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特開2024-174347水電解一体型メタネーションセル、及び、それを用いた電解メタネーション装置
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  • 特開-水電解一体型メタネーションセル、及び、それを用いた電解メタネーション装置 図1
  • 特開-水電解一体型メタネーションセル、及び、それを用いた電解メタネーション装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174347
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】水電解一体型メタネーションセル、及び、それを用いた電解メタネーション装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20241210BHJP
   C25B 1/042 20210101ALI20241210BHJP
   C25B 13/00 20060101ALI20241210BHJP
   C01B 32/40 20170101ALI20241210BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20241210BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/042
C25B13/00
C01B32/40
C25B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092129
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】柁山 航介
(72)【発明者】
【氏名】飯田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】清瀧 元
【テーマコード(参考)】
4G146
4K021
【Fターム(参考)】
4G146JA01
4G146JB04
4G146JC01
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB07
4K021DC03
4K021DC11
(57)【要約】
【課題】水電解とメタネーションを行うことができ、かつ、温度管理が比較的容易でメタネーション反応率にも優れる水電解一体型メタネーションセルを提供すること。
【解決手段】水または水蒸気を電気分解して酸素と水素イオンを生成するアノード部、水素イオンを還元して水素を生成するカソード部、及び、バイポーラ板を含む水電解部と、二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成するメタネーション部とを備え、前記バイポーラ板は、前記アノード部とカソード部との間に備えられ、かつ、両面に流路を有しており、前記メタネーション部は、メタネーション反応による発熱を冷却するための冷却水を流す第一流路と、前記発熱により前記冷却水から生成される水蒸気を前記水電解部へ供給する第二流路とを有する、水電解一体型メタネーションセル。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水または水蒸気を電気分解して酸素と水素イオンを生成するアノード部、水素イオンを還元して水素を生成するカソード部、及び、バイポーラ板を含む水電解部と、
二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成するメタネーション部とを備え、
前記バイポーラ板は、前記アノード部とカソード部との間に備えられ、かつ、両面に流路を有しており、
前記メタネーション部は、メタネーション反応による発熱を冷却するための冷却水を流す第一流路と、前記発熱により前記冷却水から生成される水蒸気を前記水電解部へ供給する第二流路とを有する、
水電解一体型メタネーションセル。
【請求項2】
前記水電解部が、前記アノード部と前記カソード部との間に2つ以上のバイポーラ板を有する、請求項1に記載の水電解一体型メタネーションセル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水電解一体型メタネーションセルと、前記アノード部と前記カソード部との間に電流を流す電源とを備える、電解メタネーション装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水電解一体型メタネーションセル、及び、それを用いた電解メタネーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物処理分野における二酸化炭素排出量削減に向けた取り組みとして、メタン発酵処理の必要性が高まっている。また、二酸化炭素を削減する方法として、「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)」といった、二酸化炭素をほかの気体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入しようとする試みが始められつつある。将来的には、さらに「CCUS(Carbon dioxide Capture Utilization and Storage)」、つまり、分離・貯留した二酸化炭素を利用することも求められるようになってくる。
