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特開2024-174346水電解一体型メタネーションセル、並びに、それを用いた積層メタネーションセルおよび電解メタネーション装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174346
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】水電解一体型メタネーションセル、並びに、それを用いた積層メタネーションセルおよび電解メタネーション装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20241210BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20241210BHJP
   C25B 13/00 20060101ALI20241210BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20241210BHJP
   C25B 1/042 20210101ALI20241210BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B13/00
C01B3/02 H
C25B1/042
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092128
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】柁山 航介
(72)【発明者】
【氏名】飯田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】清瀧 元
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA12
4K021CA15
4K021DB07
4K021DC03
4K021DC11
(57)【要約】
【課題】水電解とメタネーションを行うことができ、かつ、温度管理が比較的容易な水電解一体型メタネーションセルを提供すること。
【解決手段】水または水蒸気を電気分解して酸素と水素イオンを生成するアノード部と、水素イオンを還元して水素を生成するカソード部と、二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成するメタネーション部と、前記アノード部および前記メタネーション部のうち少なくとも一方に接して除熱を行う除熱部とを備える、水電解一体型メタネーションセル。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水または水蒸気を電気分解して酸素と水素イオンを生成するアノード部と、
水素イオンを還元して水素を生成するカソード部と、
二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成するメタネーション部と、
前記アノード部および前記メタネーション部のうち少なくとも一方に接し、除熱を行う除熱部とを備える、水電解一体型メタネーションセル。
【請求項2】
前記除熱部が、前記アノード部および前記メタネーション部に接している、請求項1に記載の水電解一体型メタネーションセル。
【請求項3】
前記カソード部と前記メタネーション部との間に分散板が備えられている、請求項1に記載の水電解一体型メタネーションセル。
【請求項4】
前記除熱部が前記アノード部に接しており、
前記カソード部と前記メタネーション部が一体化されている、請求項1に記載の水電解一体型メタネーションセル。
【請求項5】
前記カソード部と一体化された前記メタネーション部における、生成された前記炭素化合物を排出する側に、分散板が備えられている、請求項4に記載の水電解一体型メタネーションセル。
【請求項6】
前記分散板が除熱作用を有する、請求項3または5に記載の水電解一体型メタネーションセル。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の水電解一体型メタネーションセルを2つ以上含む、積層メタネーションセル。
【請求項8】
アノード部とカソード部との間に、両面に流路を有するバイポーラ板が備えられている、請求項7に記載の積層メタネーションセル。
【請求項9】
請求項1~6のいずれかに記載の水電解一体型メタネーションセルと、前記アノード部と前記カソード部との間に電流を流す電源とを備える、電解メタネーション装置。
【請求項10】
