(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174438
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】車両の運転支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 50/14 20200101AFI20241210BHJP
B60W 40/10 20120101ALI20241210BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20241210BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20241210BHJP
B60W 40/09 20120101ALI20241210BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B60W50/14
B60W40/10
B60W40/02
B60W40/04
B60W40/09
G08G1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092258
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青島 英道
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA30
3D241BA51
3D241BA60
3D241BA70
3D241BB02
3D241CE04
3D241DB20Z
3D241DC38Z
3D241DC57Z
3D241DD04Z
3D241DD11Z
5H181AA01
5H181CC04
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】運転者に過度な煩わしさを感じさせることなく、自車両にとってより適切なタイミングで自動運転モードへの切り替えを推奨する。
【解決手段】
自動運転の作動および停止を運転者の選択に応じて切り替える。車両が道路上の走行区間を走行した際の自動運転の作動履歴を、走行区間に関連付けて記憶する(S109)。車両が現在走行中である走行区間を判定し(S104)、現在走行中の走行区間に関して記憶されている作動履歴を特定履歴情報として取得する(S105)。現在走行中の走行区間において自動運転が停止されている場合に、特定履歴情報をもとに、運転者に対して自動運転を作動させる選択を促す(S108)。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転の作動および停止を運転者の選択に応じて切り替える運転モード切替手段と、
車両が道路上の走行区間を走行した際の前記自動運転の作動履歴を、前記走行区間に関連付けて記憶する作動履歴記憶手段と、
前記車両が現在走行中である走行区間を判定する走行区間判定手段と、
前記走行区間判定手段により判定した前記走行区間に基づき、現在走行中の走行区間に関して前記作動履歴記憶手段に記憶されている前記作動履歴を、特定履歴情報として取得する特定履歴情報取得手段と、
現在走行中の走行区間において前記自動運転が停止されている場合に、前記特定履歴情報取得手段により取得した前記特定履歴情報をもとに、前記運転者に対し、前記自動運転を作動させる選択を促す自動運転推奨手段と、を備える、車両の運転支援装置。
【請求項2】
前記運転者を識別する運転者識別手段をさらに備え、
前記作動履歴記憶手段は、前記作動履歴を、前記運転者識別手段により識別した前記運転者ごとに、前記走行区間に関連付けて記憶し、
前記特定履歴情報取得手段は、現在走行中の走行区間に関して記憶されている当該運転者の前記特定履歴情報を取得する、請求項1に記載の車両の運転支援装置。
【請求項3】
前記作動履歴は、前記走行区間を走行する際に前記自動運転を作動させた頻度または回数に関する履歴であり、
前記自動運転推奨手段は、前記頻度が所定の第1閾値以上であるかまたは前記回数が所定の第2閾値以上である場合に、前記選択を促す、請求項2に記載の車両の運転支援装置。
【請求項4】
前記自動運転推奨手段は、前記走行区間を所定の回数以上に亘って走行しかつ前記走行区間を走行する際に前記自動運転を作動させた頻度が前記第1閾値以上である場合に、前記選択を促す、請求項3に記載の車両の運転支援装置。
【請求項5】
前記走行区間を走行中、前記自動運転が停止した後、前記運転モード切替手段により前記自動運転が再開された場合に、前記第1閾値または前記第2閾値を再開前よりも減少させる、請求項3に記載の車両の運転支援装置。
【請求項6】
