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特開2024-174445車両用制御装置、車両制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174445
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】車両用制御装置、車両制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/08 20200101AFI20241210BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B60W50/08
G08G1/16 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092271
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】定村 哲志
(72)【発明者】
【氏名】小▲瀬▼垣 慶彦
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA10
3D241BB01
3D241BB27
3D241CD07
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DB01Z
3D241DB05Z
3D241DB09Z
3D241DB12Z
3D241DC43Z
3D241DC45Z
3D241DD07Z
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF05
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】ドライバの意図に応じた車両の制御を実現すること。
【解決手段】 車両の進行方向に存在するカーブ路に関する第1情報を取得する第1取得部と、前記車両のドライバの加速操作量を含む第2情報を取得する第2取得部と、前記車両が、前記カーブ路の入口から前記入口の所定距離手前までの区間または前記カーブ路を走行中である場合、前記第1情報に基づく目標速度に前記車両の速度を近づけるように前記車両を減速させる減速制御と、前記目標速度に前記車両の速度を近づけることを報知する報知制御との一方または双方を含む支援制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記支援制御の実行中、前記第2情報を参照し、前記加速操作量が所定量以上増加した場合に前記支援制御を停止する、車両用制御装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方向に存在するカーブ路に関する第1情報を取得する第1取得部と、
前記車両のドライバの加速操作量を含む第2情報を取得する第2取得部と、
前記車両が、前記カーブ路の入口から前記入口の所定距離手前までの区間または前記カーブ路を走行中である場合、前記第1情報に基づく目標速度に前記車両の速度を近づけるように前記車両を減速させる減速制御と、前記目標速度に前記車両の速度を近づけることを報知する報知制御との一方または双方を含む支援制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記支援制御の実行中、前記第2情報を参照し、前記加速操作量が所定量以上増加した場合に前記支援制御を停止する、
車両用制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記支援制御の実行中、前記加速操作量が基準値から所定量以上増加した場合に前記支援制御を停止し、
前記基準値は、前記支援制御の開始時における前記加速操作量に設定される、
請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記支援制御の実行中、前記加速操作量が基準値から所定量以上増加した場合に前記支援制御を停止し、
前記基準値は、前記支援制御の実行中における前記加速操作量の最小値に設定される、
請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
コンピュータが、
車両の進行方向に存在するカーブ路に関する第1情報を取得し、
前記車両のドライバの加速操作量を含む第2情報を取得し、
前記車両が、前記カーブ路の入口から前記入口の所定距離手前までの区間または前記カーブ路を走行中である場合、前記第1情報に基づく目標速度に前記車両の速度を近づけるように前記車両を減速させる減速制御と、前記目標速度に前記車両の速度を近づけることを報知する報知制御との一方または双方を含む支援制御を行い、
前記支援制御の実行中、前記第2情報を参照し、前記加速操作量が所定量以上増加した場合に前記支援制御を停止する、
車両制御方法。
【請求項5】
コンピュータに、
車両の進行方向に存在するカーブ路に関する第1情報を取得させ、
前記車両のドライバの加速操作量を含む第2情報を取得させ、
前記車両が、前記カーブ路の入口から前記入口の所定距離手前までの区間または前記カーブ路を走行中である場合、前記第1情報に基づく目標速度に前記車両の速度を近づけるように前記車両を減速させる減速制御と、前記目標速度に前記車両の速度を近づけることを報知する報知制御との一方または双方を含む支援制御を行わせ、
