(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174444
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】電源回路
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
G05F1/56 310A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092270
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(74)【代理人】
【識別番号】100135714
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 一生
(74)【代理人】
【識別番号】100167612
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 直行
(72)【発明者】
【氏名】坂本 忠之
【テーマコード(参考)】
5H430
【Fターム(参考)】
5H430BB09
5H430BB11
5H430FF04
5H430FF13
5H430GG08
5H430HH01
5H430KK11
(57)【要約】
【課題】チップ面積の増大を抑制し、かつ、シャットダウン時間を短縮できる電源回路を提供する。
【解決手段】電源回路1は、出力端子OUTに出力電圧Voutを供給する出力回路10と、出力端子OUTにそれぞれ接続されている第1電流経路21と第2電流経路22を含む放電回路20と、出力回路10および放電回路20を制御する制御回路30を備える。第2電流経路22は、第1電流経路21よりも電気抵抗が高い。制御回路30は、出力電圧Voutの供給を停止するタイミングにおいて、出力電圧Voutの変化に応じて、出力端子OUTから放電回路20を介して流れる電流の電流経路を第1電流経路21と第2電流経路22の少なくともいずれかから選択する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力端子に出力電圧を供給する出力回路と、
前記出力端子にそれぞれ接続されている第1電流経路、および前記第1電流経路よりも電気抵抗が高い第2電流経路を含む放電回路と、
前記出力回路および前記放電回路を制御する制御回路と
を備え、
前記制御回路が、前記出力電圧の供給を停止するタイミングにおいて、前記出力電圧の変化に応じて、前記出力端子から前記放電回路を介して流れる電流の電流経路を前記第1電流経路と前記第2電流経路の少なくともいずれかから選択する、電源回路。
【請求項2】
前記制御回路が、
前記出力電圧が設定電圧値まで低下する第1期間では、前記第1電流経路に前記出力端子から電流が流れ、かつ、前記第2電流経路に前記出力端子から電流が流れないように前記放電回路を制御し、
前記出力電圧が前記設定電圧値まで低下した後の第2期間では、前記第1電流経路に前記出力端子から電流が流れず、かつ、前記第2電流経路に前記出力端子から電流が流れるように前記放電回路を制御する
請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記制御回路が、
前記出力電圧が設定電圧値まで低下する第1期間では、前記第1電流経路および前記第2電流経路に前記出力端子から電流が流れるように前記放電回路を制御し、
前記出力電圧が前記設定電圧値まで低下した後の第2期間では、前記第1電流経路に前記出力端子から電流が流れず、かつ、前記第2電流経路に前記出力端子から電流が流れるように前記放電回路を制御する
請求項1に記載の電源回路。
【請求項4】
前記第1電流経路が第1の抵抗素子を含み、
前記第2電流経路が前記第1の抵抗素子より抵抗値が大きい第2の抵抗素子を含む、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電源回路。
【請求項5】
前記第1電流経路が、前記第1の抵抗素子に直列接続されている第1のトランジスタを含み、
前記第2電流経路が、前記第2の抵抗素子に直列接続されている第2のトランジスタを含み、
前記制御回路が、
前記第1のトランジスタの導通状態を設定して前記第1電流経路での電流の流れを制御し、
前記第2のトランジスタの導通状態を設定して前記第2電流経路での電流の流れを制御する、
請求項4に記載の電源回路。
【請求項6】
