(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174476
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】シリンダヘッドカバー
(51)【国際特許分類】
F01M 13/04 20060101AFI20241210BHJP
F01M 13/00 20060101ALI20241210BHJP
F02F 7/00 20060101ALI20241210BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F01M13/04 E
F01M13/00 E
F02F7/00 P
F02M21/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092325
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤原 章
【テーマコード(参考)】
3G015
3G024
【Fターム(参考)】
3G015BD05
3G015BD12
3G015BD13
3G015BD23
3G015BE04
3G015BE06
3G015BE07
3G024AA72
3G024BA24
3G024DA01
3G024DA30
3G024FA07
(57)【要約】
【課題】ブローバイガスの流路において、オイルと水分とが撹拌される。
【解決手段】シリンダヘッドカバー60は、水素を燃料とする内燃機関10に適用され、ヘッドカバー本体61Aと、導出路61Bと、を備える。ヘッドカバー本体61Aは、燃焼室CCからクランクケース24に漏出したブローバイガスの主流路62を区画している。導出路61Bは、主流路62の下流端62Eに接続しており、ブローバイガスを吸気通路IPに導く。主流路62は、当該主流路62の途中に絞り部62Cを有している。シリンダヘッドカバー60は、副流路66をさらに備える。副流路66は、絞り部62Cよりも上流路62Aに接続している。また、副流路66は、ブローバイガスを導出路61B又は吸気通路IPに導く。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を燃料とする内燃機関に適用され、
燃焼室からクランクケースに漏出したブローバイガスの主流路を区画しているヘッドカバー本体と、
前記主流路の下流端に接続しており、前記ブローバイガスを吸気通路に導くための導出路と、を備え、
前記主流路は、当該主流路の途中に絞り部を有しており、
前記主流路のうち前記絞り部よりも上流側を上流路とし、前記主流路のうち前記絞り部よりも下流側を下流路としたとき、前記絞り部の流路断面積は、前記上流路の流路断面積より小さく、且つ、前記下流路の流路断面積より小さくなっており、
前記上流路に接続しており、前記ブローバイガスを前記導出路又は前記吸気通路に導くための副流路をさらに備えている
シリンダヘッドカバー。
【請求項2】
前記ヘッドカバー本体は、前記主流路を区画する壁面から突出するリブを備え、
前記壁面に直交する方向の寸法を高さ寸法としたとき、
前記下流路における前記リブの高さ寸法は、前記上流路における前記リブの高さ寸法よりも低い
請求項1に記載のシリンダヘッドカバー。
【請求項3】
前記上流路において、前記ヘッドカバー本体の内面から突出する壁部をさらに備え、
前記壁部は、前記主流路の上流端と前記絞り部とを結ぶ任意の線分に対して交差している
請求項1に記載のシリンダヘッドカバー。
【請求項4】
前記副流路は、前記上流路において前記壁部よりも下流側に接続している
請求項3に記載のシリンダヘッドカバー。
【請求項5】
前記ヘッドカバー本体は、前記上流路の内面から前記主流路の外側に向かって窪んだ窪み部を備え、
前記副流路は、前記窪み部に接続している
請求項1に記載のシリンダヘッドカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダヘッドカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリンダヘッドカバーに一体成形されるオイルセパレータが開示されている。オイルセパレータは、ブローバイガスのガス流路を備えている。このガス流路は、燃焼室からクランクケースに漏出したブローバイガスを、吸気通路へと導くためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなオイルセパレータにおいて、ガス流路の途中に、流路断面積の小さい絞り部が存在することがある。このような構造では、ガス流路における絞り部よりも下流側では、ブローバイガスの流速が速くなる。そして、特に、水素を燃料とする水素エンジンにおいては、ブローバイガスに比較的に多くの水分が含まれる。したがって、ガス流路における絞り部よりも下流側でオイルと水分とが撹拌されてエマルジョンが発生しやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、水素を燃料とする内燃機関に適用され、燃焼室からクランクケースに漏出したブローバイガスの主流路を区画しているヘッドカバー本体と、前記主流路の下流端に接続しており、前記ブローバイガスを吸気通路に導くための導出路と、を備え、前記主流路は、当該主流路の途中に絞り部を有しており、前記主流路のうち前記絞り部よりも上流側を上流路とし、前記主流路のうち前記絞り部よりも下流側を下流路としたとき、前記絞り部の流路断面積は、前記上流路の流路断面積より小さく、且つ、前記下流路の流路断面積より小さくなっており、前記上流路に接続しており、前記ブローバイガスを前記導出路又は前記吸気通路に導くための副流路をさらに備えているシリンダヘッドカバーである。
