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  • 特開-ガスの回収装置および回収方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174457
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ガスの回収装置および回収方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/047 20060101AFI20241210BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20241210BHJP
   B01D 53/82 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B01D53/047 ZAB
B01D53/62
B01D53/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092290
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】後藤 佑太
【テーマコード(参考)】
4D002
4D012
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC04
4D002AC10
4D002BA04
4D002CA07
4D002DA41
4D002DA45
4D002DA46
4D002DA70
4D002EA07
4D002FA01
4D002GA03
4D002GB04
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA03
4D012CA01
4D012CA03
4D012CB16
4D012CD07
4D012CE01
4D012CF03
4D012CG01
4D012CG02
4D012CJ01
4D012CJ03
(57)【要約】
【課題】装置を小型化できるガスの回収装置および回収方法を提供する。
【解決手段】回収装置は、第1ガスと、吸着容量が第1ガスよりも大きい第2ガスと、を含む混合ガスの第1ガスを圧力スイング吸着により回収するものであって、第1ガスが吸着される第1吸着剤および第2ガスが吸着される第2吸着剤を収容する吸着塔と、混合ガスが加圧された高圧ガスを吸着塔に供給する第1の供給管と、第1吸着剤から脱離した第1ガスを含むガスを吸着塔から分離した後、第2吸着剤から脱離した第2ガスを含むガスを吸着塔から分離する脱離部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガスと、吸着容量が前記第1ガスよりも大きい第2ガスと、を含む混合ガスの前記第1ガスを圧力スイング吸着により回収する回収装置であって、
前記第1ガスが吸着される第1吸着剤および前記第2ガスが吸着される第2吸着剤を収容する吸着塔と、
前記混合ガスが加圧された高圧ガスを前記吸着塔に供給する第1の供給管と、
前記第1吸着剤から脱離した前記第1ガスを含むガスを前記吸着塔から分離した後、前記第2吸着剤から脱離した前記第2ガスを含むガスを前記吸着塔から分離する脱離部と、を備える回収装置。
【請求項2】
前記吸着塔から分離するときの、前記第2ガスを含む前記ガスの圧力は、前記第1ガスを含む前記ガスの圧力よりも低い請求項1記載の回収装置。
【請求項3】
前記第1吸着剤から脱離した前記第1ガスを含む前記ガスを前記吸着塔から分離する第1の脱離管と、
前記第2吸着剤から脱離した前記第2ガスを含む前記ガスを前記吸着塔から分離する第2の脱離管と、を備え、
前記第1の供給管および前記第1の脱離管は前記吸着塔に接続され、
前記第1の供給管から前記吸着塔に供給された前記高圧ガスは、前記第2吸着剤を通って前記第1吸着剤に入り、
前記第1吸着剤から脱離した前記第1ガスは、前記第2吸着剤を通らずに前記第1の脱離管に入る請求項1又は2に記載の回収装置。
【請求項4】