請求項7に記載の積層メタネーションセルと、前記アノード部と前記カソード部との間に電流を流す電源とを備える、電解メタネーション装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水電解一体型メタネーションセル、並びに、それを用いた積層メタネーションセルおよび電解メタネーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンニュートラルの観点から、ガス供給の一部をe-メタンに置き換えることも求められており、ガス供給におけるe-メタンガスの導入の検討が進められている。
【0003】
これまでに、再生可能エネルギー発電装置の余剰電力を用いて水素と酸素とを製造する水電解装置と、前記水電解装置にて製造した水素とシステム内で生成する二酸化炭素とを合成してメタン等の炭化水素燃料を製造するメタネーション設備とを備えた再生可能エネルギー利用システム等が報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-45430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の技術では、水電解とメタネーションを別々の装置(設備)で行っているため、大がかりな設備が必要となる。よって、本発明者らは、水電解とメタネーションを別々の装置ではなく、一つの装置で行うことを検討してきた。
【0006】
その際の課題として、メタネーション反応、および水電解において過電圧が生じた場合はそれぞれ発熱反応になるため、温度管理が難しくなることが懸念される。
【0007】
したがって、本開示の主な課題は、水電解とメタネーションを行うことができ、温度管理が比較的容易な水電解一体型メタネーションセルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一局面は、
水を電気分解して酸素と水素イオンを生成するアノード部と、
水素イオンを還元して水素を生成するカソード部と、
二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成するメタネーション部と、
前記アノード部および前記メタネーション部のうち少なくとも一方に接し、除熱を行う除熱部とを備える、水電解一体型メタネーションセルに関する。
【0009】
本開示の他の局面に関する積層メタネーションセルは、上述の水電解一体型メタネーションセルが2つ以上含むことを特徴とする。
【0010】
本開示のさらに他の局面に関する電解メタネーション装置は、上述の水電解一体型メタネーションセルと、前記アノード部と前記カソード部との間に電流を流す電源とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、水電解とメタネーションを行うことができ、かつ、温度管理が比較的容易な水電解一体型メタネーションセルを提供すること、並びに、それを用いた積層メタネーションセルおよび電解メタネーション装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態の水電解一体型メタネーションセルの一例(第一実施形態)を示す概略図である。
図2図2は、本実施形態の水電解一体型メタネーションセルに使用できる除熱部の構成の一例を示す概略図である。
図3図3は、本実施形態の水電解一体型メタネーションセルの別の一例(第二実施形態)を示す概略図である。
図4図4は、第一実施形態の水電解一体型メタネーションセルを積層した積層メタネーションセルの一例を示す概略図である。
図5図5は、本実施形態の積層メタネーションセルに使用できるバイポーラ板の一例を示す概略図である。
図6図6は、第二実施形態の水電解一体型メタネーションセルを積層した積層メタネーションセルの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係る実施形態について図面等を用いて具体的に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。また、本明細書で使用する図面はすべて概略図(模式図)である。
【0014】
[水電解一体型メタネーションセル]
本実施形態の水電解一体型メタネーションセルは、メタネーション装置に用いられる、水電解とメタネーションが一体型となったメタネーションセルである。本実施形態の水電解一体型メタネーションセルにより、二酸化炭素と水を原料として水電解とメタネーションを行い、所望の炭素化合物を得ることができる。本実施形態のメタネーションセルで得られる炭素化合物としては、メタン(CH)、一酸化炭素(CO))、メタノール等が挙げられる。
【0015】
