(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174341
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】騒音制御方法及び騒音制御装置
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20241210BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G10K11/178
B60R11/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092117
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越智 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宮川 隆行
(72)【発明者】
【氏名】榎本 俊夫
【テーマコード(参考)】
3D020
5D061
【Fターム(参考)】
3D020BA10
3D020BA11
3D020BC01
3D020BE04
5D061FF02
(57)【要約】
【課題】車室内の騒音レベルの変化を抑制できる騒音制御方法及び騒音制御装置を提供する。
【解決手段】スピーカ14から出力された出力音により車室内の騒音レベルを制御する場合に、騒音レベルが所定値未満であると判定したときは、騒音レベルが所定値以上である場合より騒音レベルを低減するように出力音を制御する、又は騒音レベルを増幅する出力音をスピーカ14から出力する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカから出力された出力音により車室内の騒音レベルを制御する騒音制御方法において、
前記騒音レベルが所定値未満であるか否かを判定し、
前記騒音レベルが前記所定値未満であると判定した場合は、前記騒音レベルが前記所定値以上である場合より前記騒音レベルを低減するように前記出力音を制御する、騒音制御方法。
【請求項2】
車両のマイクロフォン及び加速度センサの検出結果から前記騒音レベルを算出する、請求項1に記載の騒音制御方法。
【請求項3】
車両の進行方向前方の画像に基づき、前記車両が走行する道路の路面の状態が変化するタイミングを推定し、
前記出力音が前記騒音レベルを低減する消音割合を、前記タイミングで小さく又は大きくなるように設定する、請求項1又は2に記載の騒音制御方法。
【請求項4】
前記騒音レベルを、それぞれが重複しない、前記所定値以上の少なくとも一つの範囲と、前記所定値未満の少なくとも一つの範囲とに区切り、
前記範囲毎に一定の、前記出力音が前記騒音レベルを低減する消音割合を設定する、請求項1又は2に記載の騒音制御方法。
【請求項5】
前記出力音が前記騒音レベルを低減する消音割合を設定するための閾値として前記所定値以下の第1騒音レベルと、前記所定値より大きい第2騒音レベルとを設定し、
前記騒音レベルが前記第1騒音レベル未満である場合は、前記消音割合を第1割合に設定し、
前記騒音レベルが前記第2騒音レベル以上である場合は、前記消音割合を、前記第1割合より大きい第2割合に設定し、
前記騒音レベルが前記第1騒音レベル以上且つ前記第2騒音レベル未満である場合は、前記消音割合を、前記第1割合より大きく、前記第2割合未満であり、前記騒音レベルに正比例する第3割合に設定する、請求項1又は2に記載の騒音制御方法。
【請求項6】
前記騒音レベルが前記所定値未満である場合は、前記出力音が前記騒音レベルを低減する消音割合を第4割合に設定し、
前記騒音レベルが前記所定値以上である場合は、前記消音割合を、前記第4割合より大きい第5割合に設定し、
前記騒音レベルが前記所定値未満から前記所定値以上に変化する場合は、前記消音割合を、第1所定時間で前記第4割合から前記第5割合に変化するように設定し、
前記騒音レベルが前記所定値以上から前記所定値未満に変化する場合は、前記消音割合を、前記第1所定時間より長い第2所定時間で前記第5割合から前記第4割合に変化するように設定する、請求項1又は2に記載の騒音制御方法。
【請求項7】
前記騒音レベルが前記所定値未満であると判定した場合は、前記騒音レベルを増幅する前記出力音を前記スピーカから出力する、請求項1又は2に記載の騒音制御方法。
【請求項8】
前記騒音レベルが前記所定値未満である場合は、前記出力音が前記騒音レベルを低減する消音割合を第4割合に設定し、
前記騒音レベルが前記所定値以上である場合は、前記消音割合を、前記第4割合より大きい第5割合に設定し、
前記騒音レベルが前記所定値未満から前記所定値以上に変化する場合は、前記消音割合を、第1所定時間で前記第4割合から前記第5割合に変化するように設定し、
前記騒音レベルが前記所定値以上から前記所定値未満に変化する場合は、前記消音割合を、前記第1所定時間で前記第5割合から前記第4割合に変化するように設定すると共に、前記第1所定時間より長い第2所定時間の間、前記騒音レベルを増幅する前記出力音を前記スピーカから出力し、
前記騒音レベルを増幅する前記出力音が前記騒音レベルを増幅する増幅割合を、時間の経過と共に小さくなるように設定する、請求項1又は2に記載の騒音制御方法。
【請求項9】
前記騒音レベルが前記所定値未満である場合に、車両の進行方向前方の画像に基づき、前記騒音レベルが前記所定値未満から前記所定値以上に変化する第1タイミングを推定し、
前記第1タイミングから第3所定時間だけ前の第2タイミングから、前記第1タイミングまでの間、前記騒音レベルを増幅する前記出力音を前記スピーカから出力し、
前記騒音レベルを増幅する前記出力音が前記騒音レベルを増幅する増幅割合を、前記第2タイミングから前記第1タイミングまでの間は時間の経過と共に大きくなるように設定し、
