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特開2024-174474RFIDタグ、集積回路およびRFIDタグの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174474
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】RFIDタグ、集積回路およびRFIDタグの制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20241210BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20241210BHJP
【FI】
G06K19/07 130
G06K19/07 090
G06K19/07 230
H02J50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092316
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】520233375
【氏名又は名称】富士通セミコンダクターメモリソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】田村 哲朗
(57)【要約】
【課題】整流回路からの電源電圧により動作する負荷の消費電力が変化する場合にも、入力インピーダンスの不整合を抑制して電力効率の低下を抑制する。
【解決手段】RFIDタグは、アンテナで受信する電力に応じて動作する集積回路および負荷を含み、集積回路は、直列に接続される複数のダイオードと、互いに隣接する一対のダイオードの接続ノードとアンテナとの間にそれぞれ配置される複数のキャパシタとを含み、アンテナで受信する交流信号をダイオードとキャパシタとを各々含む複数段のチャージポンプにより整流することで電源電圧を生成する整流回路と、電源電圧により動作する負荷の消費電力に応じて、電源電圧の生成に使用するチャージポンプの段数を変更する制御回路と、を有する。RFIDタグの通信距離を効率的に伸ばすことができるため、RFIDタグが搭載されるシステムの信頼性を向上することができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナで受信する電力に応じて動作する集積回路および負荷を含み、
前記集積回路は、
直列に接続される複数のダイオードと、互いに隣接する一対の前記ダイオードの接続ノードと前記アンテナとの間にそれぞれ配置される複数のキャパシタとを含み、前記アンテナで受信する交流信号を前記ダイオードと前記キャパシタとを各々含む複数段のチャージポンプにより整流することで電源電圧を生成する整流回路と、
前記電源電圧により動作する前記負荷の消費電力に応じて、前記電源電圧の生成に使用する前記チャージポンプの段数を変更する制御回路と、を有する、
RFIDタグ。
【請求項2】
前記負荷が動作する第1動作モードと前記負荷の動作が停止する第2動作モードとを有し、
前記制御回路は、前記第1動作モードにおいて前記電源電圧を生成する前記チャージポンプの段数を、前記第2動作モードにおいて前記電源電圧を生成する前記チャージポンプの段数より減らす、
請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項3】
前記整流回路から出力される電源電流を検出する電流検出回路を有し、
前記制御回路は、前記電源電流が閾値以上のときの前記チャージポンプの段数を、前記電源電流が前記閾値より小さいときの前記チャージポンプの段数より減らす、
請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項4】
前記整流回路は、
直列に接続された複数の前記ダイオードを含む第1ダイオード群と、
直列に接続された複数の前記ダイオードを含み、出力が前記負荷の入力に電気的に接続された第2ダイオード群と、
前記第2ダイオード群の入力と接地線との間に配置されたダイオードと、
前記第1ダイオード群の入力を接地線に接続する第1スイッチと、
前記第1ダイオード群の出力を前記第2ダイオード群の入力に接続する第2スイッチと、を有し、
前記制御回路は、前記整流回路から出力される電源電流が所定値以上のときに前記第1スイッチおよび前記第2スイッチをオフし、前記整流回路から出力される電源電流が所定値より小さいときに前記第1スイッチおよび前記第2スイッチをオンする、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のRFIDタグ。
【請求項5】
前記整流回路は、
直列に接続された複数の前記ダイオードを含み、初段の前記ダイオードが接地された第1ダイオード群と、
直列に接続された複数の前記ダイオードを含み、出力が前記負荷の入力に電気的に接続された第2ダイオード群と、
前記第2ダイオード群の入力と接地線との間に配置されたダイオードと、
前記第1ダイオード群の出力を前記第2ダイオード群の入力に接続する第1スイッチと、
前記第1ダイオード群の出力を前記負荷の入力に電気的に接続する第2スイッチと、を有し、
前記制御回路は、前記整流回路から出力される電源電流が所定値以上のときに前記第1スイッチをオフし、前記第2スイッチをオンし、前記整流回路から出力される電源電流が所定値より小さいときに前記第1スイッチをオンし、前記第2スイッチをオフする、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のRFIDタグ。
【請求項6】
前記整流回路と前記負荷とを接続する電源線上に配置される電源スイッチを有し、
前記制御回路は、前記負荷を動作させる場合、前記電源電圧が前記負荷の動作電圧以上になったときに前記電源スイッチをオンする、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のRFIDタグ。
