(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174428
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ウナギ仔魚用飼料、ウナギの生産方法、及びウナギ稚魚形態異常抑制剤
(51)【国際特許分類】
A23K 50/80 20160101AFI20241210BHJP
A23K 20/153 20160101ALI20241210BHJP
A23K 10/16 20160101ALI20241210BHJP
A23K 10/20 20160101ALI20241210BHJP
A23K 10/28 20160101ALI20241210BHJP
【FI】
A23K50/80
A23K20/153
A23K10/16
A23K10/20
A23K10/28
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092243
(22)【出願日】2023-06-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、水産庁委託事業「ウナギ種苗の商業化に向けた大量生産システムの実証事業」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501168814
【氏名又は名称】国立研究開発法人水産研究・教育機構
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】樋口 理人
(72)【発明者】
【氏名】神保 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】野村 和晴
(72)【発明者】
【氏名】古板 博文
(72)【発明者】
【氏名】▲羽▼野 健志
(72)【発明者】
【氏名】石川 卓
(72)【発明者】
【氏名】福井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】金子 信人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博史
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005GA04
2B005GA05
2B005LA07
2B005MB02
2B005MB09
2B150AA08
2B150AB02
2B150AB20
2B150AC24
2B150BC06
2B150CC11
2B150DC19
(57)【要約】
【課題】ウナギ仔魚に給餌することで、ウナギ仔魚からシラスウナギへの変態過程で形態異常を呈する個体の出現頻度を低減可能な、ウナギ仔魚用飼料を提供する。
【解決手段】核酸類を含有するウナギ仔魚用飼料。前記ウナギ仔魚用飼料の総乾物重量に対する、前記核酸類の含有量が、乾物重量で0.25重量%以上であることが好ましい。前記ウナギ仔魚用飼料は、酵母抽出物を含み、前記酵母抽出物が前記核酸類を含有してもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸類を含有するウナギ仔魚用飼料。
【請求項2】
前記ウナギ仔魚用飼料の総乾物重量に対する、前記核酸類の含有量が、乾物重量で0.25重量%以上である、請求項1に記載のウナギ仔魚用飼料。
【請求項3】
前記ウナギ仔魚用飼料の総乾物重量に対する、前記核酸類の含有量が、乾物重量で10重量%以下である、請求項1又は2に記載のウナギ仔魚用飼料。
【請求項4】
前記核酸類は、ヌクレオシド、ヌクレオチド、及びポリヌクレオチド、並びにそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1又は2に記載のウナギ仔魚用飼料。
【請求項5】
前記核酸類は、塩基と糖とが結合した構造を有し、
前記塩基が、アデニン、グアニン、チミン、ウラシル、シトシン、及びヒポキサンチン、からなる群から選択される少なくとも一種の塩基を含む、請求項1又は2に記載のウナギ仔魚用飼料。
【請求項6】
前記核酸類は、塩基と糖とが結合した構造を有し、
前記塩基が、プリン塩基及びピリミジン塩基を含む、請求項1又は2に記載のウナギ仔魚用飼料。
【請求項7】
前記ウナギ仔魚用飼料が酵母抽出物を含み、前記酵母抽出物が前記核酸類を含有する、請求項1又は2に記載のウナギ仔魚用飼料。
【請求項8】
前記ウナギ仔魚用飼料がサメ卵成分を含まない、請求項1又は2に記載のウナギ仔魚用飼料。
【請求項9】
前記ウナギ仔魚用飼料が、更に乳タンパク質を含む、請求項1又は2に記載のウナギ仔魚用飼料。
【請求項10】
前記ウナギ仔魚用飼料が、更に鶏卵成分を含む、請求項1又は2に記載のウナギ仔魚用飼料。
【請求項11】
請求項1又は2に記載のウナギ仔魚用飼料を、ウナギ仔魚に給餌することを含む、ウナギの生産方法。
【請求項12】
前記給餌が飽食給餌である、請求項11に記載のウナギの生産方法。
【請求項13】
人工種苗を生産する、請求項11に記載のウナギの生産方法。
【請求項14】
核酸類を有効成分として含有する、ウナギ稚魚形態異常抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウナギ仔魚用飼料、ウナギの生産方法、及びウナギ稚魚形態異常抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ウナギの養殖用種苗としては、主にシラスウナギが利用されており、捕獲した天然のシラスウナギを用いた養殖が行われている。
しかし、天然シラスウナギは漁獲量が激減しており、天然ウナギへの影響を抑えつつ安定したウナギの養殖生産を可能にするため、シラスウナギの人工生産技術の開発が求められている。
【0003】
発明者らが所属する水産研究・教育機構(旧水産総合研究センター)では、2002年に、世界で初めてシラスウナギまでの人工飼育に成功した。その道のりは大変に困難なものであり、実現までに40年あまりの研究期間を必要とした。
天然のウナギ仔魚の生育環境や生態は、ほとんど未解明であったため、仔魚期のウナギの生育を可能とする飼育飼料の開発には多くの試行錯誤を要した。特に、卵からふ化した仔魚(レプトセファルス)を稚魚(シラスウナギ)にまで変態させるプロセスは、最も困難なハードルであった。
【0004】
ウナギ仔魚の初期飼料としては、サメ卵粉末(特許文献1)が提案されていたが、多くの試みがなされたにもかかわらず、サメ卵粉末以外には、ウナギ仔魚に対し摂餌誘因性や成長性を有する飼料は全く見出されていなかった。しかも、前述のサメ卵でも、レプトセファルスをシラスウナギにまで成長・変態させることは不可能であった。
【0005】
しかし、その後、サメ卵に加え、オキアミ分解物および/またはフィチン酸低減処理した大豆ペプチドを配合した飼料により、初めてシラスウナギまで変態することが確認された(特許文献2)。このようにサメ卵(特に、アブラツノザメ卵)は、ウナギ仔魚用飼料の主材料となっている。