本実施形態の水電解一体型メタネーションセルはアノード部と、カソード部と、メタネーション部と、除熱部とを備える。そして、前記除熱部は、前記アノード部および前記メタネーション部のうち少なくとも一方に接し除熱を行う。このような構成により、まず、水電解とメタネーションを一つの設備で行うことができる。つまり、供給が必要なガスは二酸化炭素と水(水蒸気)となるため、水素ガスが系外に出ることがなくなり、ハンドリングが簡単になるという利点がある。さらに、除熱部を備えているため、電解反応および/またはメタネーション反応による発熱(温度上昇)をコントロールすることができ、温度管理も容易になる。
【0016】
(第一実施形態)
図1は、本開示の第一実施形態による水電解一体型メタネーションセル(以下、単に「メタネーションセル」とも称す)の構成の一例を示す概略図である。本実施形態の水電解一体型メタネーションセル1は、少なくとも、アノード部11とカソード部12とメタネーション部13と除熱部14とを備えている。メタネーションセル1は、特に限定されないが、一対の支持板(図示せず)で固定されていてもよいし、筺体(図示せず)等で覆われていてもよい。前記支持板や筺体は、化学反応性が低く、導電性の高い材料で構成されていることが好ましい。そのような材料としては、例えば、SUS等の金属材料、もしくはカーボン等が挙げられる。また、メタネーションセル1の形状は特に限定されず、箱形でもよいし、円筒状でもよい。
【0017】
前記アノード部11では、水または水蒸気を電気分解して酸素と水素イオンを生成する。前記カソード部はアノード部11で生成された水素イオンを還元して水素を生成する。メタネーション部13では、二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成する。そして、第一実施形態において、除熱部14は、図1に示すように、前記アノード部および前記メタネーション部の両方に接して、除熱を行う。除熱部14を備えることにより、メタネーション部13における過剰な温度上昇を抑えられるため、メタネーション反応率にも優れるようになる。また、第一実施形態のメタネーションセルでは、カソード部で生成した水素とカソード部に供給された二酸化炭素がメタネーション部13の手前で予混合される構造となっているため、当該構造によってもメタネーション反応率に優れると考えられる。
【0018】
アノード部11は、通常、アノード、前記アノードに水または水蒸気を供給する第一流路、および、水素イオン伝導性を有する電解質を備える。アノードは水(HO)の酸化反応を生起し、酸素(O)および水素イオン(H)を生成する電極(酸化電極)である。
【0019】
アノードは、水を電気分解して酸素および水素イオンを生成することが可能な触媒材料(アノード触媒材料)とで構成されていることが好ましい。具体的な触媒材料としては、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)等の金属、それらの金属を含む合金や金属間化合物、酸化マンガン(Mn-O)、酸化イリジウム(Ir-O)、酸化ニッケル(Ni-O)、酸化コバルト(Co-O)、酸化鉄(Fe-O)、酸化スズ(Sn-O)、酸化インジウム(In-O)、酸化ルテニウム(Ru-O)、酸化リチウム(Li-O)、酸化ランタン(La-O)等の二元系金属酸化物、Ni-Co-O、Ni-Fe-O、La-Co-O、Ni-La-O、Sr-Fe-O等の三元系金属酸化物、Pb-Ru-Ir-O、La-Sr-Co-O等の四元系金属酸化物、Ru錯体やFe錯体等の金属錯体が挙げられる。その中でも、過電圧が小さくできるという観点から、Ptや酸化イリジウムなどを使用することが好ましい。
【0020】
アノードは上述したアノード触媒材料のみで構成されていてもよいが、さらに基材を備えていてもよい。アノードの基材としては、水および生成した酸素を拡散させることが可能な構造、例えばメッシュ材、パンチング材、多孔体、金属繊維焼結体等の多孔構造を有する基材が好適である。また、前記基材は、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)等の金属やこれら金属を少なくとも1つ含む合金(例えばSUS)等の金属材料で構成されていることが好ましい。
【0021】
アノードのアノード触媒材料として、上述したような酸化物を用いる場合には、上記した金属材料からなる基材の表面にアノード触媒材料を付着もしくは積層してアノードを形成することが好ましい。
【0022】
