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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174450
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】土壌用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/08 20060101AFI20241210BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20241210BHJP
   C11D 1/722 20060101ALI20241210BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20241210BHJP
   C11D 3/30 20060101ALI20241210BHJP
   C11D 1/14 20060101ALI20241210BHJP
   C11D 3/39 20060101ALI20241210BHJP
   B09C 1/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B09C1/08
C11D1/72
C11D1/722
C11D3/04
C11D3/30
C11D1/14
C11D3/39
B09B5/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092276
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】下田 政朗
(72)【発明者】
【氏名】島田 聡之
【テーマコード(参考)】
4D004
4H003
【Fターム(参考)】
4D004AA41
4D004AB02
4D004AC07
4D004AC10
4D004BA10
4D004CA15
4D004CA40
4D004CC03
4D004CC05
4D004DA20
4H003AB17
4H003AC08
4H003AC23
4H003BA12
4H003DA20
4H003DB01
4H003DC02
4H003EA20
4H003EA21
4H003EB14
4H003ED02
4H003FA03
(57)【要約】
【課題】水系での洗浄でも土壌の洗浄力に優れる土壌用洗浄剤組成物及び土壌の洗浄方法を提供する。
【解決手段】下記(A)成分及び(B)成分〔但し、(A)成分に該当するものを除く〕を含有する、土壌用洗浄剤組成物。
(A)成分:ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル
(B)成分:ポリオキシエチレン部及びポリオキシプロピレン部を有するブロック共重合体
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分及び(B)成分〔但し、(A)成分に該当するものを除く〕を含有する、土壌用洗浄剤組成物。
(A)成分:ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル
(B)成分:ポリオキシエチレン部及びポリオキシプロピレン部を有するブロック共重合体
【請求項2】
(B)成分は、(B1)下記一般式(B1)で表されるブロック共重合体である、請求項1に記載の土壌用洗浄剤組成物。
1b-O-(EO)-(PO)-(EO)-R2b (B1)
〔式中、R1b、R2bは、それぞれ独立に、炭素数1以上12以下の炭化水素基、又は水素原子であり、EOはエチレンオキシドであり、a、cはエチレンオキシドの平均付加モル数であり、aは0以上150以下の数であり、cは0以上150以下の数であり、aとcの合計が1以上300以下の数であり、POはプロピレンオキシドであり、bはプロピレンオキシドの平均付加モル数であり、1以上100以下の数である。〕
【請求項3】
(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の質量比(A)/(B)は、50/50以上99/1以下である、請求項1又は2に記載の土壌用洗浄剤組成物。
【請求項4】
油で汚染された土壌用である、請求項1~3の何れか1項に記載の土壌用洗浄剤組成物。
【請求項5】
更に、(C)アルカリ剤〔以下、(C)成分という〕を含有する、請求項1~4の何れか1項に記載の土壌用洗浄剤組成物。
【請求項6】
(C)成分は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びアルカノールアミンから選ばれる1種以上である、請求項5に記載の土壌用洗浄剤組成物。
【請求項7】
更に、(D)内部オレフィンスルホン酸塩〔以下、(D)成分という〕を含有する、請求項1~6の何れか1項に記載の土壌用洗浄剤組成物。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の土壌用洗浄剤組成物を油で汚染された土壌に接触させることを行う、土壌の洗浄方法。
【請求項9】
前記土壌用洗浄剤組成物、水及び(E)過炭酸塩及び過硫酸塩から選ばれる1種以上〔以下、(E)成分という〕を含有する洗浄液を前記土壌と接触させる、請求項8に記載の土壌の洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌用洗浄剤組成物及び土壌の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業廃棄物の不法投棄、工場における廃棄物処理、最終処分場からの有害物質漏出事故による土壌汚染そして石油コンビナート、ガソリンスタンドや化学工場などの敷地・跡地では、種々の油類の漏出事故や長期にわたる漏出により、様々な場面で深刻な土壌汚染にみまわれるケースが多発している。
【0003】
従来、このような汚染土壌の修復方法には、掘削後の焼却処理、固化・固定化、囲い込み処理、バイオレメディエーション、土壌洗浄法等の技術が用いられてきたが、中でも汚染物質を土壌から除去し、浄化する技術が主流となりつつある。
【0004】
土壌洗浄法は、他の方法と比較して、異なる汚染種(油、重金属)でも浄化できるため汎用性が高く、バイオレメディエーション等の前処理工程としても利用でき、汚染土壌の処理量が大きく、総合的に浄化費用の低コスト化を実現できる要素を含んでいる。通常、土壌洗浄法では、界面活性剤などを含有する洗浄剤が用いられる。
