いずれも、端末装置を識別することができる。すなわち、これらの情報は、端末装置の識別情報の例である。このように、警告情報は、第1の端末装置200Aを示す第1の識別情報と、第2の端末装置200Bを示す第2の識別情報と、のうちの一方、または、両方を含んでいる。プロセッサ110は、このような警告情報を出力することによって、種々の対策を講じることができる。例えば、プロセッサ110は、警告情報を参照する人による装置の特定(具体的には、不適切なスキャン指示を送信する装置の特定)を、容易化できる。
【0087】
また、本実施例では、特定処理(図8図9)は、図8のS510を含んでよい。S510では、プロセッサ110は、警告情報を含む電子メールを、管理端末300に送信する。管理端末300は、複合機100の外部の装置の例である。このように、警告情報を出力する出力処理は、警告情報を外部装置へ出力する処理を含んでよい。プロセッサ110は、警告情報を外部装置へ出力することによって(例えば、S510を実行することによって)、種々の対策を講じることができる。例えば、プロセッサ110は、外部装置を使用するユーザに、適切な対策を促すことができる。
【0088】
また、本実施例では、複合機100(図1)は、表示部140を備えている。特定処理(図8図9)は、図8のS522を含んでよい。S522では、プロセッサ110は、警告情報のデータを表示部140に出力することによって、警告情報を表示部140に表示させる。プロセッサ110は、S522を実行することによって、表示部140を観察する人(例えば、ユーザ)に、対策を促すことができる。
【0089】
また、本実施例では、特定処理(図8図9)は、図9のS533を含んでよい。S533では、プロセッサ110は、現行装置(ここでは、第2の端末装置200B)に対応付けられる識別子と、比較装置(ここでは、第1の端末装置200A)に対応付けられる識別子と、のうちの一方、または、両方を、禁止リスト133(図3(C))に登録する。これにより、プロセッサ110は、第1の端末装置200Aからの新たなスキャン指示によるスキャン処理の実行と、第2の端末装置200Bからの新たなスキャン指示によるスキャン処理の実行と、のうちの一方、または、両方を禁止する。プロセッサ110は、このような処理を実行することによって、不正なスキャン指示によってスキャン処理が実行される可能性を低減できる。
【0090】
また、本実施例では、特定処理(図8図9)は、図9のS536を含んでよい。S536では、プロセッサ110は、任意の外部装置(端末装置200A、200Bを含む)からの新たなスキャン指示によるスキャン処理の実行を禁止する。外部装置は、複合機100(より一般的には、スキャナ)とは異なる装置である。プロセッサ110は、S536を実行することによって、不正なスキャン指示によってスキャン処理が実行される可能性を低減できる。
【0091】
B.第2実施例:
図10(A)、図10(B)は、削除処理の例を表すフローチャートである。本実施例では、複合機100のプロセッサ110は、図4図9で説明した処理に加えて、図10(A)の第1削除処理を実行する。S610では、プロセッサ110は、図示しないタイマを参照して、現在日時を取得する。プロセッサ110は、スキャンリスト132(図3(B))を参照し、タイムスタンプTSの日時から現在日時までの長さが特定時間以上であるタイムスタンプTS(超過タイムスタンプと呼ぶ)を検索する。超過タイムスタンプは、スキャンリスト132へのスキャンデータの格納から特定時間が経過したことを示している。超過タイムスタンプが見つかる場合(S610:Yes)、S620で、プロセッサ110は、超過タイムスタンプに対応付けられる対象情報(ここでは、超過タイムスタンプと、スキャンデータ(超過スキャンデータと呼ぶ)と、ユーザ識別子UID)を、スキャンリスト132(すなわち、不揮発性記憶装置130の特定領域SA)から削除する。S620の後、プロセッサ110は、S610へ移行する。超過タイムスタンプが見つからない場合(S610:No)、プロセッサ110は、超過タイムスタンプが見つかるまで、S610を繰り返す。
【0092】