アノード部11は、通常、前記アノードに水を供給する第一流路を備えている。第一流路に供給される水はそのまま用いてもよいが、水蒸気の状態であってもよい。第一流路は、水または水蒸気供給部に接続されており、該供給部からアノードに水または水蒸気を供給できる流路であれば特に限定はされない。第一流路は、化学反応性が低く、導電性の高い材料で構成されていることが好ましい。そのような材料としては、SUS等の金属材料、もしくはカーボン等が挙げられる。さらに第一流路には、アノードに供給する水や水蒸気の量を調整する流量コントローラ、水や水蒸気の量を測定する測定器などが設けられていてもよい。
【0023】
また、アノード部11には、使用されずに余った水(水蒸気)と、電解反応において水素イオンと共に生成された酸素を排出する排出口が備えられていてもよい。この排出口は、前記第一流路の出口であってもよい。
【0024】
アノードと、後述するカソードとの間には、通常は、電解質が設けられている。用いる電解質としては、水素イオン伝導性を有するものであれば特に制限はないが、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、のような高分子電解質やリン酸水素セシウム、塩化カリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液などを用いることができる。電解質の形態も特に限定されず、例えば、電解質はシート状の膜式であってもよく、その場合は電解質膜を設けてもよい。
【0025】
前記カソード部12は、通常、水素イオンを還元して水素を生成するカソード、メタネーション部13に二酸化炭素を供給する第二流路等を有する。カソード部12におけるカソードでは、主に、水素イオン還元反応が行われる。カソードは、前記還元反応が可能な触媒材料(カソード触媒材料)とで構成されていることが好ましい。具体的な触媒材料としては、例えば、パラジウム-銀、白金、イリジウム、白金被覆チタン、白金担持カーボン、パラジウム担持カーボン、コバルトグリオキシム、ニッケルグリオキシム等を挙げることができる。前記カソード触媒材料にはアイオノマーが混合されていてもよい。
【0026】
また、カソードは上述したカソード触媒材料のみで構成されていてもよいが、さらに基材を備えていてもよい。カソード基材としては、例えばカーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン不織布もしくはチタン不織布等が挙げられる。
【0027】
カソードは、例えば、上述したようなカソード触媒材料とアイオノマーの混合物を上述したような基材に塗工することにより得ることができる。
【0028】
カソード部12における二酸化炭素を供給する第二流路は、メタネーション部13に二酸化炭素を供給できるものであれば限定はされないが、化学反応性が低く、導電性の高い材料で構成されていることが好ましい。そのような材料としては、SUS等の金属材料、もしくはカーボン等が挙げられる。
【0029】
前記アノードおよび前記カソードは、例えば、端子板などを用いることによって、電源に接続可能である。電源によってアノードとカソードとの間に電流を供給し、電解反応を行うことができる。
【0030】
次いで、本実施形態のメタネーションセル1が備えるメタネーション部13について説明する。前記メタネーション部13は、前記カソードで発生する水素を利用し、前記第二流路から供給される二酸化炭素(CO)を還元して炭素化合物を生成する。このメタネーション部13において、二酸化炭素(CO)から、メタン(CH)が生成される(メタネーション反応)。また、使用する触媒によっては一酸化炭素(CO)やメタノール等の炭素化合物が生成される。
【0031】
メタネーション部13は、通常、二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成する触媒、および、生成された前記炭素化合物を排出する第三流路を備えている。この第三流路については炭素化合物を排出することができる限り特に限定はない。
【0032】
前記触媒は、水素を受け取るために上述のカソードと接しており、触媒材料で構成されている。本実施形態で使用可能な触媒材料としては、具体的には例えば、ジルコニウム(Zr)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、カドミウム(Cd)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、鉛(Pb)、錫(Sn)等の金属、前記金属を少なくとも1つ含む合金や金属間化合物等の金属材料、前記金属の酸化物、炭素(C)、グラフェン、CNT(カーボンナノチューブ)、フラーレン、ケッチェンブラック等の炭素材料、Ru錯体またはRe錯体等の金属錯体が挙げられる。
【0033】