前記吸着塔から分離した前記第1ガスを含む低圧ガスを前記吸着塔に供給する第2の供給管と、
前記第2の供給管から前記吸着塔に前記低圧ガスを供給する洗浄部と、を備え、
前記低圧ガスは、前記第1の吸着剤を通って前記第2の吸着剤に入る請求項1又は2に記載の回収装置。
【請求項5】
前記第2吸着剤から脱離した前記第2ガスを含む前記低圧ガスを前記吸着塔から分離する第2の脱離管を備え、
前記第2の供給管および前記第2の脱離管は前記吸着塔に接続され、
前記第2吸着剤から脱離した前記第2ガスを含む前記低圧ガスは、前記第1吸着剤を通らずに前記第2の脱離管に入る請求項4記載の回収装置。
【請求項6】
前記第1吸着剤から脱離した前記第1ガスを含む前記ガスを前記吸着塔から分離する第1の脱離管と、
前記第2吸着剤から脱離した前記第2ガスを含む前記ガスを前記吸着塔から分離する第2の脱離管と、
前記第1の脱離管に接続された第1の真空ポンプと、
前記第2の脱離管に接続された第2の真空ポンプと、を備える請求項1又は2に記載の回収装置。
【請求項7】
前記第1の真空ポンプの吸込み側の到達圧力は、前記第2の真空ポンプの吸込み側の到達圧力よりも高い請求項6記載の回収装置。
【請求項8】
前記第1吸着剤の嵩は、前記第2吸着剤の嵩よりも大きい請求項1又は2に記載の回収装置。
【請求項9】
第1ガスと、吸着容量が前記第1ガスよりも大きい第2ガスと、を含む混合ガスの前記第1ガスを圧力スイング吸着により回収する方法であって、
前記第1ガスが吸着される第1吸着剤および前記第2ガスが吸着される第2吸着剤を収容する吸着塔に、前記混合ガスが加圧された高圧ガスを供給する吸着工程と、
前記第1吸着剤から脱離した前記第1ガスを回収した後、前記第2吸着剤から脱離した前記第2ガスを前記吸着塔から分離する脱離工程と、を備える回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のガスを含む混合ガスから特定のガスを回収する回収装置および回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のガスを含む混合ガスから特定のガスを回収する技術に関し、特許文献1に、二酸化炭素と水分とを含む混合ガスから二酸化炭素を回収する技術において、二酸化炭素の回収器の上流に乾燥機を配置し、乾燥機で混合ガスを零下20℃程度に冷やして水分を除去する先行技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-74657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術では結露によって水分量を減らす乾燥機を二酸化炭素の回収器の上流に配置するため、装置が大型化するという問題点がある。
【0005】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、装置を小型化できるガスの回収装置および回収方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するための第1の態様は、第1ガスと、吸着容量(単位吸着剤量当りに吸着するガス量)が第1ガスよりも大きい第2ガスと、を含む混合ガスの第1ガスを圧力スイング吸着により回収する回収装置であって、第1ガスが吸着される第1吸着剤および第2ガスが吸着される第2吸着剤を収容する吸着塔と、混合ガスが加圧された高圧ガスを吸着塔に供給する第1の供給管と、第1吸着剤から脱離した第1ガスを含むガスを吸着塔から分離した後、第2吸着剤から脱離した第2ガスを含むガスを吸着塔から分離する脱離部と、を備える。
【0007】
第2の態様は、第1の態様において、吸着塔から分離するときの、第2ガスを含むガスの圧力は、第1ガスを含むガスの圧力よりも低い。
【0008】
第3の態様は、第1又は第2の態様において、第1吸着剤から脱離した第1ガスを含むガスを吸着塔から分離する第1の脱離管と、第2吸着剤から脱離した第2ガスを含むガスを吸着塔から分離する第2の脱離管と、を備え、第1の供給管および第1の脱離管は吸着塔に接続され、第1の供給管から吸着塔に供給された高圧ガスは、第2吸着剤を通って第1吸着剤に入り、第1吸着剤から脱離した第1ガスは、第2吸着剤を通らずに第1の脱離管に入る。
