(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174349
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】飲料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/56 20060101AFI20241210BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20241210BHJP
C12C 5/02 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A23L2/56
A23L2/00 B
C12C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092132
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】蝦名 史子
【テーマコード(参考)】
4B117
4B128
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LK04
4B117LK06
4B117LK08
4B128CP16
4B128CP21
4B128CP38
(57)【要約】
【課題】γ-ノナラクトンを高含有する飲料において、甘ったるい香り(不快な甘い香り)を改善すること。
【解決手段】γ-ノナラクトン含有量が80μg/L以上であり、シトロネロール含有量(μg/L)に対するγ-ノナラクトン含有量(μg/L)の比率が10以下である、飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ-ノナラクトン含有量が80μg/L以上であり、シトロネロール含有量(μg/L)に対するγ-ノナラクトン含有量(μg/L)の比率が10以下である、飲料。
【請求項2】
前記比率が5以下である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
前記γ-ノナラクトン含有量が90μg/L以上である、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項4】
ビールテイスト飲料である、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項5】
苦味価(BU)が20以上50以下である、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項6】
γ-ノナラクトン含有量を80μg/L以上に調整する工程と、シトロネロール含有量(μg/L)に対するγ-ノナラクトン含有量(μg/L)の比率を10以下に調整する工程とを含む、飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料の香味を向上させる技術手段については、これまでにも種々の報告がなされている。例えば特許文献1には、4-ビニルグアイアコールを1000質量ppb以下で含有し、n-酪酸エチルの含有量が140質量ppb以上であり、n-酪酸エチルの含有量(単位:質量ppb)とγ-ノナラクトンの含有量(単位:質量ppb)との比〔n-酪酸エチル/γ-ノナラクトン〕が23以下である、ビールテイスト飲料が開示されている。また、特許文献1にγ-ノナラクトンがビールテイスト飲料に適した甘い香りの向上に寄与する成分であることが記載されるように、γ-ノナラクトンは飲料に香りの芳醇さを付与することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、後述の試験例1に示すとおり、飲料においてγ-ノナラクトンを高含有させると、甘ったるい香り(不快な甘い香り)が強く感じられるようになるという問題が生じることを見出した。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、γ-ノナラクトンを高含有する飲料において、甘ったるい香り(不快な甘い香り)を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、γ-ノナラクトン含有量が80μg/L以上であり、シトロネロール含有量(μg/L)に対するγ-ノナラクトン含有量(μg/L)の比率が10以下である、飲料に関する。
【0006】
本発明に係る飲料は、シトロネロール含有量(μg/L)に対するγ-ノナラクトン含有量(μg/L)の比率が特定の範囲にあるため、γ-ノナラクトンを高含有する飲料において感じられる甘ったるい香りが改善されている。
【0007】
上記飲料は、上記比率が5以下であってもよい。これにより、甘ったるい香りの改善効果がより顕著になる。
【0008】
上記飲料は、上記γ-ノナラクトン含有量が90μg/L以上であってもよい。これにより、甘ったるい香りの改善効果がさらに顕著になる。
【0009】
上記飲料は、ビールテイスト飲料であってもよい。ビールテイスト飲料における甘ったるい香りの改善効果はより顕著に奏される。
【0010】
上記飲料は、苦味価(BU)が20以上50以下であってもよい。これにより、甘ったるい香りの改善効果がより一層顕著になる。
【0011】