【0006】
ただし、天然資源を原料とする飼料の場合、大量かつ安定供給が難しく、アブラツノザメ卵は、資源量の枯渇等により今後の持続的な安定供給に不安がある。
【0007】
そこで開発された飼料が、乳タンパク質および鶏卵黄末を含有するウナギ仔魚用飼料(特許文献3)である。当該飼料を与えてウナギ仔魚を飼育することで、シラスウナギまで変態させることが可能であり、従来のアブラツノザメ卵飼料に代わる安定供給の可能な飼料として有望である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11-253111号公報
【特許文献2】特開2005-13116号公報
【特許文献3】特開2018-153147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ウナギは非常に独特な成長過程を示す。
図1は、受精卵からシラスウナギまでのウナギの成長過程を説明する図である。受精卵からふ化した仔魚は、プレレプトセファルスを経た後、レプトセファルスと呼ばれる形態をとる。レプトセファルスは、透明で柳の葉のような形状をした特異な形状である。その後、レプトセファルスが変態して、シラスウナギ(ウナギ稚魚)となる。
【0010】
しかし、特許文献3に示される乳タンパク質含有飼料を用いた飼育では、ウナギ仔魚からシラスウナギ(ウナギ稚魚)へと変わる変態過程で、形態異常を呈する個体が半数程度で出現してしまう。
【0011】
本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたものであり、ウナギ仔魚に給餌することで、ウナギ仔魚からシラスウナギへの変態過程で形態異常を呈する個体の出現頻度を低減可能な、ウナギ仔魚用飼料の提供を目的とする。
また本発明は、ウナギ仔魚からシラスウナギへの変態過程で形態異常を呈する個体の出現頻度を低減可能な、ウナギの生産方法の提供を目的とする。
また本発明は、ウナギ仔魚からシラスウナギへの変態過程で形態異常を呈する個体の出現頻度を低減可能な、ウナギ稚魚形態異常抑制剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ウナギ仔魚に核酸類を含有する飼料を給餌することで、上記の形態異常を呈する個体の出現頻度を低減可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
【0013】
(1) 核酸類を含有するウナギ仔魚用飼料。
(2) 前記ウナギ仔魚用飼料の総乾物重量に対する、前記核酸類の含有量が、乾物重量で0.25重量%以上である、前記(1)に記載のウナギ仔魚用飼料。
(3) 前記ウナギ仔魚用飼料の総乾物重量に対する、前記核酸類の含有量が、乾物重量で10重量%以下である、前記(1)又は(2)に記載のウナギ仔魚用飼料。
(4) 前記核酸類は、ヌクレオシド、ヌクレオチド、及びポリヌクレオチド、並びにそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一種を含む、前記(1)~(3)のいずれか一つに記載のウナギ仔魚用飼料。
(5) 前記核酸類は、塩基と糖とが結合した構造を有し、
前記塩基が、アデニン、グアニン、チミン、ウラシル、シトシン、及びヒポキサンチン、からなる群から選択される少なくとも一種の塩基を含む、前記(1)~(4)のいずれか一つに記載のウナギ仔魚用飼料。
(6) 前記核酸類は、塩基と糖とが結合した構造を有し、
前記塩基が、プリン塩基及びピリミジン塩基を含む、前記(1)~(5)のいずれか一つに記載のウナギ仔魚用飼料。
(7) 前記ウナギ仔魚用飼料が酵母抽出物を含み、前記酵母抽出物が前記核酸類を含有する、前記(1)~(6)のいずれか一つに記載のウナギ仔魚用飼料。
(8) 前記ウナギ仔魚用飼料がサメ卵成分を含まない、前記(1)~(7)のいずれか一つに記載のウナギ仔魚用飼料。
(9) 前記ウナギ仔魚用飼料が、更に乳タンパク質を含む、前記(1)~(8)のいずれか一つに記載のウナギ仔魚用飼料。
(10) 前記ウナギ仔魚用飼料が、更に鶏卵成分を含む、前記(1)~(9)のいずれか一つに記載のウナギ仔魚用飼料。
(11) 前記(1)~(10)のいずれか一つに記載のウナギ仔魚用飼料を、ウナギ仔魚に給餌することを含む、ウナギの生産方法。
(12) 前記給餌が飽食給餌である、前記(11)に記載のウナギの生産方法。
(13) 人工種苗を生産する、前記(11)又は(12)に記載のウナギの生産方法。
(14) 核酸類を有効成分として含有する、ウナギ稚魚形態異常抑制剤。
【0014】
また、本発明は以下の態様を有することができる。
(15) 前記核酸類は、ヌクレオシド、ヌクレオチド、及びポリヌクレオチド、並びにそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一種を含む、前記(14)に記載のウナギ稚魚形態異常抑制剤。
(16) 前記核酸類は、塩基と糖とが結合した構造を有し、
前記塩基が、アデニン、グアニン、チミン、ウラシル、シトシン、及びヒポキサンチン、からなる群から選択される少なくとも一種の塩基を含む、前記(14)又は(15)に記載のウナギ稚魚形態異常抑制剤。
(17) 前記核酸類は、塩基と糖とが結合した構造を有し、
前記塩基が、プリン塩基及びピリミジン塩基を含む、前記(14)~(16)のいずれか一つに記載のウナギ稚魚形態異常抑制剤。
(18) 酵母抽出物を含み、前記酵母抽出物が前記核酸類を含有する、前記(14)~(17)のいずれか一つに記載のウナギ稚魚形態異常抑制剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ウナギ仔魚に給餌することで、ウナギ仔魚からシラスウナギへの変態過程で形態異常を呈する個体の出現頻度を低減可能なウナギ仔魚用飼料を提供できる。
また、本発明によれば、前記ウナギ仔魚用飼料を給餌することにより、ウナギ仔魚からシラスウナギへの変態過程で形態異常を呈する個体の出現頻度を低減可能な、ウナギの生産方法を提供できる。
また、本発明によれば、ウナギ仔魚からシラスウナギへの変態過程で形態異常を呈する個体の出現頻度を低減可能な、ウナギ稚魚形態異常抑制剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】シラスウナギまでのウナギの成長過程を説明する図である。
【
図2】実施例にて「形態異常なし」又は「形態異常あり」と判定されたシラスウナギの一例を示す画像である。
【
図3】実験1における、試験区ごとの形態異常の発症頻度を示すグラフである。
【
図4】実験2における、試験区ごとの形態異常の発症頻度を示すグラフである。
【
図5】実験3にて示された、飼料の核酸含量と、20日齢ウナギ仔魚の平均全長および平均体高との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のウナギ仔魚用飼料、ウナギの生産方法、及びウナギ稚魚形態異常抑制剤の実施形態を説明する。