【0009】
第4の態様は、第1又は第2の態様において、吸着塔から分離した第1ガスを含む低圧ガスを吸着塔に供給する第2の供給管と、第2の供給管から吸着塔に低圧ガスを供給する洗浄部と、を備え、低圧ガスは第1の吸着剤を通って第2の吸着剤に入る。
【0010】
第5の態様は、第4の態様において、第2吸着剤から脱離した第2ガスを含む低圧ガスを吸着塔から分離する第2の脱離管を備え、第2の供給管および第2の脱離管は吸着塔に接続され、第2吸着剤から脱離した第2ガスを含む低圧ガスは、第1吸着剤を通らずに第2の脱離管に入る。
【0011】
第6の態様は、第1から第5の態様のいずれかにおいて、第1吸着剤から脱離した第1ガスを含むガスを吸着塔から分離する第1の脱離管と、第2吸着剤から脱離した第2ガスを含むガスを吸着塔から分離する第2の脱離管と、第1の脱離管に接続された第1の真空ポンプと、第2の脱離管に接続された第2の真空ポンプと、を備える。
【0012】
第7の態様は、第6の態様において、第1の真空ポンプの吸込み側の到達圧力は、第2の真空ポンプの吸込み側の到達圧力よりも高い。
【0013】
第8の態様は、第1から第7の態様のいずれかにおいて、第1吸着剤の嵩は、第2吸着剤の嵩よりも大きい。
【0014】
第9の態様は、第1ガスと、吸着容量が第1ガスよりも大きい第2ガスと、を含む混合ガスの第1ガスを圧力スイング吸着により回収する方法であって、第1ガスが吸着される第1吸着剤および第2ガスが吸着される第2吸着剤を収容する吸着塔に、混合ガスが加圧された高圧ガスを供給する吸着工程と、第1吸着剤から脱離した第1ガスを回収した後、第2吸着剤から脱離した第2ガスを吸着塔から分離する脱離工程と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1ガスに比べて吸着容量が大きい第2ガスを除去し第1ガスを回収する。第2ガスを除去する部分を小さくできるため、装置を小型化できる。脱離部により、吸着容量が小さく脱離しやすい第1ガスを吸着塔から分離した後、吸着容量が大きく脱離しにくい第2ガスを吸着塔から分離するため、回収したガスに混入する第2ガスを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施の形態における回収装置の配管系統図である。
図2】第1ガスと第2ガスの脱吸着等温線である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は一実施の形態における回収装置10の配管系統図である。
【0018】
回収装置10は、圧力スイング吸着を利用して、第1ガスと、吸着容量が第1ガスよりも大きい第2ガスと、を含む混合ガスの第1ガスを回収する。回収装置10は、二酸化炭素、水分、窒素酸化物などを含む排ガス等の混合ガスから二酸化炭素を回収する装置が例示される。この場合の第1ガスは二酸化炭素、第2ガスは水分や窒素酸化物である。混合ガスは、例えば発電所、工場、廃棄物処理施設、天然ガス田、油田などから出る排ガスが例示される。
【0019】
別の回収装置10は、窒素、水分などを含む空気等の混合ガスから窒素を回収する装置が例示される。この場合の第1ガスは窒素、第2ガスは水分であり、回収装置10は空気から窒素を回収できる。この回収装置10において、空気から窒素を回収するときに、回収されなかった酸素を含むガスを回収することもできる。
【0020】
回収装置10は、吸着塔11,12,13,14と、吸着塔11,12,13,14を適切な圧力に設定する加圧装置18と、を備えている。吸着塔11,12,13,14の中に第1ガスを吸着する第1吸着剤15と、第2ガスを吸着する第2吸着剤16と、がそれぞれ収容されている。
【0021】
第1吸着剤15や第2吸着剤16は、混合ガスに含まれる第1ガスと第2ガスの種類に応じ、第1吸着剤15に対する第1ガスの吸着容量よりも第2吸着剤16に対する第2ガスの吸着容量が大きいものが適宜選択される。第1吸着剤15や第2吸着剤16は活性炭、シリカゲル、ゼオライト、モレキュラーシービイングカーボン、メソポーラスシリカ、金属-有機構造体(MOF)、多孔性配位高分子(PCP)が例示される。