前記メタネーション部13における触媒の形状は特に限定されないが、粉末状、板状、メッシュ状、ワイヤ状、粒子状、多孔質状、薄膜状、島状等の各種形状を適用することができる。
【0034】
触媒には、前記カソード部12の第二流路を介して、二酸化炭素が供給される。具体的には、例えば、流量コントローラによって、二酸化炭素を含むガスが導入される。第二流路にはさらにガス量を測定する測定器などが設けられていてもよい。第二流路から導入された二酸化炭素は、メタネーション部13の触媒に触れることによって還元され、メタン等の炭素化合物が生成される。生成された炭素化合物を含むガス(例えば、メタンガス)は、第三流路から排出される。
【0035】
本実施形態のメタネーションセル1はさらに除熱部14を備える。除熱部14は、前記アノード部11および前記メタネーション部13のうち少なくとも一方に接し、そこで行われる発熱反応(前記アノード部11における電解反応および/または前記メタネーション部13における二酸化炭素還元反応)から発される熱を除熱する。
【0036】
第一実施形態のメタネーションセル1では、図1に示すように、除熱部14はアノード部11とメタネーション部13の両方に接しているため、前記アノード部11における電解反応および前記メタネーション部13におけるメタネーション反応において発生する熱を除熱できる。
【0037】
除熱部14における除熱手段は特に限定はされないが、例えば、水等の冷却溶媒を用いて除熱を行うことができる。具体的な例示を示すと、第一実施形態のメタネーションセル1の除熱部14は、図2に示されるように、2つの冷却水入口31および32と、冷却水出口33と、仕切り板34とを備えていてもよい。除熱する際は、アノード部11とメタネーション部13における温度を計測し、温度が高くなった方に近い入口に冷却水を供給すればよい。つまり、アノード部11を除熱したい場合には冷却水入口32から、また、メタネーション部13を除熱したい場合には冷却水入口31から、それぞれ冷却水を供給することによって所望の方を除熱することができる。
【0038】
このような除熱部14を備えることによって、メタネーションセル1における温度を制御することが比較的容易になり、メタネーション(二酸化炭素還元)の反応効率も向上させることができる。
【0039】
第一実施形態のメタネーションセル1は、図1に示すように、アノード部11とカソード部12の上に、除熱部14とメタネーション部13が積層されている。このような構成とすることによって、メタネーションセル1の厚みを薄くすることができるという利点がある。また、上述したように、除熱部14がアノード部11とメタネーション部13の両方を除熱することができるため、除熱量の制御も容易であると考えられる。また、第一実施形態のメタネーションセル1においては、メタネーション部13と除熱部14の厚みの合計が、アノード部11とカソード部12の厚みの合計と同等であることが、構成上好ましい。
【0040】
前記カソード部12と前記メタネーション部13との間には、分散板16が備えられていてもよい。分散板16を使用することによって、カソード部12で生成される水素のショートカットを防ぎ、二酸化炭素との混合状態を改善できるため、メタネーション反応率も向上すると考えられる。また、分散板16によりメタネーション部13からの触媒の落下も抑制できる。
【0041】
分散板16としては、水素のショートカットを防ぐことができれば特に限定はされないが、例えば、所定のサイズの孔開き板、焼結金属等を用いることができる。孔開き板における孔のサイズは、数μm~数mm程度とすることができる。さらに、分散板16は、メタネーション部13におけるメタネーション反応による発熱を除熱するために、除熱作用を備えていることが好ましい。除熱作用を備える分散板16としては、特に限定はされないが、例えば、孔開きプレート型熱交換器等が挙げられる。
【0042】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態のメタネーションセルについて説明する。本開示のメタネーションセルは上述した第一実施形態に限られず、図3に示すメタネーションセル1’ように、除熱部14がアノード部11に接しており、カソード部12とメタネーション部13が一体化されていてもよい。このような構成により、除熱部分との伝熱面積が大きくなるといった利点がある。
【0043】
第二実施形態のメタネーションセル1’におけるアノード部11は、第一実施形態と同じ構成であってよい。
【0044】