【0005】
特許文献1には、液体油脂と、所定量のノニオン系界面活性剤と、所定量の多価アルコールと水とを、水中油型に乳化した乳化物よりなり、油滴の平均粒径が50μm以下である、土壌、地下水用浄化剤が開示されている。
特許文献2には、過酸化水素を付加した水酸化カルシウム、酵素、及び全体重量の30%以内の界面活性剤とを有する土壌又は地下水の浄化組成物が開示されている。
特許文献3には、有機汚染物質による地層内汚染区域に、界面活性剤と溶剤との混合液及び水を注入し地層中に存在する有機汚染物質と混合して、低粘性の乳化液を生成する工程と、発泡剤を注入して地層内での微発泡作用により混合・乳化を促進する工程を備え、低粘性化した乳化液を地上に吸引し回収する汚染土壌の原位置浄化方法が開示されている。
特許文献4には、(A)内部オレフィンスルホン酸塩及び(B)ポリオキシエチレン部及びポリオキシプロピレン部を有するブロック共重合体である土壌湿潤剤を含有する、土壌用洗浄剤組成物が開示されている。
特許文献5には、撥水性土壌の湿潤速度を増大させる方法であって、(a)所定のエチレンオキシド-プロピレンオキシドブロックコポリマー及び(b)水を含む水性湿潤剤組成物を用意し、撥水性土壌を、該湿潤剤組成物の有効量と充分に接触させる工程を含む方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-83169号公報
【特許文献2】特開2006-61790号公報
【特許文献3】特開2005-279423号公報
【特許文献4】特開2022-97802号公報
【特許文献5】特表2005-536572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自然界の土壌は、植物や微生物の分解により土壌粒子表面が疎水化されており、このような土壌に対して油汚染が発生した場合、水系での洗浄では土壌の洗浄が困難となるおそれがある。水を主成分とする水系での土壌の洗浄は、環境及び安全性の点で望ましい。
本発明は、水系での洗浄でも土壌の洗浄力に優れる土壌用洗浄剤組成物及び土壌の洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記(A)成分及び(B)成分〔但し、(A)成分に該当するものを除く〕を含有する、土壌用洗浄剤組成物に関する。
(A)成分:ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル
(B)成分:ポリオキシエチレン部及びポリオキシプロピレン部を有するブロック共重合体
【0009】
また、本発明は、上記の土壌用洗浄剤組成物を油で汚染された土壌に接触させることを行う、土壌の洗浄方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水系での洗浄でも土壌の洗浄力に優れる土壌用洗浄剤組成物及び土壌の洗浄方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の土壌用洗浄剤組成物により、水系での洗浄でも土壌の洗浄力に優れるメカニズムは不明であるが、次のように考えられる。
自然界の土壌(地盤)は多少に関わらず、(1)土圧により押し固められている、(2)植物などが微生物による分解を経て形成された最終生成物であるフミン質(腐植物質)のうち、酸性の無定形高分子有機物であるフミン酸(腐植酸)が土壌粒子を被覆して疎水化していると考えられる。
このような土壌に対して、油汚染が発生した場合、油は表面張力が低いために押し固められた土壌にも容易に浸透し、更に腐植酸により疎水化されている土壌粒子表面と強固に付着すると推察される。
本発明の土壌用洗浄剤組成物は、このような汚染土壌に対して、(B)成分の効果により(A)成分を土壌に浸透させることで、押し固められた土壌が容易に解砕し、土壌粒子表面から油を引き剥がすことが容易となり、汚染土壌の洗浄力が向上するものと推察される。
また、(A)成分と(B)成分に加えて、更に(C)アルカリ剤〔以下、(C)成分という〕を併用することで、(C)成分が土壌粒子表面を被覆している腐植酸を溶解し、土壌粒子表面から油等の汚染物質がより除去できると推察される。
また、(A)成分と(B)成分に加えて、更に(D)内部オレフィンスルホン酸塩〔以下、(D)成分という〕を併用することで、(D)成分の作用により、(B)成分の浸透効果が更に向上し、結果として汚染土壌の洗浄力が向上すると推察される。
その結果、本発明の土壌用洗浄剤組成物及び土壌の洗浄方法によれば、(A)成分と(B)成分の相乗効果により、水系での洗浄でも土壌、更には土圧により押し固められた土壌の解砕を促進し、土壌の洗浄性が向上すると考えられる。
なお、本発明の土壌用洗浄剤組成物及び土壌の洗浄方法は、この作用機構になんら限定されるものではない。
【0012】
<土壌用洗浄剤組成物>
本発明の土壌用洗浄剤組成物は、下記(A)成分及び(B)成分〔但し、(A)成分に該当するものを除く〕を含有する。
(A)成分:ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル
(B)成分:ポリオキシエチレン部及びポリオキシプロピレン部を有するブロック共重合体
【0013】
<(A)成分>
(A)成分は、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテルから選ばれる1種以上であり、洗浄性向上の観点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルから選ばれる1種以上が好ましい。
(A)成分のアルキル基又はアルケニル基は、直鎖でも分岐鎖でもよいが、土壌への浸透性向上の観点から、直鎖が好ましい。
【0014】
(A)成分のアルキル基又はアルケニル基はの炭素数は、土壌粒子表面から油を引き剥がす観点から、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下、更により好ましくは12以下である。