前記出力電圧をモニタするモニタ回路を更に備え、
前記制御回路は、前記モニタ回路によりモニタされた前記出力電圧に応じて前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタの導通状態を設定する、
請求項5に記載の電源回路。
【請求項7】
前記設定電圧値が0.1Vである、請求項2に記載の電源回路。
【請求項8】
前記第1の抵抗素子の抵抗値が10Ω以下である、請求項4に記載の電源回路。
【請求項9】
前記第2の抵抗素子の抵抗値が1kΩ以上である、請求項4に記載の電源回路。
【請求項10】
前記第1電流経路と前記第2電流経路のそれぞれの一方の端部が前記出力端子であり、他方の端部が接地端子である、請求項1に記載の電源回路。
【請求項11】
前記出力回路が、前記出力電圧を一定に維持するように動作する、請求項1に記載の電源回路。
【請求項12】
前記出力回路が、リニアレギュレータを構成している、請求項11に記載の電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
システムの消費電力を低減するために、システムに含まれる回路に電力を供給する電源回路のオン動作とオフ動作の切り替えが頻繁に行われる。このため、電源回路のオフ動作に要する時間(以下、「シャットダウン時間」と称する。)の短縮が重要である。シャットダウン時間を短縮するためには、出力端子に接続されている容量から電荷を放電させる時間の短縮が有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
出力端子から電荷が放電される電流経路を構成する抵抗素子の抵抗値を小さくすることにより、シャットダウン時間が短縮される。しかしながら、抵抗素子の抵抗値を小さくした場合に、抵抗素子の電流容量を確保するために抵抗素子の幅を広げると、電源回路のチップ面積が増大する。
【0005】
本開示の目的は、チップ面積の増大を抑制し、かつ、シャットダウン時間を短縮できる電源回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、出力端子に出力電圧を供給する出力回路と、出力端子にそれぞれ接続されている第1電流経路と第2電流経路を含む放電回路と、出力回路および放電回路を制御する制御回路を備える電源回路である。第2電流経路は、第1電流経路よりも電気抵抗が高い。制御回路は、出力電圧の供給を停止するタイミングにおいて、出力電圧の変化に応じて、出力端子から放電回路を介して流れる電流の電流経路を第1電流経路と第2電流経路の少なくともいずれかから選択する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、チップ面積の増大を抑制し、かつ、シャットダウン時間を短縮できる電源回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電源回路の構成を示す模式的な回路図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る電源回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図3】
図3は、実施形態に係る電源回路の放電回路の電流経路の配置の例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る電源回路の他の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態の変形例に係る電源回路の構成を示す模式的な回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係又は比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
また、以下に示す実施形態は、技術的思想を具体化するための装置又は方法を例示するものであって、構成部品の形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。この実施形態は、特許請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【0011】
実施形態に係る電源回路1は、
