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特開2024-174364積層体、断熱材および真空断熱容器、ならびに、積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174364
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】積層体、断熱材および真空断熱容器、ならびに、積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/02 20060101AFI20241210BHJP
   B32B 5/08 20060101ALI20241210BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B32B5/02
B32B5/08
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092160
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉村 智佳
(72)【発明者】
【氏名】島田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】宮園 亨樹
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AC07
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA19
3E086BB37
3E086BB51
4F100AB01C
4F100AB33C
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AT00
4F100BA03
4F100DB18A
4F100DB18B
4F100DD21A
4F100DD27A
4F100DG15A
4F100EC032
4F100EC03A
4F100EC03B
4F100GB16
4F100JJ02
(57)【要約】
【課題】 輻射熱の反射性が高く、断熱性に優れた積層体を提供すること。
【解決手段】 熱可塑性樹脂を主成分とする繊維で構成される繊維層と、金属を含んでなる熱可塑性樹脂層と、を含んでなる積層体であって、前記積層体が前記繊維層と前記熱可塑性樹脂層とを貫通する貫通孔を有し、前記繊維層の厚みの、前記熱可塑性樹脂層の厚みに対する比が5以上40以下であり、前記積層体の見かけ密度が0.10g/cm以上0.35g/cm以下である、積層体。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を主成分とする繊維で構成される繊維層と、
金属を含んでなる熱可塑性樹脂層と、
を含んでなる積層体であって、
前記積層体が前記繊維層と前記熱可塑性樹脂層とを貫通する貫通孔を有し、
前記繊維層の厚みの、前記熱可塑性樹脂層の厚みに対する比が5以上40以下であり、
前記積層体の見かけ密度が0.10g/cm以上0.35g/cm以下である、
積層体。
【請求項2】
前記貫通孔の直径が100μm以上2000μm以下であり、貫通孔の開口率が0.05%以上9.00%以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記積層体の一方の最外層が前記繊維層であり、該繊維層側の最外層の算術平均粗さRaが3.0μm以上30.0μm以下である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記積層体の一方の最外層が前記熱可塑性樹脂層であり、該熱可塑性樹脂層側の最外層の算術平均粗さRaが0.01μm以上3.00μm未満である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項5】
前記積層体の一方の最外層が前記繊維層であり、該繊維層側の最外層の算術平均粗さRaが3.0μm以上30.0μm以下であって、前記積層体の他方の最外層が前記熱可塑性樹脂層であり、該熱可塑性樹脂層側の最外層の算術平均粗さRaが0.01μm以上3.00μm未満である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂層の少なくとも片面にアルミニウムを含む金属層を有する、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項7】
前記積層体の一方の最外層が長繊維不織布層である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項8】
請求項1または2に記載の積層体を用いてなる、断熱材。
【請求項9】
請求項8に記載の断熱材を用いてなる、真空断熱容器。
【請求項10】
前記繊維層と前記熱可塑性樹脂層とを熱融着させる工程を含む、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
加熱した突起物を貫通させることによって前記繊維層と前記熱可塑性樹脂層とを熱融着させる、請求項10に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、断熱材および真空断熱容器、ならびに、積層体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体窒素などの液化ガスを貯蔵・運搬する際に、極低温状態を保持するための手段として、真空断熱が用いられることが一般的である。このような真空環境下、あるいは、低圧力環境下で使用される断熱材として、例えば、特許文献1では、金属層を有する樹脂フィルムと、樹脂繊維を含む不織布とを備え、これらが貫通孔により接合され、樹脂フィルムにおける貫通孔間の平均距離と不織布における貫通孔間の平均距離との比率を特定の範囲とした断熱シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/181186号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された断熱シートでは、樹脂フィルムにおける貫通孔間の平均距離と不織布における貫通孔間の平均距離との比率を特定の範囲としようとするものであり、そのため、金属層を有する樹脂フィルムにシワが発生しやすい傾向にある。そして、金属層を有する樹脂フィルムにシワが発生した場合には、輻射熱の反射性が低下し、断熱性能を十分に発揮できないという課題がある。また、断熱性能に対する要求レベルは年々厳しくなっており、さらなる性能の向上が求められている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、輻射熱の反射性が高く、断熱性に優れた積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するべく、意図的なシワの発生をさせないような態様にして反射率を向上できないか、試みた。しかしながら、シワの発生を抑制すると反射率は向上するものの断熱性能に劣ることが確認された。そこで、さらに鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂を主成分とする繊維で構成される繊維層と、金属を含んでなる熱可塑性樹脂層と、を含んでなる積層体において、繊維層と熱可塑性樹脂層とを貫通する貫通孔を有させ、さらに、繊維層の厚みの、熱可塑性樹脂層の厚みに対する比と積層体の見かけ密度が特定の範囲であると、輻射熱の反射性を高めることができ、さらに、断熱材として使用した際の断熱性能も向上できるという知見を得た。加えて、この積層体が、断熱性と通気性の両立をも可能とすることも判明した。
【0007】
本発明は、これら知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
【0008】
[1] 熱可塑性樹脂を主成分とする繊維で構成される繊維層と、
金属を含んでなる熱可塑性樹脂層と、
を含んでなる積層体であって、
前記積層体が前記繊維層と前記熱可塑性樹脂層とを貫通する貫通孔を有し、
前記繊維層の厚みの、前記熱可塑性樹脂層の厚みに対する比が5以上40以下であり、
前記積層体の見かけ密度が0.10g/cm以上0.35g/cm以下である、
積層体。
【0009】
[2] 前記貫通孔の直径が100μm以上2000μm以下であり、貫通孔の開口率が0.05%以上9.00%以下である、前記[1]に記載の積層体。
【0010】
[3] 前記積層体の一方の最外層が前記繊維層であり、該繊維層側の最外層の算術平均粗さRaが3.0μm以上30.0μm以下である、前記[1]または[2]に記載の積層体。
【0011】
[4] 前記積層体の一方の最外層が前記熱可塑性樹脂層であり、該熱可塑性樹脂層側の最外層の算術平均粗さRaが0.01μm以上3.00μm未満である、前記[1]または[2]に記載の積層体。
【0012】
[5] 前記積層体の一方の最外層が前記繊維層であり、該繊維層側の最外層の算術平均粗さRaが3.0μm以上30.0μm以下であって、前記積層体の他方の最外層が前記熱可塑性樹脂層であり、該熱可塑性樹脂層側の最外層の算術平均粗さRaが0.01μm以上3.00μm未満である、前記[1]または[2]に記載の積層体。
【0013】
[6] 前記熱可塑性樹脂層の少なくとも片面にアルミニウムを含む金属層を有する、前記[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
【0014】
[7] 前記積層体の一方の最外層が長繊維不織布層である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の積層体。
【0015】
[8] 前記[1]~[7]のいずれかに記載の積層体を用いてなる、断熱材。
【0016】
[9] 前記[8]に記載の断熱材を用いてなる、真空断熱容器。
【0017】
[10] 前記繊維層と前記熱可塑性樹脂層とを熱融着させる工程を含む前記[1]~[7]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【0018】
[11] 加熱した突起物を貫通させることによって前記繊維層と前記熱可塑性樹脂層とを熱融着させる、前記[10]に記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡便に製造可能で、輻射熱の反射性も高いことから断熱性に優れ、さらには、通気性にも優れた積層体が得られる。これらの特性から、本発明の積層体は、特に真空あるいは低圧力環境下で使用される断熱材として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、これら本発明の構成要素について詳細に説明するが、本発明は以下に説明する態様のみに限定されるものではない。
【0021】
[繊維層]
本発明の積層体は、まず、熱可塑性樹脂を主成分とする繊維で構成される繊維層を含んでなる。本発明において、「熱可塑性樹脂を主成分とする繊維」とは、熱可塑性樹脂の質量割合が60質量%以上である繊維のことを指すものとする。
【0022】
(1)熱可塑性樹脂
本発明の積層体に係る繊維層を構成する繊維の主成分である熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂やポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0023】
前記のポリエステル系樹脂は、酸成分とアルコール成分とを重縮合して得られる高分子重合体や、ラクトンやラクチドの開環重合によって得られる高分子重合体を主成分とする。ここでの「主成分」とは、ポリエステル系樹脂全体に対して、60質量%以上を占めることを意味する。前記酸成分としては例えば、フタル酸(オルト体)、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸、アジピン酸やセバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、およびシクロヘキサンカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を用いることができる。また、前記アルコール成分としては例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびポリエチレングリコール等を用いることができる。また、前記ラクトンとしては例えば、β-プロピオラクトン、ε-カプロラクトン等を用いることができる。