【請求項7】
アンテナで受信する電力に応じて動作する集積回路であって、
直列に接続される複数のダイオードと、互いに隣接する一対の前記ダイオードの接続ノードと前記アンテナとの間にそれぞれ配置される複数のキャパシタとを含み、前記アンテナで受信する交流信号を前記ダイオードと前記キャパシタとを各々含む複数段のチャージポンプにより整流することで電源電圧を生成する整流回路と、
前記電源電圧により動作する負荷の消費電力に応じて、前記電源電圧の生成に使用する前記チャージポンプの段数を変更する制御回路と、を有する、
集積回路。
【請求項8】
アンテナで受信する電力に応じて動作する集積回路および負荷を含むRFIDタグの制御方法であって、
前記集積回路が有する、直列に接続される複数のダイオードと、互いに隣接する一対の前記ダイオードの接続ノードと前記アンテナとの間にそれぞれ配置される複数のキャパシタとを含む整流回路が、前記アンテナで受信する交流信号を前記ダイオードと前記キャパシタとを各々含む複数段のチャージポンプにより整流することで電源電圧を生成し、
前記集積回路が有する制御回路が、前記電源電圧により動作する前記負荷の消費電力に応じて、前記電源電圧の生成に使用する前記チャージポンプの段数を変更する、
RFIDタグの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグ、集積回路およびRFIDタグの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナで信号と電力とを受信する半導体装置において、整流回路に含まれるダイオードとキャパシタとによるチャージポンプの段数を、受信する電力の大きさに応じて切り替えることで、適切な電源電圧を生成する手法が提案されている。半導体装置は、受信電力が小さいときにチャージポンプの段数を増やして所定の電源電圧を確保し、受信電力が大きいときにチャージポンプの段数を減らして電力の損失を最小限にする(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、リーダライタとの間で無線通信を実施するRFIDタグは、インピーダンスが可変なマッチング回路と、ダイオードとキャパシタとを含む複数段のチャージポンプを含み、リーダライタから受信する信号を整流して直流電圧を出力する整流回路とを有する。RFIDタグは、入力信号の強度の低下をリーダライタからのインピーダンスの調整指示として検出したときに、マッチング回路のインピーダンスを調整する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-254967号公報
【特許文献2】特開2019-054398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
段数が切り替え可能な複数のチャージポンプを含む整流回路の入力インピーダンスは、チャージポンプの段数の切り替えにより変化する。このため、チャージポンプの段数の切り替え時に入力インピーダンスを整合しない場合、整流回路から負荷に供給する電力が不足するおそれがある。また、入力インピーダンスは、整流回路から負荷に流れる負荷電流が変化する場合にも変化するため、負荷電流の変化に応じて入力インピーダンスを整合しない場合、負荷を動作させるための適正な電力が生成されないおそれがある。
【0006】
1つの側面では、本発明は、整流回路からの電源電圧により動作する負荷の消費電力が変化する場合にも、入力インピーダンスの不整合を抑制して電力効率の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの観点によれば、RFIDタグは、アンテナで受信する電力に応じて動作する集積回路および負荷を含み、前記集積回路は、直列に接続される複数のダイオードと、互いに隣接する一対の前記ダイオードの接続ノードと前記アンテナとの間にそれぞれ配置される複数のキャパシタとを含み、前記アンテナで受信する交流信号を前記ダイオードと前記キャパシタとを各々含む複数段のチャージポンプにより整流することで電源電圧を生成する整流回路と、前記電源電圧により動作する前記負荷の消費電力に応じて、前記電源電圧の生成に使用する前記チャージポンプの段数を変更する制御回路と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
整流回路からの電源電圧により動作する負荷の消費電力が変化する場合にも、入力インピーダンスの不整合を抑制して電力効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態におけるRFIDタグの一例を示すブロック図である。
図2図1のRFIDタグを含むシステムの一例を示すブロック図である。
図3】アンテナのインピーダンスとLSIの入力インピーダンスとの整合の一例を示す説明図である。
図4図3のRFIDタグにおいて、LSIへの入力信号の強度と、LSIの入力抵抗、反射係数および負荷電流との関係を示す説明図である。
図5】整流回路の回路段数と、入力抵抗および入力容量との関係の一例を示す説明図である。
図6図1のLSIにおける要部の一例を示す回路図である。
図7図6の整流回路の段数の切り替えにより入力インピーダンスを整合させる一例を示す説明図である。
図8図6の電源電圧制御回路の一例を示すブロック図である。
図9図6の電源電圧制御回路の別の例を示すブロック図である。
図10】別の実施形態におけるRFIDタグに搭載されるLSIの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態が説明される。以下では、信号等の情報が伝達される信号線および端子には、信号名と同じ符号が使用され、電圧が供給される電圧線および端子には、電圧名と同じ符号が使用される。
【0011】