【0018】
≪ウナギ仔魚用飼料≫
実施形態のウナギ仔魚用飼料は、核酸類を含有する。核酸類を含有する実施形態のウナギ仔魚用飼料をウナギ仔魚に給餌して飼育することで、ウナギ仔魚をシラスウナギ(ウナギ稚魚)へと成長させることが可能であり、且つ形態異常を呈する個体の出現頻度を低減可能である。
【0019】
本明細書において、「ウナギ仔魚」とは、シラスウナギへの変態が完了する前の状態のウナギを指す。ウナギ仔魚としては、プレレプトセファルス、レプトセファルス、及びシラスウナギへの変態過程のウナギが挙げられる。
本明細書において、「ウナギ稚魚」とは、シラスウナギへの変態が完了したウナギであって、例えば、肛門前長/全長比が40%以下で、かつ、体高/全長比が7%以下のウナギであってよい。ウナギ稚魚としては、シラスウナギが挙げられる。
【0020】
形態異常を呈する個体の出現頻度が低減されたことは、例えば、対照のウナギ用飼料をウナギ仔魚に給餌した群と、実施形態のウナギ仔魚用飼料をウナギ仔魚に給餌した群とで、変態過程で形態異常を呈する個体の出現頻度を比較することで確認できる。
【0021】
実施形態のウナギ仔魚用飼料を給餌する対象のウナギの種類としては、ウナギ類に属する種であってよく、ニホンウナギ(Anguilla japonica)、ヨーロッパウナギ(Anguilla anguilla)、アメリカウナギ(Anguilla rostrata)等が挙げられ、ニホンウナギが好ましい。
【0022】
本明細書において、「核酸類」とは、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、それらの塩、並びにそれらの類縁体、分解物、及び断片を包含する概念である。
【0023】
ヌクレオシドは、塩基と、糖とが結合した構造を有する。
前記塩基としては、アデニン、グアニン、チミン、ウラシル、シトシン、ヒポキサンチン等が挙げられる。
前記塩基は、核酸塩基が好ましい。
前記糖としては、リボース又はデオキシリボースが挙げられる。ヌクレオシドは、前記糖がリボースであるリボヌクレオシドや、前記糖がデオキシリボースであるデオキシリボヌクレオシドであってよい。
【0024】
具体的なヌクレオシドとしては、例えば、アデノシン、グアノシン、5‐メチルウリジン、ウリジン、シチジン、イノシン、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、チミジン、デオキシウリジン、デオキシシチジン、及びデオキシイノシン等を例示できる。
【0025】
ヌクレオチドは、ヌクレオシドと、リン酸とが結合した構造を有する。
前記ヌクレオシドにおける糖としては、リボース又はデオキシリボースが挙げられ、ヌクレオチドは、前記糖がリボースであるリボヌクレオチドや、前記糖がデオキシリボースであるデオキシリボヌクレオチドであってよい。
【0026】
具体的な、リボヌクレオチド及びデオキシリボヌクレオとしては、例えば、アデノシン一リン酸(AMP、アデニル酸ともいう。)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン三リン酸(ATP);デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシアデノシン二リン酸(dADP)、デオキシアデノシン三リン酸(dATP);グアノシン一リン酸(GMP、グアニル酸ともいう。)、グアノシン二リン酸(GDP)、グアノシン三リン酸(GTP);デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキシグアノシン二リン酸(dGDP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP);5‐メチルウリジン一リン酸(TMP)、5‐メチルウリジン二リン酸(TDP)、5‐メチルウリジン三リン酸(TTP);チミジン一リン酸(dTMP、チミジル酸ともいう。)、チミジン二リン酸(dTDP)、チミジン三リン酸(dTTP);ウリジン一リン酸(UMP、ウリジル酸ともいう。)、ウリジン二リン酸(UDP)、ウリジン三リン酸(UTP);デオキシウリジン一リン酸(dUMP)、デオキシウリジン二リン酸(dUDP)、デオキシウリジン三リン酸(dUTP);シチジン一リン酸(CMP、シチジル酸ともいう。)、シチジン二リン酸(CDP)、シチジン三リン酸(CTP);デオキシシチジン一リン酸(dCMP)、デオキシシチジン二リン酸(dCDP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP);イノシン一リン酸(IMP、イノシン酸ともいう。)、イノシン二リン酸(IDP)、イノシン三リン酸(ITP);デオキシイノシン一リン酸(dIMP)、デオキシイノシン二リン酸(dIDP)、デオキシイノシン三リン酸(dITP)等が挙げられる。
【0027】
本明細書においてポリヌクレオチドとは、ヌクレオチドのポリマー及びオリゴマーを包含する概念である。ポリヌクレオチドとして、例えば、上記に例示したリボヌクレオチドが2個以上結合した重合体、及び上記に例示したデオキシリボヌクレオチドが2個以上結合した重合体を例示できる。
【0028】
具体的な、ポリヌクレオチドとして、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)等を例示できる。
【0029】
ヌクレオシド、ヌクレオチド、又はポリヌクレオチドの塩としては、特に制限されるものではないが、アルカリ金属塩又は塩酸塩を例示でき、ナトリウム塩が好ましい。
【0030】
ヌクレオシド、ヌクレオチド、又はポリヌクレオチドは、公知の修飾塩基を含むものであってもよい。
【0031】
ヌクレオシド、ヌクレオチド、又はポリヌクレオチドの類縁体としては、天然の核酸類と同等の機能を有するものであって、天然の核酸類の分子内の任意の基又は原子を、任意の置換基で置き換えたものや、任意の修飾を付与したものが挙げられる。
また、前記類縁体として、ペプチド核酸(PNA)やLocked nucleic acid(LNA)等も例示できる。
【0032】
ヌクレオシド、ヌクレオチド、又はポリヌクレオチドの分解物又は断片としては、ポリヌクレオチドの分解物又は断片が好適であり、加水分解物であってよい。
【0033】
核酸類は、天然のウナギに含有される種類のもの、或いはその塩、分解物又は断片であってよい。
【0034】
前記核酸類は、ヌクレオシド、ヌクレオチド、及びポリヌクレオチド、並びにそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0035】
また、前記核酸類は塩基と糖とが結合した構造を有し、前記塩基が、アデニン、グアニン、チミン、ウラシル、シトシン、及びヒポキサンチンからなる群から選択される少なくとも一種の塩基を含むことが好ましい。
【0036】