【0024】
前記のポリエステル系樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)および、これらをベースとした共重合ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、紡糸性が高く、品位の優れた繊維層となることから、PETが好ましく用いられる。
【0025】
前記のポリエステル系樹脂の融点は、200℃以上320℃以下であることが好ましい。前記のポリエステル系樹脂の融点が好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上、さらに好ましくは240℃以上であることにより、耐熱性に優れる繊維層となり、結果として耐熱性に優れた積層体となる。一方、前記のポリエステル系樹脂の融点が好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは280℃以下であることにより、繊維層を製造する時のエネルギー消費を抑えるとともに、紡糸口金から吐出された糸条を冷却しやすくできるため、後述の繊維層の好ましい態様として不織布を用いる場合においては、繊維同士の融着を抑制して、地合の均一性に優れた不織布となり、結果として断熱性として使用した場合に断熱性能の均一な積層体となる。
【0026】
前記のポリエステル系樹脂の固有粘度(IV)は、0.55以上0.75以下であることが好ましい。前記の固有粘度(IV)が、好ましくは0.55以上、より好ましくは0.60以上、さらに好ましくは0.62以上であることにより、単繊維強度を向上させることができる。一方、前記固有粘度(IV)が、好ましくは0.75以下、より好ましくは0.70以下、さらに好ましくは0.68以下であることにより、紡糸性が高く、品位の優れた繊維層とすることができる。
【0027】
なお、本発明において、ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV)は次の方法で測定される値を採用するものとする。
(i)オルソクロロフェノール100mLに対し試料8gを溶解し、オストワルド粘度計を用いて、温度25℃における相対粘度ηを下記式により求める
η=η/η=(t×d)/(t×d
ここに、
η:ポリマー溶液の粘度
η:オルソクロロフェノールの粘度
t:溶液の落下時間(秒)
d:溶液の密度(g/cm
:オルソクロロフェノールの落下時間(秒)
:オルソクロロフェノールの密度(g/cm
(ii)相対粘度ηから、下記式により固有粘度(IV)を算出し、小数点以下第三位を四捨五入する
固有粘度(IV)=0.0242η+0.2634 。
【0028】
前記のポリオレフィン系樹脂としては例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、および、これらをベースとした共重合ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。なかでも、紡糸性が高く、品位の優れた繊維層となることから、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましく用いられる。
【0029】
ポリエチレン系樹脂とは、繰り返し単位に占めるエチレン単位のモル分率が60モル%~100モル%である樹脂を意味する。前記ポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体もしくはエチレンと各種α-オレフィンとの共重合体などが挙げられる。なかでも、紡糸安定性や強度の低下を防ぐため、エチレンの単独重合体が好ましい。エチレンと各種α-オレフィンとの共重合体としては、エチレンと炭素数3~5のα-オレフィンとの共重合体が好ましい。また前記炭素数3~5のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテンが挙げられるが、なかでも1-ブテンがより好ましい。このようにすることにより、溶融時の分子鎖の絡み合いを抑え、糸切れを抑制するとともに、非晶成分の増加により熱接着時にロールに貼り付き、シートに凹凸やシワが発生するなどして品位が低下することを防ぐことができる。
【0030】
前記のエチレンと各種α-オレフィンとの共重合体を用いる場合、前記α-オレフィンの含有量は、ポリエチレン系樹脂の重合成分に対して0.1mol%以上10mol%以下であることが好ましい。α-オレフィンの含有量を好ましくは0.1mol%以上10mol%以下、より好ましくは0.1mol%以上7mol%以下、さらに好ましくは0.1mol%以上5mol%以下であることにより、紡糸安定性の低下を防ぐとともに、熱接着時にロールに貼り付いて、シートに凹凸やシワが発生するなどして品位が低下することを防ぐことができるため、断熱材として使用した際に断熱性能の均一な積層体となる。ポリエチレン系樹脂の重合成分中のα-オレフィンの種類およびα-オレフィンの含有量は、例えば、核磁気共鳴装置(NMR)による検出ピーク位置およびピーク面積比率から算出することが出来る。
【0031】
また前記のポリエチレン系樹脂としては例えば、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(以下、HDPEと略すことがある。)、または、直鎖状低密度ポリエチレン(以下、LLDPEと略すことがある。)などが挙げられる。なかでも、紡糸性が高く、品位の優れた繊維層となることから、HDPEまたはLLDPEが好ましく用いられる。
【0032】
前記のポリエチレン系樹脂の融点は、100℃以上150℃以下であることが好ましい。当該融点が好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上であることにより、実用に耐え得る耐熱性を有する積層体となる。また、当該融点が好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは135℃以下であることにより、紡糸口金から吐出された繊維を冷却し易くなり、後述の繊維層の好ましい態様として不織布を用いる場合においては、繊維同士の融着を抑制して、地合の均一性に優れた不織布となり、結果として断熱性として使用した場合に断熱性能の均一な積層体となる。
【0033】
前記のポリエチレン系樹脂の固体密度は、0.935g/cm以上0.970g/cm以下であることが好ましい。当該固体密度が、好ましくは0.935g/cm以上、より好ましくは0.940g/cm以上、さらに好ましくは0.945g/cm以上であることにより、後述の繊維層の好ましい態様として不織布を用いる場合において、不織繊維ウェブを融着させて不織布を得る際に、熱エンボスロールへの貼り付きによる凹凸やシワの発生を防ぐことができるため、断熱材として使用した際に断熱性能に優れた積層体となる。また、当該固体密度が、好ましくは0.970g/cm以下、より好ましくは0.965g/cm以下、さらに好ましくは0.960g/cm以下であることにより、紡糸性が高くなることから、品位の優れた繊維層となり、結果として断熱材として使用した場合に断熱性能に優れた積層体となる。
【0034】
ポリプロピレン系樹脂とは、繰り返し単位に占めるプロピレン単位のモル分率が60モル%~100モル%である樹脂を意味する。前記ポリプロピレン系樹脂としては例えば、プロピレンの単独重合体もしくはプロピレンとエチレン、各種α-オレフィンとの共重合体などが挙げられる。なかでも、紡糸安定性や強度の低下を防ぐため、プロピレンの単独重合体が好ましい。
【0035】
前記のポリプロピレン系樹脂としてプロピレンと各種α-オレフィンとの共重合体を用いる場合、共重合成分としては、紡糸安定性に優れることから、エチレンや1-ブテンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、共重合比率は、紡糸安定性や強度の低下を防ぐため、15mol%以下であることが好ましく、10mol%以下であることがより好ましく、5mol%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
前記のポリプロピレン系樹脂の重合成分中のα-オレフィン種およびα-オレフィン含有量は、例えば、核磁気共鳴装置(NMR)による検出ピーク位置およびピーク面積比率から算出することができる。
【0037】
前記のポリプロピレン系樹脂の融点は、120℃以上180℃以下であることが好ましい。当該融点が好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは140℃以上であることにより、実用に耐え得る耐熱性を得やすくなり、結果として耐熱性に優れた積層体となる。また、当該融点が好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは160℃以下であることにより、紡糸口金から吐出された繊維を冷却し易くなり、後述の繊維層の好ましい態様として不織布を用いる場合においては、繊維同士の融着を抑制して、地合の均一性に優れた繊維層とすることができ、結果として、断熱材として使用した際に、断熱性能の均一な積層体となる。
【0038】
また、前記の熱可塑性樹脂は2種以上の混合物であってもよい。ただし、主となる熱可塑性樹脂の特性を十分に発現させるため、混合する他の熱可塑性樹脂の比率は20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0039】
前記の熱可塑性樹脂のメルトフローレート(以下、MFRと略すことがある。)は、1g/10分以上300g/10分以下であることが好ましい。当該MFRが好ましくは1g/10分以上、より好ましくは10g/10分以上、さらに好ましくは20g/10分以上であることにより、紡糸性が高くなることから、品位の優れた繊維層とすることができ、結果として断熱材として使用した際に、断熱性能の均一な積層体となる。一方、当該MFRが好ましくは300g/10分以下、より好ましくは200g/10分以下、さらに好ましくは100g/10分以下であることにより、単繊維強度の低下を抑制し、強度や剛性に優れる繊維層とすることができ、結果として、耐久性に優れた積層体となる。もちろん、MFRの異なる2種類以上の樹脂を任意の割合でブレンドして、本発明で用いられる熱可塑性樹脂のMFRを調整することもできる。
【0040】
熱可塑性樹脂のMFRは、ASTM D1238(A法)によって測定される値を採用する。この規格によれば、ポリエチレンは荷重:2.16kg、温度:190℃にて、ポリプロピレンは荷重:2.16kg、温度:230℃にて測定することが規定されている。なお、積層体から熱可塑性樹脂のMFRを測定する場合には、後述する熱可塑性樹脂層を分離するなどして、上記の方法によって測定することとする。
【0041】
また、前記の熱可塑性樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、帯電助剤、紡曇剤、ブロッキング防止剤、艶消し剤、抗菌剤、防カビ剤、抗アレルゲン剤、抗ウイルス剤、ビタミン剤、難燃剤、金属酸化物、親水剤、結晶核剤、顔料、ポリエチレンワックスを含む滑剤、脂肪族ビスアミドおよび/または脂肪族モノアミド等の添加物、あるいは他の重合体を添加することができる。
【0042】
(2)繊維
本発明の積層体に係る繊維層を構成する繊維は、前記の熱可塑性樹脂を主成分とする。そして、この繊維の断面形状としては、丸断面、扁平断面、およびY型やC型などの異形断面を用いることができる。なかでも、扁平断面や異形断面のような構造由来の曲げにくさがなく、柔軟性に優れた繊維層とすることができることから、丸断面が好ましい態様である。また断面形状として中空断面を適用することもできるが、紡糸性が高く、品位の優れた繊維層となることから、中実断面が好ましい態様である。