前記自動運転推奨手段は、前記走行区間の中間地点に到達する前に、前記選択を促す、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両の運転支援装置。
【請求項7】
前記走行区間で交通渋滞が発生していることを検知する渋滞検知手段をさらに備え、
前記自動運転推奨手段は、前記渋滞検知手段により前記走行区間で交通渋滞が発生していることを検知した場合に、検知していない場合よりも早いタイミングで、前記選択を促す、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両の運転支援装置。
【請求項8】
前記運転者が疲労していることを検知する運転者疲労検知手段をさらに備え、
前記自動運転推奨手段は、前記運転者疲労検知手段により前記運転者が疲労していることを検知した場合に、検知していない場合よりも早いタイミングで、前記選択を促す、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両の運転支援装置。
【請求項9】
前記自動運転に対する前記運転者の嗜好を、複数の前記走行区間に亘る前記自動運転の作動履歴をもとに判定する運転者嗜好判定手段をさらに備え、
前記自動運転推奨手段は、前記運転者嗜好判定手段により判定した前記自動運転に対する嗜好が高い運転者ほど、早いタイミングで前記選択を促す、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者に対し、手動運転モードから自動運転モードへの切り替えを推奨する技術が存在する。特許文献1には、自車両を含む複数の車両が切り替えを行う切替地点に関する情報をもとに、自動運転モードへの切り替えを推奨することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術は、切り替えを推奨する際に、自車両以外の他車両の切り替えに関する情報が考慮されるため、推奨を行うタイミングは、必ずしも自車両にとって適切なタイミングであるとは限らず、運転者によっては煩わしさを感じることが懸念される。
【0005】
このような実情に鑑み、本発明は、運転者に過度な煩わしさを感じさせることなく、自車両にとってより適切なタイミングで自動運転モードへの切り替えを推奨し、自動運転モードの利用促進を図ることのできる車両の運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、本発明の一形態に係る車両の運転支援装置は、自動運転の作動および停止を運転者の選択に応じて切り替える運転モード切替手段と、車両が道路上の走行区間を走行した際の前記自動運転の作動履歴を、前記走行区間に関連付けて記憶する作動履歴記憶手段と、前記車両が現在走行中である走行区間を判定する走行区間判定手段と、前記走行区間判定手段により判定した前記走行区間に基づき、現在走行中の走行区間に関して前記作動履歴記憶手段に記憶されている前記作動履歴を、特定履歴情報として取得する特定履歴情報取得手段と、現在走行中の走行区間において前記自動運転が停止されている場合に、前記特定履歴情報取得手段により取得した前記特定履歴情報をもとに、前記運転者に対し、前記自動運転を作動させる選択を促す自動運転推奨手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一形態によれば、過去に自動運転により走行した履歴がある走行区間にあるにも拘らず、今回の走行では自動運転を作動させていない場合に、運転者に対して自動運転を作動させる選択を促し、自動運転の利用促進を図ることが可能となる。ここで、選択を促す際に、特定履歴情報を参照することで、過剰な推奨により運転者に煩わしさを感じさせる事態を回避し、自車両にとって適切なタイミングで自動運転を作動させる選択を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両の制御システムの構成を示す概略図である。
【
図2】同上制御システムを構成する運転支援コントローラの内部構成を示す概略図である。
【
図3】同上運転支援コントローラにより実施される自動運転推奨制御の内容を示すフローチャートである。
【
図4】同上制御において実施される推奨区間設定処理の内容を示すフローチャートである。
【
図5】同上処理において参照される特定履歴情報を示す説明図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る自動運転推奨制御の内容を示すフローチャートである。
【
図7】同上制御により自動運転を作動させる選択を促すタイミングを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