【0022】
第1吸着剤15及び第2吸着剤16はそれぞれ吸着塔11,12,13,14に充填されている。第2吸着剤16は吸着塔11,12,13,14の入口近くに充填されており、第1吸着剤15は吸着塔11,12,13,14の出口近くに充填されている。第1吸着剤15の嵩は、第2吸着剤16の嵩よりも大きい。すなわち吸着塔11,12,13,14に充填された第1吸着剤15の層の厚さは、吸着塔11,12,13,14に充填された第2吸着剤16の層の厚さよりも厚い。
【0023】
加圧装置18は第1の供給管17に配置されている。加圧装置18は圧縮機やブロワーが例示される。第1の供給管17は4つに分岐した管であり、分岐した部分が吸着塔11,12,13,14の入口にそれぞれ接続されている。加圧装置18は混合ガスを加圧して第1の供給管17に送る。加圧装置18によって加圧された混合ガス(高圧ガス)は、第1の供給管17の分岐した部分を通って吸着塔11,12,13,14へ送られる。
【0024】
第1の供給管17の分岐した部分に、排気管19の4つに分岐した部分と第2の脱離管20の4つに分岐した部分とがそれぞれ接続されている。第2の脱離管20に第2の真空ポンプ21が配置されている。
【0025】
排気管22は4つに分岐した管であり、分岐した部分が吸着塔11,12,13,14の出口にそれぞれ接続されている。排気管22は、第1の供給管17から吸着塔11,12,13,14に入った高圧ガスのうち第1吸着剤15や第2吸着剤16に吸着されない成分を、吸着塔11,12,13,14の外に排気する機能をもつ。
【0026】
排気管22の分岐した部分に、第1の脱離管23の4つに分岐した部分と第2の供給管26の4つに分岐した部分とがそれぞれ接続されている。第1の脱離管23に第1の真空ポンプ24及びタンク25が配置されている。タンク25は第1の脱離管23の、第1の真空ポンプ24の下流に配置されている。第2の供給管26の上流端はタンク25に接続されている。
【0027】
第1の真空ポンプ24の吸込み側の到達圧力は、第2の真空ポンプ21の吸込み側の到達圧力よりも高い。吸込み側の到達圧力は低いほど(ゼロに近いほど)高真空を実現できるため、第2の真空ポンプ21は、第1の真空ポンプ24に比べ、高真空を実現できる。また、第1の真空ポンプ24の吐出し側の圧力を、第2の真空ポンプ21の吐出し側の圧力よりも高くできる。さらに第1の真空ポンプ24の排気速度は、第2の真空ポンプ21の排気速度よりも大きい。
【0028】
調節弁27,28,29,30は、第1の供給管17の分岐した部分に吸着塔11,12,13,14毎に配置されている。調節弁31,32,33,34は、排気管19の分岐した部分に吸着塔11,12,13,14毎に配置されている。調節弁35,36,37,38は、第2の脱離管20の分岐した部分に吸着塔11,12,13,14毎に配置されている。
【0029】
調節弁39,40,41,42は、排気管22の分岐した部分に吸着塔11,12,13,14毎に配置されている。調節弁43,44,45,46は、第1の脱離管23の分岐した部分に吸着塔11,12,13,14毎に配置されている。調節弁47はタンク25の下流の第1の脱離管23に配置されている。調節弁48,49,50,51は、第2の供給管26の分岐した部分に吸着塔11,12,13,14毎に配置されている。
【0030】
制御装置52は調節弁27-51の開閉を制御するための装置である。制御装置52は、CPU,ROM及びRAM(いずれも図示せず)を備えている。ROMは、調節弁27-51を開閉するプログラムが記憶されている。CPUは、ROMに記憶されたプログラムに基づき、吸着部53、洗浄部54及び脱離部55において、調節弁27-51を開閉する処理を実行する。調節弁27-51は制御装置52からの電気信号を受け取って作動する。
【0031】