また、(A)成分のアルキレンオキシドは、炭素数2以上4以下から選ばれる1種以上が好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。また、(A)成分のアルキレンオキシドの平均付加モル数は、洗浄液の均一性の観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは12以下、更により好ましくは10以下である。
【0015】
(A)成分としては、土壌粒子表面から油を引き剥がす観点から、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が6以上18以下であり、エチレンオキシドの平均付加モル数が3以上20以下のポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル〔以下、(A1)成分という〕が好ましい。
【0016】
(A1)成分のアルキル基又はアルケニル基は、直鎖でも分岐鎖でもよいが、土壌への浸透性向上の観点から、直鎖が好ましい。
(A1)成分のアルキル基又はアルケニル基の炭素数は、6以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。(A1)成分のアルキル基又はアルケニル基の炭素数は、土壌粒子表面から油を引き剥がす観点から、10又は12がより好ましい。
(A1)成分のエチレンオキシドの平均付加モル数は、洗浄液の均一性の観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、そして、(B)成分との混合性の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは12以下、更により好ましくは10以下である。
(A1)成分は、アルキル基を有するもの、すなわち、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
【0017】
(A)成分は、洗浄性向上の観点から、アルキル基の炭素数が、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下、更により好ましくは12以下であり、エチレンオキシドの平均付加モル数が、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは12以下、更により好ましくは10以下である、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
【0018】
<(B)成分>
(B)成分は、ポリオキシエチレン部及びポリオキシプロピレン部を有するブロック共重合体から選ばれる1種以上である。
【0019】
(B)成分の重量平均分子量は、土壌への浸透性向上の観点から、好ましくは1,500以上、より好ましくは1,600以上、更に好ましくは1,800以上、そして、好ましくは6,000以下、より好ましくは5,000以下、更に好ましくは4,500以下である。(B)成分の重量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準物質とした場合の重量平均分子量であり、ゲル浸透式液体クロマトグラフィ法で測定される。
【0020】
(B)成分のポリオキシエチレン部及びポリオキシプロピレン部を有するブロック共重合体としては、土壌の湿潤性を向上させる観点から、(B1)下記一般式(B1)で表されるブロック共重合体〔但し、(A)成分に該当するものを除く〕〔以下、(B1)成分という〕が好ましい。
1b-O-(EO)-(PO)-(EO)-R2b (B1)
〔式中、R1b、R2bは、それぞれ独立に、炭素数1以上12以下の炭化水素基又は水素原子であり、EOはエチレンオキシドであり、a、cはエチレンオキシドの平均付加モル数であり、aは0以上150以下の数であり、cは0以上150以下の数であり、aとcの合計が1以上300以下の数であり、POはプロピレンオキシドであり、bはプロピレンオキシドの平均付加モル数であり、1以上100以下の数である。〕
【0021】
一般式(B1)中、R1b、R2bは、それぞれ独立に、炭素数1以上12以下の炭化水素基又は水素原子であり、土壌への浸透性向上の観点から、好ましくは炭素数1の炭化水素基又は水素原子であり、より好ましくは水素原子である。
一般式(B1)中、a、cはエチレンオキシドの平均付加モル数であり、aが、0以上、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下の数であり、cが、0以上、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下の数であり、aとcの合計が、土壌への浸透性向上の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上、そして、好ましくは40以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは7以下の数であり、bはプロピレンオキシドの平均付加モル数であり、土壌への浸透性向上の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは25以上、更に好ましくは28以上、そして、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは35以下の数である。
【0022】
(B1)成分の重量平均分子量は、土壌への浸透性向上の観点から、好ましくは1,500以上、より好ましくは1,600以上、更に好ましくは1,800以上、そして、好ましくは6,000以下、より好ましくは5,000以下、更に好ましくは4,500以下である。(B1)成分の重量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準物質とした場合の重量平均分子量であり、ゲル浸透式液体クロマトグラフィ法で測定される。
【0023】
<組成等>
本発明の土壌用洗浄剤組成物は、(A)成分を、輸送コストの観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、そして、組成物粘度の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下含有する。
【0024】
本発明の土壌用洗浄剤組成物は、(B)成分を、組成物の均一性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、そして、組成物粘度の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下含有する。