なお、対象情報の削除の方法は、削除済の対象情報をスキャンリスト132から検出できなくするような、任意の方法であってよい。本実施例では、複合機100上でファイルシステムが動作している。プログラムP1は、ファイルシステムに従って、スキャンリスト132を表すデータから、対象情報を表すデータを削除するように、構成されてよい。これにより、スキャンリスト132を表す特定領域SAから対象情報を表すデータは削除される。そして、スキャンリスト132から対象情報は検出できなくなる。なお、複合機100上で動作するファイルシステム、または、不揮発性記憶装置130のコントローラは、このようなデータ削除のための種々の処理を実行し得る。例えば、不揮発性記憶装置130の記憶領域内でのスキャンリスト132を表す特定領域SAの移動、または、変更によって、超過スキャンデータが格納されている部分が特定領域SAから除かれてよい。特定領域SAのうちの超過スキャンデータが格納されていた部分に他のデータが書き込まれることによって、特定領域SAから超過スキャンデータが消去されてよい。
【0093】
このように、本実施例では、プロセッサ110は、超過タイムスタンプに対応付けられるスキャンデータを、スキャンリスト132(すなわち、不揮発性記憶装置130の特定領域SA)から削除する。例えば、プロセッサ110は、タイムスタンプTS1(図3(B))の日時(すなわち、スキャンデータの格納の日時)から特定時間の経過に応じて、第1のスキャンデータSD1をスキャンリスト132から削除する。特定時間は、スキャンデータが不揮発性記憶装置130の特定領域SAに格納された後の経過時間の閾値を示している。
【0094】
古いスキャンデータをスキャンリスト132から削除する理由は、以下の通りである。例えば、第1ユーザによる第2原稿のスキャンの後、第1ユーザが第2原稿を回収すると仮定する。第1ユーザによるこのスキャンから長時間が経過した後に、第2ユーザが同じ第2原稿のスキャンを行う場合がある。この場合、第2ユーザによるスキャン指示は、不正なものではない。ところが、スキャンリスト132に残る古いスキャンデータ(第1ユーザによるスキャンデータ)に起因して、画像条件が満たされると判断され得、さらに、現行装置が比較装置と異なっている、と判断され得る。本実施例では、古いスキャンデータがスキャンリスト132から削除されるので、このような不具合の可能性は、低減する。
【0095】
なお、特定時間は、種々の時間であってよい。特定時間は、例えば、原稿がスキャンされた後、ユーザが原稿を複合機100から回収するまでの時間と同程度の時間であってよい(例えば、5分以上、30分以下)。
【0096】
また、プロセッサ110は、第1削除処理(図10(A))に代えて、または、第1削除処理に加えて、図10(B)の第2削除処理を実行してよい。S650では、プロセッサ110は、新たなスキャンデータがスキャンリスト132(すなわち、不揮発性記憶装置130の特定領域SA)に格納されるか否かを判断する。新たなスキャンデータがスキャンリスト132に格納される場合(S650:Yes)、S660で、プロセッサ110は、カバーセンサ176(図2)からのデータを参照し、カバー174が開けられるか否かを判断する。通常は、ユーザは、スキャンの後、カバー174を開けて、原稿を回収する。従って、カバー174が開けられることは、原稿が回収されることを示している。カバー174が開けられていない場合(S660:No)、プロセッサ110は、カバー174が開けられるまで、S660を繰り返す。カバーが開けられる場合(S660:Yes)、S670で、プロセッサ110は、S650のYesの判断に対応付けられるスキャンデータに対応付けられる対象情報を、スキャンリスト132(すなわち、不揮発性記憶装置130の特定領域SA)から削除する。例えば、プロセッサ110は、第1のスキャンデータSD1(図3(B))がスキャンリスト132に格納された後、カバー174が開けられることに応じて、第1のスキャンデータSD1に対応付けられる対象情報(ここでは、ユーザ識別子UID1と第1のスキャンデータSD1とタイムスタンプTS1)をスキャンリスト132から削除する。S670での削除方法は、S620(図10(A))での削除方法と同じであってよい。S670の後、プロセッサ110は、S650へ移行する。新たなスキャンデータがスキャンリスト132に格納されない場合(S650:No)、プロセッサ110は、新たなスキャンデータがスキャンリスト132に格納されるまで、S650を繰り返す。
【0097】
このように、プロセッサ110は、ユーザによる原稿の回収に応じて、スキャンデータをスキャンリスト132(すなわち、不揮発性記憶装置130の特定領域SA)から削除する。従って、古いスキャンデータに起因する不具合の可能性は、低減する。
【0098】