図1に示すように、出力回路10と、放電回路20と、出力回路10および放電回路20を制御する制御回路30を備える。出力回路10は、出力電圧Voutと基準電圧Vrefとの差に応じて出力電圧Voutを出力端子OUTに供給する。放電回路20は、出力端子OUTにそれぞれ接続されている第1電流経路21と第2電流経路22を含む。第2電流経路22は、第1電流経路21よりも電気抵抗が高い。制御回路30は、出力回路10が出力電圧Voutの供給を停止するタイミングにおいて、出力端子OUTから放電回路20を介して流れる電流の電流経路を選択する。具体的には、制御回路30は、出力電圧Voutの変化に応じて、第1電流経路21と第2電流経路22の少なくともいずれかから、放電回路20を流れる電流の電流経路を選択する。
【0012】
電源回路1の入力端子INに、入力電源Vcが接続されている。また、入力端子INに入力コンデンサC1の一方の端子が接続され、入力コンデンサC1の他方の端子は接地電位に接続されている。
【0013】
電源回路1の出力端子OUTに、出力コンデンサC2が接続されている。出力回路10が出力端子OUTに出力電圧Voutを供給している状態(以下において、「動作状態」とも称する。)では、出力コンデンサC2が充電される。出力回路10が動作状態から出力電圧Voutの供給を停止した状態(以下において、「待機状態」とも称する。)に移行する際に、出力コンデンサC2から出力端子OUTを介して電荷が放電される。
【0014】
制御回路30は、電源回路1を待機状態に設定する設定信号Senを、イネーブル端子ENから出力回路10に送信する。以下において、動作状態から待機状態になるまで出力電圧Voutが徐々に低下するまでの電源回路1の動作を「シャットダウン動作」とも称する。
【0015】
動作状態において、出力回路10は、出力電圧Voutを一定に維持するように動作する。言い換えると、電源回路1は、一定の出力電圧Voutを供給する定電圧電源として機能する。
図1に示した電源回路1は、出力回路10がリニアレギュレータを構成している。
【0016】
出力回路10の非反転入力端(+)に、基準電圧Vrefが入力する。出力回路10の反転入力端(-)に、第1フィードバック抵抗Rf1と第2フィードバック抵抗Rf2により出力電圧Voutを分圧したフィードバック電圧Vfbが入力する。以下において、第1フィードバック抵抗Rf1と第2フィードバック抵抗Rf2を総称してフィードバック抵抗Rfとも称する。出力回路10は、出力端子OUTから帰還されるフィードバック電圧Vfbと基準電圧Vrefとの電圧差dVに応じて、出力電圧Voutを一定に維持する。
【0017】
出力端子OUTから出力回路10の反転入力端(-)に流れるフィードバック電流の大きさは、出力電圧Voutとフィードバック抵抗Rfの抵抗値により決まる。例えば、出力電圧が1Vの場合に、フィードバック抵抗Rfの抵抗値が1MΩであると、フィードバック電流は1μAである。
【0018】
第1電流経路21は、第1の抵抗素子Rd1と第1のトランジスタTd1を直列接続した構成を有する。第1の抵抗素子Rd1の第1端が出力端子OUTに接続され、第1の抵抗素子Rd1の第2端が第1のトランジスタTd1の第1主電極に接続されている。第1のトランジスタTd1の第2主電極は、接地電位の接地端子GNDに接続されている。つまり、第1電流経路21の一方の端部が出力端子OUTであり、他方の端部が接地端子GNDである。第1のトランジスタTd1がオン状態になると、第1の抵抗素子Rd1を介して出力端子OUTから接地端子GNDに電荷が放電される。
【0019】
第2電流経路22は、第2の抵抗素子Rd2と第2のトランジスタTd2を直列接続した構成を有する。第2の抵抗素子Rd2の第1端が出力端子OUTに接続され、第2の抵抗素子Rd2の第2端が第2のトランジスタTd2の第1主電極に接続されている。第2のトランジスタTd2の第2主電極は、接地端子GNDに接続されている。つまり、第2電流経路22の一方の端部が出力端子OUTであり、他方の端部が接地端子GNDである。第2のトランジスタTd2がオン状態になると、第2の抵抗素子Rd2を介して出力端子OUTから接地端子GNDに電荷が放電される。第2の抵抗素子Rd2は、第1の抵抗素子Rd1よりも抵抗値が大きい。このため、第1電流経路21よりも第2電流経路22は電気抵抗が高い。
【0020】
