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特開2024-17441ガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017441
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/68 20060101AFI20240201BHJP
   F16L 3/11 20060101ALI20240201BHJP
   F16L 3/24 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A62C35/68
F16L3/11
F16L3/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120077
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000168676
【氏名又は名称】株式会社コーアツ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】藪下 真大
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 彗一郎
(72)【発明者】
【氏名】久保 裕一朗
【テーマコード(参考)】
2E189
3H023
【Fターム(参考)】
2E189BA03
2E189BB04
2E189BB06
2E189CG05
3H023AC03
3H023AD26
(57)【要約】
【課題】ガス系消火設備の巻き出し配管にフレキシブル継手を用いることで、フレキシブル継手が有する施工の簡易化と時間の短縮の利点を享有しながら、フレキシブル継手を用いたことにより生じる負荷が構造物に悪影響を与えないようにしたガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造を提供すること。
【解決手段】巻き出し配管5に、可撓性を有する蛇腹部を備えたフレキシブル継手を用いるとともに、ガス系消火剤が放出される際にフレキシブル継手に生じる負荷を、吊り部材6を介して、建築構造物の天井スラブ又は梁により支持するようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造であって、前記巻き出し配管に、可撓性を有する蛇腹部を備えたフレキシブル継手を用いるとともに、ガス系消火剤が放出される際にフレキシブル継手に生じる負荷を、吊り部材を介して、建築構造物の天井スラブ又は梁により支持するようにしたことを特徴とするガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造。
【請求項2】
前記巻き出し配管の両端部を、吊り部材を介して、建築構造物の天井スラブ又は梁により支持するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造。
【請求項3】
前記吊り部材が、長さ調節機構を備えるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造。
【請求項4】
前記吊り部材を、巻き出し配管の先端部を固定した支持部材に接続するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造。
【請求項5】
前記吊り部材が、剛性を有する消火配管又は消火配管の枝管を介在させるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化物ガスや不活性ガス(イナートガス)などの消火剤ガスを使用するガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハロゲン化物ガスや不活性ガス(イナートガス)などの消火剤ガスを使用するガス系消火設備(例えば、特許文献1参照。)の巻き出し配管5は、例えば、図22に示すように、噴射ヘッドを天井ボードの穴位置に正確に取り付けるために、複数本の鋼管とエルボ等の継手を組み合わせて位置を調整し、複数回のねじ込み施工を要する構造のものが採用されてきた。
しかしながら、この巻き出し配管を施工する際の位置合わせには、熟練の技術を要するとともに、正確な寸法の配管を切り出すことに時間を要するため、施工者の負担となっていた。
【0003】
ところで、この問題点を解消するために、巻き出し配管に、水消火設備の巻き出し配管に用いられている可撓性を有するフレキシブル継手(例えば、特許文献2参照。)を適用することを考えられる。
すなわち、巻き出し配管に、フレキシブル継手を用いることで、複数本の鋼管によるねじ込み作業が1回の作業で完了するため、施工の簡易化と時間の短縮につながることが期待できる。
【0004】
この考えに基づいて、本件出願人らは、ガス系消火設備の巻き出し配管に用いることができるフレキシブル継手を提案した(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-206397号公報
【特許文献2】特開2018-17311号公報
【特許文献3】特開2022-40581号公報
【特許文献4】特開2011-125673号公報
【特許文献5】特許第5276728号公報
【特許文献6】特許第5276730号公報
【特許文献7】特許第6363318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ガス系消火設備の巻き出し配管にフレキシブル継手を用いた場合、ガス系消火設備において使用する消火剤ガスの圧力が水系消火設備において使用する水系消火剤と比較して高圧であるため、ガス系消火剤が放出される際にフレキシブル継手にかかる圧力も大きくなる。このため、フレキシブル継手の設置形態によっては、フレキシブル継手が伸長することなどにより生じる負荷が天井等の構造物に作用することになるため、構造物に悪影響を与えない何らかの対策が必要である。