前記支援制御の実行中、前記第2情報を参照し、前記加速操作量が所定量以上増加した場合に前記支援制御を停止させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御装置、車両制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の状況に配慮した持続可能な輸送システムを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて運転支援技術に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。例えば、カーブ進入前の車両に対し、カーブに安全に進入可能な安全速度になるまで制動力を付与する自動ブレーキ装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。この自動ブレーキ装置は、カーブの進入口までの距離が所定距離以上であるかどうかを判定し、所定距離以上であると判定したとき、ドライバの加速意図の有無を判定し、加速意図の有無に応じて、制動力を減圧する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5190022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の装置では、ドライバの意図に応じた車両の制御を実現することができないことがあった。例えば、ドライバの意図に応じた加速を車両にさせることができないことがあった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、ドライバの意図に応じた車両の制御を実現することができる。例えば、ドライバの意図に応じた加速を車両にさせることができる。延いては乗員を配慮して、持続可能な輸送システムの発展への寄与することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両用制御装置、車両制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る車両用制御装置は、車両の進行方向に存在するカーブ路に関する第1情報を取得する第1取得部と、前記車両のドライバの加速操作量を含む第2情報を取得する第2取得部と、前記車両が、前記カーブ路の入口から前記入口の所定距離手前までの区間または前記カーブ路を走行中である場合、前記第1情報に基づく目標速度に前記車両の速度を近づけるように前記車両を減速させる減速制御と、前記目標速度に前記車両の速度を近づけることを報知する報知制御との一方または双方を含む支援制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記支援制御の実行中、前記第2情報を参照し、前記加速操作量が所定量以上増加した場合に前記支援制御を停止するものである。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記制御部は、前記支援制御の実行中、前記加速操作量が基準値から所定量以上増加した場合に前記支援制御を停止し、前記基準値は、前記支援制御の開始時における前記加速操作量に設定されるものである。
【0008】
(3):上記(1)の態様において、前記制御部は、前記支援制御の実行中、前記加速操作量が基準値から所定量以上増加した場合に前記支援制御を停止し、前記基準値は、前記支援制御の実行中における前記加速操作量の最小値に設定されるものである。
【0009】
(4):本発明の他の態様に係る車両制御方法は、コンピュータが、車両の進行方向に存在するカーブ路に関する第1情報を取得し、前記車両のドライバの加速操作量を含む第2情報を取得し、前記車両が、前記カーブ路の入口から前記入口の所定距離手前までの区間または前記カーブ路を走行中である場合、前記第1情報に基づく目標速度に前記車両の速度を近づけるように前記車両を減速させる減速制御と、前記目標速度に前記車両の速度を近づけることを報知する報知制御との一方または双方を含む支援制御を行い、前記支援制御の実行中、前記第2情報を参照し、前記加速操作量が所定量以上増加した場合に前記支援制御を停止するものである。
【0010】
(5):本発明の他の態様に係るプログラムは、コンピュータに、車両の進行方向に存在するカーブ路に関する第1情報を取得させ、前記車両のドライバの加速操作量を含む第2情報を取得させ、前記車両が、前記カーブ路の入口から前記入口の所定距離手前までの区間または前記カーブ路を走行中である場合、前記第1情報に基づく目標速度に前記車両の速度を近づけるように前記車両を減速させる減速制御と、前記目標速度に前記車両の速度を近づけることを報知する報知制御との一方または双方を含む支援制御を行わせ、前記支援制御の実行中、前記第2情報を参照し、前記加速操作量が所定量以上増加した場合に前記支援制御を停止させるものである。
【発明の効果】
【0011】
(1)-(5)の態様によれば、車両用制御装置、車両制御方法、またはプログラムは、前記制御部が、前記第2情報から、前記加速操作における前記車両の操作子に対する操作量を取得し、前記操作量が所定量以上増加した場合に前記支援制御を停止することにより、ドライバの意図に応じた車両の制御を実現することができる。特に、ドライバが、短時間で大きく操作子の開度を増加させる操作を行う場合と、時間をかけて徐々に開度を増加させる操作を行う場合のいずれの場合であっても、加速操作によって支援制御のオーバライドを行い、ドライバの意図に応じた車両の制御を実現することができる。
【0012】
(2)の態様によれば、前記基準値が、前記支援制御の開始時における前記操作子に対する操作量に設定されることにより、支援制御のオーバライドを行うために必要な操作量が同一の基準に設定され、ドライバにとってオーバライドを行うために必要な操作量を把握しやすくすることができる。