【0025】
本発明の土壌用洗浄剤組成物において、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の質量比(A)/(B)は、洗浄性向上の観点から、好ましくは40/60以上、より好ましくは50/50以上、更に好ましくは55/45以上、更により好ましくは60/40以上、そして、土壌への浸透性向上の観点から、好ましくは99/1以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは80/20以下、更により好ましくは70/30以下である。
【0026】
<(C)成分>
本発明の土壌用洗浄剤組成物は、土壌粒子表面を被覆している腐植酸を溶解する観点から、任意に(C)アルカリ剤〔以下、(C)成分という〕を含有することができる。
(C)成分は、無機塩基化合物及び有機塩基化合物から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0027】
(C)成分の無機塩基化合物としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが挙げられる。また、(C)成分の有機塩基化合物としては、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、tert-ブチルアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メタノールアミン等のアルカノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンエキサミン等のポリエチレンアミンなどが挙げられる。
(C)成分は、溶解性の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びアルカノールアミンから選ばれる1種以上が好ましく、アルカノールアミンから選ばれる1種以上がより好ましい。
【0028】
本発明の土壌用洗浄剤組成物が(C)成分を含有する場合、本発明の土壌用洗浄剤組成物は、(C)成分を、洗浄性向上の観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、そして、安全性の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下含有する。
【0029】
<(D)成分>
本発明の土壌用洗浄剤組成物は、任意に(D)内部オレフィンスルホン酸塩(以下、IOSともいう)〔以下、(D)成分という〕を含有することができる。
IOSは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属(1/2原子)塩、アンモニウム塩又は有機アンモニウム塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩、マグネシウム塩が挙げられる。有機アンモニウム塩としては、炭素数2以上6以下のアルカノールアンモニウム塩が挙げられる。IOSは、土壌への浸透性向上の観点から、アルカリ金属塩が好ましく、カリウム塩がより好ましい。
【0030】
(D)成分のIOSは、二重結合がオレフィン鎖の内部(2位以上の位置)にある内部オレフィンをスルホン化、中和、及び加水分解すること等によって得ることができる。内部オレフィンをスルホン化すると、定量的にβ-サルトンが生成し、β-サルトンの一部は、γ-サルトン、オレフィンスルホン酸へと変化し、更にこれらは中和・加水分解工程においてヒドロキシアルカンスルホン酸塩(H体)と、オレフィンスルホン酸塩(O体)へと転換する(例えば、J. Am. Oil Chem. Soc. 69, 39(1992))。IOSは、これらの混合物であり、主に、スルホン酸基が炭化水素鎖(H体におけるヒドロキシアルカン鎖、又はO体におけるオレフィン鎖)の内部(2位以上の位置)に存在するスルホン酸塩である。IOSの炭素鎖におけるスルホン酸基の置換位置分布は、ガスクロマトグラフィー、核磁気共鳴スペクトル等の方法により定量できる。
【0031】
IOS中、スルホン酸基が前記炭化水素鎖の2位に存在するIOSの割合は、モル基準又は質量基準で、土壌への浸透性向上の観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、そして、好ましくは45%以下、より好ましくは30%以下である。
【0032】
IOS中、スルホン酸基が前記炭化水素鎖の1位に存在するIOSの割合は、土壌への浸透性向上の観点から、好ましくは0.2%以上、より好ましくは0.5%以上、更に好ましくは1.0%以上、そして、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下、より更に好ましくは3%以下である。
【0033】
IOSの前記炭化水素鎖における炭素数は、土壌への浸透性向上の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは16以上、更に好ましくは18以上、そして、好ましくは28以下、より好ましくは24以下、更に好ましくは22以下、より更に好ましくは20以下であり、より更に好ましくは18である。すなわち、本発明の土壌用洗浄剤組成物は、土壌への浸透性向上の観点から、(D)成分として、炭素数が10以上28以下の炭化水素鎖を有するIOSを含有することがより好ましい。
【0034】
IOS中、炭素数が16以上24以下の炭化水素鎖を有するIOSの割合は、土壌への浸透性向上の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは97質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下であり、100質量%であってもよい。
【0035】
IOSは、H体とO体とのモル比(H体/O体)が、土壌への浸透性向上の観点から、好ましくは50/50を超え、より好ましくは70/30を超え、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下である。
【0036】