【0007】
本発明は、上記ガス系消火設備の巻き出し配管にフレキシブル継手を用いた場合に、天井等の構造物に作用する負荷の問題点に鑑み、ガス系消火設備の巻き出し配管にフレキシブル継手を用いることで、フレキシブル継手が有する施工の簡易化と時間の短縮の利点を享有しながら、フレキシブル継手を用いたことにより生じる負荷が構造物に悪影響を与え
ないようにしたガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造は、ガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造であって、前記巻き出し配管に、可撓性を有する蛇腹部を備えたフレキシブル継手を用いるとともに、ガス系消火剤が放出される際にフレキシブル継手に生じる負荷を、吊り部材を介して、建築構造物の天井スラブ又は梁により支持するようにしたことを特徴とする。
【0009】
この場合において、前記巻き出し配管の両端部を、吊り部材を介して、建築構造物の天井スラブ又は梁により支持するようにすることができる。
【0010】
また、前記吊り部材が、長さ調節機構を備えるようにすることができる。
【0011】
また、前記吊り部材を、巻き出し配管の先端部を固定した支持部材に接続するようにすることができる。
【0012】
また、前記吊り部材が、剛性を有する消火配管又は消火配管の枝管を介在させるようにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造によれば、巻き出し配管に可撓性を有する蛇腹部を備えたフレキシブル継手を用いることで、フレキシブル継手が有する施工の簡易化と時間の短縮の利点を享有しながら、ガス系消火剤が放出される際にフレキシブル継手に生じる負荷を、吊り部材を介して、建築構造物の天井スラブ又は梁により支持するようにすることで、フレキシブル継手を用いたことにより生じる負荷が構造物に悪影響を与えることを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の第1実施例を示す説明図である。
図2】同ガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造に用いる吊り部材の説明図である。
図3】同ガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造に用いる支持部材及び野縁受けの説明図である。
図4】同ガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の吊り部材の説明図である。
図5】同ガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の吊り部材の説明図である。
図6】同ガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の第2実施例を示す説明図である。
図7】同ガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の第3実施例を示す説明図である。
図8】同ガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の第4実施例を示す説明図である。
図9】同ガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の要部の拡大図である。
図10】同ガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の要部の拡大図である。
図11】同ガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の要部の拡大図である。
図12】同ガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の吊り部材の説明図である。
図13】同ガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の吊り部材の説明図である。
図14】同ガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の吊り部材の説明図である。
図15】同ガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の第5実施例を示す要部の拡大図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図16】同ガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の要部の拡大図である。
図17】ガス系消火設備の巻き出し配管を構成する巻き出し配管用管継手を示す説明図である。
図18】ガス系消火設備に用いる消音機能を備えた噴射ヘッドの例を示す説明図である。
図19】ガス系消火設備の巻き出し配管を構成する巻き出し配管用管継手(組み立て前)の一例を示す説明図である。
図20】ガス系消火設備の巻き出し配管を構成する巻き出し配管用管継手(組み立て後)の一例を示す説明図である。
図21】ガス系消火設備の巻き出し配管を構成する巻き出し配管用管継手の一例を示す要部の拡大図である。
図22】従来のガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0016】
図1に、本発明のガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の第1実施例を示す。