【0013】
(3)の態様によれば、前記基準値が、前記支援制御の実行中における前記操作子に対する操作量の最小値に設定されることにより、支援制御の開始時における操作量が大きく、最大操作量までの余裕操作量が所定量未満である場合であっても、ドライバにオーバライドを実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る車両制御システムを利用した車両システム1の構成図である。
図2】運転支援制御の一例を示す図である。
図3】アクセルオーバライドの実行を判定するための基準値RV1と、当該基準値RV1に基づくアクセルオーバライドの実行を説明するための図である。
図4】アクセルオーバライドの実行を判定するための基準値RV2と、当該基準値RV2に基づくアクセルオーバライドの実行を説明するための図である。
図5】実施形態に係るアクセルオーバライドの効果について説明するための図である。
図6】運転支援装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】運転支援装置100が実行するアクセルオーバライドの処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の車両用制御装置、車両制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0016】
<実施形態>
[全体構成]
図1は、実施形態に係る車両制御システムを利用した車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0017】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU60と、ドライバモニタカメラ70と、運転操作子80と、運転支援装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。運転支援装置100は「車両用制御装置」の一例である。
【0018】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両(以下、車両M)の任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0019】
レーダ装置12は、車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0020】
LIDAR14は、車両Mの周辺に光(或いは光に近い波長の電磁波)を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0021】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を運転支援装置100に出力する。物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14の検出結果をそのまま運転支援装置100に出力してよい。車両システム1から物体認識装置16が省略されてもよい。
【0022】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、車両Mの周辺に存在する他車両と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0023】
HMI30は、車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。HMI30は表示装置を備える。表示装置(表示部)は、例えば、車両Mのインストルメントパネルの中央部に設けられ、車両Mの走行速度を表す速度計(スピードメータ)または車両Mが備える内燃機関の回転数(回転速度)を表す回転速度計(タコメータ)など、車両Mにおける種々の情報を表示させるディスプレイ装置、いわゆるマルチインフォメーションディスプレイである。
【0024】
車両センサ40は、車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0025】
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備える。ナビゲーション装置50は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、車両Mの位置を特定する。車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。地図上経路は、MPU60に出力される。ナビゲーション装置50は、地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置50は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0026】
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61を含み、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0027】
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、車線の中央の情報、或いは車線の境界の情報等を含んでいる。第2地図情報62には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。第2地図情報62には、カーブ路の位置や、カーブ路の曲率、カーブ路のカーブ半径、カーブ路の勾配などの情報が含まれている。これらの情報は、第1地図情報54に含まれていてもよい。また、第2地図情報62または第1地図情報54には、後述する支援制御の対象のカーブ路であるか否かを示す情報が含まれていてもよい。