【0003】
一方で、カーボンニュートラルの観点から、ガス供給の一部をe-メタンに置き換えることも求められており、ガス供給におけるe-メタンガスの導入の検討が進められている。
【0004】
これまでに、再生可能エネルギー発電装置の余剰電力を用いて水素と酸素とを製造する水電解装置と、前記水電解装置にて製造した水素とシステム内で生成する二酸化炭素とを合成してメタン等の炭化水素燃料を製造するメタネーション設備とを備えた再生可能エネルギー利用システム等が報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-45430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1記載の技術では、水電解とメタネーションを別々の装置(設備)で行っているため、大がかりな設備が必要となる。よって、本発明者らは、水電解とメタネーションを別々の装置ではなく、一つの装置で行うことを検討してきた。
【0007】
その際の課題として、メタネーション反応、および水電解において過電圧が生じた場合はそれぞれ発熱反応になるため、温度管理が難しくなることが懸念される。
【0008】
したがって、本開示の主な課題は、水電解とメタネーションを行うことができ、かつ、温度管理が比較的容易でメタネーション反応率にも優れる水電解一体型メタネーションセルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一局面は、
水または水蒸気を電気分解して酸素と水素イオンを生成するアノード部、水素イオンを還元して水素を生成するカソード部、及び、バイポーラ板を含む水電解部と、
二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成するメタネーション部とを備え、
前記バイポーラ板は、前記アノード部とカソード部との間に備えられ、かつ、両面に流路を有しており、
前記メタネーション部は、メタネーション反応による発熱を冷却するための冷却水を流す第一流路と、前記発熱により前記冷却水から生成される水蒸気を前記水電解部へ供給する第二流路とを有する、水電解一体型メタネーションセルに関する。
【0010】
本開示のさらに他の局面に関する電解メタネーション装置は、上述の水電解一体型メタネーションセルと、前記アノード部と前記カソード部との間に電流を流す電源とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、水電解とメタネーションを行うことができ、かつ、温度管理が比較的容易でメタネーション反応率にも優れる水電解一体型メタネーションセルを提供すること、並びに、それを用いた積層メタネーションセルおよび電解メタネーション装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態の水電解一体型メタネーションセルの一例を示す概略図である。
図2図2は、本実施形態の水電解一体型メタネーションセルに使用できるバイポーラ板の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係る実施形態について図面等を用いて具体的に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。また、本明細書で使用する図面はすべて概略図(模式図)である。
【0014】
[水電解一体型メタネーションセル]
本実施形態の水電解一体型メタネーションセルは、メタネーション装置に用いられる、水電解とメタネーションが一体型となったメタネーションセルである。本実施形態の水電解一体型メタネーションセルにより、二酸化炭素と水(または水蒸気)を原料として水電解とメタネーションを行い、所望の炭素化合物を得ることができる。本実施形態のメタネーションセルで得られる炭素化合物としては、メタン(CH)、一酸化炭素(CO))、メタノール等が挙げられる。
【0015】
図1は、本開示の第一実施形態による水電解一体型メタネーションセル(以下、単に「メタネーションセル」とも称す)の構成の一例を示す概略図である。本実施形態の水電解一体型メタネーションセル1は、アノード部11、カソード部12、および、バイポーラ板13を備える水電解部10と、メタネーション部20とを備える。バイポーラ板13は、アノード部11とカソード部12との間に備えられており、両面に流路を有する。そして、前記メタネーション部20は、メタネーション反応による発熱を冷却するための冷却水を流す第一流路23と、前記発熱により前記冷却水から生成される水蒸気を前記水電解部へ供給する第二流路24とを有する。
【0016】
