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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174455
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】超音波測定装置、超音波測定方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092287
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 健
(72)【発明者】
【氏名】安藤 健士
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 洋一
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 典子
(72)【発明者】
【氏名】片岡 朋宏
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD01
4C601DD06
4C601DD14
4C601EE09
4C601EE13
4C601FF01
4C601GB04
4C601GB09
4C601GB14
4C601GB20
4C601GB33
4C601GB34
4C601GB35
4C601GC03
4C601LL26
(57)【要約】
【課題】測定対象の動きによる影響を抑制して正確な計測を可能とする。
【解決手段】超音波測定装置が、内部に音響インピーダンスの差が存在する界面を有する測定対象に向けて超音波を送出するとともに、測定対象に送出した超音波が界面で垂直に反射した垂直反射波を受信する放射検出面を有する超音波放射検出部を有し、超音波放射検出部が、超音波を放射状に送出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に音響インピーダンスの差が存在する界面を有する測定対象に向けて超音波を送出するとともに、前記測定対象に送出した前記超音波が前記界面で垂直に反射した垂直反射波を受信する放射検出面を有する超音波放射検出部を有し、
前記超音波放射検出部が、前記超音波を放射状に送出する、
ことを特徴とする超音波測定装置。
【請求項2】
前記界面は、略円筒形状であり、
前記放射検出面は、少なくとも前記界面の軸線に沿った方向に湾曲する、
ことを特徴とする請求項1記載の超音波測定装置。
【請求項3】
前記超音波放射検出部は、円筒面の一部である曲面形状の前記放射検出面を有する、
ことを特徴とする請求項2記載の超音波測定装置。
【請求項4】
前記超音波放射検出部は、球面の一部である曲面形状の前記放射検出面を有する、
ことを特徴とする請求項2記載の超音波測定装置。
【請求項5】
前記超音波放射検出部は、前記超音波を送出および受信する素子部と、
放射状となる前記超音波を前記界面に向けて送出し、かつ、受信した前記垂直反射波を前記素子部へと送る音響レンズ部と、
を有する、
ことを特徴とする請求項1記載の超音波測定装置。
【請求項6】
前記界面は、略円筒形状であり、
前記音響レンズ部は、前記放射検出面を有し、
前記放射検出面は、少なくとも前記界面の軸線に沿った方向に湾曲する、
ことを特徴とする請求項5記載の超音波測定装置。
【請求項7】
前記放射検出面は、円筒面の一部である曲面形状である、
ことを特徴とする請求項6記載の超音波測定装置。
【請求項8】
前記放射検出面は、球面の一部である曲面形状である、
ことを特徴とする請求項6記載の超音波測定装置。
【請求項9】
前記素子部は、平面状の放射検出素子面を有し、
前記音響レンズ部は、前記放射検出素子面に接触する、
ことを特徴とする請求項5記載の超音波測定装置。
【請求項10】
前記素子部は、単一の素子からなる、
ことを特徴とする請求項5記載の超音波測定装置。
【請求項11】
前記素子部の音響インピーダンスは、前記音響レンズ部の音響インピーダンスより大きく、
前記音響レンズ部の音響インピーダンスは、前記界面の両側に位置する前記測定対象の音響インピーダンスより大きい、
ことを特徴とする請求項5記載の超音波測定装置。
【請求項12】
前記超音波放射検出部は、前記超音波を送出および受信する複数の素子部を有する、
ことを特徴とする請求項1記載の超音波測定装置。
【請求項13】
超音波放射検出部により、内部に音響インピーダンスの差が存在する界面を有する測定対象に対して超音波を送出するとともに、送出した前記超音波が前記界面で垂直に反射した垂直反射波を受信して、前記超音波放射検出部から前記界面までの距離を求める際に、
前記超音波放射検出部が、前記超音波を放射状に送出する、
ことを特徴とする超音波測定方法。
【請求項14】
前記界面は、略円筒形状であり、
前記超音波を、少なくとも前記界面の軸線に沿った方向に放射状に拡げて送出する、
ことを特徴とする請求項13記載の超音波測定方法。
【請求項15】
前記超音波放射検出部が、前記垂直反射波を放射検出面で受信するとともに、
前記放射検出面から前記界面までの距離を求める、
ことを特徴とする請求項14記載の超音波測定方法。
【請求項16】
前記放射検出面への前記垂直反射波の到達時間差によって、円筒状の前記界面のうち前記放射検出面から表面側の前記界面までの距離と、前記放射検出面から深部側の前記界面までの距離と、の差に基づいて、前記界面の径寸法を求める、
ことを特徴とする請求項15記載の超音波測定方法。
【請求項17】
前記超音波放射検出部は、超音波を送出および受信する素子部と、
放射状となる前記超音波を前記界面に向けて送出し、かつ、受信した前記垂直反射波を前記素子部へと送る音響レンズ部と、
を有し、
前記素子部の音響インピーダンスは、前記音響レンズ部の音響インピーダンスより大きく、
前記音響レンズ部の音響インピーダンスは、前記界面の両側に位置する前記測定対象の音響インピーダンスより大きい、
ことを特徴とする請求項15記載の超音波測定方法。
【請求項18】
前記超音波を、前記放射検出面から円筒面の一部である曲面形状で放射状に拡げて送出する、
ことを特徴とする請求項17記載の超音波測定方法。
【請求項19】
前記超音波を、前記放射検出面から球面の一部である曲面形状で放射状に拡げて送出する、
ことを特徴とする請求項17記載の超音波測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波測定装置、超音波測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の血圧を非侵襲に計測する手法として、超音波を用いて被検者の血管の血管径を計測し、血管径から推定的に血圧を求める技術が知られている。例えば、特許文献1には、2つの超音波プローブを用いた例が記載される。また、特許文献2には、複数の超音波素子11を配列して備えた二次元アレイの超音波ユニットを用いた例が記載される。また、本願発明者も特許文献3を既に出願している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6692026号公報
【特許文献2】特開2018-102589号公報
【特許文献3】特開2020-089605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
もともと、超音波による血管径の測定では、測定対象者の体動による影響を無視し得ないため、正確な測定がおこなえないという問題があった。つまり、体動により安定した計測が難しく、体動に対するロバスト性不足がセンサ実用化を阻む最大の要因であった。
これに対応して従来の技術では、構成が複雑で部品点数が多くなるため、装置が大型化し、製造コストが増大するという問題があった。
【0005】
さらに、近年の健康志向に基づき、常時装着が可能な超音波測定装置が求められている。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
1.簡単な構成で正確な超音波測定を可能とすること。
2.測定対象者の体動による影響を抑制して超音波測定を可能とすること。
3.簡単な構成で小型化を図ること。
4.常時装着を可能とすること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、超音波による血管径の測定が正確にできていない状態を以下のように検証し、その理由を推定した。
【0008】
超音波による血管径の測定では、測定対象者の生体表面から生体深部に向けて超音波を送出し、送出した超音波が生体内部の血管壁面から反射した超音波の反射波を取得して、体表面側の血管壁面からの反射波と体深部側の血管壁面からの反射波との到達時間差を計測している。
【0009】
そして、この反射波の到達時間差に基づいて、体表面側の血管壁面までの距離と、体深部側の血管壁面までの距離と、の差を求めて、血管径値を算出している。
超音波の送出・照射および反射波の検出には、圧電素子を用いることがおこなわれている。この場合、超音波を送出する素子の面と、反射波を受け取る素子の面とは、同じ放射検出面である。
【0010】
反射波の検出信号が小さくなると、S/N比が小さくなりノイズに埋もれてしまう。このため、正確な到達時間差の計測ができなくなり、結果的に血管径の算出が正確にはできなくなってしまう。
【0011】
反射波が小さくなる要因としては、測定対象者の体動による検出部分と血管との位置関係の変化が挙げられる。
超音波を送出し反射波を受け取る放射検出面と、超音波を反射する血管壁とが平行な位置関係である場合には、計測対象である血管壁から垂直に反射された垂直反射波が検出面に向かって反射される。垂直反射波は、充分な強度で放射検出面に入射するため、充分な強度の検出信号を取得することができる。
また、反射波の受信タイミングがずれることがない。
【0012】
これに対して、超音波を反射する血管壁と放射検出面とが平行ではない位置関係である場合には、反射波が放射検出面に到達しない場合が生じる。このため、反射波の受信ができない。あるいは、反射波の受信ができた場合でも、血管壁に反射した反射波が放射検出面に戻るまでの距離が異なるため、反射波の受信タイミングがずれる。
【0013】
つまり、血管壁に反射して放射検出面に戻るまでの距離が異なると、受信タイミングがずれることで、足し合わせの影響で反射波の強度が落ちてしまう。このため、充分な強度の反射波を放射検出面で受信することができなくなるという問題を発生していると考えた。
【0014】
ここで、体動による放射検出面と血管壁との位置変化について考察した。
【0015】
まず、放射検出面と血管壁との平行状態が維持されて、計測対象である血管の径方向で表皮に沿って放射検出面が移動する場合について、検討する。
計測対象である血管の径方向に表皮に沿って放射検出面が移動した場合には、血管の断面が円形のように一周する形状である。このため、放射検出面と平行な部分が存在しており、血管の軸線とみなせる中心位置付近を通り放射検出面まで戻ってくる反射波、つまり、垂直反射波は、検出信号を出力可能な程度の強度を維持することができる。
【0016】
次いで、表皮に対する放射検出面の位置は変化せず計測対象である血管の径方向に放射検出面が傾斜する場合を検討する。
