(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174392
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】温室効果ガスの削減量算出装置及び削減量算出方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20241210BHJP
G06Q 50/26 20240101ALI20241210BHJP
【FI】
G06Q50/02
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092202
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】林 悠一郎
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L049CC35
5L050CC01
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】バイオ炭の普及促進に貢献可能な温室効果ガスの削減量算出装置及び削減量算出方法を提供する。
【解決手段】排出量削減支援システム1は、削減量算出装置10を備える。削減量算出装置10は、読出部111と、算出部112と、データベース13と、を有する。読出部111は、バイオ炭Bの単位重量あたりの温室効果ガス削減量である第1削減量と、単位面積の農地Nにて単位期間中に使用されたバイオ炭Bの総重量である施用量と、単位面積の農地Nにて単位期間中に生産される農産物である対象農産物APの総重量である対象生産量と、をデータベース13から取得する。算出部112は、第1削減量と施用量とに基づいて、前記単位面積の農地Nにおける単位期間あたりの温室効果ガス削減量である第2削減量を算出し、第2削減量と対象生産量とに基づいて、各対象農産物APの単位重量あたりの温室効果ガス削減量である第3削減量を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ炭の単位重量あたりの温室効果ガスの削減量である第1削減量と、単位面積の農地にて単位期間中に使用された前記バイオ炭の総重量である施用量と、前記単位面積の前記農地にて前記単位期間中に生産される農産物である対象農産物の総重量である対象生産量と、を取得する取得部と、
前記第1削減量と、前記施用量と、に基づいて、前記単位面積の前記農地における前記単位期間あたりの温室効果ガスの削減量である第2削減量を算出し、前記第2削減量と、前記対象生産量と、に基づいて、前記対象農産物の単位重量あたりの温室効果ガスの削減量である第3削減量を算出する算出部と、
を備える温室効果ガスの削減量算出装置。
【請求項2】
前記対象農産物を原料として含む製品を、対象製品としたときに、
前記取得部は、前記対象製品の数量あたりの前記対象農産物の重量である対象含有量を取得し、
前記算出部は、前記第3削減量と、前記対象含有量と、に基づいて、前記対象製品の数量あたりの温室効果ガスの削減量を算出する、請求項1に記載の温室効果ガスの削減量算出装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記対象製品が、異なる前記農地で生産される複数の前記対象農産物を原料として含む場合、前記対象農産物ごとの前記第3削減量及び前記対象含有量に基づいて、当該対象製品の数量あたりの温室効果ガスの削減量を算出する、請求項2に記載の温室効果ガスの削減量算出装置。
【請求項4】
前記バイオ炭は、前記対象製品の製造に伴い排出された残渣を原料として製造される、請求項2又は3に記載の温室効果ガスの削減量算出装置。
【請求項5】
情報処理装置が実行する算出方法であって、
バイオ炭の単位重量あたりの温室効果ガスの削減量である第1削減量と、単位面積の農地に単位期間中に使用された前記バイオ炭の総重量である施用量と、前記単位面積の前記農地にて前記単位期間中に生産される農産物である対象農産物の総重量である対象生産量と、を取得する第1取得ステップと、
前記第1削減量と、前記施用量と、に基づいて、前記単位面積の前記農地における前記単位期間あたりの温室効果ガスの削減量である第2削減量を算出し、前記第2削減量と、前記対象生産量と、に基づいて、前記農産物の単位重量あたりの温室効果ガスの削減量である第3削減量を算出する第1算出ステップと、