【0028】
ドライバモニタカメラ70は、例えば、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。ドライバモニタカメラ70は、車両Mの運転席に着座した乗員(以下、ドライバ)の頭部を正面から(顔面を撮像する向きで)撮像可能な位置および向きで、車両Mにおける任意の箇所に取り付けられる。例えば、ドライバモニタカメラ70は、車両Mのインストルメントパネルの中央部に設けられたディスプレイ装置の上部に取り付けられる。ドライバモニタカメラ70は、配置された位置から車両Mのドライバを含む車室内を撮影した画像を、運転支援装置100に出力する。
【0029】
運転操作子80は、例えば、ブレーキペダル82や、アクセルペダル84、ステアリングホイール、方向指示器の操作スイッチ、シフトレバー、その他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量、或いは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、運転支援装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力される。ステアリングホイールは、必ずしも環状である必要は無く、異形ステアリングホイールやジョイスティック、ボタンなどの形態であってもよい。ブレーキペダル82には、ブレーキペダルセンサ(BPセンサ)86が取り付けられている。アクセルペダル84には、アクセルペダルセンサ(APセンサ)88が取り付けられている。
【0030】
BPセンサ86は、ドライバのブレーキペダル82に対する操作に応じて変化するブレーキペダル82の開度を検出する。APペダルセンサ88は、ドライバのアクセルペダル84に対する操作に応じて変化するアクセルペダルの開度を検出する。
【0031】
運転支援装置100は、例えば、認識部110と、ドライバ認識部120と、カーブ判定部130と、操作情報処理部140と、支援制御部150と、記憶部190とを備える。これらの機能部の一部または全部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め運転支援装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで運転支援装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。カーブ判定部130は、第1取得部の一例であり、操作情報処理部140は、第2取得部の一例であり、支援制御部150は、制御部の一例である。
【0032】
記憶部190は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現される。
【0033】
認識部110は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14から物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、車両Mの周辺にある物体の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。物体の位置は、例えば、車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、物体の加速度やジャーク、或いは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。
【0034】
認識部110は、例えば、車両Mが走行している車線(走行車線)を認識する。例えば、認識部110は、第2地図情報62から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10によって撮像された画像から認識される車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、走行車線を認識する。認識部110は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレールなどを含む走路境界(道路境界)を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。認識部110は、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、その他の道路事象を認識する。
【0035】
認識部110は、走行車線を認識する際に、走行車線に対する車両Mの位置や姿勢を認識する。認識部110は、例えば、車両Mの基準点の車線中央からの乖離、および車両Mの進行方向の車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する車両Mの相対位置および姿勢として認識してもよい。これに代えて、認識部110は、走行車線のいずれかの側端部(道路区画線または道路境界)に対する車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する車両Mの相対位置として認識してもよい。
【0036】
