(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017434
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】熱応動弁
(51)【国際特許分類】
F16T 1/10 20060101AFI20240201BHJP
F16K 31/68 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
F16T1/10
F16K31/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120063
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智行
【テーマコード(参考)】
3H057
【Fターム(参考)】
3H057AA05
3H057BB44
3H057CC04
3H057DD04
3H057EE02
3H057FA22
3H057FD19
3H057HH08
3H057HH11
(57)【要約】
【課題】ダイヤフラム等の破損を防止することができる熱応動弁の提供。
【解決手段】
低温のドレンが矢印91方向に流入したとき、可動弁体10の弁体部4は、弁孔55を開弁してドレンを矢印92方向に排出し、弁室45内に高温のドレン又は蒸気が流入したとき、可動弁体10の弁体部4は、弁孔55を閉弁して蒸気の流出を阻止する。背圧によってドレンが逆流した場合、弁体部4の下部連通孔15b内に位置する球体弁2が逆止弁として機能し、介在空間19への異物が混入したドレンの侵入を阻止する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口から出口に向けて形成された流路に沿って流体が流通可能な本体と、
前記本体の出口側に設けられ、弁孔が貫通形成された弁座と、
前記本体の入口側に設けられ、前記弁座と離着座することによって前記弁孔を開閉する可動弁体とを備えた熱応動弁であって、
前記可動弁体は、
温度に応じて膨張又は収縮する温度応動媒体と、
前記温度応動媒体の膨張又は収縮に応じて変形する第1ダイヤフラムと、
前記第1ダイヤフラムと空間を介して配置され、前記第1ダイヤフラムの変形に応じて変形する第2ダイヤフラムと、
前記第2ダイヤフラムに取り付けられ、前記弁座と離着座することができ、前記空間と前記流路とを連通させる連通孔を有する弁体部と、
流体が出口から入口に向けて逆流したとき、前記連通孔を閉塞して前記空間へ流体が流入することを防止する逆止弁体とを有する、熱応動弁。
【請求項2】
請求項1に係る熱応動弁において、
前記逆止弁体は、球体弁である、熱応動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、熱応動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
熱応動弁としては後記特許文献1に開示されている熱応動式スチームトラップがある。この熱応動式スチームトラップの弁室3には、導出路8が形成された弁座部材7が設けられており、この弁座部材7の上方に温度制御機素9が配置されている。
【0003】
温度制御機素9は、第1ダイヤフラム14によって密封された収容室13を有しており、この収容室13に感温液15が封入されている。感温液15は高温の周辺温度に反応して膨張し、低温の周辺温度に反応して収縮する。
【0004】
また、温度制御機素9は、第1ダイヤフラム14の下方に位置する第2ダイヤフラム18を有しており、第2ダイヤフラム18には弁部材16が固定されている。弁部材16は、弁座部材7に離着座して導出路8を開閉する弁体である。なお、弁部材16の中心には、第1ダイヤフラム14と第2ダイヤフラム18との間の空間と、弁室3とを連通させる中心孔が上下方向に沿って形成されている。
【0005】
この熱応動式スチームトラップの入口4から弁室3に低温の復水が流入した場合、感温液15は収縮し、第1ダイヤフラム14及び第2ダイヤフラム18は弁室3内の流体圧力によって変形して持ち上げられる。これによって、第2ダイヤフラム18に固定された弁部材16は、弁座部材7から離座して導出路8を開放する。導出路8の開放によって復水は出口5から排出される。