を備える温室効果ガスの削減量算出方法。
【請求項6】
前記対象農産物を原料として含む製品を、対象製品としたときに、
前記対象製品の数量あたりの前記対象農産物の重量である対象含有量を取得する第2取得ステップと、
前記第3削減量と、前記対象含有量と、に基づいて、前記対象製品の数量あたりの温室効果ガスの削減量を算出する第2算出ステップと、
を備える、請求項5に記載の温室効果ガスの削減量算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室効果ガスの削減量算出装置及び削減量算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温室効果ガスの排出量削減が、社会的な課題となっている。その解決のため、種々のカーボンニュートラル技術が提案されている。かかる技術の一種である「バイオ炭」は、バイオマスを炭化させたものであり、農地等の土壌改良に用いられる。農地等に埋設されたバイオ炭は、土壌中において炭素を固定しておくことができるため、温室効果ガスの排出量削減に貢献することができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バイオ炭は、比較的高価であることもあり、我が国においては未だ普及が進んでいない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、バイオ炭の普及促進に貢献可能な温室効果ガスの削減量算出装置及び削減量算出方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、第1の発明の削減量算出装置は、バイオ炭の単位重量あたりの温室効果ガスの削減量である第1削減量と、単位面積の農地にて単位期間中に使用された前記バイオ炭の総重量である施用量と、前記単位面積の前記農地にて前記単位期間中に生産される農産物である対象農産物の総重量である対象生産量と、を取得する取得部と、前記第1削減量と、前記施用量と、に基づいて、前記単位面積の前記農地における前記単位期間あたりの温室効果ガスの削減量である第2削減量を算出し、前記第2削減量と、前記対象生産量と、に基づいて、前記対象農産物の単位重量あたりの温室効果ガスの削減量である第3削減量を算出する算出部と、を備える。
【0007】
第2の発明の削減量算出装置は、第1の発明において、前記対象農産物を原料として含む製品を、対象製品としたときに、前記取得部は、前記対象製品の数量あたりの前記対象農産物の重量である対象含有量を取得し、前記算出部は、前記第3削減量と、前記対象含有量と、に基づいて、前記対象製品の数量あたりの温室効果ガスの削減量を算出する。
【0008】
第3の発明の削減量算出装置は、第2の発明において、前記算出部は、前記対象製品が、異なる前記農地で生産される複数の前記対象農産物を原料として含む場合、前記対象農産物ごとの前記第3削減量及び前記対象含有量に基づいて、当該対象製品の数量あたりの温室効果ガスの削減量を算出する。
【0009】
第4の発明の削減量算出装置は、第2又は第3の発明のいずれかにおいて、前記バイオ炭は、前記対象製品の製造に伴い排出された残渣を原料として製造される。
【0010】
第5の発明の削減量算出方法は、情報処理装置が実行する算出方法であって、バイオ炭の単位重量あたりの温室効果ガスの削減量である第1削減量と、単位面積の農地に単位期間中に使用された前記バイオ炭の総重量である施用量と、前記単位面積の前記農地にて前記単位期間中に生産される農産物である対象農産物の総重量である対象生産量と、を取得する第1取得ステップと、前記第1削減量と、前記施用量と、に基づいて、前記単位面積の前記農地における前記単位期間あたりの温室効果ガスの削減量である第2削減量を算出し、前記第2削減量と、前記対象生産量と、に基づいて、前記農産物の単位重量あたりの温室効果ガスの削減量である第3削減量を算出する第1算出ステップと、を備える。
【0011】
第6の発明の削減量算出方法は、第5の発明において、前記対象製品の数量あたりの前記対象農産物の重量である対象含有量を取得する第2取得ステップと、前記第3削減量と、前記対象含有量と、に基づいて、前記対象製品の数量あたりの温室効果ガスの削減量を算出する第2算出ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、バイオ炭の普及促進に貢献可能な温室効果ガスの削減量算出装置及び削減量算出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態における排出量削減支援システム1の全体構成を例示するシステム構成図である。