前記騒音レベルが前記所定値以上である場合に、前記画像に基づき、前記騒音レベルが前記所定値以上から前記所定値未満に変化する第3タイミングを推定し、
前記第3タイミングから前記第3所定時間、前記騒音レベルを増幅する前記出力音を前記スピーカから出力し、
前記騒音レベルを増幅する前記出力音が前記騒音レベルを増幅する増幅割合を、前記第3タイミングから前記第3所定時間が経過するまでの間は時間の経過と共に小さくなるように設定する、請求項1又は2に記載の騒音制御方法。
【請求項10】
スピーカから出力された出力音により車室内の騒音レベルを制御する騒音制御方法において、
前記騒音レベルが所定値未満であるか否かを判定し、
前記騒音レベルが前記所定値未満であると判定した場合は、前記騒音レベルを増幅する前記出力音を前記スピーカから出力する、騒音制御方法。
【請求項11】
車両の進行方向前方の画像に基づき、前記車両が走行する道路の路面の状態が変化するタイミングを推定し、
前記騒音レベルを増幅する前記出力音の出力を、前記タイミングで開始又は停止する、請求項10に記載の騒音制御方法。
【請求項12】
スピーカから出力された出力音により車室内の騒音レベルを制御する騒音制御装置であって、
前記騒音レベルが所定値未満であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部が、前記騒音レベルが前記所定値未満であると判定した場合に、前記騒音レベルが前記所定値以上である場合より前記騒音レベルを低減するように前記出力音を制御する設定部と、を備える、騒音制御装置。
【請求項13】
スピーカから出力された出力音により車室内の騒音レベルを制御する騒音制御装置であって、
前記騒音レベルが所定値未満であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部が、前記騒音レベルが前記所定値未満であると判定した場合に、前記騒音レベルを増幅する前記出力音を前記スピーカから出力する出力部と、を備える、騒音制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音制御方法及び騒音制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の位置に対応する道路の道路情報から路面の情報を取得し、取得した路面の情報に基づき、ロードノイズを相殺する制御音の基準信号を生成する騒音制御装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、道路の路面状況に応じた基準信号を生成するため、路面状況が変化する場合は、路面状況の変化と共に車室内の騒音レベルも変化する。そのため、ロードノイズが小さい道路からロードノイズが大きい道路に進入した場合などに車室内の騒音レベルが大きく変化し、車両の乗員に不快感を与えるという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、車室内の騒音レベルの変化を抑制できる騒音制御方法及び騒音制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、スピーカから出力された出力音により車室内の騒音レベルを制御する場合に、騒音レベルが所定値未満であると判定したときは、騒音レベルが所定値以上である場合より騒音レベルを低減するように出力音を制御する、又は騒音レベルを増幅する出力音をスピーカから出力することにより上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車室内の騒音レベルの変化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る騒音制御装置を含む騒音制御システムの実施形態の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1のカメラ、マイクロフォン、加速度センサ及びスピーカの配置の一例を示す平面図である。
【
図3】ある走行シーンにおいて検出された騒音の一例を示す図である。
【
図4】
図1の騒音制御システムによる騒音レベルの制御の一例を示す図である。
【
図5】
図1の騒音制御システムによる騒音レベルの制御の他の例を示す図である。
【
図6】
図1の騒音制御システムにおける騒音レベルと騒音レベルを低減する消音割合との関係の一例を示す図である。
【
図7】
図1の騒音制御システムにおける騒音レベルと騒音レベルを低減する消音割合との関係の他の例を示す図である。
【
図8】
図1の騒音制御システムによる騒音レベルの制御のさらに他の例を示す図である。
【
図9】
図1の騒音制御システムによる騒音レベルの制御のさらに他の例を示す図である。
【
図10】
図1の騒音制御システムにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図1の騒音制御システムにおける処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【
図12】
図1の騒音制御システムにおける処理手順のさらに他の例を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の比較例に係る騒音レベルの制御の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
[騒音制御システムの構成]
図1は、本発明に係る騒音制御システムの実施形態の一例を示すブロック図である。騒音制御システム1は、スピーカから出力された音(以下、出力音とも言う。)により車室内の騒音(以下、車内騒音とも言う。)を制御する車載装置群である。出力音とは、スピーカから車室内に放出される音波であり、音波の波形は特に限定されない。車室とは、車両における乗員の居住空間であり、居住空間の形状及び大きさは特に限定されない。車内騒音とは、車両の乗員に不快感を与え得る音である。車内騒音としては、エンジンの振動に因る音(エンジン音)、路面の凹凸に因る音(ロードノイズ)、車両の周囲の気流の乱れに因る音(風切り音)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