このガス系消火設備1は、図22に示した従来のガス系消火設備1と同様、貯蔵容器2に繋がる消火配管3及び枝管31と、消火剤ガスを噴射する噴射ヘッド4と、消火配管3と噴射ヘッド4との間に設けられる巻き出し配管5とを有する。
ここで、ガス系消火設備1の各構成要素は、巻き出し配管5を除いて、従来汎用されている機器や部材を用いることができる。
また、消火剤ガスには、消火に用いることが可能な各種のガスを用いることができる。例えば、ハロゲン化物ガスや不活性ガス(イナートガス)などが消火剤ガスの一例となる。不活性ガス(イナートガス)としては、窒素ガス、アルゴンガスなどを用いることができる。特に、窒素ガスは、人体への悪影響が少ないため、消火剤ガスとして好ましく用いることができる。
【0017】
ガス系消火設備1において、防護区画内で火災が発生すると、貯蔵容器2の容器弁が手動又は自動で開放され、貯蔵容器2に貯蔵されている消火剤ガスが、貯蔵容器2から消火配管3を通って噴射ヘッド4から防護区画内に放出される。これにより、防護区画内の酸素濃度が低下するなどして、防護区画内の火災が鎮火される。
【0018】
ところで、ガス系消火設備1の施工では、貯蔵容器2、消火配管3、巻き出し配管5及び噴射ヘッド4が、それぞれ異なる者(工事業者)によって異なる日時に施工される場合がある。
本実施形態によれば、例えば、図17に示すように、巻き出し配管5を構成する巻き出し配管用管継手50のベローズ管51が可撓性を有することで、曲げること(換言すると変形させること)ができるため、巻き出し配管5が施工される現場の状況(建築資材やその他の物の配置状態、天井裏や壁裏など施工場所の広さなど。)に応じて、非熟練工であっても、巻き出し配管5を簡単に施工することができる。
このため、例えば、貯蔵容器2と消火配管3が施工されたものの、巻き出し配管5を施工する熟練工のスケジュールを確保できないなどの理由により、噴射ヘッド4の施工が遅れるという事態の発生を抑制することができる。つまり、貯蔵容器2と消火配管3が施工された後、熟練工のスケジュールの確保が難しい場合などであっても、非熟練工により巻き出し配管5を施工して、噴射ヘッド4を施工するフェーズに移ることができる。
【0019】
噴射ヘッド4は、消火剤ガスを噴射(つまり放出)する装置である。
噴射ヘッド4は、巻き出し配管5を介して、消火配管3に接続されている。噴射ヘッド4は、例えば、開放型であり、常に開いている。噴射ヘッド4は、天井や壁などの、防護区画内に消火剤ガスを放出可能な、様々な箇所に設置することができる。噴射ヘッド4には、天井面に設置する噴射ヘッド、壁に設置される横吹き出し用の噴射ヘッドなどを用いることができる。
本実施形態において、噴射ヘッド4には、特許文献4~7に開示されたような、消音機能を備えた噴射ヘッド、好ましくは、多孔性材料からなる消音部材を備えた噴射ヘッドを用いることができる。この噴射ヘッド4の例としては、図18(a)に示す、複数個のオリフィス42を備え、その出口に、中心部に空隙の孔径が大きな3次元の網目状組織からなる金属多孔性材料41aを、外周部にそれより空隙の孔径が小さな金属多孔性材料41bを層状に配して構成した円筒形状の多孔性の気流の乱れをなくす消音部材41を備えた噴射ヘッド4Aや、図18(b)に示す、噴射ヘッド4Aの入口にオリフィス43aを形成したオリフィス板43及び3次元の網目状組織からなる金属多孔性材料41cを備えた噴射ヘッド4Bや、図18(c)に示す、噴射ヘッド4Aの入口にオリフィス43aを形成したオリフィス板43を備え、さらに、その下流側空間に3次元の網目状組織からなる金属多孔性材料41dを配設した噴射ヘッド4Cを挙げることができる。
【0020】
巻き出し配管5は、消火配管3と噴射ヘッド4との間に設けられる。
巻き出し配管用管継手50は、巻き出し配管5が有する部材である。巻き出し配管5は、1つの巻き出し配管用管継手50のみから構成されてもよいし、巻き出し配管用管継手50以外の部材を有していてもよく、また、複数の巻き出し配管用管継手50を有していてもよい。巻き出し配管5が有する巻き出し配管用管継手50以外の部材の一例としては、他の配管、実施形態に係る巻き出し配管用管継手50と同様の構成を有する他の巻き出し配管用管継手、エルボ、ソケット、及びティー等の継手のうちの少なくとも1つを挙げることができる。巻き出し配管5がこれらの部材を有する場合には、巻き出し配管5の取り付け可能域を拡大することができる。
【0021】
ここで、巻き出し配管用管継手50には、特許文献3に開示したもの(本明細書において、「フレキシブル継手」という場合がある。)を好適に用いることができる。
図19は、本実施形態に係る巻き出し配管用管継手の模式的側面図(組み立て前)であり、図20は、実施形態に係る巻き出し配管用管継手の模式的側面図(組み立て後)である。図19図20では、理解を容易にするため、各部材の一部を適宜透過的に描き、それら部材に覆われている部材が見えるようにしている。
図19図20に示すように、本実施形態に係る巻き出し配管用管継手50は、ガス系消火設備1に用いられる巻き出し配管用管継手であって、山部と谷部が繰り返される管壁を備えたベローズ管51と、ベローズ管51に巻き付けられている補強部材52と、を有し、ベローズ管51は、可撓性を有し、ベローズ管51の谷部は、螺旋状に延伸する一続きの溝であり、補強部材52は、ベローズ管51の谷部に沿ってベローズ管51に巻き付けられている巻き出し配管用管継手である。巻き出し配管用管継手50(ベローズ管51)は可撓性を有し、様々な形状に曲げることができる。
【0022】
本実施形態に係る巻き出し配管用管継手50は、ベローズ管51及び補強部材52に加えて、ベローズ管51の外面を覆い、ベローズ管51の伸長を抑制する伸長抑制部材53と、ベローズ管51の一端側に設けられる第1の治具固定用リング54aと、ベローズ管51の他端側に設けられる第2の治具固定用リング54bと、ベローズ管51の一端に接続される円筒形状の中空部材55と、中空部材55に回転可能に取り付けられるナット56と、ナット56に螺合する第1取付部材57aと、第2の治具固定用リング54bに接合されている第2取付部材57bとを有していてもよい。