本発明はまた、γ-ノナラクトン含有量を80μg/L以上に調整する工程と、シトロネロール含有量(μg/L)に対するγ-ノナラクトン含有量(μg/L)の比率を10以下に調整する工程とを含む、飲料の製造方法にも関する。
【0012】
本発明は、例えば、以下を包含する。
[1]
γ-ノナラクトン含有量が80μg/L以上であり、シトロネロール含有量(μg/L)に対するγ-ノナラクトン含有量(μg/L)の比率が10以下である、飲料。
[2]
上記比率が5以下である、[1]に記載の飲料。
[3]
上記γ-ノナラクトン含有量が90μg/L以上である、[1]又は[2]に記載の飲料。
[4]
ビールテイスト飲料である、[1]~[3]のいずれかに記載の飲料。
[5]
苦味価(BU)が20以上50以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の飲料。
[6]
γ-ノナラクトン含有量を80μg/L以上に調整する工程と、シトロネロール含有量(μg/L)に対するγ-ノナラクトン含有量(μg/L)の比率を10以下に調整する工程とを含む、飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、γ-ノナラクトンを高含有する飲料において、甘ったるい香り(不快な甘い香り)を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
〔飲料〕
本実施形態に係る飲料は、γ-ノナラクトン含有量が80μg/L以上であり、シトロネロール含有量(μg/L)に対するγ-ノナラクトン含有量(μg/L)の比率が10以下である。
【0016】
γ-ノナラクトンは、5-ペンチルジヒドロフラン-2(3H)-オンとも称される化合物である。本実施形態に係る飲料に含有されるγ-ノナラクトンは、S体であってもよく、R体であってもよく、S体とR体の混合物(例えば、ラセミ体)であってもよい。
【0017】
本実施形態に係る飲料のγ-ノナラクトン含有量は、80μg/L以上であれば特に限定されないが、例えば、85μg/L以上、90μg/L以上、95μg/L以上、100μg/L以上、105μg/L以上、110μg/L以上、115μg/L以上、120μg/L以上、125μg/L以上、130μg/L以上、135μg/L以上、140μg/L以上、145μg/L以上、又は150μg/L以上であってもよい。また、本実施形態に係る飲料のγ-ノナラクトン含有量は、例えば、500μg/L以下、450μg/L以下、400μg/L以下、350μg/L以下、300μg/L以下、250μg/L以下、200μg/L以下、150μg/L以下、又は100μg/L以下であってもよい。
【0018】
本実施形態に係る飲料のγ-ノナラクトン含有量は、例えば、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ-質量分析法(SPME-GC-MS法)により測定することができる。
【0019】
γ-ノナラクトン含有量は、例えば、飲料を製造する際の任意の段階で、γ-ノナラクトン含有量が上記範囲内になるようにγ-ノナラクトンを添加する方法、γ-ノナラクトン含有量が高くなる、又は低くなるような原料の種類、使用量、微生物又は酵素剤種類等を適宜選択する方法、原料の添加方法を適宜選択する方法、原料を添加するタイミングを適宜設定する方法、及びこれらを任意に組み合わせた方法により調整することができる。γ-ノナラクトンの添加は、例えば、γ-ノナラクトンそのものを添加してもよく、γ-ノナラクトンを含有する組成物を添加してもよい。γ-ノナラクトンを含有する組成物としては、例えば、香料組成物、ココナッツの果実及び胚乳、並びにモモ及びアンズ等の果実及び果汁等が挙げられる。
【0020】
シトロネロール(β-シトロネロール)は、3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オールとも称される化合物である。
【0021】
本実施形態に係る飲料のシトロネロール含有量は、例えば、5μg/L以上、10μg/L以上、15μg/L以上、20μg/L以上、25μg/L以上、30μg/L以上、35μg/L以上、40μg/L以上、45μg/L以上、50μg/L以上、55μg/L以上、60μg/L以上、65μg/L以上、70μg/L以上、75μg/L以上、85μg/L以上、90μg/L以上、95μg/L以上、又は100μg/L以上であってもよい。また、本実施形態に係る飲料のシトロネロール含有量は、例えば、1000μg/L以下、950μg/L以下、900μg/L以下、850μg/L以下、800μg/L以下、750μg/L以下、700μg/L以下、650μg/L以下、600μg/L以下、550μg/L以下、500μg/L以下、450μg/L以下、400μg/L以下、350μg/L以下、300μg/L以下、250μg/L以下、又は200μg/L以下であってもよい。
【0022】
本実施形態に係る飲料のシトロネロール含有量は、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ-質量分析法(SPME-GC-MS法)により測定することができる。
【0023】