また、車内騒音を制御するとは、例えば、騒音の波形(周波数及び振幅)を制御することである。車内騒音の制御としては、騒音と逆位相の波形を有する出力音により騒音を打ち消すこと、騒音と同じ波形を有する出力音により騒音を増幅すること、騒音を打ち消す又は増幅する出力音の振幅を大きく又は小さくすること、騒音を打ち消す又は増幅する出力音の周波数を高く又は低くすることなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
図1に示すように、騒音制御システム1は、マイクロフォン11、加速度センサ12、カメラ13、スピーカ14及び騒音制御装置2を備える。これらの装置は、車両に搭載され、互いに情報を授受できる。
【0013】
マイクロフォン11は、車室内の音(以下、室内音とも言う。)を音声データとして取得する装置である。マイクロフォン11としては、小型のスタンドマイク、指向性の接話型マイク、車両のルーフやシートに搭載可能なラベリアマイクなどが挙げられるが、特に限定されない。室内音には、乗員が発する声、ロードノイズなどの騒音、スピーカ14の出力音などが含まれるが、これらに限定されない。マイクロフォン11は、室内音を適切に検出できる範囲内で適宜の位置に設置でき、その台数は、マイクロフォン11の検出範囲と車室の大きさとに応じて適宜の台数とする。
【0014】
加速度センサ12は、車両の加速度を検出する装置である。加速度センサ12としては、周波数変化式、圧電式、静電容量式などの公知のセンサが挙げられるが、特に限定されない。加速度センサ12は、例えば、車両の加速度の大きさ及び方向並びに車両の移動量、移動速度及び移動方向を検出する。加速度センサ12は、車両の加速度を適切に検出できる範囲内で適宜の位置に設置でき、例えば、各サスペンションの近傍に設置する。
【0015】
カメラ13は、対象物の画像を取得する装置である。カメラ13としては、CCDなどの撮像素子を備えるカメラ、超音波カメラ、赤外線カメラなどが挙げられるが、特に限定されない。カメラ13は、車両のフロントグリル部、左右ドアミラーの下部、リアバンパ近傍などに搭載される。対象物は、例えば車外の物体であり、道路の路面、車線境界線、中央線、路面標識、中央分離帯、ガードレール、縁石、道路標識、信号機、横断歩道などが含まれる。
【0016】
スピーカ14は、電気信号エネルギーを音響エネルギーに変換して空間に放出する装置である。スピーカ14としては、一体型又は分離型の車両用スピーカなどが挙げられるが、特に限定されない。スピーカ14は、車内騒音を出力音で適切に制御できる範囲内で適宜の位置に設置でき、その台数は、スピーカ14の出力音量の設定可能範囲と車室の大きさとに応じて適宜の台数とする。
【0017】
図2は、
図1のマイクロフォン11、加速度センサ12、カメラ13及びスピーカ14の配置の一例を示す平面図である。
図2に示す車両3は、右前側の運転席31、左前側の助手席32及び後側の後部座席33,34を備える。なお、説明のため、
図2に示す車両3のウィンドシールド、ルーフ、リアウィンドウ及びサイドウィンドウの一部を図示しない。
【0018】
図2に示す車両3は、運転席31及び助手席32周辺の室内音を取得するマイクロフォン11aと、後部座席33,34周辺の室内音を取得するマイクロフォン11bとを備える。マイクロフォン11aは、車両3のルーフ前側の、運転席31と助手席32との間に取り付けられ、マイクロフォン11bは、ルーフ後側の、後部座席33と後部座席34との間に取り付けられている。
【0019】
また、右前輪、左前輪、右後輪及び左後輪の各サスペンションには、タイヤを介して路面から車体に伝わる振動を検出する加速度センサ12a~12dが取り付けられている。ウィンドシールドの上部には、車両3の前方の対象物を撮像するカメラ13が設置されている。図示しない車両3の右前のドアには、運転席31周辺の騒音を制御するスピーカ14aが内蔵されている。同様に、左前のドア、右後のドア及び左後のドアには、それぞれ、スピーカ14b~14dが内蔵されている。
【0020】
図1に戻り、騒音制御装置2は、騒音制御システム1を構成する各装置を制御して協働させ、車内騒音を制御する出力音を出力させる装置である。騒音制御装置2は、例えばコンピュータであり、プロセッサであるDSP(Digital Signal Processor)と、プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とを備える。DSPは、ROMに格納されたプログラムを実行し、騒音制御装置2が有する機能を実現するための動作回路である。
【0021】
騒音制御装置2は、車内騒音を制御する騒音制御機能を有する。騒音制御装置2のROMには騒音制御機能を実現するプログラムが格納され、DSPがROMに格納されたプログラムを実行することで、騒音制御機能が実現される。
図1には、騒音制御機能を実現する機能ブロックとして、判定部21、設定部22及び出力部23を便宜的に抽出して示す。以下、
図3に示す例を用いて、騒音制御装置2の騒音制御機能について説明する。
【0022】
[騒音制御装置の機能]
図3は、騒音制御装置2により検出された車内騒音の一例を示す図である。
図3に示す例では、
図2に示す車両3が、第1道路と、路面の凹凸が第1道路より大きく、第1道路よりロードノイズが大きい第2道路とを走行したものとする。具体的には、時刻T0から時刻T1まで第1道路を走行し、時刻T1で第1道路から第2道路に進入し、時刻T1から時刻T2まで第2道路を走行し、時刻T2で第2道路から第1道路に進入し、時刻T2から時刻T3まで第1道路を走行したものとする。また、車両3が第1道路を走行する場合の車室内の騒音レベルはA1であり、第2道路を走行する場合の車室内の騒音レベルはB1であるものとする。なお、以下、車室内の騒音レベルを単に騒音レベルとも言う。