C.第3実施例:
図11(A)、図11(B)は、端末条件の別の実施例を表す図である。S750b(図11(A))とS750c(図11(B))とは、S350(図6)、S450(図7)での判断の代わりに、使用可能である。S750b(図11(A))では、プロセッサ110は、ユーザ識別子UIDに代えて、端末装置のMACアドレスを使用する。現行装置のMACアドレスが比較装置のMACアドレスと同じである場合、プロセッサ110は、端末条件が満たされると判断する。S750c(図11(B))では、プロセッサ110は、ユーザ識別子UIDに代えて、端末装置のホスト名を使用する。現行装置のホスト名が比較装置のホスト名と同じである場合、プロセッサ110は、端末条件が満たされると判断する。いずれの場合も、スキャンリスト132(図3(B))には、スキャンデータSDと、端末条件の判断に使用される情報(端末識別情報と呼ぶ。ここでは、MACアドレス、または、ホスト名)とが、対応付けて格納されてよい。プロセッサ110は、スキャンデータをスキャンリスト132(図3(B))に格納する処理で(例えば、S145、S245(図4図5))、端末識別情報をスキャンデータSDに対応付けてスキャンリスト132に格納することが好ましい。
【0099】
なお、2つのスキャン指示に対応付けられる2つの端末装置が同じであるか否かの判断には、ユーザ識別子UID、MACアドレス、ホスト名に代えて、端末装置を識別可能な任意の情報が使用されてよい。
【0100】
D.変形例:
(1)警告情報(図8:S505)は、上記の情報に限らず、種々の情報であってよい。例えば、警告情報からは、情報W1-W3(図8)から任意に選択される1種、または、2種の情報が、省略されてよい。すなわち、警告情報は、情報W1-W3から予め任意に選択される1以上の情報を含んでよい。警告情報は、同じスキャン画像を表すスキャンデータの宛先(例えば、端末装置を識別する識別子)のリストを表してよい。
【0101】
(2)管理者の連絡先に警告情報を送信する処理は、電子メールの送信に代えて、他の種々の処理であってよい。例えば、プロセッサ110は、Short Message Service(SMS)、または、複数のユーザの間で情報の送信と受信を行うメッセージングシステムのメッセージを送信してよい。
【0102】
(3)警告情報を外部装置へ出力する処理は、管理者の連絡先に警告情報を送信する処理に代えて、他の種々の処理であってよい。外部装置は、例えば、複合機100に関連する情報を表すウェブページを提供するウェブサーバであってよい。ウェブサーバは、受信した警告情報を含むウェブページを提供してよい。
【0103】
(4)警告情報を出力する出力処理は、上記の実施例と変形例とで説明した処理に代えて、他の種々の処理であってよい。例えば、プロセッサ110は、警告情報を表す音声を、図示しないスピーカから出力してよい。
【0104】
(5)画像条件(例えば、S235、S240、S335、S340、S435、S440(図5図6図7))の判断方法は、2枚の画像の類似度を使用する方法に代えて、他の種々の方法であってよい。例えば、プロセッサ110は、現行スキャン画像と比較スキャン画像との間で、色値(例えば、輝度値)のヒストグラムを比較してよい。ヒストグラムは、画像の複数の画素を、色値に応じて、複数のデータ区間(「ビン」とも呼ばれる)に分類することによって得られる。プロセッサ110は、2つの画像から得られる2つのヒストグラムの間で、各データ区間の頻度差を算出する。プロセッサ110は、複数のデータ区間のそれぞれの頻度差の絶対値の合計値を算出する。この合計値は、2つのヒストグラムの形状が似ているほど、小さい。プロセッサ110は、この合計値が所定の閾値以下である場合に、画像条件が満たされると判断してよい。
【0105】
いずれの場合も、プロセッサ110は、現行スキャン画像と比較スキャン画像との全体を比較してよい。これに代えて、現行スキャン画像の一部分と比較スキャン画像の一部分とが、比較されてよい。例えば、現行スキャン画像の中央部分と、比較スキャン画像の中央部分とが、比較されてよい。
【0106】
(6)スキャン指示を送信可能な装置を制限する処理(図9:S533)は、種々の処理であってよい。例えば、制限処理からは、制限処理R1-R3から任意に選択される1個、または、2個の制限処理が、省略されてよい。すなわち、制限処理は、処理R1-R3から予め任意に選択される1以上の処理を含んでよい。
【0107】