【0023】
ベローズ管51は、中空の部材である。ベローズ管51は、チューブと呼ばれることがある。消火配管3から供給される消火剤ガスは、ベローズ管51内(中空の部分)を通過する。ベローズ管51は、例えば、金属製の平板をチューブ状(円筒形状)に曲げる(あるいは丸める、巻く)ことにより円筒管を作製し、ダイスなどの装置を用いて、この作製した円筒管の管壁を山部と谷部が繰り返される形状にすることにより製造することができる。ベローズ管51の材料としては、例えば、ステンレス鋼、より具体的には、クロムとニッケルを含む合金鋼などを用いることができる。当該合金鋼を用いる場合、ベローズ管51の全重量に占めるクロムの含有量は、例えば、18%以上である。
【0024】
ベローズ管51の管壁は、山部と谷部が繰り返される形状を有する。これら山部や谷部は、「ひだ」、あるいは凸部や凹部などと呼ばれることがある。ベローズ管51は、ベローズ管51内を通過する消火剤ガスの圧力により、伸長する虞があるが、本実施形態では、後述する伸長抑制部材53によって、ベローズ管51の伸長を抑制している。
【0025】
ベローズ管51は、可撓性を有する。これにより、ガス系消火設備1を施工する現場において、消火配管3と噴射ヘッド4の間にある障害物や、消火配管3と噴射ヘッド4との間の距離などに臨機応変に対応して、巻き出し配管用管継手50を曲げつつ、巻き出し配管用管継手50、ひいては巻き出し配管5を施工することができる。このため、非熟練工であっても、巻き出し配管5が施工される現場の状況に応じて、消火配管3と噴射ヘッド4を巻き出し配管5で容易に接続や連結などすることができる。つまり、当該現場の状況ごとに現場の寸法を測定したり、測定した寸法に応じて配管を切り出したり、切り出した配管にネジ溝を形成したりなどする必要がなく、現場の状況に応じて巻き出し配管用管継手50を曲げて、巻き出し配管5を構築することができる。障害物や距離はガス系消火設備1を施工する現場ごとに異なり得るが、ベローズ管51が可撓性を有していることにより、非熟練工であっても、当該現場の様々な状況に応じて、噴射ヘッド4と消火配管3を接続や連結などすることができる。
【0026】
図21は、ベローズ管51と補強部材52を拡大して示した図である。
図21において、矢印は、螺旋状に延伸する様子を説明するために示したものである。図21に示すように、ベローズ管51の谷部は、螺旋状に延伸する一続きの溝である。後述の補強部材52は、ベローズ管51の谷部に沿ってベローズ管51に巻き付けられている。ベローズ管51の管壁において複数の谷部が独立している場合、各谷部に設ける独立した複数の補強部材52を設け、それぞれの補強部材52をベローズ管51の各谷部に固定する必要がある。しかし、本実施形態によれば、補強部材52を、螺旋状に延伸する一続きの溝に挿入し、ベローズ管51を圧縮することにより、補強部材52を谷部(つまり谷部となる凹部内)に簡単に挟み込み、補強部材52を谷部に密着固定することできる。
【0027】
ベローズ管51の肉厚T1は、ベローズ管51の可撓性が損なわれないよう、0.5mm以下であることが好ましく、0.35mm以下であることがより好ましい。他方、ベローズ管51の肉厚T1は、ベローズ管51に耐圧強度を持たせるため、0.2mm以上であることが好ましく、0.25mm以上であることがより好ましい。一般に耐圧強度を満足させる場合にはベローズ管51の肉厚T1の増加を行うが、上記の数値範囲では(たとえ上限値の0.5mmであっても)、ベローズ管51にガス消火に必要な耐圧強度を満たせない虞がある。もっとも、ベローズ管51の肉厚T1を上記の数値範囲の上限値(0.5mm)より大きくすると、ベローズ管51の可撓性が損なわれる虞がある。そこで、本実施形態では、ベローズ管51の谷部に補強部材52を設けることにより、ベローズ管51の可撓性と耐圧性を両立させている。
【0028】
補強部材52は、ベローズ管51の耐圧強度を補強するためにベローズ管51に巻き付けられる部材であって、ベローズ管51の谷部に設けられる。このような補強部材52を
設けることにより、消火剤ガス通過時の圧力上昇によりベローズ管51の乱れ(伸びなどによってベローズ管51の山部や谷部の形状(ひだの形状)が変形すること)による可撓性の損失を防ぎ、かつ耐圧性を向上させることができる。上記のとおり、ベローズ管51に可撓性を持たせるためには、ベローズ管51の肉厚T1をベローズ管51の可撓性が損なわれない程度に留めておくことが有効であるが、そのようにすると、ベローズ管51に十分な耐圧強度を持たせることができない。一般に、ガス消火の場合は、配管内の圧力が水消火や泡消火の場合より大きくなるため、ベローズ管51に水消火や泡消火の場合よりも大きな耐圧強度を持たせることが必要となる。そこで、本実施形態では、補強部材52をベローズ管51に巻き付けることにより、ベローズ管51に適度の可撓性を持たせつつ、十分な耐圧強度を付与している。ベローズ管51の最高使用圧力は、補強部材52が巻き付けられている状態で、例えば、2MPa以上10.8MPa以下であることが好ましく、3.8MPaより大きく10.8MPa以下であることがより好ましい。
【0029】