この場合も上述した状態と同様に、表皮に対する放射検出面の位置は変化せず計測対象である血管の径方向に放射検出面が傾斜する場合にも、血管の断面が円形のように一周する形状であるため、放射検出面と平行な部分が存在する。血管の軸線とみなせる中心位置付近を通り放射検出面まで戻ってくる反射波、つまり、垂直反射波は減少するとはいえ、検出信号を出力可能な程度の強度を維持することができる。
したがって、体動による血管の径方向に対する位置変化では、垂直反射波の検出は可能であり、血管径の不正確性に対する寄与は少ないと考えられる。
【0017】
これに対し、放射検出面と血管壁との平行状態が維持されて、計測対象である血管の軸線方向に表皮に沿って放射検出面が移動した場合、血管の軸線付近を通り放射検出面まで戻ってくる反射波は、検出信号を出力可能な程度の強度を維持することができる。
しかし、多くの場合、体表面と血管の軸線とは平行な位置関係を持続してはいない。つまり、計測対象である血管の軸線方向に表皮に沿って放射検出面が移動した場合には、放射検出面と血管壁とが血管の軸線方向に傾斜することになる。
ここで、血管の軸線方向とは、おおまかに血流に沿った方向を意味している。
【0018】
次いで、表皮に対する放射検出面の位置は変化せず計測対象である血管の軸線方向に放射検出面が傾斜する場合を検討する。
血管は、軸線方向では一周する形状ではないため、超音波を反射する血管壁と放射検出面とが平行ではない位置関係となり、血管の軸線付近を通り放射検出面まで戻ってくる垂直反射波はなくなってしまう。つまり、放射検出面が、垂直反射波を受信することができない。
あるいは、計測対象である血管の軸線方向に放射検出面が傾斜する場合には、超音波を反射する血管壁と放射検出面とが平行ではない位置関係であるため、放射検出面で受信できた反射波は、その位相がずれてしまい、結果的に正確な計測ができなくなる。
【0019】
このような状態を鑑みて、本願発明者らは、計測対象である血管の軸線方向に放射検出面が傾斜する状態に対応して、垂直反射波を選択的に受信することを可能とし、正確な計測が可能な超音波測定装置、超音波測定方法を提供する。
【0020】
(1)本発明の一態様にかかる超音波測定装置は、
内部に音響インピーダンスの差が存在する界面を有する測定対象に向けて超音波を送出するとともに、前記測定対象に送出した前記超音波が前記界面で垂直に反射した垂直反射波を受信する放射検出面を有する超音波放射検出部を有し、
前記超音波放射検出部が、前記超音波を放射状に送出する、
ことを特徴とする。
(2)本発明の超音波測定装置は、上記(1)において、
前記界面は、略円筒形状であり、
前記放射検出面は、少なくとも前記界面の軸線に沿った方向に湾曲する、
ことができる。
(3)本発明の超音波測定装置は、上記(2)において、
前記超音波放射検出部は、円筒面の一部である曲面形状の前記放射検出面を有する、
ことができる。
(4)本発明の超音波測定装置は、上記(2)において、
前記超音波放射検出部は、球面の一部である曲面形状の前記放射検出面を有する、
ことができる。
(5)本発明の超音波測定装置は、上記(1)において、
前記超音波放射検出部は、前記超音波を送出および受信する素子部と、
放射状となる前記超音波を前記界面に向けて送出し、かつ、受信した前記垂直反射波を前記素子部へと送る音響レンズ部と、
を有する、
ことができる。
(6)本発明の超音波測定装置は、上記(5)において、
前記界面は、略円筒形状であり、
前記音響レンズ部は、前記放射検出面を有し、
前記放射検出面は、少なくとも前記界面の軸線に沿った方向に湾曲する、
ことができる。
(7)本発明の超音波測定装置は、上記(6)において、
前記放射検出面は、円筒面の一部である曲面形状である、
ことができる。
(8)本発明の超音波測定装置は、上記(6)において、
前記放射検出面は、球面の一部である曲面形状である、
ことができる。
(9)本発明の超音波測定装置は、上記(5)において、
前記素子部は、平面状の放射検出素子面を有し、
前記音響レンズ部は、前記放射検出素子面に接触する、
ことができる。
(10)本発明の超音波測定装置は、上記(5)において、
前記素子部は、単一の素子からなる、
ことができる。
(11)本発明の超音波測定装置は、上記(5)において、
前記素子部の音響インピーダンスは、前記音響レンズ部の音響インピーダンスより大きく、
前記音響レンズ部の音響インピーダンスは、前記界面の両側に位置する前記測定対象の音響インピーダンスより大きい、
ものとすることができる。
(12)本発明の超音波測定装置は、上記(1)において、
前記超音波放射検出部は、前記超音波を送出および受信する複数の素子部を有する、
ことができる。
(13)本発明の他の態様にかかる超音波測定方法は、
超音波放射検出部により、内部に音響インピーダンスの差が存在する界面を有する測定対象に対して超音波を送出するとともに、送出した前記超音波が前記界面で垂直に反射した垂直反射波を受信して、前記超音波放射検出部から前記界面までの距離を求める際に、
前記超音波放射検出部が、前記超音波を放射状に送出する、
ことができる。
(14)本発明の他の態様にかかる超音波測定方法は、
前記界面は、略円筒形状であり、
前記超音波を、少なくとも前記界面の軸線に沿った方向に放射状に拡げて送出する、
ことができる。
(15)本発明の他の態様にかかる超音波測定方法は、上記(14)において、
前記超音波放射検出部が、前記垂直反射波を放射検出面で受信するとともに、
前記放射検出面から前記界面までの距離を求める、
ことができる。
(16)本発明の他の態様にかかる超音波測定方法は、上記(15)において、
前記放射検出面への前記垂直反射波の到達時間差によって、円筒状の前記界面のうち前記放射検出面から表面側の前記界面までの距離と、前記放射検出面から深部側の前記界面までの距離と、の差に基づいて、前記界面の径寸法を求める、
ことができる。
(17)本発明の他の態様にかかる超音波測定方法は、上記(15)において、
前記超音波放射検出部は、超音波を送出および受信する素子部と、
放射状となる前記超音波を前記界面に向けて送出し、かつ、受信した前記垂直反射波を前記素子部へと送る音響レンズ部と、
を有し、
前記素子部の音響インピーダンスは、前記音響レンズ部の音響インピーダンスより大きく、
前記音響レンズ部の音響インピーダンスは、前記界面の両側に位置する前記測定対象の音響インピーダンスより大きい、
ものとすることができる。
(18)本発明の他の態様にかかる超音波測定方法は、上記(17)において、
前記超音波を、前記放射検出面から円筒面の一部である曲面形状で放射状に拡げて送出する、
ことができる。
(19)本発明の他の態様にかかる超音波測定方法は、上記(17)において、
前記超音波を、前記放射検出面から球面の一部である曲面形状で放射状に拡げて送出する、
ことができる。
【0021】
本発明の超音波測定装置は、上記(1)の構成を有することにより、界面で反射した垂直反射波により界面までの距離測定を正確におこなうことができる。このとき、放射状に超音波を送出することで、超音波放射検出部が界面に対して傾いている場合でも、垂直反射波を正確に受信することができる。これにより、界面までの距離測定の正確性を向上することができる。複数の素子部を同時に制御する必要がないため、簡単な構成で界面の形状測定をおこなうことが可能となる。
【0022】
本発明の超音波測定装置は、上記(2)の構成を有することにより、界面の軸線に沿った方向に拡がるように放射状の超音波を送出する。これにより、超音波放射検出部が界面の軸線方向に傾いている場合でも、垂直反射波を正確に受信することができる。円筒形状の界面までの距離測定の正確性を向上することができる。円筒状の界面において、表面側と深部側の界面までの距離を測定することで、円筒状の界面の径寸法を正確に測定することが容易に可能となる。
【0023】
本発明の超音波測定装置は、上記(3)の構成を有することにより、界面の軸線に沿った方向に拡がるように放射状の超音波を送出する。これにより、超音波放射検出部が界面の軸線方向に傾いている場合でも、円筒状の界面において、表面側と深部側の界面までの距離を測定することで、円筒状の界面の径寸法を正確に測定することが容易に可能となる。
【0024】
本発明の超音波測定装置は、上記(4)の構成を有することにより、界面の軸線にかかわらず、球面状に拡がるように放射状の超音波を送出する。これにより、超音波放射検出部が傾いている場合でも、超音波放射検出部が傾いている方向にかかわらず、円筒状の界面において、表面側と深部側の界面までの距離を測定することで、円筒状の界面の径寸法を正確に測定することが容易に可能となる。
【0025】
本発明の超音波測定装置は、上記(5)の構成を有することにより、素子部から送出した超音波を音響レンズ部によって拡げて測定対象に対して送出し、界面から反射した垂直反射波を受信して音響レンズ部によって素子部に位相差なく戻すことができる。これにより、超音波放射検出部が界面に対して傾いている場合でも、垂直反射波を正確に受信することができる。界面までの距離測定の正確性を向上することができる。
【0026】
本発明の超音波測定装置は、上記(6)の構成を有することにより、音響レンズ部によって放射検出面から超音波を測定対象である円筒形状の界面の軸線に沿った方向に拡げて送出し、界面から反射した垂直反射波を放射検出面によって受信して素子部に位相差なく戻すことができる。これにより、超音波放射検出部が界面に対して傾いている場合でも、垂直反射波を正確に受信することができる。界面までの距離測定の正確性を向上することができる。
【0027】
本発明の超音波測定装置は、上記(7)の構成を有することにより、放射検出面の円筒面の軸線に沿った方向に拡がるように放射状の超音波を送出する。これにより、超音波放射検出部が傾いている場合でも、軸線に沿った方向には、音響レンズ部によって放射検出面から超音波を拡げて測定対象に対して送出し、界面から反射した垂直反射波を放射検出面によって受信して素子部に位相差なく戻すことができる。これにより、超音波放射検出部が界面に対して傾いている場合でも、垂直反射波を正確に受信することができる。界面までの距離測定の正確性を向上することができる。
【0028】
本発明の超音波測定装置は、上記(8)の構成を有することにより、放射検出面の全周方向に拡がるように放射検出面から放射状の超音波を送出する。これにより、超音波放射検出部が傾いている場合でも、超音波放射検出部の傾いている方向にかかわらず、音響レンズ部によって放射検出面から超音波を拡げて測定対象に対して送出し、界面から反射した垂直反射波を放射検出面によって受信して素子部に位相差なく戻すことができる。これにより、超音波放射検出部が界面に対して傾いている場合でも、垂直反射波を正確に受信することができる。界面までの距離測定の正確性を向上することができる。
【0029】
本発明の超音波測定装置は、上記(9)の構成を有することにより、超音波を放射検出素子面から送出し、さらに、音響レンズ部によって超音波を拡げて測定対象に対して送出する。また、測定対象である界面から反射した超音波を音響レンズ部によって受信し、さらに、音響レンズ部によって超音波を放射検出素子面へと戻して受信する。これにより、超音波放射検出部が界面に対して傾いている場合でも、垂直反射波を正確に受信することができる。界面までの距離測定の正確性を向上することができる。
【0030】
本発明の超音波測定装置は、上記(10)の構成を有することにより、複数の素子部を同時に制御する必要がないため、簡単な構成で界面の形状測定をおこなうことが可能となる。界面までの距離測定の正確性を向上することができる。