制御装置52は、吸着塔11,12,13,14の各々で吸着工程、洗浄工程、第1の脱離工程、第2の脱離工程の順に工程が進み、吸着塔11,12,13,14で4つの工程が並行するように処理を実行する。制御装置52は、混合ガスから第1ガスを連続的に回収できるように調節弁27-51を開閉し、第1ガスに富むガスをタンク25に貯留する。吸着部53は吸着工程を進める処理を実行する。洗浄部54は洗浄工程を進める処理を実行する。脱離部55は第1の脱離工程から第2の脱離工程までを進める処理を実行する。
【0032】
以下、第2の脱離工程が完了した吸着塔11で吸着工程を進行させ、吸着工程が完了した吸着塔12で洗浄工程を進行させ、洗浄工程が完了した吸着塔13で第1の脱離工程を進行させ、第1の脱離工程が完了した吸着塔14で第2の脱離工程を進行させる場合を例示して、回収装置10の動作を説明する。加圧装置18、第1の真空ポンプ24及び第2の真空ポンプ21は4つの工程を通して作動している。
【0033】
吸着部53は、吸着塔11で吸着工程を進行するため、調節弁27,39を開き、その他の調節弁を閉じる。吸着工程において調節弁27を通って第1の供給管17から吸着塔11に入った高圧ガスは、第2吸着剤16を通って第1吸着剤15に入る。第2ガスは第2吸着剤16に吸着され、第1ガスは第1吸着剤15に吸着され、高圧ガスに比べて第1ガス及び第2ガスの分圧が低いオフガスは、調節弁39を通って排気管22から回収装置10の系外へ排出される。
【0034】
図2は第1ガスと第2ガスの脱吸着等温線の一例である。図2は横軸にガスの分圧をとり、縦軸に吸着容量(単位吸着剤量当りに吸着するガス量)をとる。図2は第2吸着剤への第2ガスの吸着容量が、第1吸着剤への第1ガスの吸着容量よりも大きいことを示している。吸着工程における吸着塔11内の高圧ガスの圧力(吸着圧)をP3とする。
【0035】
図1に戻って説明する。吸着工程において高圧ガスが吸着塔11の中を入口から出口に向かって順次移動する間に、第2ガスは第2吸着剤16に吸着され、第1ガスは第1吸着剤15に吸着される。第2ガスの吸着容量は第1ガスの吸着容量に比べて大きいため、第2ガスは第2吸着剤16に吸着除去され、第1吸着剤15の中を移動する高圧ガスに含まれる第2ガスの濃度が低くなる。これにより第1吸着剤15に第1ガスが吸着されやすくなる。
【0036】
洗浄部54は、吸着塔12で洗浄工程を進行するため、調節弁32,49を開く。高圧ガスの供給がなくなった吸着塔12の圧力は、調節弁32,49が開くと大気圧付近まで降下する。吸着塔12の圧力が降下すると、吸着工程における吸着塔12の圧力P3(図2参照)のときの吸着容量と降下した圧力のときの吸着容量との差に相当する第1ガスが第1吸着剤15から脱離し、第2ガスが第2吸着剤16から脱離する。
【0037】
洗浄工程では、タンク25内に存在する第1ガスに富むガス(低圧ガス)が、調節弁49を通って第2の供給管26から吸着塔12へ供給される。第2の供給管26から吸着塔12へ入った低圧ガスは、順次、第1吸着剤15を通って第2吸着剤16に入る。吸着塔12内に存在する不要なガスは、吸着塔12の出口から入口に向かって流れる低圧ガスに押し出され、調節弁32を通って排気管19から回収装置10の系外へ排出される。低圧ガスは第1ガスに富むため、低圧ガスが供給された吸着塔12は第1ガスの濃度が高まり第1吸着剤15への第1ガスの吸着量が増加する。洗浄工程により、第1吸着剤15及び第2吸着剤16に吸着されない不要な成分が系外に排出されるため、回収されるガスに含まれる不要な成分の割合を低減し、第1ガスの割合を高めることができる。
【0038】
脱離部55は、吸着塔13で第1の脱離工程を進行するため、調節弁33,45を開く。第1吸着剤15から脱離した第1ガスを含む低圧ガスは、第1の真空ポンプ24によって、吸着塔13から分離され調節弁45を通って第1の脱離管23からタンク25に入る。第1の真空ポンプ24によって吸着塔13は減圧されるため、第1吸着剤15からの第1ガスの脱離および第2吸着剤16からの第2ガスの脱離は進行する。第1の脱離工程において吸着塔13から分離される低圧ガスの圧力をP2とすると(図2参照)、第1ガスの圧力P3における吸着容量と圧力P2における吸着容量との差C1の分だけ、第1吸着剤15から第1ガスが脱離して回収される。