【
図2】データベース13の内容を示す模式図である。
【
図5】別例に係るビジネスモデルに適用された場合における、排出量削減支援システム1の全体構成を例示するシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る排出量削減支援システム1について図面を参照しつつ説明する。
図1は、排出量削減支援システム1の全体構成を例示するシステム構成図である。
図2は、データベース13の内容を示す模式図である。
【0015】
排出量削減支援システム1は、例えば、バイオ炭の普及促進を図るビジネスモデルにおいて使用される。まず、排出量削減支援システム1の構成について説明する。
【0016】
なお、バイオ炭とは、生物資源の炭化物であり、例えば、日本バイオ炭普及会規格(JBAS0001)で規定される「土壌炭素貯留用バイオ炭」である。バイオ炭は、廃木材や食品残渣等の有機資源を炭化し、分解しにくく安定性の高い炭素であるバイオ炭にすることで、炭素を長期間土壌や水中に封じ込めることができる。これにより、温室効果ガスの排出量削減に寄与することができる。なお、バイオ炭が土壌や水中に封じ込めている温室効果ガスの量(「貯留量」ということがある)は、バイオ炭による温室効果ガスの排出削減量ともいえる。また、本明細書において、温室効果ガスの排出量の削減は、単に「排出量削減」ということがあり、温室効果ガスの排出削減量は、単に「削減量」ということがある。
【0017】
排出量削減支援システム1は、削減量算出装置10と、情報端末21と、を備える。
【0018】
削減量算出装置10は、制御部11と、各種情報を記憶するデータベース13と、プリンタ14と、キーボードやタッチパネルといった入力デバイスである操作部15と、ネットワークを通じて外部の装置と通信する通信部16と、を有する。
【0019】
制御部11は、CPU、GPU等を有し、各種制御処理を実行する。制御部11は、読出部111と、算出部112と、を有する。
【0020】
読出部111は、データベース13から各種情報を読み出す。
【0021】
算出部112は、後述する第1算出処理及び第2算出処理を実行する。なお、第1算出処理及び第2算出処理は、特に区別する必要がない場合、まとめて「算出処理」ということがある。
【0022】
データベース13には、算出部112による算出処理において用いられる情報を記憶可能である。制御部11は、各種情報を取得すると、当該情報をデータベース13に記憶させることが可能である。また、制御部11は、算出部112による算出処理の結果をデータベース13に記憶させることが可能である。
【0023】
プリンタ14は、算出処理の結果を対象に印刷する印刷処理を実行可能である。制御部11は、プリンタ14に印刷処理を実行させることが可能である。
【0024】
情報端末21は、例えば、パーソナルコンピュータである。情報端末21は、各種情報を記憶可能である。情報端末21は、ネットワーク等を介して削減量算出装置10との間で情報の送受信が可能である。
【0025】
続いて、本実施形態に係る排出量削減支援システム1の動作について説明する。まず、排出量削減支援システム1が適用されるビジネスモデルの一例について説明する。
【0026】
まず、バイオ炭Bが製造される。バイオ炭Bは、例えば、バイオ炭製造施設100において製造される。バイオ炭製造施設100は、例えば、バイオガス発電施設であり、発電時の廃熱等を利用してバイオ炭Bを製造可能である。
【0027】
バイオ炭Bは、例えば、農業者Fに売却される。バイオ炭Bは、農業者Fにより農地Nに施用される。バイオ炭Bが農地Nに施用されると、温室効果ガスが当該農地Nに貯留される。このため、バイオ炭Bが農地Nに施用されたことにより、温室効果ガスの貯留量に応じて環境価値が創出される。なお、環境価値は、いわゆる排出量取引の対象となり、第三者に売却可能なものである。また、バイオ炭Bの単位重量あたりの温室効果ガス貯留量は、バイオ炭Bの単位重量あたりの温室効果ガスの削減量ともいえ、以下において、「第1削減量」とする。
【0028】