【0023】
図3に示す騒音に対し、出力音により騒音を打ち消す処理を一律に実行した例を
図13に示す。
図13は、本発明の比較例に係る騒音レベルの制御の一例を示す図であり、騒音を打ち消す処理により、車両3が第1道路を走行する場合の騒音レベルはA1からA2に低減し、第2道路を走行する場合の騒音レベルはB1からB2に低減する。この場合、騒音を打ち消す処理により騒音レベルは低減するが、第1道路と第2道路との騒音レベルの差Dxは比較的大きくなる。特に、時刻T1において第1道路から第2道路に進入する場合に騒音レベルが急に大きくなり、この騒音レベルの大きな変化が乗員に不快感を与えてしまう。
【0024】
そこで、本実施形態の騒音制御装置2は、車両3の走行状態及び走行環境の変化に因り騒音レベルが変化する場合に、騒音レベルの変化が大きくなることを抑制するように出力音で車内騒音を制御する。走行状態としては、走行速度、加速度、ヨーレート、転舵角度などが挙げられるが、これらに限定されない。また、走行環境としては、周囲の天気及び外気温度、道路の路面の状態、周囲の対象物の状態などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
一例として、騒音制御装置2は、車両3が第1道路から第2道路に進入し、道路の路面の凹凸が小さい状態(舗装が滑らかでロードノイズが小さい状態)から路面の凹凸が大きい状態(舗装が粗くロードノイズが大きい状態)に変化する場合は、路面の状態の変化の前後で騒音レベルの差が大きくなることを抑制するように車内騒音を制御する。他の例として、騒音制御装置2は、運転者の操作に応じてエンジンの回転数が変化する場合は、エンジンの振動の変化に因る騒音レベルの変化が大きくなることを抑制するように車内騒音を制御する。さらに他の例として、騒音制御装置2は、車両が加速する場合は、車両の周囲の気流の変化に因る騒音レベルの変化が大きくなることを抑制するように車内騒音を制御する。
【0026】
騒音制御装置2は、
図1に示す判定部21、設定部22及び出力部23の機能により車内騒音を制御する。まず、騒音制御装置2は、判定部21の機能により、マイクロフォン11から室内音を取得し、フーリエ変換に基づく周波数解析などにより室内音から車内騒音を検出する。騒音制御装置2は、例えば、乗員の音声、ラジオの音声、再生中の音楽などの騒音以外の音を室内音から除去(フィルタリング)し、室内音から車内騒音を検出する。また、騒音制御装置2は、マイクロフォン11から取得した室内音から、車室内の騒音レベルを算出する。騒音レベルは、例えば、JIS C 1509に従い、公知の騒音計を用いてdB単位で測定する。本実施形態では、マイクロフォン11及び騒音制御装置2が騒音計を構成する。
【0027】
これに代え又はこれに加え、騒音制御装置2は、加速度センサ12の検出結果から騒音レベルを算出してもよい。例えば、騒音制御装置2は、加速度センサ12により検出された加速度の方向及び大きさから、車体に入力される振動の周期及び大きさを算出し、振動の周期及び大きさから、車内騒音の波形と騒音レベルとを推定する。
【0028】
一例として、騒音制御装置2は、マイクロフォン11a,11bから室内音を取得し、室内音から騒音レベルを算出する。また、騒音制御装置2は、車両3のサスペンションに取り付けられた加速度センサ12a,12b,12c,12dの検出結果から、車体に入力される振動の周期及び大きさを算出し、振動の周期及び大きさから騒音レベルを推定する。そして、マイクロフォン11a,11bの検出結果から算出した騒音レベルと、加速度センサ12a,12b,12c,12dの検出結果から推定した騒音レベルとを平均し、最終的な騒音レベルとする。
【0029】
次に、騒音制御装置2は、判定部21の機能により、車内騒音の騒音レベルが所定値未満であるか否かを判定する。そして、騒音レベルが所定値未満であると判定した場合は、騒音制御装置2は、設定部22の機能により、騒音レベルが所定値以上である場合より騒音レベルを低減するように出力音を制御する。具体的には、騒音制御装置2は、騒音レベルが所定値以上である場合より出力音が車内騒音の騒音レベルを低減する割合(以下、消音割合とも言う。)を小さく設定する。
【0030】
これに対し、騒音レベルが所定値以上であると判定した場合は、騒音制御装置2は、騒音レベルを低減するように出力音を制御せず、騒音レベルが所定値未満である場合より消音割合を大きく設定する。又はこれに代え、騒音レベルが所定値以上であると判定した場合は、騒音制御装置2は、消音割合を所定の割合に設定してもよい。
【0031】
所定値は、車両3の走行状態及び走行環境の変化に因る騒音レベルの変化が抑制できる範囲内で適宜の値を設定でき、例えば、状態の異なる複数の路面で騒音レベルを測定し、測定結果に基づき、騒音レベルの変化が最も抑制できる値を所定値として設定する。路面の状態とは、車両3のタイヤ及びサスペンションの振動に影響する路面の性状であり、例えば路面の凸凹の大きさである。路面の状態としては、舗装状態、未舗装状態、圧雪状態、泥濘状態、凍結状態などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
また、所定値は、エンジンについて複数の回転数で騒音レベルを測定し、測定結果に基づき、騒音レベルの変化が最も抑制できる所定値を設定してもよく、複数の走行速度で騒音レベルを測定し、測定結果に基づき、騒音レベルの変化が最も抑制できる所定値を設定してもよい。さらに、騒音制御装置2は、路面の状態に応じて消音割合を設定できるように所定値を設定してもよい。例えば、第1道路から第2道路に進入する場合に消音割合を低い値から高い値に切り替えられるように、滑らかな舗装状態の騒音レベルと荒れた舗装状態の騒音レベルとの間の値を所定値に設定する。