【0006】
その後、弁室3に高温の蒸気が流入すると、感温液15は膨張し、第1ダイヤフラム14及び第2ダイヤフラム18の変形を介して弁部材16が弁座部材7に着座し、導出路8を閉塞する。これによって、蒸気の流出が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前述の特許文献1に開示された熱応動式スチームトラップの場合、背圧によってドレンの逆流が生じると、逆流するドレンが弁部材16の中心孔から第1ダイヤフラム14と第2ダイヤフラム18との間の空間に浸入することがあった。
【0009】
逆流するドレンには塵やスケール等の異物が混入していることがあり、第1ダイヤフラム14と第2ダイヤフラム18との間の空間に異物が入り込んだ場合、感温液15の膨張又は収縮によって第1ダイヤフラム14及び第2ダイヤフラム18が変形する際、第1ダイヤフラム14や第2ダイヤフラム18が異物の介在によって破損するおそれがある。特に、感温液15を密封している第1ダイヤフラム14に破れなどの破損が生じた場合、感温液15が流れ出して温度制御機素9が適正に機能しなくなる。
【0010】
そこで本願に係る熱応動弁は、ドレンが逆流した場合であっても、ダイヤフラム等の破損を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願に係る熱応動弁は、
入口から出口に向けて形成された流路に沿って流体が流通可能な本体と、
前記本体の出口側に設けられ、弁孔が貫通形成された弁座と、
前記本体の入口側に設けられ、前記弁座と離着座することによって前記弁孔を開閉する可動弁体とを備えた熱応動弁であって、
前記可動弁体は、
温度に応じて膨張又は収縮する温度応動媒体と、
前記温度応動媒体の膨張又は収縮に応じて変形する第1ダイヤフラムと、
前記第1ダイヤフラムと空間を介して配置され、前記第1ダイヤフラムの変形に応じて変形する第2ダイヤフラムと、
前記第2ダイヤフラムに取り付けられ、前記弁座と離着座することができ、前記空間と前記流路とを連通させる連通孔を有する弁体部と、
流体が出口から入口に向けて逆流したとき、前記連通孔を閉塞して前記空間へ流体が流入することを防止する逆止弁体とを有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願に係る熱応動弁においては、逆止弁体が流路上に移動可能に位置しており、流体が順方向とは逆方向に逆流したとき、当該逆流を受けて移動し、連通孔への流体の流入を阻止する。
【0013】
このため、異物が混入した流体が、連通孔を通じて第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムとの間に形成される空間に進入することを回避することができる。したがって、ダイヤフラム等によって構成される第1ダイヤフラム又は第2ダイヤフラムの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本願に係る熱応動弁の第1の実施形態を示す熱応動弁1の全体構成を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す可動弁体10近傍の拡大断面図であり、開弁時の状態を示す拡大断面図である。
【
図4】
図1に示す可動弁体10近傍の拡大断面図であり、閉弁時の状態を示す拡大断面図である。
【
図5】
図1に示す可動弁体10近傍の拡大断面図であり、逆流時の状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る熱応動弁の下記の要素に対応している。
【0016】
球体弁2・・・逆止弁体
感温液9・・・温度応動媒体
上部連通孔15a・・・連通孔
介在空間19・・・空間
ケーシング40・・・本体
流入口41・・・入口
弁室45及び弁孔55・・・流路
流出口42・・・出口
矢印91、92・・・順方向
蒸気又はドレン・・・流体
【0017】
[第1の実施形態]
本願に係る熱応動弁の第1の実施形態を、熱応動弁を例に説明する。熱応動弁は、たとえば産業プラントに設置された蒸気移送のための配管系統に設けられ、蒸気から発生するドレンを自動的に配管外に排出するスチームトラップである。