バイオ炭Bが施用された農地Nにおいて、農作物APが生産される。単位面積の農地Nに単位期間中に使用されたバイオ炭Bの総重量は、「施用量」とする。単位面積の農地Nにおいて単位期間中に生産される農作物APは、「対象農産物AP」とする。なお、単位期間は、例えば、1年間とされる。単位面積は、例えば、農作物AP(対象農産物AP)ごとの作付面積とされる。
【0029】
より具体的には、農業者Fとして、第1農業者F1と、第2農業者F2と、が存在する。第1農業者F1は、第1農地N1と、第2農地N2と、を所有し、第2農業者F2は、第3農地N3を所有する。なお、特に区別する必要がない場合、第1農業者F1と、第2農業者F2とは、まとめて「各農業者F」といい、第1農地N1と、第2農地N2と、第3農地N3とは、まとめて「各農地N」ということがある。
【0030】
第1農地N1では、第1農産物AP1(例えば、ホウレンソウ)が生産される。第2農地N2では、第2農産物AP2(例えば、キャベツ)が生産される。第3農地N3では、第3農産物AP3(例えば、ピーマン)が生産される。第1農産物AP1と第2農産物AP2と第3農産物AP3とは、1年に1回作付けされる。各農地Nには、1年に1回、バイオ炭Bが施用され、詳しくは、各回の作付け時に、バイオ炭Bが施用される。
【0031】
なお、各農地Nにおいて単位期間中に生産された、第1農産物AP1と、第2農産物AP2と、第3農産物AP3とは、「対象農産物」に相当するものであり、以下、「第1対象農産物AP1」、「第2対象農産物AP2」、「第3対象農産物AP3」ということがある。また、特に区別する必要がない場合、第1対象農産物AP1と、第2対象農産物AP2と、第3対象農産物AP3とは、まとめて「各対象農産物AP」ということがある。
【0032】
農地Nで創出された環境価値は、対象農産物APに付加することが可能である。以下において、農産物に付加された環境価値は、「環境価値V1」とする。
【0033】
環境価値V1が付加された各対象農産物APは、例えば、電力会社Eにより買い取られる。これにより、各対象農産物APの販売先が確保されるため、各農業者Fに対して、バイオ炭Bを使用するインセンティブを提供することができる。
【0034】
その後、各対象農産物APは、対象農産物を原料として含む製品である対象製品Pの製造に供される。対象製品Pは、例えば、弁当である。以下において、対象製品Pは、「弁当P」ということがある。「弁当」とは、容器に収容され、携帯可能とされた食事のことをいう。弁当Pは、箱と、当該箱に収容された食品と、を有する。
【0035】
弁当Pは、例えば、弁当業者Mにより製造される。各対象農産物APは、電力会社Eから弁当業者Mに提供される。弁当業者Mにおいて、各対象農産物APは、弁当Pへと加工される。弁当Pは、弁当業者Mから電力会社Eに納入される。
【0036】
弁当Pは、各対象農産物APを、所定の重量ずつ用いて製造されている。弁当Pの数量あたりの第1対象農産物AP1の重量は、「第1対象含有量」とする。弁当Pの数量あたりの第2対象農産物AP2の重量は、「第2対象含有量」とする。弁当Pの数量あたりの第3対象農産物AP3の重量は、「第3対象含有量」とする。特に区別する必要がない場合、第1対象含有量と、第2対象含有量と、第3対象含有量とは、まとめて「対象含有量」ということがある。
【0037】
なお、第1対象含有量は、例えば、弁当Pの数により、当該弁当Pの製造に供するために購入された第1対象農産物AP1の総重量を除することにより算出することができる。第2対象含有量及び第3対象含有量についても同様にして算出することができる。また、対象農産物のうち残渣となる部分の重量については、対象含有量の算出において、対象農産物の重量から控除するようにしてもよい。
【0038】
弁当Pは、対象農産物APを原料としているため、弁当Pは、対象農産物APに由来する環境価値を有していると考えらえる。このため、弁当Pに、環境価値を付加することができる。以下において、対象製品Pに付加された環境価値は、「環境価値V2」とする。
【0039】
環境価値V2が付加された対象製品Pは、電力会社Eから需要家C1に売却される。需要家C1は、特に限定されるものではないが、例えば、企業である。これにより、対象製品Pの原料としての各対象農産物APの需要を創出することができるため、各農業者Fに対し、バイオ炭Bを使用する更なるインセンティブを提供することができる。そして、バイオ炭の普及促進を図ることができる。
【0040】