ドライバ認識部120は、ドライバモニタカメラ70により撮像された画像に基づいて、ドライバが所定の状態であるか否かを検知する。所定の状態とは、後述するハンズオフ車線維持制御を実行可能な状態である。ハンズオフとはドライバがステアリングホイールを把持していない状態であり、ハンズオンとはドライバがステアリングホイールを把持している状態である。ハンズオフ車線維持制御が実行可能な状態とは、ドライバが前方(または車両Mの周辺)を監視している状態である。前方を監視とは、例えば、車両システム1による車両Mの制御からドライバによる車両Mの操作にドライバが迅速に引き継ぐことができるようにドライバが前方を監視していることである。前方を監視とは、例えば、ドライバの視線が前方を向いていることである。ドライバがハンズオンまたはハンズオフである否かは、不図示のステアリングホイールの把持状態を検出する把持センサの検出結果に基づいて判定される。
【0037】
カーブ判定部130は、車両Mの進行方向に存在するカーブ路に関する第1情報を取得する。カーブ路に関する第1情報とは、例えば、カーブ路の位置や、カーブ路の形状等に関する情報である。カーブ判定部130は、例えば、車両Mの位置と、第1情報とに基づいて、車両Mに対するカーブ路の位置を特定する。
【0038】
操作情報処理部140は、車両Mのドライバの加速操作に関する第2情報を取得する。第2情報は、例えばAPペダルセンサ88から出力されたアクセルペダル開度を示す情報である。操作情報処理部140は、車両Mのドライバの減速操作に関する情報を取得する。例えば、操作情報処理部140は、BPセンサ86から出力されたブレーキペダル開度を示す情報を取得する。
【0039】
支援制御部150は、車両Mの制御に関してドライバを支援する。支援制御部150は、例えば、ドライバの操作に依らずに自動で走行駆動力出力装置200およびブレーキ装置210を制御して、車両Mの速度を自動で制御する。支援制御部150は、いわゆるACC(Adaptive Cruise Control)を実行する。
【0040】
支援制御部150は、例えば、車両Mの前方であって車両Mから所定距離以内に他車両が存在しない場合、ドライバによって設定された速度や法定速度、道路に応じて予め設定された速度で車両Mが走行するように、ドライバの操作に依らずに自動で走行駆動力出力装置200およびブレーキ装置210を制御する。
【0041】
支援制御部150は、例えば、車両Mの前方であって車両Mから所定距離以内に他車両が存在する場合、他車両に追従するように、ドライバの操作に依らずに自動で走行駆動力出力装置200およびブレーキ装置210を制御する。追従とは、車両Mが、他車両の後方であって他車両から所定距離の位置を維持しながら走行することである。
【0042】
支援制御部150は、車両Mが走行車線から逸脱しないようにステアリング装置220を制御する。例えば、支援制御部150は、認識部110が認識した走行車線の中央または中央付近を車両Mが走行するようにステアリング装置220を制御する。支援制御部150は、例えば、ドライバがステアリングホイールを把持していない状態で車両Mの操舵を制御可能なハンズオフ車線維持制御、またはドライバがステアリングホイールを把持している状態で車両Mの操舵を制御可能なハンズオン車線維持制御を実行する。
【0043】
支援制御部150は、車両Mを自動で車線変更させる。支援制御部150は、例えば、車線変更のための軌道を生成し、生成した軌道に沿って車両Mが走行するように車両Mを車線変更させる。支援制御部150は、乗員に設定された目的地や、MPU60に出力された推奨車線に基づいて、車両Mを車線変更(ALC;オートレーンチェンジ)させる。
【0044】
支援制御部150は、ドライバによって車線変更の指示がされた場合、自動で車両Mを車線変更させてもよい。車線変更の指示とは、方向指示器の操作スイッチのレバー部の操作である。例えば、ドライバが、車両Mを車線変更させたい方向にレバー部が操作すると、操作に応じた方向に車両Mが車線変更する。車線変更の指示は、方向指示器の操作スイッチのレバー部の操作とは異なる操作であってもよい。例えば、所定の操作ボタンが押された場合、車線変更が行われてもよい。上記の支援制御部150の制御の一部または全部は省略されてもよい。
【0045】
更に、支援制御部150は、カーブ路に進入する場合またはカーブ路の走行中において、車両Mを、カーブ路に応じた速度に減速させたり、ドライバに減速に関する通知を行ったりして、カーブ路を滑らかに車両Mが走行できるようにドライバを支援する。以下、この制御を支援制御と称することがある。
【0046】
走行駆動力出力装置200は、車両Mが走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECUとを備える。ECUは、支援制御部150から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0047】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、支援制御部150から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。
【0048】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、支援制御部150から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0049】
[支援制御]
支援制御部150は、車両Mがカーブ路の入口から所定距離前までの区間(所定区間)を走行中または車両Mがカーブ路を走行中において、カーブ路に応じた目標速度に車両Mの速度を近づけるように車両Mを減速させる減速制御と、目標速度に車両Mの速度を近づけることを報知(警報)する報知制御との一方または双方である支援制御を行う。支援制御は、例えば、運転支援装置100が車両Mの速度を自動で制御していなく(例えばACCが作動していなく)ドライバが車両Mの速度を制御している場合に実行される処理である。目標速度は、カーブ路の形状やカーブ路の道路の法定速度などによって決定される速度である。
