(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174376
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】蓋の開閉装置
(51)【国際特許分類】
E02D 29/12 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
E02D29/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092182
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100200218
【弁理士】
【氏名又は名称】沼尾 吉照
(72)【発明者】
【氏名】越田 崇譲
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸山 秀樹
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147BA11
(57)【要約】
【課題】蓋を取り外す作業において、作業員の手間と時間を削減し、安全に作業を行える
蓋の開閉装置を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る蓋の開閉装置10は、地面に対して平行移動を可能とする車
輪が設けられた地面に平行な一対の下部横フレームと、前記一対の下部横フレームのそれ
ぞれに立設された一対の縦フレームと、前記一対の縦フレームの間に掛け渡された上部横
フレームと、前記上部横フレームに設けられた駆動部と、前記駆動部によって地面に対し
て垂直に上下動し、蓋を磁力で吸着する吊り部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に対して平行移動を可能とする車輪が設けられた地面に平行な一対の下部横フレー
ムと、
前記一対の下部横フレームのそれぞれに立設された一対の縦フレームと、
前記一対の縦フレームの間に掛け渡された上部横フレームと、
前記上部横フレームに設けられた駆動部と、
前記駆動部によって地面に対して垂直に上下動し、蓋を磁力で吸着する吊り部と、
を備える蓋の開閉装置。
【請求項2】
前記吊り部が、通電によって励磁して前記蓋を吸着し、通電を遮断すると非励磁となり
、吸着した前記蓋を離脱させる電磁石を有する、
請求項1に記載の蓋の開閉装置。
【請求項3】
前記一対の下部横フレームの間に掛け渡されて設けられ、前記吊り部に吊られた蓋の動
きを規制する規制部を、
更に備えた請求項1または請求項2に記載の蓋の開閉装置。
【請求項4】
前記規制部は、吸着される蓋のサイズに応じて、前記下部横フレームへの取付け位置が
変更可能である、
請求項3に記載の蓋の開閉装置。
【請求項5】
前記規制部は非磁性体である、
請求項4に記載の蓋の開閉装置。
【請求項6】
前記駆動部がレバーを手で操作して前記吊り部を上下動させることができる駆動装置で
ある、
請求項1または請求項2に記載の蓋の開閉装置。
【請求項7】
前記車輪の隣接する車輪間の距離は、開閉される前記蓋の直径よりも長く形成され、前
記車輪の移動する向きが前記下部横フレームに対して固定されて、進退方向が一定である
、
請求項1又は請求項2に記載の蓋の開閉装置。
【請求項8】
前記下部横フレームのそれぞれに隣接して下部横フレームよりも下方に設けられ、開口
部に前記車輪が落下した際に、前記車輪の落下量を規制する脱輪防止用フレームを、
更に備えた請求項7に記載の蓋の開閉装置。
【請求項9】
前記下部横フレームに設けられ、前記車輪の動きを制御する把持部を、
更に備えた請求項1または請求項2に記載の蓋の開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓋の開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模なプラント設備に設置される大容量のタンク等の容器には、メンテナンス等のた
めに人が容器内に入るためのマンホールが設置されており、通常運用時には蓋によって閉
鎖されている。一般的な道路に設置されている下水用、汚水用等のマンホールについても
同様であって、これらのマンホールも通常時は蓋によって閉鎖されている。これらの蓋は
強度面等から金属製であることが多く、100kgを超えるような重量物の場合もある。
【0003】
従来、これらの蓋を取り外す又は設置する作業は、作業員が蓋を手で持って行っていた