ここで、環境価値の算出を支援することで、上述したビジネスモデルをより円滑に実行可能とすることができると考えられる。また、環境価値は、温室効果ガスの排出削減量に基づいて算出され得る。
【0041】
そこで、排出量削減支援システム1は、例えば、対象製品Pの数量あたりの温室効果ガスの削減量を算出する。以下、排出量削減支援システム1の動作について説明する。なお、削減量算出装置10は、例えば、電力会社Eに設けられる。
【0042】
まず、データベース13には、算出部112による算出処理において用いられる情報が記憶されている。詳しくは、データベース13には、第1削減量と、対象製品と、対象農産物と、施用量と、対象生産量と、対象含有量と、が記憶されている。
図2に示すように、データベース13においては、対象製品ごとに、当該対象製品に含まれる各対象農産物がまとめて記憶されており、対象農産物ごとに、当該対象農産物が生産された農地における施用量と、当該対象農産物の対象生産量と、当該対象農産物の対象含有量とが、関連付けて記憶されている。
【0043】
情報端末21は、例えば、第1情報端末21Aと、第2情報端末21Bと、第3情報端末21Cと、を有する。第1情報端末21Aは、例えば、第1農業者F1において使用され、第2情報端末21Bは、例えば、第2農業者F2において使用される。第3情報端末21Cは、例えば、弁当業者Mにおいて使用される。なお、特に区別する必要がない場合、第1情報端末21Aと、第2情報端末21Bとは、まとめて「各情報端末21A,21B」ということがあり、第1情報端末21Aと、第2情報端末21Bと、第3情報端末21Cとは、まとめて「各情報端末21」ということがある。
【0044】
データベース13に記憶される情報のうち、対象農産物に関する情報、例えば、当該対象農産物が生産された農地における施用量と、当該対象農産物の対象生産量と、については、各情報端末21A,21Bに記憶されている。対象製品に関する情報、例えば、当該対象製品に含まれる対象農産物と、対象農産物ごとの対象含有量と、については、情報端末21Cに記憶されている。削減量算出装置10は、各情報端末21からそれらの情報を取得するとともに、データベース13に記憶させる。ただし、削減量算出装置10は、それらの情報を、各情報端末21から取得する必要はない。それらの情報が、削減量算出装置10に直接入力されるようにしてもよい。例えば、削減量算出装置10には、操作部15を通じて、それらの情報が入力されるようにしてもよい。よって、各情報端末21は、必須の構成ではない。
【0045】
続いて、削減量算出装置10(読出部111及び算出部112)により実行される、第2算出処理について、
図3を参照しつつ説明する。第2算出処理は、対象製品Pの数量あたりの温室効果ガスの削減量を算出する処理である。
【0046】
図3は、第2算出処理を示すフローチャートである。また、
図3のフローチャートは、操作部15を通じて第2算出処理の実行が要求されたことに基づいて実行される。第2算出処理の実行の要求においては、対象製品が指定される。削減量算出装置10は、指定された対象製品について、第2算出処理を実行する。以下、弁当Pが第2算出処理の対象とされた場合を例として説明する。
【0047】
図3に示すように、ステップS11では、読出部111は、指定された対象製品と関連付けて記憶されている対象農産物を、データベース13上で特定する。具体的には、対象農産物として弁当Pが指定された場合、第1対象農産物AP1と、第2対象農産物AP2と、第3対象農産物AP3と、を特定する。次いでステップS13に進む。
【0048】
ステップS13では、第1対象農産物AP1の単位重量あたりの温室効果ガスの削減量を算出する。対象農産物ごとの単位重量あたりの温室効果ガスの削減量(「第3削減量」とする)を算出する処理を「第1算出処理」とすると、本ステップS13では、第1対象農産物AP1についての第1算出処理を実行する。そこで、第1対象農産物AP1についての第1算出処理について、
図4を参照しつつ説明する。
図4は、第1算出処理を示すサブルーチンである。
【0049】
図4に示すように、ステップS21では、読出部111は、データベース13にアクセスし、第1対象農産物AP1に関連付けて記憶されている第1削減量を読み出す。次いでステップS22に進む。
【0050】
ステップS22では、読出部111は、第1対象農産物AP1に関連付けて記憶されている施用量をデータベース13から読み出す。次いでステップS23に進む。なお、読出部111は、取得部に相当する。