【0018】
(熱応動弁1の全体構成の説明)
図1は、本実施形態に係る熱応動弁1の全体構成を示す断面図である。ケーシング40は内部に弁室45を備えており、この弁室45に連通する流入口41及び流出口42が形成されている。流入口41及び流出口42は、それぞれ軸心をL1とする略円筒形状をなしている。流入口41はケーシング40の上方に形成され、例えば配管系統の支管(図示せず)に接続される。流出口42はケーシング40の下方に形成され、例えばドレン排出用の排出管(図示せず)に接続される。
【0019】
弁室45の底部には、略円筒形状の弁座50がケーシング40に螺入されて固定されている。この弁座50の中心には、ドレンを流通させるための弁孔55が貫通形成されている。弁座50の上部には、弁体部4を有する可動弁体10が配置されている。この可動弁体10は、弁室45内においてホルダ47によって支持されて固定されている。可動弁体10が有する弁体部4は、弁座50の弁孔55の上流端に近接して位置するように設けられている。なお、弁座50及び可動弁体10の軸心は、中心線L1に一致するように配置されている。
【0020】
可動弁体10は、周辺温度に反応して膨張又は収縮し、これによって弁孔55の上流端を開閉することができる。弁室45内に低温のドレンが矢印91方向に流入したとき、可動弁体10は、弁孔55の上流端を開弁してドレンを矢印92方向に排出させることができる。弁室45内に高温のドレン又は蒸気が流入したとき、可動弁体10は、弁孔55の上流端を閉弁してドレン又は蒸気の流出を阻止することができる。
【0021】
図2は、可動弁体10を含む箇所の拡大断面図であり、開弁時の状態を示している。可動弁体10は、略円盤形状を有する第1ケース21及び第2ケース22(
図3参照)によって本体を構成し、内部に内部空間29を形成する。内部空間29には、第1ダイヤフラム11及び第2ダイヤフラム12が上下方向に二重に重畳して配置されている。
【0022】
第1ダイヤフラム11及び第2ダイヤフラム12は縁周を第1ケース21と第2ケース22によって挟み込まれている。第1ケース21と第2ケース22とは、第1ダイヤフラム11及び第2ダイヤフラム12を挟みこんだ状態で、その縁周を溶接することによって固定されている。
【0023】
第1ダイヤフラム11及び第2ダイヤフラム12は、可撓性を有する略円盤形状のシート状部材であり、平板ではなく波型形状が同心円状に複数形成されている部材である。この可撓性と波型形状とによって、第1ダイヤフラム11及び第2ダイヤフラム12はそれぞれ中央部分に近い位置ほど中心L1軸方向に大きく変形可能である。
【0024】
第1ダイヤフラム11と第1ケース21との間には密閉された液室39が形成されており、この液室39に感温液9が封入されている。この感温液9は、水や水よりも沸点の低い液体、又はそれらの混合物で構成され、所定の基準温度以上になると気化して液室39を膨張させ、基準温度を下回ると液化して液室39を収縮させる。
【0025】
第1ケース21の中心には注入開口28が貫通して形成されており、ここから感温液9が注入される。感温液9の注入後、注入開口28は栓35によって溶接で固定され、感温液9は密封される。なお、第1ケース21には、第1ダイヤフラム11に向けて突出するストッパー25が設けられており、第1ダイヤフラム11の上側への変形を規制する。
【0026】
第2ダイヤフラム12は、第1ダイヤフラム11との間に介在空間19を形成する。第2ダイヤフラム12の中心部には中心孔が設けられており、中心孔の周囲を含む位置に弁体部4が取り付けられている。第2ケース22の中央には中央開口23が形成されており、この中央開口23から弁体部4の下面が下側に向けて突出し、弁体部4の下面は弁座50の上流端に対向して近接している。なお、第2ケース22には、弁室45(
図1)と内部空間29とを連通させる周囲開口24が4か所に形成されている(
図3)。
【0027】
弁体部4の中心部分には中心線L1方向に貫通する連通孔15が形成されている。連通孔15は、上部に位置する上部連通孔15a及び下部に位置する下部連通孔15bによって構成されている。そして、上部連通孔15aの内径は、下部連通孔15bの内径よりも小さく形成されており、これによって上部連通孔15aと下部連通孔15bとの接続部分に段部が形成される。
