(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001744
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 28/00 20060101AFI20231227BHJP
B30B 15/28 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B21D28/00 Z
B30B15/28 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100605
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521113771
【氏名又は名称】山梨金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一栄
(72)【発明者】
【氏名】久保 考広
(72)【発明者】
【氏名】山梨 潔昭
(72)【発明者】
【氏名】宮田 猛
【テーマコード(参考)】
4E048
4E089
【Fターム(参考)】
4E048AD01
4E048AD02
4E089GA01
4E089GB06
4E089GC10
(57)【要約】
【課題】金型に異常が発生した場合に成形品の不良を検知可能な、成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】導電部材(リボン材3)を、上型(パンチ1)及び下型(ダイ2)でプレス加工して成形品(31、31A)を製造する際、成形品を介して互いに接触する上型及び下型を含む閉回路(欠損検知構造10)を形成する。閉回路の抵抗値を測定し、測定した抵抗値に基づいて、プレス加工の異常を検知する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電部材を、上型及び下型でプレス加工して成形品を製造する、成形品の製造方法において、
前記成形品を介して互いに接触する前記上型及び前記下型を含む閉回路を形成し、
前記閉回路の抵抗値を測定し、
測定した前記抵抗値に基づいて、前記プレス加工の異常を検知する、成形品の製造方法。
【請求項2】
測定した前記抵抗値が、前記プレス加工に異常がない場合における前記抵抗値に基づく閾値範囲外の場合に、前記異常を検知する、
請求項1に記載の、成形品の製造方法。
【請求項3】
測定した前記抵抗値の時間的変化に基づいて、前記異常を検知する、
請求項1に記載の、成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の打ち抜き装置は、パンチとダイとによって被加工物を所定の形状に打ち抜く打ち抜き装置であって、検知装置と判定装置とを備える。検知装置は、パンチによる打ち抜き方向に沿う軸と直交する平面内における、直交する二軸への水平分力を取得する。判定装置は、検知装置が取得した水平分力に基づき、パンチ又はダイの欠損の有無を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記打ち抜き装置は、分力の異常を検知した場合に、パンチ又はダイが欠損しているか否かを判定し、打ち抜いた被加工物に品質の劣化が生じる可能性を推定することができる。しかしながら、上記打ち抜き装置は、実際に被加工物に不良が生じたか否かは判断できないため、作業者等が被加工物を目視して不良の有無を確認する工程が必要となる。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、金型に異常が発生した場合に成形品の不良を検知可能な、成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る成形品の製造方法は、下記を特徴としている。
導電部材を、上型及び下型でプレス加工して成形品を製造する、成形品の製造方法において、
前記成形品を介して互いに接触する前記上型及び前記下型を含む閉回路を形成し、
前記閉回路の抵抗値を測定し、
測定した前記抵抗値に基づいて、前記プレス加工の異常を検知する、成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る成形品の製造方法によれば、金型に異常が発生した場合に成形品の不良を検知できる効果を奏する。
【0008】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明に係る成形品の製造方法に用いる欠損検知構造の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、正常なパンチ及びこのパンチに打ち抜かれた所定形状の成形品を示す図である。
【
図4】
図4は、欠損したパンチ及びこのパンチに打ち抜かれた成形品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0011】
図1は、本発明に係る成形品の製造方法に用いる欠損検知構造の一例を示す概略図であり、
図2は、
図1におけるA部分拡大図である。
図1に示すように、欠損検知構造10は、パンチ1と、ダイ2と、長尺の導電部材であるリボン材3と、電源装置4と、電流測定装置5と、電気回路6、7、8と、判定部9と、を備える。パンチ1とダイ2とによって、リボン材3の一部を所定形状に打ち抜いて成形品31を製造する。
【0012】
電源装置4は閉回路に電源を供給し、電流測定装置5は閉回路に流れる電流値を測定し表示する。電気回路6は電源装置4とパンチ1とを電気的に接続し、電気回路7はダイ2と電流測定装置5とを電気的に接続し、電気回路8は電流測定装置5と電源装置4とを電気的に接続する。
【0013】
具体的には、
図2に示すように、パンチ1とダイ2とは、リボン材3の一部が打ち抜かれた成形品31を介して互いに接触し、電源装置4、電流測定装置5、及び電気回路6、7、8を含む閉回路を形成する。すなわち、欠損検知構造10は、パンチ1、ダイ2、及びリボン材3を含む閉回路を有する。この閉回路において、パンチ1、ダイ2、及びリボン材3の抵抗によって、電流測定装置5に表示される値が変動する。電流測定装置5は、閉回路を流れる電流値の時間的変化を測定し表示することができる。