図1は、一実施形態におけるRFID(Radio Frequency Identification)タグの一例を示す。図1に示すRFIDタグ10は、データ等の情報とともに受ける電力により動作するパッシブRFIDタグである。RFIDタグ10は、アンテナ12とLSI(Large-Scale Integration)100と負荷200とを有する。LSI100は、アンテナ12が接続される端子RF+、RF-と、負荷200が接続される端子VOUTとを有する。LSI100は、集積回路の一例である。なお、アンテナ12は、RFIDタグ10に外付けされてもよく、負荷200は、LSI100内に搭載されてもよい。
【0012】
LSI100は、整流回路110、電源電圧制御回路120、変調復調回路130、ロジック回路140およびメモリ150を有する。図1に示すLSI100では、各回路間を接続する電源線のみが示され、信号線の記載は省略されている。
【0013】
整流回路110は、アンテナ端子RF+、RF-を介してアンテナ12から受ける相補の交流信号を整流することで電源電圧を生成し、生成した電源電圧を電源電圧制御回路120を介して電源電圧VOUTとして出力する。電源電圧VOUTは、電源電圧制御回路120、変調復調回路130、ロジック回路140、メモリ150および負荷200の動作電圧として使用される。整流回路110の例は、図6に示される。
【0014】
電源電圧制御回路120は、整流回路110により生成された電源電圧VOUTに基づいて、ロジック回路140を起動またはリセットする制御信号等を出力する。電源電圧制御回路120は、起動されたロジック回路140から受ける制御信号に基づいて、整流回路110の動作を制御する制御信号と、LSI100と負荷200との接続を制御する制御信号と、負荷200の動作を制御する制御信号とを出力する。電源電圧制御回路120の例は、図8および図9に示される。
【0015】
変調復調回路130は、アンテナ端子RF+、RF-を介してアンテナ12から受ける交流信号を復調してデータ等の情報を取り出し、取り出した情報をロジック回路140に出力する。変調復調回路130は、ロジック回路140から受けるデータ等の情報を変調し、変調した信号をアンテナ端子RF+、RF-を介してアンテナ12に出力する。
【0016】
なお、LSI100がアンテナ端子RF+を有し、アンテナ端子RF-の代わりに接地端子を有する場合、整流回路110は、アンテナ端子RF+を介してアンテナ12から受ける交流信号を整流することで電源電圧を生成する。変調復調回路130は、アンテナ端子RF+を介してアンテナ12から受ける交流信号を復調し、変調した信号をアンテナ端子RF+を介してアンテナ12に出力する。
【0017】
ロジック回路140は、変調復調回路130から受ける情報が書き込みコマンドを示す場合、書き込みコマンドともに受けたデータをメモリ150に書き込む。ロジック回路140は、変調復調回路130から受ける情報が読み出しコマンドを示す場合、メモリ150から読み出したデータを変調復調回路130に出力する。なお、ロジック回路140は、変調復調回路130から受ける情報がモニタコマンドを示す場合、LSI100の状態を示す情報(動作モード、電源電圧VOUTの値等)を変調復調回路130に出力してもよい。
【0018】
メモリ150は、例えば、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)等の電気的に書き換え可能な不揮発性メモリである。メモリ150には、アンテナ12を介してRFIDタグ10の外部から受けるデータ、RFIDタグ10内で使用される各種制御情報およびRFIDタグ10の識別情報等が記憶される。なお、メモリ150は、ReRAM(Resistive Random Access Memory)またはMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)でもよい。
【0019】
負荷200は、電源電圧VOUTを受けて動作する。例えば、負荷200は、ロジック回路140から電源電圧制御回路120に指示される動作モードに応じて、動作し、または動作を停止する。負荷200は、LSI100の動作を補助する機能を有してもよく、LSI100の機能に追加される機能を有してもよい。また、負荷200は、電源電圧VOUTに応じて充電されるバッテリーを有し、アンテナ12から電力を受けていないときにLSI100等のRFIDタグ10に搭載される回路を動作させる機能を有してもよい。
【0020】
図2は、図1のRFIDタグ10を含むシステムの一例を示す。図2に示すシステムSYSは、RFIDタグ10と、RFIDタグ10との間で無線信号を送受信するリーダライタ20およびアンテナ22とを有する。リーダライタ20は、アンテナ22から無線信号(情報および電力)を送信し、RFIDタグ10から返信される情報を受信する。
【0021】
図3は、アンテナのインピーダンスとLSIの入力インピーダンスとの整合の一例を示す。図3に示すRFIDタグは、図1と同様にアンテナと整流回路と負荷とを有する。整流回路は、アンテナを介して受ける交流の入力信号を整流して電源電圧を生成し、生成した電源電圧を負荷に供給する。
【0022】
符号PINは、入力信号の強度を示し、符号ILOADは、整流回路から負荷への出力電流を示す。符号ILOADは、電源電圧を受けて動作する負荷の消費電流である。以下では、負荷の消費電流は、負荷電流とも称される。符号RLOADは、負荷の大きさを抵抗成分として示す。符号ZANTは、アンテナのインピーダンスを示す。符号ZLSIは、LSIの入力インピーダンスを示す。LSIの入力インピーダンスZLSIは、図3の整流回路の特性により決まる。
【0023】
図3のRFIDタグにおいて、アンテナとLSIの入力部との間の入力インピーダンスを整合させることで、LSIは、アンテナで受ける入力電圧VINから最大限の電力を得ることができる。一方、入力インピーダンスが整合されない場合、アンテナで受ける入力電圧VINの一部は、(反射係数Γ)*(入力電圧VIN)として反射するため、LSIに十分な電力が供給されない場合がある(符号*は、乗算符号)。反射係数Γは、入力電圧VINの反射量を相対的に示すため、以下では、入力電圧VINの反射量は、反射Γとして説明される。