【0033】
出力音により車内騒音を打ち消すとは、車内騒音と逆位相の波形を有する出力音をスピーカ14から出力し、車内騒音と出力音とを重ね合わせて車内騒音を低減することである。消音割合とは、出力音により騒音レベルが低減する程度を示す指標であり、例えば、出力音を重ね合わせる前の騒音レベルに対する、出力音により低減した騒音レベルの比率である。つまり、出力音により騒音レベルが0(dB)となれば、消音割合は100%であり、出力音により騒音レベルが変化しなければ、消音割合は0%である。また、所定の割合は、車内騒音による乗員の不快感が抑制できる範囲内で適宜の値を設定でき、例えば10~70%である。
【0034】
騒音制御装置2は、出力音の振幅を大きく又は小さくして消音割合を制御する。これに代え又はこれに加え、騒音制御装置2は、出力音の波形を時間軸(横軸)に沿って正方向又は負方向に移動して消音割合を制御してもよい。例えば、騒音制御装置2は、検出した車内騒音の波形と逆位相の波形を生成し、所望の消音割合が得られるように、逆位相の波形の振幅に0より大きく1未満の正数を掛ける。また、騒音制御装置2は、検出した車内騒音の波形と逆位相の波形を生成し、所望の消音割合が得られるように、逆位相の波形の周期を時間軸に沿って0.05~0.25周期分だけ正方向に移動してもよい。
【0035】
図4を用いて、騒音制御装置2による騒音レベルの制御について説明する。
図4は、
図3に示す騒音に対し、騒音制御装置2による騒音レベルの制御を実行した場合の消音効果を示す図である。
図4に示す例では、騒音レベルA1は所定値未満であり、騒音レベルB1は所定値以上であるとする。また、
図4に示す例では、騒音レベルが所定値未満である場合は、消音割合を0%に設定し、騒音レベルが所定値以上である場合は、消音割合を所定の割合に設定するものとする。つまり、
図4に示す例では、騒音レベルが所定値未満である場合は、スピーカ14から出力音を出力しない。
【0036】
この場合、車両3が第1道路を走行している間は騒音レベルがA1であり、騒音レベルが所定値未満となるため、出力音による騒音レベルの制御は実行されない。つまり、車両3が第1道路を走行している間(時刻T0~時刻T1及び時刻T2~時刻T3)は、騒音レベルがA1である。一方、車両3が第2道路を走行している間(時刻T1~時刻T2)は、出力音による騒音レベルの制御が実行され、騒音レベルはB1からB2に低減する。そのため、
図4に示すように、第1道路と第2道路との騒音レベルの差D1は、比較例である
図11に示す差Dxより小さくなり、その結果、騒音レベルの変化に因る乗員の不快感を抑制できる。
【0037】
また、騒音制御装置2は、判定部21の機能により、騒音レベルが所定値未満であると判定した場合は、出力部23の機能により、騒音レベルを増幅する出力音(以下、増幅音とも言う。)をスピーカ14から出力してもよい。これに対し、騒音制御装置2は、騒音レベルが所定値以上であると判定した場合は、スピーカ14から増幅音を出力しない。増幅音の出力は、騒音レベルが所定値以上である場合より消音割合を小さく設定することと共に実行してもよく、当該設定に代えて実行してもよい。また、騒音制御装置2は、騒音レベルが所定値未満である場合に、騒音レベルが所定値又は所定値以上となるように増幅音を制御してもよい。
【0038】
増幅音は、車内騒音と同位相の波形を有する出力音であり、騒音制御装置2は、出力音と同様に増幅音の振幅と周期を制御できる。つまり、騒音制御装置2は、増幅音の出力音の振幅を大きく又は小さくでき、増幅音の波形の周期を時間軸に沿って0.05~0.25周期分だけ正方向に移動できる。増幅音の音量の最小値は0(dB)であり、最大値は、(出力音による消音処理前の)検出した騒音レベルの最大値である。
【0039】
図5は、
図4に示す例において、騒音レベルが所定値未満である場合に増幅音を出力した場合の消音効果を示す図である。この場合、車両3が第1道路を走行している間(時刻T0~時刻T1及び時刻T2~時刻T3)は、騒音レベルがA1からA3に増幅され、車両3が第2道路を走行している間(時刻T1~時刻T2)は、騒音レベルがB1からB2に低減する。そのため、
図5に示すように、第1道路と第2道路との騒音レベルの差D2は、
図4に示す差D1より小さくなり、その結果、騒音レベルの変化に因る乗員の不快感をより抑制できる。
【0040】
騒音制御装置2は、設定部22の機能により、騒音レベルを、所定値以上の少なくとも一つの範囲と、所定値未満の少なくとも一つの範囲とに区切り、範囲毎に一定の消音割合を設定してもよい。各範囲は、互いに騒音レベルが重複しないように設定する。設定した範囲の数は、騒音制御装置2にて処理できる範囲内であり、複数である。騒音制御装置2は、各範囲の消音割合を、騒音レベルの小さい範囲から順に大きくなるように設定してもよい。
【0041】
騒音レベルと消音割合との関係の一例を
図6に示す。
図6のX2が所定値であるとすると、
図6に示す例では、所定値以上の騒音レベルの範囲は、X2~X3の範囲と、X3より大きい範囲の2つであり、所定値未満の騒音レベルの範囲は、X1~X2の範囲と、X1未満の範囲の2つである。騒音制御装置2は、騒音レベルX1未満の範囲では消音割合をY1に設定し、騒音レベルX1~騒音レベルX2の範囲では消音割合をY2に設定し、騒音レベルX2~騒音レベルX3の範囲では消音割合をY3に設定し、騒音レベルX3を超える範囲では消音割合をY4に設定する。
【0042】
