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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174471
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
E06B5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092312
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 真由子
(72)【発明者】
【氏名】田口 岳
【テーマコード(参考)】
2E239
【Fターム(参考)】
2E239CA02
2E239CA22
2E239CA29
2E239CA32
2E239CA47
2E239CA54
(57)【要約】
【課題】加熱されたときに枠体と障子との間に隙間が生じることをより確実に防止することが可能な建具を提供する。
【解決手段】枠材が枠組みされて開口を形成する枠体と、框材が框組みされた框体を有し前記開口を閉止可能な障子と、を有する建具であって、前記障子の面内方向において対向して対をなす前記枠材及び前記框材のうちの一方の部材には、前記面内方向において互いに対向する部位に係合部が設けられており、前記対をなす前記枠材と前記框材とのうちの他方の部材は、線膨張係数が前記一方の部材よりも小さい小線膨張部を有し、前記一方の部材が線膨張したときに前記係合部と係合する被係合部が、前記小線膨張部に取り付けられて、前記面内方向において互いに対向する部位に設けられている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠材が枠組みされて開口を形成する枠体と、框材が框組みされた框体を有し前記開口を閉止可能な障子と、を有する建具であって、
前記障子の面内方向において対向して対をなす前記枠材及び前記框材のうちの一方の部材には、前記面内方向において互いに対向する部位に係合部が設けられており、
前記対をなす前記枠材と前記框材とのうちの他方の部材は、線膨張係数が前記一方の部材よりも小さい小線膨張部を有し、
前記一方の部材が線膨張したときに前記係合部と係合する被係合部が、前記小線膨張部に取り付けられて、前記面内方向において互いに対向する部位に設けられていることを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具であって、
前記枠体と前記框体とは、前記対をなす前記枠材及び前記框材の長手方向における一方の端側に、当該長手方向の相対移動が規制されており、
前記係合部及び前記被係合部は、前記長手方向における他方の端側に設けられていることを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建具であって、
前記被係合部は、前記係合部の、前記障子の面外方向の移動を規制する面外方向規制部を有することを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の建具であって、
前記被係合部は、前記係合部の、前記面内方向において前記枠材と前記框材との間隔が広がる方向への移動を規制する面内方向規制部を有することを特徴とする建具。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の建具であって、
前記係合部及び前記被係合部は、互いの上下方向の移動を規制する上下方向規制部を有することを特徴とする建具。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の建具であって、
前記一方の部材は、アルミニウム製の部材であり、前記小線膨張部は前記他方の部材に備えられた鋼製の部材であることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口を形成する枠体と開口を閉止可能な障子とを有する建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、枠(枠体)に対して障子を開閉自在に支持した建具は知られている(例えば、特許文献1参照)。この建具は、障子戸先側のアルミニウム製の竪框の外周面に係止部材が設けられており、アルミニウム製の竪枠の内周面に受けが設けられており、竪框が熱により伸びたときに、係止部材において竪枠側に突出した被係止部が、受けにおいて内周側に突出した受け部に係止される。