【0014】
判定部9は、プレス加工に異常がない場合、すなわち正常時の電流測定結果に基づいて定められた閾値範囲を予め記憶し、電流測定装置5の測定結果が入力される。判定部9は、記憶している閾値範囲と入力された測定結果とを比較し、測定結果が正常時の閾値範囲外である場合に、プレス加工の異常ありと判定し、判定結果を出力する。作業者等は、判定部9が出力した判定結果によって、プレス加工の異常有無を認識できる。また、作業者等は、電流測定装置5に表示された値を見ることで、プレス加工の異常有無を判断することもできる。
【0015】
図3は、正常なパンチ11及びこのパンチ11に打ち抜かれた所定形状の成形品31を示す図であり、
図4は、欠損したパンチ11A及びこのパンチ11Aに打ち抜かれた成形品31Aを示す図である。
図4に示すように、欠損したパンチ11Aは、リボン材3に面する位置に欠損箇所12を有する。このため、欠損したパンチ11Aは、所定形状にリボン材3を打ち抜けず、このパンチ11Aに打ち抜かれた成形品31Aにも欠損箇所32が存在する。
【0016】
欠損したパンチ11Aによって打ち抜かれた成形品31Aには欠損箇所32が存在するため、
図3に示す所定形状の成形品31と体積が異なる。このため、例えば、正常に打ち抜かれた成形品31の抵抗値が10mΩ以下である場合において、打ち抜かれた成形品31Aの抵抗値が12mΩであると、正常時の閾値範囲と異なることとなる。よって、電流測定装置5に表示される値が正常時に表示される値と異なる。したがって、作業者等は、リボン材3が所定形状に打ち抜けていないことを、電流測定装置5の値を見て判断することができる。このため、作業者等は、成形品31Aを目視で確認することなく、パンチ11A又はダイ2の欠損等の異常を検知できる。
【0017】
電流測定装置5が、例えば、パンチ1及びダイ2がリボン材3に接触した時点から、成形品31がリボン材3の残りの部分から完全に分離し打ち抜きが完了した時点までの電流値の時間的変化を測定する場合、判定部9は測定結果の波形に基づいて異常を検知してもよい。この場合、判定部9は、予め正常時の波形を記憶しておき、測定結果の波形と市場時の波形とを比較した結果、例えば、両者の類似度が閾値未満のときに異常を検知してもよい。また、作業者等が、電流測定装置5による測定結果の波形を見て、正常時の波形との比較に基づいて、異常を検知することもできる。
【0018】
欠損検知構造10によれば、リボン材3の一部が打ち抜かれた成形品31の体積によって、電流測定装置5に表示される測定値が変動するので、電流測定装置5の値によって、成形品31を製造する際の、パンチ1とダイ2とによるプレス加工の異常を検知できる。よって、作業者等は、成形品31を目視して確認することなく、パンチ1又はダイ2の欠損等の異常を検知できる。プレス加工の異常としては、パンチ1又はダイ2の欠損、摩耗、パンチ1又はダイ2への異物の付着等があり得る。
【0019】
欠損検知構造10によれば、電流測定装置5の値によって、パンチ1とダイ2とによるプレス加工の異常を検知するので、加工工程の自動化が容易となり、コストダウンが可能となる。
【0020】
また、欠損検知構造10によれば、成形品が所定形状と異なることを電気的に検知できるため、不良品の発生を即座に検知できる。したがって、例えば厚板に対して微細な加工が必要な場合等、パンチ1又はダイ2が破損しやすい場合であっても、不良品の発生を瞬時に検知できるので、不良品の製造数を削減できる。
【0021】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0022】
上記実施形態では、電流測定装置5の測定値が、正常時の閾値範囲と異なるとき、すなわちプレス加工に異常がない場合における閾値範囲外のときに、プレス加工の異常を検知したが、電流値に限らず、閉回路の抵抗値又は電圧値を測定して、異常を検知してもよい。
【0023】
また、上記実施形態では、打ち抜き加工の例を示したが、曲げ加工等のプレス加工にも欠損検知構造10を適用することができる。
【0024】
ここで、上述した本発明に係る成形品の製造方法の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
【0025】
[1] 導電部材(リボン材3)を、上型(パンチ1)及び下型(ダイ2)でプレス加工して成形品(31、31A)を製造する、成形品の製造方法において、
前記成形品を介して互いに接触する前記上型及び前記下型を含む閉回路(欠損検知構造10)を形成し、
前記閉回路の抵抗値を測定し、
測定した前記抵抗値に基づいて、前記プレス加工の異常を検知する、成形品の製造方法。
【0026】
上記[1]の構成の成形品の製造方法によれば、成形品を目視により確認することなく、プレス加工の異常、即ち上型、下型及び成形品の少なくともいずれかに発生した欠損や異物付着等の異常を、電気的に検知できる。上型、下型に欠損や異物付着等の異常が発生した場合には成形品に欠け等の異常が発生する。この場合、成形品の体積が正常時と異なり、成形品の抵抗値が正常時と異なる。また、上型及び下型の少なくともいずれか一方の体積も正常時と異なる。よって、閉回路の抵抗値を測定し、測定値に基づいて、プレス加工の異常を検知できる。このように、成形品の状態、すなわち成形品が不良か否か、を電気的に検知できるので、作業者等が成形品を目視して確認する工程が不要となる。したがって、加工工程の自動化が容易となり、成形品の製造コスト削減が可能となる。
【0027】
[2] 測定した前記抵抗値が、前記プレス加工に異常がない場合における前記抵抗値に基づく閾値範囲外の場合に、前記異常を検知する、
上記[1]に記載の、成形品の製造方法。
【0028】
[3] 測定した前記抵抗値の時間的変化に基づいて、前記異常を検知する、
上記[1]に記載の、成形品の製造方法。
【符号の説明】
【0029】
1 パンチ
2 ダイ
3 リボン材
4 電源装置
5 電流測定装置
6、7、8 電気回路
9 判定部
10 欠損検知構造
11、11A パンチ
31、31A 成形品
12、32 欠損箇所