【0043】
前記の繊維は、前記の繊維層の強度や柔軟性を向上させるために、2種類以上の熱可塑性樹脂からなる複合繊維としても良い。その複合繊維の複合形態としては、例えば、同心芯鞘型、偏心芯鞘型、海島型、およびサイドバイサイド型などを用いることができる。なかでも、紡糸性が高く、品位の優れた繊維層となることから、同心芯鞘型の複合形態とすることが好ましい。
【0044】
(3)繊維層
本発明の積層体は、前記の繊維で構成される繊維層を含んでなる。このことにより、前記の積層体の内部の空隙や表面の状態を精緻に制御することができ、断熱性や通気性、施工性に優れる積層体となる。
【0045】
前記の繊維層としては不織布、織物または編物を含むものが挙げられるが、強度や耐久性が高く、生産性に優れることから、不織布が好ましい。この不織布としては、カード法やエアレイド法などで製造される乾式不織布、抄紙することで製造される湿式不織布、あるいは直接紡糸(メルトブロー法、スパンボンド法)した繊維を集積することで製造される長繊維不織布(直接紡糸不織布)などが挙げられる。
【0046】
なかでも、前記の積層体の表面を形成する層(後述する、実施態様1、3における、積層体の一方の最外層となる繊維層)は、長繊維不織布層、特にスパンボンド法により得られるスパンボンド不織布層が、強度や耐久性がより高い積層体とでき、繊維層自体の生産性も優れるものであることから好ましい。
【0047】
前記の繊維層の単位面積当たりの質量(目付)は、5g/m以上50g/m以下であることが好ましい。当該目付が好ましくは5g/m以上、より好ましくは10g/m以上、さらに好ましくは15g/m以上であることにより、実用に供し得る十分な強度を有する積層体とすることができる。一方、当該目付が好ましくは50g/m以下、より好ましくは40g/m以下、さらに好ましくは30g/m以下であることにより、柔軟性を保持し、複雑な形状に対しても追従性に優れた積層体となり、断熱材として使用する際の施工性をより向上させることができる。なお、前記の繊維層として積層繊維層を用いる場合、積層繊維層全体の目付を測定することとする。
【0048】
なお、本発明において、前記の繊維層の単位面積当たりの質量(目付)は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.2 単位面積当たりの質量」に準じ、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(i)20cm×25cmの試験片(積層体から測定する場合においては、後述する熱可塑性樹脂層を分離するなどしたもの)を、試料の幅1m当たり3枚採取する。
(ii)標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量る。
(iii)その平均値を1m当たりの質量(g/m)で表する。
【0049】
本発明の積層体において、前記の繊維層の単位面積当たりの質量の、積層体の単位面積当たりの質量に対する比率(以降、単に「繊維層の質量比率」と略記することがある)は、30質量%以上90質量%以下であることが好ましい。この繊維層の質量比率が、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であることにより、前記の積層体中の前記熱可塑性樹脂層同士の接触を防止し、断熱性に優れた積層体とすることができる。一方、前記の繊維層の質量比率が、90質量%以下であることにより、前記の熱可塑性樹脂層の十分な強度を保ち、輻射熱の反射性の低下を防ぐことができる。
【0050】
そして、前記の繊維層は、融着部と非融着部とを有することが好ましい。融着部とは、繊維が繊維層の厚み方向に圧着され、繊維同士が変形して融着している場所を指し、非融着部とはこの融着部以外の箇所を指す。このようにすることにより、柔軟性を保持し、断熱材としての使用において複雑な形状にも追従させることができるとともに、実用に供しうる十分な強度を付与することができ、より施工性に優れた積層体とすることができる。また、融着部と非融着部で見かけ密度が異なるため、表面に凹凸を形成することができ、本発明の積層体を複数枚重ねて断熱材として用いる際に、積層体間の熱伝導を低減させることができる。
【0051】
また、前記の繊維層の厚みは、50μm以上250μm以下であることが好ましい。当該厚みが好ましくは50μm以上、より好ましくは60μm以上、さらに好ましくは80μm以上であることにより、断熱性を向上させ、かつ、取り扱い性にも優れたものとすることができる。一方、当該厚みが好ましくは250μm以下、より好ましくは230μm以下、さらに好ましくは200μm以下であることにより、柔軟性を保持し、断熱材としての使用において複雑な形状にも追従させることができるとともに、薄膜であることにより省スペース化が可能となる。
【0052】
なお、本発明において、繊維層の厚み(mm)は、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。ただし、前記繊維層として積層繊維層を用いる場合、積層繊維層全体の厚みを繊維層の厚みとする。
(i)直径10mmの加圧子(例えば、株式会社テクロック製「SM-114」など)を使用し、荷重10kPaで積層体の幅方向等間隔に1mあたり10点の厚みを0.001mm単位で測定する。
(ii)(i)で得られた値の算術平均値(mm)を求め、小数点以下第四位で四捨五入する。そして、この値をμmに単位変換し、積層体の厚み(μm)とする。
(iii)後述の熱可塑性樹脂層の項に記載の方法により、熱可塑性樹脂層の厚み(μm)を算出する。
(iv)積層体の厚み(μm)と熱可塑性樹脂層の厚み(μm)の差(μm)を算出する。
【0053】
また、繊維層の厚みは、繊維の平均単繊維径、繊維層の目付、および/または、後述する熱接着の条件(接着部の形状、圧着率、温度、および線圧等)などを適切に調整することにより制御することができる。
【0054】
さらに、前記の繊維層の見かけ密度は、0.05g/cm以上0.60g/cm以下であることが好ましい。当該見かけ密度が好ましくは0.05g/cm以上、より好ましくは0.08g/cm以上、さらに好ましくは0.10g/cm以上であることにより、毛羽立ちを抑え、強度や取り扱い性を備えた積層体とすることができる。一方、見かけ密度が好ましくは0.60g/cm以下、より好ましくは0.50g/cm以下、さらに好ましくは0.40g/cm以下であることにより、前記積層体内部の空隙が減少して断熱性が低下したり、前記積層体の柔軟性が損なわれたりすることを防ぐことができる。
【0055】
本発明において、見かけ密度(g/cm)は、上記の四捨五入前の目付と厚みから、次の式に基づいて算出し、小数点以下第三位を四捨五入したものとする
見かけ密度(g/cm)=[目付(g/m)]/[厚み(μm)] 。
【0056】
当該見かけ密度は、繊維の平均単繊維径、前記繊維層の目付、前記繊維層の厚み、および/または、後述する熱接着の条件(接着部の形状、圧着率、温度、および線圧等)などを適切に調整することにより制御することができる。
【0057】
[熱可塑性樹脂層]
本発明の積層体は、前記の繊維層と、金属を含んでなる熱可塑性樹脂層と、を含んでなる。
【0058】
(1)熱可塑性樹脂
前記の熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂を主成分とすることが好ましい。本発明において、「熱可塑性樹脂を主成分とする」とは、当該熱可塑性樹脂の質量割合が60質量%以上であることを指すものとする。当該熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂やポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。
【0059】
また、前記の熱可塑性樹脂は2種以上の混合物であってもよい。ただし、主となる熱可塑性樹脂の特性を十分に発現させるため、混合する他の熱可塑性樹脂の比率は20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0060】
(1-1)ポリエステル系樹脂
前記のポリエステル系樹脂は、酸成分とアルコール成分とを重縮合して得られる高分子重合体や、ラクトンやラクチドの開環重合によって得られる高分子重合体を主成分とする。前記酸成分としては例えば、フタル酸(オルト体)、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸、アジピン酸やセバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、およびシクロヘキサンカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を用いることができる。また、前記アルコール成分としては例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびポリエチレングリコール等を用いることができる。また、前記ラクトンとしては例えば、β-プロピオラクトン、ε-カプロラクトン等を用いることができる。
【0061】
前記のポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)および、これらをベースとした共重合ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0062】
前記のポリエステル系樹脂の融点は、200℃以上であることが好ましい。前記のポリエステル系樹脂の融点が好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上、さらに好ましくは240℃以上であることにより、耐熱性に優れ、蒸着加工に耐えうるフィルムや押出ラミネート等の熱可塑性樹脂層となり、輻射熱の反射性に優れた積層体となる。
【0063】
(1-2)ポリオレフィン系樹脂
一方、前記のポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、および、これらをベースとした共重合ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0064】
ここで、前記のポリエチレン系樹脂とは、繰り返し単位に占めるエチレン単位のモル分率が60モル%~100モル%である樹脂を意味する。このポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体もしくはエチレンと各種α-オレフィンとの共重合体などが挙げられる。
【0065】
前記のポリエチレン系樹脂の融点は、100℃以上であることが好ましい。当該融点が好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上であることにより、耐熱性に優れ、蒸着加工に耐えうるフィルムや押出ラミネート等の熱可塑性樹脂層となり、輻射熱の反射性に優れた積層体となる。
【0066】
また、前記のポリプロピレン系樹脂とは、繰り返し単位に占めるプロピレン単位のモル分率が60モル%~100モル%である樹脂を意味する。前記ポリプロピレン系樹脂としては例えば、プロピレンの単独重合体もしくはプロピレンとエチレン、各種α-オレフィンとの共重合体などが挙げられる。
【0067】
前記のポリプロピレン系樹脂の融点は、120℃以上であることが好ましい。当該融点を好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは140℃以上とすることにより、耐熱性に優れ、蒸着加工に耐えうるフィルムや押出ラミネート等の熱可塑性樹脂層となり、輻射熱の反射性に優れた積層体となる。
【0068】
(1-3)ポリアミド系樹脂