【発明の効果】
【0006】
ブローバイガスの流路において、オイルと水分とが撹拌されることを防げる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、内燃機関の一実施形態を示す概略図である。
【
図2】
図2は、ヘッドカバー本体のカバー部の上面図である。
【
図3】
図3は、ヘッドカバー本体の底部の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<シリンダヘッドカバーの一実施形態>
以下、シリンダヘッドカバーの一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、又は別の図面中のものと異なる場合がある。
【0009】
(全体構成について)
図1に示すように、内燃機関10は、オイルパン25、クランクケース24、シリンダブロック23、シリンダヘッド22、及びシリンダヘッドカバー60を備えている。また、内燃機関10は、複数のピストン31、複数のコネクティングロッド32、及びクランク軸33を備えている。
【0010】
オイルパン25は、内燃機関10の下端に位置している。オイルパン25の形状は、底を有する概ね四角箱形状である。オイルパン25は、オイルを貯留するためのオイル空間25Aを区画している。なお、オイル空間25Aに貯留されたオイルは、図示しないポンプにより内燃機関10の各部に供給される。
【0011】
クランクケース24は、オイルパン25の上端に接続している。クランクケース24は、当該クランクケース24の内部の空間として、下部空間24Aを区画している。下部空間24Aは、クランクケース24の上端から下端まで延びている。下部空間24Aは、オイル空間25Aの上端に接続している。
【0012】
シリンダブロック23は、当該シリンダブロック23の内部の空間として、上部空間23A及び気筒23Bを区画している。上部空間23Aは、下部空間24Aの上端に接続している。上部空間23Aは、シリンダブロック23の下端から上下方向における中央付近まで延びている。気筒23Bは、上部空間23Aの上端からシリンダブロック23の上端まで延びている。なお、
図1では、1つの気筒23Bのみを代表して図示している。また、シリンダブロック23は、第1ブローバイガス通路23Cを区画している。第1ブローバイガス通路23Cの下端は、上部空間23Aに接続している。第1ブローバイガス通路23Cは、シリンダブロック23の上端まで延びている。
【0013】
ピストン31は、気筒23Bの内部に位置している。クランク軸33は、上部空間23A及び下部空間24Aに位置している。コネクティングロッド32は、ピストン31とクランク軸33とを連結している。したがって、気筒23Bにおいて燃料と吸気との混合気が燃焼することにより、ピストン31は、気筒23Bの内部で往復運動する。そして、コネクティングロッド32を介して、ピストン31の往復運動がクランク軸33に回転運動として伝達される。
【0014】
シリンダヘッド22は、シリンダブロック23の上端に接続している。シリンダヘッド22は、当該シリンダヘッド22の内部の空間として、燃焼凹部22C、吸気ポート22A、及び排気ポート22Bを区画している。燃焼凹部22Cは、シリンダヘッド22の下面から上方に向かって窪んでいる。燃焼凹部22Cは、気筒23Bの上端に接続している。なお、燃焼凹部22C、気筒23B、及びピストン31は、燃焼室CCを区画している。また、シリンダヘッド22は、第2ブローバイガス通路22Dを区画している。第2ブローバイガス通路22Dの下端は、第1ブローバイガス通路23Cの上端に接続している。第2ブローバイガス通路22Dは、シリンダヘッド22の上端まで延びている。
【0015】
吸気ポート22Aの第1端は、燃焼凹部22Cに接続している。吸気ポート22Aの第2端は、シリンダヘッド22の側面に開口している。また、排気ポート22Bの第1端は、燃焼凹部22Cに接続している。排気ポート22Bの第2端は、シリンダヘッド22の側面に開口している。
【0016】
内燃機関10は、吸気管41A及び排気管41Bを備えている。吸気管41Aは、吸気ポート22Aの第2端に接続している。なお、吸気管41Aは、内燃機関10の外部からの吸気を吸気ポート22Aへと導入する。そして、吸気ポート22Aは、吸気管41Aを流通した当該吸気を、気筒23Bへと導入する。本実施形態において、吸気ポート22A及び吸気管41Aは、内燃機関10の吸気通路IPである。
【0017】
排気管41Bは、排気ポート22Bの第2端に接続している。排気ポート22Bは、気筒23Bからの排気を排気管41Bへと排出する。排気管41Bは、排気ポート22Bを流通した排気を内燃機関10の外部へと排出する。本実施形態において、排気ポート22B及び排気管41Bは、内燃機関10の排気通路EPである。
【0018】
シリンダヘッドカバー60は、ヘッドカバー本体61Aを備えている。ヘッドカバー本体61Aは、シリンダヘッド22の上端に接続している。ヘッドカバー本体61Aは、シリンダヘッド22を覆っている。また、ヘッドカバー本体61Aは、シリンダヘッド22と共に収容空間HSを区画している。収容空間HSは、図示しない動弁機構等を収容している。なお、シリンダヘッドカバー60の詳細については後述する。