第二実施形態のメタネーションセル1’では、カソード部12とメタネーション部13は一体化している。つまり、カソード部12が第一実施形態で説明したようなメタネーション部13を兼ねている。つまり、この実施形態では、カソード部内にメタネーション部があるということであり、より具体的には、当該カソード部に、カソードフレーム、カソード電極およびメタネーション触媒が含まれている。よって、第二実施形態のカソード部12は、水素イオンを還元して水素を生成するカソード、二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成する触媒、および、前記触媒に二酸化炭素を供給する第二流路を備えている。これらの具体的な構成については、第一実施形態のメタネーションセル1と同様とすることができる。
【0045】
第二実施形態のメタネーションセル1’における除熱部14は、前記アノード部11に接しており、アノード部11における電解反応による発熱を除熱することができる。除熱部14の除熱手段は、第一実施形態と同様の手段を用いることができる。つまり、第二実施形態においても除熱部14は、冷却水入口と冷却水出口を備えていてもよい。ただし、前記入口および出口の位置は特に限定されず、
【0046】
第二実施形態において、前記カソード部12と一体化された前記メタネーション部13で生成された炭素化合物は、メタネーション部13に隣接する炭素化合物の流路17を通り排出される。流路17は、炭素化合物を排出する第三流路を備えている。
【0047】
前記カソード部12と一体化された前記メタネーション部13における、生成された前記炭素化合物を排出する側には、分散板16が備えられていてもよい。つまり、分散板16が、前記メタネーション部13と前記流路17との間に備えられていてもよい。分散板16は、メタネーション部13で生成された炭素化合物を流路17へ分散させつつ、カソード部12で生成された水素の分散を妨げるために設けられる。このような分散板16を使用することによって、カソード部12で生成される水素のショートカットを防ぎ、二酸化炭素との混合状態を改善できるため、メタネーション反応率も向上すると考えられる。
【0048】
分散板16としては、水素のショートカットを防ぐことができれば特に限定はされないが、例えば、第一実施形態で説明した分散板と同様のものを使用できる。
【0049】
[積層メタネーションセル]
本開示のメタネーションセルは、2つ以上を積層することによって積層メタネーションセルとして用いることもできる。つまり本開示には、上述したような水電解一体型メタネーションセルを2つ以上含む、積層メタネーションセルも包含される。
【0050】
例えば、図4に示す積層メタネーションセル20では、第一実施形態のメタネーションセル1を5つ積層しているが、積層メタネーションセル20を構成するメタネーションセル1の数は2つ以上であれば特に限定はされず、所望する炭素化合物の生成量や設備サイズなどによって適宜決定することができる。
【0051】
このようにメタネーションセル1を2つ以上含むことによって、積層メタネーションセル20におけるメタネーション反応の効率をより高めることができると考えられる。また、1つのメタネーションセルにおける除熱部14が当該メタネーションセルのアノード部11とメタネーション部13だけでなく、隣接する別のメタネーションセルのメタネーション部13をも除熱することができるため、除熱の効率もさらに改善する。
【0052】
なお、図4では便宜上、一つの除熱部14にしか冷却水入口、出口、仕切り板を示していないが、当然ながらすべてのメタネーションセルの除熱部14に同様の構成が設けられていてもよい。また、2つ以上のメタネーションセルの積層体からなる積層メタネーションセルは、一対の支持板(図示せず)で固定されていてもよいし、筺体(図示せず)等で覆われていてもよい。
【0053】
また、積層メタネーションセルにはバイポーラ板15を用いることもできる。バイポーラ板15は、前記アノード部11と前記カソード部12との間に備えられる。バイポーラ板15は、前記アノード部11と前記カソード部12との間で空気等を遮断する役割を果たす。またバイポーラ板15は流路を備えており、水(水蒸気)や二酸化炭素をアノード部11やカソード部12に送り込むことができる。
【0054】
このようなバイポーラ板15を備えることにより、上述した効果に加えて、積層メタネーションセルのサイズを小さくできるといった利点がある。
【0055】
図5にバイポーラ板15の一例を示す。バイポーラ板15としては、例えば燃料電池などの技術分野で使用されているバイポーラ板などを使用することができる。材質は金属製であっても、カーボン製であってもよい。
【0056】
バイポーラ板15は上述したように流路を備えており、図5では片面に備えられた流路Aが示されているが、同様の流路Bがもう一方の面にも形成されている。このバイポーラ板15が備える流路Aを、上述したアノード部11の第一流路として、および、流路Bをカソード部12の第二流路として使用することができる。