。蓋が重量物となる場合は複数の作業員でその蓋を持つことで作業を可能としていた。
【0004】
また、特許文献1には、蓋をねじ止めによって固定して油圧ポンプによる油圧を動力源
として蓋を吊り上げるような、作業員が蓋を手で持たないマンホール蓋、ハンドホール蓋
等の開閉装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、蓋を取り外す又は設置する作業を作業員が蓋を手で持って行う場合は
、手間と時間がかかるうえに、蓋が重量物の場合は落とした時に作業員の人体に負傷を与
えるという、安全上の問題もあった。
【0007】
また、特許文献1に記載のマンホール蓋やハンドホール蓋等の開閉装置においては、作
業員が蓋を手で持つ必要は無いものの、蓋を吊り部に固定するためにネジ止めする作業が
あって手間がかかるうえに、装置自体に油圧ポンプが備えられているため、装置のメンテ
ナンスも定期的に必要となり、不具合によって動作しなくなると、蓋の開閉作業が出来な
くなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上記課題を解決するために、実施形態に係る蓋の開閉装置は、地面に対して平
行移動を可能とする車輪が設けられた地面に平行な一対の下部横フレームと、前記一対の
下部横フレームのそれぞれに立設された一対の縦フレームと、 前記一対の縦フレームの
間に掛け渡された上部横フレームと、前記上部横フレームに設けられた駆動部と、前記駆
動部によって地面に対して垂直に上下動し、蓋を磁力で吸着する吊り部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】実施形態に係る蓋の開閉装置が蓋を吊り上げる前の状態の概略図で、
図2のA-A’矢視図
【
図5】実施形態に係る蓋の開閉装置が蓋を吊り上げた状態の概略図で、
図2のA-A’矢視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための実施形態について説明する。
【0011】
実施形態に係る蓋の開閉装置の正面図、上面図、側面図をそれぞれ
図1、
図2、
図3に
示し、本実施形態に係る蓋の開閉装置について説明する。
【0012】
実施形態に係る蓋の開閉装置10は、蓋を吸着する吊り部11、吸着した蓋及び吊り部
11を吊り上げるための駆動部12、吊り上げられた蓋の動きを規制するための規制部1
3、蓋の開閉装置10の本体部分を形成する下部横フレーム14、下部横フレーム14に
設けられ上部横フレーム16を設置するための支柱である縦フレーム15、駆動部12を
設置するための架台である上部横フレーム16、蓋の開閉装置10を移動させるためのい
わゆるハンドルである把持部17、蓋の開閉装置10の車輪が脱輪することを防ぐための
脱輪防止用フレーム18を備える。
【0013】
下部横フレーム14は、実施形態に係る蓋の開閉装置10の本体部分であって、
図1、
図2及び
図4に示すように地面に平行に一対設けられている。また、一対の下部横フレー
ム14には、下部横フレーム14の間に掛け渡された一対の規制部13が設置されている
。さらに
図1及び
図3に示すように下部横フレーム14のそれぞれの上側には後述する一
対の縦フレーム15が設けられている。また、
図1及び
図3に示すように、車輪も下部横
フレーム14に設けられている。一対の縦フレーム15の上部には、縦フレーム15の間
に掛け渡された上部横フレーム16が設けられている。また、縦フレーム15の上部には
把持部17が設けられ、蓋の開閉装置10を作業員の手で移動させることが可能となって
いる。さらに、
図1、
図2及び
図3に示すように下部横フレーム14最下部には脱輪防止
用フレーム18が設けられている。
【0014】
車輪は、蓋の開閉装置10を地面と平行移動させることを可能とするものであって、実
施形態においては、隣接する車輪間の距離が前記開閉される蓋の直径よりも長くなるよう
に形成され、4カ所に設置される。車輪は進退方向が一定であって、実施形態においては
車輪の向きは把持部17を持って引く方向に固定されているため、蓋の開閉装置10の移
動方向は把持部17を引く方向と平行な方向にしか動かないように制限される。これは、
車輪があらゆる向きに回動すると、蓋の開閉装置10が吊り上げた蓋によって閉鎖されて
いたマンホール等の開口部に車輪が脱輪したり、作業員が開口部に足を取られたりする虞
があるためである。
【0015】
なお、車輪はあらゆる向きに(360°)回動しても良い。蓋の開閉装置10が一定の