(7)特定処理(S460(図7))は、図8図9で説明した処理に代えて、不適切なスキャン指示に関連する種々の処理であってよい。例えば、警告情報を表示する処理(例えば、S522)は、省略されてよい。警告情報を出力する処理(例えば、S510、S522)は、省略されてよい。スキャン指示を送信可能な装置を制限する処理(例えば、S533)は、省略されてよい。プルスキャンを無効化する処理(例えば、S536)は、省略されてよい。
【0108】
また、特定処理は、スキャン指示によるスキャンが許容されるための許容条件(S125、S225、S325、S425(図4図7))に、以下の第3条件C3を追加する処理を含んでよい。
(第3条件C3)スキャン指示によって指定されるスキャンパスワードが、操作部150に入力される。
ユーザは、端末装置(例えば、端末装置200A、200B)にスキャン指示を入力する場合に(S115、S215、S315、S315(図4図7))、新たに決めたスキャンパスワードを入力する。端末装置から複合機100に送信されるスキャン指示(S120、S220、S320、S420)は、スキャンパスワードのデータを含んでいる。ユーザは、複合機100の操作部150を操作することによって、スキャンパスワードを入力する。これにより、プロセッサ110は、第3条件C3が満たされると判断する。
【0109】
(8)図10(A)のS610で参照されるタイムスタンプTS(図3(B))は、スキャンデータがスキャンリスト132に格納される日時に限らず、スキャン指示に起因する他の処理が行われる日時であってよい(タイムスタンプTSに対応付けられる処理を、タイムスタンプ処理と呼ぶ)。タイムスタンプ処理は、スキャン指示の取得から、スキャンリスト132へのスキャンデータの格納までの一連の処理に含まれる種々の処理であってよい。タイムスタンプ処理は、例えば、スキャンデータの生成処理であってよい(この場合、タイムスタンプTSは、スキャンデータの生成日時を示す)。いずれの場合も、S610の条件は、スキャンデータがスキャンリスト132(ここでは、不揮発性記憶装置130の特定領域SA)に格納された後、特定時間が経過する場合に満たされる種々の条件であってよい。例えば、S610の条件は、タイムスタンプTSの日時から現在日時までの長さが所定の待ち時間以上であることであってよい。この場合も、待ち時間に対応付けられる特定時間が、スキャンリスト132へのスキャンデータの格納から経過する場合に、S610の条件は満たされる。ここで、特定時間は、タイムスタンプ処理からスキャンデータの格納までの時間を待ち時間から減算した残り時間である。
【0110】
(9)スキャン指示に応じて行われる処理は、上記の各実施例と各変形例との処理に代えて、他の種々の処理であってよい。例えば、許容条件(S125、S225、S325、S425(図4図7))からは、ユーザ認証の成功(第1条件C1)は、省略されてよい。この場合、特定処理(S460(図7))は、許容条件に第1条件C1を追加する処理を含んでよい。また、プレビュー用のスキャン機能は、複合機100から省略されてよい。この場合、図6の処理が省略されて、図5のS255に続いて、図7の処理が行われ得る。
【0111】
また、画像条件(例えば、S335、S340、S435、S440(図6図7))が満たされる場合には、端末条件(S350、S450)が満たされるか否かに拘わらずに、プロセッサ110は、特定処理(例えば、図8図9)を実行してよい。
【0112】
(10)スキャンリスト132(図1)は、不揮発性記憶装置130に代えて、揮発性記憶装置120に格納されてよい。この場合、揮発性記憶装置120の記憶領域のうちのスキャンリスト132を格納する部分領域は、特定領域の例である。いずれの場合も、特定領域は、取得済のスキャンデータを格納するための種々の記憶領域であってよい。また、特定領域のデータを制御する処理は、外部装置からの新たなスキャン指示に従って取得されるスキャンデータと比較されるべきスキャンデータを特定領域に保持する種々の処理であってよい。例えば、プロセッサ110は、外部装置からの新たなスキャン指示に従ってスキャンデータを取得する毎に、取得したスキャンデータを特定領域(例えば、スキャンリスト132)に格納してよい。ここで、プロセッサ110は、新たに特定領域に格納されたスキャンデータとは異なるスキャンデータを、特定領域から削除してよい。