このため、火災時には、火災の熱により竪框が伸び、係止部材が受けに係止されることにより、障子の戸先側が枠から室外側へ離れる、或いは、障子が反るなどして障子と枠との間に隙間が生じることを防止し、火炎が噴出するのを防止するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014―9495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような建具は、竪框が熱により伸びたときに係止するとされた係止部材が設けられている竪框と、受けが設けられている竪枠はいずれも、アルミニウム製であり、係止部材と受けとは、互いに近い位置に設けられているので、例えば火炎等の熱により竪框が伸びるときには、竪枠も同様に加熱されて伸びるので、たとえ竪框が伸びたとしても、係止部材が受けに係止されない虞があるという課題があった。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、加熱されたときに枠体と障子との間に隙間が生じることをより確実に防止することが可能な建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するための主たる発明は、枠材が枠組みされて開口を形成する枠体と、框材が框組みされた框体を有し前記開口を閉止可能な障子と、を有する建具であって、前記障子の面内方向において対向して対をなす前記枠材及び前記框材のうちの一方の部材には、前記面内方向において互いに対向する部位に係合部が設けられており、前記対をなす前記枠材と前記框材とのうちの他方の部材は、線膨張係数が前記一方の部材よりも小さい小線膨張部を有し、前記一方の部材が線膨張したときに前記係合部と係合する被係合部が、前記小線膨張部に取り付けられて、前記面内方向において互いに対向する部位に設けられていることを特徴とする建具である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加熱されたときに枠体と障子との間に隙間が生じることをより確実に防止することが可能な建具を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る引き違い窓用の建具の内観図である。
図2】本実施形態に係る建具における左側部分の横断面図である。
図3図3(a)は、係合部材を室内側から見た図であり、図3(b)は、係合部材を障子側から見た図である。
図4図4(a)は、被係合部材を左縦枠側から見た図であり、図4(b)は、被係合部材を上方から見た図である。
図5】係合部材と被係合部材が取り付けられている状態を示す図である。
図6図6(a)は、通常時における係合部材と被係合部材の配置を示す図であり、図6(b)は、熱伸びが生じた際における係合部材と被係合部材の配置を示す図である。
図7】係合部材と被係合部材が設けられた縦すべり出し窓用の建具を示す内観図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る建具について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る建具の一例として、図1に示すような引違い窓用の建具1を例に挙げて説明する。建具1は、建物の躯体に取り付けられて開口2aを形成する枠体2と、枠体2にスライド可能に支持され開口2aを閉止可能な外障子3及び内障子4とを有している。
【0010】
以下の説明においては、建物に取り付けられた状態の建具1を、室内側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向、奥行き方向を見込み方向として示す。また、建具1の各部位であっても、また、建具1を構成する各部材については単体の状態であっても、建具1が設置されている状態にて上下方向、左右方向、見込み方向となる方向にて方向を特定して説明する。
【0011】
枠体2は、図1に示すように、上枠20、下枠21、左縦枠22及び右縦枠23をなす4本の枠材が矩形状に枠組みされて開口2aを形成している。外障子3及び内障子4はそれぞれ、矩形状のガラス5とガラス5の周端部を収容する矩形状の框体30、40を有している。外障子3及び内障子4の框体30、40は各々、上框31、41、下框32、42、戸先框33、43及び召合せ框34、44をなす4本の框材が矩形状に框組みされて形成されている。
【0012】