制御回路30は、第1制御端子P1から第1のトランジスタTd1の制御電極に第1制御信号S1を送信して、第1のトランジスタTd1の導通状態を設定する。言い換えると、制御回路30は、第1のトランジスタTd1の導通状態を設定して、第1電流経路21での電流の流れを制御する。また、制御回路30は、第2制御端子P2から第2のトランジスタTd2の制御電極に第2制御信号S2を送信して、第2のトランジスタTd2の導通状態を設定する。言い換えると、制御回路30は、第2のトランジスタTd2の導通状態を設定して、第2電流経路22での電流の流れを制御する。
【0021】
電源回路1は、出力電圧Voutをリアルタイムで検知するモニタ回路40を更に備える。モニタ回路40は、シャットダウン動作において出力電圧Voutが低下する際に、出力電圧Voutが所定の設定電圧値まで低下したことを検知したときに、検知信号Sdを制御回路30の検知端子P3に送信する。制御回路30は、モニタ回路40により検知された出力電圧Voutに応じて、第1のトランジスタTd1および第2のトランジスタTd2の導通状態を設定する。
【0022】
以下に、
図2に示したタイミングチャートを参照して、動作状態から待機状態に移行するまでの電源回路1のシャットダウン動作を説明する。
図2に示したタイミングチャートでは、時刻t0から電源回路1のシャットダウン動作が開始し、出力電圧Voutが動作電圧V0から低下し始める。動作電圧V0は、例えば1Vである。
【0023】
時刻t0において、制御回路30は、第1のトランジスタTd1の制御電極に第1制御信号S1を送信して、第1のトランジスタTd1をオフ状態からオン状態に設定する。これにより、第1の抵抗素子Rd1を介して出力端子OUTから接地端子GNDに電荷が放電される。このとき、第2のトランジスタTd2はオフ状態である。
【0024】
時刻t1において、出力電圧Voutが所定の設定電圧値V1まで低下すると、モニタ回路40が、検知信号Sdを制御回路30の検知端子P3に送信する。検知信号Sdを受信した制御回路30は、第1のトランジスタTd1の制御電極に第1制御信号S1を送信して、第1のトランジスタTd1をオフ状態に設定する。同時に、時刻t1において、制御回路30は、第2のトランジスタTd2の制御電極に第2制御信号S2を送信して、第2のトランジスタTd2をオン状態に設定する。これにより、第2の抵抗素子Rd2を介して出力端子OUTから接地端子GNDに電荷が放電される。
【0025】
シャットダウン動作の後、出力電圧Voutは待機状態の電圧、例えば接地電位になる。待機状態では、第1のトランジスタTd1はオフ状態であり、第2のトランジスタTd2はオン状態である。なお、待機状態から動作状態に移行するスタートアップ動作の際に、第1のトランジスタTd1および第2のトランジスタTd2はオフ状態に設定される。
【0026】
上記のように、出力電圧Voutが設定電圧値V1まで低下する期間(以下、「第1期間T1」と称する。)では、第1電流経路21に出力端子OUTから電流が流れるように、制御回路30が放電回路20を制御する。一方、第1期間T1において、第2電流経路22に出力端子OUTから電流が流れないように、制御回路30が放電回路20を制御する。
【0027】
出力電圧Voutが設定電圧値V1まで低下した後の期間(以下、「第2期間T2」と称する。)では、第1電流経路21に出力端子OUTから電流が流れないように、制御回路30が放電回路20を制御する。一方、第2期間T2において、第2電流経路22に出力端子OUTから電流が流れるように、制御回路30が放電回路20を制御する。
【0028】
オフ状態に設定された第1のトランジスタTd1は、電源回路1が待機状態から動作状態に設定された後、更に動作状態から待機状態になるまでオン状態に設定されない。つまり、第2期間T2および待機状態の間は、第1電流経路21に出力端子OUTからの電流は流れない。
【0029】
図2に示すタイミングチャートに従って動作する電源回路1によれば、第1電流経路21の電気抵抗を低く設定することにより、シャットダウン時間を短縮することができる。例えば、第1電流経路21に含まれる第1の抵抗素子Rd1の抵抗値を、10Ω以下に設定してよい。そして、第2期間T2では、電気抵抗が高く設定された第2電流経路22が出力端子OUTと接地端子GNDの間の電流経路になる。例えば、第2電流経路22に含まれる第2の抵抗素子Rd2の抵抗値を、1kΩ以上に設定してよい。
【0030】