また、前記のポリアミド系樹脂は、3員環以上のラクタムの開環重合や重合可能なω-アミノ酸、二塩基酸とジアミンなどの重縮合によって得られる、鎖中に酸アミド結合を有する高分子重合体が60質量%以上を占める樹脂を意味する。この3員環以上のラクタムとしては、α-ピロリドン、α-ピペリドン、ε-カプロラクタム、エナントラクタム等を用いることができる。また、前記ω―アミノ酸としては、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸等を用いることができる。また、前記二塩基酸にはテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二塩基酸、グルタール酸等を、前記ジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシレンジアミンなどのジアミンを用いることができる。
【0069】
前記のポリアミド系樹脂の具体例としては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド7、ポリアミド8、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド6・11、ポリアミド6・12、ポリアミド6T、ポリアミド6/6・6、ポリアミド6/12、ポリアミド6/6T、ポリアミド6I/6T等が挙げられる。
【0070】
前記ポリアミド系樹脂の融点は、200℃以上であることが好ましい。前記ポリアミド系樹脂の融点が好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上、さらに好ましくは240℃以上であることにより、耐熱性に優れ、蒸着加工に耐えうるフィルムや押出ラミネート等の熱可塑性樹脂層となり、輻射熱の反射性に優れた積層体となる。
【0071】
(2)熱可塑性樹脂層
本発明の積層体は、金属を含んでなる熱可塑性樹脂層を含んでなる。この熱可塑性樹脂層の具体的な態様としては、前記の熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムや押出ラミネートが挙げられる。ここで、「前記の熱可塑性樹脂を主成分とする」とは、熱可塑性樹脂層全体に対して、当該熱可塑性樹脂が60質量%以上を占めることを意味する。
【0072】
そして、この熱可塑性樹脂層としては、前記のように金属を含有した熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂層、表面が金属層により被覆されてなる熱可塑性樹脂層からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。なかでも、輻射熱の反射性に優れることから、前記熱可塑性樹脂層は表面が金属層により被覆されてなる熱可塑性樹脂層であることが好ましい。
【0073】
また、前記の熱可塑性樹脂層として表面が金属層により被覆されてなるフィルムを用いる場合、このフィルムは無孔フィルムであっても微多孔フィルムであってもよい。
【0074】
前記の金属層には、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、金、銀、クロム、白金、ニッケル等を含む金属を用いることができる。なかでも、取り扱いが容易であり、かつ、輻射熱の反射性に優れることから、アルミニウムを含む金属であることが好ましい。
【0075】
この金属層がアルミニウムを含む場合、アルミニウムの含有率としては、10質量%以上であることが好ましい。アルミニウムの含有率が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは70質量%以上、最も好ましくは90質量%以上であることにより、輻射熱の反射性を向上させることができる。
【0076】
前記の金属層の厚みは、10nm以上300nm以下であることが好ましい。前記金属層の厚みが、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは100nm以上であることにより、輻射熱の反射性に優れた積層体となる。一方、金属層の厚みが、好ましくは300nm以下、より好ましくは250nm以下、さらに好ましくは200nm以下であることにより、柔軟性を保持し、断熱材としての使用において複雑な形状に対しても追従性に優れた積層体となる。
【0077】
なお、前記の金属層の厚みは、以下の方法によって測定、算出される値を採用するものとする。
(1)積層体からランダムに小片サンプル(10mm×10mm)を10個採取し、それぞれの小片サンプルからヨコ方向の断面サンプルを切り出す。
(2)透過型電子顕微鏡(TEM、例えば、日本電子株式会社製「JEM-F200」など)で、試験片の断面を観察し、各サンプルから5か所ずつ、計50か所の金属層の厚み(nm)を測定する。
(3)測定した50か所の金属層の厚みの値を平均し、小数点以下第一位を四捨五入して金属層の厚み(nm)とする。
【0078】
また、金属層の厚みは、蒸着加工やスパッタリング加工などの金属層形成加工の条件(時間、真空度、処理強度)などを適切に調整することにより制御することができる。
【0079】
前記の熱可塑性樹脂層の厚みは、1μm以上50μm以下であることが好ましい。当該厚みが好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上であることにより、積層体の強度が向上し、取り扱い性に優れた積層体とすることができる。一方、当該厚みが好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下であることにより、柔軟性を保持し、断熱材としての使用において複雑な形状に対しても追従性に優れた積層体となり、断熱材として使用する際の施工性をより向上させるとともに、薄膜であることにより省スペース化が可能となる。
【0080】
なお、前記の熱可塑性樹脂層の厚み(μm)は、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(i)積層体からランダムに小片サンプル(10mm×10mm)を10個採取し、それぞれの小片サンプルからヨコ方向の断面サンプルを切り出す。
(ii)走査型電子顕微鏡(SEM、例えば、株式会社キーエンス製「VHX-D500」など)、または、透過型電子顕微鏡(TEM、例えば、日本電子株式会社製「JEM-F200」など)で、試験片の断面を観察し、各サンプルから5か所ずつ、計50か所の熱可塑性樹脂層の厚み(μm)を測定する。
(iii)測定した50か所の熱可塑性樹脂層の厚みの値を平均し、小数点以下第一位を四捨五入して熱可塑性樹脂層の厚み(μm)とする。
【0081】
前記の熱可塑性樹脂層の単位面積当たりの質量は、1g/m以上30g/m以下であることが好ましい。当該目付が好ましくは1g/m以上、より好ましくは3g/m以上、さらに好ましくは5g/m以上であることにより、実用に供し得る十分な強度を有する積層体とすることができる。一方、当該目付が好ましくは30g/m以下、より好ましくは25g/m以下、さらに好ましくは20g/m以下であることにより、柔軟性を保持し、複雑な形状に対しても追従性に優れた積層体となり、断熱材として使用する際の施工性をより向上させることができる。
【0082】
なお、本発明において、前記の熱可塑性樹脂層の単位面積当たりの質量(目付)は、前記の繊維層の単位面積当たりの質量(目付)と同様の方法(積層体から測定する場合においては、繊維層を分離するなどして測定する)で測定される値を採用するものとする。
【0083】
[積層体]
本発明の積層体は、前記の繊維層と、前記の熱可塑性樹脂層と、を含んでなる積層体である。本発明の積層体は、複数の前記の繊維層あるいは複数の前記の熱可塑性樹脂層を含んでよい。そして、この積層体が前記の繊維層と前記の熱可塑性樹脂層とを貫通する貫通孔を有する。この貫通孔とは、熱可塑性樹脂層が有する孔(以後、開口とする)であって、かつ、当該孔がその熱可塑性樹脂層だけでなく、繊維層にも貫通している(熱可塑性樹脂層の孔の位置と繊維層の孔の位置とが一致する)もののことをいう。積層体全体の開口のうち、貫通孔の割合が30%以上であることが好ましい。また、前記の開口の内部に、孔を開けた際に生じた熱可塑性樹脂層の欠片が残存していてもよい。前記の貫通孔は、規則的に配列されていてもよく、不規則に配列されていてもよい。なかでも、通気性と断熱性のばらつきを抑制するため、貫通孔は規則的に配列されていることがより好ましい。
【0084】
前記の貫通孔の直径は、100μm以上2000μm以下であることが好ましい。貫通孔の直径が好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上、さらに好ましくは300μm以上であることにより、積層体に一定の通気量を付与する際に、孔数が多くなりすぎず、断熱性に優れた積層体とすることができる。また、貫通孔の直径が好ましくは2000μm以下、より好ましくは1000μm以下、さらに好ましくは800μm以下であることにより、積層体に一定の通気量を付与する際に、孔が分散され、断熱性が低下することを防ぐことができる。
【0085】
なお、前記の貫通孔の直径は、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(i)積層体からランダムに小片サンプル(50mm×50mm)を10個採取する。
(ii)マイクロスコープ(例えば、株式会社キーエンス製「VW-9000」など)、または、走査型電子顕微鏡(SEM、例えば、株式会社キーエンス製「VHX-D500」など)を用いて10~50倍の倍率で、各サンプルから5個ずつ、計50個の貫通孔が写るように写真を撮影する。
(iii)貫通孔の直径を測定して、それらを平均し、小数点以下第一位を四捨五入して、貫通孔の直径(μm)とする。なお、貫通孔の形状が正円ではない場合は、孔の面積が等しい正円の直径を求め、貫通孔の直径とする。
【0086】
前記の積層体における前記貫通孔の開口率は、0.05%以上9.00%以下であることが好ましい。貫通孔の開口率が、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.10%以上であることにより、通気性に優れた積層体となり、断熱材としての使用において減圧にかかる時間を短縮することができる。また、貫通孔の開口率が、好ましくは9.00%以下、より好ましくは7.00%以下、さらに好ましくは5.00%以下であることにより、断熱性が低下することを防ぐことができる。
【0087】
なお、貫通孔が規則的に配列されている場合には、前記の貫通孔の開口率は、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。ただし、ここでいう「規則的に配置されている場合」とは、隣接する孔の間隔が一定である場合や、繰り返しパターンを含む形態であることを言い、そうでない場合を「貫通孔が不規則に配列されている場合」とする。
(i)積層体からランダムに小片サンプル(50mm×50mm)10個を採取する。
(ii)マイクロスコープ(例えば、株式会社キーエンス製「VW-9000」など)、または、走査型電子顕微鏡(SEM、例えば、株式会社キーエンス製「VHX-D500」など)を用いて10~50倍の倍率で、各サンプルから1枚ずつ、1枚の写真の中に少なくとも貫通孔の繰り返しパターンが1つ以上含まれるように計10枚の写真を撮影する。ただし、貫通孔の間の距離が長い場合には、繰り返しパターンが含まれていなくても良いものとする。
(iii)各写真から貫通孔の面積と貫通孔の繰り返しパターンの最小単位の面積を求め、それらを平均する。その後、下記式を用いて開口率(%)を算出し、小数点以下第三位を四捨五入する。なお、貫通孔の間の距離が長い場合には、定規を用いて貫通孔の間の距離を測定しても良い
開口率(%)=(貫通孔の面積)×(繰り返しパターンの最小単位に含まれる貫通孔の個数)/(繰り返しパターンの最小単位の面積)×100 。
【0088】
一方、貫通孔が不規則に配列されている場合には、前記の貫通孔の開口率は、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(i)積層体からランダムに小片サンプル(50mm×50mm)10個を採取する。