【0024】
アンテナのインピーダンスZANTを式(1)、LSIの入力インピーダンスZLSIを式(2)とすると、反射係数Γは、式(3)により示される。入力インピーダンス整合の条件は、式(4)に示される。式(1)において、符号RANTは、アンテナの抵抗を示し、符号Xはリアクタンスを示す。式(1)、(2)において、符号jは、虚数単位を示す。式(2)において、符号Rは、LSIの入力抵抗を示し、符号Cは、LSIの入力容量を示し、符号ωは、入力信号の角周波数を示す。
【0025】
ANT=RANT+jXANT ‥(1)
LSI=R||(1/jωC) ‥(2)
Γ=(ZLSI-ZANT)/(ZLSI+ZANT) ‥(3)
ANT=ZLSI ‥(4)
【0026】
図4は、図3のRFIDタグにおいて、LSIへの入力信号の強度PINと、LSIの入力抵抗R、反射係数Γおよび負荷電流ILOADとの関係を示す。図4の左側は、負荷の大きさRLOADが一定の場合を示し、図4の右側は、負荷の大きさRLOADが切り替え可能である場合を示す。例えば、図3のRFIDタグは、負荷が動作を停止するモード(RLOAD大)と、負荷が動作するモード(RLOAD小)とを有するとする。
【0027】
なお、LSIの入力容量Cは、入力信号の強度PINによらずほぼ一定であり、入力容量Cの影響は、アンテナのリアクタンスの調整によりキャンセルできるため、図示は省略する。
【0028】
例えば、入力信号強度PINが大きいほど、整流回路のダイオードに流れる電流が増加し、ダイオードの抵抗は低下する。このため、PIN-R特性に示すように、LSIの入力抵抗Rは、入力信号強度PINが大きいほど小さくなる。
【0029】
IN-Γ特性に示すように、反射Γは、入力信号強度PIN(すなわち、電力)の増加に伴い小さくなり、アンテナ抵抗RANTとLSIの入力抵抗Rとが一致したときに最も小さくなる。入力信号強度PINがさらに大きくなると反射(Γ)は徐々に大きくなる。このため、入力信号強度PINが大きい領域でも、入力信号として得られる電力のうち、反射する電力は利用できない。
【0030】
IN-ILOAD特性に示すように、負荷電流ILOADは、反射Γが最小になる入力信号強度PINまで入力信号強度PINの増加とともに増加し、その後は、反射(Γ)の増加に伴い増加量が緩やかになる。
【0031】
以上より、LSIを動作させる電力が得られる最小の入力信号強度PINに対して反射Γが最も小さくなるようにアンテナの抵抗値RANTを調整することで、RFIDタグの通信距離を効率的に伸ばすことができる。
【0032】
また、式(2)に示したLSIの入力インピーダンスZLSIは、整流回路のダイオードに流れる電流によって決まるため、電流が流れる負荷の大きさRLOADにも依存する。図4の右側のPIN-R特性に示すように、LSIの入力抵抗Rは、負荷の大きさRLOADが大きいほど高くなる。これは、負荷の大きさRLOADが大きい場合、負荷電流ILOADが減少し、整流回路のダイオードに流れる電流が減少し、LSIの入力抵抗Rが増加するためである。
【0033】
図4の右側に示すように、負荷の大きさRLOADが大きい場合に合わせてアンテナの抵抗値をRANT1に設定した場合、負荷の大きさRLOADが小さいときの適切な入力信号強度PIN図4(a))での反射Γは大きくなる(図4(b))。アンテナの抵抗値をRANT1に設定した場合、反射Γが最小になる入力信号強度PINは、図4(a)の適切値PINより小さくなる(図4(c))。また、アンテナの抵抗値をRANT1に設定した場合、図4(a)の適切値PINにおける負荷電流ILOADは、小さくなる(図4(d))。
【0034】
アンテナの抵抗値をRANT1より低い値RANT2に設定することで、図4(a)の適切値PINにおける反射Γを最小にすることができる(図4(e)、(f))。そして、図4(a)の適切値PINにおける負荷電流ILOADを増加させることができる(図4(g))。換言すれば、アンテナの抵抗値をRANT2に下げて、アンテナのインピーダンスZANTとLSIの入力インピーダンスZLSIとを整合させることで、負荷の大きさRLOADが小さいときに負荷電流ILOADを増加することができる。
【0035】
なお、PIN-R特性の右側の特性に符号(h)で示すように、入力信号強度PINが大きく、入力抵抗Rがアンテナ抵抗RANT1より小さい状態で負荷電流ILOADが増加、すなわち負荷RLOADが減少すると、入力抵抗Rが低下して反射が増えるため、整流回路の出力電圧は低下する。このとき、特許文献1の技術では、チャージポンプの段数が増えるため、図5のPIN-R特性に示すように、入力抵抗Rが低下して反射がさらに増え、インピーダンス整合が悪化するという悪循環になる。
【0036】
図5は、整流回路の回路段数と、入力抵抗および入力容量との関係の一例を示す。例えば、整流回路は、接地線と負荷との間に直列に接続される複数のダイオードDと、互いに隣接する一対のダイオードDの接続ノードとアンテナ端子RF+(またはRF-)との間にそれぞれ配置される複数のキャパシタCとを含む。
【0037】
ダイオードDは、アンテナ端子RF+、RF-から見ると、アンテナ端子RF+、RF-間に並列に接続される。このため、ダイオードDの段数が増えると、アンテナ間の抵抗、すなわちLSIの入力抵抗Rpは低下する。また、図4のPIN-R特性に示したように、LSIの入力抵抗Rは、入力信号強度PINが大きいほど小さくなる。
【0038】
LSIの入力容量Cは、キャパシタの数にほぼ比例するため、チャージポンプの段数に依存する。しかし、LSIの入力容量Cは、入力信号の強度PINによらずほぼ一定である。
【0039】
