(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174361
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】架橋性ポリマー及び組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 299/00 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
C08F299/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092154
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】591086407
【氏名又は名称】東レコーテックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】三宮 弘之
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 奈央
(72)【発明者】
【氏名】水口 創
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127AA01
4J127AA03
4J127BA041
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC151
4J127BD041
4J127BE511
4J127BE51Y
4J127BG051
4J127BG05Y
4J127BG111
4J127BG11Y
4J127BG271
4J127BG27Y
4J127CA01
4J127EA12
4J127FA07
4J127FA14
4J127FA15
4J127FA17
4J127FA19
4J127FA38
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ポリパラヒドロキシスチレンの優れたアルカリ溶解性、耐熱性、耐摩耗性などの特性を保有し、かつ熱硬化に加え光硬化もできる新規架橋性ポリマーを提供する。
【解決手段】ポリパラヒドロキシスチレンのフェノール性水酸基に1つ以上の光重合性基を有するイソシアネート化合物を反応して得られる架橋性ポリマーを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリパラヒドロキシスチレンと1つ以上の光重合性基を有するイソシアネート化合物を反応して得られる架橋性ポリマーであって、該架橋性ポリマーが下記一般式(1)および(2)で表される構造単位を有する架橋性ポリマー。
【化1】
(式(1)中、R
1は(メタ)アクリロイル基を有する1価の基を表す)
【請求項2】
前記一般式(1)におけるR1が(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する1価の基である請求項1記載の架橋性ポリマー。
【請求項3】
ポリパラヒドロキシスチレンの数平均分子量が8,000以下かつ重量平均分子量が15,000以下である請求項1または2記載の架橋性ポリマー。
【請求項4】
前記一般式(1)と一般式(2)のモル数の割合(一般式(1)/一般式(2))が0.01~50である請求項1または2に記載の架橋性ポリマー。
【請求項5】
沸点120℃以上の溶剤と請求項1または2に記載の架橋性ポリマーを含有する組成物。
【請求項6】
固形分濃度が20~70%である請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
熱硬化性もしくは光硬化性である請求項5に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリパラヒドロキシスチレンにイソシアネートモノマーを反応させることで熱硬化、光硬化もできる新規架橋性ポリマーを提供することにある。
【背景技術】
【0002】
ポリパラヒドロキシスチレンは、アルカリ溶解性に優れ、解像度もよく、耐エッチング性も優れるため感光性材料として幅広く使用されている。また鋼やアルミニウム、銅等の表面処理剤としても優れた防錆効果も有している。このような特性を活かし、プリント配線基板、接着剤、PS印刷版、金属表面処理剤、フォトレジスト、封止剤等、多くの製品に使用されている。
【0003】
例えば、ポリパラヒドロキシスチレンの水酸基を変性した重合体は、化学増幅型ポジ型レジスト組成物の高分子成分として使用されている。これは、ポリパラヒドロキシスチレンの水酸基に酸に不安定な基を導入することで、ヒドロキシスチレン誘導体それ自身はアルカリ水溶液に不溶または難溶であるが、酸の作用により酸に不安定な基が解裂することでアルカリ水溶液に可溶となることを利用しパターンを形成している。(特許文献1参照)
また耐熱性や耐摩耗性に優れた樹脂材料を得るために、パラヒドロキシスチレンに由来する繰り返し単位を有する重合体とアルデヒドとの付加縮合反応物が報告されている。これによると、本重合物は硬化剤として使用することができ、かつネガ型レジスト用樹脂組成物に使用することができる。(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-003242号公報