このような構成により、まず、水電解とメタネーションを一つの設備で行うことができる。つまり、供給が必要なガスは二酸化炭素と水(水蒸気)となるため、水素ガスが系外に出ることがなくなり、ハンドリングが簡単になるという利点がある。さらに、本開示の水電解一体型メタネーションセルは、温度管理が比較的容易であり、メタネーション反応率にも優れている。
【0017】
メタネーションセル1は、特に限定されないが、一対の支持板(図示せず)で固定されていてもよいし、筺体(図示せず)等で覆われていてもよい。前記支持板や筺体は、化学反応性が低く、導電性の高い材料で構成されていることが好ましい。そのような材料としては、例えば、SUS等の金属材料、もしくはカーボン等が挙げられる。また、メタネーションセル1の形状は特に限定されず、箱形でもよいし、円筒状でもよい。
【0018】
メタネーションセル1は、上述したような水電解部10とメタネーション部20を備えていれば、他の構成は特に限定はされないが、図1に示すように、水電解部10とメタネーション部との間には、水電解部10とメタネーション部20の物理的な接触を防いで電気的短絡を抑制するために絶縁層30が備えられていてもよい。
【0019】
絶縁層30としては、絶縁板、あるいは、空気等の気体層を用いることができる。具体的には、例えば、セルロース膜、ポリマー、セラミック、ポリマーとセラミックの複合材料等で構成されているセパレータ等を用いることができる。
【0020】
水電解部10は、水または水蒸気を電気分解して酸素と水素イオンを生成するアノード部11と、前記アノード部11で生成された水素イオンを還元して水素を生成するカソード部12を備える。
【0021】
アノード部11は、通常、アノード、前記アノードに水または水蒸気を供給する流路、および、水素イオン伝導性を有する電解質を備える。アノードは水(HO)の酸化反応を生起し、酸素(O)および水素イオン(H)を生成する電極(酸化電極)である。
【0022】
アノードは、水または水蒸気を電気分解して酸素および水素イオンを生成することが可能な触媒材料(アノード触媒材料)で構成されていることが好ましい。具体的な触媒材料としては、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)等の金属、それらの金属を含む合金や金属間化合物、酸化マンガン(Mn-O)、酸化イリジウム(Ir-O)、酸化ニッケル(Ni-O)、酸化コバルト(Co-O)、酸化鉄(Fe-O)、酸化スズ(Sn-O)、酸化インジウム(In-O)、酸化ルテニウム(Ru-O)、酸化リチウム(Li-O)、酸化ランタン(La-O)等の二元系金属酸化物、Ni-Co-O、Ni-Fe-O、La-Co-O、Ni-La-O、Sr-Fe-O等の三元系金属酸化物、Pb-Ru-Ir-O、La-Sr-Co-O等の四元系金属酸化物、Ru錯体やFe錯体等の金属錯体が挙げられる。その中でも、過電圧が小さくできるという観点から、Ptや酸化イリジウムなどを使用することが好ましい。
【0023】
アノードは上述したアノード触媒材料のみで構成されていてもよいが、さらに基材を備えていてもよい。アノードの基材としては、水および生成した酸素を拡散させることが可能な構造、例えばメッシュ材、パンチング材、多孔体、金属繊維焼結体等の多孔構造を有する基材が好適である。また、前記基材は、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)等の金属やこれら金属を少なくとも1つ含む合金(例えばSUS)等の金属材料で構成されていることが好ましい。
【0024】
アノードのアノード触媒材料として、上述したような酸化物を用いる場合には、上記した金属材料からなる基材の表面にアノード触媒材料を付着もしくは積層してアノードを形成することが好ましい。
【0025】
アノード部11は、前記アノードに水または水蒸気を供給する流路を備えている。メタネーションセル1では、アノードに水または水蒸気を供給する流路として、後述する第二流路24を使用する。アノードに供給される水はそのまま用いても良いが、水蒸気の状態であっても良い。この点、第二流路24からは供給される水はメタネーション部20で生成される水蒸気であるため、効率よく電解反応を行うことができる。
【0026】
また、アノード部11には、使用されずに余った水(水蒸気)と、電解反応において水素イオンと共に生成された酸素を排出する排出口が備えられていてもよい。この排出口は、前記第二流路24の出口であってもよい。
【0027】
アノードと、後述するカソードとの間には、通常は、電解質が設けられている。用いる電解質としては、水素イオン伝導性を有するものであれば特に制限はないが、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、のような高分子電解質やリン酸水素セシウム、塩化カリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液などを用いることができる。電解質の形態も特に限定されず、例えば、電解質はシート状の膜式であってもよく、その場合は電解質膜を設けてもよい。