第2電流経路22の電気抵抗を高く設定することにより、出力端子OUTに意図しない電圧が印加された場合にも、出力端子OUTから放電回路20を介して流れる電流の大きさが抑制され、放電回路20が破壊されることを抑制できる。例えば、入力端子INと出力端子OUTが短絡した場合なども、放電回路20の破壊が抑制される。なお、シャットダウン動作において出力端子OUTから流れる電流に対応するために、第1の抵抗素子Rd1の幅を広くすることも考えられる。しかし、出力コンデンサC2の容量が10μF程度の場合は、放電回路20を電流が流れる時間が短いため、第1の抵抗素子Rd1の幅を広くしなくてよい。
【0031】
設定電圧値V1は任意に設定可能である。例えば、出力電圧Voutが電源電圧として供給される外部回路の動作に影響しないように、外部回路を構成するトランジスタのしきい値よりも設定電圧値V1を低く設定してよい。例えば、設定電圧値V1を0.1V程度に設定してよい。
【0032】
第1の抵抗素子Rd1の抵抗値は、例えば出力電圧Vout、出力コンデンサC2の容量、所定のシャットダウン時間の条件などに応じて設定してよい。例えば、シャットダウン時間の目安が200μ秒であるとき、出力コンデンサC2の容量Cが10μFの場合に、第1の抵抗素子Rd1の抵抗値Rを10Ωとする。このとき、以下の式(1)で示されるシャットダウン時間Tdwnが得られる。シャットダウン時間Tdwnは、出力電圧Voutが1Vから0.1Vまで低下する時間である:
Tdwn=-ln(0.1/1)×C×R=230[μ秒] ・・・(1)
【0033】
第2の抵抗素子Rd2の抵抗値は、出力端子OUTに意図せずに大きな電圧が印加されたときに第2の抵抗素子Rd2に流れる電流を許容できる抵抗素子のサイズに応じて設定してよい。以下において、許容電流を超えて抵抗素子が破壊される電流を「破壊電流」と称する。以下に、出力端子OUTから電荷が放電される電流経路を構成する抵抗素子の破壊電流について検討する。
【0034】
例えば、幅Wが8μm、長さLが24μm、抵抗値が130Ωの抵抗素子では、破壊電流が13.5mAである。このため、出力端子OUTに5.5Vの電圧が印加されると、抵抗値が10Ωの抵抗素子に流れる電流は550mAであり、抵抗素子が破壊される。抵抗値が10Ωの抵抗素子の電流容量を確保するためには、幅Wが326μm、長さLが75μmのサイズの抵抗素子が必要である。
【0035】
これに対し、抵抗素子の抵抗値を1kΩにすると、破壊電流は5.5mAである。このため、第2の抵抗素子Rd2の抵抗値を1kΩにすることにより、幅Wが3.26μm、長さLが75μmの第2の抵抗素子Rd2を使用することができる。したがって、電流容量を確保するために第2の抵抗素子Rd2の幅を広げる必要がない。
【0036】
電源回路1では、シャットダウン動作においてオフ状態に設定された第1のトランジスタTd1は、電源回路1が待機状態から動作状態になった後に次のシャットダウン動作を開始するまでオン状態に設定されない。このため、第1電流経路21に破壊電流が流れることが防止される。したがって、シャットダウン時間を短縮するために第1の抵抗素子Rd1の抵抗値を小さくしても、第1の抵抗素子Rd1の幅を広くしなくてよい。上記のように、例えば第1の抵抗素子Rd1の抵抗値を10Ω、第2の抵抗素子Rd2の抵抗値を1kΩにすることにより、シャットダウン時間を短縮し、且つチップ面積の増大を抑制することができる。
【0037】
以上に説明したように、実施形態に係る電源回路1は、シャットダウン動作における出力電圧Voutの変化に応じて、出力端子OUTから放電回路20を介して流れる電流の電流経路を切り替える。具体的には、出力電圧Voutが設定電圧値V1まで低下する第1期間T1では、電気抵抗が低い第1電流経路21を介して出力端子OUTから接地端子GNDに電流が流れることにより、シャットダウン時間が短縮される。そして、出力電圧Voutが設定電圧値V1まで低下した後の第2期間T2では、電気抵抗が高い第2電流経路22を介して出力端子OUTから接地端子GNDに電流が流れることにより、電流経路の許容電流が確保される。したがって、電源回路1によれば、チップ面積の増大を抑制し、かつ、シャットダウン時間を短縮できる。
【0038】
上記のように、電源回路1では、出力端子OUTから接地端子GNDまでの電流経路の電気抵抗について、第1電流経路21を介する電流経路の電気抵抗を低くし、第2電流経路22を介する電流経路の電気抵抗を高くする。したがって、出力端子OUTから第1電流経路21までの距離を、出力端子OUTから第2電流経路22までの距離よりも短くなるように、チップのレイアウトを設定してよい。このため、第2電流経路22よりも出力端子OUTに近い位置に第1電流経路21を配置してもよい。例えば、