(制御システムの全体構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る車両の制御システムSの構成を示す概略図である。
【0011】
制御システムSは、運転支援コントローラ101を備えるとともに、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)装置1を備える。本実施形態において、運転支援コントローラ101は、車載ナビゲーション装置401と連携して、「車両の運転支援装置」を構成する。車載ナビゲーション装置401に備わるタッチパネルディスプレイは、HMI装置1を兼ねることが可能である。
【0012】
本実施形態では、車両の走行状態に関わる運転者の操作を支援するかまたは車両の走行状態を運転者の操作によらず自動的に制御する車両を対象とする(運転者の操作を支援しまたは車両の走行状態を自動的に制御する運転形態を、以下「自動運転」という)。具体的には、自動運転は、衝突被害軽減ブレーキ、アダプティブクルーズコントロールまたはレーンキープアシスト等の1つまたは適宜の組み合わせを実施する運転形態である。衝突被害軽減ブレーキは、自車両の前方または後方に存在する障害物(例えば、先行車や歩行者)に対する衝突可能性がある場合に、自動的に制動力を生じさせる制御である。アダプティブクルーズコントロールは、先行車に対して所定の車間距離を維持した状態で追従走行する制御であり、先行車が存在しない場合に、自車両の車速を所定の速度に維持する制御を実施する形態のものを含む。レーンキープアシストは、現在走行中の車線の中央を維持するようにステアリングを補助する制御である。これに限らず、自動運転は、駆動、制動および操舵に関する操作の全てを一定の条件のもとでまたは運行設計領域の全体に亘って制御システムSが担う運転形態であってもよい。さらに、自動運転は、制御システムSによる運転継続が困難な状況において運転者に対して操作の引き継ぎを要求する、いわゆるテイクオーバリクエストを発出するものであってもよいし、テイクオーバリクエストを発出せず、路肩への退避等、安全確保のための操作を制御システムSが行うものであってもよい。
【0013】
制御システムSは、現在位置センサ201を備えるとともに、車内監視用のカメラ(以下「車内カメラ」という)202を備える。
【0014】
現在位置センサ201は、車両の現在位置を検出する。現在位置センサ201は、衛星測位システム(GPS)の受信機を備え、衛星測位システムにより検出される受信機の位置座標をもとに、車両の現在位置を検出可能である。
【0015】
車内カメラ202は、車両の車室全体を撮影可能に配置され、車内に設置された各座席に着座している搭乗者(運転者のほか、助手席に着座している同乗者および他の同乗者を含む)を撮影する。車内カメラ202により撮影された画像をもとに、搭乗者の属性および状態を判定可能である。本実施形態では、搭乗者の属性として、運転者が高齢者であるか否かを判定し、搭乗者の状態として、運転者が疲労しているか否かを判定する。車内カメラ202は、車内に取り付けられたバックミラーまたはルームミラーに設置可能である。
【0016】
現在位置センサ201および車内カメラ202は、制御システムSの検出部を構成する。
【0017】
以上に加え、制御システムSは、運転モード切替スイッチ301および車載ナビゲーション装置401を備える。
【0018】
運転モード切替スイッチ301は、運転者により操作可能な位置に設置され、運転者は、運転モード切替スイッチ301の操作により、車両の運転モードを、通常運転モードと自動運転モードとで切り替えて設定することが可能である。通常運転モードは、駆動、制動および操舵に関する全ての操作を運転者自身が手動により行う運転モードであり、自動運転モードは、自動運転により走行する運転モードである。運転モード切替スイッチ301は、車内に設置されたHMI装置1、例えば、車載ナビゲーション装置401のタッチパネルディスプレイに組込可能であり、運転席に近いダッシュボードに設置することも可能である。
【0019】
運転モードの設定、つまり、通常運転モードと自動運転モードとの切り替えは、運転モード切替スイッチ301により運転者の物理的な接触を介して行うほか、音声を介して行うことも可能である。
【0020】
車載ナビゲーション装置401は、道路地図情報が予め記憶され、道路地図をディスプレイに表示するとともに、現在位置センサ201により検出された車両の現在位置を、この道路地図上に表示する。車載ナビゲーション装置401は、さらに、道路交通情報を取得可能に構成され、取得された道路交通情報を、運転者および他の搭乗者に対して音声により通知しまたはディスプレイに表示する。道路交通情報は、無線により取得可能であり、交通渋滞情報を含む。