【0028】
次に、水電解部10におけるカソード部12について説明する。
【0029】
前記カソード部12は、水素イオンを還元して水素を生成するカソードを有する。前記カソードでは、主に、水素イオン還元反応が行われる。カソードは、前記還元反応が可能な触媒材料(カソード触媒材料)とで構成されていることが好ましい。具体的な触媒材料としては、例えば、パラジウム-銀、白金、イリジウム、白金被覆チタン、白金担持カーボン、パラジウム担持カーボン、コバルトグリオキシム、ニッケルグリオキシム等を挙げることができる。前記カソード触媒材料にはアイオノマーが混合されていてもよい。
【0030】
また、カソードは上述したカソード触媒材料のみで構成されていてもよいが、さらに基材を備えていてもよい。カソード基材としては、例えばカーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン不織布もしくはチタン不織布等が挙げられる。
【0031】
カソードは、例えば、上述したようなカソード触媒材料とアイオノマーの混合物を上述したような基材に塗工することにより得ることができる。
【0032】
前記アノードおよび前記カソードは、例えば、端子板などを用いることによって、電源に接続可能である。電源によってアノードとカソードとの間に電流を供給し、水電解部10において電解反応を行うことができる。
【0033】
このようにして水電解部10で生成された水素は流路(第三流路14)によって後述するメタネーション部20に供給される。第三流路14は特に限定されないが、化学反応性が低く、導電性の高い材料で構成されていることが好ましい。そのような材料としては、SUS等の金属材料、もしくはカーボン等が挙げられる。さらに第三流路14には、メタネーション部20に供給する水素量を調整する流量コントローラ、水素の量を測定する測定器などが設けられていてもよい。
【0034】
また、本実施形態の水電解部10はさらに、アノード部11とカソード部12との間にバイポーラ板13を備えている。バイポーラ板13は、前記アノード部11と前記カソード部12との間で、各種供給ガスや発生ガスを遮断すするとともに、アノードに供給される水(水蒸気)、および、カソードで生成された水素を運ぶ流路を有する。
【0035】
このようなバイポーラ板13を備えることにより、メタネーションセル1に用いる部材・部品を減らすことができる。これは、バイポーラ板13をアノード部11とカソード部12の代替として使用することができるためである。結果として、装置をよりコンパクトにすることができる。
【0036】
図2にバイポーラ板13の一例を示す。バイポーラ板13としては、例えば燃料電池などの技術分野で使用されているバイポーラ板などを使用することができる。材質は金属製であっても、カーボン製であってもよいが、電気抵抗が低いという観点から金属製であることが好ましい。
【0037】
バイポーラ板13は上述したように両面に流路を備えており、図2では片面に備えられた流路Aが示されているが、同様の流路Bがもう一方の面にも形成されている。このバイポーラ板13が備える流路Aを第二流路24と接続することで、メタネーション部20で生成された水蒸気をアノードに運ぶことができる。また、バイポーラ板13の流路Bを第三流路14と接続することにより、カソードで生成された水素をメタネーション部20へ運ぶことができる。
【0038】
バイポーラ板13は一枚であってもよいが、図1に示すように、アノード部11とカソード部12の間に、2枚以上のバイポーラ板を積層することもできる。このように複数のバイポーラ板13を積層することにより、アノード部11とカソード部12を積層することができ、別装置にするよりも装置をコンパクトにできることといった利点がある。
【0039】
次いで、本実施形態のメタネーションセル1が備えるメタネーション部20について説明する。メタネーション部20では、メタネーション反応と水蒸気生成が行われる。メタネーション反応は発熱反応であるため、冷却水で冷却すると、当該冷却水がメタネーション発熱によって水蒸気となる。得られた水蒸気は上述の水電解部10へ供給され、電荷反応に用いられる。このように本実施形態では、メタネーション反応の冷却と水蒸気生成を同時に行うことができ、温度管理が容易になり、反応効率も向上するという利点がある。
【0040】
前記メタネーション部20は、前記カソードで生成し、前記第三流路14から供給される水素を利用し、二酸化炭素(CO)を還元して炭素化合物を生成する。このメタネーション部20において、二酸化炭素(CO)から、メタン(CH)、一酸化炭素(CO))、メタノール等の炭素化合物が生成される(メタネーション反応)。
【0041】
メタネーション部20は、メタネーション反応を行うために、通常、メタネーション部20に二酸化炭素を供給する第四流路25、二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成する触媒21、および、生成された前記炭素化合物を排出する排出口26を備えている。
【0042】