各枠材20、21、22、23はいずれも、アルミニウム製の押し出し形材でなる金属枠部と、合成樹脂製の押し出し形材でなる樹脂枠部とが互いに係止された複合形材である。各框材31、32、33、34、41、42、43、44はいずれも、長手方向に貫通する中空部を有する合成樹脂製の押し出し形材でなる框材本体部と、中空部内に長手方向に沿って設けられる鋼製の補強材と、を有している。
【0013】
建具1は、枠体2が形成する開口2aを、外障子3及び内障子4により閉止した状態で、上枠20と各上框31、41とが、下枠21と各下框32、42とが、左縦枠22と外障子3の戸先框33とが、右縦枠23と内障子4の戸先框43とが、それぞれ対をなして障子3、4の面内方向(以下、単に面内方向という)に対向している。
【0014】
建具1には、左縦枠22と外障子3の戸先框33との間、及び、右縦枠23と内障子4の戸先框43との間にそれぞれ、火災などにより加熱した際に係合する係合部をなす係合部材6及び被係合部をなす被係合部材7が、建具1の上部側に設けられている。左縦枠22と外障子3の戸先框33との間、及び、右縦枠23と内障子4の戸先框43との間に係合部材6及び被係合部材7が設けられている構成は同一であり、左右が反転した状態で設けられている。ここでは、左縦枠22と外障子3の戸先框33との間に設けられている係合部材6及び被係合部材7を例に挙げて説明する。
【0015】
左縦枠22は、図2に示すように、アルミニウム製の金属枠部221と合成樹脂製の樹脂枠部222とを有している。
金属枠部221は、見込み方向に沿う見込み板部221aと、見込み板部221aの室外側の端に設けられ左右方向に沿う外見付け板部221bと、見込み板部221aの室内側の端に設けられ左右方向に沿う内見付け板部221cと、見込み板部221aの見込み方向における中央より室内側の位置から枠体2の外周側(以下、単に外周側という)に突出し躯体に固定される躯体固定板部221dと、を有している。躯体固定板部221dは、躯体において室外側の見付け面に対面した状態で固定される。このため、枠体2は、躯体固定板部221dよりも室外側に設けられている部位が建物から張り出すように設けられる。
【0016】
見込み板部221aには、見込み方向における中央より室外側の位置から枠体2の内周側(以下、単に内周側という)に突出する金属内周突出部221eと、見込み板部221aにおける躯体固定板部221dと金属内周突出部221eとの間に設けられて内周側に突出する金属突起221fが設けられている。
【0017】
金属内周突出部221eは、外障子3が閉じられた状態で外障子3の戸先框33の外周側に設けられ、後述する溝部331cに挿入される部位である。金属内周突出部221eは、内周側に突出した先端に、室内側に延出されて見込み面をなす先端見込み壁部221gを有しており、先端見込み壁部221gの室内側の端に、樹脂枠部222の後述する樹脂先端係止部222eと互いに係止する金属先端係止部221hが設けられている。
【0018】
金属内周突出部221eの見込み板部221a側の部位は、内見付け板部221cの内周側の部位及び金属突起221fとともに、樹脂枠部222を係止して保持するための樹脂枠係止部をなしている。
【0019】
金属内周突出部221eの先端見込み壁部221gには、内周側、すなわち戸先框33と面内方向に対向する側に、鋼製の係合部材6が設けられている。係合部材6については、後に詳述する。
【0020】
樹脂枠部222は、金属突起221fに係止される樹脂突起222aと、樹脂突起222aより室外側で見込み板部221aの内面と対面して当接する室外側当接板部222bと、樹脂突起222aより室内側で見込み板部221aの内面と対面して当接する室内側当接板部222cと、を有している。樹脂枠部222は、金属突起221fと樹脂突起222aとが互いに係止し、室外側当接板部222bの室外側の端が金属内周突出部221eに、室内側当接板部222cの室内側の端が内見付け板部221cに、それぞれ係止されて金属枠部221に取り付けられている。
【0021】
室外側当接板部222bには、内周側に突出し、金属内周突出部221eと共に、外障子3の戸先框33の溝部331cに挿入される樹脂内周突出部222dが設けられている。樹脂内周突出部222dには、内周側に突出した先端に、金属先端係止部221hと互いに係止する樹脂先端係止部222eが設けられている。
【0022】
外障子3の戸先框33における框材本体部331は、長手方向すなわち上下方向に貫通しほぼ矩形状をなす中空部331aを有し、中空部331aの外周側には、中空部331aの外周側の壁部を形成する外周壁部331bを介して、面内方向に対向する左縦枠22側が開放されて内周側に窪む溝部331cが設けられている。中空部331aの内周側には、室内側に位置して内周側に延出された内周延出部331dと、室外側に嵌合される押縁333とで形成されるガラス収容部331eにガラス5の端部が収容されている。
