(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174465
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ステント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/88 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
A61F2/88
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092299
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】豊川 秀英
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 友有己
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA43
4C267AA44
4C267CC07
4C267CC22
4C267GG05
4C267GG22
4C267GG24
(57)【要約】
【課題】体腔壁への刺激を低減でき、かつ、容易かつ安全に抜去できるステントを提供する。
【解決手段】本開示のステント1は、径方向に拡縮可能な円筒状の本体部2と、本体部2の側面に螺旋状に巻き回されたコイル3と、を備える。コイル3は形状記憶ワイヤーからなる。コイル3は、本体部2の中央部に巻き回された第1部分31と、本体部2の端部に巻き回された第2部分32と、を含む。第2部分32の外径r2は、第1部分31の外径r1よりも大きく設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に拡縮可能な円筒状の本体部と、前記本体部の側面に螺旋状に巻き回されたコイルと、を備え、
前記コイルが、前記本体部の中央部に巻き回された第1部分と、前記本体部の端部に巻き回された第2部分と、を含み、前記第2部分の外径は、前記第1部分の外径よりも大きいことを特徴とするステント。
【請求項2】
前記第2部分のピッチは、前記第1部分のピッチよりも小さい、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記本体部の一端部に巻き回された前記第2部分の外径は、他端部に巻き回された前記第2部分の外径よりも大きい、請求項1に記載のステント。
【請求項4】
前記コイルは、断面が矩形である、請求項1に記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管や消化器官等の体腔に狭窄や閉塞等が生じた場合に、患部にステントを留置し、該狭窄部等を拡張する技術が知られている。例えば、特許文献1には、ステントの留置位置からの位置ずれ(マイグレーション)を防止するアンカリング機構を設けたステントの発明が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO2020/194506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の発明によれば、金属ワイヤーを編み込んでステントを形成し、該ステントの一部にフック編みしない箇所を設け、該箇所を立ち上げて爪形状を形成し、該爪形状を体腔にアンカリングすることにより、ステントを留置位置に保持している。このとき、爪形状を構成する金属ワイヤーのエッジが体腔壁を刺激し、出血や穿孔を発生させてしまうという問題があった。また、ステントを抜去交換する際に、爪形状が抜去方向に逆って体腔に食い込み、体腔を傷つけてしまうという問題もあった。
【0005】
また、胆管を拡張する胆管ステントでは、ステント全体を樹脂で被膜したカバードステントが採用されている。ところが、カバードステントを長期間使用していると、徐々に不溶化した胆汁、いわゆる「胆泥(スラッジ)」が堆積し、再閉塞が生じる。このため、カバードステントを抜去して、新たなカバードステントに交換する必要があった。このことから、容易かつ安全に抜去できるカバードステントが望まれていた。
【0006】
そこで、本開示の目的は、体腔壁への刺激を低減でき、かつ、容易かつ安全に抜去できるステントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のステントは、径方向に拡縮可能な円筒状の本体部と、本体部の側面に螺旋状に巻き回されたコイルと、を備え、コイルが、本体部の中央部に巻き回された第1部分と、本体部の端部に巻き回された第2部分と、を含み、第2部分の外径は、第1部分の外径よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示のステントによれば、コイルの第2部分の外径をコイルの第1部分の外径よりも大きくしたため、本体部及び第1部分の拡径に伴って、第2部分が拡径し、体腔にアンカリングされる。このとき、第2部分によってアンカリングされるため体腔への刺激を低減できる。
【0009】
また、本開示のステントによれば、端部を引っ張ることにより第2部分が縮径するため、自動的にアンカリングを解除でき、ステントを体腔内から容易かつ安全に抜去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図1のステントの、(a)A-A線断面模式図、(b)B-B線断面模式図、(b)C-C線断面模式図である。
【
図3】(a)ステントの挿入方法、(b)留置状態のステント、(c)ステントの抜去方法を示す模式図である。
【
図5】
図4のステントの、(a)D-D線断面模式図、(b)E-E線断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示のステントに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。各実施例において、同様の構成に同じ符号を付し、説明を省略する。また、
図2,3,5において、図の簡略化のため樹脂膜4を省略する。
【実施例0012】