補強部材52は、好ましくはベローズ管51の谷部に挟持される。つまり、谷部(凹部)の内壁に挟まれて、保持される。谷部による挟持は、例えば、谷部に補強部材52を設けた後、ベローズ管51を圧縮すること(つまり、ベローズ管51の長さ方向の長さが短くなるようにベローズ管51を圧縮すること)により実現することができる。ベローズ管51を圧縮すると、ベローズ管51の谷部の幅Pが補強部材52の幅と実質的に等しくなる。このようにすれば、ベローズ管51の谷部に補強部材52が密着するため、補強部材52を所定の位置に設置することが可能となる(例えば、補強部材52をベローズ管51の谷部から必要以上にはみださないように配置することが可能となる)。このため、ベローズ管51の実質的な外径(つまり、巻き付けられている補強部材52をベローズ管51の一部とみなして、補強部材52の線径も含めたうえで特定されるベローズ管51の外径)が拡大してしまうことを抑制することができる。換言すれば、補強部材52を巻き付けることによって、ベローズ管51そのものの外径が拡大するわけではないが、補強部材52の線径によりベローズ管51が実質的に円周方向に膨らんだような形状になってしまうことを抑制することができる。また、巻き出し配管用管継手50内(具体的にはベローズ管51内)に消火剤ガスが通過した際の圧力によるベローズ管51の変形を抑制することができる。
【0030】
上記のとおり、ベローズ管51の谷部が独立している場合、各谷部に独立した複数の補強部材52を設け、それぞれをベローズ管51の各谷部に固定する必要がある。しかし、本実施形態によれば、1つ(1本)の補強部材52を、複数の谷部が螺旋状に連続することにより構成される一続きの溝に挿入し、ベローズ管51を圧縮することにより谷部に固定することができる。2つ(2本)以上の補強部材52を、複数の谷部が連続することにより構成される一続きの溝に挿入すれば、耐圧強度をさらに向上させることができる。しかし、補強部材52の数(本数)を必要以上に増加させると、ベローズ管51の可撓性が損なわれる。したがって、ベローズ管51に巻き付ける補強部材52の数は、ベローズ管51の可撓性を損なわない数(本数)であることが好ましい。なお、本実施形態では、1本の補強部材52をベローズ管51に巻き付けている。
【0031】
補強部材52には断面が円形のワイヤや金属製の針金などを用いることが好ましく、特にベローズ管51と同等以上の強度及び耐食性を有する材質のワイヤや金属製の針金などが好ましい。ベローズ管51がステンレス製である場合には、例えば、ワイヤや金属製の針金などもステンレス製にすることができる。
【0032】
以上のように、1つ(1本)の補強部材52には、1本のワイヤや金属製の針金等などの線形状の部材が用いられることから、補強部材52は「補強線」と呼ぶことができる。
【0033】
伸長抑制部材53は、ベローズ管51の外面を覆い、ベローズ管51の伸長を抑制する
部材である。伸長抑制部材53は、ブレイドなどと呼ばれることがある。ベローズ管51は内圧が加わると長さ方向に伸び出し、真直ぐなパイプに戻ろうとする性質を持つ。ベローズ管51の山部及び谷部の形状(ひだの形状)が乱れると、ベローズ管51が有する本来の可撓性が損なわれてしまう。伸長抑制部材53は、例えば、筒状に編まれ、ベローズ管51に密着するようにベローズ管51の外周を被覆する。伸長抑制部材53は、ベローズ管51の両端部において、溶接、加締め、圧着、あるいはこれら1つ以上の方法の組み合わせなどによって固定(例:強固に固定)される。つまり、伸長抑制部材53の一端とベローズ管51の一端、及び伸長抑制部材53の他端とベローズ管51の他端とを上記の方法で固定することにより、ベローズ管51が伸びることを抑制することができる。伸長抑制部材53は、例えば、ステンレス製の線材や帯材及び普通鋼線などを編み込むことにより作製することができる。
【0034】
第1の治具固定用リング54a及び第2の治具固定用リング54bは、治具(巻き出し配管用管継手50を建築資材等に取り付けるための治具)が固定される部位である。つまり、第1の治具固定用リング54aや第2の治具固定用リング54bに治具を固定し、この固定した治具を巻き出し配管用管継手50の施工現場にある建築資材等に固定することにより、巻き出し配管用管継手50を施工現場において固定することができる。第1の治具固定用リング54aや第2の治具固定用リング54bは、伸長抑制部材53(ブレイド)の一端や他端を押さえるように設けられるため、ブレイド押さえリングと呼ばれることがある。第1の治具固定用リング54aは、ベローズ管51の一端側(消火配管3側)に設けられる。第2の治具固定用リング54bは、ベローズ管51の他端側(噴射ヘッド4側)に設けられる。第1の治具固定用リング54a及び第2の治具固定用リング54bは中空の部材である。中空部分には、ベローズ管51及びこれの外面を覆う伸長抑制部材53が挿入される。
【0035】
第1の治具固定用リング54a及び第2の治具固定用リング54bは、例えば、溶接、加締め、圧着、あるいはこれら1つ以上の方法の組み合わせなどによって、伸長抑制部材53の外面に固定することができる。第1の治具固定用リング54a及び第2の治具固定用リング54bの外形は、例えば、円柱形状や多角柱形状などであるが、特に限定されない。
【0036】
火災時の消火剤ガス放出時の反動(放射反力)により、ベローズ管51が大きく暴れ、噴射ヘッド4の位置が安定しない問題が生じる。この暴れを抑えるためには、ベローズ管51を、施工現場にある建築資材等に対して強固に固定する治具が必要となる。消火ガス放出時の反力は一般の水系の消火設備に比べはるかに大きく、固定する治具も大型となり専用の金具で固定する必要がある。そこで、様々な治具の使用を想定し、第1の治具固定用リング54a及び第2の治具固定用リング54bは、いずれも、水消火や泡消火の場合に用いるものと比較して、長めであることが好ましい。具体的には、水消火や泡消火の場合の2倍以上10倍以下の長さであることが好ましい。より具体的には、第1の治具固定用リング54a及び第2の治具固定用リング54bの長さは、いずれも、50mm以上200mm以下であることが好ましい。
【0037】