本発明の土壌用洗浄剤組成物が(D)成分を含有する場合、本発明の土壌用洗浄剤組成物は、(D)成分を、組成物の均一性の観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.25質量%以上、そして、組成物粘度の観点から、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下含有する。
【0037】
本発明の土壌用洗浄剤組成物が(D)成分を含有する場合、本発明の土壌用洗浄剤組成物において、(D)成分の含有量と(B)成分の含有量の質量比(D)/(B)は、土壌への浸透性向上の観点から、好ましくは0.5/99.5以上、より好ましくは1/99以上、更に好ましくは2/98以上、更により好ましくは4/95以上、そして、好ましくは30/70以下、より好ましくは20/80以下、更に好ましくは15/85以下、更により好ましくは10/90以下である。
【0038】
<その他成分>
本発明の土壌用洗浄剤組成物は、(A)成分、(B)成分及び(D)成分以外の界面活性剤を含有することもできる。そのような界面活性剤としては、(A)成分及び(B)成分以外の非イオン界面活性剤、(D)成分以外の陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤、或いはそれらの混合物が挙げられる。
【0039】
本発明の土壌用洗浄剤組成物において、(A)成分、(B)成分及び(D)成分以外の界面活性剤を含有する場合、その含有量は、(A)成分、(B)成分及び(D)成分による効果を妨げない範囲で適宜選択可能である。本発明の土壌用洗浄剤組成物において、全界面活性剤中の(A)成分、(B)成分及び(D)成分の合計含有量は、土壌への浸透性向上の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、そして、100質量%以下、更には90質量%以下であり、100質量%であってもよい。
【0040】
(A)成分及び(B)成分以外の非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルソルビトールエステル、ポリオキシアルキレンアルキルソルビタンエステル、ポリオキシアルキレンアルキルグリセロールエステル、ポリオキシアルキレンブロック共重合体アルキルグリセロールエステル、ポリオキシアルキレンアルキルスルホンアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、アルキルグリセリルエーテル等が挙げられ、これらのうちの1種以上を用いることができる。
【0041】
(D)成分以外の陰イオン界面活性剤のうち、典型的なものは、水溶液或いは固体状態で入手され得るが、その例としては、モノ-及びジ-アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、モノ-及びジ-アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホネートのホルムアルデヒド縮合物等のスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸塩;モノ及びジアルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンモノ及びジアルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンモノ及びジフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンモノ及びジアルキルフェニルエーテルリン酸塩等のリン酸塩、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸及びその塩、直鎖及び分岐アルキルポリオキシアルキレンエーテル酢酸及びその塩、アルケニルポリオキシアルキレンエーテル酢酸及びその塩、直鎖及び分岐アルキルアミドポリオキシアルキレンエーテル酢酸及びその塩、ステアリン酸やオレイン酸等の脂肪酸及びその塩等のカルボン酸及びその塩、ココイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられ、これらのうちの1種以上を用いることができる。
【0042】
陽イオン界面活性剤としては、アルキルアミン塩型、第4級アンモニウム塩型、ピリジニウム塩型、ジアルキルアミン誘導体等が挙げられ、アルキルアミン塩型としては、例えば、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン及びそれらの酢酸等の酸塩;第4級アンモニウム塩型としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム、ミリスチルトリメチルアンモニウム、パルミチルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オレイルトリメチルアンモニウム等の第4級アンモニウムのクロライド等のハロゲン化物塩;ピリジニウム塩型としては、ドデシルピリジニウム、ヘキサデシルピリジニウム等のピリジニウムのクロライド等のハロゲン化物塩;ジアルキルアミン誘導体としては、ジアルキルモノメチルヒドロキシエチルアンモニウムプロピオネート、ジアルキルモノメチルベンザルコニウムクロライド、ジアルキルモノメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートなどがある。
【0043】
両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアルキルアミンオキサイド型;ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のカルボキシベタイン型;アルキルジエチレントリアミノ酢酸等のグリシン型;2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等の2-アルキルイミダゾリン誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種以上を用いることができる。
【0044】
<水>
本発明の土壌用洗浄剤組成物は、水を含有することができる。水は、イオン交換水、水道水、蒸留水、精製水、地下水、井戸水等を用いることができる。水は、組成物の残部として、組成物全体の組成が100質量%となるような量で用いることができる。