シトロネロール含有量は、例えば、飲料を製造する際の任意の段階で、シトロネロール含有量が上記範囲内になるようにシトロネロールを添加する方法、シトロネロール含有量が高くなる、又は低くなるような原料の種類、使用量、微生物又は酵素剤種類等を適宜選択する方法、製造条件(例えば、原料としてホップを含有する場合、ホップ添加後の煮沸時間等)を適宜設定する方法、原料の添加方法を適宜選択する方法、原料を添加するタイミングを適宜設定する方法、及びこれらを任意に組み合わせた方法により調整することができる。シトロネロールの添加は、例えば、シトロネロールそのものを添加してもよく、シトロネロールを含有する組成物を添加してもよい。シトロネロールを含有する組成物としては、例えば、香料組成物、ホップの水蒸気蒸留物、ホップの水抽出物等が挙げられる。シトロネロール含有量が高くなる、又は低くなるような原料としては、例えば、レモンマートル、ジンジャー、カルダモン、サンショウ等が挙げられる。
【0024】
本実施形態に係る飲料のシトロネロール含有量(μg/L)に対するγ-ノナラクトン含有量(μg/L)の比率(以下、「γ-ノナラクトン/シトロネロール比率」とも記載する。)は、甘ったるい香りが改善されるという観点から、10以下であればよく、例えば、9.5以下、9以下、8.5以下、8以下、7.5以下、7以下、6.5以下、6以下、5.5以下、5以下、4.5以下、4以下、3.5以下、3以下、2.5以下、2以下、1.5以下、又は1以下であってもよい。また、本実施形態に係る飲料のγ-ノナラクトン/シトロネロール比率は、例えば、0.01以上、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、0.06以上、0.07以上、0.08以上、0.09以上、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、又は0.5以上であってもよい。
【0025】
本実施形態に係る飲料が、例えばホップ由来の苦味成分等を含有する場合、γ-ノナラクトン/シトロネロール比率が上記範囲内にあると、甘ったるい香りが改善されるという効果に加えて、苦味の質も改善されるという効果も得られる。
【0026】
本実施形態に係る飲料は、本発明の効果を損なわない範囲で、飲料に通常配合される苦味料、着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、酸味料、香料、塩類等を含んでいてもよい。苦味料としては、例えば、ホップ、イソα酸、カフェイン、ゲンチアナ抽出物、ペプチド類、テオブロミン、ナリンジン、ニガキ抽出物、ニガヨモギ抽出物、キナ抽出物等が挙げられる。着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素を挙げることができる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲン、デンプンを挙げることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムK、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームを挙げることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールを挙げることができる。酸味料としては、例えば、リン酸、乳酸、DL-リンゴ酸、クエン酸、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸ナトリウムを挙げることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムを挙げることができる。
【0027】
本実施形態に係る飲料は、アルコール度数が1v/v%以上であるアルコール飲料であってもよく、アルコール度数が1v/v%未満であるノンアルコール飲料であってもよい。なお、本明細書においてアルコールとは、特に言及しない限りエタノールを意味する。
【0028】
アルコール飲料のアルコール度数は、特に制限されず、例えば、1v/v%以上、1.5v/v%以上、2v/v%以上、2.5v/v%以上、3v/v%以上、3.5v/v%以上、4v/v%以上、4.5v/v%以上、又は5v/v%以上であってよい。また、アルコール飲料のアルコール度数は、例えば、20v/v%以下、15v/v%以下、10v/v%以下、9v/v%以下、8v/v%以下、7v/v%以下、6v/v%以下、5v/v%以下、4v/v%以下、3.5v/v%以下、3v/v%以下、2.5v/v%以下、2v/v%以下、又は1.5v/v%以下であってよい。
【0029】
ノンアルコール飲料のアルコール度数は、1v/v%未満であればよく、0.7v/v%以下であってよく、0.5v/v%以下であってよく、0.3v/v%以下であってよく、0.1v/v%以下であってよく、0.005v/v%未満(0.00v/v%)であってもよい。また、ノンアルコール飲料のアルコール度数は、例えば、0.005v/v%以上であってよく、0.01v/v%以上であってよく、0.05v/v%以上であってよく、0.1v/v%以上であってよく、0.2v/v%以上であってよく、0.3v/v%以上であってよく、0.4v/v%以上であってよく、0.5v/v%以上であってよい。
【0030】
本実施形態に係る飲料のアルコール度数は、例えば、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.3.6 ビール、アルコール(アルコライザー法)」若しくは「8.3.7 ヘッドスペースGC-FID法」、又は国税庁所定分析法「3-4アルコール分」に記載の方法によって測定することができる。