図6は、図1のLSI100における要部の一例を示す。図6において、実線は、電圧が伝達される電圧線を示し、点線は、制御信号が伝達される信号線を示す。LSI100は、整流回路110により複数段のチャージポンプを使用して電源電圧を生成するとともに、制御回路120により負荷200の消費電力に応じてチャージポンプの段数を変更する制御方法を実施する。
【0040】
整流回路110は、スイッチSW1、SW2と、スイッチSW1、SW2の間に直列に接続された4個のダイオードDと、スイッチSW2と電源電圧制御回路120との間に直列に接続された5個のダイオードDとを有する。スイッチSW1は、第1スイッチの一例であり、スイッチSW2は、第2スイッチの一例である。
【0041】
各ダイオードDのアノードは、接地線側に配置され、各ダイオードDのカソードは、電源電圧制御回路120側に配置される。また、整流回路110は、スイッチSW2の電源電圧制御回路120側に配置されるダイオードDのカソードにカソードが接続され、アノードが接地線に接続されたダイオードDを有する。
【0042】
整流回路110は、互いに隣接する一対のダイオードDの接続ノードとアンテナ端子RF+(またはRF-)との間にそれぞれ配置される8個のキャパシタCを有する。偶数番目のダイオードDのアノードは、キャパシタCを介してアンテナ端子RF+に接続されている。奇数番目のダイオードDのアノードは、初段のダイオードDを除き、キャパシタCを介してアンテナ端子RF-に接続されている。
【0043】
整流回路110において、チャージポンプの1段分は、ダイオードDとダイオードDのアノードに接続されたキャパシタCである。そして、整流回路110は、スイッチSW1側から順次配置された4段のチャージポンプと、電源電圧制御回路120側に順次配置された4段のチャージポンプとを有する。スイッチSW1側に順次配置された4段のチャージポンプのダイオードDは、第1ダイオード群の一例である。電源電圧制御回路120側に順次配置された4個のチャージポンプのダイオードDは、第2ダイオード群の一例である。
【0044】
なお、図6では、整流回路110が、4段または8段のチャージポンプとして動作する例が示されるが、チャージポンプの段数は、4段と8段とに限定されない。チャージポンプは、生成する電源電圧の値に応じた適切な段数に設定される。また、図6では、チャージポンプの段数を2段階に切り替える例が示されるが、チャージポンプの切り替えは、3段階以上でもよい。
【0045】
また、LSI100がアンテナ端子RF+を有し、アンテナ端子RF-を持たない場合、アンテナ端子RF-の代わりに接地端子が設けられ、初段を除く奇数番目のダイオードDのアノードは、キャパシタCを介して接地端子に接続されてもよい。
【0046】
整流回路110の最終段のダイオードDは、電源電圧制御回路120およびスイッチSW3を介して負荷200の入力である電源端子に接続される。例えば、スイッチSW1、SW2は、nチャネルMOSトランジスタであり、スイッチSW3は、pチャネルMOSトランジスタである。スイッチSW3は、電源スイッチの一例である。
【0047】
電源電圧制御回路120は、負荷200が動作せず、整流回路110を8段のチャージポンプとして動作させるとき、スイッチSW1、SW2をオンするスイッチ制御信号をスイッチSW1、SW2に出力する。電源電圧制御回路120は、負荷200が動作し、整流回路110を4段のチャージポンプとして動作させるとき、スイッチSW1、SW2をオフするスイッチ制御信号をスイッチSW1、SW2に出力する。
【0048】
負荷200が動作しないとき、整流回路110から出力される電源電流は、図1の電源電圧制御回路120、変調復調回路130、ロジック回路140およびメモリ150に供給される。このときの電源電流は、所定値より小さいとする。負荷200が動作するとき、整流回路110から出力される電源電流は、図1の負荷200、電源電圧制御回路120、変調復調回路130、ロジック回路140およびメモリ150に供給される。このときの電源電流は、所定値以上であるとする。
【0049】
この場合、電源電圧制御回路120は、負荷200が動作しないことで電源電流が所定値より小さいときにスイッチSW1、SW2をオンし、負荷200が動作することで電源電流が所定値以上のときにスイッチSW1、SW2をオフする。電源電圧制御回路120は、チャージポンプの段数を変更する制御回路の一例である。
【0050】
スイッチSW1は、スイッチSW2のオフ中にスイッチSW1、SW2間の4段のチャージポンプがポンプ動作することを抑止する。これより、整流回路110を4段のチャージポンプとして動作させるときにスイッチSW2の入力側のノードNDの電圧が上限値を超えることを抑止することができ、整流回路110が破壊することを抑止することができる。
【0051】
LSI100の起動時に整流回路110により電源電圧が生成されるまでスイッチSW1、SW2、SW3のオン/オフが制御できない場合、電源電圧制御回路120は、LSI100の起動時に、スイッチSW1、SW2、SW3をオフするように設計される。この場合、LSI100の起動時に整流回路110は、4段のチャージポンプとして動作し、電源電圧制御回路120を動作させる最小電力を確保する。
【0052】
電源電圧の上昇により動作を開始した電源電圧制御回路120は、負荷200を動作させない場合、スイッチSW1、SW2をオンして整流回路110を8段のチャージポンプとして動作させ、スイッチSW3をオフする。一方、電源電圧の上昇により動作を開始した電源電圧制御回路120は、負荷200を動作させる場合、スイッチSW1、SW2をオフして整流回路110を4段のチャージポンプとして動作させる。また、電源電圧制御回路120は、スイッチSW3をオンすることで、負荷200に電源電圧を供給する。
【0053】
一方、LSI100の起動時に、整流回路110により電源電圧が生成されなくてもスイッチSW1-SW3のオン/オフが制御できる場合、電源電圧制御回路120は、LSI100の起動時にスイッチSW1、SW2をオンし、スイッチSW3をオフする。これにより、整流回路110は、8段のチャージポンプとして動作する。その後、電源電圧制御回路120は、負荷200を動作させる場合、スイッチSW1、SW2をオフして整流回路110を4段のチャージポンプとして動作させるとともに、スイッチSW3をオンする。