【0028】
また、弁体部4は、介在空間19内に位置するコンタクト部14との間で第2ダイヤフラム12を挟み込んでいる。弁体部4とコンタクト部14とは第2ダイヤフラム12を挟み込んだ状態で溶接によって固定されている。なお、コンタクト部14にも中心線L1方向に貫通する中心孔が形成されており、弁体部4の連通孔15、第2ダイヤフラム12の中心孔及びコンタクト部14の中心孔を通じて、介在空間19と弁室45(
図1)とは連通している。
【0029】
以上のように、可動弁体10は、第1ダイヤフラム11と第2ダイヤフラム12とが重畳して配置されるダイヤフラムの二重構造を備えている。これは、可動弁体10の動作に従い繰り返し変形するダイヤフラムの破損を防止するため、液室39に感温液9を密封するための第1ダイヤフラム11と、弁体部4が固定される第2ダイヤフラム12とを別に設けたものである。
【0030】
なお、ダイヤフラムの二重構造を採用していることによって、弁室45内に流入する蒸気やドレンの温度が感温液9に伝達されにくくなるおそれがある。このため、弁体部4の連通孔15、第2ダイヤフラム12の中心孔及びコンタクト部14の中心孔を設け、弁室45の蒸気やドレンが介在空間19に入り込むように構成している。これによって、介在空間19に入り込んだ蒸気やドレンの温度が感温液9に伝達され易くなり、応答性が向上する。
【0031】
ここで本実施形態では、弁体部4の下部連通孔15b内に、逆止弁体としての球体弁2が設けられている。この球体弁2は、例えば鋼球によって構成することができる。球体弁2の直径は下部連通孔15bの内径よりも小さい。また、下部連通孔15bの中心線L1方向における長さは、球体弁2の直径よりも大きい。このため、球体弁2は、下部連通孔15b内において中心線L1方向に沿って浮動自在である。
【0032】
球体弁2の浮上は、上部連通孔15aと下部連通孔15bとの段部によって規制される。浮上の限界位置に達した球体弁2は、上部連通孔15aの下端部に接することにより上部連通孔15aを閉塞することができる。
【0033】
弁体部4の下面部分には、
図3に示すように、中心線L1を直交して通過しながら下部連通孔15bを横切って配置されるストッパー5が固定されている。このストッパー5は、球体弁2が下部連通孔15bから脱落しないように球体弁2を支持している。
【0034】
(熱応動弁1の動作の説明)
次に、熱応動弁1の動作を説明する。まず、設備の始動開始直後は熱応動弁1の弁室45に空気が充満している。このため、液室39に封入されている感温液9は低温の空気の影響を受けて収縮した状態にあり、弁体部4の下面は弁座50の上面から離れて弁孔55を開放し、熱応動弁1は
図2に示す開弁状態にある。この状態で配管系統に蒸気が圧送された場合、この移送圧によって、弁室45内の空気は弁孔55から流出口42に矢印92方向(
図1)に押し出される。
【0035】
流入口41から弁室45内に高温のドレン又は蒸気が矢印91方向(
図1)に流入したとき、高温のドレン又は蒸気は可動弁体10の側周を通過して可動弁体10の下側に回り込む。そして、弁室45内のドレン又は蒸気は、第2ケース22に形成されている中央開口23及び周囲開口24から内部空間29に入り込む。
【0036】
また、高温のドレン又は蒸気は、弁体部4の下面と弁座50の上面との隙間から、弁体部4の連通孔15、第2ダイヤフラム12の中心孔及びコンタクト部14の中心孔を通過して介在空間19に入り込む。このとき、弁体部4の下部連通孔15b内に位置する球体弁2は、自重によってストッパー5に接したままの状態にある。可動弁体10の周囲を通過する高温のドレン又は蒸気や、内部空間29及び介在空間19に高温のドレン又は蒸気が入り込んだことによって、液室39に封入されている感温液9は、ドレン又は蒸気の温度に反応して膨張する。
【0037】
感温液9の膨張を受けると、第1ダイヤフラム11は中心線L1に沿って下方向に延びるように中央部分が変形する。このときの状態が
図4である。変形した第1ダイヤフラム11は下面でコンタクト部14の上面を押圧し、第2ダイヤフラム12を押し下げる。これによって、第1ダイヤフラム11の変形はそのまま第2ダイヤフラム12に伝わり、弁体部4の下面は弁座50の上面に接し、弁体部4が弁座50に着座して熱応動弁1は閉弁する。熱応動弁1が閉弁することによって、熱応動弁1からの蒸気漏れが阻止される。