【0051】
ステップS23では、算出部112は、ステップS21で読み出された第1削減量と、ステップS22で読み出された施用量と、に基づいて、第1対象農産物AP1の第2削減量を算出する。詳しくは、第1削減量に施用量を乗じることで第2削減量を算出する。第2削減量を第1対象農産物AP1に関連付けてデータベース13に記憶する。次いで、ステップS24に進む。
【0052】
ステップS24では、読出部111は、第1対象農産物AP1に関連付けて記憶されている第1対象生産量をデータベース13から読み出す。次いでステップS25に進む。
【0053】
ステップS25では、算出部112は、ステップS23で算出された第2削減量と、ステップS24で読み出された第1対象生産量と、に基づいて、第1対象農産物AP1の第3削減量を算出する。詳しくは、第2削減量を第1対象生産量で除することで、第3削減量を算出する。第3削減量は、第1対象農産物AP1と関連付けてデータベース13に記憶する。その後、本第1算出処理を終了する。
【0054】
第3削減量は、対象農産物APの環境価値V1の算出根拠として活用可能である。したがって、排出量削減支援システム1は、環境価値V1の算定を支援することができる。
【0055】
次いで、
図3のフローチャートに戻り、ステップS14では、第2対象農産物AP2についての第1算出処理を実行する。第2対象農産物AP2について、ステップS13と同様の流れで第1算出処理を実行する。このため、詳しい説明は省略する。次いでステップS15に進む。
【0056】
ステップS15では、第3対象農産物AP3についての第1算出処理を実行する。第3対象農産物AP3について、ステップS13と同様の流れで第1算出処理を実行する。このため、詳しい説明は省略する。次いでステップS16に進む。
【0057】
ステップS16では、読出部111は、各対象農産物APとそれぞれ関連付けて記憶されている対象含有量を、データベース13からそれぞれ読み出す。次いでステップS17に進む。
【0058】
ステップS17では、算出部112は、ステップS13~ステップS15でそれぞれ取得された各対象農産物APの第3削減量と、ステップS16で読み出された各対象農産物APの対象含有量と、に基づいて、弁当Pの数量あたりの温室効果ガスの削減量を算出する。第1対象農産物AP1の第3削減量に対し、第1対象含有量を乗じることで、弁当Pの数量あたりの温室効果ガスの削減量における第1対象農産物AP1の寄与分を算出する。同様にして、弁当Pの数量あたりの温室効果ガスの削減量における、第2対象農産物AP2の寄与分と、第3対象農産物AP3の寄与分と、をそれぞれ算出する。各対象農産物APの寄与分を足し合わせることで、弁当Pの数量あたりの温室効果ガスの削減量を算出する。第4削減量は、弁当Pの数量あたりの環境価値V2の算出根拠として活用可能である。したがって、排出量削減支援システム1は、環境価値V2の算定を支援することができる。なお、本ステップS17や、ステップS23、ステップS25において実行する算出処理においては、必要に応じて単位の調整を行う。次いで、ステップS18に進む。
【0059】
ステップS18では、プリンタ14に、ステップS17で算出された弁当Pの数量あたりの温室効果ガスの削減量を、ラベルL1上に印刷させる。ラベルL1は、弁当Pの箱に貼り付けられる。これにより、温室効果ガスの排出量削減の成果を弁当Pの購入者に好適にアピールすることが可能となる。このため、弁当Pの需要を高めるとともに、各対象農産物APの需要についても高めることができる。そして、各農業者Fにバイオ炭Bを使用するインセンティブを提供することができるため、バイオ炭の普及促進を図ることができる。その後、本処理を終了する。
【0060】
なお、対象生産量は、対象期間中においては、値が確定しないことが想定される。その場合、例えば、当該対象期間における対象生産量の計画値とすることが考えられる。このため、当該対象期間の終了時に、対象生産量の計画値と実績値との間で過不足が生じた場合には、算出処理を、対象生産量の実績値を用いて再度実行する。第3削減量及び弁当Pの数量あたりの温室効果ガスの削減量について、それぞれ、計画値に基づく値と実績値に基づく値との差分を求め、当該差分を、排出量取引により相殺することが考えられる。
【0061】