(ii)マイクロスコープ(例えば、株式会社キーエンス製「VW-9000」など)、または、走査型電子顕微鏡(SEM、例えば、株式会社キーエンス製「VHX-D500」など)、を用いて10~50倍の倍率で、各サンプルから1枚ずつ、1枚の写真の中に少なくとも1個以上の貫通孔が入るように計10枚の写真を撮影する。
(iii)各写真から貫通孔の面積を求め、それらを平均する。
(iv)10個のサンプル(総面積:50mm×50mm×10個=2500mm)に含まれる貫通孔の総数を数え、下記式を用いて算出した開口率を平均し、小数点以下第三位を四捨五入する
開口率(%)=(貫通孔の平均面積(mm))×(貫通孔の総数)/2500mm×100 。
【0089】
また、本発明の積層体は、前記の繊維層の厚みの、前記熱可塑性樹脂層の厚みに対する比(以降、単に「厚み比」と略記することがある。)は、5以上40以下であることが好ましい。ここで、前記の繊維層、および/または、前記の熱可塑性樹脂層が複数ある場合、前記の厚み比は、全ての繊維層の厚みの合計の、全ての熱可塑性樹脂層の厚みの合計に対する比を指すものとする。前記の厚み比が好ましくは5以上、より好ましくは6以上、さらに好ましくは7以上であることにより、積層体を複数枚重ねて断熱材として使用する際に、隣接する積層体における熱可塑性樹脂間の距離を十分に確保して、熱伝導を抑制することにより、断熱性に優れた積層体とすることができる。一方、前記の厚み比が好ましくは40以下、より好ましくは35以下、より好ましくは30以下であることにより、柔軟性を保持し、断熱材としての使用において複雑な形状に対しても追従性に優れた積層体となり、断熱材として使用する際の施工性をより向上させるとともに、所定のスペースにより多くの枚数の積層体を配置することができるため、断熱性を向上させることができる。
【0090】
さらに、本発明の積層体は、その見かけ密度が0.10g/cm以上0.35g/cm以下である。上記の見かけ密度の範囲について、その下限が0.10g/cm以上、好ましくは0.15g/cm以上であることにより、実用に供し得る十分な強度を有する積層体となる。一方、上記の見かけ密度の範囲について、その上限が0.35g/cm以下、好ましくは0.30g/cm、より好ましくは0.25g/cmであることにより、熱伝導を抑制し、断熱性に優れた積層体となる。
【0091】
なお、本発明において、積層体の見かけ密度とは、以下の式によって算出される値の小数点以下第三位を四捨五入して得られる値を指すものとする
見かけ密度(g/cm)=目付(g/m)÷厚み(μm)
ここで、上記の厚みは、「繊維層の厚み」の測定方法の(i)、(ii)によって求められる積層体の厚み(μm)であり、目付は、後述する方法によって測定、算出される積層体の目付のことを指す。
【0092】
そして、前記の積層体の単位面積当たりの質量(目付)は、10g/m以上60g/m以下であることが好ましい。単位面積当たりの質量が好ましくは10g/m以上、より好ましくは15g/m以上、さらに好ましくは20g/m以上であることにより、実用に供し得る十分な強度を有する積層体となる。一方、単位面積当たりの質量が好ましくは60g/m以下、より好ましくは50g/m以下、さらに好ましくは40g/m以下であることにより、柔軟性を保持し、断熱材としての使用において複雑な形状にも追従させることができる積層体となる。
【0093】
なお、本発明において、前記の積層体の単位面積当たりの質量(目付)は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.2 単位面積当たりの質量」に準じ、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(i)20cm×25cmの試験片を、試料の幅1m当たり3枚採取する。
(ii)標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量る。
(iii)その平均値を1m当たりの質量(g/m)で表する。
【0094】
また、前記の積層体は、通気量が1.0cm/(cm・秒)以上であることが好ましい。通気量が好ましくは1.0cm/(cm・秒)以上、より好ましくは2.0cm/(cm・秒)以上、さらに好ましくは3.0cm/(cm・秒)以上であることにより、積層体を断熱材として使用する際、減圧にかかる時間を短縮することができる。一方、通気量が好ましくは50.0cm/(cm・秒)以下、より好ましくは40.0cm/(cm・秒)以下、さらに好ましくは30.0cm/(cm・秒)以下であることにより、積層体全体が緻密化して、本発明の積層体を複数枚重ねて断熱材として使用する際に、断熱性が低下することを防ぐことができる。
【0095】
なお、前記積層体の通気量は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.8.1 フラジール形法」に準じ、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(1)積層体から幅150mm×150mmの試験片を幅方向に1m当たり3枚採取する。
(2)通気性試験機(例えば、TEXTEST社製「FX3300-IV」など)を用いて、気圧計の圧力125Paで、各試験片を通過する通気量(cm/(cm・秒))を測定する。
(3)すべての試験片の測定値を平均し、小数点以下第二位を四捨五入する。
【0096】
また、通気量は、前記繊維層の平均単繊維径、目付、見かけ密度、および/または、後述する熱接着の条件(接着部の形状、圧着率、温度、および線圧等)などを適切に調整することにより制御することができる。
【0097】
そして、本発明の積層体は、以下のいずれかの実施態様であることが好ましい。
(実施態様1)
積層体の一方の最外層が前記の繊維層であり、該繊維層側の最外層の算術平均粗さRaが3.0μm以上30.0μm以下である、前記の積層体。
(実施態様2)
積層体の一方の最外層が前記の熱可塑性樹脂層であり、該熱可塑性樹脂層側の最外層の算術平均粗さRaが0.01μm以上3.00μm未満である、前記の積層体。
(実施態様3)
積層体の一方の最外層が前記の繊維層であり、該繊維層側の最外層の算術平均粗さRaが3.0μm以上30.0μm以下であって、積層体の他方の最外層が前記の熱可塑性樹脂層であり、該熱可塑性樹脂層側の最外層の算術平均粗さRaが0.01μm以上3.00μm未満である、前記の積層体。
これらについて、その詳細をさらに説明する。
【0098】
(実施態様1)
本実施態様は、まず、積層体の一方の最外層が前記の繊維層である。このようにすることで、断熱材として使用する際に、繊維間に空隙を有することで断熱性能に優れる積層体とすることができる。
【0099】
さらに、この場合において、この繊維層側の最外層の算術平均粗さRaが3.0μm以上30.0μm以下であることが好ましい。この算術平均粗さRaの範囲について、その下限が好ましくは3.00μm以上、より好ましくは5.00μm以上、さらに好ましくは8.00μm以上であることより、積層体を複数枚重ねて断熱材として使用する際に、積層体間の接触面積を減らすことができるため、より断熱性能を向上させることができる。一方、前記の算術平均粗さRaの範囲について、その上限が好ましくは30.00μm以下、より好ましくは25.00μm以下、さらに好ましくは20.00μm以下であることにより、平均単繊維径が極端に太径であることや、見かけ密度が極端に低密度であることを防ぎ、強度を保った積層体とすることができる。
【0100】
なお、本発明において、最外層の算術平均粗さRaは、前記の繊維層側だけではなく前記の熱可塑性樹脂側も、JIS B0601:2013「製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-用語、定義及び表面性状パラメータ」の「4.2.1輪郭曲線の算術平均高さ」に準じ、以下のように測定される値を採用するものとする。
(i)積層体から幅100mm×100mmの試験片を、積層体の幅方向等間隔に1m当たり10枚採取する。
(ii)試験片を試料台にセットし、表面粗さ測定器(例えば、株式会社ミツトヨ製小型表面粗さ測定器「SURFTEST SJ-210」など)を用いて、タテ方向(積層体の長手方向、すなわちMD方向)とヨコ方向(積層体の幅方向、すなわちCD方向)の輪郭曲線を、積層体の当該最外層の表面について測定し、算術平均粗さRa(μm)を算出する。ただし、測定時に検出器の針が貫通孔上を通過しないように測定するものとする。
(iii)全ての試験片の測定値を平均して小数点以下第二位を四捨五入する。
【0101】
さらに、積層体の一方の最外層が前記の繊維層である場合において、その最外層となる繊維層(以下、「第1の繊維層」とも呼ぶ。)を構成する繊維の平均単繊維径が6.0μm以上30.0μm以下であることが好ましい。前記第1の繊維層の平均単繊維径の範囲について、その下限が好ましくは6.0μm以上、より好ましくは8.0μm以上、さらに好ましくは10.0μm以上、特に好ましくは12.0μm以上であることにより、単位面積当たりの繊維の本数が少なくなり、積層体を複数枚重ねて断熱材として使用する際には、前記積層体間の接触面積を減らすことができる。また、前記繊維層の内部の空隙を広げることができるようになるため、前記積層体に適度な通気性を付与することができる。一方、前記第1の繊維層の繊維の平均単繊維径が好ましくは30.0μm以下、より好ましくは26.0μm以下、さらに好ましくは22.0μm以下、特に好ましくは18.0μm以下であることにより、前記繊維層の均一性を向上させることができるため、断熱材として用いた際に、断熱性能の均一な積層体となる。
【0102】
なお、前記の第1の繊維層の繊維の平均単繊維径(μm)は、以下の手順によって算出される値を採用するものとする。
(i)積層体からランダムに小片サンプル(100×100mm)を10個採取する。
(ii)マイクロスコープ(例えば、キーエンス社製「VW-9000」など)または走査型電子顕微鏡(例えば、キーエンス社製「VHX-D500」など)で1000倍~5000倍の前記第1の繊維層の表面写真を撮影する。各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維の幅(直径)を測定する。なお、後述する熱圧着等により繊維が潰れている箇所は避けて測定することとする。また、繊維の断面が異形の場合には、断面写真から繊維の断面積を測定し、同一の断面積を有する正円の直径を求める。
(iii)測定した100本の直径の値の平均し、小数点以下第二位を四捨五入する。
【0103】
そして、この態様において、本発明の積層体の均一性を向上させたり、前記第1の繊維層と前記の熱可塑性樹脂層との接着性を向上させたりするために、前記第1の繊維層と前記熱可塑性樹脂層との間に、前記の第1の繊維層の繊維よりも細い繊維径の繊維により構成される別の繊維層(以降、第2の繊維層と呼ぶ)を設けることも、好ましい態様である。
【0104】
第1の繊維層の好ましい態様として不織布を用いる場合、第2の繊維層を構成する不織布としては、生産性や均一性に優れることから、メルトブロー法により得られるメルトブロー不織布が好ましい。
【0105】
この第2の繊維層を構成する繊維の平均単繊維径は、0.1μm以上6.0μm未満であることが好ましい。当該繊維の平均単繊維径が好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは0.7μm以上であることにより、生産性に優れ、かつ、適度な通気性を有する積層体となる。一方、当該繊維の平均単繊維径が好ましくは6.0μm未満、より好ましくは5.0μm以下、さらに好ましくは4.0μm以下、特に好ましくは3.0μm以下であることにより、積層体の均一性を向上させ、熱可塑性樹脂層の表面に凹凸が発生して輻射熱の反射性が低下することを防ぐことができる。
【0106】
前記第2の繊維層の不織布を構成する繊維の平均単繊維径(μm)は、本発明の積層体から第1の繊維層、および/または、熱可塑性樹脂層を剥離した上で、前記の第1の繊維層の繊維の平均単繊維径(μm)と同様の手順によって算出される値を採用するものとする。