本明細書では、核酸類が、塩基と糖とが結合した構造を有することを指し、核酸類が単に「塩基を含む」などと表記することがある。
【0037】
前記核酸類は塩基と糖とが結合した構造を有し、前記塩基が、アデニン、グアニン、チミン、ウラシル、シトシン、及びヒポキサンチンからなる群から選択される少なくとも一種の塩基を含む、ヌクレオシド、ヌクレオチド、及びポリヌクレオチド、並びにそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一種を含むことがより好ましい。当該ヌクレオチドは、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドを含むことがさらに好ましく、リボヌクレオチドを含むことが特に好ましい。
【0038】
核酸類のうち、プリン塩基を含む核酸類同士は、相互に転換可能であるか、分解されて核酸類の共通の原料として生合成に使用され得る。
また、核酸類のうち、ピリミジン塩基を含む核酸類同士も、相互に転換可能であるか、分解されて核酸類の共通の原料として生合成に使用され得る。
【0039】
かかる観点から、実施形態のウナギ仔魚用飼料に含有される核酸類は、塩基と糖とが結合した構造を有し、前記塩基が、プリン塩基及びピリミジン塩基を含むことが好ましい。
【0040】
核酸類が含む塩基の種類は、実施形態のウナギ仔魚用飼料に含まれる核酸類全体に対して考慮される。
例えば、前記核酸類がヌクレオシド又はヌクレオチドである場合には、実施形態のウナギ仔魚用飼料に含有される核酸類において、プリン塩基及びピリミジン塩基は、夫々別の核酸分子が含むものであってよい。
例えば、前記核酸類がポリヌクレオチドである場合には、実施形態のウナギ仔魚用飼料に含有される核酸類において、前記プリン塩基及びピリミジン塩基は、夫々別の核酸分子が含むものであってよく、通常のDNA及びRNAのように同一の核酸分子内に含まれるものであってよい。
【0041】
上記で例示した塩基のうち、プリン塩基としては、アデニン、グアニン、及びヒポキサンチンを例示できる。
上記で例示した塩基のうち、ピリミジン塩基としては、チミン、ウラシル、及びシトシンを例示できる。
【0042】
実施形態のウナギ仔魚用飼料に含有される核酸類は、塩基と糖とが結合した構造を有し、前記塩基が、アデニン、グアニン、及びヒポキサンチンからなる群から選択される少なくとも一種の塩基、及び、チミン、ウラシル、及びシトシンからなる群から選択される少なくとも一種の塩基を含むことがさらに好ましい。
【0043】
また、実施形態のウナギ仔魚用飼料に含有される核酸類は、塩基と糖とが結合した構造を有し、前記塩基が、アデニン、グアニン、及びヒポキサンチンからなる群から選択される少なくとも一種の塩基、及び、チミン、ウラシル、及びシトシンからなる群から選択される少なくとも一種の塩基を含む、リボヌクレオシド、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、リボ核酸及びデオキシリボ核酸、並びにそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一種を含むことがさらに好ましい。
【0044】
ウナギ仔魚においてより効率的に利用可能であるという観点から、核酸類は種々の塩基を含むことが好ましい。
前記核酸類は、塩基と糖とが結合した構造を有し、前記塩基が、アデニン及び/又はヒポキサンチン、グアニン、チミン及び/又はウラシル、並びにシトシンを含むことが好ましい。
前記核酸類は、塩基と糖とが結合した構造を有し、前記塩基が、アデニン及び/又はヒポキサンチン、グアニン、ウラシル、並びにシトシンを含むことがより好ましい。
【0045】
前記核酸類は、塩基と糖とが結合した構造を有し、前記塩基が、アデニン及び/又はヒポキサンチン、グアニン、ウラシル、並びにシトシンを含む、リボヌクレオシド、リボヌクレオチド、及びリボ核酸、並びにそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一種を含むことがさらに好ましい。
【0046】
ウナギ仔魚用飼料が核酸類を含有することで、上記の形態異常を呈する個体の出現頻度を低減できる理由の詳細は明らかではないが、以下の理由が考えられる。通常、魚類の仔魚は体内で核酸類を合成可能である。しかし、ウナギの仔魚では、おそらく核酸類の合成量が少なく、餌からも核酸類を摂取する必要があるところ、従来の飼料ではその要求量を十分に満たしていなかった可能性がある。特に、レプトセファルスからシラスウナギへの変態過程では、形態変化に伴う多くの遺伝子発現、細胞分裂が生じると推察され、核酸類を含有する飼料を与えることにより、それらのプロセスが良好に進行することに寄与するものと考えられる。
【0047】
実施形態のウナギ仔魚用飼料の、前記ウナギ仔魚用飼料の総乾物重量(100重量%)に対する、前記核酸類の含有量は、乾物重量で、0.04重量%超であってよく、0.05重量%以上であってよく、0.07重量%以上であってよく、0.1重量%以上であってよく、0.15重量%以上であってよく、0.2重量%以上であってよく、0.25重量%以上であってよく、0.5重量%以上であってよく、0.8重量%以上であってよく、0.9重量%以上であってよく、1.0重量%以上であってよく、1.5重量%以上であってよく、2.0重量%以上であってよく、2.5重量%以上であってよく、3.0重量%以上であってよく、3.5重量%以上であってよく、3.8重量%以上であってよく、3.9重量%以上であってよい。
【0048】
総乾物重量(100重量%)に対し、前記核酸類を乾物重量換算で上記の下限値超又は下限値以上で含有するウナギ仔魚用飼料によれば、ウナギ仔魚からシラスウナギへの変態過程で形態異常を呈する個体の出現頻度を、より一層効果的に低減可能である。
【0049】
実施形態のウナギ仔魚用飼料の、前記ウナギ仔魚用飼料の総乾物重量(100重量%)に対する、前記核酸類の含有量は、乾物重量で、20重量%以下であってよく、15重量%以下であってよく、10重量%以下であってよく、9重量%以下であってよく、8重量%以下であってよく、7重量%以下であってよく、6重量%以下であってよく、5重量%以下であってよい。
【0050】
総乾物重量(100重量%)に対し、前記核酸類を乾物重量換算で上記の上限値以下で含有するウナギ仔魚用飼料によれば、ウナギ仔魚を、より一層良好に成長させることが可能である。
【0051】