【特許文献2】特開2018-016713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~2に記載されるようなポリヒドロキシスチレン重合体は、熱硬化性樹脂としては使用できるが、ポリパラヒドロキシスチレン重合体そのもの自身に光重合性基(炭素-炭素の二重結合)がないため、光硬化性樹脂として使用することができなかった。そのため、アルカリ可溶性樹脂で構成されるような樹脂組成物への適用が行われていなかった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、ポリパラヒドロキシスチレンの水酸基部に1つ以上の光重合性基を有するイソシアネートモノマーを反応させることで、ポリパラヒドロキシスチレン由来の光硬化性ポリマーを合成した。これにより、ポリパラヒドロキシスチレンの優れたアルカリ溶解性、耐熱性、耐摩耗性などの特性を保有し、かつ熱硬化に加え光硬化もできる新規架橋性ポリマーを提供する。また該架橋性ポリマーは、熱硬化や光硬化を必要とする組成物の硬化剤や架橋剤としての成分役割も可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は主として以下の構成を有する。
[1]ポリパラヒドロキシスチレンと1つ以上の光重合性基を有するイソシアネート化合物を反応して得られる架橋性ポリマーであって、該架橋性ポリマーが下記一般式(1)および(2)で表される構造単位を有する架橋性ポリマー。
【0008】
【0009】
(式(1)中、R1は(メタ)アクリロイル基を有する1価の基を表す)
[2]前記一般式(1)におけるR1が(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する1価の基である[1]記載の架橋性ポリマー。
[3]ポリパラヒドロキシスチレンの数平均分子量が8,000以下かつ重量平均分子量が15,000以下である[1]または[2]記載の架橋性ポリマー。
[4]前記一般式(1)と一般式(2)のモル数の割合(一般式(1)/一般式(2))が0.01~50である[1]または[2]に記載の架橋性ポリマー。
[5]沸点120℃以上の溶剤と[1]または[2]に記載の架橋性ポリマーを含有する組成物。
[6]固形分濃度が20~70%である[5]記載の組成物。
[7]熱硬化性もしくは光硬化性である[5]記載の組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の架橋性ポリマーによれば、ポリパラヒドロキシスチレンのフェノール性水酸基に1つ以上の光重合性機を導入することで、熱硬化だけでなく光硬化も可能となる新規ポリマーを得ることができる。特に、2つ以上の光重合性基を有するイソシアネートモノマーを反応させることで熱硬化、光硬化、架橋性に優れたポリマーを提供することができる。また反応させるイソシアネートモノマー量を調整することで、ポリパラヒドロキシスチレンが保有する優れたアルカリ溶解性と架橋性ポリマーの熱硬化、光硬化、架橋性の調整が容易にできる。よって、該架橋性ポリマーは、ポリパラヒドロキシスチレンが持つアルカリ溶解性、耐熱性、耐摩耗性を維持し、更に光硬化、架橋性に富んだ新規架橋性ポリマーであり、熱硬化、光硬化剤として幅広く使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の架橋性ポリマーは、下記一般式(1)で表される構造単位および下記一般式(2)で表される構造単位を有する架橋性ポリマー(A)である(以下、「ポリマー(A)」と略記する場合がある)。
【0012】
【0013】
これらの構造単位を有するブロック共重合体でもよいし、ランダム共重合体でもよいし、さらに別の構造単位を有してもよい。
上記一般式(1)中、R1は(メタ)アクリロイル基を有する1価の基を示す。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基とメタクリロイル基の総称である。ポリマー(A)は、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有することが好ましく、これにより、熱硬化性、光硬化性、架橋性を向上させることができる。さらに、ポリマー(A)のR1は、アクリロイル基を2つ以上有することがより好ましい。
【0014】
ポリマー(A)は、例えば、ポリパラヒドロキシスチレンのフェノール性水酸基の一部に、(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物を付加させることにより、合成することができる。
【0015】
ポリパラヒドロキシスチレンとしては、例えば、丸善石油化学(株)製“マルカリンカー(登録商標)”M、日本曹達(株)製VPポリマーなどが挙げられる。使用するポリパラヒドロキシスチレンの数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は特に限定されるものではないが、数平均分子量(Mn)は8,000以下、かつ重量平均分子量(Mw)は、15,000以下のものがより好ましい。
【0016】
イソシアネート化合物としては、2-イソシアナトエチルアクリラート、2-イソシアナトエチルメタクリレート、2-(2-メタクリロリルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートなどが挙げられる。具体的には、(株)レゾナック製の“カレンズ(登録商標)”MOI、“カレンズ”AOI、“カレンズ”MOI-EG、“カレンズ”BEI、“カレンズ”MOI-BP、“カレンズ”MOI-BMなどが挙げられる。
【0017】
フェノール性水酸基とイソシアネート化合物の付加反応を促進させるための触媒としては、金属成分を含みウレタン化活性を示す化合物であれば特に限定はされないが、Fe、Sn、Zr、Ti、Alのいずれか1つ以上の金属を含む有機金属化合物であることが好ましい。なかでも、入手が容易であり触媒活性の温度依存性が少ないSn触媒、ならびに反応性を調整しやすいTiキレート触媒、Zrキレート触媒等の金属キレートの1種または2種以上を用いることができる。