【0021】
これらの各種センサ201~202およびスイッチ301からの出力信号は、運転支援コントローラ101に入力される。運転支援コントローラ101は、車載ナビゲーション装置401と連携動作可能であり、車載ナビゲーション装置401から、走行区間に関する情報および交通渋滞情報を取得する。本実施形態では、地図上の道路を所定の条件に従ってその敷設方向(つまり、道路の長さまたは距離方向)に区画して、複数の走行区間が設定されており、運転支援コントローラ101が車載ナビゲーション装置401から取得する走行区間に関する情報は、走行区間を特定するための区間識別情報を含む。運転支援コントローラ101は、道路地図上における車両の現在位置を把握するとともに、この区間識別情報をもとに、車両が現在走行中の走行区間、換言すれば、車両の現在位置が属する走行区間を判定可能である。運転支援コントローラ101は、制御システムSの演算部を構成し、各種センサ201~202および車載ナビゲーション装置401から取得した情報をもとに、自動運転推奨制御に関わる所定の演算を実行し、演算の結果に応じた指令信号をHMI装置1に出力する。
【0022】
HMI装置1は、制御システムSの出力部を構成し、自動運転に関する各種の案内を実施する。この案内は、自動運転の作動状況に関する案内のほか、運転者に対して自動運転を作動させる選択を促す案内(以下「自動運転推奨案内」という場合がある)を含む。自動運転推奨案内は、ディスプレイにより視覚を介して行うほか、音声により行うことも可能である。
【0023】
(運転支援コントローラの内部構成)
図2は、運転支援コントローラ101の内部構成を示す概略図である。
【0024】
本実施形態に係る運転支援コントローラ101は、大別すると、運転モード切替部111、運転者識別部112、作動履歴記憶部113、走行区間判定部114、特定履歴情報取得部115および自動運転推奨部116を備える。
【0025】
運転モード切替部111は、運転モード切替スイッチ301の出力信号をもとに、車両の運転モードを自動運転モードと手動運転モードとで切り替え、自動運転の作動および停止を切り替える。運転支援コントローラ101は、運転モード切替部111により自動運転モードが設定された場合に、自動運転を作動させ、手動運転モードが設定された場合に、自動運転を停止させる。
【0026】
運転者識別部112は、車内カメラ202により撮影された画像をもとに、運転者を識別する。
【0027】
作動履歴記憶部113は、道路地図上で区画されたそれぞれの走行区間を走行した際の自動運転の作動および停止に関する履歴(以下「作動履歴」という)を、走行区間に関連付けて記憶する。本実施形態では、作動履歴を、運転者識別部112により識別された運転者ごとに区別可能に記憶する。例えば、車両を運転する可能性がある潜在的な運転者を運転候補者として予め登録しておき、実際の走行時に運転している運転者に対応させて作動履歴を記憶する。
【0028】
走行区間判定部114は、車両が現在走行中の走行区間を判定する。先に述べたように、本実施形態において、走行区間の判定は、車載ナビゲーション装置401から取得する区間識別情報に基づく。
【0029】
特定履歴情報取得部115は、走行区間判定部114により判定された走行区間に基づき、現在走行中の走行区間に対応させて作動履歴記憶部113に記憶されている作動履歴、本実施形態では、運転者ごとの作動履歴を、特定履歴情報として取得する。特定履歴情報の取得は、判定された走行区間により運転者ごとの作動履歴を検索し、現在走行中の走行区間に関する当該運転者の作動履歴を取得することによる。本実施形態において、作動履歴は、対象とする走行区間が、運転者に対して自動運転を作動させる選択を促す区間、換言すれば、自動運転推奨案内を実施する区間(以下「推奨区間」という)に設定されている否かを示す履歴情報である。推奨区間は、走行区間を走行する際に自動運転を作動させた頻度または回数に応じて設定可能であり、本実施形態では、所定の回数以上に亘って走行しかつ走行に際して自動運転を作動させた頻度が所定の閾値以上である走行区間を、推奨区間に設定する。
【0030】
図5(a)は、作動履歴の一例を示し、走行区間1~nのそれぞれが推奨区間に設定されているか否かを、運転者A~Dごとに示したものである。推奨区間に設定されている走行区間(例えば、運転者Aについて走行区間1)には、識別子として「1」が付与され、推奨区間に設定されていない走行区間(例えば、運転者Cについて走行区間2)には、識別子として「0」が付与される。運転支援コントローラ101は、この識別子の値を参照して、推奨区間に設定されている走行区間であるか否かを判定可能である。運転候補者の一部について自動運転推奨案内を行う対象としない場合は(例えば、運転者D)、識別子を付与しなくてもよいし、識別子として一律に「0」を付与してもよい。