実施形態のウナギ仔魚用飼料が含有する核酸類の上記数値範囲の一例としては、実施形態のウナギ仔魚用飼料の、前記ウナギ仔魚用飼料の総乾物重量(100重量%)に対する、前記核酸類の含有量が、乾物重量で、0.04重量%超20重量%以下であってよく、0.05重量%以上20重量%以下であってよく、0.07重量%以上15重量%以下であってよく、0.1重量%以上15重量%以下であってよく、0.15重量%以上10重量%以下であってよく、0.2重量%以上10重量%以下であってよく、0.25重量%以上10重量%以下であってよく、0.5重量%以上9重量%以下であってよく、0.8重量%以上9重量%以下であってよく、0.9重量%以上8重量%以下であってよく、1.0重量%以上8重量%以下であってよく、1.5重量%以上7重量%以下であってよく、2.0重量%以上7重量%以下であってよく、2.5重量%以上6重量%以下であってよく、3.0重量%以上6重量%以下であってよく、3.5重量%以上5重量%以下であってよく、3.8重量%以上5重量%以下であってよく、3.9重量%以上5重量%以下であってよい。
【0052】
ウナギ仔魚用飼料又は飼料原料の乾物重量は、ウナギ仔魚用飼料又は飼料原料を105℃で6時間加熱する乾燥処理を行うことで、求めることができる。
【0053】
実施形態のウナギ仔魚用飼料における核酸類の含有量は、公知の分析手法により測定できる。分析手法としては、高速液体クロマトグラフィーを用いることができる。例えば、飼料又は飼料原料、或いはそれらの処理物を測定サンプルとして、各種核酸類を測定し、その含有量を算出できる。測定サンプルは、測定対象の核酸類の種類に応じて、測定対象の飼料や飼料原料に処理が施されたものであってよい。測定サンプルは、例えば、飼料や飼料原料に、過塩素酸抽出や、ヌクレアーゼ処理が施されたものであってよい。
【0054】
実施形態のウナギ仔魚用飼料は、酵母抽出物を含むことが好ましい。酵母抽出物は前記核酸類を含有することができる。酵母抽出物は、酵母エキスとも称される。実施形態のウナギ仔魚用飼料は、核酸類及び/又は酵母抽出物を含むことができる。
【0055】
前記ウナギ仔魚用飼料の総乾物重量(100重量%)に対する、前記酵母抽出物の含有量は、乾物重量で、1重量%以上であってよく、1重量%以上50重量%以下であってよく、5重量%以上40重量%以下であってよく、10重量%以上30重量%以下であってよい。
【0056】
なお、上記で実施形態のウナギ仔魚用飼料が含有する核酸類の含有量として例示した、前記核酸類の含有量の各数値(ウナギ仔魚用飼料の総乾物重量(100重量%)に対する乾物重量で、0.04重量%超の範囲と、20重量%以下の範囲とで例示した各数値)は、酵母抽出物由来の核酸類の含有量の数値として読みかえてもよい。
【0057】
実施形態のウナギ仔魚用飼料は、より良好にウナギ仔魚を飼育可能であることから、更に乳タンパク質を含むことが好ましい。
【0058】
本明細書において、「乳タンパク質」とは、乳由来のタンパク質である。乳タンパク質は、牛乳などを原料として多種の製品が上市されており、安価で安定的に入手可能なタンパク質の一つである。具体的には、牛乳を原料とする脱脂粉乳や各種カゼインなどが挙げられる。
【0059】
前記ウナギ仔魚用飼料の総乾物重量(100重量%)に対する、前記乳タンパク質の含有量は、乾物重量で、10重量%以上であってよく、10重量%以上80重量%以下であってよく、20重量%以上60重量%以下であってよく、30重量%以上50重量%以下であってよい。
【0060】
実施形態のウナギ仔魚用飼料は、乳タンパク質以外のタンパク源を更に含むことができる。当該タンパク源は、安定的に入手が可能でウナギ仔魚が容易に消化できるものが好ましいことから、鳥類の卵成分であってよく、鶏卵成分であってよく、より入手容易であることから、例えば鶏卵黄末が好ましい。
【0061】
前記ウナギ仔魚用飼料の総乾物重量(100重量%)に対する、前記鶏卵成分の含有量は、乾物重量で、5重量%以上であってよく、5重量%以上30重量%以下であってよく、7重量%以上25重量%以下であってよく、10重量%以上20重量%以下であってよい。
【0062】
実施形態のウナギ仔魚用飼料の一例として、核酸類と、乳タンパク質と、鶏卵成分(例えば、鶏卵黄末)とを含有し、前記ウナギ仔魚用飼料の総乾物重量に対し、乾物重量で、前記核酸類の含有量が0.25重量%以上10重量%以下、前記乳タンパク質の含有量が10重量%以上80重量%以下、前記鶏卵成分の含有量が5重量%以上30重量%以下である、ウナギ仔魚用飼料を例示できる。
【0063】
実施形態のウナギ仔魚用飼料の一例として、核酸類と、酵母抽出物と、乳タンパク質と、鶏卵成分(例えば、鶏卵黄末)とを含有し、前記酵母抽出物が前記核酸類を含み、前記ウナギ仔魚用飼料の総乾物重量に対し、乾物重量で、前記酵母抽出物の含有量が1重量%以上50重量%以下、前記乳タンパク質の含有量が10重量%以上80重量%以下、前記鶏卵成分の含有量が5重量%以上30重量%以下である、ウナギ仔魚用飼料を例示できる。
【0064】
その他、乳タンパク質以外のタンパク源としては、魚粉が挙げられ、消化吸収向上の観点から、酵素処理魚粉が好ましい。酵素処理魚粉とは、任意の魚類の魚肉から製造されたものであってよく、例えば、魚粉のペプチダーゼ、プロテアーゼ又はプロテイナーゼ処理物であってよい。
【0065】
乳タンパク質と他のタンパク質との配合割合は、ウナギ仔魚用飼料の総乾物重量に対する、乳糖量が、乾物重量で飼料全量の10重量%以下となるように配合することが好ましい。低乳糖乳タンパク質あるいはカゼインを使用すれば、乳タンパク質の配合量を増加させることができる。
【0066】
一実施形態のウナギ仔魚用飼料として、核酸類及び/又は酵母抽出物と、乳タンパク質と、を含有するウナギ仔魚用飼料を例示できる。
【0067】
別の一実施形態のウナギ仔魚用飼料として、核酸類及び/又は酵母抽出物と、乳タンパク質と、鶏卵黄末とを含有するウナギ仔魚用飼料を例示できる。
【0068】
別の一実施形態のウナギ仔魚用飼料として、核酸類及び/又は酵母抽出物と、乳タンパク質と、鶏卵黄末と、魚粉と、を含有するウナギ仔魚用飼料を例示できる。
【0069】
また、ウナギ仔魚の成長や生残率を向上可能であることから、実施形態のウナギ仔魚用飼料は、更にビタミン類を含むことが好ましい。ビタミン類としては、例えば、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンD、ビタミンK、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン等の他、コリン、イノシトール等を含むことができる。
【0070】
また、成長や生残率を向上可能であることから、実施形態のウナギ仔魚用飼料は、タウリンを含むことが好ましい。
【0071】
更に別の一実施形態のウナギ仔魚用飼料として、核酸類及び/又は酵母抽出物と、乳タンパク質と、鶏卵黄末と、魚粉と、ビタミン類と、タウリンと、を含有するウナギ仔魚用飼料を例示できる。
【0072】
また、一般に仔魚にはEPAやDHA等のn-3高度不飽和脂肪酸を与えることが好ましいことから、実施形態のウナギ仔魚用飼料は、上記n-3高度不飽和脂肪酸を含む肝油等の魚油を含むことが好ましい。
【0073】
実施形態のウナギ仔魚用飼料は、その他の任意成分として、大豆ペプチド(フィチン酸低減処理した大豆ペプチドが好ましい)等を含有することができる。
【0074】