【0031】
本発明の超音波測定装置は、上記(11)の構成を有することにより、界面の形状測定の正確性を向上することができる。
【0032】
本発明の超音波測定装置は、上記(12)の構成を有することにより、放射状となる超音波を界面に向けて送出し、かつ、垂直反射波を素子部で受信することができる。これにより、超音波放射検出部が界面に対して傾いている場合でも、垂直反射波を正確に受信することができる。界面までの距離測定の正確性を向上することができる。
【0033】
本発明の超音波測定方法は、上記(13)の構成を有することにより、超音波放射検出部が界面に対して傾いている場合でも、超音波を放射状に送出するとともに、垂直反射波を正確に受信することができる。界面までの距離測定の正確性を向上することができる。
【0034】
本発明の超音波測定方法は、上記(14)の構成を有することにより、円筒形状の軸線に沿った方向に拡がるように放射状の超音波を送出する。これにより、超音波放射検出部が界面の軸線方向に傾いている場合でも、垂直反射波を正確に受信することができる。円筒形状の界面までの距離測定の正確性を向上することができる。円筒状の界面において、表面側と深部側の界面までの距離を測定することで、円筒状の界面の径寸法を正確に測定することが容易に可能となる。
【0035】
本発明の超音波測定方法は、上記(15)の構成を有することにより、超音波を放射検出面で受信することで、放射状に送出した超音波の反射波のうち、界面で垂直に反射した垂直反射波の受信正確性を向上することができる。これにより、界面までの距離測定の正確性を向上することができる。
【0036】
本発明の超音波測定方法は、上記(16)の構成を有することにより、超音波放射検出部が界面に対して傾いている場合でも、円筒状の界面の径寸法を正確に測定することが容易に可能となる。
【0037】
本発明の超音波測定方法は、上記(17)の構成を有することにより、界面の形状測定の正確性を向上することができる。
【0038】
本発明の超音波測定方法は、上記(18)の構成を有することにより、界面の軸線に沿った方向に拡がるように放射状の超音波を送出する。これにより、超音波放射検出部が界面の軸線方向に傾いている場合でも、円筒状の界面において、表面側と深部側の界面までの距離を測定することで、円筒状の界面の径寸法を正確に測定することが容易に可能となる。
【0039】
本発明の超音波測定方法は、上記(19)の構成を有することにより、界面の軸線にかかわらず、球面状に拡がるように放射状の超音波を送出する。これにより、超音波放射検出部が傾いている場合でも、超音波放射検出部が傾いている方向にかかわらず、円筒状の界面において、表面側と深部側の界面までの距離を測定することで、円筒状の界面の径寸法を正確に測定することが容易に可能となる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、簡単な構成で正確な血管径測定可能で、測定対象者の体動による影響を抑制して血管径測定を可能とし、簡単な構成で小型化でき、常時装着が可能な超音波測定装置、超音波測定方法を提供することができるという効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明に係る超音波測定装置、超音波測定方法の第1実施形態を示す模式図である。
図2】本発明に係る超音波測定装置、超音波測定方法の第1実施形態における反射波の測定データの時間変動を説明するグラフである。
図3】本発明に係る超音波測定装置、超音波測定方法の第1実施形態において測定した血管径と時間との関係を説明するグラフである。
図4】血管径測定装置の測定面と血管壁との位置が平行である場合における反射波を説明するもので、血管径方向断面を示す図である。
図5】血管径測定装置の測定面と血管壁との位置が平行である場合における反射波を説明するもので、血管の軸線方向断面を示す図である。
図6】血管径測定装置の測定面と血管壁との位置が、体動により平行でなくなった場合における反射波を説明するもので、血管径方向断面を示す図である。
図7】血管径測定装置の測定面と血管壁との位置が、体動により平行でなくなった場合における反射波を説明するもので、血管の軸線方向断面を示す図である。
図8】本発明に係る超音波測定装置、超音波測定方法の第1実施形態において、血管径測定装置の測定面と血管壁との位置が平行である場合における反射波を説明するもので、血管の軸船方向断面を示す図である。
図9】本発明に係る超音波測定装置、超音波測定方法の第1実施形態において、血管径測定装置の測定面と血管壁との位置が、体動により平行でなくなった場合における反射波を説明するもので、血管の軸船方向断面を示す図である。
図10】本発明に係る超音波測定装置の第1実施形態の超音波放射検出部の製造方法を示す分解斜視図である。
図11】本発明に係る超音波測定装置の第1実施形態の超音波放射検出部の例を示す側面図である。
図12】本発明に係る超音波測定装置の第1実施形態の超音波放射検出部の例を示す側面図である。
図13】本発明に係る超音波測定装置の第2実施形態を示す模式構成図である。
図14】本発明に係る超音波測定装置の第2実施形態の例を示す斜視図である。
図15】本発明に係る超音波測定装置の第2実施形態の例を示す斜視図である。
図16】本発明に係る超音波測定装置の第3実施形態での測定を示す斜視図である。
図17】本発明に係る超音波測定装置の第3実施形態の例を示す斜視図である。
図18】本発明に係る超音波測定装置の第3実施形態の例を示す斜視図である。
図19】本発明に係る超音波測定装置の第4実施形態の超音波放射検出部を示す斜視図である。
図20】本発明に係る超音波測定装置の第4実施形態の超音波放射検出部を示す断面図である。
図21】本発明に係る超音波測定装置の第4実施形態の超音波放射検出部の製造工程を示す工程図である。
図22】本発明に係る超音波測定装置の第4実施形態の超音波放射検出部の製造工程を示す工程図である。
図23】本発明に係る超音波測定装置の第4実施形態の超音波放射検出部の製造工程を示す工程図である。
図24】本発明に係る超音波測定装置の第4実施形態の超音波放射検出部の製造工程を示す工程図である。
図25】本発明に係る超音波測定装置の第5実施形態の超音波放射検出部を示す模式断面図である。
図26】本発明に係る超音波測定装置の第6実施形態の超音波放射検出部を示す模式断面図である。
図27】本発明の実施例における血管軸線方向における反射波強度の角度依存を示すグラフである。
図28】本発明の実施例における血管軸線方向における血管径値の角度依存を示すグラフである。
図29】実施例における血管軸線方向における反射波強度の角度依存を示すグラフである。
図30】実施例における血管軸線方向における血管径値の角度依存を示すグラフである。
図31】本発明に係る超音波測定装置の第7実施形態の超音波放射検出部における送出状態を示す模式図である。
図32】本発明に係る超音波測定装置の第7実施形態の超音波放射検出部における受信状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明に係る超音波測定装置、超音波測定方法の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0043】
図1は、本実施形態における血管径測定装置、血管径測定方法を示す模式図である。図において、符号1は、超音波測定装置(血管径測定装置)である。
本実施形態に係る超音波測定装置(血管径測定装置)1は、超音波を照射して、音響インピーダンスの差がある界面を測定(計測)するものである。音響インピーダンスの差がある界面としては、生体軟部組織と血液との界面を挙げることができる。また、測定する音響インピーダンスの界面形状としては、略円柱状を想定している。
【0044】
本実施形態に係る血管径測定装置1は、図1に示すように、測定対象者Kの体表K1に装着され、動脈(血管)Dの血管径dを測定する。超音波放射検出部10と、制御部20と、を有する。
【0045】
超音波放射検出部10は、たとえば手首の内側の橈骨動脈など、体表K1に近く計測しやすい血管(動脈)Dに対して超音波が照射できるような位置に取り付けられている。超音波放射検出部10は血管径センサとして、数M~数十MHzのパルス信号やバースト信号を送信し、送信波及び受信波より血管Dの血管壁からの反射波の到達時間を計測する。
【0046】
超音波放射検出部10は、超音波の送受信を可能な構成を有する。
超音波放射検出部10としては、典型的には、PZTなどの圧電素子を用いることができる。超音波放射検出部10は、制御部20からパルス電圧Pvを印加されて放射検出面11から超音波を送出し、また、反射波を受信して出力電圧Evを制御部20へと出力する。
超音波放射検出部10による超音波の送出は、少なくとも一方向には周囲に拡がる放射状となる。この超音波送出方向に関しては後述する。
【0047】
制御部20は、超音波放射検出部10を駆動して超音波の送受信を可能とする。制御部20は、パルサーレシーバとして作用する。制御部20は、超音波放射検出部10から出力された信号により、必要な演算をおこなう演算部を有し、さらにその演算結果を出力可能である。さらに、演算結果のデータを記憶しておく記憶部や、外部への出力としての送信部、等を備えることもできる。なお、制御部20は、超音波放射検出部10を駆動する電源部等を備えてもよい。
【0048】
超音波放射検出部10は、ケース2に収納される。ケース2には、制御部20が収納されてもよい。ケース2には、測定のために体表K1に接触させる位置に固形ゲル3を設けることができる。固形ゲル3は、たとえば、ポリウレタンゲル、アクリル系ゲルなどからなることができる。固形ゲル3は、体表K1に密着して、超音波放射検出部10での計測を安定させる。固形ゲル3は、測定に際して、音響インピーダンスが生体に近く、反射による超音波の減衰を防止する。固形ゲル3には、放射検出面11が接している。
【0049】
次に、血管径測定装置1による血管径の測定について説明する。
血管径測定装置1による測定では、体表K1に固形ゲル3が接触するように血管径測定装置1を装着する。このとき、体表K1に沿って血管Dが延びているので、血管Dは、体表K1に近接する位置の最外周の血管壁面D1、体表K1に近接する位置の内周の血管壁面D2、体表K1から離間した位置の内周の血管壁面D3、体表K1から離間した位置の最外周の血管壁面D4、の四つの界面が音響インピーダンスの変わり目であり照射された超音波を反射し得る。
【0050】
図2は、本実施形態の血管径測定装置、血管径測定方法における反射波の測定データの時間変動を説明するグラフである。図3は、本実施形態の血管径測定装置、血管径測定方法において測定した血管径と時間との関係を説明するグラフである。
図2に示すように、時刻T0で放射検出面11から超音波を発した。時刻T1で放射検出面11に最も近い血管壁面D1からの垂直反射波RU1が放射検出面11で受信される。さらに、時刻T2で次に放射検出面11に近い血管壁面D2からの垂直反射波RU2が放射検出面11で受信される。時刻T3で次に放射検出面11に近い血管壁面D3からの垂直反射波RU3が放射検出面11で受信される。時刻T4で放射検出面11から最も遠い血管壁面D4からの垂直反射波RU4が放射検出面11で受信される。
【0051】