【0031】
自動運転推奨部116は、現在走行中の走行区間において自動運転が停止されている場合、つまり、現在走行中の走行区間において手動運転モードが設定されている場合に、特定履歴情報をもとに、運転者に対して自動運転を作動させる選択を促す案内(つまり、自動運転推奨案内)を実施する。本実施形態では、現在走行中の走行区間が推奨区間に設定されている場合に、自動運転推奨案合をHMI装置1のディスプレイに表示するとともに、音声より通知する。これに対し、運転者は、運転モード切替スイッチ301の操作により運転モードを手動運転モードから自動運転モードに切り替え、自動運転を作動させることが可能である。
【0032】
(運転支援コントローラの動作)
以下に、運転支援コントローラ101の動作について、フローチャートを参照して説明する。
【0033】
図3は、自動運転推奨制御の内容を示すフローチャートである。本実施形態において、自動運転推奨制御は、車両に対する電源投入後、運転支援コントローラ101により繰り返し実行される。
【0034】
S101では、運転者を識別する。
【0035】
S102では、現在運転中の運転者が、自動運転を作動させる選択を促す対象、つまり、自動運転推奨案内を行う対象とする運転者(以下「対象運転者」という)であるか否かを判定する。対象運転者である場合は、S103へ進み、対象運転者でない場合は、今回の制御を終了する。
【0036】
S103では、車両の現在位置を検出する。
【0037】
S104では、車両が現在走行中の走行区間を判定する。
【0038】
S105では、現在走行中の走行区間が推奨区間であるか否かを判定する。推奨区間である場合は、S106へ進み、推奨区間でない場合は、S109へ進む。
【0039】
S106では、車両の運転モードとして自動運転モードが設定されているか否か、つまり、自動運転による走行中であるか否かを判定する。自動運転モードが設定されている場合は、S109へ進み、自動運転モードが設定されていない場合は、S107へ進む。
【0040】
S107では、現在走行中の走行区間における走行を開始した後、つまり、現在走行中の走行区間の出発地点を通過した後、所定の時間が経過したか否かを判定する。所定の時間が経過した場合は、S108へ進み、経過していない場合は、S106へ戻り、所定の時間が経過するまで判定を繰り返す。
【0041】
S108では、運転者に対し、自動運転推奨案内を実施する。具体的には、自動運転モードの設定を促す案内をHMI装置1のディスプレイに表示するとともに、次のような音声案内を通知する。
「自動運転推奨区間です。自動運転モードの設定を推奨します。」
【0042】
本実施形態では、運転者に対して自動運転モードの設定を促す場合に、自動運転推奨案内を実施するタイミングは、車両が走行区間の中間地点に到達する前とする。
【0043】
S109では、推奨区間設定処理を実行する。推奨区間設定処理は、現在走行中の走行区間を推奨区間に設定するか否か、既に推奨区間に設定されている走行区間を走行中である場合は、現在走行中の走行区間を引き続き推奨区間に設定するか否かを判定し、その判定結果に応じて推奨区間を設定しまたは設定を解除する処理であり、
図4のフローチャートに示す手順による。
【0044】
図4は、推奨区間設定処理の内容を示すフローチャートである。本実施形態において、推奨区間設定処理は、自動運転推奨制御の制御ルーチンにおけるS109の処理として実行される。
【0045】
S201では、現在走行中の走行区間を走行した回数Nを更新する。具体的には、直前までの回数をNn-1として、Nn-1に今回分の1を加算する(N=Nn-1+1)。
【0046】
S202では、現在走行中の走行区間における自動運転の作動頻度、換言すれば、現在走行中の走行区間を走行した際に自動運転を作動させた頻度Fを更新する。具体的には、直前までの頻度をFn-1として、今回の走行に際して自動運転を作動させている場合は、次式(1)の計算により、自動運転を作動させていない場合は、次式(2)の計算による。
F=(Fn-1×Nn-1+1)/N …(1)
F=(Fn-1×Nn-1)/N …(2)
【0047】
S203では、走行回数Nが所定の回数N1以上であるか否かを判定する。所定の回数N1以上である場合は、S204へ進み、所定の回数N1未満である場合は、S206へ進む。
【0048】
S204では、作動頻度Fが所定の頻度F1以上であるか否かを判定する。所定の頻度F1以上である場合は、S205へ進み、所定の頻度F1未満である場合は、S206へ進む。
【0049】