【0050】
支援制御の対象は、条件を満たすカーブ路であってもよい。条件とは、例えば、カーブ半径が所定の範囲内であることである。所定の範囲とは、車両Mが走行する際に減速が必要なカーブ半径である。
【0051】
支援制御は、車両Mの速度が所定の速度以下であることを条件に行われてもよい。所定の速度とは、カーブ路またはカーブ路の前後の道路の制限速度や推奨速度から所定速度以上乖離していない速度である。所定の速度は、例えば上記の制限速度や推奨速度に対して設定速度(例えば30km/h)が加算された速度である。
【0052】
支援制御は、路面の状態が基準を満たしている場合に行われてもよい。基準を満たすとは、例えば、路面が凍結していないなど制動動作に影響する事象が発生していないことである。例えば、認識部110が、物体認識装置16の検出結果に基づいて路面の状況を認識してもよいし、運転支援装置100が他の装置から提供された情報に基づいて路面の状況を認識してもよい。支援制御は、カーブ路の勾配が閾値未満である場合に行われてもよい。
【0053】
図2は、支援制御について説明するための図である。時刻Tは、車両Mがカーブ路の入口から所定距離手前の位置Pに到達したタイミングである。所定距離手前は、目標速度に応じて予め設定された位置である。所定距離手前は、例えば車両Mの速度と目標速度との乖離が大きいほど、カーブ路の入口から遠い位置に設定される。所定距離手前は、後述するようにブレーキオーバライドまたはアクセルオーバライドが行われなかった場合に、予め設定された通知が行われる時間、予め設定された第1警報が行われる時間、および予め設定された第2警報が行われる時間が確保できる位置に設定される。
【0054】
車両Mは、位置Pを通過した後、位置P1、P2、P3を、この順で通過する。車両Mが位置Pに到達する時刻は時刻Tであり、車両Mが位置P1に到達する時刻は時刻T+1であり、車両Mが位置P2に到達する時刻は時刻T+2であり、車両Mが位置P3に到達する時刻は時刻T+3である。位置P2と位置P3との間に、カーブ路の入口が設けられている。カーブ路の入口とは、例えば、道路(車線)が曲がり始めた位置や、道路が閾値以上曲がった位置である。
【0055】
時刻Tにおいて、車両Mの速度が目標速度よりも大きい場合、支援制御部150は、通知をドライバに対して行い、車両Mを第1減速度合で減速させる。通知は、カーブ路をドライバに認識させる通知である。通知とは、例えば車両Mが車両Mの速度が目標速度よりも大きい状態でカーブ路に近づいたことの通知や、車両Mの速度を目標速度に近づけるように車両Mを減速させる支援制御を開始する通知などである。通知は、例えば、HMI30を介して行われる。通知は、画像による通知であってもよいし、音声または振動(例えばシートベルトを振動させること)による通知であってもよい。
【0056】
時刻T+1において、支援制御部150は、第1警報をドライバに対して行う。第1警報は、ドライバにカーブ路を認識させる警報である。第1警報は、例えば、ドライバに対する警報であって車両Mの速度を目標速度に近づけるように車両Mを減速させる警報である。
【0057】
時刻T+2において、支援制御部150は、第2警報をドライバに対して行い、車両Mを第2減速度合で減速させて、時刻T+3において車両Mの速度を目標速度に合致させる。第2減速度合は、第1減速度合よりも大きい減速度合である。第2警報は、ドライバにカーブ路を認識させる警報である。第2警報は、ドライバに対する警報であって車両Mの速度を目標速度に近づけるように車両Mを減速させる警報である。第2警報は、第1警報よりも強度の強い警報である。強度が強い警報とは、ドライバが減速の必要性をより感じる態様の警報である。強度が強い警報は、例えば、支援制御部150が、ドライバにより減速を促す画像を提供したり、より大きい音声を出力したり、より大きい振動をドライバに与えたりすることである。
【0058】
[加速操作のオーバライド]
上記のように、支援制御部150は、車両Mがカーブ路を走行するための支援を行う。これにより、車両Mが目標速度で滑らかにカーブ路を走行するように、ドライバの操作を支援することができる。しかしながら、ドライバによっては、支援制御部150による支援制御(特に、減速制御)に煩わしさを感じたり、車両Mの減速よりも加速を実行することを意図したりする場合がある。
【0059】
上記の事情を背景にして、支援制御部150は、支援制御が行われているときにドライバが加速操作を行ったことを示す第2情報を取得した場合、取得した第2情報から、APペダルセンサ88から出力されたアクセルペダル開度を取得し、アクセルペダル開度が所定期間(例えば、数秒)内に基準値から所定量以上増加したか否かを判定する。ここで、所定期間の始点は、例えば、支援制御の実行中、ドライバがアクセルペダル84を操作した時であってもよいし、所定度合以上の操作量でドライバがアクセルペダル84を操作した時であってもよい。支援制御部150は、アクセルペダル開度が所定期間内に基準値から所定量以上増加したと判定された場合に、支援制御を停止して車両Mを加速させる。以下、この制御をアクセルオーバライドと称することがある。アクセルペダル開度は、「加速操作量」の一例である。代替的に、支援制御部150は、所定期間内にアクセルペダル開度の増加量の累積値を計測し、計測された累積値が所定量以上であるか否かを判定してもよい。以下、図3および図4を参照して、アクセルオーバライドの実行を判定するための基準値の設定について説明する。