図1に示すように、血管壁面D2と血管壁面D3とは、血管壁と血液との界面であるため、この距離が血流量に直接影響がある。このため、血管径dとして垂直反射波RU2と垂直反射波RU3との時間差、つまり、時刻T2と時刻T3との時間差を用いて、血管径dを算出する。血管径dの時間変動を図3に示す。図3に示すように、脈動が測定されていることがわかる。
【0052】
次に、放射検出面11の形状について説明する。
【0053】
図4図6は、血管径測定装置、血管径測定方法における反射波を説明するもので、血管径方向に沿った断面を示す説明図である。図5図7は、血管径測定装置、血管径測定方法における反射波を説明するもので、血管軸線方向に沿った断面を示す説明図である。
まず、図4図7に示すように、超音波放射検出部10が単一の素子からなり、かつ、平面状の放射検出面11を有する場合を考える。駆動された超音波放射検出部10では、放射検出面11から垂直に超音波が送出される。放射検出面11から送出された超音波はいずれも平行である。
放射検出面11から送出された超音波は、血管Dにより反射される。ここでは、たとえば、血管壁面D3での反射を例示する。
【0054】
超音波放射検出部10の測定面となる放射検出面11と血管壁面D3との位置が互いに平行である場合、反射された超音波は、図4図5に示すように、血管壁面D3で垂直方向に反射されて垂直反射波RU3となり、放射検出面11へと到達する。このとき、垂直反射波RU3は、送出時と位相が変化せずに放射検出面11へと到達する。また、放射検出面11で受信された垂直反射波RU3は、充分な強度を有している。
このため、受信した垂直反射波RU3によって、超音波放射検出部10から出力される出力信号は、図5の右のグラフに示すように、ノイズに埋もれることなく、受信タイミングがずれることがなく、血管径dを算出可能である強度を維持している。
【0055】
これに対し、測定対象者Kが体動した場合には、血管径測定装置1が血管Dに対して傾斜することがある。測定対象者Kの体動により、放射検出面11と血管壁面D3との位置が互いに平行な位置から傾斜してしまった場合を考える。
【0056】
図6に示すように、血管Dの径方向に沿う断面に沿った方向に血管径測定装置1が血管Dに対して傾斜した場合、血管径測定装置1が血管Dに対して平行移動した状態と見なすことができる。つまり、放射検出面11と血管壁面D3との位置が互いに平行な位置で受信していた垂直反射波RU3とは異なる位置であるが、放射検出面11と血管壁面D3とが互いに平行な面が存在する。このため、照射された超音波は、この位置の血管壁面D3で垂直方向に反射して、垂直反射波RU3となる。同時に、この位置の血管壁面D3で反射された垂直反射波RU3が放射検出面11へと到達する。
【0057】
したがって、放射検出面11の傾斜方向が、血管径方向に沿った方向のみである場合には、放射検出面11で受信された垂直反射波RU3は、充分な強度を有している。同時に、垂直反射波RU3は、送出時と位相が変化せずに放射検出面11へと到達する。
このため、受信した垂直反射波RU3によって、超音波放射検出部10から出力される出力信号は、図5の右に示したグラフと同様に、ノイズに埋もれることなく、血管径dを算出可能である強度を維持している。
【0058】
図7に示すように、血管Dの軸線方向に沿った方向に血管径測定装置1が血管Dに対して傾斜した場合、放射検出面11と血管壁面D3とが互いに平行な面が存在しない状態となる。つまり、放射検出面11と血管壁面D3とが互いに平行な状態でなくなると、垂直反射波RU3がなくなる。したがって、放射検出面11では、垂直反射波RU3が受信できない。
このため、超音波放射検出部10では、血管壁面D3および血管壁面D2の深度を計測することができなくなってしまう。
【0059】
放射検出面11に反射波が到達して反射波の受信ができた場合でも、血管壁面D3および血管壁面D2に反射した反射波が放射検出面11に戻るまでの距離が、傾斜方向に沿った反射面の位置に対応して異なるため、反射波の位相がずれる場合が生じる。
この場合、反射波が放射検出面11に戻るまでの距離が異なると、反射波の位相が揃っていない、すなわち、受信タイミングがずれることで、足し合わせの影響で反射波の強度が落ちてしまう。このため、充分な強度の反射波を放射検出面11で受信することができなくなるため、血管径dの測定には使用できない。
【0060】
このように、超音波放射検出部10が血管Dの軸線方向に傾斜しても、血管径dを計測可能とするために、本実施形態の血管径測定装置1では、血管Dの軸線方向に互いに異なる角度に傾斜した超音波を送出可能とするとともに、この互いに異なる角度で反射してきた反射波をいずれも受信可能とした放射検出面11を備えるという手段を採用した。
【0061】
図8図9は、本実施形態の血管径測定装置、血管径測定方法における反射波を説明するもので、血管軸線方向に沿った断面を示す説明図である。
具体的には、超音波放射検出部10は、図8に示すように、素子部13と、バッキング部14と、音響レンズ(音響レンズ部)15と、音響整合層16と、を有する。
【0062】
素子部13は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等からなる圧電性を有するセラミックスなどからなる圧電素子とされ、本実施形態においては、表裏面が平面である平板形状である。素子部13の一面には、バッキング部14が取り付けられる。素子部13の他面には、音響整合層16を介して音響レンズ15が取り付けられる。素子部13は、バッキング部14と音響整合層16とに挟まれている。
【0063】
音響整合層16は、素子部13と音響レンズ15との間に配置される。音響整合層16は、素子部13と測定対象(生体)との間で音響インピーダンスの違いがある場合に、それらの間の音響インピーダンス値を有する物質から形成される。音響整合層16によって、素子部13と測定対象(生体)との間における音響インピーダンスの差異がある場合でも、測定波である超音波の伝達効率の低下が抑制される。
音響インピーダンスは、超音波の伝わりの速さを示す値である。
【0064】
ここで、超音波放射検出部10における音響インピーダンスは、大きい順に、
素子部13>音響レンズ15>音響整合層16>血管壁(測定対象周辺部;生体軟部組織等)>血液(界面反射測定対象;水と同等)
となっている。
【0065】
素子部13の構成材として圧電セラミックスが例示できる。
音響レンズ15の構成材としてアクリル樹脂が例示できる。
音響レンズ15の構成材としてポリアセタールが例示できる。
音響レンズ15の構成材としてPET樹脂が例示できる。
音響レンズ15の構成材としてABS樹脂が例示できる。
音響整合層16の構成材としてPET樹脂が例示できる。
音響整合層16の構成材としてABS樹脂が例示できる。
音響整合層16の構成材として高密度ポリエチレンが例示できる。
【0066】
それぞれの材料における音響インピーダンス値の一例を以下に示す。
・圧電セラミックス ; 30×10-6~35×10-6[kg/msec]
・アクリル樹脂 ; 3×10-6~3.61×10-6[kg/msec]
・ポリアセタール ; 3.12×10-6~3.34×10-6[kg/msec]
・PET樹脂 ; 2.85×10-6~2.95×10-6[kg/msec]
・ABS樹脂 ; 2.21×10-6~2.28×10-6[kg/msec]
・高密度ポリエチレン ; 2.01×10-6~2.16×10-6[kg/msec]
・生体軟部組織(脂肪や筋肉など) ; 1.35×10-6~1.68×10-6[kg/msec]
・水 ; 1.5×10-6[kg/msec]
・血液 ; 1.60×10-6[kg/msec]
ここで、血液および生体軟部組織は、界面の両側に位置する測定対象に対応する。
【0067】
音響整合層16は、素子部13と一体に配置されるため、以下の説明では特に言及しない。
【0068】
バッキング部14は、素子部13をケース2等に固定する支持部として作用する。素子部13の取り付けられるバッキング部14は、超音波を吸収して余分な振動が他に向かうことを抑えるために形成される。バッキング部14は、所定の硬度・強度を有し、絶縁体である樹脂製、あるいは、金属製とされることができる。
【0069】
音響レンズ15は、所定の周波数の超音波が屈折するレンズとして作用する。音響レンズ15は、この周波数の超音波に対して所定の伝播速度を呈し、かつ、この周波数の超音波に対して透明性を呈する樹脂などから形成される。音響レンズ15は、たとえば、アクリル樹脂製等とすることができる。音響レンズ15は、音響レンズ部を構成する。音響レンズ部は、所定の周波数の超音波が屈折するレンズとして作用する。音響レンズ部は、超音波が屈折する作用を有していれば、レンズに限定されない。
【0070】
素子部13の取り付けられる音響レンズ15の一面は、平面状に形成される。音響レンズ15の他面は、中央部分が周縁部分よりも素子部13から離間するように湾曲した凸状をなす曲面として形成される。音響レンズ15の曲面は、放射検出面11を構成している。この場合、音響レンズ15は、周縁部分が中央部分よりも薄くなるように形成される。音響レンズ15は、中央部分が周縁部分よりも厚くなるように形成される。
【0071】
なお、音響レンズ15の他面は、周縁部分が中央部分よりも素子部13から離間するように湾曲した凹状をなす曲面として形成されることもできる。音響レンズ15の曲面は、放射検出面11を構成している。この場合、音響レンズ15は、中央部分が周縁部分よりも薄くなるように形成される。
【0072】
ここで、音響レンズ15が凹面を有する凹レンズの場合には、焦点が放射方向の外部になるが、サイズ/曲率半径が同じなら凸レンズと放射角度は同じになる。たとえば、音響レンズ15がアクリルから形成された場合など、音響レンズ15内での音速が体組織内の音速より速い場合、素子部の放射面から送信された超音波に対する凹面で曲げられた超音波の傾きは、凸レンズの場合と同じになる。
【0073】
これに対し、たとえば、音響レンズ15がシリコーンゴムから形成された場合など、音響レンズ15内での音速が体組織内の音速より遅い場合、素子部の放射面から送信された超音波に対して、凹面で曲げられた超音波の放射方向が逆向きに曲げられることなるが、レンズとしての効果は期待できる。
【0074】
なお、アクリルからなる凸レンズおよび凹レンズの場合放射角度±9°を得る場合、曲率半径R6mmとすることができる。アクリルからなる凸レンズおよび凹レンズの場合放射角度±16°を得る場合、曲率半径R3.6mmとすることができる。
なお、シリコーンゴムからなる凸レンズおよび凹レンズの場合放射角度±9°を得る場合、曲率半径R6.9mmとすることができる。シリコーンゴムからなる凸レンズおよび凹レンズの場合放射角度±16°を得る場合、曲率半径R4.4mmとすることができる。
【0075】
音響レンズ15の取り付けられる素子部13の一面は、放射検出素子面13aを構成している。
平面状である素子部13の放射検出素子面13aでは、この放射検出素子面13aから垂直な方向(法線方向)に超音波が送出される。
【0076】
平面状である素子部13の放射検出素子面13aから送出された超音波は、音響レンズ15の内部を透過し、曲面である音響レンズ15の放射検出面11から送出される。音響レンズ15の放射検出面11では、曲面である放射検出面11から放射状に超音波が送出される。
【0077】