【0023】
框材本体部331の中空部331aには、長手方向に沿って框材本体部331のほぼ全長にわたり、鋼製の戸先補強材332が設けられている。戸先補強材332は、面内方向に間隔を空けて対向する2つの対向板部332aの室外側の端どうしが、見付け方向に沿う連結板部332bにより連結されており、水平断面がコ字状をなしている。
【0024】
戸先補強材332において外周側に位置する対向板部332aには、外周側、すなわち左縦枠22と面内方向に対向する側に、鋼製の被係合部材7が、外周壁部331bに設けられた開口から溝部331c側に突出させて設けられている。被係合部材7については、後に詳述する。
【0025】
左縦枠22の先端見込み壁部221gに取り付けられる係合部材6は、図3に示すように、例えば鋼製の平板材から形成されており、先端見込み壁部221gに対面した状態で皿ねじ8によりねじ止めされる枠固定板部6aと、枠固定板部6aとほぼ垂直をなすように曲げ起こされた係合本体部6bと、を有している。枠固定板部6aは、ほぼ長方形状をなし、上下の端部側に皿ねじ8が挿通される皿もみ孔6cがそれぞれ設けられている。
【0026】
係合本体部6bは、2つの皿もみ孔6cの間に設けられている。係合本体部6bは、面内方向において対向する戸先框33側に延出された係合延出部6dと、係合延出部6dの延出された先端側の部位が上方に延出された上方延出部6eと、を有している。
【0027】
戸先補強材332の外周側の対向板部332aに取り付けられる被係合部材7は、図4に示すように、例えば鋼製の平板材から形成されており、対向板部332aに対面した状態でねじ9によりねじ止めされる框固定板部7aと、框固定板部7aとほぼ垂直をなすように曲げ起こされた被係合本体部7bと、を有している。框固定板部7aは、ほぼ長方形状をなし、上下の端部側にねじ9が挿通される挿通孔7cがそれぞれ設けられている。
【0028】
被係合本体部7bは、2つの挿通孔7cの間に設けられている。被係合本体部7bは、面内方向において対向する左縦枠22側に延出された被係合延出部7dと、被係合延出部7dの延出された先端が室内側に延出された内側延出部7eと、内側延出部7eの先端が内周側に延出され、被係合延出部7dと見込み方向に間隔を空けて対向する対向延出部7fと、を有している。
【0029】
係合部材6と被係合部材7とは、建具1が設置されて外障子3が閉止された状態で、図5に示すように、被係合部材7の被係合本体部7bの下端よりも係合部材6の上方延出部6eの上端の方が下に位置し、被係合本体部7bの下端と上方延出部6eの上端とが上下に間隔を空けて各々取り付けられている。
【0030】
係合部材6の上方延出部6eは、被係合本体部7bの下方であって、被係合延出部7dと対向延出部7fとの間のほぼ中央に配置されており、上方延出部6eの外周側の縁6fが、被係合本体部7bの内側延出部7eよりも内周側に位置するように配置されている。
【0031】
被係合部材7が取り付けられている戸先補強材332は、図5に示すように、下框32が備える戸車32aが固定されている下補強材32bと鋼製の連結金具30aにより連結されている。戸車32aは、係合部材6が取り付けられている左縦枠22と接合されて枠体2をなす下枠21が備える下レール21a上に支持されている。
【0032】
このため、外障子3は、下レール21aによって、枠体2に対する上下方向の位置が決められており、加熱されて熱伸びする際の、戸先框33と左縦枠22との上下方向の相対変位は、戸車32aと下レール21aとの接点が基準となる。
【0033】
建具1は、図6(a)に示すようにアルミニウム製の左縦枠22の先端見込み壁部221gに係合部材6が固定され、外障子3の戸先框33が有し、アルミニウムよりも線膨張係数が小さい鋼製の戸先補強材332に被係合部材7が固定されている。このため、建具1が火炎等により加熱されたときには、熱伸びにより、線膨張係数の大きなアルミニウム製の左縦枠22に固定された係合部材6の方が、鋼製の戸先補強材332に固定された被係合部材7よりも、基準となる戸車32aと下レール21aとの接点から、より離れる側に移動する。
【0034】