図3に示すように、出力端子OUTから第1電流経路21までの配線長D1を、出力端子OUTから第2電流経路22までの配線長D2よりも短くしてよい。
【0039】
上記に
図2を参照して説明した電源回路1の動作では、第1期間T1において第2電流経路22に電流が流れない。しかし、
図4に示すように、第1期間T1において第1電流経路21と並行して第2電流経路22に電流が流れてもよい。
【0040】
図4に示す電源回路1の動作では、シャットダウン動作が開始する時刻t0において、制御回路30が、第1のトランジスタTd1および第2のトランジスタTd2をオフ状態からオン状態に設定する。これにより、第1期間T1において、第1の抵抗素子Rd1および第2の抵抗素子Rd2を介して出力端子OUTから接地端子GNDに電荷が放電される。
【0041】
時刻t1において、出力電圧Voutが所定の設定電圧値V1まで低下すると、制御回路30が、第1のトランジスタTd1をオフ状態に設定する。一方、制御回路30は、第2のトランジスタTd2をオン状態に維持する。これにより、第2期間T2では、第2の抵抗素子Rd2を介して出力端子OUTから接地端子GNDに電荷が放電される。
【0042】
図4に示すタイミングチャートに従って動作する電源回路1では、第1期間T1では第1電流経路21と第2電流経路22を介して出力端子OUTから電流が流れる。このため、シャットダウン時間を短縮できる。一方、第2期間T2では、第1電流経路21に電流が流れず、第2電流経路22に出力端子OUTから電流が流れる。抵抗値が小さい第1電流経路21に電流が流れないため、第1の抵抗素子Rd1の幅を広くして許容電流を大きくする必要がない。したがって、チップ面積の増大が抑制される。
【0043】
上記のように、シャットダウン動作の間は、常に第2電流経路22を介して出力端子OUTから接地端子GNDに電流が流れてもよい。このため、例えば、フィードバック抵抗Rfの抵抗値が1kΩ程度である場合は、
図5に示す変形例に係る電源回路1のように、フィードバック抵抗Rfを第2の抵抗素子Rd2として使用してもよい。
図5に示す電源回路1では、第1期間T1では第1電流経路21とフィードバック抵抗Rfを介して出力端子OUTから接地端子GNDに電流が流れ、第2期間T2ではフィードバック抵抗Rfを介して出力端子OUTから接地端子GNDに電流が流れる。
【0044】
なお、電源回路1の回路構成は任意である。上記では電源回路1がリニアレギュレータである場合を例示的に説明したが、電源回路1が降圧レギュレータ又はスイッチングレギュレータであってもよい。
【0045】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0046】
[付記]
本開示から把握できる技術的思想を以下に記載する。なお、限定する意図ではなく理解の補助のために、付記に記載される構成要素には、実施形態中の対応する構成要素の参照符号が付されている。参照符号は、理解の補助のために例として示すものであり、各付記に記載された構成要素は、参照符号で示される構成要素に限定されるべきではない。
【0047】
(付記1:
図1)
電源回路1は、出力端子OUTに出力電圧Voutを供給する出力回路10と、出力端子OUTにそれぞれ接続されている第1電流経路21と第2電流経路22を含む放電回路20と、出力回路10および放電回路20を制御する制御回路30とを備える。第2電流経路22は、第1電流経路21よりも電気抵抗が高い。制御回路30は、出力電圧Voutの供給を停止するタイミングにおいて、出力電圧Voutの変化に応じて、出力端子OUTから放電回路20を介して流れる電流の電流経路を第1電流経路21と第2電流経路22の少なくともいずれかから選択する。付記1に記載の電源回路1によれば、チップ面積の増大を抑制し、かつ、シャットダウン時間を短縮することができる。
【0048】
(付記2:
図2)
付記1に記載の電源回路1において、制御回路30が、出力電圧Voutが設定電圧値V1まで低下する第1期間T1では、第1電流経路21に出力端子OUTから電流が流れ、かつ、第2電流経路22に出力端子OUTから電流が流れないように放電回路20を制御する。更に、制御回路30が、出力電圧Voutが設定電圧値V1まで低下した後の第2期間T2では、第1電流経路21に出力端子OUTから電流が流れず、かつ、第2電流経路22に出力端子OUTから電流が流れるように放電回路20を制御する。付記2に記載の電源回路1によれば、第1電流経路21の電気抵抗を低く設定することにより、シャットダウン時間を短縮できる。そして、第2電流経路22の電気抵抗を高く設定することにより、放電回路20に破壊電流が流れることを抑制できる。