これに代えて、プロセッサ110は、画像条件(例えば、S235、S240(図5)等)が満たされない場合に、特定領域(例えば、スキャンリスト132)のスキャンデータを削除し、現行のスキャンデータを特定領域に格納してよい。画像条件が満たされる場合には、プロセッサ110は、特定領域のスキャンデータを更新せずに維持してよい。いずれの場合も、プロセッサ110は、スキャンデータと、そのスキャンデータの取得のためのスキャン指示を送信した端末装置を識別する端末識別情報とを、対応付けて特定領域に格納してよい。特定領域のスキャンデータを削除する処理は、第1削除処理(図10(A))と第2削除処理(図10(B))とのうちの一方、または、両方を含んでよい。第1削除処理が採用される場合、プロセッサ110は、スキャンデータと、そのスキャンデータに対応付けられるタイムスタンプとを、対応付けて特定領域に格納してよい。
【0113】
(11)スキャナの構成は、複合機100(図1図2)の構成に代えて、他の種々の構成であってよい。例えば、スキャンエンジン170からは、カバー174とカバーセンサ176とは、省略されてよい。スキャンエンジンのうち、スキャンの対象物を配置すべき配置部分の構成は、支持台172を含む構成に限らず、他の任意の構成であってよい。例えば、配置部分は、自動原稿送り装置(Auto Document Feeder)を含んでよい。また、印刷エンジン160は、省略されてよい。表示部140は、省略されてよい。
【0114】
(12)図4図11等を参照して説明した上記の各実施例と各変形例とのデータ処理は、スキャンエンジン(例えば、スキャンエンジン170)を有する装置に接続されたデータ処理装置(例えば、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、サーバなど)によって、実行されてよい。また、ネットワークを介して互いに通信可能な複数の装置(例えば、コンピュータ)が、データ処理の機能を一部ずつ分担して、全体として、データ処理の機能を提供してもよい(これらの装置を備えるシステムが、データ処理装置に対応する)。
【0115】
上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、画像条件(例えば、S235、S240、S335、S340、S435、S440(図5図6図7))の判断の機能を、専用のハードウェア回路によって実現してもよい。
【0116】
また、本開示の機能の一部または全部がコンピュータプログラムで実現される場合には、そのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)に格納された形で提供することができる。プログラムは、提供時と同一または異なる記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納された状態で、使用され得る。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、メモリーカードやCD-ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種ROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスクドライブ等のコンピュータに接続されている外部記憶装置も含み得る。
【0117】
上記の実施例と変形例とは、適宜に組み合わせることができる。また、上記の実施例と変形例とは、本開示の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0118】
100…複合機、110…プロセッサ、115…記憶装置、120…揮発性記憶装置、130…不揮発性記憶装置、131…認証リスト、132…スキャンリスト、133…禁止リスト、140…表示部、150…操作部、160…印刷エンジン、170…スキャンエンジン、172…支持台、172s…支持面、174…カバー、176…カバーセンサ、178…センサユニット、180…通信インタフェース、190…筐体、200A…第1の端末装置、200B…第2の端末装置、210A、210B…プロセッサ、215A、215B…記憶装置、220A、220B…揮発性記憶装置、230A、230B…不揮発性記憶装置、240A、240B…表示部、250A、250B…操作部、280A、280B…通信インタフェース、300…管理端末、1000…システム
図1
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