【0018】
具体的には、Sn触媒としては、特に限定はされないが、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジバーサテート、ジブチルスズビス(アセチルアセテート)等が挙げられる。
【0019】
Feキレート触媒としては、特に限定されないが、例えば、トリスアセチルアセトネート鉄等、Zrキレート触媒としては、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート等、Tiキレート触媒としては、チタンアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート等、Alキレート触媒としては、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0020】
ポリマー(A)中において、一般式(1)で表される構造単位に対する一般式(2)で表される構造単位のモル数の割合(一般式(1)/一般式(2))は0.01~50の範囲にあることが好ましい。かかる割合が小さいと、光重合性基の割合が少なくなるため光硬化性、架橋性の機能が低下し、アルカリ溶解性に優れたポリマー(A)を提供することができる。一方で、かかる割合が大きくなると、光重合性基の割合が多くなるため光硬化性、架橋性の機能が向上し、架橋性に優れたポリマー(A)を提供することができる。
【0021】
本発明の組成物は、さらに溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては、特に限定されるものではないが、ポリマー(A)を合成する際の反応温度、さらには溶液状態での作業性(揮発性)という点で沸点が120 ℃以上の溶剤を使用することがより好ましい。沸点が120℃以上の溶剤として、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド(沸点165℃)、N,N-ジメチルホルムアミド(沸点153℃)、N-メチル-2-ピロリドン(202℃)、ジメチルイミダゾリジノン(沸点222℃)、ジメチルスルホキシド(沸点189℃)、γ-ブチロラクトン(沸点204℃)、乳酸エチル(沸点)、1-エトキシ-2-プロパノール(沸点132℃)、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル(沸点151℃)、ジアセトンアルコール(沸点168℃)、テトラヒドロフルフリルアルコール(沸点178℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点156℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点218℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点247℃)などが挙げられる。
【0022】
次に、本ポリマー(A)の合成および製造方法に関して説明する。
本発明の架橋性ポリマーの製造には、原料を均一に分散、反応することができる方法であれば特に限定されるものではなく、従来公知の様々な撹拌方法を用いることができる。例えば、攪拌機を用いて撹拌する方法が挙げられる。撹拌機としては、例えば、汎用撹拌機、自転公転ミキサー、デイスパー分散機、ディゾルバー、ミキサー、ラボプラストミル、プラネタリーミキサー等を挙げることができる。撹拌翼の形状としては特に限定されないが、タービン翼、パドル翼、ファウドラー翼、アンカー翼、フルゾーン翼等のいずれかであることが好ましい。
【0023】
反応温度としては、特に限定されないが、好ましくは20~110℃の範囲であり、効率的に反応が進行しやすくかつ反応制御が容易な点より、60~90℃がより好ましい。また除熱しやすく反応を制御しやすいため、緩やかに昇温してもよく、20~60℃の比較的低温で一定時間反応後に所定温度に昇温してもよい。また反応途中で触媒を添加してもよい。イソシアネートモノマー由来の二重結合が反応することを抑制するため、大気雰囲気下で反応を行うことが好ましい。
【0024】
反応時間は、触媒量や反応条件により異なるため、特に限定はされないが、4~12時間行うことが好ましい。反応を十分に行うという点で、6~12時間行うのがより好ましい。
反応の終点は、FT-IRや滴定法を用いてNCO基の減衰を追跡し、減衰が停止するまで反応することが好ましい。
【0025】
添加方法は、特に限定はされないが、反応条件によらず局所反応やゲル化を抑えるためポリパラヒドロキシスチレンの溶液に対し、イソシアネートモノマーを加えて、混合することが好ましく、イソシアネートモノマーの添加は一度に全量加えても、分割して添加してもよい。また触媒を用いる場合、イソシアネートモノマーを反応前に均一に分散させるため、イソシアネートモノマーより後に添加することが好ましいが、触媒を均一に分散させるためにイソシアネートモノマーより先に添加してもよい。
【実施例0026】
以下に、本発明を実施例および比較例について説明する。本発明の態様はこれらに限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
【0027】
(1)使用した原料
<ポリパラヒドロキシスチレン>
丸善石油化学(株)製“マルカリンカー(登録商標)”Mを使用した。
・S-2P 数平均分子量(Mn)2,900、重量平均分子量(Mw)5,400
<イソシアネートモノマー>