【0038】
続いて、配管系統内で蒸気が凝縮してドレンが発生した場合、低温ドレンが流入口41から熱応動弁1の弁室45に矢印91方向に流入し、内部空間29及び介在空間19に入り込む。これによって、液室39に封入されている感温液9は、ドレンの低温に反応して収縮する。
【0039】
この収縮を受け、第1ダイヤフラム11は自身の復元力と弁室45内の流体圧によって、中心線L1に沿って上方向に変形して
図2に示す状態に復位する。第1ダイヤフラム11の上方向への変形は、ストッパー25によって規制され、ストッパー25に当接する位置が第1ダイヤフラム11の上側への変形の限界位置である。
【0040】
第1ダイヤフラム11が上方向に変形して復元したことを受け、第2ダイヤフラム12も同様に自身の復元力と弁室45内の流体圧によって上方向に変形する。これによって弁体部4の下面は弁座50の上流端から離座し、熱応動弁1は開弁する。
【0041】
熱応動弁1が開弁することによって、ドレンは配管内の高圧の勢いを受け自動的に弁座50の弁孔55から流出口42を通じて矢印92方向(
図1)に排出される。ドレンが排出された後、再び弁室45には高温のドレン又は蒸気が流入してくると、感温液9が膨張し、
図4に示すように弁体部4が弁座50の上流端に着座して熱応動弁1は閉弁する。
【0042】
ところで、熱応動弁1には背圧によって排出管から流出口42を通じてドレンが逆流することがある。逆流するドレンには塵やスケール等の異物が混入していることがあり、このような異物が第1ダイヤフラム11と第2ダイヤフラム12との間に形成されている介在空間19に侵入した場合、第1ダイヤフラム11及び第2ダイヤフラム12が変形する際、第1ダイヤフラム11や第2ダイヤフラム12が異物の介在によって破損するおそれがある。
【0043】
本実施形態では、弁体部4の下部連通孔15b内に位置する球体弁2が逆止弁として機能し、介在空間19へのドレンの侵入を阻止することができる。すなわち、
図5に示すように、球体弁2は背圧や矢印93方向へのドレンの逆流の勢いを受けて浮上する。そして、弁体部4の上部連通孔15aと下部連通孔15bとの接続部分に形成されている段部に当接し、上部連通孔15aに下側から接して上部連通孔15aを閉塞する。
【0044】
これによって、介在空間19への異物の侵入を阻止し、第1ダイヤフラム11や第2ダイヤフラム12の損傷を防止することができる。ドレンの矢印93方向への逆流が停止した場合、球体弁2は自重によって下降し、上部連通孔15aを開放する状態に復位する。
【0045】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、熱応動弁として熱応動弁1を例示したが、流入する流体の温度に応じて弁座の弁孔を開閉するものであれば、他の自動弁に本願に係る熱応動弁を適用することができる。
【0046】
さらに、前述の実施形態においては、第1ダイヤフラムとして第1ダイヤフラム11を例示し、第2ダイヤフラムとして第2ダイヤフラム12を例示したが、感温液9等の膨張又は収縮に応じて変形する構成であれば他の形状、構造のものを用いることができる。
【0047】
また、前述の実施形態においては、感温液として水や水よりも沸点の低い液体、又はそれらの混合物で構成される感温液9を例示したが、周辺温度に応じて膨張又は収縮するものである限り、他の液体や液体以外の素材を採用することができる。
【0048】
さらに、前述の実施形態においては、逆止弁体として鋼球で構成された球体弁2を例示したが、流体(蒸気又はドレン等)が逆流したとき、連通孔15等に接して介在空間19等への流体の流入を阻止するものであれば、他の形状、構造のものを用いることができる。たとえば、中空の球状体を用いることができ、また球形状ではなく円盤形状の部材を用いることもできる。
【符号の説明】
【0049】
1:熱応動弁 2:球体弁 4:弁体 9:感温液 10:可動弁体
11:第1ダイヤフラム 12:第2ダイヤフラム 15:連通孔 19:介在空間
40:ケーシング 41:流入口 42:流出口 45:弁室 55:弁孔