【0031】
本実施形態に係る飲料は、非発泡性であってもよく、発泡性であってもよい。ここで、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm2)未満であることをいい、発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm2)以上であることをいう。発泡性とする場合、ガス圧の上限は0.294MPa(3.0kg/cm2)程度としてもよい。
【0032】
本実施形態に係る飲料は、容器に入れて提供することができる。容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分及び光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0033】
本実施形態に係る飲料は、ビールテイスト飲料であってもよい。本明細書において「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の香味を有する飲料を意味する。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、アルコール度数が1v/v%以上であるビールテイストアルコール飲料であってもよく、アルコール度数が1v/v%未満であるビールテイストノンアルコール飲料であってもよい。本実施形態に係る飲料がビールテイスト飲料であると、甘ったるい香りがより顕著に改善されることに加えて、上述のとおり苦味の質も改善されるという効果も得られるため好ましい。
【0034】
ビールテイスト飲料としては、これに限られるものではないが、例えば、酒税法(令和二年法律第八号)上の「発泡性酒類」(ビール、発泡酒、その他の発泡性酒類)に分類されるものが挙げられる。なお、上記したその他の発泡性酒類としては、「その他の醸造酒(発泡性)(2)」や「リキュール(発泡性)(2)」が挙げられる。また、ビールテイスト飲料としては、ビール様の香味を奏していればよく、酒税法で定義される発泡性酒類には属さない飲料及び清涼飲料水も挙げることができる。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、上記例示したものに限られない。
【0035】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として麦原料を含有していてもよく、原料として麦原料を含有していなくてもよい。本明細書において麦原料とは、麦又は麦加工物をいう。麦としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦が挙げられる。麦加工物としては、例えば、麦エキス、麦芽、モルトエキスが挙げられる。麦エキスは、麦から糖分及び窒素分を含む麦エキス分を抽出することにより得られる。麦芽は麦を発芽させることにより得られる。モルトエキスは、麦芽から糖分及び窒素分を含むエキス分を抽出することにより得られる。
【0036】
麦芽としては、例えば、淡色麦芽及び濃色麦芽を用いることができるが、濃色麦芽を用いることが好ましい。濃色麦芽を用いることで、γ-ノナラクトンを80μg/L以上に調整することが容易になる。淡色麦芽は、淡い色の麦芽であり、麦から麦芽を製造する際の焙燥を80℃程度の温度上昇に抑えて焦がさないようにして製造することができる。濃色麦芽とは、濃い褐色から黒色の麦芽であり、麦から麦芽を製造する際の焙燥や焙煎を比較的高い温度(例えば約120℃)で行い、焦がすことで製造することができる。濃色麦芽としては、例えば、カラメル麦芽、クリスタル麦芽、黒麦芽、チョコレート麦芽、コーヒー麦芽等が挙げられる。
【0037】
麦芽の色度としては、例えば、3°EBC以上、5°EBC以上、10°EBC以上、20°EBC以上、30°EBC以上、40°EBC以上、50°EBC以上、60°EBC以上、70°EBC以上、80°EBC以上、90°EBC以上、又は100°EBC以上、500°EBC以上、700°EBC以上、800°EBC以上、1000°EBC以上、1500°EBC以上、であってよい。また、麦芽の色度としては、例えば、2000°EBC以下、1500°EBC以下、1000°EBC以下、900°EBC以下、800°EBC以下、700°EBC以下、600°EBC以下、500°EBC以下、400°EBC以下、300°EBC以下、200°EBC以下、又は150°EBC以下であってもよい。なお、γ-ノナラクトンを80μg/L以上に調整することが容易になることから500°EBC以上の麦芽を用いることが好ましい。
【0038】
色度は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.8 色度 8.8.2 吸光度法」に記載されている方法によって測定することができる。
【0039】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、麦芽比率(水及びホップ以外の原料に占める麦芽の割合)が0質量%以上100質量%以下であってよい。麦芽比率は、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、66質量%以上、67質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上、又は100質量%であってよい。また、麦芽比率は、100質量%未満、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、又は50質量%以下であってよい。