騒音制御装置2は、設定部22の機能により、消音割合を設定するための閾値として、所定値以下の第1騒音レベルと、所定値より大きい第2騒音レベルとを設定し、騒音レベルが第1騒音レベル未満である場合は、消音割合を第1割合に設定し、騒音レベルが第2騒音レベル以上である場合は、消音割合を、第1割合より大きい第2割合に設定し、騒音レベルが第1騒音レベル以上且つ第2騒音レベル未満である場合は、消音割合を、第1割合より大きく、第2割合未満であり、騒音レベルに正比例する第3割合に設定してもよい。第1騒音レベル及び第2騒音レベル並びに第1割合及び第2割合は、騒音レベルの変化に因る乗員の不快感を抑制できる範囲内で適宜の値を設定できる。
【0043】
図7は、騒音レベルと消音割合との関係の他の例を示す図である。
図7に示す例では、騒音制御装置2は、騒音レベルが第1騒音レベル未満である場合は、消音割合を一定値の第1割合に設定し、騒音レベルが第2騒音レベル以上である場合は、消音割合を一定値の第2割合に設定する。そして、騒音レベルが第1騒音レベル以上且つ第2騒音レベル未満である場合は、
図7に示す直線Lから、騒音レベルに対応する消音割合を算出し、算出した消音割合を第3割合として設定する。
【0044】
騒音制御装置2は、設定部22の機能により、騒音レベルが所定値未満である場合に、消音割合を第4割合に設定し、騒音レベルが所定値以上である場合に、消音割合を、第4割合より大きい第5割合に設定してもよい。この場合に、騒音制御装置2は、騒音レベルが所定値未満から所定値以上に変化する場合は、消音割合を、第1所定時間で第4割合から第5割合に変化するように設定し、騒音レベルが所定値以上から所定値未満に変化する場合は、消音割合を、第2所定時間で第5割合から第4割合に変化するように設定してもよい。
【0045】
第4割合及び第5割合は、騒音レベルの変化に因る乗員の不快感を抑制できる範囲内で適宜の値を設定できる。また、第1所定時間は、第2所定時間より短い時間であり、例えば0.1~2秒である。一方、第2所定時間は、第1所定時間より長い時間であり、騒音レベルの変化に因る乗員の不快感を抑制できる範囲内で適宜の値を設定でき、例えば3~6秒である。
【0046】
また、騒音制御装置2は、騒音レベルが所定値以上から所定値未満に変化する場合に、設定部22の機能により、消音割合を、第2所定時間で第5割合から第4割合に変化するように設定することに代えて、設定部22の機能により、消音割合を、第1所定時間で第5割合から第4割合に変化するように設定すると共に、出力部23の機能により、第2所定時間の間、スピーカから増幅音を出力してもよい。この場合、増幅音が騒音レベルを増幅する割合を、時間の経過と共に小さくなるように設定する。増幅音が騒音レベルを増幅する増幅割合は、消音割合と同様に、増幅音により騒音レベルが増幅される程度を示す指標として定義され、例えば、増幅音を重ね合わせる前の騒音レベルに対する、増幅音により増幅された騒音レベルの比率である。
【0047】
図8は、
図4に示す例において、騒音レベルが所定値未満から所定値以上に変化する場合に第1所定時間で消音割合を変化させ、騒音レベルが所定値以上から所定値未満に変化する場合に第2所定時間で消音割合を変化させた場合の消音効果を示す図である。
図8に示す例では、騒音レベルが所定値未満のA1から所定値以上のB1に変化する時刻T1において、0.1秒程度で、消音割合を0%から30%に変化させる。そのため、時刻T1の直後から騒音レベルがB2に低減される。一方、騒音レベルが所定値以上のB1から所定値未満のA1に変化する時刻T2において、5秒程度で、消音割合を30%から0%に変化させる。そのため、時刻T2~時刻T4の間、徐々に消音効果が低減され、時刻T4において騒音レベルがA1となる。
【0048】
騒音制御装置2は、設定部22の機能により、車両3の進行方向前方の画像に基づき、車両3が走行する道路の路面の状態が変化するタイミングを推定し、推定したタイミングで、消音割合を小さく又は大きくなるように設定してもよい。また、騒音制御装置2は、推定したタイミングで消音割合を小さく又は大きくなるように設定することに代えて又は加えて、出力部23の機能により増幅音の出力を開始又は停止してもよい。
【0049】
騒音制御装置2は、カメラ13から車両3の進行方向前方の画像を取得し、パターンマッチングなどの処理を行い、道路の路面の状態を検出する。騒音制御装置2は、カメラ13の焦点距離に応じて、例えば車両3の進行方向の10~100m前方の画像を取得する。そして、道路の路面の状態が変化する場合は、路面の状態が変化する位置までの距離と、車両3の走行速度とに基づき、車両3が、路面の状態が変化する位置に到達するタイミング(時刻)を推定する。
【0050】
また、騒音制御装置2は、出力部23の機能により、騒音レベルが所定値未満である場合に、車両3の進行方向前方の画像に基づき、道路の路面の状態の変化に因り騒音レベルが所定値未満から所定値以上に変化するか否かを判定してもよい。道路の路面の状態の変化に因り騒音レベルが所定値未満から所定値以上に変化しないと判定した場合は、現在実行されている処理を継続する。これに対し、道路の路面の状態の変化に因り騒音レベルが所定値未満から所定値以上に変化すると判定した場合は、車両3の進行方向前方の画像に基づき、騒音レベルが所定値未満から所定値以上に変化する第1タイミングを推定する。そして、第1タイミングから第3所定時間だけ前の第2タイミングから、第1タイミングまでの間、スピーカ14から増幅音を出力する。この場合、増幅音が騒音レベルを増幅する増幅割合を、第2タイミングから第1タイミングまでの間は時間の経過と共に大きくなるように設定する。
【0051】
同様に、騒音制御装置2は、騒音レベルが所定値以上である場合に、車両3の進行方向前方の画像に基づき、道路の路面の状態の変化に因り騒音レベルが所定値以上から所定値未満に変化するか否かを判定してもよい。道路の路面の状態の変化に因り騒音レベルが所定値以上から所定値未満に変化しないと判定した場合は、現在実行されている処理を継続する。これに対し、道路の路面の状態の変化に因り騒音レベルが所定値以上から所定値未満に変化すると判定した場合は、車両3の進行方向前方の画像に基づき、騒音レベルが所定値以上から所定値未満に変化する第3タイミングを推定する。そして、第3タイミングから第3所定時間、スピーカ14から増幅音を出力する。この場合、増幅音が騒音レベルを増幅する増幅割合を、第3タイミングから第3所定時間が経過するまでの間は時間の経過と共に小さくなるように設定する。第3所定時間は、騒音レベルの変化に因る乗員の不快感を抑制できる範囲内で適宜の値を設定でき、例えば3~6秒である。