【0049】
(付記3:
図4)
付記1に記載の電源回路1において、制御回路30が、出力電圧Voutが設定電圧値V1まで低下する第1期間T1では、第1電流経路21および第2電流経路22に出力端子OUTから電流が流れるように放電回路20を制御する。更に、制御回路30が、出力電圧Voutが設定電圧値V1まで低下した後の第2期間T2では、第1電流経路21に出力端子OUTから電流が流れず、かつ、第2電流経路22に出力端子OUTから電流が流れるように放電回路20を制御する。付記3に記載の電源回路1によれば、第1電流経路21の電気抵抗を低く設定することにより、シャットダウン時間を短縮できる。そして、第2電流経路22の電気抵抗を高く設定することにより、放電回路20に破壊電流が流れることを抑制できる。
【0050】
(付記4:
図1)
付記1乃至3のいずれかに記載の電源回路1において、第1電流経路21が第1の抵抗素子Rd1を含み、第2電流経路22が第1の抵抗素子Rd1より抵抗値が大きい第2の抵抗素子Rd2を含む。付記4に記載の電源回路1によれば、第1の抵抗素子Rd1の抵抗値を小さくすることにより、第1電流経路21の電気抵抗を低く設定できる。更に、第1の抵抗素子Rd1より第2の抵抗素子Rd2の抵抗値を大きくすることにより、第1電流経路21よりも第2電流経路22の電気抵抗を高く設定できる。
【0051】
(付記5:
図1)
付記1乃至4のいずれかに記載の電源回路1において、第1電流経路21が、第1の抵抗素子Rd1に直列接続されている第1のトランジスタTd1を含み、第2電流経路22が、第2の抵抗素子Rd2に直列接続されている第2のトランジスタTd2を含む。制御回路30は、第1のトランジスタTd1の導通状態を設定して第1電流経路21での電流の流れを制御し、第2のトランジスタTd2の導通状態を設定して第2電流経路22での電流の流れを制御する。付記5に記載の電源回路1によれば、第1のトランジスタTd1および第2のトランジスタTd2の導通状態を設定することにより、放電回路20を流れる電流の電流経路を選択できる。
【0052】
(付記6:
図1)
付記1乃至5のいずれかに記載の電源回路1において、出力電圧Voutをモニタするモニタ回路40を更に備える。制御回路30は、モニタ回路40によりモニタされた出力電圧Voutに応じて、第1のトランジスタTd1および第2のトランジスタTd2の導通状態を設定する。付記6に記載の電源回路1によれば、制御回路30が、出力電圧Voutの変化に応じて放電回路20を流れる電流の電流経路を選択できる。
【0053】
(付記7:
図1)
付記1乃至6のいずれかに記載の電源回路1において、設定電圧値V1が0.1Vである。
【0054】
(付記8:
図1)
付記1乃至7のいずれかに記載の電源回路1において、第1の抵抗素子Rd1の抵抗値が10Ω以下である。
【0055】
(付記9:
図1)
付記1乃至8のいずれかに記載の電源回路1において、第2の抵抗素子Rd2の抵抗値が1kΩ以上である。
【0056】
(付記10:
図1)
付記1乃至9のいずれかに記載の電源回路1において、第1電流経路21と第2電流経路22のそれぞれの一方の端部が出力端子OUTであり、他方の端部が接地端子GNDである。
【0057】
(付記11:
図1)
付記1乃至10のいずれかに記載の電源回路1において、出力回路10が、出力電圧Voutを一定に維持するように動作する。付記11に記載の電源回路1によれば、定電圧電源として機能する電源回路1において、チップ面積の増大を抑制し、かつ、シャットダウン時間を短縮することができる。
【0058】
(付記12:
図1)
付記11に記載の電源回路1において、出力回路10がリニアレギュレータを構成している。付記12に記載の電源回路1によれば、低い入出力間電位差でも動作するリニアレギュレータにおいて、チップ面積の増大を抑制し、かつ、シャットダウン時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 電源回路
10 出力回路
20 放電回路
21 第1電流経路
22 第2電流経路
30 制御回路
40 モニタ回路
Rd1 第1の抵抗素子
Rd2 第2の抵抗素子
Td1 第1のトランジスタ
Td2 第2のトランジスタ