方向でなくあらゆる方向に移動できるようになり、蓋の開閉装置10の操作性が高くなる
というメリットもある。
【0016】
縦フレーム15は、上部横フレーム16を設置するための支柱であって、下部横フレー
ム14の上方に立設される。上部横フレーム16は一対の縦フレーム15に掛け渡して設
けられるが、上部横フレーム16は一対の縦フレーム15に固定されても良いし、一対の
縦フレーム15に沿って垂直に可動するように設けられても良い。なお、上部横フレーム
16が1本である場合縦フレーム15は2本設けられるが、例えば、吊り上げる対象が重
量物で吊り部11が2個必要とされるような場合は、上部横フレーム16が2本必要とな
るため、縦フレーム15は4本必要となる。
【0017】
上部横フレーム16は、駆動部12を設置するための架台である。一対の縦フレーム1
5に対して1つの上部横フレーム16が掛け渡される。駆動部12であるレバーブロック
(登録商標)は、例えば、
図3に示すように上部横フレーム16に設けられたアイボルトに引っ掛けて取付けられる。なお、上部横フレーム16に引っ掛け用孔が設けられる場合もあるし、駆動部12は上部横フレーム16に直接取り付けられる場合もあって、実施形態に係る取付け方法に限定するものではない。
【0018】
把持部17は、いわゆるハンドルである。作業員が蓋の開閉装置10を移動させる際に
、把持部17を持って蓋の開閉装置10を引く方向と平行な方向に動かすことで、車輪の
動きを制御して、蓋の開閉装置10を移動させることができる。
【0019】
脱輪防止用フレーム18は、
図1、
図2及び
図3に示すように下部横フレーム14の下
方に設けられ、車輪が脱輪して落下した場合に、脱輪防止用フレーム18がマンホール等
の開口部の縁に引っ掛かることで蓋の開閉装置10の転倒若しくは開口部への落下量を規
制するものである。また、蓋の開閉装置10の操作者の足が吊り部11に吸着している蓋
の下に届かないようにする役割も担っており、安全面を考慮した構造である。
【0020】
実施形態に係る蓋の開閉装置10に備えられる吊り部11は、いわゆる永久磁石式のリ
フティングマグネットである。永久磁石式のリフティングマグネットとは、磁力で鋼製の
物体を吸着させることができる吊り具であって、重量物の吊り上げや搬送に用いられる。
永久磁石式のリフティングマグネットは、例えば、分割された複数の永久磁石を備えてお
り、一部の永久磁石をレバー操作等によって回転させて、互いの磁束を打消し合わせて消
磁することで、吸着した鋼製の物体を離脱させることが出来る。
【0021】
実施形態に係る吊り部11を用いることで、蓋を吊り上げる際に吊り部と蓋とをねじ止
めによって固定する必要はなく、レバーによる操作で吸着と離脱を行うことができて作業
が簡便となる。
【0022】
また、他にも電磁石式のリフティングマグネットを利用する場合もある。電磁石式のリ
フティングマグネットとは、通電によって励磁し、磁力で鋼製の物体を吸着させることが
できる吊り具であって、重量物の吊り上げや搬送に用いられる。なお、リフティングマグ
ネットへの通電を遮断すると非励磁となって、吸着した鋼製の物体を離脱させることがで
きる。
【0023】
電磁石式のリフティングマグネットも、永久磁石式のリフティングマグネット同様に、
蓋を吊り上げる際に吊り部と蓋とをねじ止めによって固定する必要はなく、通電のON/
OFFで吸着と離脱を行うことができて作業が簡便となる。
【0024】
なお、磁力によって吸着するあらゆる形式のリフティングマグネットを利用することが
可能であって、上述した形式に限定されるものではない。
【0025】
実施形態に係る駆動部12は、レバーを手で操作して吊り部11を上下動させることが
できる駆動装置である。例えば、レバーブロック(登録商標)である。レバーブロックに
は金属製のチェーンが備えられており、レバーを回動させることでチェーンを巻き上げて
、チェーン先端に設けられた吊り部11及び吊り部11に吸着された鋼製の蓋の吊り上げ
を可能とする駆動装置である。また、駆動部12に設けられたラチェット機構を切り替え
ることによって、レバーを回動させることで吊り部11及び吊り部11に吸着された鋼製
の蓋を降下させることも可能である。なお、実施形態においてはレバーブロックを採用し
ているが、これは滑車、チェーンブロック、電動ホイスト等の他の駆動装置であっても構
わない。
【0026】
規制部13は、
図2に示すように、後述する下部横フレーム14に設置されるアルミニ
ウム製のフレームである。