【0052】
図9は、
図4に示す例において、騒音レベルが変化する場合に増幅音を出力して騒音レベルの変化を緩やかにした場合の消音効果を示す図である。
図9に示す例では、騒音制御装置2は、時刻T0~時刻T5の間に、車両3の進行方向前方の画像から、車両3が時刻T1で第1道路から第2道路に進入すると推定する。そして、騒音制御装置2は、時刻T1から第3所定時間だけ前の時刻T5から、時刻T1までの間、スピーカ14から増幅音を出力する。増幅音が騒音レベルを増幅する増幅割合は、時刻T5から時刻T1までの間は徐々に大きくなるように設定され、時刻T1以降は所定の消音割合で消音処理が実行されるため、第1道路から第2道路に進入する場合に、騒音レベルがA1からB2に緩やかに変化する。
【0053】
また、騒音制御装置2は、時刻T1~時刻T2の間に、車両3の進行方向前方の画像から、車両3が時刻T2で第2道路から第1道路に進入すると推定する。そして、時刻T2から、時刻T2から第3所定時間が経過した時刻T4までの間、スピーカ14から増幅音を出力する。増幅音が騒音レベルを増幅する増幅割合は、時刻T2から時刻T4までの間は徐々に小さくなるように設定され、時刻T4以降は出力音が出力されないため、第2道路から第1道路に進入する場合に、騒音レベルがB2からA1に緩やかに変化する。
【0054】
[騒音制御システムにおける処理]
図10~12を参照して、騒音制御装置2が情報を処理する際の手順を説明する。以下に説明する処理は、騒音制御装置2が備えるプロセッサ(DSP)により、所定の時間間隔で(例えば0.1~1ミリ秒毎に)実行される。
【0055】
図10は、本実施形態の騒音制御システム1において実行される、情報の処理を示すフローチャートの一例である。
【0056】
まず、ステップS1にて、判定部21の機能によりマイクロフォン11から室内音を取得し、続くステップS2にて、室内音から騒音を検出し、続くステップS3にて、騒音レベルが所定値未満であるか否かを判定する。ステップS3にて、騒音レベルが所定値未満であると判定した場合は、ステップS4に進み、設定部22の機能により、消音割合を第2割合より小さい第1割合に設定する。これに対し、ステップS3にて、騒音レベルが所定値以上であると判定した場合は、ステップS5に進み、消音割合を第2割合に設定する。そして、ステップS6にて、出力部23の機能により、設定された消音割合に対応する出力音をスピーカ14から出力する。
【0057】
次に、
図11は、本実施形態の騒音制御システム1において実行される、情報の処理を示すフローチャートの他の例である。
図11に示すフローチャートは、
図10に示すフローチャートのステップS4~S6をステップS7及びS8に置き換えたものである。
【0058】
図11のステップS1~S3は、
図10のステップS1~S3と同じであるため、説明は省略する。
図11に示すフローチャートでは、ステップS3にて、騒音レベルが所定値未満であると判定した場合は、ステップS7に進み、出力部23の機能により増幅音をスピーカ14から出力する。これに対し、ステップS3にて、騒音レベルが所定値以上であると判定した場合は、ステップS8に進み、増幅音を出力しない。
【0059】
次に、
図12は、本実施形態の騒音制御システム1において実行される、情報の処理を示すフローチャートのさらに他の例である。
【0060】
まず、ステップS11にて、判定部21の機能により、カメラ13から車両3の前方の画像を取得し、続くステップS12にて、道路の路面の状態が変化するタイミングを推定し、続くステップS13にて、所定値に鑑み、路面の状態の変化に伴い消音割合を変更する必要があるか否かを判定する。ステップS13にて、消音割合を変更する必要があると判定した場合は、ステップS14に進み、設定部22の機能により消音割合を変更し、続くステップS15にて、出力部23の機能により、推定したタイミングで出力音を変化させる。これに対し、ステップS13にて、消音割合を変更する必要がないと判定した場合は、ステップS16に進み、現在の消音処理を継続する。
【0061】
[本発明の実施態様]
以上のとおり、本実施形態によれば、スピーカ14から出力された出力音により車室内の騒音レベルを制御する騒音制御方法において、前記騒音レベルが所定値未満であるか否かを判定し、前記騒音レベルが前記所定値未満であると判定した場合は、前記騒音レベルが前記所定値以上である場合より前記騒音レベルを低減するように前記出力音を制御する、騒音制御方法が提供される。これにより、車内騒音の変化を抑制できる。
【0062】
また、本実施形態の騒音制御方法によれば、車両3のマイクロフォン11及び加速度センサ12の検出結果から前記騒音レベルを算出する。これにより、より正確に騒音レベルを算出できる。
【0063】
また、本実施形態の騒音制御方法によれば、車両3の進行方向前方の画像に基づき、前記車両3が走行する道路の路面の状態が変化するタイミングを推定し、前記出力音が前記騒音レベルを低減する消音割合を、前記タイミングで小さく又は大きくなるように設定する。これにより、車内騒音の変化をより抑制できる。
【0064】
また、本実施形態の騒音制御方法によれば、前記騒音レベルを、それぞれが重複しない、前記所定値以上の少なくとも一つの範囲と、前記所定値未満の少なくとも一つの範囲とに区切り、前記範囲毎に一定の、前記出力音が前記騒音レベルを低減する消音割合を設定する。これにより、消音割合を容易に設定できる。