(株)レゾナック製“カレンズ(登録商標)”を使用した。
・(メタ)アクリロイル基を1つ有するイソシアネートモノマーとして、MOI(2-イソシアナトエチルメタクリラート)
・(メタ)アクリロイル基を2つ有するイソシアネートモノマーとして、BEI(1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート)。
【0028】
(2)ポリマー(A)の製造
(実施例1:ポリマー(A-1))
撹拌装置、冷却管、温度計 および ガス導入管を備えた反応容器に、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(以下、「BCA」と略記する場合がある)30gを入れ、撹拌しながらパラヒドロキシスチレン重合物(丸善石油化学(株)製、商品名「“マルカリンカー(登録商標)”M S-2P」)20g(7mmol)を加え、60℃まで昇温させて60℃で3時間撹拌し、完全に溶解させた。その後、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート((株)レゾナック製、商品名「“カレンズ(登録商標)”BEI」)2g(10mmol)を加え、さらに触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ(IV)0.02gを添加し、空気雰囲気下、80℃で8時間撹拌して重合反応を行いポリマー(A-1)の溶液を得た。ポリマー(A-1)は、一般式(1)で表される構造単位と一般式(2)で表される構造単位を、一般式(1)/一般式(2)=0.06の割合で有し、一般式(1)のR1はアクリロイル基を2つ有するポリマー(A)である。
【0029】
(実施例2:ポリマー(A-2))
撹拌装置、冷却管、温度計 および ガス導入管を備えた反応容器に、「BCA」20gを入れ、撹拌しながらパラヒドロキシスチレン重合物(丸善石油化学(株)製、商品名「“マルカリンカー(登録商標)”M S-2P」)20g(7mmol)を加え、60℃まで昇温させて60℃で3時間撹拌し、完全に溶解させた。その後、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート((株)レゾナック製、商品名「“カレンズ(登録商標)”BEI」)12g(50mmol)を加え、さらに触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ(IV)0.02gを添加し、空気雰囲気下、80℃で8時間撹拌して重合反応を行いポリマー(A-2)の溶液を得た。ポリマー(A-2)は、一般式(1)で表される構造単位と一般式(2)で表される構造単位を、一般式(1)/一般式(2)=0.4の割合で有し、一般式(1)のR1はアクリロイル基を2つ有するポリマー(A)である。
【0030】
(実施例3:ポリマー(A-3))
1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート((株)レゾナック製、商品名「“カレンズ(登録商標)”BEI」)12g(50mmol)にかえて、2-イソシアナトエチルメタクリラート((株)レゾナック製、商品名「“カレンズ”MOI」)8g(50mmol)を用いたこと以外は実施例2と同様にしてポリマー(A-3)の溶液を得た。ポリマー(A-3)は、一般式(1)で表される構造単位と一般式(2)で表される構造単位を、一般式(1)/一般式(2)=0.4の割合で有し、一般式(1)のR1はメタアクリロイル基を1つ有するポリマー(A)である。
【0031】
(実施例4:ポリマー(A-4))
撹拌装置、冷却管、温度計 および ガス導入管を備えた反応容器に、「BCA」20gを入れ、撹拌しながらパラヒドロキシスチレン重合物(丸善石油化学(株)製、商品名「“マルカリンカー(登録商標)”M S-2P」)20g(7mmol)を加え、60℃まで昇温させて60℃で3時間撹拌し、完全に溶解させた。その後、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート((株)レゾナック製、商品名「“カレンズ(登録商標)”BEI」)28g(117mmol)を加え、さらに触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ(IV)0.02gを添加し、空気雰囲気下、80℃で8時間撹拌して重合反応を行いポリマー(A-4)の溶液を得た。ポリマー(A-4)は、一般式(1)で表される構造単位と一般式(2)で表される構造単位を、一般式(1)/一般式(2)=2.3の割合で有し、一般式(1)のR1はアクリロイル基を2つ有するポリマー(A)である。
【0032】
(実施例5:ポリマー(A-5))
撹拌装置、冷却管、温度計 および ガス導入管を備えた反応容器に、「BCA」20gを入れ、撹拌しながらパラヒドロキシスチレン重合物(丸善石油化学(株)製、商品名「“マルカリンカー(登録商標)”M S-2P」)20g(7mmol)を加え、60℃まで昇温させて60℃で3時間撹拌し、完全に溶解させた。その後、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート((株)レゾナック製、商品名「“カレンズ(登録商標)”BEI」)38g(158mmol)を加え、さらに触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ(IV)0.02gを添加し、空気雰囲気下、80℃で8時間撹拌して重合反応を行いポリマー(A-5)の溶液を得た。ポリマー(A-5)は、一般式(1)で表される構造単位と一般式(2)で表される構造単位を、一般式(1)/一般式(2)=19の割合で有し、一般式(1)のR1はアクリロイル基を2つ有するポリマー(A)である。