図1,2に示すように、本開示のステント1は、径方向に拡縮可能な円筒状の本体部2と、本体部2の側面に螺旋状に巻き回されたコイル3とを備える。コイル3は、本体部2とは別体であり、形状記憶ワイヤーである。コイル3は、本体部2の中央部に巻き回された第1部分31と、本体部2の端部に巻き回された第2部分32とを含む。第2部分32の外径は、第1部分31の外径よりも大きい。換言すれば、第2部分32は本体部2から径方向外側に離間した状態で巻き回されている。一方、第1部分31は本体部2の外径に沿うように巻き回されている。第1部分31の外径よりも第2部分32の外径を大きくすることにより、ステント1によって患部が拡張された際に、第2部分32は自動的に体腔52にアンカリングされ、ステント1の留置位置を保持する。
本開示のステント1は、例えば、血管、消化器官、胆管等の体腔52に生じた狭窄部や閉塞部に留置されることで、当該狭窄部や閉塞部の開放状態を維持するために用いられる。
【0013】
ステント1は、樹脂膜4により被覆されている。樹脂膜4を被覆させたことにより、ステント1が直接体腔52に接触しないため、体腔52が傷つき難い。また、体腔52を構成する細胞や血栓等の閉塞物質がステント1内に侵入することを防止できる。樹脂膜4に用いられる樹脂は、シリコン、ポリウレタン等である。樹脂膜4の厚みは、100μm以上800μm以下である。
【0014】
本体部2は、形状記憶合金よりなる1本の金属ワイヤーを編み込むことによってワイヤー同士がフック状に交差している。本体部2は、軸方向に引っ張ると編み目が潰れて縮径する。
【0015】
本体部2を構成する金属ワイヤーは、直径0.13mm程度の丸線である。本体部2を構成する金属ワイヤーは、例えば、タングステン、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、白金イリジウム(Pt-Ir)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、白金、金、またはこれらの合金等を採用できる。
【0016】
ここで、第2部分32のピッチp2を、第1部分31のピッチp1よりも小さく(ピッチp1>ピッチp2)してもよい。ピッチp1>ピッチp2とすることにより、第2部分32のコイル3が体腔52を押圧する面密度を高め、より確実にアンカリングを行うことができる。ここで、ピッチとは、本体部2に巻き回されているコイル3において軸方向に隣り合うコイル同士の幅のことである。
【0017】
第2部分32は、コイル3の両端部に形成される。ここで、本体部2の一端部に巻き回された第2部分32’の外径r2’を、他端部に巻き回された第2部分32の外径r2よりも大きく(外径r2<外径r2’)する。例えば、ステント1の基端部1bの第2部分32’の外径r2’を、先端部1aの第2部分32の外径r2よりも大きくする。この構成により、ステント1の先端部1a方向、即ち、体腔52の奥への移動を防止できる。超音波内視鏡経由で胃から肝内胆管へ留置するEUS-HGS(Endoscopic ultrasonography guided - hepaticogastrostomy) という手技に用いられる胆管ステントを例に挙げると、胆管ステントは、胃壁に開けられた開口部分から胆管に向けて挿入するため、第2部分32’を胃壁側に配置するとともに第2部分32を胆管内に配置することで胆管奥への胆管ステントの移動を防止できる。
【0018】
このとき、第2部分32’のピッチp2’を、第2部分32のピッチp2よりも小さく(ピッチp2’<ピッチp2)設けることも可能である。ピッチp2’<ピッチp2とすることにより、第2部分32’の体腔52を押圧する面密度を第2部分32の体腔52を押圧する面密度よりも高く構成し、体腔52奥へのステント1の移動を防止することができる。
【0019】
コイル3の金属ワイヤーは、例えば、タングステン、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、白金イリジウム(Pt-Ir)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、白金、金等の合金等を採用できる。
【0020】
続いて、ステント1を患部に留置する方法を、
図3に従って説明する。まず、ステント1を引き伸ばして縮径し、冷却スプレーにより縮径状態に冷却固定する。そして、ステント1をステントデリバリーシステムのカテーテル51に収容する。次に、
図3(a)に示すように、カテーテル51を体腔に挿通し、ステント1を患部まで運搬する。
【0021】
図3(b)に示すように、ステント1を患部に留置し、カテーテル51を体腔52から抜き取ると、ステント1が体温によって温められ、記憶された元の形状に戻る。このとき、本体部2が拡径して患部を拡張し、コイル3が拡径して第2部分32が体腔52にアンカリングされる。ステント1が元の形状に戻る温度は、20度~37度程度であり、好ましくは、24度±3度である。
【0022】
図3(c)に示すように、ステント1を患部から抜去する際には、ステント1の基端部1bを引っ張ると、ステント1が引き伸ばされる。このとき、本体部2及びコイル3が縮径し、第2部分32のアンカリングが解除される。このように、ステント1の基端部1bを引っ張ることにより自動的にアンカリングが解除されるため、ステント1を容易に抜去することができる。
【0023】
以上の構成のステント1によれば、コイル3の第2部分32の外径r2をコイル3の第1部分31の外径r1よりも大きく設けたため、本体部2及び第1部分31の拡径に伴って、第2部分32が拡径し、体腔52にアンカリングされる。このとき、第2部分32の側面が体腔52に接触してアンカリングされるため、エッジが体腔52に接触してアンカリングされる場合と比較して、体腔52への刺激を低減できる。また、ステント1を樹脂膜4で被覆したため、体腔52を保護することができる。さらに、本開示のステント1によれば、端部1bを引っ張ることにより第2部分32が縮径するため、自動的にアンカリングを解除でき、ステント1を体腔内から容易かつ安全に抜去することができる。
コイル3は、平線を山折りに折り曲げた複数の屈曲部33を含む。コイル3を平線から形成したことにより、容易に折り曲げることができる。屈曲部33は、ステント1の留置位置を保持するアンカーとして機能する。屈曲部33は、平線の表面又は裏面において体腔52と接触するため、爪形状によりアンカリングする場合と比較して、体腔52への刺激を低減できる。また、断面矩形状のコイル3も断面円形状のコイル3と同様に、基端部1bを引っ張ることにより縮径するため、抜去時に体腔52を傷つけない。
平線の断面積は、0.01mm2~0.03mm2であり、平線の断面縦長さは、0.05mm~0.15mmであり、平線の断面横長さは、0.1mm~0.3mmである。