本発明の土壌用洗浄剤組成物は、水を、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下含有する。
【0045】
本発明の土壌用洗浄剤組成物は、任意に、上記成分以外の化合物、例えば、キレート剤、pH調節剤〔但し、(C)成分に該当するものを除く〕、無機塩類〔但し、(C)成分及び下記の(E)成分に該当するものを除く〕、増粘剤、減粘剤、安定化剤、消泡剤、防腐剤等を含有することができる。
【0046】
<(E)成分>
本発明の土壌用洗浄剤組成物は、更なる洗浄性向上の観点から、任意に(E)過炭酸塩及び過硫酸塩から選ばれる1種以上〔以下、(E)成分という〕と併用することが好ましい。
(E)成分は、例えば、本発明の土壌用洗浄剤組成物を水で希釈した洗浄液を土壌と接触させる際に、該洗浄液に添加して用いられる。
【0047】
(E)成分は、アルカリ金属過炭酸塩及びアルカリ金属過硫酸塩から選ばれる1種以上が好ましく、過炭酸ナトリウム及び過硫酸ナトリウムから選ばれる1種以上がより好ましく、過炭酸ナトリウムが更に好ましい。
【0048】
<土壌用洗浄液製造用キット>
本発明は、土壌用の洗浄液を製造するキットであって、本発明の土壌用洗浄剤組成物と、(E)成分を含む剤とを、相互に混合されない状態で含む、キットを提供する。
本発明のキットにおいて、土壌用洗浄剤組成物の好ましい態様は、上記本発明の土壌用洗浄剤組成物の好ましい態様と同じである。
また、本発明のキットを構成する(E)成分を含む剤において、(E)成分の含有量は、例えば、(E)成分の含有量が、後に詳細に説明する洗浄液における(E)成分の量となるように調製できるような量であってよい。
【0049】
本発明の土壌用洗浄剤組成物と、(E)成分を含む剤は、土壌の洗浄の際に混合され、希釈せず又は水で希釈されて、所定の土壌用洗浄液が調製される。
【0050】
(E)成分を含む剤は、(E)成分を、3質量%以上、更に5質量%以上、更に25質量%以上、そして、100質量%以下、更に90質量%以下含有することが好ましく、100質量%含有してもよい。
【0051】
<土壌>
本発明の土壌用洗浄剤組成物は、土壌、例えば、油、更には石油系化合物で汚染された土壌を洗浄するものであってよい。すなわち、本発明の土壌用洗浄剤組成物は、油で汚染された土壌を洗浄する、油で汚染された土壌用洗浄剤組成物であってよく、更には石油化学系化合物で汚染された土壌を洗浄する、石油化学系化合物で汚染された土壌用洗浄剤組成物であってよい。
油は、例えば、動物油、植物油及び化学合成油から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、石油系化合物は、例えば、石油系炭化水素が挙げられる。石油系化合物は、例えば、ガソリン、灯油、軽油、重油、鉱物油などが挙げられる。
【0052】
本発明の土壌用洗浄剤組成物が洗浄対象とする土壌は、特に限定されるものではないが、例えば、礫質土、砂質土、粘性土、有機質土及び火山灰質粘性土から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、土壌の疎水化は、微生物などの働きにより分解された細かな有機物によってコーティングされる観点から、比較的水はけのよい砂質土壌やシルト質土壌が顕著である。よって、本発明の土壌用洗浄剤組成物は、本発明の効果を顕著に発現させる観点から、これら砂質土壌やシルト質土壌の洗浄に用いることが好ましい。
【0053】
<土壌の洗浄方法>
本発明は、本発明の土壌用洗浄剤組成物を土壌に接触させること、を行う、土壌の洗浄方法を提供する。
本発明の土壌の洗浄方法は、本発明の土壌用洗浄剤組成物を油で汚染された土壌に接触させること、を行う、土壌の洗浄方法であってよい。
また、本発明の土壌の洗浄方法は、本発明の土壌用洗浄剤組成物と水とを含む洗浄液を、土壌に接触させること、を行う土壌の洗浄方法であってよい。
【0054】
本発明の土壌の洗浄方法で土壌と接触させる土壌用洗浄剤組成物の好ましい態様は、上記本発明の土壌用洗浄剤組成物の好ましい態様と同じである。例えば、(A)~(E)成分の好ましい態様、各成分の含有量の質量比などは、本発明に係る液体洗浄剤組成物で記載した好ましい態様と同じである。
また、本発明の土壌の洗浄方法では、本発明の土壌用洗浄剤組成物で記載した、土壌、例えば油で汚染された土壌を洗浄することで、該土壌から、油等の汚染物質を効果的に除去することができる。よって、本発明の土壌洗浄方法で、洗浄対象となる油及び土壌の好ましい態様も、本発明の土壌用洗浄剤組成物で記載した油及び土壌と同じである。
【0055】
以下、本発明の土壌の洗浄方法について、具体的な例を挙げて説明するが、本発明の土壌の洗浄方法は、具体的な例に何ら限定されるものではない。
本発明の土壌の洗浄方法は、本発明の土壌用洗浄剤組成物と、土壌と、を接触させる工程1を有する。
この工程1では、例えば、本発明の土壌用洗浄剤組成物を水で希釈した洗浄液を調製し、該洗浄液を土壌に接触させることができる。
すなわち、本発明の土壌の洗浄方法は、本発明の土壌用洗浄剤組成物を水で希釈した洗浄液と、土壌とを接触させる、土壌の洗浄方法であってよい。
水としては、イオン交換水、水道水、川水、地下水等の大量に入手可能な水を、処理する土壌に応じて使用できる。
なお、工程1において、土壌中の地下水を利用する場合は、直接、本発明の土壌用洗浄剤組成物を土壌及び地下水に添加することもできる。
【0056】
土壌に接触させる洗浄液は、溶解性の観点から、本発明の土壌用洗浄剤組成物を、水で、好ましくは10倍以上、より好ましくは20倍以上、更に好ましくは50倍以上、そして、好ましくは1000倍以下、より好ましくは500倍以下、更に好ましくは200倍以下に希釈して調製することができる。
【0057】
工程1では、前記の洗浄液と土壌との混合物を撹拌混合してもよい。
工程1において、前記の洗浄液と、土壌と、を接触させる方法としては、該洗浄液に土壌を浸漬する方法、該洗浄液を土壌に吹き付ける方法、該洗浄液を土壌中に通液する方法等が挙げられる。
【0058】
工程1で、前記洗浄液と土壌との混合物を撹拌混合する洗浄方法として、具体的には、分級洗浄処理が挙げられる。また、対象の土壌に前記洗浄液を添加し、良く混合後、洗浄土を分離し、乾燥させる方法を用いることができる。あるいは、土壌形状が塊状の場合は粉砕して粉状、細粒状とし、また、粉状、細粒状の場合はそのままで適当な容器に入れ、前記洗浄液中に浸漬し、撹拌、或いは振動を与える方法などが挙げられる。