つまり、放射検出面11から送出される超音波は、曲面である放射検出面11の中央部分では、放射検出素子面13aの法線方向に沿って放出される。
これに対して、曲面である放射検出面11の周縁部分では、放射検出素子面13aの法線方向に対して、音響レンズ15の厚みが減少する方向に傾斜して送出される。
【0078】
したがって、曲面である放射検出面11では、中央部分に比べて周縁部分から傾斜角度が大きくなるように超音波が放出される。
【0079】
本実施形態の放射検出面11は、少なくとも血管Dの軸線方向に沿った一方向に曲面をなしていれば、血管径dの計測が充分に可能である。したがって、本実施形態の放射検出面11は、一方向に曲率を有する形状として形成することができる。つまり、放射検出面11は、たとえば、円筒面の一部とされ、円筒の軸線に沿って両端を切断した形状に形成することができる。なお、放射検出面11は、上述した曲面をなす一方向に対して交差する方向に曲率を有するような曲面とすることもできる。このような、放射検出面11の曲面としては、球面を例示することができる。
【0080】
本実施形態の超音波放射検出部10は、図8に示すように、血管Dの軸線方向に傾斜しておらず、放射検出素子面13aと血管壁面D3とが互いに平行な状態では、放射状に送出された超音波が垂直反射波RU3として、放射検出面11から放射検出素子面13aへと戻る。したがって、放射検出面11および放射検出素子面13aでは、位相が変化しておらず、かつ、充分な強度を有する垂直反射波RU3を受信することができる。
【0081】
本実施形態の超音波放射検出部10は、図9に示すように、測定対象者Kの体動によって、血管Dの軸線方向に傾斜して、放射検出素子面13aと血管壁面D3とが互いに傾斜した状態でも、放射状に送出された超音波のうち、いずれかの方向に送出された超音波が垂直反射波RU3として、放射検出面11から放射検出素子面13aへと戻る。したがって、放射検出素子面13aと血管壁面D3とが互いに傾斜した状態でも、同様に、放射検出面11および放射検出素子面13aでは、位相が変化しておらず、かつ、充分な強度を有する垂直反射波RU3を受信することができる。
【0082】
図10は、本実施形態の血管径測定装置、血管径測定方法における超音波放射検出部の製造方法を示す分解斜視図である。
本実施形態の超音波放射検出部10は、図10に示すように、バッキング部14に固定された素子部13に対して、音響レンズ15を密着させて取り付ける。
超音波放射検出部10は、あらかじめ所定の曲率を有する曲面を形成した音響レンズ15と、バッキング部14に固定された素子部13と、を接着剤等で接着して組み立てることも可能である。また、バッキング部14に固定された素子部13を音響レンズ15に相当する空間を形成した所定の型に配置して、型内の空間にアクリル等の所定の樹脂を流し込むことで所定の曲率を有する曲面を形成した音響レンズ15を成型するとともに、同時に、素子部13と一体に形成することも可能である。
【0083】
図11図12は、本実施形態の血管径測定装置、血管径測定方法における超音波放射検出部における音響レンズの例を示す断面図および斜視図である。
本実施形態の超音波放射検出部10は、図11図12に示すように、超音波の送出範囲として、放射検出素子面13aの法線と為す角度を、図示する所定の送出角度範囲とすることができる。同時に、音響レンズ15の端部厚さ寸法、および、放射検出面11の曲率半径も図示している。これらは、測定対象である血管Dの種類、太さ、曲がり具合、体表からの深さ、体動のしやすさ、に対応した例である。
【0084】
本発明の血管径測定装置、血管径測定方法としては、この数値範囲に限定されるものではないが、実用上人体での測定をおこなう際に、好ましい範囲を記載している。
なお、本実施形態の超音波放射検出部10は、送出角度範囲を±9°とした場合、血管Dの軸線方向に対して放射検出素子面13aが約5°程度まで傾斜した状態でも測定可能となる。同様に、本実施形態の超音波放射検出部10は、送出角度範囲を±16°とした場合、血管Dの軸線方向に対して放射検出素子面13aが約8°程度まで傾斜した状態でも測定可能となる。
【0085】
測定対象とする血管Dとしては、体表K1に近い場所にある太い血管であり、アクセスが容易であることが好ましく、具体的には、橈骨動脈、頸動脈、鎖骨下動脈、それ以外の四肢の動脈、くるぶしの後ろの動脈等を挙げることができる。
【0086】
血管径dの時間変動幅に対して、1/20以下程度の分解能を持てば、血管径dからの脈拍計測に必要な距離分解能を呈することが可能である。上記の血管を測定対象とした場合、血管径dの時間変動幅が0.1mm程度であった場合には、本実施形態の超音波放射検出部10における距離分解能は、5μm程度に設定することが好ましい。
【0087】
素子部13における放射検出素子面13aの面積を小さくすると、取り扱いが容易であり、超音波放射検出部10としての重量も低減して軽量化、小型化が可能である。素子部13における放射検出素子面13aの面積を大きくすると測定可能範囲を大きくすることが可能である。放射検出素子面13aの大きさは、径寸法が2mm~20mm程度とすることができる。素子部13における放射検出素子面13aに対応した軸方向の大きさは、2mm~20mm程度とすることができる。
【0088】
本実施形態の血管径測定装置1では、超音波放射検出部10で計測した垂直反射波RUのデータを出力信号として、制御部20に出力する。制御部20では、血管径dを算出し、この血管径dの時間変動から演算した血圧、脈動のデータを出力する。
超音波放射検出部10は、曲面として形成された放射検出面11で放射状に超音波の送出・受信をおこなうことで、体動により超音波放射検出部10と血管Dとの相対位置が変化しても正確な計測をおこなって、正確な血圧、脈動のデータを継続して出力することが可能となる。したがって、血管径測定装置1を常時装着することで、体動の有無にかかわりなく、測定対象者Kの正確な血圧、脈動のデータを継続して取得することが可能となる。
【0089】
さらに、本実施形態においては、超音波を用いるため計測時に圧迫するなど測定対象者に苦痛を与えることがない、計測を意識することによる血管径や血圧変化の影響も受けることがない、という効果を奏することができる。
【0090】
以下、本発明に係る超音波測定装置、超音波測定方法の第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
図13は、本実施形態における血管径測定装置、血管径測定方法を示す模式構成図である。本実施形態において、上述した第1実施形態と異なるのは、制御部に関する点であり、これ以外の上述した第1実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0091】
本実施形態における血管径測定装置1は、図13に示すように、制御部20として、固形ゲル3および超音波放射検出部10が固定されるプリント回路板21と、プリント回路板21に設けられたドライバ回路部23と、プリント回路板21に設けられた演算処理回路部24と、プリント回路板21を介してドライバ回路部23および演算処理回路部24に接続されたバッテリとしての電源部22と、演算処理回路部24に接続されてデータが出力されるディスプレイとしての表示部25と、演算処理回路部24に接続されてデータが出力される無線モジュール部26と、を有する。
本実施形態における血管径測定装置1は、図13に示すように、固形ゲル3および超音波放射検出部10がケース2の裏面2aから露出するように配置される。ケース2の表面2bには、表示部25が配置される。
【0092】
本実施形態における血管径測定装置1は、電源部22を駆動電源として駆動電力を供給されたドライバ回路部23によって超音波放射検出部10を制御する。ドライバ回路部23によって制御された超音波放射検出部10は、超音波の送出受信をおこなって垂直反射波RUを測定する。超音波放射検出部10は、取得された垂直反射波RUの測定データを演算処理回路部24に出力する。超音波放射検出部10から出力された垂直反射波RUの測定データによって、演算処理回路部24が血管径dのデータを演算する。
【0093】
演算処理回路部24は、この血管径dの時間変動データから血圧等を演算する。演算処理回路部24は、血管径データ、血圧等を表示部25に出力する。表示部25はこの血管径データ、血圧等をディスプレイする。同時に、演算処理回路部24は、血管径データ、血圧等を無線モジュール部26に出力する。無線モジュール部26は、スマートフォンあるいは、医療機器等とされる記憶部27(後述)へと血管径データ、血圧等を送信する。
【0094】
演算処理回路部24は、血管径dの時間変動データから血圧等を演算する際に、諸処の演算処理を加えて補正することができる。
たとえば、制御部20として、図示しない加速度センサ等を備え、その出力から、血管径測定装置1を装着する測定対象者Kの運動状態を検知して、この運動状態から血管径データの補正処理をおこなうことができる。
【0095】
制御部20として、図示しない気圧センサ等を備え、その出力から、血管径測定装置1を装着する測定対象者Kまわりの雰囲気圧力を検知して、この雰囲気圧力から血管径データの補正処理をおこなうことができる。
【0096】
本実施形態における血管径測定装置1は、固形ゲル3および超音波放射検出部10が測定対象者Kの測定位置に固定されるように装着することで、血管径データの常時測定を可能とする。同時に、血管径測定装置1は、継続的に血管径データの表示部25での表示および記憶部27への常時送信を可能とする。
【0097】
図14は、本実施形態における血管径測定装置、血管径測定方法の他の例を示す模式斜視図である。
本実施形態における血管径測定装置1は、図14に示すように、測定対象者Kがケース2を装着するための固定部30として、手首バンド31を備えることができる。この場合、手首バンド31とケース2とは、固定部30を構成する。
【0098】
本実施形態の血管径測定装置1における他の例では、装着された血管径測定装置1において、手首バンド31が接続されているケース2の両端を結ぶ線が、橈骨動脈の血流に沿った方向、つまり血管Dの軸線方向とは交差している。超音波放射検出部10における放射検出面11は、手首バンド31が接続されていないケース2の両端を結ぶ線に沿って放射状に超音波を送出可能とすることができる。手首バンド31およびケース2に対して、超音波放射検出部10を回転し、検出対象である血管Dの延在する方向に放射検出面11の湾曲方向を調節可能な調節機構を備えることもできる。
【0099】
この例によれば、ケース2の裏面2aの固形ゲル3が、手首の橈骨動脈近傍となるように、血管径測定装置1を測定対象者Kが装着することができる。これにより、日常生活に支障を来さない状態で、血管径測定装置1を装着することが容易となるので、血管径データの常時取得を容易におこなうことができる。
【0100】
図15は、本実施形態における血管径測定装置、血管径測定方法の他の例を示す模式斜視図である。
【0101】
本実施形態の血管径測定装置1における他の例では、図15に示すように、記憶部27としてスマートフォンを利用する。記憶部27としてスマートフォンは、血管径測定装置1からの血管径データの継続的な送信および記憶を可能とする。
【0102】