中空部材55は、円筒形状の部材である。中空部材55は、ベローズ管51の端部に、溶接や接着などの方法で固定されている。中空部材55とベローズ管51の境界は、第1の治具固定用リング54aや第2の治具固定用リング54bに覆われていてもよいし、覆われていなくてもよい。
【0038】
ベローズ管51の一端には中空部材55が接続(接続の具体例:溶接等による接合)され、中空部材55にはナット56に挿入されている。中空部材55は、スリーブなどと呼ばれることがある。中空部材55は凸部Xを有しており、ナット56は、第1の治具固定
用リング54aとこの凸部Xとの間Dにおいて、中空部材55の長さ方向に移動可能とされる。つまり、ナット56は、第1の治具固定用リング54aと凸部Xとの間Dにおいて、図20の左右方向において移動させることができる。このように、本実施形態では、ベローズ管51に第1取付部材57a(消火配管3側の取付部材)を接合(溶接等)するのではなく、ベローズ管51と第1取付部材57aの間にナット56を設けている。
【0039】
ナット56は、中空部材55に回転可能に取り付けられる。これにより、第1取付部材57aを消火配管3(あるいは、エルボ、ソケット、ティー等の継手などの、消火配管3に繋がる部材。以下、消火配管3あるいは消火配管3に繋がる部材のことを「消火配管3等」という。)に取り付けるあたり、巻き出し配管用管継手50の全体を回転させることなく、ナット56を回転させるだけで、第1取付部材57aを巻き出し配管用管継手50(ベローズ管51)に接続や連結などすることができる。
【0040】
ナット56は、さらに、中空部材55に回転可能であることに加えて傾斜可能(つまり、回転可能かつ傾斜可能)に取り付けられることが好ましい。具体的には、ナット56の開口と中空部材55の外面との間に、ナット56を僅かに傾けることができるよう、隙間Q(遊び)が設けられていることが好ましい。このようにすれば、消火配管3等が傾いている場合であっても、消火配管3等の傾き(角度)に合わせて消火配管3等に第1取付部材57aを取り付け、この第1取付部材57aの傾き(角度)に合わせて第1取付部材57aにナット56を取り付けることができる。ナット56を僅かに傾けることができる場合は、第1取付部材57aを消火配管3等が僅かに傾いている場合であっても、消火配管3等の傾き(角度)にあわせて第1取付部材57aを消火配管3等に取り付けた後、巻き出し配管用管継手50の全体(特にベローズ管51)を傾かせることなく、ナット56を傾かせて、第1取付部材57aをナット56に取り付けることができる。
【0041】
ナット56の内側には、例えば、ネジ溝が形成されている。このネジ溝は、第1取付部材57aの外面に設けられたネジ溝と螺合する。なお、本実施形態では、消火配管3側にのみナット56及び中空部材55を設けているが、ナット56及び中空部材55は噴射ヘッド4側にも設けることができる。この場合は、上記した消火配管3側のナット56及び中空部材55を第1ナット及び第1中空部材と称し、噴射ヘッド4側のナット及び中空部材を第2ナット及び第2中空部材と称する。第2中空部材は、ベローズ管の他端に接続(接続の具体例:溶接等による接合)される。第2ナット及び第2中空部材は、上記した消火配管3側のナット56及び中空部材55と同じ構成及び機能を有する。
【0042】
ナット56には、例えば袋ナットを用いることが好ましい。
【0043】
第1取付部材57a(消火配管3側の取付部材)は、巻き出し配管用管継手50を消火配管3等に取り付けるための部材である。第2取付部材57b(噴射ヘッド4側の取付部材)は、巻き出し配管用管継手50を噴射ヘッド4(あるいは、エルボ、ソケット、ティー等の継手などの、噴射ヘッド4に繋がる部材。以下、噴射ヘッド4あるいは噴射ヘッド4に繋がる部材のことを「噴射ヘッド4等」という。)に取り付けるための部材である。取り付けの方法の一例としては、螺合や嵌合、あるいはこれらの組み合わせなどを挙げることができる。螺合により取り付ける場合には、第1取付部材57aや第2取付部材57bの例えば内表面にネジ溝が設けられる。
【0044】
巻き出し配管用管継手50が消火配管3側に上記したナット56(第1ナット)を有している場合、第1取付部材57aは第1ナットに螺合により取り付けられる。巻き出し配管用管継手50が噴射ヘッド4側に上記したナット56と同じ構成及び機能を有する第2ナットを有している場合、第2取付部材57bは第2ナットに螺合により取り付けられる。巻き出し配管用管継手50が消火配管3側にのみ上記したナット56(第1ナット)を
有しており、噴射ヘッド4側に上記したナット56と同じ構成及び機能を有する(第2ナット)を有していない場合、第2取付部材57bは、ベローズ管51に溶接等により接合される。
【0045】
第1取付部材57aの端部と第2取付部材57bの端部との間の距離、すなわち、巻き出し配管用管継手(フレキシブル継手)50の全長Lは、特に限定されるものではない。
【0046】
第1取付部材57aはアダプタと呼ばれることがある。また、第2取付部材57bは、ベローズ管51に溶接等により接合される場合はニップルと呼ばれることがあり、第2ナットに螺合により取り付けられる場合は、第1取付部材57aと同様に、アダプタと呼ばれることがある。第2取付部材57bは、ニップルとして機能する場合は、ベローズ管51と溶接等で接合される部材であって、噴射ヘッド等に対してはネジ接続で接続される。第2取付部材57bとベローズ管51が溶接等で接合される場合は、第2取付部材57bと噴射ヘッド4等と接続するにあたっては、ベローズ管51を回転させることになる。
【0047】