実施形態のウナギ仔魚用飼料は、例えば、任意のウナギ仔魚用基本飼料に、更に、核酸類及び/又は酵母抽出物が添加されたものであってよい。ここで、当該ウナギ仔魚用基本飼料とは、ウナギ仔魚に給餌して、ウナギ稚魚にまで成長及び変態させることが可能な飼料を指し、上記の特許文献2に記載のウナギ仔魚用飼料や、特許文献3に記載のウナギ仔魚用飼料などが挙げられる。核酸類及び/又は酵母抽出物の添加量としては、上記で例示した前記ウナギ仔魚用飼料の総乾物重量に対する前記核酸類の含有量を満たす添加量とすることが挙げられる。
【0075】
一方、本実施形態のウナギ仔魚用飼料は、サメ卵成分を含む飼料の代替飼料として有用である。そのため、実施形態のウナギ仔魚用飼料は、サメ卵成分を含まないことが好ましい。本明細書において、「サメ卵成分」とは、サメ卵由来の成分である。サメ卵はアブラツノザメ卵を例示できる。
【0076】
実施形態のウナギ仔魚用飼料の形態は粉末状であってよく、流通及び保管に好適であることから乾燥粉末であってよい。また、仔魚の嚥下が容易となることから、ウナギ仔魚への給餌に際し、前記粉末状のウナギ仔魚用飼料に、水や海水等の液状物を適宜添加してペースト状のウナギ仔魚用飼料を得た後、ウナギ仔魚へと給餌することができる。
【0077】
実施形態のウナギ仔魚用飼料をウナギ仔魚に給餌することで、ウナギ仔魚からシラスウナギへの変態過程で形態異常を呈する個体の出現頻度を低減することができる。
【0078】
本明細書において、形態異常とは、脊椎の重篤な変形を指し、脊椎の湾曲、浪打、曲がり、首折れ等の異常が挙げられる(
図2参照)。重篤な変形とは、光学顕微鏡による観察にて、観察者が異常を判別できる程度の変形である。
【0079】
生産されるウナギ稚魚の形態異常率は、16個体以上を観察した結果に基づく数基準で、35%以下であってよく、30%以下であってよく、25%以下であってよく、20%以下であってよく、15%以下であってよく、10%以下であってよい。
【0080】
<ウナギ仔魚用飼料の製造方法>
実施形態のウナギ仔魚用飼料の製造方法は、各種原料や原料成分を、一括又は適当な順序で混合して、実施形態のウナギ仔魚用飼料を得ることを含む。
【0081】
実施形態のウナギ仔魚用飼料の製造方法によれば、実施形態のウナギ仔魚用飼料を製造可能である。
【0082】
各種原料や原料成分、及びそれらの含有量としては、上記の≪ウナギ仔魚用飼料≫で例示したものが挙げられる。各種原料や原料成分としては、核酸類の他、上記に例示した、酵母抽出物、乳タンパク質、鶏卵黄末、魚粉、ビタミン類、タウリン、魚類由来の肝油等、その他の任意成分が挙げられる。ウナギ仔魚用飼料は、水や海水等の液状物が適宜添加されていてもよい。
【0083】
実施形態のウナギ仔魚用飼料の製造方法の一例として、前記ウナギ仔魚用飼料の総乾物重量(100重量%)に対し、乾物重量で0.25重量%以上の核酸類を含有するよう、前記核酸類及び/又は酵母抽出物を配合することを含む、ウナギ仔魚用飼料の製造方法を例示する。
【0084】
実施形態のウナギ仔魚用飼料の製造方法の一例として、前記ウナギ仔魚用飼料の総乾物重量(100重量%)に対し、乾物重量で10重量%以下の核酸類を含有するよう、前記核酸類及び/又は酵母抽出物を配合することを含む、ウナギ仔魚用飼料の製造方法を例示する。
【0085】
実施形態のウナギ仔魚用飼料の製造方法の一例として、前記ウナギ仔魚用飼料の総乾物重量(100重量%)に対し、乾物重量で0.25重量%以上10重量%以下の核酸類を含有するよう、前記核酸類及び/又は酵母抽出物を配合することを含む、ウナギ仔魚用飼料の製造方法を例示する。
【0086】
実施形態のウナギ仔魚用飼料は、例えば、任意のウナギ仔魚用基本飼料に、核酸類及び/又は酵母抽出物を添加することでも製造可能である。ここで、当該ウナギ仔魚用基本飼料とは、ウナギ仔魚に給餌して、ウナギ稚魚にまで変態させることが可能な飼料をいう。
核酸類及び/又は酵母抽出物の添加量としては、上記で例示した前記ウナギ仔魚用飼料の総乾物重量に対する前記核酸類の含有量を満たす添加量とすることが挙げられる。
【0087】
実施形態のウナギ仔魚用飼料は、例えば、核酸類及び/又は酵母抽出物0.25~20重量部と、乳タンパク質10~50重量部と、鶏卵黄末5~30重量部と、魚粉10~50重量部と、を配合して製造することができる。これら原料の重量部とは、飼料の製造に用いられる状態(例えば湿重量比)での重量部であってよい。
【0088】
一実施形態において、本発明は、ウナギ仔魚用飼料を製造するための核酸類の使用を提供する。
一実施形態において、本発明は、ウナギ仔魚用飼料を製造するための酵母抽出物の使用を提供する。
【0089】
≪ウナギの生産方法≫
本実施形態のウナギの生産方法は、実施形態のウナギ仔魚用飼料を、ウナギ仔魚に給餌することを含む。
【0090】
また、一実施形態として、実施形態のウナギ仔魚用飼料をウナギ仔魚に給餌することを含む、形態異常を呈するシラスウナギ個体の出現頻度を低減する方法を提供する。
【0091】
実施形態のウナギ仔魚用飼料としては、上記の≪ウナギ仔魚用飼料≫で例示したものが挙げられる。
【0092】
ウナギ仔魚の飼育方法としては、特に制限されるものでなく、公知のウナギ仔魚の飼育方法に沿って実施可能である。一例として、水温23~25℃、塩濃度16~34psu(practical salinity unit)にて、ウナギ仔魚を飼育することができる。
【0093】
ウナギ仔魚用飼料の給餌の方法としては、特に制限されるものでなく、ウナギ仔魚の通常の飼育方法に沿って、飼料を給餌可能である。実施形態のウナギ仔魚用飼料の給餌回数としては、1日あたり1回以上であってよく、例えば、1日あたり3~5回(例えば、少なくとも2時間の給餌間隔を設けることが好ましい)が挙げられる。実施形態のウナギ仔魚用飼料の給餌量としては、ウナギ仔魚の採食状態を考慮して適宜調整すればよく、飽食給餌であることが好ましい。
【0094】
実施形態のウナギ仔魚用飼料を、ウナギ仔魚に給餌する給餌時期は、仔魚期であれば特に制限されるものではないが、変態過程で形態異常をより一層効果的に抑制するとの観点からは、シラスウナギへの変態開始より前の時期を少なくとも含むことが好ましい。一例として、好ましくは変態開始時点より10日前~変態完了時点まで、より好ましくは変態開始時点より30日前~変態完了時点まで、さらに好ましくは変態開始時点より60日前~変態完了時点までの期間にあるウナギ仔魚に、実施形態のウナギ仔魚用飼料を1日に1回以上給餌することが挙げられる。実施形態のウナギ仔魚用飼料の給餌期間は、連続または不連続で、例えば、10日以上であってよく、50日以上であってよく、100日以上であってよく、150日以上であってよい。
【0095】
なお、変態開始前のウナギ仔魚を無給餌で飼育する期間を適宜設けることで、変態開始を誘起することもできる。
【0096】
実施形態のウナギの生産方法は、実施形態のウナギ仔魚用飼料をウナギ仔魚に給餌することを含む、人工種苗を生産する方法であることが好ましい。