これにより、被係合部材7よりも下方に位置していた係合部材6は、図6(b)に示すように、上方に移動して、係合部材6の上方延出部6eが被係合部材7の被係合延出部7dと対向延出部7fとの間に挿入される。すなわち、建具1の通常使用時においては、係合部材6の上方延出部6eの上端は、被係合部材7の被係合本体部7bの下端よりも下方に離れて配置され、火災等により加熱されたときには、熱伸びにより係合部材6の上方延出部6eの上端が、被係合部材7の被係合本体部7bの下端よりも上になるような位置に、係合部材6と被係合部材7とが配置されている。このとき、被係合部材7は、左縦枠22及び戸先框33の長手方向において、基準となる戸車32aと下レール21aとの接点側の端に対して、係合部材6よりも、より離れた側に配置されている。
【0035】
そして、係合部材6と被係合部材7とは、熱伸びによる係合部材6と被係合部材7との相対移動量の差がより大きくなるように、基準となる、戸車32aと下レール21aとの接点からより離れた位置側、すなわち左縦枠22及び戸先框33の長手方向における上部側に設けられている。
【0036】
本実施形態の建具1によれば、障子3、4の面内方向において対向して対をなす左縦枠22には係合部をなす係合部材6が設けられており、外障子3の戸先框33には、左縦枠22が線膨張したときに係合部材6と係合する被係合部としての被係合部材7が設けられているので、火炎等により建具1が加熱されたときには、係合部材6と被係合部材7とが係合し、対向する左縦枠22と戸先框33とが離れることを防止することが可能となる。
【0037】
このとき、被係合部材7は、戸先框33において、係合部材6が設けられているアルミニウム製の左縦枠22よりも線膨張係数が小さい小線膨張部をなす戸先補強材332に設けられているので、左縦枠22に設けられた係合部材6の方が、戸先補強材332に設けられた被係合部材7よりも熱伸びによる移動量が大きくなる。
【0038】
このため、通常時には、係合部材6と被係合部材7とを、外障子3の開閉に支障がない位置に離して配置し、火炎等により加熱されたときに、左縦枠22と戸先補強材332との伸び量の相違を利用して係合部材6と被係合部材7とを係合させることが可能となる。すなわち、通常時には、スムーズな外障子3の開閉を確保しつつも火炎等により加熱された際には、係合部材6と被係合部材7とをより確実に係合させることが可能となる。
【0039】
そして、加熱されたときには係合部材6と被係合部材7とが係合して左縦枠22と戸先框33とが離れ難いので、枠体2と外障子3との間に隙間が生じることをより確実に防止することが可能となる。
【0040】
また、係合部材6が設けられている左縦枠22及び被係合部材7が設けられている戸先框33は各々、上下方向に沿う長手方向における下側にて、当該長手方向の相対移動が規制されているので、火炎等により加熱されると、規制されていない上側に向かって熱伸びが生じる。そして、係合部材6及び被係合部材7は、規制されている下側とは反対の、建具1の上部側に設けられているので、加熱されたときの伸び量の差はより大きくなる。
【0041】
このため、左縦枠22に設けられた係合部材6と戸先框33の戸先補強材332に設けられた被係合部材7との熱による移動量の差がより大きくなるので、加熱時には係合部材6と被係合部材7とが係合する構成としつつも、通常時における係合部材6と被係合部材7との間隔をより広く空けることが可能となる。このため、通常時におけるスムーズな外障子3の開閉をより確実に保ちつつも火炎等により加熱された際には、係合部材6と被係合部材7とを確実に係合させることが可能となる。
【0042】
また、火炎等により加熱されて係合部材6と被係合部材7とが係合することにより、係合部材6の上方延出部6eが、被係合部材7の被係合延出部7dと対向延出部7fとの間に配置される。このため、枠体2に対して外障子3が面外方向に移動すると、被係合延出部7dまたは対向延出部7fが上方延出部6eに接触して移動が規制されるので、枠体2と外障子3との間に隙間が生じることを防止することが可能となる。ここで、被係合部材7の被係合延出部7d及び対向延出部7fが、係合部の面外方向の移動を規制する面外方向規制部に相当する。
【0043】
また、火炎等により加熱されて係合部材6と被係合部材7とが係合することにより、係合部材6の上方延出部6eが、被係合部材7の内側延出部7eよりも戸先框33側にて、当該内側延出部7eと左右方向に対向する。このため、左縦枠22と戸先框33との間隔が広がる方向に戸先框33が移動すると、内側延出部7eが上方延出部6eに接触して戸先框33の移動が規制されるので、左縦枠22と戸先框33との間隔が広がって隙間が生じることを防止することが可能となる。ここで、被係合部材7の内側延出部7eが、係合部の、枠材と框材との間隔が広がる方向への移動を規制する面内方向規制部に相当する。