【0057】
また、第一実施形態のメタネーションセル1を複数備える積層メタネーションセルの場合、バイポーラ板15は、メタネーションセルのアノード部11およびカソード部12の代替として使用することができる。例えば、図4に示す積層メタネーションセルの場合、左端のアノード部11および右端のカソード部12以外は、すべてバイポーラ板15としてもよい。つまり、図4では、左端のアノード部11および右端のカソード部12の間に、4枚のバイポーラ板15が備えられている。この場合、それぞれのバイポーラ板15の流路Aがアノード部、流路Bがカソード部としての機能を果たす。
【0058】
バイポーラ板15をアノード部11およびカソード部12の代替として用いる場合、除熱部13およびメタネーション部14は、バイポーラ板15の上に配置される。また、その際のバイポーラ板一枚の厚みは、アノード部11およびカソード部12の厚みの合計と同等であることが構成上好ましい。
【0059】
図6には、積層メタネーションセルの別態様として、第二実施形態のメタネーションセル1’を4つ積層した積層メタネーションセル20’を示す。この積層メタネーションセル20’においても、1つのメタネーションセルにおける除熱部14が当該メタネーションセルのアノード部11だけでなく、隣接する別のメタネーションセルの流路17を介しカソード部12メタネーション部13も除熱することができるため、除熱の効率が改善する。除熱効率を高めるために、流路17はなるべく薄くすることが好ましい。
【0060】
積層メタネーションセル20または積層メタネーションセル20’とする場合には、個々のメタネーションセル1およびメタネーションセル1’における水(水蒸気)を供給するための第一流路は、個々のメタネーションセルに設けるのではなく、図4または図6に示すように、積層メタネーションセル20または積層メタネーションセル20’を構成するすべてのメタネーションセルに水を供給できるような流路とすることが好ましい。この場合の前記第一流路の出口は、アノード部11において使用されずに余った水(水蒸気)と、電解反応において水素イオンと共に生成された酸素を排出する排出口を兼ねていてもよい。
【0061】
[電解メタネーション装置]
次に、上述した水電解一体型メタネーションセルまたは積層メタネーションセルを備える電解メタネーション装置について説明する。
【0062】
本実施形態の電解メタネーション装置は、上述の水電解一体型メタネーションセルまたは積層メタネーションセルと、前記アノード部と前記カソード部との間に電流を流す電源とを備える、電解メタネーション装置である。
【0063】
本実施形態で使用できる電源としては、通常の市販電源、電池などが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。その他にも、太陽電池等の再生可能エネルギーを電力として供給できる装置を電源として用いることができる。
【0064】
本実施形態の電解メタネーション装置は、上述の水電解一体型メタネーションセルまたは積層メタネーションセルと電源を備える電解装置であれば、その他の構成については特に限定はされない。公知の二酸化炭素電解装置等の構成を必要に応じて適宜採用できる。また、電気が外部へ流れることを防ぐために、絶縁板を設けてもよい。
【0065】
本実施形態の電解メタネーション装置では、二酸化炭素から炭素化合物を生成できるが、具体的な一例としてメタンを合成する場合について説明する。
【0066】
まず、水電解一体型メタネーションセルにおいて、アノード部とカソード部との間に電源から電流が供給され、かつ、第一流路から水蒸気(HO)が供給されると、HOと接するアノードでHOの酸化反応が生じる。具体的には、HOが酸化されて酸素(O)と水素イオン(H)が生成する。アノードで生成された水素イオン(H)は、アノードおよび電解質を移動し、カソード部のカソードの方へ移動する。アノードで生成した酸素を含むガスは、第一流路の出口から排出される。
【0067】
そして、電源からカソードに供給される電流由来の電子とアノードからカソードの方に移動してきた水素イオンによって、カソード部における触媒に第二流路から供給される二酸化炭素が還元される。この還元反応で、二酸化炭素および水素からメタンおよび水が合成される。
【0068】
つまり、メタン合成の場合、本実施形態の電解メタネーション装置では以下の酸化反応および還元反応が生じる。
アノード部:
O→2H+1/2O+2e-
カソード部:
CO+4H→CH+2H
2H+2e→H