この例によれば、測定対象者Kが血管径測定装置1を常時装着して、血管径データを無線モジュール部26から記憶部27に常時送信することで、継続的な血管径データの取得、および、記憶部27としてスマートフォンへの継続的な血管径データの記憶が可能となる。これにより、測定対象者K自身での累積された血管径データの確認、および、累積された血管径データの医療従事者等への提示を容易におこなうことができる。
【0103】
本実施形態においては、上述した実施形態と同等の効果を奏することができる。本実施形態においては、医療従事者のみならず、家族に異常を知らせる機能、サービス事業者への情報提供などが可能となるという効果を奏することができる。
【0104】
以下、本発明に係る超音波測定装置、超音波測定方法の第3実施形態を、図面に基づいて説明する。
図16は、本実施形態における血管径測定装置、血管径測定方法を示す斜視図である。本実施形態において、上述した第1,第2実施形態と異なるのは、固定部に関する点であり、これ以外の上述した第1,第2実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0105】
本実施形態の血管径測定装置1は、図16に示すように、ケース2がコイン程度の大きさである円盤状として形成される。血管径測定装置1は、制御部20として、外部にデータを送る配線部28を有する。血管径測定装置1では、ケース2に表示部25と無線モジュール部26とを備えていない。
【0106】
本実施形態では、ケース2の内部に、制御部20を収納しないこともできる。この場合、ケース2の内部で超音波放射検出部10に接続された配線部28をケース2の外部に引き出すとともに、制御部20等をケース2の外部の他の装置に収納して、超音波放射検出部10と制御部20とを配線部28によって接続することもできる。
【0107】
ケース2の内部に、電源部22、および、ドライバ回路部23のみを収納し、演算処理回路部24他をケース2の外部の他の装置に収納して、演算処理回路部24等を配線部28によって接続することもできる。
【0108】
本実施形態の血管径測定装置1によって血管径データを取得する際には、図16に示すように、測定対象である血管Dの近傍である体表K1にケース2の裏面2aを接触させるとともに、表面2bを指などによって体表K1に向けて若干押圧することで固定する。
【0109】
これにより、上述した実施形態と同様に、垂直反射波RUのデータを正確に取得することができる。ケース2の内部か外部かにかかわらず、血管径dのデータおよび、血圧推定値等を取得することができる。
【0110】
この例では、橈骨動脈によるデータ取得を例として図示しているが、頸動脈等からのデータ取得においても、ケース2をサージカルテープ等で貼り着けることで、血管径測定装置1を容易に測定位置となる体表K1に固定して正確な測定をおこなうことができる。これにより、救急搬送されて意識のない測定対象者Kなどでも血管径データを取得することが容易となる。血管径測定装置1としてコイン程度の大きさのケース2を有するため、取り回しを容易にして、作業性を向上することができる。
【0111】
図17は、本実施形態における血管径測定装置、血管径測定方法の他の例を示す斜視図である。
この例では、図17に示すように、コイン状のケース2がゴム等の伸縮性を有する伸縮バンド32の内周に設けられている。したがって、図15図16に示した例と同様に、手首に装着することが容易となる。伸縮バンド32は、図15図16に示した例と同様に、腕時計等のバンドでもよいし、単に伸縮性を有するネット包帯のような構成とすることもできる。なお、図では、配線部28を省略している。
【0112】
この例では、固定部30である伸縮バンド32に対して、張り直しの可能な両面テープ32a等によってケース2が貼り着けられている。血管径測定装置1を装着する際には、たとえば、手首に装着する場合の橈骨動脈の延在する方向に合わせてケース2を回転した後に、ケース2を伸縮バンド32に対して貼り直すことができる。これにより、計測精度を向上するように放射検出面11の湾曲方向を容易に調節することが可能となる。
さらに、ケース2の表面には、放射検出面11の湾曲方向を示す矢印2dを表示しておくこともできる。
【0113】
図18は、本実施形態における血管径測定装置、血管径測定方法の他の例を示す斜視図である。
この例では、図18に示すように、固定部30として、片面に粘着性を有する粘着剤が塗布された柔軟性を有するフィルム材33を有する。ケース2はフィルム材33の粘着面に貼り着けられる。この例でも、上記の例と同様にケース2はフィルム材33の粘着面に貼り直すことができる。
この例では、頸動脈や鎖骨下動脈におけるデータ取得に用いて好適である。
【0114】
本実施形態においては、上述した実施形態と同等の効果を奏することができる。本実施形態において、鎖骨下動脈や頸動脈を測定する場合は、バンドなどで血管径測定装置を固定することが困難であるがこれを解消できる、バンドなどの固定に比べて肌に密着して体動の影響で血管径測定装置がずれることも少ないという効果を奏することができる。
【0115】
以下、本発明に係る超音波測定装置、超音波測定方法の第4実施形態を、図面に基づいて説明する。
図19は、本実施形態における血管径測定装置、血管径測定方法を示す斜視図である。本実施形態において、上述した第1~第3実施形態と異なるのは、放射検出面の形成に関する点であり、これ以外の上述した第1~第3実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0116】
本実施形態における血管径測定装置1は、図19に示すように、音響レンズを備えておらず、素子部13そのものが湾曲して形成される。放射検出素子面13aが放射検出面11を形成する。放射検出素子面13aの曲率等は、図19に示す寸法とされることが好ましい。
【0117】
図20は、本実施形態における超音波放射検出部10を示す断面図である。
本実施形態における血管径測定装置1では、図20に示すように、素子部13が複数の素子13Aを有する。素子部13において、複数の素子13Aは、放射検出面11を形成するように湾曲して組み合わされた配置とされる。複数の素子13Aは、各放射検出素子面13aが放射検出面11を形成するように湾曲して組み合わされた配置とされる。素子部13において、複数の素子13Aの間には、エポキシ樹脂等からなる絶縁性のスペーサ部13fが配置される。素子部13である複数の素子13Aおよびスペーサ部13fは、湾曲した板状に形成される。
【0118】
湾曲した板状に形成された素子部13はバッキング部14の湾曲した凸部14dに固定される。湾曲した板状に形成された素子部13において、複数の素子13Aおよびスペーサ部13fの両面には、上部電極13gと下部電極13hとが形成される。凸部14dにおいて、上部電極13gと下部電極13hとは、素子部13である複数の素子13Aおよびスペーサ部13fを挟んでいる。
【0119】
上部電極13gと下部電極13hとは、素子部13である複数の素子13Aおよびスペーサ部13fの範囲を超えて、凸部14dのない周辺部14hまで形成される。周辺部14hにおいて、上部電極13gと下部電極13hとの間には、絶縁レイヤー13jが配置される。周辺部14hにおいて、上部電極13gと下部電極13hとは、絶縁レイヤー13jを挟んでいる。
上部電極13gと下部電極13hとは、図示しない位置において、制御部20にそれぞれ接続されている。
【0120】
本実施形態における超音波放射検出部10では、複数の素子13Aがそれぞれ放射検出面11に沿って超音波の送出および受信が可能なように、その結晶面が傾斜して配置される。素子部13では、複数の素子13Aが、素子部13の中央部分から周縁部分へと向かうに連れて、傾斜角度が大きくなるようにアレイ配置されている。複数の素子13Aにおける素子面は、それぞれが、アレイ配置された位置における放射検出面11に沿って傾斜するように配置されている。
本実施形態において、複数の素子13Aは、同時に超音波を送出する。
【0121】
本実施形態における超音波放射検出部10でも、上述した実施形態と同様に、放射状に超音波を送出し、また、位相の変化していない垂直反射波RUを充分な強度で受信することができる。
【0122】
次に、本実施形態における超音波放射検出部10の製造方法を説明する。
【0123】
図21図24は、本実施形態における超音波放射検出部10の製造方法を示す工程図である。
本実施形態における超音波放射検出部10の製造方法は、まず、図21(a)に示すように、PZT等の素子13Aとなる圧電材料13A0を所定の基板(シリコン基板)130S上に平面状に形成する。この場合、圧電材料13A0は、スパッタリング等の手法を用いて、シリコン基板130S上に形成する、または、別工程で形成してからシリコン基板130S上に設置する。
【0124】
次いで、図21(b)に示すように、シリコン基板130S上で圧電材料13A0における所定の領域を除去して、所定幅の分断された状態の圧電材料13A1とする。
【0125】
次いで、図22(c)に示すように、シリコン基板130S上で圧電材料13A1の間にスペーサとなるスペーサ樹脂13f1を充填する。スペーサ樹脂13f1としては、エポキシ等が用いられる。
【0126】
同様に、図21(b)とは直交する方向に圧電材料13A1およびスペーサ樹脂13f1を所定幅に除去し、さらに、図22(c)と同様に、除去された隙間にスペーサ樹脂13f1を充填する。これにより、図22(d)に示すように、平面が縦横に分断された状態の圧電材料からなる複数の素子13A2がその間をスペーサ樹脂13f2によって充填された平面状の前素子部13Aaを形成することができる。
この状態では、複数の素子13A2の素子面は、シリコン基板130Sの表面に沿って、いずれも同じ方向を向いた平面であるので、放射状に超音波を送出することはできない。
【0127】
次いで、図23(a)に示すように、湾曲した凸部14dと、その周囲で平面状の周辺部14hと、を有するバッキング部14を準備する。
【0128】
次いで、図23(b)に示すように、湾曲した凸部14dおよび周辺部14hを覆うように金属等の導電性を有する下部電極13hを形成する。下部電極13hは、バッキング部14の全面に形成した後、所定部分を残して不必要な部分を除去する。下部電極13hの形成は、スパッタリング、溶着等所定の手法を用いる。下部電極13hの除去は、エッチング等の手法を用いる。
【0129】
次いで、図23(c)に示すように、湾曲した凸部14dに対応する下部電極13hの表面に導電性接着剤13haを塗布しておく。
【0130】
次いで、図23(d)に示すように、凸部14dに対応する湾曲凹部131dを有するアルミニウム等からなるモールド131を準備する。湾曲凹部131dの開口には、この開口を閉塞するように平面状の前素子部13Aaを載置する。
【0131】
次いで、図24(e)に示すように、下部電極13h形成された凸部14dを平面状の前素子部13Aaとともに湾曲凹部131dの内部へと押し込んで押圧する。このとき、加圧、加熱処理することもできる。
平面状であった前素子部13Aaが湾曲凹部131dの内面に沿って湾曲して前素子部13Abとなる。前素子部13Abにおいて、それぞれの複数の素子13A2の面は、湾曲凹部131dの内面に沿って湾曲した位置となる。同時に、前素子部13Abにおいて、スペーサ樹脂13f2が変形してスペーサ部13fを形成する。