以上説明した巻き出し配管用管継手50によれば、ベローズ管51が可撓性を有することにより、非熟練工であっても、ガス系消火設備1の施工現場の状況に合わせて、巻き出し配管5を施工することができる。また、ベローズ管51の谷部に沿うように少なくとも1本(ベローズ管51の可撓性を損なわない程度の本数)の補強部材52がベローズ管51に巻き付けられているため、ベローズ管51に可撓性を持たせつつ、ベローズ管51の耐圧強度を確保することができる。したがって、耐圧強度は確保されていながらも、簡単に施工できる巻き出し配管用管継手50及びこれを用いたガス系消火設備1を提供することができる。
【0048】
本実施形態では、ナット56と第1取付部材57aは平行ネジ接続のため、接続や取り外し等が容易に行える。また、ナット56は中空部材55にあらかじめルーズで嵌め合わされており、自由に回転、前後可動する。ベローズ管51には中空部材55のスリーブが溶接等で接合される。消火配管3等との接続の際は第1取付部材57aのみをナット56から取り外し、第1取付部材57aのみを消火配管3等に接続することができる。第1取付部材57aとベローズ管51を接続する場合にはベローズ管51と一体となったナット56を、消火配管3等と接続された第1取付部材57aにあてがい、ナット56のみを回転させるだけで接続が行える。第2取付部材57bを噴射ヘッド4等に接続する場合と異なり、ベローズ管51を回転させる必要がないため、作業が楽に行える利点がある。
【0049】
ガス系消火設備1の用いられる従来の巻き出し配管では、正確に天井ボードの穴位置に噴射ヘッド4を取り付けるために、複数本の鋼材配管とエルボ等の継手を組み合わせて位置を調整し、複数回のねじ込み施工を要する。しかし、この巻き出し配管を施工する際の位置合わせには熟練の技術を要し、正確な寸法の配管を切り出すことに時間を要するため施工者の負担となっている。また、地震等の不測の事態が発生しても迅速に事業を復旧できるように、耐震天井化工事が求められている。本実施形態で説明したように、巻き出し配管が可撓性を有するベローズ管51を有することで、複数本の鋼管によるねじ込み作業が1回のねじ込み作業で完了するため、施工簡易化と時間の短縮につながる。一般に、水消火用と比較して使用圧力が著しく高いガス消火用は、大きな耐圧が求められるため、可撓性が乏しいものを使用する必要があった。しかし、本実施形態によれば、可撓性を有するベローズ管51の谷部に補強部材52を設けることで、耐圧性と可撓性を両立するガス系消火設備用巻き出し配管を提供することができる。また、可撓性を有するベローズ管51を備えた本実施形態に係るガス系消火設備用巻き出し配管5によれば、地震等の振動発生時に生じる位相のずれを、区画に固定された消火配管3と天井下地部に固定される噴射ヘッド4との間において吸収することができる。したがって、天井の耐震性を向上させることができる。
【0050】
ところで、ガス系消火設備1の巻き出し配管5の巻き出し配管用管継手50にフレキシブル継手を用いた場合、ガス系消火設備1において使用する消火剤ガスの圧力が水系消火設備において使用する水系消火剤と比較して高圧であるため、ガス系消火剤が放出される際にフレキシブル継手にかかる圧力も大きくなり、巻き出し配管5の設置形態によっては、フレキシブル継手が伸長することなどにより生じる負荷が天井等の構造物に作用することになるため、構造物に悪影響を与えない何らかの対策が必要であることが判った。
以下、フレキシブル継手を用いたことにより生じる負荷が構造物に悪影響を与えないようにしたガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造について説明する。
【0051】
図1に示す、本発明のガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の第1実施例において、巻き出し配管5に、可撓性を有する蛇腹部を備えたフレキシブル継手を用いるとともに、ガス系消火剤が放出される際にフレキシブル継手に生じる負荷を、吊り部材6を介して、建築構造物の天井スラブ(建築構造物が鉄筋コンクリート造(RC造)の場合)又は梁(建築構造物が鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨構造(S造)の場合)により支持するようにしている。
ここで、天井スラブや梁への吊り部材6の支持は、インサートを設けたり、アンカーを打設したり、吊りフックを溶接したりすることにより行うことができる。
【0052】
ここで、巻き出し配管5は、その両端部を、吊り部材61、62を介して、すなわち、巻き出し配管5の基端部を吊り部材61を介して、先端部を吊り部材62を介して、建築構造物の天井スラブ又は梁により支持するようにしている。
【0053】
吊り部材6には、図2に示すように、両端をフック形状にし、ターンバックル6aや長ナット6b等の長さ調節機構を備えた鋼棒(両端部にネジを形成した鋼材や全長にネジを形成した寸切りボルトを含む。)やワイヤ(鋼線)を好適に用いることができる。
【0054】
吊り部材61は、巻き出し配管5の基端部に吊バンド等の固定部材を用いて直接接続することもできるが、本実施例においては、吊り部材62を、巻き出し配管5の基端部が接続された剛性を有する消火配管3の枝管31を介して、具体的には、枝管31に吊バンド等の固定部材を用いて、間接的に接続するようにしている。
吊り部材61と消火配管3の枝管31とは、図4及び図5に示すように、消火配管3の枝管31に取り付けた取付具31aを介して接続するようにすることができる。
【0055】
吊り部材62は、巻き出し配管5の先端部に直接接続することもできるが、本実施例においては、吊り部材62のフックを、巻き出し配管5の先端部(及び噴射ヘッド4)を固定した支持部材71を介して接続するようにしている。
吊り部材62と支持部材71とは、図4及び図5に示すように、支持部材71に直接取り付けるようにしたり、支持部材71に取り付けたアイボルト等の取付具71aを介して取り付けるようにしたりすることで接続することができる。
【0056】