S205では、現在走行中の走行区間を推奨区間に設定するか、現在走行中の走行区間が既に推奨区間に設定されている場合に、その設定を維持する。本実施形態では、該当する走行区間に対し、識別子「1」を付与する。
【0050】
S206では、推奨区間の設定を保留するか、現在走行中の走行区間について既にされている推奨区間の設定を解除する。本実施形態では、該当する走行区間に対し、識別子「0」を付与する。
【0051】
S205またはS206の処理の実行後、
図3に示すフローチャートに戻り、今回の制御を終了する。
【0052】
(作用および効果の説明)
以下に、本実施形態により得られる作用および効果について説明する。
【0053】
本実施形態では、自動運転の作動および停止を運転者の選択に応じて切替可能な車両において、車両が道路上の走行区間を走行した際の自動運転の作動履歴を、その走行区間に関連付けて記憶する。そして、同じ走行区間を次回以降に走行する際に、記憶されている作動履歴を特定履歴情報として取得し、今回の走行に際して自動運転が停止されている場合は、特定履歴情報をもとに、運転者に対して自動運転を作動させる選択を促す。つまり、過去に同じ走行区間を自動運転により走行した履歴があるにも拘らず、今回の走行では自動運転を作動させていない場合は、運転者に対して自動運転を作動させる選択を促し、自動運転の利用促進を図ることが可能となる。その際、特定履歴情報を参照することで、運転者に過度な煩わしさを感じさせることなく、自車両にとって適切なタイミングで、自動運転を作動させる選択を促すことができる。
【0054】
ここで、自動運転の作動履歴を運転者ごとに走行区間に関連付けて記憶可能とし、次回以降の走行に際し、走行区間に関して記憶されている当該運転者の特定履歴情報を取得することで、運転者ごとの特定履歴情報をもとに、自動運転を作動させる選択を促すことが可能となる。これにより、運転者ごとに異なる嗜好を反映させ、より適切なタイミングで、自動運転を作動させる選択を促すことができる。
【0055】
自動運転の作動履歴を、走行区間を走行する際に自動運転を作動させた頻度Fに関する履歴とし、作動頻度Fが所定の頻度F1以上である場合、換言すれば、走行区間の走行に際して相応の頻度で自動運転を作動させた履歴がある場合に、自動運転を作動させる選択を促すことで、自動運転に対する嗜好が高い運転者を選択して、自動運転を作動させる選択を促すことが可能となり、運転者に煩わしさを感じさせる事態をより確実に抑制することができる。
【0056】
自動運転の作動履歴は、これに限らず、走行区間を走行する際に自動運転を作動させた回数に関する履歴であってもよい。この場合は、現在走行中の走行区間における自動運転の作動回数が所定の回数以上であり、走行区間の走行に際して相応の回数に亘って自動運転を作動させた履歴がある場合に、自動運転を作動させる選択を促す。
【0057】
そして、運転者に対する案内を実施するか否かの判定を、単に頻度または回数をもとに行うだけでなく、走行区間を走行した回数Nおよび走行に際して自動運転を作動させた頻度Fをもとに行い、走行区間を所定の回数N1以上走行しかつ走行に際して自動運転を作動させた頻度Fが所定の頻度F1以上である場合に、自動運転を作動させる選択を促すことで、比較的高い頻度で自動運転を作動させる運転者、換言すれば、自動運転に対する嗜好が高い運転者を案内の対象とすることが可能となり、他方で、自動運転に対する嗜好が低く、手動運転を選択する傾向にある運転者に対し、自動運転を作動させる選択を促すことにより煩わしさを感じさせる事態を回避することができる。
【0058】
作動履歴として、推奨区間に設定されている否かを示す履歴情報を採用し、次回以降の走行に際し、現在走行中の走行区間が推奨区間に設定されているか否かを判定することで、運転者に対する案内を実施するか否かの判定を簡易かつ容易なものとすることが可能となる。
【0059】
作動履歴は、これに限らず、走行区間を走行する際に自動運転を作動させた回数および頻度とすることも可能である。
図5(b)は、この場合の作動履歴の一例として、走行区間1~nのそれぞれに対し、自動運転を作動させた回数Nおよび頻度Fを、運転者A~Dごとに示したものである。例えば、運転者Aが走行区間1を走行中である場合に、回数Nが所定の閾値N1以上でありかつ頻度Fが所定の閾値F1以上であれば、その走行区間1を自動運転推奨案内を行う対象とし、自動運転を作動させていない場合に、自動運転モードの設定を促す案内を実施する。
【0060】
自動運転推奨案内を実施するタイミングを、走行区間の中間地点に到達する前とすることで、自動運転により走行する距離または時間を確保し、制御の実効性を確保することが可能となる。
【0061】
(他の実施形態の説明)