また、バイオ炭Bは、弁当Pの製造に伴い排出された残渣Rを原料として製造可能である。その場合、例えば、残渣Rは、弁当業者Mから電力会社Eへと供給され、バイオ炭製造施設100においてバイオ炭Bへと加工される。
【0062】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0063】
本実施形態によれば、読出部111は、バイオ炭Bの単位重量あたりの温室効果ガスの削減量である第1削減量と、単位面積の農地Nに単位期間中に使用されたバイオ炭Bの総重量である施用量と、当該単位面積の農地Nにて単位期間中に生産される農産物である対象農産物APの総重量である対象生産量と、を取得する。算出部112は、第1削減量と、施用量と、に基づいて、単位面積の農地Nにおける単位期間あたりの温室効果ガスの削減量である第2削減量を算出し、第2削減量と、対象生産量と、に基づいて、対象農産物APの単位重量あたりの温室効果ガスの削減量である第3削減量を算出する。
【0064】
さらに、読出部111は、弁当Pの数量あたりの対象農産物APの重量である対象含有量を取得する。算出部112は、第3削減量と、対象含有量と、に基づいて、弁当Pの数量あたりの温室効果ガスの削減量を算出する。
【0065】
第3削減量は、各対象農産物APに関する環境価値V1の算出に活用可能である。第4削減量は、対象製品Pに関する環境価値V2の算出に活用可能である。このため、本実施形態によれば、環境価値の算出を支援することができる。これにより、バイオ炭の普及促進を図るビジネスモデルを、より円滑に実行可能とすることができる。したがって、バイオ炭の普及促進に貢献することができる。
【0066】
また、弁当Pの排出量削減への貢献度を可視化することができるため、温室効果ガスの排出量削減の成果を、弁当Pの購入者に好適にアピールすることが可能となる。このため、弁当Pの需要を高めるとともに、各対象農産物APの需要についても高めることができる。これにより、各農業者Fにバイオ炭Bを使用するインセンティブを提供することができるため、バイオ炭の普及促進を図ることができる。
【0067】
本実施形態によれば、弁当Pは、異なる農地Nで生産される、第1対象農産物AP1と、第2対象農産物AP2と、第3対象農産物AP3と、を原料として含む。算出部112は、第1対象農産物AP1に関する第3削減量及び対象含有量と、第2対象農産物AP2に関する第3削減量及び対象含有量と、第3対象農産物AP3に関する第3削減量及び対象含有量と、に基づいて、弁当Pの数量あたりの温室効果ガスの削減量を算出する。
【0068】
対象製品は、互いに異なる農地で生産された複数の対象農産物を含むことがある。しかし、本実施形態によれば、かかる対象製品である弁当Pにおいても、対象製品の数量あたりの温室効果ガスの削減量を算出することができる。
【0069】
本実施形態によれば、バイオ炭Bは、弁当Pの製造に伴い排出された残渣Rを原料として製造される。
【0070】
これにより、弁当業者Mは、例えば通常の焼却処分により残渣Rを処分した場合と比較して、温室効果ガスの排出量を削減することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく適宜変更が可能である。
【0072】
・排出量削減支援システム1が適用されるビジネスモデルは、上記実施形態のものに限定されない。以下、別例に係るビジネスモデルに排出量削減支援システム1が適用された事例について
図5を参照しつつ説明する。
図5は、別例に係るビジネスモデルに適用された排出量削減支援システム1の全体構成を例示するシステム構成図である。以下、上記実施形態との相違点を中心に説明し、上記実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0073】
図5に示すように、弁当Pは、弁当業者Mから需要家C2に対して直接販売されるようにしてもよい。各対象農産物APは、各農業者Fから、電力会社Eを介さず弁当業者Mに直接提供されるようにしてもよい。また、各対象農産物APは、各農業者Fから、電力会社Eや弁当業者Mに販売されるだけでなく、需要家C2に対して直接販売されるようにしてもよい。なお、需要家C2は、企業等の組織であってもよいし、個人の需要家であってもよい。この場合、電力会社Eの関与をより小さくした形で、バイオ炭の普及を図るビジネスモデルを実現可能である。
【0074】
この場合、排出量削減支援システム1は、プリンタ31と、プリンタ32と、を備えるようにしてもよい。