ここでの人工種苗の生産とは、人工的に産卵およびふ化させたウナギ仔魚を、シラスウナギまで生育させることを意味する。
【0097】
実施形態のウナギの生産方法は、完全養殖とすることができる。完全養殖とは、ウナギを人工的に産卵およびふ化させて成魚まで飼育させ、その成魚が産んだ卵から次の世代の成魚を育てることである。
【0098】
≪ウナギ稚魚形態異常抑制剤≫
実施形態のウナギ稚魚形態異常抑制剤は、核酸類を有効成分として含有する。
実施形態のウナギ稚魚形態異常抑制剤は、酵母抽出物を有効成分として含有することができる。
【0099】
ウナギ稚魚形態異常抑制剤に含有される核酸類及び酵母抽出物としては、上記の≪ウナギ仔魚用飼料≫に例示したものが挙げられる。
【0100】
実施形態のウナギ稚魚形態異常抑制剤は、例えば、任意のウナギ用飼料、好ましくはウナギ仔魚用飼料に添加されるなどしてウナギ仔魚に投与されることで、形態異常を呈するシラスウナギ個体の出現頻度を低減することができる。
【0101】
一実施形態において、本発明は、ウナギ稚魚形態異常抑制剤としての核酸類の使用を提供する。
一実施形態において、本発明は、ウナギ稚魚形態異常抑制剤としての酵母抽出物の使用を提供する。
【0102】
以上に説明した実施形態のウナギ仔魚用飼料、ウナギの生産方法、及びウナギ稚魚形態異常抑制剤によれば、安定供給が可能な原料を用いてウナギ仔魚の人工飼育が可能であって、且つ高品質のシラスウナギを生産可能である。本実施形態のウナギ仔魚用飼料、ウナギの生産方法、及びウナギ稚魚形態異常抑制剤は、長年にわたり切望されるウナギの完全養殖及び大量生産の商業化の実現に資する極めて有用なものである。
【実施例0103】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0104】
〔実験1〕飼料への核酸類添加による形態異常の出現頻度への影響の評価
飼料原料)
・乾燥卵黄粉末(キューピータマゴ株式会社製、乾燥卵黄No.1)
・酵素処理魚粉(株式会社科学飼料研究所製、CPSP SPECIAL G)
・カゼインNa(日本新薬株式会社製、カゼインナトリウム LW)
・脱脂粉乳(よつ葉乳業株式会社製、北海道脱脂粉乳)
・大豆ペプチド(日本製薬株式会社製、ハイポリペプトンN)
・酵母エキス(高IMP)(興人ライフサイエンス株式会社製、アロマイルド(登録商標))
・核酸類ミックス(AMP、IMP、GMP、CMP、及びUMPの2ナトリウム塩を、それぞれ等重量混合したもの)
AMP: Adenosine 5'-monophosphate disodium salt (富士フィルム和光 QB-7150)
IMP: Inosine 5'-monophosphate disodium salt (ナカライテスク 06400-22)
GMP: Guanine 5'-monophosphate disodium salt (富士フィルム和光 QB-3304)
CMP: Cytidine 5'-monophosphate disodium salt (東京化成 C0524)
UMP: Uridine 5'-monophosphate disodium salt (富士フィルム和光QR-1512)
・タウリン(ナカライテスク株式会社製、試薬タウリン)
・ビタミンミックス(日本ニュートリション株式会社製、水産研究・教育機構ビタミン)
・タラ肝油(兼松新東亜食品株式会社製、ハイカロールE)
【0105】
方法)
5日齢ウナギ仔魚を、飼育水槽(アクリル製ボウル型水槽、湛水量約10L)12面に1面あたり500尾収容した。6日齢ウナギ仔魚にサメ卵代替飼料FSD(表1参照、特許文献3の表1に記載の魚粉飼料を一部改変した飼料)を給餌し、80日齢まで予備飼育を行った。給餌回数は1日5回(2時間間隔)、給餌量は7-10mL/回、水温は23℃、注水量は0.5-0.7L/分、水槽交換は、毎日の最終給餌後に実施した。
80日齢に仔魚を集め、飼育水槽1面あたり80尾の仔魚を計12面に再配分した。各飼料原料を表1に示す配合(g)で混合して各試験飼料を調製した。81日齢以降は、表1に示す各試験飼料を与える試験区を設定した。FSDを給餌する対照区(FSD区)と、飼料FSDに対して、核酸類ミックスを、0.5g、1.0g、2.0g、又は4.0gを添加した飼料を給餌する区(FSD+NM_区)と、飼料FSDに配合される大豆ペプチドを酵母エキスに置換し、一部の原料の配合割合を改変した飼料を給餌する区(FSY区)の計6試験区を設定した。1試験区あたりの水槽面数は、2面とした。基本的な飼育条件は、80日齢までと同様とし、340日齢まで給餌飼育を行った後、341日齢以降は無給餌で飼育して変態開始を誘起した。
変態開始の兆候がみられた個体(肛門位置の前方への移動、体高の低下など)は飼育水槽より取り上げ、容量250mLのポリカーボネート製容器に個別に収容して飼育水を注水し、無給餌で維持して変態が進行するのを観察した。体型が完全にシラスウナギ型に変化した時点を変態完了と定義して、麻酔後写真撮影を行い、変態完了時の体型を画像データとして記録した。
形態異常の判別は、脊椎の重篤な変形を呈する個体を異常と定義し、熟練した判定者2名で独立に判定を行なった。判定結果を照合し、判定者により判定が食い違った個体については、すり合わせを行なった。「形態異常なし」又は「形態異常あり」と判定された個体の一例を
図2に示す。
飼料に添加した核酸類ミックス又は酵母エキスの形態異常の出現頻度に及ぼす影響を検証するために、変態完了時の形態異常の有無に関するバイナリーデータを目的変数とし、飼料の種類(試験区)を説明変数として、ロジスティック回帰分析により、飼料間の形態異常の発症に対するオッズ比および95%信頼区間を、JMP16.0ソフトウェアを用いて算出した。
【0106】
【0107】
本実験1~3において、表1、表3および表6中の「-」の表記は、該当の原料を配合しないことを表す。
本実験1~3において、総乾物重量は、飼料原料に対し105℃で6時間加熱する乾燥処理を行い、飼料原料の乾燥処理後の値の総和とした。
2ナトリウム塩である核酸類を使用した場合には、2ナトリウム分を除いた核酸類自体の重量として、使用量の0.88倍の値を核酸類量として示した。
【0108】
表中の「核酸類含有量(重量%)」の項目に、飼料の総乾物重量に対する、核酸類の乾物重量での含有量の割合(重量%)を示す。
【0109】
結果)
変態を開始した個体は138日齢から出現し、340日齢までの累積の変態開始尾数は308尾(FSD区:29尾、FSD+NM0.5区:48尾、FSD+NM1.0区:52尾、FSD+NM2.0区:65尾、FSD+NM4.0区:54尾、FSY区:60尾)、変態完了個体は283尾(FSD区:27尾、FSD+NM0.5区:43尾、FSD+NM1.0区:50尾、FSD+NM2.0区:57尾、FSD+NM4.0区:49尾、FSY区:57尾)であった。
試験区ごとの形態異常発症頻度とオッズ比を