【0107】
(実施態様2)
本実施態様は、まず、積層体の一方の最外層が前記の熱可塑性樹脂層である。このようにすることで、輻射熱の反射性に優れた積層体とすることができる。
【0108】
さらに、この場合において、この熱可塑性樹脂層側の最外層の算術平均粗さRaが0.01μm以上3.00μm未満であることが好ましい。当該算術平均粗さRaが好ましくは3.00μm以下、より好ましくは2.00μm以下、さらに好ましくは1.00μm以下であることにより、熱可塑性樹脂層の表面積が低下することで後述の金属層による被覆効率が向上し、輻射熱の反射性に優れた積層体となる。一方、当該算術平均粗さRaが好ましくは0.01μm以上より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.10μm以上であることより、前記の積層体を複数枚重ねて断熱材として使用する際に、前記積層体間の接触面積を減らし、断熱性に優れた積層体となる。
【0109】
さらに、最外層の熱可塑性樹脂層が、表面が金属層により被覆されてなる熱可塑性樹脂層であることが好ましい。このことにより、輻射熱の反射性に優れる積層体となる。
【0110】
(実施態様3)
本実施態様は実施態様1と実施態様2とが同時に実施される態様である。
【0111】
さらに、この場合において、繊維層側の最外層の算術平均粗さRaと熱可塑性樹脂層側の最外層の算術平均粗さRaの比率が2以上3000未満であることが好ましい。このことにより、前記の積層体を複数枚重ねて断熱材として使用する際に、断熱性に優れ、かつ、輻射熱の反射性に優れた積層体となる。
【0112】
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法について、その好ましい態様を説明する。
【0113】
(繊維層の形成)
ここでは、繊維層がスパンボンド不織布層である場合の繊維層の形成方法を例にとって、具体的に説明する。
【0114】
スパンボンド不織布層は、スパンボンド法により製造される長繊維不織布の層である。スパンボンド法は、生産性や機械的強度に優れている他、短繊維不織布で起こりやすい毛羽立ちや繊維の脱落を抑制することができる。
【0115】
スパンボンド法では、まず熱可塑性樹脂を押出機において溶融し、計量して紡糸口金へと供給し、長繊維として紡出する。熱可塑性樹脂を溶融して紡糸する際の紡糸温度は、熱可塑性樹脂の融点Tm(℃)に対し、(Tm+20)℃~(Tm+90)℃であることが好ましく、より好ましくは(Tm+30)℃~(Tm+80)℃であり、さらに好ましくは(Tm+40)℃~(Tm+70)℃である。このようにすることにより、安定した溶融状態とし、優れた紡糸安定性を得ることができる。
【0116】
次に、紡出された長繊維をエジェクターで吸引する。前記紡糸口金や前記エジェクターの形状は特に制限されないが、例えば、丸形や矩形等、種々の形状のものを採用することができる。なかでも、圧縮エアの使用量が比較的少なくエネルギーコストに優れること、糸条同士の融着や擦過が起こりにくく、糸条の開繊も容易であることから、矩形口金と矩形エジェクターの組み合わせが好ましく用いられる。
【0117】
そして、紡出された長繊維の糸条は、次に冷却される。紡出された糸条を冷却する方法としては、例えば、冷風を強制的に糸条に吹き付ける方法、糸条周りの雰囲気温度で自然冷却する方法、および前記紡糸口金と前記エジェクター間の距離を調整する方法等が挙げられる。また、これらの方法を組み合わせる方法を採用することもできる。また、冷却条件は、前記紡糸口金の単孔あたりの吐出量、紡糸温度および雰囲気温度等を考慮して採用することができる。
【0118】
さらに、冷却固化された糸条は、エジェクターから噴射される圧縮エアによって牽引され、延伸される。
【0119】
紡糸速度は、3000m/分~6000m/分であることが好ましく、より好ましくは3500m/分~5500m/分であり、さらに好ましくは4000m/分~5000m/分である。紡糸速度を3000m/分~6000m/分とすることにより、高い生産性を有することになり、また繊維の配向結晶化が進み、高強度の長繊維を得ることができる。
【0120】
続いて、延伸された長繊維を、移動するネット上に捕集して不織繊維ウェブを得る。
【0121】
前記不織繊維ウェブに対して、ネット上でその片面から熱フラットロールを当接して仮接着させることも好ましい。このようにすることにより、ネット上を搬送中に不織繊維ウェブの表層がめくれたり吹き流れたりして地合が悪化することを防いだり、糸条を捕集してから熱圧着するまでの搬送性を改善することができる。
【0122】
加えて、得られた不織繊維ウェブを、融着させることにより融着部を形成させ、所望のスパンボンド不織布層を得ることができる。
【0123】
不織繊維ウェブを融着させる方法は特に制限されないが、例えば、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロール、および上下一対のフラット(平滑)ロールの組み合わせからなる熱カレンダーロールなど、各種ロールにより熱融着させる方法、ホーンの超音波振動により熱融着させる方法、および不織繊維ウェブに熱風を貫通させて芯鞘型複合繊維の表面を軟化または融解させ、繊維交点同士を熱融着させるなどの方法が挙げられる。
【0124】
なかでも、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、または片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロールを用いることが好ましい。このようにすることで、生産性良く、スパンボンド不織布層の強度を向上させる融着部と、柔軟性や通気性を向上させる非融着部と、を設けることができる。
【0125】
熱エンボスロールの表面材質としては、十分な熱圧着効果を得て、かつ片方のエンボスロールの彫刻(凹凸部)が他方のロール表面に転写することを防ぐため、金属製ロールと金属製ロールを対にすることが好ましい。
【0126】
このような熱エンボスロールによるエンボス接着面積率は、5~30面積%であることが好ましい。接着面積を好ましくは5面積%以上、より好ましくは8面積%以上、さらに好ましくは10面積%以上とすることにより、実用に供し得る強度を得ることができる。一方、接着面積を好ましくは30面積%以下、より好ましくは25%面積以下、さらに好ましくは20面積%以下とすることにより、柔軟性や柔軟性が損なわれることを防ぐことができる。超音波接着を用いる場合でも、接着面積率は同様の範囲であることが好ましい。
【0127】
ここでいう接着面積とは、接着部がスパンボンド不織布層全体に占める割合のことを言う。具体的には、一対の凹凸を有するロールにより熱接着する場合は、上側ロールの凸部と下側ロールの凸部とが重なって不織繊維ウェブに当接する部分(接着部)のスパンボンド不織布層全体に占める割合のことを言う。また、凹凸を有するロールとフラットロールにより熱接着する場合は、凹凸を有するロールの凸部が不織繊維ウェブに当接する部分(接着部)のスパンボンド不織布層全体に占める割合のことを言う。また、超音波接着する場合は、超音波加工により熱溶着させる部分(接着部)のスパンボンド不織布層全体に占める割合のことを言う。熱接着時に接着部に十分な熱が加わり、接着部の繊維全体が融着している場合、接着部と融着部の面積は等しいと見なすことができる。
【0128】
熱エンボスロールや超音波接着による接着部の形状は特に制限されないが、例えば、円形、楕円形、正方形、長方形、平行四辺形、ひし形、正六角形および正八角形などを用いることができる。また接着部は、スパンボンド不織布層の長手方向(搬送方向)と幅方向にそれぞれ一定の間隔で均一に存在していることが好ましい。このようにすることにより、スパンボンド不織布層の強度のばらつきを低減することができる。
【0129】
熱接着時の熱エンボスロールの表面温度は、使用している熱可塑性樹脂の融点Tm(℃)に対し、(Tm-30)℃~(Tm+10)℃とすることが好ましい。熱ロールの表面温度を、好ましくは(Tm-30)℃以上、より好ましくは(Tm-20)℃以上、さらに好ましくは(Tm-10)℃以上とすることにより、強固に熱接着させ実用に供しうる強度のスパンボンド不織布層を得ることができる。また、熱エンボスロールの表面温度を、好ましくは(Tm+10)℃以下、より好ましくは(Tm+5)℃以下、さらに好ましくはTm(℃)以下とすることにより、過度な熱接着を抑制し、強度と柔軟性に優れたスパンボンド不織布層とするとともに、不織繊維ウェブが熱エンボスロールに巻き付くトラブルを防ぐことができる。
【0130】
熱接着時の熱エンボスロールの線圧は、50N/cm~500N/cmとすることが好ましい。ロールの線圧を好ましくは50N/cm以上、より好ましくは100N/cm以上、さらに好ましくは150N/cm以上とすることにより、強固に熱接着させ実用に供しうる強度のスパンボンド不織布層を得ることができる。一方、熱エンボスロールの線圧を好ましくは500N/cm以下、より好ましくは400N/cm以下、さらに好ましくは300N/cm以下とすることにより、過度な接着を抑制し、強度と柔軟性に優れたスパンボンド不織布層とすることができる。
【0131】
また、捕集したスパンボンド不織繊維ウェブあるいは熱接着したスパンボンド不織布層を、2層、3層あるいは4層と複数層積層することにより、生産性や地合均一性をより向上させることができる。なお、本発明に係る積層体において、スパンボンド不織布層が複数層連続して積層される場合には、これらスパンボンド不織布層は1層のスパンボンド不織布層であると見なすこととする。
【0132】
また、本発明では、スパンボンド不織布層の厚みを調整することを目的に、上記の熱エンボスロールによる熱接着の前および/あるいは後に、上下一対のフラットロールからなる熱カレンダーロールにより熱圧着を施すことができる。上下一対のフラットロールとは、ロールの表面に凹凸のない金属製ロールや弾性ロールのことであり、金属製ロールと金属製ロールを対にしたり、金属製ロールと弾性ロールを対にしたりして用いることができる。
【0133】
また、ここで弾性ロールとは、金属製ロールと比較して弾性を有する材質からなるロールのことである。弾性ロールとしては、例えば、ペーパー、コットンおよびアラミドペーパー等のいわゆるペーパーロールや、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂および硬質ゴム、およびこれらの混合物からなる樹脂製のロールなどが挙げられる。
【0134】
次に、本発明の好ましい態様として、第1の繊維層が上記のスパンボンド不織布層、さらに、第2の繊維層がメルトブロー不織布層である場合の製造方法について、具体的に説明する。
【0135】
メルトブロー不織布層は、メルトブロー法により製造される長繊維不織布である。メルトブロー法は、生産性に優れ、数μmレベルの細繊維を容易に得ることができる。
【0136】
メルトブロー法では、溶融した熱可塑性樹脂を紡糸口金から吐出させて糸条を形成する。その吐出された直後の糸条に対して一定の角度から、加熱された空気など(以下、単に熱風と記載することがある)を噴射することで糸条を細径化し、その糸条を捕集部に堆積させることでメルトブロー不織布層を形成する。
【0137】
本発明においては、熱可塑性樹脂を押出機において溶融し、計量して紡糸口金へと供給し、長繊維として紡出する。熱可塑性樹脂を溶融して紡糸する際の紡糸温度は、熱可塑性樹脂の融点Tm(℃)に対し、(Tm+40)℃~(Tm+160)℃であることが好ましく、より好ましくは(Tm+60)℃~(Tm+140)℃、さらに好ましくは(Tm+80)℃~(Tm+120)℃である。このようにすることにより、安定した溶融状態とし、繊維を均一に細径化することができる。
【0138】
吐出された直後の糸条に吹き付ける熱風の温度は、熱可塑性樹脂の融点Tm(℃)に対し、(Tm+50)℃~(Tm+170)℃であることが好ましく、より好ましくは(Tm+70)℃~(Tm+150)℃、さらに好ましくは(Tm+90)℃~(Tm+130)℃である。このようにすることにより、安定した溶融状態とし、繊維を均一に細径化することができる。