【0054】
図7は、図6の整流回路110の段数の切り替えにより入力インピーダンスを整合させる一例を示す。図4および図5と同様の特性については、詳細な説明は省略する。PIN-R特性において、LSIの入力抵抗Rは、負荷の大きさRLOADが大きいほど高くなり、ダイオードDの段数が少ないほど高くなる。
【0055】
図7に示す例では、負荷の大きさRLOADが大きい場合、ダイオードDが8段のほうが4段に比べて、入力抵抗Rがアンテナ抵抗RANTに近くなり、反射Γが小さくなるため、インピーダンス整合のずれを小さくでき、負荷電流ILOADを大きくすることができる。一方、負荷の大きさRLOADが小さい場合、例えば、ダイオードDが8段での入力信号強度PINが大きい領域では、入力抵抗Rがアンテナ抵抗RANTから大きくずれてしまう。この場合、ダイオードDを4段に切り替えた方が、インピーダンス整合が改善して大きい負荷電流ILOADを得ることができる。
【0056】
例えば、RFIDタグ10が、負荷200を動作させる第1動作モード(負荷の大きさRLOAD小、負荷電流ILOAD大)と、負荷200の動作を停止する第2動作モード(負荷の大きさRLOAD大、負荷電流ILOAD小)とを有するとする。この場合、第1動作モードでは、チャージポンプは4段に設定され、第2動作モードでは、チャージポンプは8段に設定される。
【0057】
第1動作モードでは、チャージポンプを8段に設定する場合に比べて、より小さい入力信号強度PINでLSI100を動作させることができる(図7(a))。第2動作モードでは、チャージポンプを4段に設定する場合に比べて、より小さい入力信号強度PINでLSI100を動作させることができる(図7(b))。このように、本実施形態は、RFIDタグ10が消費電力の異なる動作モードを有し、用途や使用環境に応じて動作モードを選択する場合に有用である。
【0058】
なお、LSIの入力容量Cの容量値は、4段での動作の場合と8段での動作の場合とで変わらず、入力信号の強度PINに対してもほぼ一定である。入力容量Cの影響は、アンテナのリアクタンスの調整によりキャンセルすることができる。
【0059】
図8は、図6の電源電圧制御回路120の一例を示す。図8においても、実線は、電圧が伝達される電圧線を示し、点線は、制御信号が伝達される信号線を示す。図8に示す電源電圧制御回路120は、ロジック回路140によって設定されるLSI100の動作モードに応じて、整流回路110のダイオードDの段数を8段または4段に切り替え、負荷200の動作を制御する。
【0060】
電源電圧制御回路120は、電圧検出回路121、制御回路122およびnチャネルMOSトランジスタNMを有する。電圧検出回路121および制御回路122は、電源電圧VOUTを受けて動作する。電圧検出回路121は、整流回路110から出力される電源電圧VOUTを検出する。電圧検出回路121は、電源電圧VOUTが所定の上限値を超えた場合、nチャネルMOSトランジスタNMをオンさせて、電源線VOUTの電荷を接地線に逃がす。
【0061】
電圧検出回路121は、電源電圧VOUTがLSI100の動作電圧に到達した場合、ロジック回路140に出力するリセット信号RSTを解除してロジック回路140にLSI100の起動処理を実施させる。一方、電圧検出回路121は、電源電圧VOUTがLSI100の動作電圧より低下した場合、ロジック回路140にリセット信号RSTを出力し、ロジック回路140にLSI100をリセットさせる。
【0062】
ロジック回路140は、例えば、内蔵するCPU(Central Processing Unit)等のコントローラが実行するプログラムに基づいて、LSI100の動作モードを設定し、設定した動作モードを示す制御信号CNTLを制御回路122に出力する。例えば、動作モードは、負荷200を動作させる第1動作モードと、負荷200の動作を停止する第2動作モードとを含む。
【0063】
制御回路122は、ロジック回路140から受ける制御信号CNTLが負荷200を動作させる第1動作モードを示すとき、整流回路110を4段のチャージポンプとして動作させ、負荷200を動作させる制御を実施する。例えば、制御回路122は、スイッチSW1、SW2をオフさせるスイッチ制御信号とスイッチSW3をオンさせるスイッチ制御信号をスイッチSW1、SW2、SW3にそれぞれ出力する。また、制御回路122は、負荷200を動作させる動作制御信号を負荷200に出力する。
【0064】
例えば、制御回路122は、ロジック回路140から第1動作モードを示す制御信号CNTLを受けた後、電源電圧VOUTが負荷200の動作電圧以上になったことを示す制御信号CNTLを受けた場合、スイッチSW3をオンさせる。これにより、電源電圧VOUTが安定しない期間に負荷200に電源電圧VOUTが供給されることを抑止することができ、負荷200の誤動作を抑止することができる。
【0065】
一方、制御回路122は、ロジック回路140から受ける制御信号CNTLが負荷200の動作を停止させる第2動作モードを示すとき、整流回路110を8段のチャージポンプとして動作させ、負荷200の動作を停止する制御を実施する。例えば、制御回路122は、スイッチSW1、SW2をオンさせるスイッチ制御信号とスイッチSW3をオフさせるスイッチ制御信号をスイッチSW1、SW2、SW3にそれぞれ出力する。また、制御回路122は、負荷200の動作を停止させる動作制御信号を負荷200に出力する。
【0066】
図9は、図6の電源電圧制御回路120の別の例を示す。図8と同一または同様の要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。図9に示す電源電圧制御回路120は、整流回路110から負荷200等に流れる電源電流に応じて、整流回路110のダイオードDの段数を8段または4段に切り替え、負荷200の動作を制御する。