【0040】
麦芽中の濃色麦芽の比率は、麦芽全量を基準として、例えば、0.1質量%以上、5質量%以上、若しくは10質量%以上、又は15質量%以下、30質量%以下、若しくは50質量%以下であってよい。
【0041】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として、麦以外の原料を含有していてもよく、麦以外の原料を含有していなくてもよい。麦以外の原料は、例えば、コーン、米類、コウリャン等の穀類;馬鈴薯、サツマイモ等のイモ類;大豆、エンドウ等の豆類、ハーブ、スパイス等の植物原料であってもよく、スターチ、グリッツ、液糖等の糖質原料(糖類)であってもよい。
【0042】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料としてホップを含有していてもよく、原料としてホップを含有していなくてもよい。ホップには、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスが含まれ、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品も含まれる。
【0043】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の苦味価(BU)は、例えば、0以上60以下であってよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料のBUは、例えば、50以下、40以下、30以下、20以下、又は15以下であってよく、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、15以上、又は20以上であってよい。
【0044】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の苦味価は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.15 苦味価」に記載されている方法によって測定することができる。
【0045】
苦味価は、例えば、例えば、苦味価が上記範囲内になるように苦味料を添加する方法、苦味価が高くなる又は低くなるような原料の種類、使用量、微生物又は酵素剤種類を適宜設定する方法、製造条件(例えば、原料としてホップを含有する場合、ホップ添加後の煮沸時間等)を適宜設定する方法、原料の添加方法の選択、原料を添加するタイミングを適宜設定する方法、及びこれらを任意に組み合わせた方法により調整することができる。苦味料の添加は、例えば、ホップ由来の苦味物質そのものを添加してもよく、ホップ由来の苦味物質を含む組成物等を添加してもよい。ホップ由来の苦味物質を含む組成物としては、例えば、ホップの水蒸気蒸留物、ホップの水抽出物等が挙げられる。ホップ由来の苦味物質としては、例えば、イソα酸等が挙げられる。
【0046】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の色度は、例えば、3°EBC以上、5°EBC以上、10°EBC以上、20°EBC以上、30°EBC以上、40°EBC以上、又は50°EBC以上、80°EBC以上、100°EBC以上、150°EBC以上であってよい。また、本実施形態に係るビールテイスト飲料の色度は、例えば、200°EBC以下、150°EBC以下、100°EBC以下、90°EBC以下、80°EBC以下、70°EBC以下、60°EBC以下、50°EBC以下、又は40°EBC以下であってもよい。なお、本発明の効果がさらに発揮されやすくなることから、本実施形態に係るビールテイスト飲料の色度は、50°EBC以上であることが好ましい。
【0047】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の色度は、上述の方法によって測定することができる。ビールテイスト飲料の色度は、例えば、色度が高くなる又は低くなるような原料の種類、使用量等を適宜設定する方法により調整することができる。
【0048】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発酵飲料(ビールテイスト発酵飲料)であってもよく、非発酵飲料(ビールテイスト非発酵飲料)であってもよい。発酵飲料は、酵母等による発酵を経て製造されるものである。非発酵飲料は、酵母等による発酵を行わずに製造されるものである。なお、非発酵飲料には、酵母等による発酵を行わず、アルコール(例えば、スピリッツ、原料用アルコール等の蒸留アルコール)を配合して製造されるビールテイスト飲料も含まれる。
【0049】
〔飲料の製造方法〕
本実施形態に係る飲料は、γ-ノナラクトン含有量を80μg/L以上に調整する工程と、シトロネロール含有量(μg/L)に対するγ-ノナラクトン含有量(μg/L)の比率を10以下に調整する工程とを含む製造方法により、製造することができる。当該製造方法は、γ-ノナラクトン含有量を上記範囲内に調整する工程と、シトロネロール含有量(μg/L)に対するγ-ノナラクトン含有量(μg/L)の比率を上記範囲内に調整する工程の他は常法に従って実施することができる。