【0060】
図3は、アクセルオーバライドの実行を判定するための基準値RV1と、当該基準値RV1に基づくアクセルオーバライドの実行を説明するための図である。図3において、時刻Tから、支援制御部150は支援制御を実行し、それにより、車両Mを第1減速度合で減速させるとともに、HMI30を介して通知または第1警報を行う。ドライバは、車両Mが減速することにより車両Mの進行方向に関する重力(縦G)の変化を感じ、更にHMIを介した通知または第1警報により、カーブ路を近づいていることを認識する。ここで、ドライバは、上記状況を認識したものの、支援制御の適用を希望せず、時刻T+2おいて加速操作を開始したものとする。
【0061】
ドライバが加速操作を開始したことに応じて、支援制御部150は、ドライバが加速操作を行ったことを示す第2情報を取得し、取得した第2情報から、APペダルセンサ88から出力されたアクセルペダル開度を取得する。次に、支援制御部150は、所定期間内にアクセルペダル開度が基準値RV1から所定量以上増加したか否かを判定する。ここで、基準値RV1とは、支援制御部150による支援制御が開始された時刻Tにおけるアクセルペダル開度の値である。支援制御部150は、時刻T+2#において、所定期間内にアクセルペダル開度が基準値RV1から所定量以上増加したと判定し、支援制御を停止するとともに、アクセルペダル開度に応じて車両Mを加速させる(アクセルオーバライドを実行する)。これにより、ドライバの意図に応じた車両の制御を実現することができる。さらに、基準値RV1が、支援制御の開始時におけるアクセルペダル開度の値に設定されることにより、アクセルオーバライドを行うために必要な操作量が同一の基準に設定され、ドライバは、アクセルオーバライドを行うために必要な操作量を把握しやすくなる。
【0062】
図4は、アクセルオーバライドの実行を判定するための基準値RV2と、当該基準値RV2に基づくアクセルオーバライドの実行を説明するための図である。図4において、時刻Tから、支援制御部150は支援制御を実行し、それにより、車両Mを第1減速度合で減速させ、HMI30を介して通知または第1警報を行う。ドライバは、車両Mが減速することにより車両Mの進行方向に関する重力(縦G)の変化を感じ、更にHMIを介した通知または第1警報により、カーブ路を近づいていることを認識する。ドライバは、上記状況を認識したものの、支援制御の適用を希望せず、アクセルオーバライドを試みたものとする。
【0063】
ここで、図3に示した状況とは異なり、支援制御が開始された時刻Tにおけるアクセルペダル開度の値は上限に近いため、当該値を基準値として、アクセルペダル開度の値を所定量以上増加させることは不可能である場合がある。そのため、支援制御部150は、支援制御の実行中におけるアクセルペダル開度の最小値を基準値RV2として設定し、所定期間内にアクセルペダル開度が基準値RV2から所定量以上増加したか否かを判定する。例えば、図4の場合、時刻T+3において、ドライバがアクセルペダル84を戻すことによりアクセルペダル開度は最小値となるため、支援制御部150は、時刻T+3におけるアクセルペダル開度の値を基準値RV2として設定する。その後、支援制御部150は、時刻T+4において、アクセルペダル開度が基準値RV2から所定量以上増加したと判定し、支援制御を停止するとともに、アクセルペダル開度に応じて車両Mを加速させる(アクセルオーバライドを実行する)。これにより、ドライバの意図に応じた車両の制御を実現することができる。さらに、基準値RV2が、支援制御の実行中におけるアクセルペダル開度の最小値に設定されることにより、支援制御の開始時におけるアクセルペダル開度の値が大きく、最大操作量までの余裕操作量が所定量未満である場合であっても、ドライバにオーバライドを実行させることができる。
【0064】
なお、基準値RV2は、支援制御が開始された時刻Tにおけるアクセルペダル開度の値から所定量以上増加させることが不可能である場合にのみ、支援制御部150によって設定されてもよいし、基準値RV1と合わせて、支援制御の実行時には常に設定されてもよい。
【0065】
[効果]
図5は、実施形態に係るアクセルオーバライドの効果について説明するための図である。縦軸はアクセルペダル開度を示し、横軸は時間を示している。支援制御部150は、例えば、車両Mを加速させるためにアクセルペダル84が操作されたときから所定期間PT1が経過するまでの間に、アクセルペダル84に対する加速操作量が閾値に到達した場合、支援制御を停止する。所定期間P1が経過するまでの間に、積算した操作量が閾値に到達していない場合は、ドライバがアクセルペダル84を操作していても支援制御は継続する。
【0066】
推移線L1のように、短期間においてアクセルペダル開度が大きく変化するようにアクセルペダル84が操作された場合(例えば、図4の場合)であっても、推移線L2のように、なだらかにアクセルペダル開度が変化するようにアクセルペダル84が操作された場合(例えば、図3の場合)であっても、アクセルオーバライドの条件が満たされる。これにより、ドライバが、短時間で大きく操作子の開度を増加させる操作を行う場合と、時間をかけて徐々に開度を増加させる操作を行う場合のいずれの場合であっても、加速操作によって支援制御のオーバライドを行い、ドライバの意図に応じた車両の制御を実現することができる。
【0067】
[フローチャート]
図6は、運転支援装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理の順序は入れ替えられてもよいし、処理の一部は省略されてもよい。
【0068】