図1に示すように、設置されるのは蓋の開閉装置10の下部で
あって、駆動部12によって吊り上げられた時の蓋の高さと同等の高さに設置される。こ
れは、
図4に示すように、規制部13は吊り上げられた蓋の動き(揺れ)を規制するため
のものだからである。規制部13によって、蓋の開閉装置10を移動させている時でも吊
り部11に吸着された鋼製の蓋は大きく揺れることはなく、鋼製の蓋が作業員にぶつかる
といったことや構造物に衝突して構造物を傷付けることや、吊り部11から離脱すること
を防ぐことが出来る。
【0027】
規制部13は下部横フレーム14にねじ止めされているため、取付け位置が変更可能で
あって、規制部13の幅(間隔)は、吊り上げる蓋の直径に合わせて可変的である。例え
ば、φ900mmの円形の蓋の場合、規制部13の幅(間隔)を600mm程度に設定す
ることで、吊り上げられた蓋の動きを適切に規制することが可能となる。また、例えば、
φ800mmの円形の蓋の場合、規制部13の幅(間隔)を400mm程度に設定するこ
とで、吊り上げられた蓋の動きを適切に規制することが可能となる。その他蓋のサイズに
合わせて規制部13の幅を変化させることが可能で、あらゆる蓋のサイズに対応すること
が可能である。
【0028】
なお、規制部13の材質は、磁性を帯びない非磁性体の材質が好ましい。鉄等の磁性体
である場合、吊り部11が規制部13に吸着され、蓋の降下が出来ない虞があるためであ
る。材質はアルミニウムに限定されるものではなく、例えばステンレスのような磁性を帯
びない材質であれば採用され得る。
【0029】
次に、実施形態に係る蓋の開閉装置が蓋を吊り上げる前の状態の概略図を
図4に、実施
形態に係る蓋の開閉装置が蓋を吊り上げた状態の概略図を
図5に示し、蓋の開閉作業につ
いて説明する。
【0030】
ここで、
図4及び
図5に示す鋼製の蓋21は、例えば、一般的な道路に設置されている
地下にある下水道や排水路、電気ケーブル、通信ケーブル、ガス管等へメンテナンス等で
アクセスするためのマンホールを塞ぐための金属製の蓋であったり、大容量の容器のメン
テナンス等のために容器内部にアクセスするためのマンホールを塞ぐための金属製の蓋で
あったりする。
【0031】
蓋の開閉装置10は、
図4に示すように、リフティングマグネットである吊り部11が
磁性を発揮した状態で鋼製の蓋21を吸着する。駆動部12であるレバーブロックのレバ
ーを回動して吸着した鋼製の蓋21を吊り上げる。
図5に示すように、鋼製の蓋21は規
制部13に接するまで吊り上げられ、駆動部12であるレバーブロックのチェーンが所定
の力で引っ張られた状態になることで鋼製の蓋21は適切に規制される。また、蓋の開閉
装置10を鋼製の蓋21を吊り上げた状態を維持したまま所定の場所まで移動することで
、所定の場所まで鋼製の蓋21を運ぶことが出来る。
【0032】
鋼製の蓋21を設置する時は、マンホール等の開口部の上で駆動部12であるレバーブ
ロックのレバーを回動して吸着した鋼製の蓋21を降下させて、吊り部11を非励磁とす
ることで鋼製の蓋21を開口部に設置することができる。
【0033】
実施形態によれば、以下に示すような効果が得られる。
【0034】
蓋を取り外す又は設置する際に、人が蓋を手で持って行う必要がなくなり、手間と時間
を削減できるうえに、蓋を落とした場合の安全性も確保出来る。
【0035】
また、特許文献1に記載のマンホール蓋ハンドホール蓋の開閉装置で必要としていた蓋
を吊り部に固定するためのネジ止め作業を削減し、油圧ポンプのような頻繁にメンテナン
スが必要となる駆動部も備えられていないため、装置のメンテナンス工数も削減出来て、
不具合によって動作しなくなるという懸念も大きく低減できる。
【0036】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり
、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な
形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き
換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれ
るとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
10…蓋の開閉装置、11…吊り部、12…駆動部、13…規制部、14…下部横フレー
ム、15…縦フレーム、16…上部横フレーム、17…把持部、18…脱輪防止用フレー
ム、21…鋼製の蓋