【0050】
一実施形態に係る製造方法(調合による方法)は、例えば、水、γ-ノナラクトン、及びシトロネロールを原料タンクに配合する配合工程を含む。配合工程では、必要に応じて、アルコール(例えば、原料用アルコール、スピリッツ及びウォッカ等の蒸留アルコール、醸造により得られた発酵液)と、上述したその他成分の1種又は2種以上の組み合わせとを原料タンクに更に配合してもよい。配合工程は、必要に応じてγ-ノナラクトン含有量、及びγ-ノナラクトン/シトロネロール比率を上記範囲内に調整することを含んでいてもよい。γ-ノナラクトンは、γ-ノナラクトンそのものを配合してもよく、γ-ノナラクトンを含有する組成物(例えば、香料組成物、ココナッツの果実及び胚乳、並びにモモ及びアンズ等の果実及び果汁等)として配合してもよい。また、シトロネロールは、シトロネロールそのものを添加してもよく、シトロネロールを含有する組成物(例えば、香料組成物、ホップの水抽出物、ホップの水蒸気蒸留物等)を配合してもよい。
【0051】
本実施形態に係る製造方法は、配合工程において各成分を混合して得た混合液をろ過するろ過工程と、ろ過工程でろ過したろ過液を殺菌する第一の殺菌工程と、第一の殺菌工程で殺菌した殺菌済みのろ過液をビン、缶、ビン、ペットボトル等の容器に充填する充填工程と、充填工程で容器に充填されたろ過液を容器ごと殺菌する第二の殺菌工程と、を更に含んでいてもよい。
【0052】
配合工程は、各成分がよく混ざるよう、撹拌機等により撹拌しながら混合してもよい。また、ろ過工程は、例えば、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。第一の殺菌工程は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行ってもよく、同様の処理を行うことができるのであれば、これに限定されることなく適用可能である。充填工程は、飲料の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填してもよい。第二の殺菌工程は、所定の温度及び所定の時間でろ過液を容器ごと加熱することにより行うことができる。第一又は第二の殺菌工程は、非加熱の殺菌工程としてもよい。非加熱の殺菌工程としては、紫外線(UV)殺菌等が挙げられる。殺菌工程を行わない無殺菌充填を行うことも可能である。また、発泡性の飲料とする場合は、例えば、充填工程の前でカーボネーションを行うとよい。
【0053】
他の実施形態における製造方法(醸造による方法)は、例えば、発酵工程を備える。発酵工程は、発酵前液に酵母を接種して発酵させる工程である。
【0054】
本実施形態に係る飲料がビールテイスト飲料である場合、醸造による方法は、例えば、以下のようにして実施することができる。
【0055】
まず、仕込工程で、原料及び仕込水(仕込工程で使用される水)を用いて、発酵に用いられる発酵前液を得る。仕込工程は、糖含有液を煮沸する煮沸工程、原料液中の固形分を除去する除去工程、原料液を冷却する冷却工程をこの順に含んでいてよい。本明細書において、原料液とは、ビールテイスト飲料のもととなる液を意味する。原料液には、各工程で使用又は製造される液(例えば、糖含有液、煮沸後液、精製液、発酵前液、発酵後液)が含まれる。
【0056】
煮沸工程では、糖含有液を煮沸して煮沸後液(煮沸後の糖含有液)を得る。糖含有液とは、酵母によるアルコール発酵が可能な成分を含有するものである。糖含有液としては、例えば、麦汁、シロップが挙げられる。麦汁とは、上述の麦原料の糖化を経て得られる液であり、未発酵のものである。麦汁は、例えば、上述の麦原料等の原料と水とを混合する工程、原料と水とを含む液を常法により糖化して糖化液を得る工程、及び糖化液をろ過する工程を経て得ることができる。
【0057】
煮沸工程では、原料液にホップを添加してよい。添加するホップとしては、例えば、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスを用いることができる。ホップは、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。
【0058】
除去工程では、煮沸後液中の固形分を除去して精製液(固形分を除去した糖含有液)を得る。除去工程は、例えば、煮沸後液に含まれる不溶性の固形分を沈殿させることにより行うことができる。固形分としては、煮沸工程により生じた熱凝固物、煮沸工程でホップを添加した場合には、ホップのかす等が挙げられる。除去工程は、ワールプール中で実施してよい。冷却工程では、酵母による発酵が可能な温度まで精製液を冷却して発酵前液を得る。除去工程で、煮沸後液中にホップを添加してもよい。
【0059】
発酵工程は、発酵前液を酵母で発酵させる工程である。発酵工程により、発酵前液を酵母により発酵させた発酵後液が得られる。発酵工程では、酵母によりアルコール発酵が行われる。より具体的には、発酵前液に酵母を接種して発酵させ、酵母により生成するアルコールを含む発酵後液を得る。
【0060】
本実施形態に係る製造方法では、発酵後工程として、発酵後液を熟成、冷却する工程、及び発酵後液をろ過する工程を備えていてもよい。ろ過工程を実施することにより、発酵後液から不溶性の固形分、酵母等を除去することができる。
【0061】