【0065】
また、本実施形態の騒音制御方法によれば、前記出力音が前記騒音レベルを低減する消音割合を設定するための閾値として前記所定値以下の第1騒音レベルと、前記所定値より大きい第2騒音レベルとを設定し、前記騒音レベルが前記第1騒音レベル未満である場合は、前記消音割合を第1割合に設定し、前記騒音レベルが前記第2騒音レベル以上である場合は、前記消音割合を、前記第1割合より大きい第2割合に設定し、前記騒音レベルが前記第1騒音レベル以上且つ前記第2騒音レベル未満である場合は、前記消音割合を、前記第1割合より大きく、前記第2割合未満であり、前記騒音レベルに正比例する第3割合に設定する。これにより、騒音レベルに応じた消音割合を設定できる。
【0066】
また、本実施形態の騒音制御方法によれば、前記騒音レベルが前記所定値未満である場合は、前記出力音が前記騒音レベルを低減する消音割合を第4割合に設定し、前記騒音レベルが前記所定値以上である場合は、前記消音割合を、前記第4割合より大きい第5割合に設定し、前記騒音レベルが前記所定値未満から前記所定値以上に変化する場合は、前記消音割合を、第1所定時間で前記第4割合から前記第5割合に変化するように設定し、前記騒音レベルが前記所定値以上から前記所定値未満に変化する場合は、前記消音割合を、前記第1所定時間より長い第2所定時間で前記第5割合から前記第4割合に変化するように設定する。これにより、騒音レベルの変化を緩やかにできる。
【0067】
また、本実施形態の騒音制御方法によれば、前記騒音レベルが前記所定値未満であると判定した場合は、前記騒音レベルを増幅する前記出力音を前記スピーカ14から出力する。これにより、車内騒音の変化を抑制できる。
【0068】
また、本実施形態の騒音制御方法によれば、前記騒音レベルが前記所定値未満である場合は、前記出力音が前記騒音レベルを低減する消音割合を第4割合に設定し、前記騒音レベルが前記所定値以上である場合は、前記消音割合を、前記第4割合より大きい第5割合に設定し、前記騒音レベルが前記所定値未満から前記所定値以上に変化する場合は、前記消音割合を、第1所定時間で前記第4割合から前記第5割合に変化するように設定し、前記騒音レベルが前記所定値以上から前記所定値未満に変化する場合は、前記消音割合を、前記第1所定時間で前記第5割合から前記第4割合に変化するように設定すると共に、前記第1所定時間より長い第2所定時間の間、前記騒音レベルを増幅する前記出力音を前記スピーカ14から出力し、前記騒音レベルを増幅する前記出力音が前記騒音レベルを増幅する増幅割合を、時間の経過と共に小さくなるように設定する。これにより、騒音レベルの変化を緩やかにできる。
【0069】
また、本実施形態の騒音制御方法によれば、前記騒音レベルが前記所定値未満である場合に、車両3の進行方向前方の画像に基づき、前記騒音レベルが前記所定値未満から前記所定値以上に変化する第1タイミングを推定し、前記第1タイミングから第3所定時間だけ前の第2タイミングから、前記第1タイミングまでの間、前記騒音レベルを増幅する前記出力音を前記スピーカ14から出力し、前記騒音レベルを増幅する前記出力音が前記騒音レベルを増幅する増幅割合を、前記第2タイミングから前記第1タイミングまでの間は時間の経過と共に大きくなるように設定し、前記騒音レベルが前記所定値以上である場合に、前記画像に基づき、前記騒音レベルが前記所定値以上から前記所定値未満に変化する第3タイミングを推定し、前記第3タイミングから前記第3所定時間、前記騒音レベルを増幅する前記出力音を前記スピーカ14から出力し、前記騒音レベルを増幅する前記出力音が前記騒音レベルを増幅する増幅割合を、前記第3タイミングから前記第3所定時間が経過するまでの間は時間の経過と共に小さくなるように設定する。これにより、騒音レベルの変化を緩やかにできる。
【0070】
また、本実施形態によれば、スピーカ14から出力された出力音により車室内の騒音レベルを制御する騒音制御方法において、前記騒音レベルが所定値未満であるか否かを判定し、前記騒音レベルが前記所定値未満であると判定した場合は、前記騒音レベルを増幅する前記出力音を前記スピーカ14から出力する、騒音制御方法が提供される。これにより、車内騒音の変化を抑制できる。
【0071】
また、本実施形態の騒音制御方法によれば、車両3の進行方向前方の画像に基づき、前記車両3が走行する道路の路面の状態が変化するタイミングを推定し、前記騒音レベルを増幅する前記出力音の出力を、前記タイミングで開始又は停止する。これにより、車内騒音の変化をより抑制できる。
【0072】
また、本実施形態によれば、スピーカ14から出力された出力音により車室内の騒音レベルを制御する騒音制御装置2であって、前記騒音レベルが所定値未満であるか否かを判定する判定部21と、前記判定部21が、前記騒音レベルが前記所定値未満であると判定した場合に、前記騒音レベルが前記所定値以上である場合より騒音レベルを低減するように前記出力音を制御する設定部22と、を備える、騒音制御装置2が提供される。これにより、車内騒音の変化を抑制できる。
【0073】
また、本実施形態によれば、スピーカ14から出力された出力音により車室内の騒音レベルを制御する騒音制御装置2であって、前記騒音レベルが所定値未満であるか否かを判定する判定部21と、前記判定部21が、前記騒音レベルが前記所定値未満であると判定した場合に、前記騒音レベルを増幅する前記出力音を前記スピーカ14から出力する出力部23と、を備える、騒音制御装置2が提供される。これにより、車内騒音の変化を抑制できる。
【符号の説明】
【0074】
1…騒音制御システム
11,11a,11b…マイクロフォン
12,12a,12b,12c,12d…加速度センサ
13…カメラ
14,14a,14b,14c,14d…スピーカ
2…騒音制御装置
21…判定部
22…設定部
23…出力部
3…車両
31…運転席
32…助手席
33,34…後部座席