【0044】
また、火炎等により加熱されて係合部材6と被係合部材7とが係合することにより、係合部材6が上方に移動し、係合延出部6dと被係合部材7の内側延出部7eとの間隔がより狭くなる、或いは、係合延出部6dと内側延出部7eとが当接する。このため、たとえ、火炎等により加熱された外障子3が下レール21aから外れる場合であっても、内側延出部7eが係合延出部6dに当接して、左縦枠22により外障子3が支持されるので、外障子3が枠体2から脱落することを防止することが可能となる。ここで、係合部材6の係合延出部6d及び被係合部材7の被係合本体部7bが、互いの上下方向の移動を規制する上下方向規制部に相当する。
【0045】
上記実施形態においては、係合部材6が設けられている左縦枠22をアルミニウム製とし、左縦枠22によりも線膨張係数が小さな小線膨張部をなす戸先框33の戸先補強材332を鋼製とした例について説明したが、係合部材が設けられる部位の方が、被係合部材が設けられる部位よりも線膨張係数が大きい構成であれば、材質はこれに限るものではない。
【0046】
上記実施形態においては、被係合部材7を戸先補強材332とは別の部材にて構成した例について説明したが、被係合部材と戸先補強材は一体に形成されていてもよく、また、框材本体部が被係合部材を備えて、鋼で形成されていても構わない。
【0047】
上記実施形態においては、左縦枠22に係合部材6が固定され、戸先框33の戸先補強材332に被係合部材7が固定されている例について説明したが、これに限るものではない。例えば、左縦枠22が鋼製の補強材を備えており、当該補強材に被係合部材が固定され、戸先框において鋼よりも線膨張係数の大きな部材に係合部材が固定されていても構わない。
【0048】
また、上記実施形態では、上方延出部6eを有する部材を係合部材6とし、上方延出部6eが係合する被係合本体部7bを有する部材を被係合部材7として説明したが、これに限るものではない。すなわち、線膨張係数の大きな部材に固定された部材が係合部材であり、線膨張係数の小さな部材に固定された部材が被係合部材であり、例えば、上記係合部材6が戸先補強材332に固定され、被係合部材7が左縦枠22に固定され、熱伸びにより、より上方に移動した被係合部材7が、上方に位置する係合部材6と係合する構成であっても構わない。
【0049】
上述した本実施形態の作用効果は、建具1の左側に設けられた係合部材6及び被係合部材7について説明したが、係合部材6及び被係合部材7は、建具1の右側にも同様に設けられているので、右縦枠23と内障子4の戸先框43との間でも、同様である。
【0050】
また、上記実施形態においては、引き違い障子用の建具1を例に挙げて説明したが、これに限るものではない。例えば、図7に示すような、縦すべり出し窓用の建具10であっても構わない。このような建具10においては、たとえば、建具10の左側であって、障子11の左側の上下に開閉のためのリンク機構12が設けられている場合には、当該リンク機構12が、上枠13及び上框11aの熱伸びの基準となる。このため、係合部材6及び被係合部材7は、上枠13及び上框11aの長手方向における右側に設けることが望ましい。
【0051】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0052】
本実施形態には、少なくとも以下の発明が含まれる。
態様1:枠材が枠組みされて開口を形成する枠体と、框材が框組みされた框体を有し前記開口を閉止可能な障子と、を有する建具であって、前記障子の面内方向において対向して対をなす前記枠材及び前記框材のうちの一方の部材には、前記面内方向において互いに対向する部位に係合部が設けられており、前記対をなす前記枠材と前記框材とのうちの他方の部材は、線膨張係数が前記一方の部材よりも小さい小線膨張部を有し、前記一方の部材が線膨張したときに前記係合部と係合する被係合部が、前記小線膨張部に取り付けられて、前記面内方向において互いに対向する部位に設けられていることを特徴とする建具である。
【0053】
態様1の建具によれば、障子の面内方向において対向して対をなす枠材及び框材のうちの一方の部材には係合部が設けられており、他方の部材には、一方の部材が線膨張したときに係合部と係合する被係合部が設けられているので、火炎等により建具が加熱されたときには、係合部と被係合部とが係合し、対向する枠材と框材とが離れることを防止することが可能となる。このとき、被係合部は、他方の部材において、係合部が設けられている一方の部材よりも線膨張係数が小さい小線膨張部に設けられているので、一方の部材に設けられた係合部の方が、小線膨張部に設けられた被係合部よりも熱伸びによる移動量が大きくなる。