本実施形態に係る製造方法では、他の発酵後工程として、発酵後液(又はろ過工程後の発酵後液)に対して加熱(殺菌)、各種添加剤(例えば、着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、酸味料、香料、塩類)の添加等を行ってもよい。
【0062】
本実施形態に係る製造方法では、γ-ノナラクトン含有量は、例えば、γ-ノナラクトンを原料液に添加することにより上述の範囲内に調整してもよい。また、γ-ノナラクトンの含有量が高くなる、又は低くなるような原料の種類、使用量、微生物又は酵素剤種類等を適宜選択する方法、原料の添加方法の選択、原料を添加するタイミングを適宜選択する方法等によって、γ-ノナラクトンを上述した範囲内に調整してもよい。
【0063】
原料液に添加するγ-ノナラクトンは、γ-ノナラクトンそのものであってもよく、γ-ノナラクトンを含有する組成物(例えば、香料組成物、ココナッツの果実及び胚乳、並びにモモ及びアンズ等の果実及び果汁等)等を添加してもよい。
【0064】
本実施形態に係る製造方法では、シトロネロール含有量は、例えば、シトロネロールを原料液に添加することにより上述の範囲内に調整してもよい。また、シトロネロールの含有量が高くなる、又は低くなるような原料の種類、使用量、微生物又は酵素剤種類等を適宜選択する方法、製造条件(例えば、原料としてホップを含有する場合、ホップ添加後の煮沸時間等)を適宜設定する方法、原料の添加方法の選択、原料を添加するタイミングを適宜選択する方法等によって、シトロネロールを上述した範囲内に調整してもよい。
【0065】
原料液に添加するシトロネロールは、シトロネロールそのものであってもよく、シトロネロールを含有する組成物(例えば、香料組成物、ホップの水抽出物、ホップの水蒸気蒸留物等)等を添加してもよい。シトロネロール含有量が高くなる、又は低くなるような原料としては、例えば、レモンマートル、ジンジャー、カルダモン、サンショウ等が挙げられる。
【0066】
ホップの水抽出物は、ホップを水に浸漬する(水抽出する)ことで得ることができる。
【0067】
ホップの水蒸気蒸留物は、ホップを水蒸気に暴露し、水蒸気中に香気成分を抽出した後、水蒸気を回収・冷却することで、香気成分を含む蒸留物として得ることができる。具体的には、例えば、通常の蒸留装置を使用し、ホップ(生ホップ、乾燥ホップ、ホップペレット等)を水と共に蒸発缶に入れた後、加熱し、生じた水蒸気を凝縮器で冷却して蒸留水として回収することで得ることができる。蒸発缶中で水蒸気とホップが接触することで、ホップ中の香気成分が水蒸気と共に蒸発缶から凝縮器へと移動し、凝縮器中で水蒸気が冷却されて水(蒸留水)となる際に香気成分が水に溶け込んで、香気成分を含む蒸留水が得られる。その際、精油成分も同時に回収され、精油成分が含まれる、ホップの水蒸気蒸留物として得られてもよい。ホップの水蒸気蒸留物は蒸留水と精油成分で分離して用いてもよく、混合して用いてもよい。
【0068】
〔飲料の甘ったるい香りを改善する方法〕
本実施形態に係る飲料は、甘ったるい香りを改善するという効果を奏する。したがって、本発明は、γ-ノナラクトン含有量を80μg/L以上に調整することと、シトロネロール含有量(μg/L)に対するγ-ノナラクトン含有量(μg/L)の比率を10以下に調整することとを含む、飲料の甘ったるい香りを改善する方法とも捉えることができる。当該方法は、上記方法における具体的な態様等として、上述した各態様を特に制限なく適用することができる。
【実施例0069】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0070】
(試験例1:清涼飲料の製造及び評価)
<清涼飲料の製造>
炭酸水に、表1に示した苦味価及び含有量になるようにイソα酸及びγ-ノナラクトンを添加して参考例1-1~1-4の清涼飲料を製造した。
【0071】
<官能評価>
参考例1-1~1-4の清涼飲料に対して、「甘ったるい香り」及び「苦味の質」の評価項目について官能評価を実施した。官能評価は、選抜された識別能力のあるパネル4名により実施した。いずれの評価項目も、1~5点の5段階で評価し、その平均値を評価スコアとした。
【0072】
「甘ったるい香り」は、飲料として爽快感が損なわれる不快な甘い香りであり、評点が高いほど当該香りを強く感じることを示す。「苦味の質」は、苦味の甘さとのバランス及び苦味の持続感を含む、苦味の総合的な質感であり、評点が高いほど当該苦味の質が悪いと感じることを示す。いずれの評価項目も参考例1-1の清涼飲料の評点を2.0点に固定し、これを基準にその他の清涼飲料を評価した。結果を表1に示す。
【0073】
【0074】
γ-ノナラクトン含有量が高い飲料ほど、甘ったるい香りの評点が高く、甘ったるい香りが強く感じられた。また、γ-ノナラクトン含有量が80μg/L以上である清涼飲料(参考例1-3~1-4の清涼飲料)は、甘ったるい香りの評点が特に高くなっており、甘ったるい香りが強く感じられるようになるという課題が明らかになった。また、γ-ノナラクトン含有量が80μg/L以上である清涼飲料(参考例1-3~1-4の清涼飲料)は、苦味の質も低減することが確認できた。
【0075】
(試験例2:清涼飲料の製造及び評価)
<清涼飲料の製造>
炭酸水に、表2に示す苦味価及び含有量となるようにイソα酸、γ-ノナラクトン、及びシトロネロールを添加して参考例2-1~2-2、試験例2-1~2-6の清涼飲料を製造した。
【0076】
<官能評価>