【0039】
第1の脱離工程において、第1吸着剤15から脱離した第1ガスを含む低圧ガスは、第2ガスが多く存在する第2吸着剤16の中を通らずに吸着塔13から分離され、第1の脱離管23を通って回収される。従って回収されるガスに混入する第2ガスを低減できる。
【0040】
第2ガスの吸着容量は第1ガスの吸着容量に比べて大きいため、第2ガスの脱離速度は第1ガスの脱離速度よりも小さい。これにより第1吸着剤15から脱離した第1ガスを含むガスの中に、第2吸着剤16から脱離した第2ガスが混入する量を低減できる。タンク25に入るガスに含まれる第2ガスを低減できるため、高濃度の第1ガスをタンク25に貯留できる。調節弁47を開いてタンク25の中のガスを取り出すことができる。
【0041】
脱離部55は、吸着塔14で第2の脱離工程を進行するため、調節弁38,42を開く。第2吸着剤16から脱離した第2ガスを含むガスは、第2の真空ポンプ21によって、吸着塔14から分離され調節弁38を通って第2の脱離管20から回収装置10の系外へ排出される。第2の脱離工程において吸着塔14から分離されるガスの圧力をP1とすると(図2参照)、第2ガスの圧力P3における吸着容量と圧力P1における吸着容量との差C2の分だけ第2ガスを除去できる。
【0042】
第2の脱離工程において、第2吸着剤16から脱離した第2ガスを含むガスは、第1吸着剤15の中を通らずに吸着塔14から分離され、第2の脱離管20から排出される。第1吸着剤15の中に滞留する第2ガスを低減できるため、吸着塔14で行われる次の第1の脱離工程において、第1吸着剤15から脱離した第1ガスを含むガスを回収するときに、ガスに混入する第2ガスを低減できる。
【0043】
第1の脱離工程において第1吸着剤15から脱離した第1ガスの一部は、第1の脱離工程が完了したときに吸着塔14の中に残ることがある。吸着塔14の中に残留した少量の第1ガスは、第2の脱離工程において第2の真空ポンプ21によって、第2吸着剤16を通って吸着塔14から分離され、調節弁38を通って第2の脱離管20から回収装置10の系外へ排出される。
【0044】
第2の脱離工程において吸着塔14から分離されるガスの圧力P1(図2参照)は、第1の脱離工程において吸着塔13から分離されるガスの圧力P2よりも低く設定されると好ましい。圧力P1が低くなって圧力P3と圧力P1との差が大きくなると差C2が大きくなるため、第2吸着剤16から多くの第2ガスが追い出され、第2吸着剤16の吸着能力が大きく回復するからである。その結果、吸着塔14で行われる次の吸着工程において第2吸着剤16に大量の第2ガスを吸着除去させることができる。
【0045】
脱離部55は、第1の脱離工程において吸着容量が小さく脱離しやすい第1ガスを吸着塔13から分離した後、第2の脱離工程において吸着容量が大きく脱離しにくい第2ガスを吸着塔14から分離するため、第1の脱離工程において第2吸着剤16から脱離する第2ガスを低減し、第1の脱離工程において回収されるガスに混入する第2ガスを低減できる。これにより高濃度の第1ガスを回収できる。
【0046】
回収装置10は、先行技術のように、結露によって水分量を減らす乾燥機を吸着塔11,12,13,14の上流に配置しなくて済むため、乾燥機を省くことができる分だけ装置を小型化でき、また電力原単位を低減できる。吸着塔11,12,13,14に充填する第2吸着剤16は必要だが、第2吸着剤16の嵩は第1吸着剤15の嵩に比べて小さいため、第2吸着剤16が充填される吸着塔11,12,13,14の体積の拡大を低減できる。
【0047】
混合ガスに含まれる第2ガスの濃度は第1ガスの濃度よりも低いため、第2ガスを吸着する第2吸着剤16の嵩は、第1ガスを吸着する第1吸着剤15の嵩よりも小さくて済む。従って第1吸着剤15に加えて第2吸着剤16が充填される吸着塔11,12,13,14の体積の拡大を低減できる。
【0048】