【0067】
電源電圧制御回路120は、電圧検出回路121、電流検出回路123、第1制御回路124、第2制御回路125、センス抵抗126およびnチャネルMOSトランジスタNMを有する。電圧検出回路121、電流検出回路123、第1制御回路124および第2制御回路125は、電源電圧VOUTを受けて動作する。電圧検出回路121およびnチャネルMOSトランジスタNMは、図8の電圧検出回路121およびnチャネルMOSトランジスタNMとそれぞれ同じである。
【0068】
センス抵抗126は、電源線VOUT上に配置され、電源線VOUTを流れる電源電流に応じた電圧をセンス抵抗126の両端に生成する。電流検出回路123は、センス抵抗126の両端に生成される電圧に基づいて電源線VOUTを流れる電源電流を検出し、検出結果を第1制御回路124に出力する。例えば、検出結果は、電源線VOUTを流れる電源電流が閾値以上であるか、閾値より小さいかを示す。
【0069】
第1制御回路124は、電源線VOUTを流れる電源電流が閾値以上のとき、スイッチSW1、SW2をオフさせるスイッチ制御信号をスイッチSW1、SW2にそれぞれ出力する。そして、第1制御回路124は、整流回路110を4段のチャージポンプとして動作させる。
【0070】
一方、第1制御回路124は、電源線VOUTを流れる電源電流が閾値より小さいとき、スイッチSW1、SW2をオンさせるスイッチ制御信号をスイッチSW1、SW2にそれぞれ出力する。そして、第1制御回路124は、整流回路110を8段のチャージポンプとして動作させる。
【0071】
第2制御回路125は、図8の制御回路122の機能のうち、スイッチSW3と負荷200とを制御する機能を有する。第2制御回路125は、ロジック回路140から受ける制御信号CNTLが負荷200を動作させる第1動作モードを示すとき、スイッチSW3をオンさせるスイッチ制御信号をスイッチSW3に出力する。また、第2制御回路125は、負荷200を動作させる動作制御信号を負荷200に出力する。
【0072】
一方、第2制御回路125は、ロジック回路140から受ける制御信号CNTLが負荷200の動作を停止させる第2動作モードを示すとき、スイッチSW3をオフさせるスイッチ制御信号をスイッチSW3に出力する。また、第2制御回路125は、負荷200の動作を停止させる動作制御信号を負荷200に出力する。
【0073】
以上、この実施形態では、LSI100は、負荷200の消費電流である負荷電流ILOADの大きさに応じて、整流回路110のチャージポンプの段数を切り替える。これにより、LSI100の入力インピーダンスの不整合を抑制して電力効率の低下を抑制することができる。この結果、無線の入力信号の電力を効率よく利用して、より小さい入力電力でRFIDタグ10の動作が可能となる。また、RFIDタグの通信距離を効率的に伸ばすことができるため、RFIDタグが搭載されるシステムの信頼性を向上することができる。
【0074】
負荷200を動作させる動作モードと負荷200の動作を停止する動作モードがある場合、LSI100は、動作モードに応じて整流回路110のチャージポンプの段数を変更する。これにより、動作モード毎に入力インピーダンスの不整合を抑制して電力効率の低下を抑制することができる。
【0075】
また、整流回路110から出力される電源電流の大きさに応じて整流回路110のチャージポンプの段数を変更することで、電源電流の大きさに応じて入力インピーダンスの不整合を抑制して電力効率の低下を抑制することができる。この際、電源電流の大きさにより動作モードが判定されてもよい。
【0076】
整流回路110に配置される複数のダイオード群をスイッチSW1、SW2により有効または無効に設定することで、チャージポンプの段数を容易に変更することができる。整流回路110を4段のチャージポンプとして動作させるとき、スイッチSW1をオフすることで、スイッチSW2の入力側のノードNDの電圧が上限値を超えることを抑止することができ、整流回路110の破壊を抑止することができる。
【0077】
電源電圧制御回路120は、負荷200を動作させる場合、電源電圧VOUTが負荷200の動作電圧以上になったときにスイッチSW3をオンする。これにより、電源電圧VOUTが安定しない期間に負荷200に電源電圧VOUTが供給されることを抑止することができ、負荷200の誤動作を抑止することができる。
【0078】
図10は、別の実施形態におけるRFIDタグに搭載されるLSIの一例を示す。図6と同様の要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。図10に示すLSI100Aは、図1のLSI100と同様に、負荷200およびアンテナ12とともに図1のRFIDタグ10に搭載される。すなわち、この実施形態のRFIDタグは、図1のRFIDタグ10のLSI100の代わりにLSI100Aを有する。
【0079】
また、LSI100Aが搭載されるRFIDタグ10は、図2と同様に、リーダライタ20およびアンテナ22とともにシステムSYSに含まれてもよい。LSI100Aは、図6に示したLSI100と同様に、整流回路110Aにより複数段のチャージポンプを使用して電源電圧を生成するとともに、制御回路120により負荷200の消費電力に応じてチャージポンプの段数を変更する制御方法を実施する。
【0080】
整流回路110Aは、スイッチSW1、SW2と、接地線とスイッチSW1との間に直列に接続された5個のダイオードDと、スイッチSW1と電源電圧制御回路120との間に直列に接続された4個のダイオードDとを有する。スイッチSW1は、第1スイッチの一例であり、スイッチSW2は、第2スイッチの一例である。
【0081】