【0059】
本発明の土壌の洗浄方法は、土壌を掘削して得られた掘削土壌を洗浄する土壌掘削洗浄方法や、土壌に前記洗浄液を注入して土壌の洗浄を行う土壌の洗浄方法などに好ましく適用することができる。
【0060】
本発明の土壌の洗浄方法において、土壌を、その土壌が存在する場所(現地)で洗浄してもよいし、原位置とは異なる場所(現地外)で洗浄してもよい。例えば、土壌を、現地とは異なる場所に設けた洗浄設備で洗浄することができる。その際、例えば、現地から掘削により採取した土壌を、現地とは異なる場所に設けた洗浄設備に移送して洗浄することができる。洗浄設備は、現地の近くに設置することが好ましい。例えば、ある区域内の所定の場所(現地)で土壌を採取し、同じ区域内の採取場所とは別の場所に洗浄設備を設けることができる。このように、いわゆる現地プラントとして洗浄設備を設けて土壌を洗浄することができる。なお、洗浄後の土壌は、採取した場所や別の場所に埋め戻して再利用することができる。
【0061】
また、本発明に係る土壌の洗浄方法では、例えば、掘削を行わずに土壌に本発明の土壌用洗浄剤組成物又は該洗浄剤組成物を水で希釈して得られる洗浄液を注入して、土壌を洗浄することができる。本発明に係る土壌の洗浄方法では、例えば、前記洗浄液等を所定の位置で汚染された土壌に注入し、汚染された土壌中を通過させた後、前記所定の位置とは異なる位置で前記洗浄液等を回収することができる。このようにして、土壌中を通過する前記洗浄液に石油系化合物等の油類のような土壌中の汚染物質を取り込み、回収することができる。前記洗浄液等の回収は、揚水法などで行うことができ、具体的には汲み上げポンプなどの汲み上げ手段により行うことができる。そして、回収した前記洗浄液等から油類等の汚染物質を分離することができる。
【0062】
本発明の土壌洗浄方法において、洗浄液は、(A)成分を、洗浄性向上の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、洗浄後の排水処理の観点から、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下含有する。
【0063】
本発明の土壌洗浄方法において、洗浄液は、(B)成分を、土壌への浸透性向上の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、洗浄後の排水処理の観点から、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下含有する。
【0064】
本発明の土壌洗浄方法において、洗浄液が(C)成分を含有する場合、洗浄液は、(C)成分を、洗浄性向上の観点から、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.02質量%以上、そして、安全性の観点から、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下含有する。
【0065】
本発明の土壌洗浄方法において、洗浄液が(D)成分を含有する場合、洗浄液は、(D)成分を、土壌への浸透性向上の観点から、好ましくは0.0005質量%以上、より好ましくは0.0025質量%以上、更に好ましくは0.005質量%以上、そして、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下含有する。
【0066】
本発明の土壌洗浄方法において、洗浄液が(E)成分を含有する場合、洗浄液は、(E)成分を、洗浄性向上の観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、そして、経済性の観点から、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下含有する。
【0067】
本発明の土壌の洗浄方法において、安全性の観点から、洗浄液のpHは、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、そして、洗浄性向上の観点から、好ましくは11以下、より好ましくは10以下である。洗浄液のpHは、電極法で測定する。
【0068】
本発明に係る土壌洗浄方法では、洗浄液のpHは、土壌を洗浄する際の温度〔以下、洗浄時の温度という〕におけるpHが上記範囲であることが好ましく、25℃におけるpHが上記範囲であれば、洗浄時の温度におけるpHも上記範囲を維持しているといえる。土壌を洗浄する際の温度は、洗浄液を調製後の温度であってよい。
【0069】
本発明の土壌の洗浄方法では、例えば、掘削土壌を対象として洗浄することができる。従って、本発明により、石油系化合物で汚染された掘削土壌を、本発明の土壌用洗浄剤組成物を用いて洗浄する、掘削土壌の洗浄方法が提供される。本発明の掘削土壌の洗浄方法では、洗浄した掘削土壌のすすぎは行ってもよいし、行わなくてもよい。工程の簡略化などの観点では、本発明では、すすぎ工程を実施しなくてもよい。洗浄後の掘削土壌は、採取した場所や別の場所に埋め戻して再利用することができる。
【実施例0070】
表1に示す洗浄液を調製し、以下の方法で土壌の洗浄試験を行った。結果を表1に示す。洗浄液の調製に使用した成分は、以下のとおりである。
なお、実施例の洗浄液は、(A)成分及び(B)成分、更に要すれば(C)成分、(D)成分、水を含む本発明の土壌用洗浄剤組成物を調製し、要すれば(E)成分を更に添加して、更に水で50倍希釈して調製することができる。
【0071】
<(A)成分>
・C12(EO)6:平均付加モル数6のポリオキシエチレン直鎖アルキル(炭素数12)エーテル
・C12(EO)8:平均付加モル数8のポリオキシエチレン直鎖アルキル(炭素数12)エーテル
・C12-13(EO)7:平均付加モル数7のポリオキシエチレン分岐アルキル(炭素数12~13)エーテル
<(A’)成分>
・ラウリルグルコシド:マイドール12、花王(株)製
【0072】
<(B)成分>
・L61:(B1)成分、一般式(B1)中、R1b、R2bが水素原子、aとcの合計が5(aとcはいずれも1以上)、bが31であり、重量平均分子量が2,000であるブロックコポリマー、株式会社アデカ製