第1の脱離管23の第1の真空ポンプ24が配置され、第2の脱離管20に第2の真空ポンプ21が配置されているため、1つの真空ポンプを第1の脱離管23と第2の脱離管20とにつないで吸着塔11,12,13,14を減圧する場合に比べ、真空ポンプ21,24の各々の排気量を少なくできる。真空ポンプ21,24を小さくできるため、回収装置10の小型化に有利である。
【0049】
第1の脱離管23に配置された第1の真空ポンプ24の吸込み側の到達圧力は、第2の脱離管20に配置された第2の真空ポンプ21の吸込み側の到達圧力よりも高いため、第1の真空ポンプ24の吐出し側の圧力を高くできる。ガスの温度と質量が一定であれば、第1の真空ポンプ24の下流に接続されたタンク25の中のガスの圧力を高くすることができ、ガスの体積を小さくできるため、ガスが蓄えられるタンク25を小さくできる。一定の体積のタンク25に多量のガスを蓄えることができる。また、第1の真空ポンプ24の排気速度は第2の真空ポンプ21の排気速度よりも大きいため、第1の脱離工程における第1ガスの回収速度を大きくできる。
【0050】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0051】
例えば回収装置10の配管系統は一例であり、適宜設定できる。実施形態では4つの吸着塔11,12,13,14を備える回収装置10について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。吸着塔は1つ以上の数に適宜設定される。
【0052】
実施形態では第1吸着剤15と第2吸着剤16とが充填された吸着塔11,12,13,14を並べ、調節弁を切り替えて吸着・再生のサイクルを行う場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。1つの吸着塔の中にいくつかの部屋を設け、その部屋の中に第1吸着剤15と第2吸着剤16とを分けて充填し、第1吸着剤15と第2吸着剤16とを順次使って吸着・再生のサイクルを行うことは当然可能である。
【0053】
実施形態では吸着工程、洗浄工程、第1の脱離工程、第2の脱離工程を順次行う回収装置10を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば洗浄工程を省くことは当然可能である。洗浄工程を省くことにより、タンク25に回収した第1ガスの一部を吸着塔11,12,13,14に戻さなくても良くなるため、第1ガスの回収率を向上できる。
【0054】
実施形態では第1の真空ポンプ24を用いて第1吸着剤15から第1ガスを脱離し、第2の真空ポンプ21を用いて第2吸着剤16から第2ガスを脱離する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1ガスや第2ガスの種類にもよるが、真空ポンプ21,24を両方とも用いずに、又は、真空ポンプ21,24のどちらかを用いて、吸着剤から第1ガスや第2ガスを脱離することは当然可能である。真空ポンプ21,24のどちらか又は両方を省くことは、回収装置10の小型化に有利である。
【0055】
実施形態では第2ガスを含むガスを第2の脱離管20から回収装置10の系外に排出する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第2の脱離管20の、第2の真空ポンプ21の下流にタンクを配置し、空気(混合ガス)から窒素(第1ガス)を回収し、水分(第2ガス)を第2の脱離管20から排出する場合に、水分を含むガスをタンクに貯留することは当然可能である。タンクにより酸素と水分とを回収できる。タンク内の酸素と水分とを含む混合ガスから、回収装置10を用いて酸素(第1ガス)を回収し水分(第2ガス)を除去することは当然可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 回収装置
11,12,13,14 吸着塔
15 第1吸着剤
16 第2吸着剤
17 第1の供給管
20 第2の脱離管
21 第2の真空ポンプ
23 第1の脱離管
24 第1の真空ポンプ
26 第2の供給管
54 洗浄部
55 脱離部
図1
図2