【0069】
本実施形態の電解メタネーション装置では、水電解反応とメタネーション反応を一つの装置で行うことができる。つまり、供給が必要なガスは二酸化炭素と水(水蒸気)となるため、水素ガスが装置外に出ることがなくなり、ハンドリングが簡単になるという利点がある。さらに、メタネーションセルが除熱部を備えているため、電解反応および/またはメタネーション反応による発熱(温度上昇)をコントロールすることができ、装置の温度管理も容易になる。
【0070】
本明細書は、上述したように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
【0071】
第1の態様における水電解一体型メタネーションセルは、水または水蒸気を電気分解して酸素と水素イオンを生成するアノード部と、水素イオンを還元して水素を生成するカソード部と、二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成するメタネーション部と、前記アノード部および前記メタネーション部のうち少なくとも一方に接し、除熱を行う除熱部とを備える。
【0072】
このような構成により、水電解とメタネーションを行うことができ、かつ、温度管理が比較的容易な水電解一体型メタネーションセルを提供することができる。
【0073】
第2の態様における水電解一体型メタネーションセルは、第1の態様におけるメタネーションセルにおいて、前記除熱部が前記アノード部および前記メタネーション部に接していることを特徴とする。このような構成により、アノード部とメタネーション部の両方を除熱することができるため、除熱量の制御も容易であると考えられる。
【0074】
第3の態様における水電解一体型メタネーションセルは、第1の態様におけるメタネーションセルにおいて、前記カソード部と前記メタネーション部との間に分散板が備えられている。このような構成により、前記カソード部で生成される水素のショートカットを防いで二酸化炭素との混合状態を改善し、メタネーション反応率を向上できると考えられる。
【0075】
第4の態様における水電解一体型メタネーションセルは、第1の態様におけるメタネーションセルにおいて、前記除熱部が前記アノード部に接しており、前記カソード部と前記メタネーション部が一体化されていることを特徴とする。このような構成により、除熱部分との伝熱面積が大きくなるといった利点がある。
【0076】
また、第5の態様における水電解一体型メタネーションセルは、第4の態様におけるメタネーションセルにおいて、前記カソード部と一体化された前記メタネーション部における、生成された前記炭素化合物を排出する側に、分散板が備えられていることを特徴とする。このような構成により、前記カソード部で生成される水素のショートカットを防いで二酸化炭素との混合状態を改善し、メタネーション反応率を向上できると考えられる。
【0077】
第6の態様における水電解一体型メタネーションセルは、第3または5の態様におけるメタネーションセルにおいて、前記分散板が除熱作用を有することを特徴とする。それにより、第3または5の態様のメタネーションセルにおいて、アノード部だけでなく、メタネーション部のメタネーション反応による発熱を除熱することもできる。
【0078】
第7の態様における積層メタネーションセルは、第1から第6の態様における水電解一体型メタネーションセルを2つ以上含む。水電解一体型メタネーションセルは除熱部を備えているため、それを2つ以上用いて積層メタネーションセルとすることにより、除熱効率のさらなる向上が期待できる。
【0079】
第8の態様における水電解一体型メタネーションセルは、第7の態様における積層メタネーションセルにおいて、前記アノード部と前記カソード部との間に、両面に流路を有するバイポーラ板が備えられていることを特徴とする。このような構成により、積層メタネーションセルのサイズを比較的小さくできるという利点がある。
【0080】
第9の態様における電解メタネーション装置は、第1から第6の態様における水電解一体型メタネーションセルと、前記アノード部と前記カソード部との間に電流を流す電源とを備える。
【0081】
第10の態様における電解メタネーション装置は、第7または8の態様の積層メタネーションセルと、前記アノード部と前記カソード部との間に電流を流す電源とを備える。
【符号の説明】
【0082】
1、1’ 水電解一体型メタネーションセル
11 アノード部
12 カソード部
13 メタネーション部
14 除熱部
15 バイポーラ板
16 分散板
17 炭素化合物の流路
20、20’ 積層メタネーションセル
31、32 冷却水入口
33 冷却水出口
34 仕切り板
図1
図2
図3
図4
図5
図6