先の実施形態では、運転者に対して自動運転を作動させる選択を促す案内、つまり、自動運転推奨案内を実施するタイミングを、現在走行中の走行区間における走行を開始した後、所定の時間が経過した時点とした。この所定の時間は、一定であってもよいが、種々の条件に応じて変更可能であってもよい。本実施形態では、所定の時間を運転者の嗜好、運転者の状態または走行区間の状況等に応じて変更可能とし、自動運転推奨案内をより適切なタイミングで実施可能とする。
【0062】
図2を参照すると、本実施形態に係る運転支援コントローラ101は、先の実施形態における運転モード切替部111、運転者識別部112、作動履歴記憶部113、走行区間判定部114、特定履歴情報取得部115および自動運転推奨部116に加え、運転者嗜好判定部117、渋滞検知部118および運転者疲労検知部119を備える。
【0063】
運転者嗜好判定部117は、自動運転に対する運転者の嗜好を判定する。運転者の嗜好は、自動運転に対する運転者の依存度合と言い換えることができ、複数の走行区間に亘る自動運転の作動履歴をもとに、運転者ごとに判定可能である。本実施形態では、運転者が過去に走行した経験のある走行区間全体を対象として作動履歴を評価し、全体として自動運転を作動させる傾向にある運転者を、自動運転に対する嗜好が高い運転者として判定する。例えば、過去に走行した経験のある走行区間のうち、推奨区間に設定された走行区間の占める割合が所定の割合以上である運転者を、自動運転に対する嗜好が高い運転者とする。
【0064】
渋滞検知部118は、現在走行中の走行区間で交通渋滞が発生していることを検知する。交通渋滞の発生は、車載ナビゲーション装置401により取得される交通渋滞情報をもとに検知可能である。
【0065】
運転者疲労検知部119は、運転者が疲労していることを検知する。運転者が疲労していることは、車内カメラ202により撮影された運転者の画像をもとに検知可能である。例えば、運転者の顔の肌色に疲労時に特有の変化が表れていたり、視線が定まらないといった疲労時に特有の挙動を運転者が示したりした場合に、運転者が疲労した状態にあると判定する。
【0066】
自動運転推奨部116は、自動運転に対する嗜好が高い運転者ほど、自動運転推奨案内をより早いタイミングで実施し、同じ運転者であっても現在走行中の走行区間で交通渋滞が発生していたり、疲労していることを検知したりした場合は、より早いタイミングで自動運転推奨案内を実施する。本実施形態では、車両が現在走行中の走行区間の中間地点に到達する前に自動運転推奨案内を実施するとともに、自動運転に対する運転者の嗜好が高いか、走行区間で交通渋滞が発生しているか、運転者が疲労している場合に、走行区間における走行を開始した後、より早いタイミングで、換言すれば、走行区間の出発地点により近い位置で案内を実施する。
【0067】
図6は、本実施形態に係る自動運転推奨制御の内容を示すフローチャートである。
【0068】
本実施形態に係る自動運転推奨制御は、
図3に二点鎖線で示す枠Aで囲まれた工程を
図6に示すものに置き換えた手順に従う。S101からS105の処理を実施した後、S301では、交通渋滞情報を取得し、現在走行中の走行区間で交通渋滞が発生しているか否かを判定する。
【0069】
S302では、運転者が疲労しているか否かを判定する。
【0070】
S303では、自動運転に対する運転者の嗜好が高いか否かを判定する。
【0071】
そして、S106において現在走行中の走行区間で自動運転を作動させていないと判定した場合に、自動運転に対する運転者の嗜好が高いか、走行区間で交通渋滞が発生しているか、運転者が疲労している場合に、所定の時間を短縮し(S107)、走行区間における走行を開始した後、より早いタイミングで自動運転推奨案内を実施する(S108)。
【0072】
図7は、自動運転推奨案内を実施するタイミングを示す説明図である。
図7(a)は、道路の敷設方向に連続する複数の走行区画1~nを示し、
図7(b)は、走行区間iの走行中に自動運転を作動させていない場合に、自動運転推奨案内を実施するタイミングを示す。
【0073】
走行区間1から走行区間nへと続く道路または経路の走行中、車両が現在、走行区間iにあるとする。例えば、目標地点に至る経路を車載ナビゲーション装置401により設定する場合に、走行区間1の始点psは、設定経路の出発地点(つまり、出発時における車両の現在地点)であり、走行区間nの終点pdは、設定経路の終着地点(つまり、目標地点)である。
図7(b)は、車両の進行方向に対して走行区間iの出発地点を符号p1により、走行区間iの終着地点を符号p5により、出発地点p1と終着地点p5との中間地点を符号p4により夫々示す。
【0074】