【0075】
プリンタ31は、例えば、弁当業者Mにおいて使用される。プリンタ31は、情報端末21Cと接続されており、情報端末21Cにより制御される。削減量算出装置10は、算出部112の算出結果を情報端末21Cに送信し、詳しくは、弁当Pの数量あたりの温室効果ガスの削減量を送信する。情報端末21Cは、プリンタ31に、削減量算出装置10により送信された弁当Pの数量あたりの温室効果ガスの削減量が表示されたラベルL2を印刷させる。ラベルL2は、弁当Pの容器に貼り付けられる。これにより、弁当Pの排出量抑制への貢献度を可視化することができるため、弁当業者Mは、排出量削減の成果を、需要家C2に好適にアピールすることができる。
【0076】
プリンタ32は、例えば、第2農業者F2において使用される。プリンタ32は、情報端末21Bと接続されており、情報端末21Bにより制御される。削減量算出装置10は、算出部112の算出結果を情報端末21Bに送信し、詳しくは、第3対象農産物AP3の第3削減量を送信する。情報端末21Bは、プリンタ32に、第3対象農産物AP3の第3削減量が表示されたラベルL3を印刷させる。ラベルL3は、例えば、第3対象農産物AP3の入った袋に貼り付けられる。これにより、第3対象農産物AP3の排出量削減への貢献度を可視化することができるため、第2農業者F2は、温室効果ガスの排出量削減の成果を、需要家C2に好適にアピールすることができる。なお、この場合、第3対象農産物AP3は、対象製品にも相当する。
【0077】
また、削減量算出装置10は、第2削減量を情報端末21Cに送信するようにしてもよい。これにより、第2農業者F2は、第3農地N3により削減できた温室効果ガス排出量を知ることができる。また、ラベルL3に対し、第2削減量を印刷するようにしてもよい。これによっても、第2農業者F2は、温室効果ガスの排出量抑制への貢献を需要家C2にアピールすることができる。
【0078】
なお、各プリンタ31,32は、必須の構成ではない。例えば、削減量算出装置10は、算出部112により算出された結果を、各情報端末21A,21Bに表示させるようにしてもよい。その場合においても、第2農業者F2や弁当業者Mは、削減量算出装置10から提供された情報を、適宜活用することができる。
【0079】
・上記実施形態では、各対象農産物APは、ホウレンソウと、キャベツと、ピーマンとであったが、対象農産物の種類は、特に限定されるものではない。対象農産物は、作付けの間隔が1年間であるものにも限定されない。1の単位期間中に、農産物を複数回作付けしてもよい。バイオ炭は、作付けを行うたびに農地に施用される必要はなく、例えば、1回おきに施用されてもよい。
【0080】
・対象製品は、対象農産物が原料として使用されたものであれば、特に限定されない。例えば、対象製品は、飲食店にて店内飲食に供される食品であってもよい。対象農産物についても、特に限定されない。また、対象製品は、食品に限定されるものではなく、例えば、対象農産物としての綿花を原料として製造された衣料品や、対象農産物としてのサトウキビを原料として製造されたバイオ燃料といったものでもよい。
【0081】
・上記実施形態では、削減量算出装置10は、データベース13を有していたが、データベース13は、削減量算出装置において必須の構成ではない。算出処理に必要な情報は、例えば、クラウド上のデータベースに記憶されていてもよい。その場合、削減量算出装置10(読出部111)は、通信部16を介してクラウド上のデータベースにアクセスするとともに、クラウド上のデータベースから算出処理に必要な情報を読み出すようにする。かかる構成においては、読出部111と、通信部16とが、取得部に相当する。
【0082】
・上記実施形態では、削減量算出装置10(算出部112)の算出結果を表示する対象は、対象製品に付されるラベルであったが、特に限定されるものではない。削減量算出装置10(算出部112)の算出結果は、例えば、対象製品の容器に直接表示されてもよいし、対象製品としての飲食物について記載されたメニュー表に表示されてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 削減量算出装置
111 読出部(取得部)
112 算出部
AP 対象農産物
AP1 第1対象農産物
AP2 第2対象農産物
AP3 第3対象農産物
N 農地
N1 第1農地
N2 第2農地
N3 第3農地
P 弁当(対象製品)
R 残渣