二酸化炭素を供給する第四流路25は、二酸化炭素供給部(図示せず)に接続されており、メタネーション部20に二酸化炭素を供給できるものであれば限定はされないが、化学反応性が低い材料で構成されていることが好ましい。そのような材料としては、SUS等の金属材料、もしくはカーボン等が挙げられる。さらに第四流路25には、メタネーション部20に供給する二酸化炭素量を調整する流量コントローラ、二酸化炭素の量を測定する測定器などが設けられていてもよい。
【0043】
前記触媒21は触媒材料で構成されている。本実施形態で使用可能な触媒材料としては、具体的には例えば、ジルコニウム(Zr)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、カドミウム(Cd)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、鉛(Pb)、錫(Sn)等の金属、前記金属を少なくとも1つ含む合金や金属間化合物等の金属材料、前記金属の酸化物、炭素(C)、グラフェン、CNT(カーボンナノチューブ)、フラーレン、ケッチェンブラック等の炭素材料、Ru錯体またはRe錯体等の金属錯体が挙げられる。
【0044】
前記メタネーション部20における触媒の形状は特に限定されないが、粉末状、板状、メッシュ状、ワイヤ状、粒子状、多孔質状、薄膜状、島状等の各種形状を適用することができる。
【0045】
メタネーション部20には、前記第四流路25から二酸化炭素が供給される。具体的には、例えば、流量コントローラ(図示せず)によって、二酸化炭素を含むガスが導入される。前記第四流路25は、前記カソードで生成された水素を運ぶ第三流路14と合流してもよく、その場合は、水素と二酸化炭素の混合ガスがメタネーション部20に供給される。導入された二酸化炭素は、メタネーション部20の触媒21に触れることによって還元され、メタン等の炭素化合物が生成される。生成された炭素化合物を含むガス(例えば、メタンガス)は、排出口26から排出される。この排出口26は、前記第三流路14の出口であってもよい。
【0046】
本実施形態におけるメタネーション部20は、メタネーション発熱を冷却するための冷却水を流す第一流路23と、メタネーション発熱により前記冷却水から生成される水蒸気を前記水電解部10へ供給する第二流路24とを有する。このような構成により、メタネーション部20では、メタネーション発熱を冷却する冷却水から水蒸気が生成される。つまり、本実施形態のメタネーションセル1は、メタネーション反応から発される発熱を冷却しつつ、冷却に使用した水から生成した水蒸気を水電解部10における電解反応に用いることができる。その結果、設備の温度管理を容易にでき、メタネーション反応率を向上させることができる。第一流路23及び第二流路24は、化学反応性が低い材料で構成されていることが好ましい。さらに、第一流路23については、熱伝導率が高い材料を用いることが好ましい。そのような材料としては、SUS等の金属材料、もしくはカーボン等が挙げられる。さらに第一流路23には、メタネーション部20の温度を測定する温度計、その温度に応じて供給する冷却水の流量を調整する流量コントローラ等が備えられていてもよい。また、第二流路24にも、水電解部10に供給する水や水蒸気の量を調整する流量コントローラ、水や水蒸気の量を測定する測定器などが設けられていてもよい。
【0047】
メタネーション部20において、冷却水による効果をより得るために、第一流路23の入口と第二流路24の出口は、互いになるべく離れていることが好ましい。つまり、第一流路23の入口と第二流路24の出口は、それぞれメタネーション部20の上方および下方に備えられていることが好ましい。どちらが上方でどちらが下方であるかは特に限定はされない。
【0048】
例えば、図1におけるメタネーション部20に示すように、冷却水はメタネーション部20の上方に設けられた第一流路23から供給され、冷却部22を流れることにより、隣接する触媒21におけるメタネーション反応による発熱を冷却する。そして、メタネーション反応の発熱に接した前記冷却水は、冷却部22内をメタネーション部20の下方へ流れるにつれて、隣接する触媒21からのメタネーション発熱によって水蒸気となり、当該水蒸気は下方にある第二流路24から水電解部10へ運ばれる。前記冷却水が冷却部22を流れる距離が長いほど、冷却効率も、水蒸気の生成率も向上する。
【0049】
[積層メタネーションセル]
メタネーションセルにおけるメタネーション部20において、触媒21と冷却部22は単層であってもよいが、図1に示すように、複数の触媒21と冷却部22が積層された構造であってもよい。このようにメタネーション部20を積層構造にすることによって、積層メタネーションセルを得ることができ、単層のメタネーションセルより大規模で電解メタネーションを行うことができる。
【0050】
また、水電解部10においてもアノード部11とカソード部12は単層であってもよいが、図1に示すように、複数のアノード部11とカソード部12がバイポーラ板13により積層された構造であってもよい。それにより、別々に設置するよりも装置をコンパクトにできることといった利点がある。