図3および表2に示した。対照のFSD区に対して、核酸類ミックスを添加した4試験区では、核酸類ミックスの添加濃度が高いほど形態異常発症に対するオッズ比が低下し、FSY区では最も低下した。オッズ比から推定されるFSD区での発症頻度を100%とした時の低下率は、FSD+NM0.5区で50.0%、FSD+NM1.0区で63.6%、FSD+NM2.0区で69.1%、FSD+NM4.0区で75.8%、FSY区で94.7%であり、核酸類ミックス又は酵母エキスの添加により、形態異常の発症頻度の低減が可能であることが示された。形態異常を呈する個体の割合は、飼料中の核酸類の含有量依存的に低下していた。
【0110】
【0111】
〔実験2〕各種酵母エキスの検討
飼料原料)上記実験1と共通でないもの
・酵母エキス(高AMP)(興人ライフサイエンス株式会社製、ヌクレアミン(登録商標))
・酵母エキス(試薬)(シグマアルドリッチ製、酵母エキス 09182)
【0112】
方法)
6日齢ウナギ仔魚を、飼育水槽(ポリカーボネート製ハーフパイプ型水槽、湛水量約30L)14面に、1面あたり1,000~1,500尾を収容した。6日齢ウナギ仔魚にサメ卵代替飼料FSDを給餌し、39日齢まで予備飼育を行った。給餌回数は1日5回(2時間半間隔)、給餌量は30-40mL/回、水温は23℃、注水量は1.6-1.7L/分、水槽交換は、毎日の最終給餌後に実施した。
40日齢に仔魚を集め、30Lハーフパイプ水槽1面あたり400尾の仔魚を計14面に再配分した。各飼料原料を表3に示す配合(g)で混合して各試験飼料を調製した。40日齢以降は、表3に示す計4種類の各試験飼料を与える試験区を設定した。1試験区あたりの水槽面数は3又は4面とした(FSD区:4面、FSY2区:4面、FSX区:3面、FSZ区:3面)。基本的な飼育条件は39日齢までと同様とし、304日齢まで給餌飼育を行った。305日齢から330日齢までは無給餌で飼育して変態開始を誘起した。
変態開始および完了の定義、表現型の記録方法、形態異常の判別、統計解析については実験1と同様とした。
【0113】
【0114】
結果)
飼料FSD、及び添加した3種類の酵母エキスに含まれるヌクレオチド類の含有量について、分析値を取得した。分析は5%過塩素酸で抽出したサンプルに対して行い、各種核酸類の含有量を測定した。
飼料FSD及び試薬酵母エキス(シグマアルドリッチ製)については、ヌクレアーゼP1で酵素分解処理をしたサンプルについても分析し、各種核酸類の含有量を測定した(5’-イノシン酸を対象とする分析では、5%過塩素酸で抽出したサンプルについて分析し、含有量を測定した)。
なお、酵母エキス(アロマイルドおよびヌクレアミン、興人ライフサイエンス株式会社製)の核酸類の主な給源はRNAであり、製造過程にてRNAの分解処理がなされているため、酵母エキス中の核酸類としてはヌクレオチドの状態で存在している。試薬酵母エキス(シグマアルドリッチ製)については、ヌクレアーゼP1で酵素分解を行わない飼料においてはヌクレオチドが検出されなかったため、試薬酵母エキス中の核酸類は、リボ核酸(RNA)及びデオキシリボ核酸(DNA)として含有されていた。
【0115】
飼料FSD、及び使用した3種類の酵母エキスに含まれるヌクレオチド類の分析結果を、飼料FSD又は酵母エキスの乾物重量あたりの含有量(重量%)として、表4に示した。分析値の総ヌクレオチドと総ヌクレオシドの合計量を核酸類含有量とした。
飼料FSD中には、ほとんど核酸類が含まれておらず、GMP以外の分析項目は検出限界(0.01g/100g)以下だった。アロマイルドはIMP、UMP、GMP、CMPを含有し、総ヌクレオチドは23.05重量%、総ヌクレオシドは1.44重量%だった。ヌクレアミンはAMP、UMP、GMP、CMPを含有し、総ヌクレオチドは24.86重量%、総ヌクレオシドは1.74重量%だった。試薬酵母エキスはAMP、UMP、GMP、CMPを含有し、総ヌクレオチドは4.24重量%、総ヌクレオシドは1.22重量%だった。
なお、5’-チミジル酸が検出限界以下であった区では、デオキシヌクレオチド及びデオキシヌクレオシド、及びDNAの含有量は、検出限界以下であると推定された。
【0116】
【0117】
飼育終了までに変態開始した尾数は合計で163尾(FSD区:18尾、FSY2区:59尾、FSX区:64尾、FSZ区:22尾)、変態完了した尾数は合計で138尾(FSD区:16尾、FSY2区:46尾、FSX区:59尾、FSZ区:17尾)であった。
試験区ごとの形態異常発症頻度とオッズ比を
図4および表5に示した。飼料FSD区に対して、酵母エキスを添加した3試験区では形態異常発症に対するオッズ比が低下した。オッズ比から推定されるFSD区での発症頻度を100%とした時の低下率は、FSY2区で68.6%、FSX区で96.5%、FSZ区で58.3%であり、核酸類を含有する酵母エキスの添加により、形態異常の発症頻度の低減が可能であることが示された。
【0118】
【0119】
〔実験3〕飼料における核酸類の含有量の検討
飼料原料)上記実験1~2と共通でないもの
・核酸類ミックス(株式会社マルゴコーポレーション製、5’-リボヌクレオチドナトリウム 核酸、IMP及びGMPの混合物)
・ビタミンミックス(Furuita et al. (2014) Fisheries Science, 80, 581-587を参照)
・タウリン(富士フィルム和光純薬株式会社製)
【0120】
方法)
6日齢ウナギ仔魚を、飼育水槽(アクリル製ボウル型水槽、湛水量約10L)7面に1面あたり250尾を収容した。各飼料原料を表6に示す配合(g)で混合して各試験飼料を調製した。7日齢ウナギ仔魚から19日齢まで表6に示す各試験飼料を与えて給餌飼育を行った。給餌回数は1日5回(2時間間隔)、給餌量は7mL/回、水温は23℃、注水量は0.4-0.6L/分、水槽交換は、毎日の最終給餌後に実施した。試験区は、核酸類ミックス(IMP及びGMPの混合物)を飼料FSDに対して、1g、2g、5g、10g、15g、又は20gを添加した飼料を給餌する7試験区とし、1試験区あたりの水槽面数は1面とした。
20日齢に1水槽あたり31-33尾をランダムに取り上げて、麻酔後に実体顕微鏡下で写真撮影を行い、ImageJを用いた画像解析により、全長および体高を測定した。試験区ごとの平均全長、平均体高と核酸類含有量(飼料の総乾物重量に対する、核酸類の乾物重量での含有量の割合(重量%))の関係についてシグモイド曲線への当てはめを行い、最大応答の50%となる変曲点を推定した。
【0121】
【0122】
結果)
20日齢の平均全長、および平均体高と、飼料の核酸類含有量との関係を
図5に示した。各パラメータの変曲点および95%信頼区間は、それぞれ9.99(7.7-12.3)、9.79(7.8-11.8)と推定された。このことから、例えば、乾物重量当たり10重量%以下の核酸類を含む飼料の給餌により、より一層良好なウナギ仔魚の成長が達成可能であることが示された。
【0123】
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。