複数の素子13A2は、凸部14dおよび湾曲凹部131dに沿って傾斜するだけで、複数の素子13A2の圧電特性が平面状の場合と湾曲状の場合で変化することはない。したがって、複数の素子13A2において超音波を送出および受信する素子面は、凸部14dおよび湾曲凹部131dに沿って傾斜する。
【0132】
次いで、図24(f)に示すように、モールド131を除去する。
【0133】
次いで、図24(g)に示すように、周辺部14hに絶縁レイヤー13jを形成する。このとき、前素子部13Abに対応する領域には、絶縁レイヤー13jを形成しない。
【0134】
次いで、図24(h)に示すように、前素子部13Abおよび絶縁レイヤー13jに上部電極13gを積層し、所定の形状に成形して、素子部13をバッキング部14に形成する。これより、超音波放射検出部10を形成する。
【0135】
本実施形態における超音波放射検出部10は、音響レンズを用いないため、小型軽量化、薄型化することができる。
【0136】
本実施形態においては、上述した実施形態と同等の効果を奏することができる。本実施形態においては、さらに、音響レンズ界面での減衰が少なく、音響レンズを用いた場合と比較して反射波の受信強度が向上するという効果を奏することができる。
【0137】
以下、本発明に係る超音波測定装置、超音波測定方法の第5実施形態を、図面に基づいて説明する。
図25は、本実施形態における血管径測定装置、血管径測定方法を示す模式断面図である。本実施形態において、上述した第4実施形態と異なるのは、素子部に関する点であり、これ以外の上述した第4実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0138】
本実施形態における血管径測定装置1では、図25に示すように、素子部13が複数の素子13Bを有する。複数の素子13Bは、平面状の放射検出素子面13Baを有する。素子部13において、複数の素子13Bは、放射検出面11に対応する放射角度で超音波の送出が可能となるように傾斜している。なお、第4実施形態と異なり、複数の素子13Bは、傾斜したアレイ配置とされるだけで、互いの位置が放射検出面11に沿って湾曲した配置とされているわけではない。
【0139】
第4実施形態と異なり、複数の素子13Bの間には、エポキシ樹脂等からなる絶縁性のスペーサ部13fが配置されていない。複数の素子13Bは固形ゲル3に埋まるようにバッキング部14に固定される。
本実施形態の超音波放射検出部10においては、第4実施形態の素子13Aよりもサイズの大きな素子13Bを用いることができる。
本実施形態において、複数の素子13Bは、同時に超音波を送出する。
【0140】
本実施形態においては、上述した実施形態と同等の効果を奏することができる。本実施形態においては、血管壁と平行対面する素子は垂直反射波のみ受信することになり、それ以外の反射波の受信を防ぐことができる。その結果、S/N比が高く、血管径の検出が容易になるという効果を奏することができる。
【0141】
以下、本発明に係る超音波測定装置、超音波測定方法の第6実施形態を、図面に基づいて説明する。
図26は、本実施形態における血管径測定装置、血管径測定方法を示す模式断面図である。本実施形態において、上述した第5実施形態と異なるのは、素子部に関する点であり、これ以外の上述した第5実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0142】
本実施形態における血管径測定装置1では、図26に示すように、素子部13が複数の素子13Bを有する。複数の素子13Bは、平面状の放射検出素子面13Baを有する。素子部13において、複数の素子13Bは、放射検出素子面13Baが面一となるようにバッキング部14に固定される。本実施形態においては、物理的な放射検出面11に対応する面は形成されていない。
本実施形態においては、複数の素子13Bがディレイ駆動されて、素子部13として、放射検出面11に対応する放射角度で超音波の送出・受信が可能となるように傾斜している。
【0143】
本実施形態における複数の素子13Bに対するディレイ駆動は、具体的に、素子部13の中心に位置する素子13Bから周辺の素子13Bへと放射タイミングを順番に遅らせることで、放射状に超音波の送出が可能になる構成を有する。
【0144】
これにより、本実施形態における超音波放射検出部10でも、放射状に超音波を送出し、また、位相の変化していない垂直反射波RUを充分な強度で受信することができる。
【0145】
本実施形態においては、上述した実施形態と同等の効果を奏することができる。本実施形態においては、音響レンズ界面での減衰が少なく、音響レンズを用いた場合と比較して反射波の受信強度が向上するという効果を奏することができる。本実施形態においては、音響レンズがないため薄い構成が可能であるという効果を奏することができる。
【0146】
以下、本発明に係る超音波測定装置、超音波測定方法の第7実施形態を、図面に基づいて説明する。
図31は、本実施形態における血管径測定装置、血管径測定方法の送出状態を示す模式図である。図32は、本実施形態における血管径測定装置、血管径測定方法の受信状態を示す模式図である。
本実施形態において、上述した第1~6実施形態と異なるのは、音響レンズ部に関する点であり、これ以外の上述した各実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。なお、図31図32において、素子部13および音響レンズ部以外は、図示を省略する。
【0147】
本実施形態における血管径測定装置1では、図31図32に示すように、音響レンズ部としてリニアフレネルレンズ15F1を有する。
リニアフレネルレンズ15F1は、音響レンズ15の放射検出面11に対応した複数領域分割された形状のレンズ面を有する。それぞれのレンズ面は、音響レンズ15と同様に、所定の角度に超音波が屈折するように形成される。
本実施形態において、リニアフレネルレンズ15F1は、複数のレンズ面が音響レンズ部として、放射検出面11に対応する放射角度で超音波の送出・受信が可能となるように傾斜している。リニアフレネルレンズ15F1は、音響レンズ15に比べて、中心における厚みが小さく、外側における厚みが大きく形成できる。リニアフレネルレンズ15F1は、音響レンズ15に比べて、中心の厚みと外側の厚みとの差が小さくできる。
【0148】
本実施形態においては、上述した実施形態と同等の効果を奏することができる。本実施形態においては、リニアフレネルレンズ15F1を用いることにより、音響レンズ15に比べて、音響レンズ部における厚さの差を外側と中心との間で小さくすることができる。これにより、音響レンズ部において、外側と中心との超音波の位相差を小さくすることができる。したがって測定値の正確性および精密性を向上することができる。
また、素子部13の幅寸法に比べて小さい直径の曲率のレンズとしても使用可能である。
【0149】
さらに、本発明においては、上述した各実施形態における個々の構成を個別に選択して、それぞれ組み合わせて実施することも可能である。
【0150】
(A1)本発明の一態様にかかる血管径測定装置は、
生体表面から生体内部に向けて超音波を送出するとともに、送出した該超音波が前記生体内部の血管周面で垂直に反射した垂直反射波を受信する放射検出面を有する超音波放射検出部と、
前記放射検出面への前記垂直反射波の到達時間差により算出した前記放射検出面から体表面側の血管壁面までの距離と前記放射検出面から体深部側の血管壁面までの距離との差に基づいて、前記生体内部の血管径値を求め該血管径値を出力可能な制御部と、
を備え、
前記超音波放射検出部は、少なくとも一方向には周囲に拡がる放射状に前記超音波を送出する、
ことができる。
(A2)本発明の血管径測定装置は、上記(A1)において、
前記制御部は、前記血管径値から推定した血圧を出力する、
ことができる。
(A3)本発明の血管径測定装置は、上記(A1)において、
前記超音波放射検出部は、円筒面の一部である曲面形状の前記放射検出面を有する、
ことができる。
(A4)本発明の血管径測定装置は、上記(A1)において、
前記超音波放射検出部は、
平面状の放射検出素子面を有する素子部と、
前記素子部の放射検出面に接するとともに、円筒面の一部である曲面形状の前記放射検出面を有する音響レンズ部と、
を備える、
ことができる。
(A5)本発明の血管径測定装置は、上記(A1)において、
前記超音波放射検出部は、
円筒面の一部である曲面形状の前記放射検出面を有する素子部を備える、
ことができる。
(A6)本発明の血管径測定装置は、上記(A1)において、
前記超音波放射検出部は、平面状の放射検出素子面を有する素子部を複数有し、
複数の前記素子部は、少なくとも一方向には周囲に拡がる放射状に前記超音波を送出可能にそれぞれが互いに傾斜したアレイ配置される、
ことができる。
(A7)本発明の血管径測定装置は、上記(A1)において、
前記超音波放射検出部は、平面状の放射検出素子面を有する素子部を複数有し、
前記制御部は、複数の前記素子部を少なくとも一方向には周囲に拡がる放射状に前記超音波を送出可能にディレイ駆動する、
ことができる。
(A8)本発明の血管径測定装置は、上記(A1)において、
前記超音波放射検出部を、計測対象である血管付近の生体表面に固定可能な固定部を有する、
ことができる。
(A9)本発明の他の態様にかかる血管径測定方法は、
放射検出面により、生体表面から生体内部に向けて超音波を送出するとともに、送出した該超音波が前記生体内部の血管周面で垂直に反射した垂直反射波を受信して、
前記放射検出面への前記垂直反射波の到達時間差により算出した前記放射検出面から体表面側の血管壁面までの距離と前記放射検出面から体深部側の血管壁面までの距離との差に基づいて、前記生体内部の血管径値を求める際に、
前記放射検出面から、前記生体内部の血管に沿った方向に、周囲に拡がる放射状に前記超音波を送出する、
ことができる。
【0151】
本発明の血管径測定装置は、上記(A1)の構成を有することにより、超音波放射検出部における放射検出面と血管壁とが平行でない場合でも、超音波が放射状に送出されていることで、放射状に傾いた超音波のいずれかの方向で、血管壁で垂直に反射する垂直反射波が放射検出面へと入射する状態で計測をおこなうことができる。特に、放射検出面と血管の軸線方向が傾斜している場合でも、超音波が放射状に送出されていることで、放射状に傾いた超音波のいずれかの方向で、血管壁で垂直に反射する垂直反射波が放射検出面へと入射する状態で計測をおこなうことができる。
これにより、位相が変化しておらず、血管径の計測に用いることができる垂直反射波を放射検出面において充分な強度で検出することが可能となる。したがって、測定対象者の体動によって、放射検出面と血管壁とが平行でない位置になった場合であっても、放射検出面と血管壁とが平行な状態と同様に、放射検出面から体表面側の血管壁面までの距離と前記放射検出面から体深部側の血管壁面までの距離との差を正確に算出して、生体内部の血管径値を正確に求めてこれを出力可能な状態を維持することができる。
【0152】
本発明の血管径測定装置は、上記(A1)において、上記(A2)の構成を有することにより、血管径測定装置を常時装着することで、測定対象者の血圧、脈拍の変化を継続的に測定することが可能となる。
【0153】