【0051】
[電解メタネーション装置]
次に、上述した水電解一体型メタネーションセルを備える電解メタネーション装置について説明する。
【0052】
本実施形態の電解メタネーション装置は、上述の水電解一体型メタネーションセルと、前記アノード部と前記カソード部との間に電流を流す電源とを備える、電解メタネーション装置である。
【0053】
本実施形態で使用できる電源としては、通常の市販電源、電池などが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。その他にも、太陽電池等の再生可能エネルギーを電力として供給できる装置を電源として用いることができる。
【0054】
本実施形態の電解メタネーション装置は、上述の水電解一体型メタネーションセルと電源を備える電解装置であれば、その他の構成については特に限定はされない。公知の二酸化炭素電解装置等の構成を必要に応じて適宜採用できる。
【0055】
本実施形態の電解メタネーション装置では、二酸化炭素から炭素化合物を生成できるが、具体的な一例としてメタンを合成する場合について説明する。
【0056】
まず、水電解一体型メタネーションセルにおいて、アノード部とカソード部との間に電源から電流が供給され、かつ、第二流路から水蒸気(HO)が供給されると、HOと接するアノードでHOの酸化反応が生じる。具体的には、HOが酸化されて酸素(O)と水素イオン(H)が生成する。アノードで生成された水素イオン(H)は、アノードおよび電解質を移動し、カソード部のカソードの方へ移動する。アノードで生成した酸素を含むガスは、第二流路の出口から排出される。
【0057】
そして、電源からカソードに供給される電流由来の電子とアノードからカソードの方に移動してきた水素イオンによって、カソード部で水素が生成される。水素は第三流路でメタネーション部に運ばれ、メタネーション部における触媒に第四流路から供給される二酸化炭素が還元される。この還元反応で、二酸化炭素および水素からメタンおよび水が合成される。
【0058】
つまり、メタン合成の場合、本実施形態の電解メタネーション装置では以下の酸化反応および還元反応が生じる。
アノード部:
O→2H+1/2O+2e-
カソード部:
CO+4H→CH+2H
2H+2e→H
【0059】
本実施形態の電解メタネーション装置では、水電解反応とメタネーション反応を一つの装置で行うことができる。つまり、供給が必要なガスは二酸化炭素と水(水蒸気)となるため、水素ガスが装置外に出ることがなくなり、ハンドリングが簡単になるという利点がある。
【0060】
さらに、本実施形態の電解メタネーション装置では、メタネーション部が冷却水を流す第一流路と生成された水蒸気を電解部へ供給する第二流路を備えている。そのためメタネーション部において、メタネーション反応の冷却と水蒸気生成が行われるので、メタネーション反応による発熱(温度上昇)をコントロールすることができて装置の温度管理も容易になり、反応効率の向上も期待できる。
【0061】
本明細書は、上述したように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
【0062】
第1の態様における水電解一体型メタネーションセルは、水または水蒸気を電気分解して酸素と水素イオンを生成するアノード部、水素イオンを還元して水素を生成するカソード部、及び、バイポーラ板を含む水電解部と、二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成するメタネーション部とを備える。前記バイポーラ板は、前記アノード部とカソード部との間に備えられ、かつ、両面に流路を有する。そして、前記メタネーション部は、メタネーション反応による発熱を冷却するための冷却水を流す第一流路と、前記発熱により前記冷却水から生成される水蒸気を前記水電解部へ供給する第二流路とを有する。
【0063】
このような構成により、水電解とメタネーションを行うことができ、かつ、温度管理が比較的容易でメタネーション反応率にも優れる水電解一体型メタネーションセルを提供することができる。
【0064】
第2の態様における水電解一体型メタネーションセルは、第1の態様におけるメタネーションセルにおいて、前記水電解部が、前記アノード部と前記カソード部との間に2つ以上のバイポーラ板を有することを特徴とする。このような構成により、さらに反応効率を向上でき、セルを薄型化することができると考えられる。また、セルに使用する部品を少なくできる。
【0065】
第3の態様における電解メタネーション装置は、第1または第2の態様における水電解一体型メタネーションセルと、前記アノード部と前記カソード部との間に電流を流す電源とを備える。
【符号の説明】
【0066】
1 水電解一体型メタネーションセル
10 水電解部
11 アノード部
12 カソード部
13 バイポーラ板
14 第三流路
20 メタネーション部
21 触媒
22 冷却部
23 第一流路
24 第二流路
25 第四流路
26 排出口
図1
図2