・P84:(B1)成分、一般式(B1)中、R1b、R2bが水素原子、aとcの合計が38(aとcはいずれも1以上)、bが43であり、重量平均分子量が4,200であるブロックコポリマー、株式会社アデカ製
・L101:(B1)成分、一般式(B1)中、R1b、R2bが水素原子、aとcの合計が9(aとcはいずれも1以上)、bが59であり、重量平均分子量が3,800であるブロックコポリマー、株式会社アデカ製
・クアリブラ:クアリブラ(登録商標)、シンジェンタジャパン株式会社製、一般式(B1)中、R1b、R2bが水素原子、aとcの合計が32(aとcはいずれも1以上)、bが20であり、重量平均分子量が2,600であるブロック共重合体を90質量%、一般式(B1)中、R1bがテルペン、R2bが水素原子、aが0、bが6であり、cが5であるブロック共重合体を9質量%含有する混合物
【0073】
<(C)成分>
・水酸化ナトリウム:富士フイルム和光純薬(株)製
・水酸化カリウム:富士フイルム和光純薬(株)製
・モノエタノールアミン:2-アミノエタノール、富士フイルム和光純薬(株)製
【0074】
<(D)成分>
[製造例1](IOSの製造)
炭素数18の内部オレフィンスルホン酸カリウム塩(IOS)は、以下の製造例で得た。
撹拌装置付きフラスコに、1-オクタデカノール(花王(株)製「カルコール 8098」)7000質量部と、触媒としてγ-アルミナ(StremChemicals社製)700質量部とを装填し、撹拌下、280℃にて、系内に窒素を流通させながら反応を行い、粗内部オレフィンを得た。前記粗内部オレフィンを、148-158℃、0.5mmHgで蒸留することで、オレフィン純度100%の炭素数18の内部オレフィンを得た。前記内部オレフィンを、薄膜式スルホン化反応器に入れ、反応器外部ジャケットに20℃の冷却水を通液する条件下で、SO濃度2.8容量%の三酸化硫黄ガスを用いてスルホン化反応を行った。反応モル比(SO/内部オレフィン)は、1.09になるように、前記内部オレフィン及びSOの流通量を設定し、反応を行った。得られたスルホン化物を、理論酸価に対し1.2モル倍に相当する水酸化カリウム水溶液へ添加し、30℃で1時間、撹拌し、中和を行った。中和物をオートクレーブ中で160℃、1時間加熱することで加水分解を行い、内部オレフィンスルホン酸カリウム塩の粗生成物を得た。分液漏斗に、前記粗生成物と、エタノールとを入れ、石油エーテルを加えて油溶性の不純物を抽出除去した。この操作を3回行い、水相側を蒸発乾固して、炭素数18の内部オレフィンスルホン酸カリウム塩(IOS)を得た。
なお、表中の(D)成分の添加量は、酸型に換算した値を記載した。
【0075】
<(E)成分>
・過炭酸ナトリウム:富士フイルム和光純薬(株)製
・過硫酸ナトリウム:ペルオキソ二硫酸ナトリウム、富士フイルム和光純薬(株)製
【0076】
(1)土壌の洗浄試験
(1-1)実汚染土壌
バックホウ(油圧ショベル)で油汚染土壌を採取し、ステンレスのふるいを用いて、2mm以上の礫分をふるいで除去した土壌〔以下、実汚染土壌という〕を使用した。
実汚染土壌の粒度分布は、300μm以下の粒子が70%以上であり、実汚染土壌の油汚染は、実汚染土壌1kgあたりの全石油系炭化水素(TotalPetroleum Hydrocarbon:以下、TPHという)が、5200mg/kgであった。
実汚染土壌の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置「LA-950」(株式会社堀場製作所製)で測定し、実汚染土壌におけるTPHは、重量法で測定した。
【0077】
(1-2)TPHの測定(重量法)
1.実汚染土壌を60℃恒温槽に24時間入れ、実汚染土壌を乾燥した。
2.乾燥した土壌を100mlスクリュー管に20.0g計量し、更に無水硫酸ナトリウムを約20g添加して振とうした。
3.更に、前記スクリュー管に、50mlのジクロロメタンを添加し、ペンシルミキサーで1分間撹拌し、60分静置した。
4.静置後の上澄液を50mlスクリュー管に移した後、20℃、窒素ブロー下でジクロロメタンを揮発させた。
5.更に3、4の操作を繰り返した。
6.揮発後の50mlスクリュー管に20mlのn-ヘキサンを添加し、スクリュー管内の油をn-ヘキサンに溶解後、このn-ヘキサンを0.8μmのフィルター(ADVANTEC製DISMIC25CS080AN)でろ過し、ろ液を精秤した30mlスクリュー管に移した。
7.20℃、窒素ブロー下でn-ヘキサンを揮発後、40℃乾燥器で2時間乾燥し、抽出した油が残った30mlスクリュー管を精秤した。
8.この定量結果を実汚染土壌20gに含まれる油の量として、実汚染土壌に残存する油の量(全石油系炭化水素:Total Petroleum Hydrocarbon:TPH(mg/kg))を算出した。
【0078】
(1-3)団粒化
実汚染土壌に、乾燥粘土(スミクレー:住友大阪セメント製)を実汚染土壌/乾燥粘土=90/10の質量比で混練し、2時間静置した。
静置後、実汚染土壌と乾燥粘土の混合物をステンレスバットに移し、15分間、上下左右に振動を加え、3~10mm程度に団粒化した実汚染土壌を下記(1-4)の洗浄試験に供した。
なお、団粒化後の実汚染土壌のTPHを重量法により測定した。このTPHの測定は、上記(1-2)と同様の方法で測定した。団粒化後の実汚染土壌のTPHは、4200mg/kgであった。
【0079】
(1-4)洗浄性の評価
表1の各成分を水80gに対しての添加量が表1の濃度となるように計量し、残部を水で80gにした洗浄液を用意し、予め団粒化した実汚染土壌80gを計量した500mlポリカップに、洗浄液を添加後、薬さじにて1分間撹拌洗浄した。撹拌後、60分静置し、上澄液を抜き取った。
次にすすぎ工程として、水60gを添加し、薬さじにて1分間撹拌、撹拌後60分静置し、上澄液を抜き取った。更に水60gを添加し、薬さじにて1分間撹拌、撹拌後60分静置し、上澄液を抜き取った。
上澄液を抜き取り後の実汚染土壌を別のガラス容器に移し、乾燥器で60℃の条件で、24時間乾燥した後、乾燥後の汚染土壌を100mlスクリュー管に20g精秤し、上記(1-2)と同様に、ジクロロメタンで抽出し、重量法で洗浄後の土壌に残存するTPHを算出した。
洗浄後の土壌おけるTPHの値が小さい実施例ほど、土壌の洗浄効果が高い土壌の洗浄方法(土壌用洗浄剤組成物を用いた洗浄方法)である。
【0080】
【表1】