【0054】
このため、火炎等により加熱されないときには、係合部と被係合部とを、障子の開閉に支障がない位置に離して配置し、火炎等により加熱されたときに、一方の部材と小線膨張部との伸び量の相違を利用して係合部と被係合部とを係合させることが可能となる。すなわち、火炎等により加熱された際には、係合部と被係合部とをより確実に係合させることが可能な構成としつつも、通常時には、障子をスムーズに開閉することが可能となる。そして、加熱されたときには係合部と被係合部とが係合して枠材と框材とが離れ難いので、枠体と障子との間に隙間が生じることをより確実に防止することが可能となる。
【0055】
態様2:態様1に記載の建具であって、前記枠体と前記框体とは、前記対をなす前記枠材及び前記框材の長手方向における一方の端側に、当該長手方向の相対移動が規制されており、前記係合部及び前記被係合部は、前記長手方向における他方の端側に設けられていることを特徴とする。
【0056】
態様2の建具によれば、係合部または被係合部が設けられている枠体及び框体は、対をなす枠材及び框材の長手方向における一方の端側にて、当該長手方向の相対移動が規制されているので、火炎等により加熱されると、規制されていない他方の端側に向かって伸びる。そして、係合部または被係合部は、長手方向における一方の端とは反対の他方の端側に設けられているので、加熱されたときの伸び量は、一方の端側より大きい。
【0057】
このため、一方の部材と小線膨張部に設けられた係合部と被係合部との熱による伸び量の差が大きくなるので、通常時における係合部と被係合部との間隔をより広く空けておいても、加熱時には係合部と被係合部とを係合させることが可能となる。このため、火炎等により加熱された際には、係合部と被係合部とをより確実に係合させることが可能な構成としつつも、通常時には、スムーズな障子の開閉をより確実に実現することが可能となる。
【0058】
態様3:態様1または態様2に記載の建具であって、前記被係合部は、前記係合部の、前記障子の面外方向の移動を規制する面外方向規制部を有することを特徴とする。
【0059】
態様3の建具によれば、火炎等により加熱されて係合部と被係合部とが係合することにより、枠体に対して障子が面外方向に移動して隙間が生じることを防止することが可能となる。
【0060】
態様4:態様1乃至態様3のいずれかに記載の建具であって、前記被係合部は、前記係合部の、前記面内方向において前記枠材と前記框材との間隔が広がる方向への移動を規制する面内方向規制部を有することを特徴とする。
【0061】
態様4の建具によれば、火炎等により加熱されて係合部と被係合部とが係合することにより、面内方向において枠材と框材との間隔が広がって隙間が生じることを防止することが可能となる。
【0062】
態様5:態様1乃至態様4のいずれかに記載の建具であって、前記係合部及び前記被係合部は、互いの上下方向の移動を規制する上下方向規制部を有する。
【0063】
態様5の建具によれば、火炎等により加熱されて係合部と被係合部とが係合することにより、互いの上下方向の移動が規制されるので、障子が枠体から外れ落ちることを防止することが可能となる。
【0064】
態様6:態様1乃至態様5のいずれかに記載の建具であって、前記一方の部材は、アルミニウム製の部材であり、前記小線膨張部は前記他方の部材に備えられた鋼製の部材であることを特徴とする。
【0065】
態様6の建具によれば、係合部はアルミニウム製の部材に設けられ、被係合部材は鋼製の部材に設けられているので、鋼よりも線膨張係数の大きな係合部が設けられているアルミニウム製の部材が、被係合部が設けられている鋼製の部材よりも大きく伸びることにより係合部と被係合部とをより確実に係合させることが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
1 建具、2 枠体、2a 開口、3 外障子(障子)、
6 係合部材(係合部)、6d 係合延出部(上下方向規制部)、
7 被係合部材(被係合部)、7b 被係合本体部(上下方向規制部)、
7d 被係合延出部(面外方向規制部)、7e 内側延出部(面内方向規制部)、
7f 対向延出部(面外方向規制部)、10 建具、11 障子、
11a 上框(框材)、13 上枠(枠材)、22 左縦枠(枠材)、
30 框体、33 戸先框(框材)、332 戸先補強材(小線膨張部)、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7