【0139】
吐出された直後の糸条に前記熱風を吹き付ける角度は、糸条の進行方向に対して、30°~45°であることが好ましい。このようにすることにより、繊維を均一に細径化することができる。
【0140】
第1の繊維層であるスパンボンド不織布と、第2の繊維層であるメルトブロー不織布とを貼り合わせる方法としては、2層を直接、または、バインダー樹脂やホットメルト樹脂などを用いて熱ラミネートする方法や、ゴム系等の接着剤を用いて貼り合わせる方法を採用することができる。
【0141】
また、前述の製造方法により捕集したスパンボンド不織繊維ウェブ、または、スパンボンド不織繊維ウェブに融着部を形成させることにより得たスパンボンド不織布層の上に、メルトブロー不織ウェブを直接捕集することもできる。このようにすることにより、後からスパンボンド不織布層(第1の繊維層)とメルトブロー不織布層(第2の繊維層)とを積層する工程を省略し、製造工程を簡略化することができる。
【0142】
(熱可塑性樹脂層の形成、積層体の形成)
ここでは、積層体の好ましい態様として、前記熱可塑性樹脂層が、表面が金属層により被覆されてなるフィルムまたは押出ラミネートである場合の製造方法について、具体的に説明する。
【0143】
本発明の積層体において、前記の繊維層と前記の熱可塑性樹脂層とを積層する際、繊維層と熱可塑性樹脂層とを熱融着させる工程を含むことが好ましい。
【0144】
前記の繊維層と前記の熱可塑性樹脂層とを熱融着させる方法としては、加熱した突起物をこれらに貫通させることによって繊維層と熱可塑性樹脂層とを熱融着させる方法、繊維層と熱可塑性樹脂層とを重ねて加圧しながら加熱することによって熱融着させる方法、または、繊維層と熱可塑性樹脂層との間にバインダー樹脂やホットメルト樹脂を挟んで加熱することによりバインダー樹脂やホットメルト樹脂を介して熱融着させる方法、繊維層と熱可塑性樹脂層とを低融点の熱可塑性樹脂を用いて押出ラミネートする方法等を採用することができる。なかでも、加熱した突起物を貫通させることによって繊維層と熱可塑性樹脂層とを熱融着させる方法は、積層後に貫通孔を開ける工程を省略し、製造工程を簡略化することができ、また、積層体を断熱材として用いる真空または低圧力環境下において、揮発性物質の発生が抑えられるため好ましい。
【0145】
加熱した突起物を貫通させることによって前記の繊維層と前記の熱可塑性樹脂層とを熱融着させる方法を用いる場合、生じる貫通孔の直径が100μm以上2000μm以下であり、貫通孔の開口率が0.05%以上9.00%以下となるようにすることが好ましい。貫通孔の開口率を、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.10%以上とし、貫通孔の直径を好ましくは2000μm以下、より好ましくは1000μm以下、さらに好ましくは800μm以下とすることにより、適度な接合点の数を保ち、接合時にシワの発生を抑制することができる。
【0146】
前記の繊維層と前記の熱可塑性樹脂層を積層する方法として、熱融着させる方法の他には、ゴム系等の接着剤を用いて貼り合わせる方法等を採用することができる。
【0147】
前記の繊維層と前記の熱可塑性樹脂層を積層した段階で貫通孔を有していない場合には、積層後に貫通孔を開ける工程を含む。貫通孔を開ける方法としては、常温、または、加熱した突起物を貫通させて貫通孔を開ける方法や、レーザー等を用いて貫通孔を開ける方法等を採用することができる。
【0148】
前記の繊維層と熱可塑性樹脂層との間に挟まれるバインダー樹脂としては、特に限定されないが、有機成分を主体とする樹脂が好ましく、例えばポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、アイオノマー樹脂、シリコン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、あるいは2種以上の共重合体もしくは混合物としたものを用いてもよい。また、前記の繊維層と熱可塑性樹脂層との間に挟まれるゴム系の接着剤としては、特に限定されないが、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム等の合成ゴム、イソプレンゴム等の天然ゴムを含む接着剤などが挙げられる。また、前記のバインダー樹脂や前記のゴム系の接着剤を支持体の両面に備える両面テープや接着シートなどを用いてもよい。なお、バインダー樹脂やゴム系接着剤は、積層体を断熱材として用いる真空または低圧力環境下において、揮発性物質の発生が少ないものが好ましい。
【0149】
また、バインダー樹脂やホットメルト樹脂の単位面積あたりの付着量は、0.1g/m以上10g/m以下であることが好ましい。単位面積あたりの付着量を、好ましくは0.1g/m以上、より好ましくは0.5g/m以上、さらに好ましくは1.0g/m以上とすることにより、繊維層と熱可塑性樹脂層を強固に熱接着させることができる。また、単位面積あたりの付着量を、好ましくは10.0g/m以下、より好ましくは5.0g/m以下、さらに好ましくは3.0g/m以下とすることにより、溶融したバインダー樹脂やホットメルト樹脂が繊維層や熱可塑性樹脂層の表面から染み出したり、積層体の柔軟性が損なわれたりすることを防ぐことができ、また、シワの発生を抑制することができる。
【0150】
また、熱ラミネートする温度は、使用しているバインダー樹脂やホットメルト樹脂の融点Tma(℃)に対し、(Tma-10)℃~(Tma+30)℃とすることが好ましい。熱ラミネートする温度を、好ましくは(Tma-10)℃以上、より好ましくは(Tma-5)℃以上、さらに好ましくはTma(℃)以上とすることにより、繊維層と熱可塑性樹脂層を強固に熱接着させることができる。また、熱ラミネートする温度を、好ましくは(Tma+30)℃以下、より好ましくは(Tma+25)℃以下、さらに好ましくは(Tma+20)℃以下とすることにより、溶融したバインダー樹脂やホットメルト樹脂が繊維層や熱可塑性樹脂層の表面から染み出したり、繊維層や熱可塑性樹脂層が熱により劣化したりすることを防ぐことができる。
【0151】
また、繊維層の上に樹脂を直接押出ラミネートすることにより、前記のフィルムを用いる場合と同様の形態を得ることもできる。繊維層の上に樹脂を直接押出ラミネートすることにより、シワの発生を抑制することができる。繊維層の上に樹脂を直接押出ラミネートすることにより、シワの発生を抑制することができる。
【0152】
次に、熱可塑性樹脂層の表面を金属層により被覆する方法として、金属あるいは金属酸化物を蒸着する方法を用いることができる。蒸着方法としては、真空蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的蒸着法、プラズマCVDなどの化学蒸着法などを用いることができる。なかでも、生産性の観点からは真空蒸着法またはスパッタリング法が好ましく用いられる。熱可塑性樹脂層の表面への金属あるいは金属酸化物の蒸着は、繊維層との積層前に行ってもよく、繊維層との積層後に行ってもよい。また、繊維層との積層前に蒸着する場合、蒸着は熱可塑性樹脂層の片面に行ってもよく、両面に行ってもよい。
【0153】
蒸着により前記金属層を形成する際に、金属膜の密着性を向上させるため、あらかじめ被蒸着面にコロナ放電処理などの前処理を施しておくことが好ましい。
【0154】
また、前記金属層を形成した後には、100℃以上で熱処理することが好ましい。このようにすることにより、繊維表面と金属層との親和性を高めることができ、使用時に金属層の割れや剥離が発生することを防ぐことができる。
【0155】
ここで、前記の繊維層、および/または、前記の熱可塑性樹脂層が複数ある場合、前記の厚み比は、全ての繊維層の厚みの合計の、全ての熱可塑性樹脂層の厚みの合計に対する比が5以上40以下となるように積層するものとする。
【0156】
本発明の積層体は、輻射熱の反射性が高く、断熱性や通気性に優れ、かつ、施工性に優れることから、衛生材料、医療材料、生活資材および工業資材等に幅広く用いることができる。特に生活資材や工業資材では、真空あるいは低圧力環境下で使用される断熱材として好適に用いることができる。すなわち、本発明の断熱材は、本発明の積層体を用いてなる。
【0157】
本発明の積層体を断熱材として使用する場合、より性能を高めるために、前記積層体を複数枚重ねて使用することが好ましい。前記積層体を接着せずに複数枚重ねて用いてもよく、前記積層体を複数枚接着して用いても良い。このとき、繊維層同士を接触させるように重ねてもよく、熱可塑性樹脂層同士を接触させるように重ねてもよく、繊維層と熱可塑性樹脂層を接触させるように重ねてもよい。
【0158】
本発明の断熱材は、輻射熱の反射性が高く、断熱性に優れ、また通気性に優れることから真空引きや減圧が容易であり、かつ、施工性に優れることから、真空断熱容器に好適に用いることができる。すなわち、本発明の真空断熱容器は、本発明の断熱材を用いてなる。
【実施例0159】
次に、実施例に基づき、本発明の積層体について具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0160】
[測定方法]
実施例で用いた評価法とその測定条件について説明する。なお、各物性の測定において、特段の記載がないものは、前述の方法に基づいて測定を行ったものである。
【0161】
(1)繊維層を構成する繊維の平均単繊維径(μm)
繊維層を構成する繊維の平均単繊維径については、走査型電子顕微鏡(SEM)として株式会社キーエンス製「VHX-D500」を用い、前述の方法により測定、算出した。
【0162】
(2)繊維層、熱可塑性樹脂層、積層体の目付(g/m
それぞれの目付については、前述の方法により測定、算出した。
【0163】
(3)繊維層、熱可塑性樹脂層、積層体の厚み(μm)、繊維層の厚みの、熱可塑性樹脂層の厚みに対する比(-)
それぞれの厚みについては、加圧子として株式会社テクロック製「SM-114」を用い、走査型電子顕微鏡(SEM)として株式会社キーエンス製「VHX-D500」を用い、前述の方法により測定、算出した。そして、繊維層の厚みの、熱可塑性樹脂層の厚みに対する比(表1、表2では単に「厚みの比」と表記した)については、前述の方法により測定、算出した。
【0164】
(4)繊維層、熱可塑性樹脂層、積層体の見かけ密度(g/cm
それぞれの見かけ密度については、前述の方法により測定、算出した。
【0165】
(5)繊維層、熱可塑性樹脂層、積層体の表面の算術平均粗さRa(μm)
それぞれの算術平均粗さRaについては、表面粗さ測定器として株式会社ミツトヨ製「“SURFTEST”SJ-210」を用い、前述の方法により測定、算出した。
【0166】
(6)金属層の厚み(nm)
金属層の厚みについては、透過型電子顕微鏡(TEM)として、日本電子株式会社製「JEM-F200」を用い、前述の方法により測定、算出した。
【0167】
(7)貫通孔の孔径(μm)、貫通孔の開口率(%)
貫通孔の孔径、貫通孔の開口率については、走査型電子顕微鏡(SEM)として株式会社キーエンス製「VHX-D500」を用い、それぞれ前述の方法により測定、算出した。
【0168】
(8)積層体の通気量(cm/(cm・秒))
通気量については、通気性試験機(TEXTEST社製フラジール型「FX3300-IV」)を用いて、前述の方法により測定、算出した。積層体の通気量は1.0cm/(cm・s)以上を合格とした。一方、通気量が0.05cm/(cm・s)未満である場合には、「測定不可」であるものとした。
【0169】
(9)赤外光反射率(%)
積層体の輻射熱の反射性の評価として下記の赤外光反射率を測定した。まず、積層体から、30mm×30mmの試験片を3枚採取し、フーリエ変換赤外分光光度計(BRUKER社製「TENSOR II」)に金コーティングの赤外積分球式検出器(PIKE Technologies社製「Mid-IR IntegratIR アップワード」、「DTGS検出器」)を装着して、積分球内部を窒素パージし、赤外光の反射率を測定した。測定波長は5μm~25μmとし、0.02μm毎のデータを測定し、測定データから波長20μmにおける反射率を算出した。3枚の試験片の反射率を平均し、小数点以下第一位を四捨五入して赤外光反射率(%)とした。なお、反射率は、金コーティング反射板の反射率を100%としたときの相対反射率として算出した。赤外光反射率は60%以上を合格とした。