【0033】
(実施例6:ポリマー(A-6))
撹拌装置、冷却管、温度計 および ガス導入管を備えた反応容器に、「BCA」20gを入れ、撹拌しながらパラヒドロキシスチレン重合物(丸善石油化学(株)製、商品名「“マルカリンカー(登録商標)”M S-2P」)20g(7mmol)を加え、60℃まで昇温させて60℃で3時間撹拌し、完全に溶解させた。その後、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート((株)レゾナック製、商品名「“カレンズ(登録商標)”BEI」)39g(163mmol)を加え、さらに触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ(IV)0.02gを添加し、空気雰囲気下、80℃で8時間撹拌して重合反応を行いポリマー(A-6)の溶液を得た。ポリマー(A-6)は、一般式(1)で表される構造単位と一般式(2)で表される構造単位を、一般式(1)/一般式(2)=49の割合で有し、一般式(1)のR1はアクリロイル基を2つ有するポリマー(A)である。
【0034】
(比較例1)
ポリパラヒドロキシスチレン重合物 S-2Pを使用した。
【0035】
(1)ポリマー(A)の分析評価
下記の通り、得られたポリマー(A)溶液の物性について分析を実施した。その結果については、表1に示す。
(a)蒸発残分
得られたポリマー(A)溶液を200℃、1時間と加熱乾燥させることでポリマー(A)の固形分量を乾燥前後の重量変化量より算出した。
【0036】
(b)重量平均分子量
示差屈折計を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いて以下手順にて得られたポリマー(A)のGPC測定を行った。
【0037】
ポリマー(A)30mgとテトラヒドロフラン(THF)10mlをサンプル瓶に入れ、完全に溶解させた。PTFEカートリッジフィルタ―(0.5μm)でろ過することで、GPC測定用のサンプルを作製した。
GPC測定については、展開溶媒にTHFを使用し、カラム温度40℃にて測定を行った。分子量既知の標準ポリスチレンを用いた3次近似曲線を検量線とし、解析を行った。測定装置には島津製作所製LC-20AD、解析には島津製作所製“LabSolutions”を用いた。
【0038】
(c)粘度
得られたポリマー(A)溶液の25℃における粘度を、JIS K 5600-2-3の記載に準拠し、コーン・プレート粘度計法にて、温度25℃、3°プレート、回転数20rpmで測定した。測定装置には、東機産業製RE-215Uを用いた。
【0039】
(d)イソシアネート換算反応転化率
反応転化率とはイソシアネートモノマーが変換される割合を指す。
【0040】
ポリマー(A)溶液について、JIS K 1556に記載のn-ジブチルアミン法に準拠してイソシアネート量を測定した。実測イソシアネート量/理論イソシアネート量により、反応転化率として算出した。
【0041】
得られたポリマー(A)の硬化性評価
得られたポリマー(A)に導入した光重合性基の硬化性について以下手順にて確認した。その結果について、表2に示す。
【0042】
得られたポリマー(A)溶液に光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア184)をポリマー(A)100部に対し、0.5部添加した。自転-公転真空ミキサー“あわとり練太郎”(登録商標)ARE-310((株)シンキー製)を用いて混合した。得られた溶液を昜接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、U40、125μm厚さ)の片面に、硬化後の厚みが3μmとなるように塗布し、溶剤を除去したのち。高圧水銀灯照射装置(HC-66、セン特殊光源社製)を用いて紫外線を照射し、硬化させた。照射露光量は2400mJ/cmで行った。得られたフィルムに対を用いて、アルカリ耐性評価を以下手順で行った。
【0043】
1%、5%の水酸化カリウム溶液を用意し、得たフィルムにスポイトを用いて2~3滴垂らした。1分間そのまま静置し、その後液滴を拭き取り、フィルムの状態を確認した。その結果より、硬化性評価を下記基準に基づき評価した。
〇:フィルム状態に変化がなかった。(硬化している)
△:フィルムに光沢がなくなり、一部溶解している状態。(硬化が不十分)
×:フィルムが溶解した。(硬化していない)。
【0044】
硬化性評価の結果、ポリパラヒドロキシスチレンは光硬化性がないのに対し、ポリパラヒドロキシスチレンにイソシアネートモノマーを反応させた架橋ポリマー(A)は非常に高い硬化性を確認することができた。架橋ポリマー(A)は、熱硬化、光硬化を可能とする新規ポリマーである。架橋剤そのものとして添加したり、例えば、熱硬化や光硬化を必要とするプロセスにおいて、組成物のポリマー成分として使用されることで、優れた耐熱や耐摩耗性の付与が期待できる。またアルカリ現像を必要とするプロセスでは、ポリパラヒドロキシスチレンへのイソシアネートモノマー量を調整することで、強アルカリ現像と高度なパターンを両立させることができる材料として期待できる。評価結果を表1および表2に示す。
【0045】
【0046】
本発明に係る架橋性ポリマーは優れた硬化性を有しているため、硬化剤として使用することができる。また熱硬化性及び光硬化性組成物のポリマー成分としても好適に使用することができる。例えば、ポジ型及びネガ型のレジスト用樹脂として、好適に利用可能である。