評価項目として「甘ったるい香り」及び「苦味の質」に加えて、「総合評価」を追加したこと以外は、試験例1と同様にして官能評価を実施した。「総合評価」は、「総合評価」は、飲料としての完成度に基づき評価を行い、評点が高いほど飲料としての完成度が高いことを示す。なお、いずれの評価項目も参考例1-1のビールテイスト飲料の評点を2.0点に固定し、これを基準にその他のビールテイスト飲料を評価した。結果を表2に示す。
【0077】
【0078】
γ-ノナラクトン含有量が80μg/L以上であり、γ-ノナラクトン/シトロネロール比率が10超である清涼飲料(参考例2-1~2-2の清涼飲料)は、γ-ノナラクトン含有量が同じである参考例1-3~1-4の清涼飲料と比較しても、甘ったるい香りの評点は同じであり、甘ったるい香りは改善されていなかった。一方、γ-ノナラクトン含有量が80μg/L以上であっても、γ-ノナラクトン/シトロネロール比率が10以下である清涼飲料(試験例2-1~2-6の清涼飲料)は、γ-ノナラクトン含有量が同じである参考例1-3~1-4又は参考例2-1~2-2の清涼飲料と比較して、甘ったるい香りの評点が低く、甘ったるい香りが改善されていた。また、試験例2-1~2-6の清涼飲料は、苦味の質の評点が低く苦味の質が改善されていた。さらに、試験例2-1~2-6の清涼飲料は、総合評価の評点が高く、飲料としての完成度も高かった。
【0079】
(試験例3:ビールテイスト飲料の製造及び評価)
<ビールテイスト飲料の製造>
市販の黒ビール(麦芽比率50質量%以上の発酵飲料、色度:94°EBC)を用意し、参考例3-1のビールテイスト飲料とした。参考例3-1のビールテイスト飲料の苦味価、アルコール度数、γ-ノナラクトン含有量、及びシトロネロール含有量は、それぞれ表3に示すとおりであった。
【0080】
苦味価は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.15 苦味価」に記載されている方法により測定した。
【0081】
アルコール度数は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.3.6 ビール、アルコール(アルコライザー法)」に記載の方法により測定した。
【0082】
γ-ノナラクトン含有量及びシトロネロール含有量は、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ-質量分析法(SPME-GC-MS法)により測定した。
【0083】
参考例3-1のビールテイスト飲料に、表3に示す含有量となるようにγ-ノナラクトン及びシトロネロールを添加して試験例3-1~3-4のビールテイスト飲料を製造した。
【0084】
<官能評価>
いずれの評価項目も参考例3-1のビールテイスト飲料の評点を3.0点に固定し、これを基準にその他のビールテイスト飲料を評価したこと以外は試験例2と同様にして、官能評価を実施した。結果を表3に示す。
【0085】
【0086】
ビールテイスト飲料においても、清涼飲料と同様にγ-ノナラクトン/シトロネロール比率を10以下に調整することで、甘ったるい香りが改善された。また、γ-ノナラクトン/シトロネロール比率を10以下に調整することで、苦味の質の評点も低くなり、苦味の質も改善された。さらに、総合評価の評点も高くなり、ビールテイスト飲料としての完成度も向上した。
【0087】
濃色麦芽を使用した参考例3-1と、麦芽不使用の参考例1-1とを比べると濃色麦芽を使用したビールテイスト飲料におけるγ-ノナラクトンによる甘ったるい香りは、清涼飲料よりも増強し、苦味の質も悪くなっていた。そのような中でも、試験例3-1~3-4では、試験例2-1~2-6と同程度まで甘ったるい香り及び苦味の質を改善できているため、濃色麦芽を使用したビールテイスト飲料における甘ったるい香り及び苦味の質の改善効果は清涼飲料よりも顕著であると考えられる。
【0088】
(試験例4:ビールテイスト飲料の製造と評価)
<ビールテイスト飲料の製造>
麦芽(麦芽比率50質量%以上)、水、及びホップを原料として使用し、常法に従って発酵前液を得た。得られた発酵前液にビール酵母を接種して、一定期間発酵させ、発酵後液を得た。得られた発酵後液を濾過して参考例4-1のビールテイスト飲料(黒ビール、色度:153°EBC)を製造した。
【0089】
参考例4-1のビールテイスト飲料の苦味価、アルコール度数、γ-ノナラクトン含有量、及びシトロネロール含有量は、それぞれ表4に示すとおりであった。なお、苦味価、アルコール度数、γ-ノナラクトン含有量、及びシトロネロール含有量の測定は、試験例3と同様にして行った。
【0090】
参考例4-1のビールテイスト飲料に、表4に示す含有量になるようにγ-ノナラクトン及び/又はシトロネロールを添加して試験例4-1~4-2のビールテイスト飲料を製造した。
【0091】
<官能評価>
試験例3と同様にして官能評価を実施した。なお、いずれの評価項目も参考例3-1のビールテイスト飲料の評点を3.0点に固定し、これを基準にその他のビールテイスト飲料を評価した。結果を表4に示す。
【0092】
【0093】
苦味価が50であるビールテイスト飲料においても、γ-ノナラクトン/シトロネロール比率を10以下に調整することで、甘ったるい香りが改善された。また、苦味の質の評点も低くなり、苦味の質が改善された。さらに、総合評価の評点も高くなり、ビールテイスト飲料としての完成度も向上した。