支持部材71は、剛性を有するアングル鋼等の形鋼からなり、図1及び図3に示すように、建築構造物の野縁73(打ち上げ天井において、天井ボード等の天井板76等を張り付けるために使用される棒状の部材をいう。)を支持する野縁受け72(野縁受け72は、天井スラブや梁へ吊り部材74(野縁受けハンガー74a)を介して支持されている。)に架け渡し、コ型ボルト75を用いて固定されている。
【0057】
このガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造によれば、巻き出し配管5に可撓性を有する蛇腹部を備えたフレキシブル継手を用いることで、フレキシブル継手が有する施工の簡易化と時間の短縮の利点を享有しながら、ガス系消火剤が放出される際にフレキシブル
継手に生じる負荷を、吊り部材6を介して、建築構造物の天井スラブ又は梁により支持するようにすることで、フレキシブル継手を用いたことにより生じる負荷が構造物に悪影響を与えることを未然に防止することができる。
【0058】
ところで、図1に示す、本発明のガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の第1実施例においては、巻き出し配管5の先端部に接続する吊り部材62を、建築構造物の天井スラブ又は梁により直接支持するようにしたが、図6図8に示す、本発明のガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の第2~第4実施例のように、巻き出し配管5の先端部に接続する吊り部材63を、吊り部材61が接続された、巻き出し配管5の基端部が接続された剛性を有する消火配管3の枝管31に接続するようにすることもできる。
これにより、巻き出し配管5の先端部を、吊り部材63、消火配管3の枝管31及び吊り部材61を介して、建築構造物の天井スラブ又は梁により支持するようにしている。
【0059】
巻き出し配管5の先端部に接続する吊り部材62は、図9及び図10に示すように、吊り部材62のフックを、巻き出し配管5の先端部(及び噴射ヘッド4)を固定した支持部材71を介して接続するようにするほか、図11に示すように、巻き出し配管5の先端部(及び噴射ヘッド4)を支持部材71に固定する固定具71bを介して接続するようにすることもできる。
【0060】
巻き出し配管5の先端部に接続する吊り部材62と消火配管3の枝管31とは、図12及び図13に示すように、消火配管3の枝管31に取り付けたアイボルト等の取付具31aを介して接続するようにすることができる。
【0061】
吊り部材6にワイヤ(鋼線)を使用する場合は、図8及び図14に示すように、ワイヤ調整器6c等の長さ調節機構を備えたワイヤ(鋼線)を好適に用いることができる。
【0062】
また、図1に示す、本発明のガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の第1実施例においては、巻き出し配管5の先端部(及び噴射ヘッド4)を支持部材71に固定するようにしたが、図15及び図16に示す、本発明のガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造の第5実施例のように、巻き出し配管5の先端部(及び噴射ヘッド4)を野縁受け72に固定具72aにより固定するようにすることもできる。
これにより、野縁受け72を、天井スラブや梁に支持する吊り部材74(野縁受けハンガー74a)によって、巻き出し配管5の先端部(及び噴射ヘッド4)を天井スラブや梁に間接的に支持することができる。
【0063】
以上、本発明のガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造について、その実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、各実施形態に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のガス系消火設備の巻き出し配管の支持構造は、ガス系消火設備の巻き出し配管にフレキシブル継手を用いることで、フレキシブル継手が有する施工の簡易化と時間の短縮の利点を享有しながら、フレキシブル継手を用いたことにより生じる負荷が構造物に悪影響を与えないようにすることができることから、ハロゲン化物ガスや不活性ガス(イナートガス)などの消火剤ガスを使用するガス系消火設備の用途に広く用いることができ、適用対象も、新設のガス系消火設備に限定されず、既設のガス系消火設備の改修等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 ガス系消火設備
2 貯蔵容器
3 消火配管
31 枝管
31a 取付具
4、4A、4B、4C 噴射ヘッド
5 巻き出し配管
50 巻き出し配管用管継手(フレキシブル継手)
51 ベローズ管(蛇腹部)
52 補強部材
53 伸長抑制部材
54a 第1の治具固定用リング
54b 第2の治具固定用リング
55 中空部材
56 ナット
57a 第1取付部材
57b 第2取付部材
6 吊り部材
61 吊り部材
62 吊り部材
6a ターンバックル(長さ調節機構)
6b 長ナット(長さ調節機構)
71 支持部材
71a 取付具
71b 固定具
72 野縁受け
72a 固定具
73 野縁
74 吊り部材
75 コ型ボルト
76 天井板
X 中空部材が有する凸部
L 巻き出し配管用管継手(フレキシブル継手)の全長(第1取付部材の端部と第2取付部材の端部との間の距離)
P ベローズ管(蛇腹部)の谷部と谷部の間の間隔
T1 ベローズ管(蛇腹部)の肉厚
図1
図2
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図10
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図22