本発明の血管径測定装置は、上記(A1)または(A2)において、上記(A3)の構成を有することにより、放射状に超音波を送出可能にスキャニングする機構を有することなく、放射検出面から血管の軸線方向に超音波を放射状に送出することができる。したがって、放射状に傾いた超音波のいずれかの方向で、血管壁で垂直に反射する垂直反射波を位相が変化していない状態を維持して放射検出面へと入射させて計測をおこなうことができる。
ここで、超音波放射検出部が素子部を備える場合には、素子部の放射検出素子面が、所定の曲面形状である放射検出面となるように、この放射検出素子面を形成することが必要である。
なお、曲面形状の放射検出面の曲率方向を血管の走査方向にあわせて、超音波放射検出部の向きを計測可能なように血管に沿わせる工程が必要である。
【0154】
本発明の血管径測定装置は、上記(A1)から(A3)のいずれかにおいて、上記(A4)の構成を有することにより、公知の平面状の放射検出素子面を有する圧電素子を素子部として、この素子部に一方向に所定の曲率で形成された放射検出面を有する音響レンズを接着することで、音響レンズの放射検出面から血管の軸線方向に超音波を放射状に送出することができる。したがって、簡単な構造で、正確な血管径値を出力可能な血管径測定装置を提供することが可能となる。しかも、音響レンズの曲率をあらかじめ設定すること、または、音響レンズの曲率を変更することで、放射検出面から送出する超音波の拡がる角度を制御あるいは変更することが容易に可能となる。
ここで、素子部と音響レンズとは、互いに接着すること、一体として形成すること、互いに密着して固定することが可能である。いずれの状態でも、支持部の放射検出素子面と音響レンズの一面とが密着することが必要である。
【0155】
本発明の血管径測定装置は、上記(A1)から(A3)のいずれかにおいて、上記(A5)の構成を有することにより、素子の放射検出素子面がそのまま放射検出面を形成する。同時に、放射検出面の円筒面を形成する円筒の軸線が生体表面に平行で血管と直交するように配置することで、血管の軸線に沿って放射検出面から血管壁へと異なる角度で超音波を送出することができる。また、この角度の異なる超音波のうち、血管壁から放射検出面へと垂直に反射して位相の変わらない垂直反射波が放射検出面へと到達する角度の波が存在する。したがって、充分大きなS/N比で垂直反射波を受信して、生体内部の血管径値を正確に求めてこれを出力可能な状態を維持することができる。
【0156】
本発明の血管径測定装置は、上記(A1)から(A3)のいずれかにおいて、上記(A6)の構成を有することにより、複数の素子の放射検出素子面がそのまま放射検出面を形成する。また、所定位置の素子の放射検出素子面を所定角度となるようにアレイ配置することで、超音波放射検出部として、放射検出面から血管の軸線方向に沿って超音波を放射状に送出することができる。したがって、正確な血管径値を出力可能な血管径測定装置を提供することが可能となる。
【0157】
本発明の血管径測定装置は、上記(A1)から(A3)のいずれかにおいて、上記(A7)の構成を有することにより、複数の素子の放射検出素子面がそのまま放射検出面を形成する。また、複数の素子をディレイ駆動して所定位置の素子から所定角度に傾斜した超音波を送出して血管の軸線方向に沿って超音波を放射状に送出することができる。したがって、正確な血管径値を出力可能な血管径測定装置を提供することが可能となる。
【0158】
本発明の血管径測定装置は、上記(A1)から(A7)のいずれかにおいて、上記(A8)の構成を有することにより、血管径測定装置を血管に対して正確な計測が可能な位置に維持することができる。これにより、血管径測定装置による正確な計測値の出力が継続的に可能となる。また、固定部によって血管径測定装置を常時装着することが容易に可能となる。血管径測定装置を常時装着することで、測定対象者の血圧、脈拍の変化を継続的に測定することが可能となる。固定部によって、血管径測定装置に常時装着しても正確な計測値の出力が継続的に可能となる。
【0159】
本発明の血管径測定方法は、上記(A9)の構成を有することにより、超音波による血管径の計測をおこなう装置の放射検出面と血管壁とが平行でない場合でも、超音波を放射状に送出することで、放射状に傾いた超音波のいずれかの方向で、血管壁で垂直に反射する垂直反射波を放射検出面へと入射させた状態での計測をおこなうことができる。特に、放射検出面と血管の軸線方向が傾斜している場合でも、超音波を放射状に送出することで、放射状に傾いた超音波のいずれかの方向で、血管壁で垂直に反射する垂直反射波を放射検出面へと入射させた状態で計測をおこなうことができる。
本発明の血管径測定方法では、位相が変化しておらず、血管径の計測に用いることができる垂直反射波を放射検出面において充分な強度で検出することが可能となる。したがって、測定対象者の体動によって、放射検出面と血管壁とが平行でない位置になった場合であっても、放射検出面と血管壁とが平行な状態と同様に、放射検出面から体表面側の血管壁面までの距離と前記放射検出面から体深部側の血管壁面までの距離との差を正確に算出して、生体内部の血管径値を正確に求めてこれを出力可能な状態を維持することができる。
ここで、上記(A1)から(A8)のいずれかの血管径測定装置を用いることができる。
【0160】
(B1)本発明の一態様にかかる超音波測定装置は、
内部に音響インピーダンスの差により形成された界面を有する測定対象に向けて超音波を送出するとともに、前記測定対象に送出した前記超音波が前記界面で垂直に反射した垂直反射波を受信する放射検出面を有する超音波放射検出部が、
超音波を送出および受信する単一の素子部と、
前記素子部から放出された超音波を少なくとも一方向には周囲に拡がる放射状に送出するとともに、前記垂直反射波を前記素子部へと送る音響レンズ部と、
を有する、
ことを特徴とする。
(B2)本発明の超音波測定装置は、上記(B1)において、
前記素子部の音響インピーダンスは、前記音響レンズ部の音響インピーダンスより大きく、
前記音響レンズ部の音響インピーダンスは、前記界面の両側に位置する前記測定対象の音響インピーダンスより大きい、
ものとすることができる。
(B3)本発明の超音波測定装置は、上記(B1)において、
前記界面は、略円筒状であり、
前記放射検出面は、少なくとも前記界面の軸線に沿った方向に湾曲する、
ことができる。
(B4)本発明の超音波測定装置は、上記(B1)において、
前記超音波放射検出部は、円筒面の一部である曲面形状の前記放射検出面を有する、
ことができる。
(B5)本発明の超音波測定装置は、上記(B1)において、
前記素子部は、平面状の放射検出素子面を有し、
前記音響レンズ部は、前記素子部の放射検出素子面に接触するとともに、円筒面の一部である曲面形状の前記放射検出面を有する、
ことができる。
(B6)本発明の他の態様にかかる超音波測定方法は、
放射検出面により、音響インピーダンスの差により内部に円筒状の界面が形成される測定対象に対して、前記測定対象の表面から内部に向けて超音波を送出するとともに、送出した該超音波が前記界面で垂直に反射した垂直反射波を受信して、
前記放射検出面への前記垂直反射波の到達時間差により算出した、円筒状の前記界面のうち前記放射検出面から表面側の前記界面までの距離と、前記放射検出面から深部側の前記界面までの距離と、の差に基づいて、前記測定対象の内部の前記界面の径寸法を求める際に、
前記放射検出面から、円筒状の前記界面の軸線に沿った方向に、周囲に拡がる放射状に前記超音波を送出する、
ことができる。
【0161】
本発明の超音波測定装置は、上記(B1)の構成を有することにより、界面までの距離測定の正確性を向上することができる。複数の素子部を同時に制御する必要がないため、簡単な構成で界面の形状測定をおこなうことが可能となる。
【0162】
本発明の超音波測定装置は、上記(B2)の構成を有することにより、界面までの距離測定の正確性を向上することができる。
【0163】
本発明の超音波測定装置は、上記(B3)の構成を有することにより、円筒状の界面において、表面側と深部側の界面までの距離を測定することで、円筒状の界面の径寸法を正確に測定することが容易に可能となる。
【0164】
本発明の超音波測定装置は、上記(B4)の構成を有することにより、円筒状の界面において、表面側と深部側の界面までの距離を測定することで、円筒状の界面の径寸法を正確に測定することが容易に可能となる。
【0165】
本発明の超音波測定装置は、上記(B5)の構成を有することにより、円筒状の界面において、表面側と深部側の界面までの距離を測定することで、円筒状の界面の径寸法を正確に測定することが容易に可能となる。
【0166】
本発明の超音波測定方法は、上記(B6)の構成を有することにより、円筒状の界面において、表面側と深部側の界面までの距離を測定することで、円筒状の界面の径寸法を正確に測定することが容易に可能となる。
【実施例0167】
以下、本発明にかかる実施例を説明する。
【0168】
ここで、本発明における血管径測定装置、血管径測定方法の具体例としておこなう血管径を測定試験について説明する。
【0169】
<実験例1>
実験例1として、Φ3mm(外径5mm内径3mm)のシリコーンゴムチューブからなる疑似血管を用意して、水中に埋没されて配置した。同時に、疑似血管には血液を模した液体を流通させた。これにより、超音波の伝播速度を人体内部の状態にあわせた。また、疑似血管を素子面に対して傾斜させて、これを血管径測定装置により測定した。
ここでは、図8図12に示すように、音響レンズを用いた超音波放射検出部を作製した。超音波放射検出部における諸元を示す。
【0170】
素子寸法(素子面のサイズ);4mm×5mm
素子部:PZT素子
素子部厚さ;0.3mm
素子部駆動エネルギー;100μJ
送出超音波周波数;12MHz
【0171】
素子部と疑似血管(チューブ外径前面)との距離;4.5mm
音響レンズの曲率;R6mm
音響レンズ;アクリル樹脂
音響レンズ端部厚さ寸法;0.5mm
【0172】
図5で示した血管壁面D2および血管壁面D3からの反射波を測定した。血管壁面D2の計測結果として、垂直反射波RU2の角度依存性を図27に示す。また、血管壁面D2および血管壁面D3から延在した血管径dの値の角度依存性を図28に示す。
【0173】
図27図28に示す結果から、血管の傾きがプラスマイナス6°の範囲で、充分な強度の反射を検出するとともに、正しい血管径値を得ることができる。
【0174】
<実験例2>
実験例2として、音響レンズを用いずに平面状の素子面を有するPZT素子のみを用いた以外は、実験例1と同様の測定をおこなった。
【0175】
血管壁面D2の計測結果として、垂直反射波RU2の角度依存性を図29に示す。また、血管壁面D2および血管壁面D3から延在した血管径dの値の角度依存性を図30に示す。
【0176】
図29図30に示す結果から、平面の素子では、血管の傾きがプラスマイナス1.5°程度の範囲でしか、充分な強度の反射を検出することができず、正しい血管径値を得ることができていないことがわかる。
【符号の説明】
【0177】
1…血管径測定装置(超音波測定装置)
2…ケース
3…固形ゲル
10…超音波放射検出部
11…放射検出面
13…素子部
13a…放射検出素子面
14…バッキング部
15…音響レンズ(音響レンズ部)
15F1…リニアフレネルレンズ(音響レンズ部)
20…制御部
30…固定部
4+D…血管
D1~D4…血管壁面
RU,RU1~RU4…垂直反射波
図1
図2
図3
図4
図5
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