各ダイオードDのアノードは、接地線側に配置され、各ダイオードDのカソードは、電源電圧制御回路120側に配置される。スイッチSW2は、スイッチSW1の入力側のノードNDを電源電圧制御回路120の入力に接続する。また、整流回路110Aは、スイッチSW1の電源電圧制御回路120側に配置されるダイオードDのアノードにカソードが接続され、アノードが接地線に接続されたダイオードDを有する。
【0082】
整流回路110Aは、互いに隣接する一対のダイオードDの接続ノードとアンテナ端子RF+(またはRF-)との間にそれぞれ配置される8個のキャパシタCを有する。偶数番目のダイオードDのアノードは、キャパシタCを介してアンテナ端子RF+に接続されている。奇数番目のダイオードDのアノードは、初段のダイオードDを除き、キャパシタCを介してアンテナ端子RF-に接続されている。
【0083】
整流回路110Aにおいても、チャージポンプの1段分は、ダイオードDとダイオードDのアノードに接続されたキャパシタCである。そして、整流回路110Aは、接地線とスイッチSW1との間に順次配置された4段のチャージポンプと、スイッチSW1と電源電圧制御回路120との間に順次配置された4段のチャージポンプとを有する。接地線とスイッチSW1との間に配置されたダイオードDは、第1ダイオード群の一例である。第1ダイオード群の初段のダイオードDのアノードは接地されている。スイッチSW1と電源電圧制御回路120との間に配置されたダイオードDは、第2ダイオード群の一例である。
【0084】
なお、図10では、整流回路110Aが、4段または8段のチャージポンプとして動作する例が示されるが、チャージポンプの段数は、4段と8段とに限定されない。チャージポンプの段数は、生成する電源電圧の値に応じて適切に設定される。また、図10では、チャージポンプの段数を2段階に切り替える例が示されるが、チャージポンプの切り替えは、3段階以上でもよい。
【0085】
また、LSI100Aがアンテナ端子RF+を有し、アンテナ端子RF-を持たない場合、アンテナ端子RF-の代わりに接地端子が設けられ、初段を除く奇数番目のダイオードDのアノードは、キャパシタCを介して接地端子に接続されてもよい。
【0086】
整流回路110Aの最終のダイオードDは、電源電圧制御回路120およびスイッチSW3を介して負荷200の入力である電源端子に接続される。例えば、スイッチSW1は、nチャネルMOSトランジスタであり、スイッチSW2、SW3は、pチャネルMOSトランジスタである。スイッチSW3は、電源スイッチの一例である。
【0087】
例えば、電源電圧制御回路120は、図8または図9と同一または同様の構成を有する。電源電圧制御回路120は、整流回路110Aを8段のチャージポンプとして動作させるとき、スイッチSW1をオンし、スイッチSW2をオフするスイッチ制御信号(例えば、ハイレベル)をスイッチSW1、SW2に出力する。
【0088】
電源電圧制御回路120は、整流回路110を4段のチャージポンプとして動作させるとき、スイッチSW1をオフし、スイッチSW2をオンするスイッチ制御信号(例えば、ロウレベル)をスイッチSW1、SW2に出力する。これにより、接地線とスイッチSW1との間に配置された4段のチャージポンプと、スイッチSW1と電源電圧制御回路120との間に配置された4段のチャージポンプとを並列に動作させることができる。
【0089】
整流回路110Aが4段のチャージポンプとして動作する場合、各ダイオードDの素子面積は、図6の整流回路110が4段のチャージポンプとして動作する場合の各ダイオードDの素子面積に比べて2倍になったことに相当する。このため、4段のチャージポンプとして動作するときのダイオードDの抵抗は、図6の整流回路110のダイオードDの抵抗に比べて低くなる。これにより、この実施形態の整流回路110Aは、図6の整流回路110に比べて、ダイオードDの抵抗による電力ロスを減らすことができる。
【0090】
なお、整流回路110Aから負荷に流れる電流は、ダイオードDの抵抗特性ではなく、キャパシタCの充放電で制限されるため、LSI100Aの入力抵抗Rの値は、図6のLSI100の入力抵抗Rの値とほぼ同じである。
【0091】
以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、負荷電流ILOADの大きさに応じてチャージポンプの段数を切り替えることで、LSI100Aの入力インピーダンスの不整合を抑制して電力効率の低下を抑制することができる。この結果、より小さい入力電力でRFIDタグ10の動作が可能となり、RFIDタグの通信距離を効率的に伸ばすことができるため、RFIDタグが搭載されるシステムの信頼性を向上することができる。
【0092】
さらに、この実施形態では、整流回路110Aは、接地線とスイッチSW1との間に配置された4段のチャージポンプと、スイッチSW1と電源電圧制御回路120との間に配置された4段のチャージポンプとを並列に動作させることができる。これにより、図6の整流回路110に比べて、4段のチャージポンプとして動作するときのダイオードDの抵抗を低くすることができ、ダイオードDの抵抗による電力ロスを減らすことができる。
【0093】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0094】
10 RFIDタグ
12 アンテナ
20 リーダライタ
22 アンテナ
100、100A LSI
110、110A 整流回路
120 電源電圧制御回路
121 電圧検出回路
122 制御回路
123 電流検出回路
124 第1制御回路
125 第2制御回路
126 センス抵抗
130 変調復調回路
140 ロジック回路
150 メモリ
200 負荷
C キャパシタ
CNTL 制御信号
D ダイオード
ND ノード
NM nチャネルMOSトランジスタ
RF+、RF- アンテナ端子
RST リセット信号
SW1、SW2、SW3 スイッチ
SYS システム
OUT 電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10