【0170】
(10)減圧時間(分)、上昇温度(℃)
積層体の施工性の評価として下記の減圧時間(真空断熱容器の減圧作業に要する時間)を、断熱性能の評価として下記の上昇温度を測定した
まず、真空引き可能な断熱層を備える簡易断熱試験機(内容積1L)を用いて、断熱層に積層体を10枚重ねて挿入し、重ねた積層体を介して、真空ポンプにより断熱層を減圧した。断熱層が大気圧から真空度1×10-4Pa以下に到達するまでの時間を分単位(小数点以下切り上げ)で測定し、減圧時間(分)とした。減圧時間は、60分以下を合格とした。また、180分で上記真空度に到達しなかった場合は、「減圧不可」であるものとした
続いて、断熱層の真空引きラインを封止し、簡易断熱試験機を室温25℃で管理した室内に静置した。次に、試験機内部と試験機外部の温度差が0.1℃以下となったことを確認した後、試験機を温度75℃、湿度50%RHの恒温恒湿槽に投入した。投入から1時間後に試験機内部の温度を測定して投入前との温度差を算出し、小数点以下第一位を四捨五入して、上昇温度(℃)とした。上昇温度は、10℃以下を合格とした。
【0171】
[繊維層]
実施例・比較例で繊維層として使用した不織布は以下の方法により製造した。
【0172】
<不織布N1>
メルトフローレート(MFR)が200g/10分、融点が163℃のホモポリマーからなるポリプロピレン(PP)樹脂を、押出機で溶融し、孔径φが0.40mm、孔深度が0.80mm、幅方向1m当たりの孔数が2000孔の紡糸口金から、紡糸温度が235℃、単孔吐出量が0.40g/分で紡出した。紡出した糸条を冷却固化した後、これをエジェクターにおいて圧縮エアによって牽引、延伸し、移動するネット上に捕集し、ポリプロピレン系長繊維からなるスパンボンド不織繊維ウェブを形成した。引き続き、形成した不織繊維ウェブを、以下の上ロール、下ロールから構成される上下一対の熱エンボスロールを用いて、線圧:500N/cm、熱接着温度:150℃の条件で熱接着し、スパンボンド不織布を得た。
・上ロール:金属製で水玉柄の彫刻がなされた、接着面積率11%のエンボスロール
・下ロール:金属製フラットロール
このスパンボンド不織布の平均単繊維径は12.4μm、目付は15g/m、厚みは140μmであった。
【0173】
<不織布N2>
目付が30g/m、厚みが210μmとなるようにしたこと以外は不織布N1と同様にして、スパンボンド不織布を得た。
【0174】
<不織布N3>
目付が10g/m、厚みが80μmとなるようにしたこと以外は不織布N1と同様にして、スパンボンド不織布を得た。
【0175】
<不織布N4>
メルトフローレート(MFR)が1100g/10分、融点が163℃のホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂を使用し、孔径が0.20mm、孔深度が2.4mm、幅方向1m当たりの孔数が1000孔の紡糸口金を用いて、紡糸温度が260℃、熱風温度が265℃、単孔吐出量が0.10g/分の条件で、メルトブロー不織布を得た。このメルトブロー不織布の平均単繊維径は1.0μm、目付は5g/m、厚みは20μmであった。
【0176】
<不織布N5>
目付が10g/m、厚みが100μmとなるようにしたこと以外は不織布N1と同様にして、スパンボンド不織布を得た。
【0177】
<不織布N6>
不織布N1を、さらに上ロール、下ロールから構成される上下一対の熱カレンダーロールを用いて、線圧:200N/cm、熱接着温度:120℃の条件で熱接着した。このスパンボンド不織布の平均単繊維径は12.4μm、目付は15g/m、厚みは80μmであった。
【0178】
<不織布N7>
固有粘度(IV)が0.65、融点が260℃のホモポリマーからなるポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を、押出機で溶融し、孔径φが0.40mm、孔深度が0.80mm、幅方向1m当たりの孔数が2000孔の紡糸口金から、紡糸温度が290℃、単孔吐出量が0.55g/分で紡出した。紡出した糸条を冷却固化した後、これをエジェクターにおいて圧縮エアによって牽引、延伸し、移動するネット上に捕集し、ポリエステル系長繊維からなるスパンボンド不織繊維ウェブを形成した。引き続き、形成した不織繊維ウェブを、以下の上ロール、下ロールから構成される上下一対の熱エンボスロールを用いて、線圧:500N/cm、熱接着温度:190℃の条件で熱接着し、スパンボンド不織布を得た。
・上ロール:金属製で水玉柄の彫刻がなされた、接着面積率11%のエンボスロール
・下ロール:金属製フラットロール。
このスパンボンド不織布の平均単繊維径は13.0μm、目付は15g/m、厚みは80μmであった。
【0179】
<不織布N8>
ポリエチレンテレフタレート(PET)を原料とする湿式不織布を用いた。この湿式不織布の平均繊維径は7.4μm、平均繊維長は6.8mm、目付は15g/m、厚みは50μmであった。
【0180】
[熱可塑性樹脂層]
実施例・比較例で熱可塑性樹脂層のベースフィルムに使用したフィルムは以下の方法により製造した。
【0181】
<フィルムF1>
ポリプロピレン(PP)樹脂からなる、目付が14g/m、厚み15μmのフィルムを用いた。
【0182】
<フィルムF2>
ポリプロピレン(PP)樹脂からなる、目付が6g/m、厚み6μmのフィルムを用いた。
【0183】
<フィルムF3>
ポリプロピレン(PP)樹脂からなる、目付が18g/m、厚み20μmのフィルムを用いた。
【0184】
<フィルムF4>
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる、目付が28g/m、厚み20μmのフィルムを用いた。
【0185】
<フィルムF5>
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる、目付が21g/m、厚み15μmのフィルムを用いた。
【0186】
[実施例1]
繊維層として不織布N1を用い、熱可塑性樹脂層のベースフィルムとしてフィルムF1を用いた。接着には、融点105℃のポリエチレン系樹脂からなる粉末状のホットメルト接着剤を使用した。次に、加熱した熱針を用いて、孔径800μm、孔数2500個/mとなるように貫通孔を開けた。そして、フィルムF1を配した側の表面にアルミニウムの蒸着加工を行い、フィルムF1の表面を厚み100nmのアルミニウム層(金属層)で被覆した。このとき、熱可塑性樹脂層の厚みは15μmであった。積層体にシワの発生は見られなかった。得られた積層体について評価した結果を表1に示す。
【0187】
[実施例2]
繊維層として不織布N2を、熱可塑性樹脂層のベースフィルムとしてフィルムF2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。このとき、熱可塑性樹脂層の厚みは6μmであった。積層体にシワの発生は見られなかった。得られた積層体について評価した結果を表1に示す。
【0188】
[実施例3]
不織布N3と不織布N4とを、融点105℃のポリエチレン系樹脂からなる粉末状のホットメルト接着剤により接着させ、積層不織布とした。この積層不織布を繊維層として用い、不織布N4側に熱可塑性樹脂層のベースフィルムとしてフィルムF3を貼り合わせた。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。このとき、熱可塑性樹脂層の厚みは20μmであった。積層体にシワの発生は見られなかった。得られた積層体について評価した結果を表1に示す。
【0189】
[実施例4]
貫通孔を孔径3000μm、孔数200個/mとしたこと以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。このとき、熱可塑性樹脂層の厚みは15μmであった。積層体にシワの発生は見られなかった。得られた積層体について評価した結果を表1に示す。
【0190】
[実施例5]
貫通孔を孔径800μm、孔数20000個/mとしたこと以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。このとき、熱可塑性樹脂層の厚みは15μmであった。積層体にシワの発生は見られなかった。得られた積層体について評価した結果を表1に示す。
【0191】
[実施例6]
貫通孔を孔径800μm、孔数200000個/mとしたこと以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。このとき、熱可塑性樹脂層の厚みは15μmであった。積層体にシワの発生は見られなかった。得られた積層体について評価した結果を表1に示す。
【0192】
[実施例7]
繊維層として不織布N5を用い、熱可塑性樹脂層のベースフィルムとしてフィルムF1を用いた。接着には、融点105℃のポリエチレン系樹脂からなる粉末状のホットメルト接着剤を使用した。
【0193】
次に、フィルムF1を配した側の表面にアルミニウムの蒸着加工を行い、フィルムF1の表面を厚み100nmのアルミニウム層(金属層)で被覆した。このとき、熱可塑性樹脂層の厚みは15μmであった。
【0194】
次に、アルミニウム層(金属層)で被覆したフィルムF1を配した側の表面と、別に用意した不織布N5を接着した。接着には、融点105℃のポリエチレン系樹脂からなる粉末状のホットメルト接着剤を使用した。
【0195】
次に、加熱した熱針を用いて、孔径800μm、孔数2500個/mとなるように貫通孔を開けた。積層体にシワの発生は見られなかった。得られた積層体について評価した結果を表1に示す。
【0196】
【表1】
[比較例1]
貫通孔を開けなかったこと以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。このとき、熱可塑性樹脂層の厚みは15μmであった。
積層体にシワの発生は見られなかった。得られた積層体について評価した結果を表2に示す。
【0197】
[比較例2]
繊維層として不織布N6を、熱可塑性樹脂層のベースフィルムとしてフィルムF3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。このとき、熱可塑性樹脂層の厚みは20μmであった。積層体にシワの発生は見られなかった。得られた積層体について評価した結果を表2に示す。
【0198】
[比較例3]
繊維層として不織布N7を、熱可塑性樹脂層のベースフィルムとしてフィルムF4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。このとき、熱可塑性樹脂層の厚みは20μmであった。積層体にシワの発生は見られなかった。得られた積層体について評価した結果を表2に示す。
【0199】
[比較例4]
繊維層として不織布N8を、熱可塑性樹脂層のベースフィルムとしてフィルムF5を用いたこと以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。このとき、熱可塑性樹脂層の厚みは15μmであった。積層体にシワの発生は見られなかった。得られた積層体について評価した結果を表2に示す。
【0200】
【表2】
実施例1~7の、積層体が繊維層と熱可塑性樹脂層とを貫通する貫通孔を有し、繊維層と熱可塑性樹脂層との厚みの比(繊維層/熱可塑性樹脂層)が5~40であり、前記積層体の見かけ密度が0.10~0.35g/cmである積層体は、輻射熱の反射性が高く、断熱性や通気性に優れ、かつ、施工性に優れたものであった。
【0201】
一方、比較例1の、貫通孔を有さない積層体は、減圧処理に時間がかかるため、真空断熱材としての施工性に劣るものであった。また、比較例2~4の、厚みの比(繊維層/熱可塑性樹脂層)が5未満である積層体や、見かけ密度が0.35g/cmより大きい積層体は、断熱特性に劣るものであった。