まず、運転支援装置100は、車両Mの位置から所定距離前方にカーブ路が存在するか否かを判定する(ステップS100)。カーブ路が存在する場合、運転支援装置100は、カーブ路が条件を満たすカーブ路であるか否かを判定する(ステップS102)。カーブ路が条件を満たすカーブ路である場合、運転支援装置100は、車両Mの速度が条件を満たすか否かを判定する(ステップS104)。ステップS100、S102、またはS104の判定が否定的であった場合、本フローチャートの1ルーチンの処理が終了する。
【0069】
車両の速度が条件を満たす場合、運転支援装置100は、車両Mが第1位置(例えば図2の位置P)に到達したか否かを判定する(ステップS106)。車両Mが第1位置に到達した場合、運転支援装置100は、通知を行い(ステップS108)、第1減速度合で車両Mを減速させる(ステップS110)。
【0070】
次に、運転支援装置100は、車両Mが第2位置(例えば図2の位置P1)に到達したか否かを判定する(ステップS112)。車両Mが第2位置に到達した場合、運転支援装置100は、第1警報を行う(ステップS114)。次に、運転支援装置100は、車両Mが第3位置(例えば図2の位置P2)に到達したかを判定する(ステップS116)。
【0071】
車両Mが第3位置に到達した場合、運転支援装置100は、第2警報を行い(ステップS118)、第2減速度合で車両Mを減速させる(ステップS122)。次に、車両Mの速度が目標速度に到達したか否かを判定する(ステップS122)。車両Mの速度が目標速度に到達していない場合、ステップS118の処理に戻る。車両Mの速度が目標速度に到達した場合、運転支援装置100は、車両Mの減速を停止する(ステップS124)。これにより、本フローチャートの1ルーチンの処理が終了する。
【0072】
上記のように、運転支援装置100は、車両Mおよびカーブ路が条件を満たす場合に、支援制御(ステップS106-S124)を実行することにより、車両Mがカーブ路をより滑らに走行することができるようにドライバを支援することができる。
【0073】
上記のフローチャートの処理において、アクセルオーバライドが成立した場合、支援制御は停止する。
【0074】
図7は、運転支援装置100が実行するアクセルオーバライドの処理の一例を示すフローチャートである。まず、運転支援装置100は、支援制御中であるか否を判定する(ステップS200)。支援制御中である場合、運転支援装置100は、アクセルペダル84が操作されているか否かを判定する(ステップS202)。アクセルペダル84が操作されていないと判定された場合、運転支援装置100は、処理をステップS200に戻す。
【0075】
一方、アクセルペダル84が操作されていると判定された場合、運転支援装置100は、所定期間内にアクセルペダル開度が基準値から所定量以上増加したか否かを判定する(ステップS206)。所定期間内にアクセルペダル開度が基準値から所定量以上増加していないと判定された場合、運転支援装置100は、処理をステップS202に戻す。
【0076】
所定期間内にアクセルペダル開度が基準値から所定量以上増加していると判定された場合、運転支援装置100は、アクセルオーバライドが成立したと判定し、前述した図10のフローチャート支援制御を停止させる(ステップS208)。次に、運転支援装置100は、アクセルペダル開度に応じて車両Mを加速させる(ステップS210)。これにより、本フローチャートの処理が終了する。
【0077】
なお、上記のステップS206における基準値は、図3の基準値RV1と図4の基準値RV2の少なくとも一方を用いればよい。例えば、運転支援装置100は、ステップS206において、所定期間内にアクセルペダル開度が基準値RV1および基準値RV2のいずれか一方から所定量以上増加しているか否かを判定してもよい。これにより、ドライバが、短時間で大きく操作子の開度を増加させる操作を行う場合(基準値RV2に対応する場合)と、時間をかけて徐々に開度を増加させる操作を行う場合(基準値RV1に対応する場合)のいずれの場合であっても、加速操作によって支援制御のオーバライドを行い、ドライバの意図に応じた車両の制御を実現することができる。
【0078】
以上説明した実施形態によれば、支援制御部150は、支援制御を行っているときにドライバが加速操作を行った場合、所定期間内に加速操作の操作量が所定量以上増加したか否かを判定し、加速操作の操作量が所定量以上増加した場合に支援制御を停止する。これにより、ドライバの意図に応じた車両の制御を実現することができる。
【0079】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
車両の進行方向に存在するカーブ路に関する第1情報を取得し、
前記車両のドライバの加速操作量を含む第2情報を取得し、
前記車両が、前記カーブ路の入口から前記入口の所定距離手前までの区間または前記カーブ路を走行中である場合、前記第1情報に基づく目標速度に前記車両の速度を近づけるように前記車両を減速させる減速制御と、前記目標速度に前記車両の速度を近づけることを報知する報知制御との一方または双方を含む支援制御を行い、
前記支援制御の実行中、前記第2情報を参照し、前記加速操作量が所定量以上増加した場合に前記支援制御を停止する、
ように構成されている、車両用制御装置。
【0080】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0081】
1 車両システム
100 運転支援装置
110 認識部
130 カーブ判定部
140 操作情報処理部
150 支援制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7