走行区間iにおいて自動運転推奨案内を実施するタイミングは、通常は、出発地点p1と中間地点p4との間の地点p3にあるタイミングに設定される。この地点p3は、中間地点p4よりも出発地点p1に近い。これに対し、自動運転に対する運転者の嗜好が高かったり、走行区間iで交通渋滞が発生していたり、運転者が疲労していたりする場合は、通常時の地点p3よりも出発地点p1に近い地点p2にあるタイミングに設定される。
【0075】
このように、自動運転に対する運転者の嗜好を判定し、自動運転に対する嗜好が高い運転者ほど、早いタイミングで自動運転推奨案内を実施することで、自動運転に対する嗜好が高い運転者に対しては自動運転の積極的な選択を促し、自動運転の利用促進を図る一方、自動運転に対する嗜好が低い運転者に対しては自動運転推奨案内を実施するタイミングを遅らせ、自動運転を利用する意思がないにも拘らず自動運転を作動させる選択を促すことで、煩わしさを感じさせる事態を抑制することが可能となる。
【0076】
交通渋滞が発生している走行区間は、自動運転による走行が有効な状況にある。そこで、走行区間で交通渋滞が発生していることを検知した場合に、早いタイミングで自動運転推奨案内を実施することで、案内を実施するタイミングの最適化を図り、渋滞での事故を防止するとともに、渋滞の早期解消を促すことが可能となる。
【0077】
運転者が疲労している場合は、自動運転による走行が有効な状況にある。運転者が疲労していることを検知した場合に、早いタイミングで自動運転推奨案内を実施することで、案内を実施するタイミングの最適化を図り、運転者の疲労を原因とする事故を防止することが可能となる。
【0078】
以上の説明では、推奨区間の設定に関する閾値(例えば、
図4に示すフローチャートの頻度F1、回数N1)を一定とした。これらの閾値は、変更ないし調整可能であってもよく、一例として、走行区間(例えば、
図7に示す走行区間i)を走行中、運転者の介入等により自動運転が停止した後、運転モード切替スイッチ301の操作により自動運転が再開された場合に、再開前と比較してより小さな値に変更するようにしてもよい。運転モード選択スイッチ301の操作による再開は、自動運転の作動ないし再開が運転者自身の選択に依拠するものであることから、運転者には、自動運転を積極的に利用する意思があると推定することが可能である。そこで、そのような運転者を対象として、推奨区間の設定に関する閾値を減少させることで、自動運転を作動させる選択を積極的に促し、自動運転の利用促進を有効に図ることが可能となる。
【0079】
さらに、自動運転を作動させる選択を促す対象を特定の属性の運転者に限定し、車内カメラ202により撮影された画像を解析して、運転者がそのような属性である場合に、自動運転推奨案内を実施するようにしてもよい。例えば、運転者が高齢者である場合に、自動運転推奨案内を実施する。これにより、高齢者に対しては自動運転推奨案内により積極的に自動運転による走行を促す一方、それ以外の運転者に対しては自動運転推奨案内を実施せず、過剰な案内により煩わしさを感じさせる事態を回避することが可能となる。
【0080】
地図上の道路を区画して複数の走行区間を設定し、これら複数の走行区間のそれぞれについて作動履歴を記憶し、現在走行中の走行区間について記憶されている作動履歴(つまり、特定履歴情報)をもとに、自動運転推奨案内を実施することとした。このように、以上の説明では、走行区間を予め設定したが、これに限らず、走行区間は、実際に走行した経路に応じて設定することも可能である。
【0081】
例えば、実際に走行した経路において自動運転を作動させた回数または頻度が高い区間が存在する場合に、その区間を抽出し、推奨区間に設定する。そして、次回以降にその区間を走行する際に自動運転を作動させていない場合に、運転者が自動運転推奨案内を行う対象とする対象運転者であれば、自動運転推奨案内を実施し、自動運転モードの設定を促す。
【0082】
車載ナビゲーション装置41により出発地点から終着地点ないし目的地点に至る経路を設定し、設定経路に沿って走行を案内するものにおいて、設定経路の途中に推奨区間が存在する場合に、自動運転推奨案内は、その推奨区間のみを対象に行うようにしてもよいし、推奨区間をその前後を含むより長い区間に拡張して、拡張後の区間を対象に行うようにしてもよい。この場合に、推奨区間は、設定経路全体に拡張することも可能である。例えば、設定経路が推奨区間を含む場合に、出発地点において走行を開始する際に、その経路が推奨区間を含むことまたはその経路が自動運転モードの選択を推奨する経路であることを案内する。
【符号の説明】
【0083】
S…車両の制御システム、1…ヒューマンマシンインターフェース(HMI)装置、101…運転支援コントローラ、201…現在位置センサ、202…車内カメラ、301…運転モード切替スイッチ、401…車載ナビゲーション装置。