【0019】
内燃機関10は、複数の吸気弁42A、複数の排気弁42B、複数の燃料噴射弁43、及び複数の点火装置44を備えている。
吸気弁42Aは、吸気ポート22A及び気筒23Bの接続部分に位置している。吸気弁42Aは、図示しない動弁機構からの駆動力により、吸気ポート22Aの第1端の開口を開閉する。排気弁42Bは、排気ポート22B及び気筒23Bの接続部分に位置している。排気弁42Bは、図示しない動弁機構からの駆動力により排気ポート22Bの第1端の開口を開閉する。
【0020】
燃料噴射弁43の先端は、燃焼凹部22Cに位置している。燃料噴射弁43には、図示しない燃料タンクに貯留された水素が供給される。燃料噴射弁43は、燃焼室CCに燃料としての水素を噴射する。点火装置44の先端は、燃焼凹部22Cに位置している。点火装置44は、燃料と吸気との混合気を火花放電により点火する。
【0021】
内燃機関10は、エアクリーナ45、ターボチャージャ46、インタークーラ47、及びスロットルバルブ48、を備えている。
ターボチャージャ46は、コンプレッサホイール46A、連結シャフト46B、及びタービンホイール46Cを備えている。コンプレッサホイール46Aは、吸気管41Aの途中に位置している。連結シャフト46Bの第1端は、コンプレッサホイール46Aに接続している。連結シャフト46Bの第2端は、タービンホイール46Cに接続している。タービンホイール46Cは、排気管41Bの途中に位置している。したがって、タービンホイール46Cが排気管41Bの排気の流通により回転すると、連結シャフト46Bを介してコンプレッサホイール46Aが共に回転する。その結果、コンプレッサホイール46Aにより圧縮された吸気が、吸気管41Aにおけるコンプレッサホイール46Aに対して下流側に供給される。
【0022】
エアクリーナ45は、吸気管41Aのうち、コンプレッサホイール46Aに対して上流側の部分に位置している。エアクリーナ45は、吸気管41Aを流通する吸気に含まれる異物を捕集する。インタークーラ47は、吸気管41Aのうち、コンプレッサホイール46Aに対して下流側の部分に位置している。インタークーラ47は、コンプレッサホイール46Aにより圧縮された吸気を冷却する。スロットルバルブ48は、吸気管41Aのうち、インタークーラ47に対して下流側の部分に位置している。スロットルバルブ48は、吸気管41Aを流通する吸気の量を調整する。
【0023】
内燃機関10は、ブローバイガス処理装置50を備えている。ブローバイガス処理装置50は、燃焼室CCからシリンダブロック23の上部空間23A内及びクランクケース24の下部空間24A内に漏れたブローバイガスを、吸気管41Aへと還流する装置である。ブローバイガス処理装置50は、メインセパレータ51、吸引通路52、PCV通路53、及びPCVバルブ54を備えている。
【0024】
メインセパレータ51は、シリンダヘッドカバー60の収容空間HS内に位置している。メインセパレータ51は、当該メインセパレータ51内を流通するガスに含まれるオイルを捕集する。吸引通路52の第1端は、メインセパレータ51に接続している。吸引通路52の第2端は、シリンダブロック23の上部空間23Aに接続している。また、図示は省略するが、メインセパレータ51は、エゼクタ及びバイパス通路を介して、吸気管41Aに接続している。
【0025】
PCV通路53の第1端は、メインセパレータ51に接続している。PCV通路53の第2端は、吸気管41Aのうち、スロットルバルブ48から視て下流側の部分に接続している。PCVバルブ54は、PCV通路53の途中に位置している。PCVバルブ54は、PCV通路53の流路を開閉する。
【0026】
(シリンダヘッドカバーの構成について)
上述したように、シリンダヘッドカバー60は、ヘッドカバー本体61A及び導出路61Bを備えている。
【0027】
ヘッドカバー本体61Aは、全体として略長方形の略箱状である。以下では、ヘッドカバー本体61Aの長辺に沿って延びる軸を第1軸Xとする。また、ヘッドカバー本体61Aの短辺に沿って延びる軸を、第2軸Yとする。さらに、第1軸Xに沿う方向の一方を第1正方向X1とし、第1軸Xに沿う方向のうち第1正方向X1と反対方向を第1負方向X2とする。また、第2軸Yに沿う方向の一方を第2正方向Y1とし、第2軸Yに沿う方向のうち第2正方向Y1と反対方向を第2負方向Y2とする。
【0028】
図2及び
図3に示すように、ヘッドカバー本体61Aは、カバー部CMと、底部BMと、を備えている。
図2に示すように、カバー部CMは、第1軸Xに沿う方向に長い略長方形の板状である。カバー部CMは、第1内面I1と、第1区画壁CW1と、排出孔H1と、を備える。第1内面I1は、ヘッドカバー本体61Aをシリンダブロック23の上端に接続した場合において、シリンダブロック23側を向く面である。第1区画壁CW1は、第1内面I1から突出している。そして、第1区画壁CW1は、第1内面I1とともに、当該第1内面I1が向く方向に開口する第1凹部D1を区画している。カバー部CMを平面視したとき、第1凹部D1は、概ねL字状の空間である。具体的には、第1凹部D1は、カバー部CMの中心に対して第2負方向Y2側から第2正方向Y1側に延び、そして、第1正方向X1側に向かって延びている。排出孔H1は、カバー部CMを貫通する貫通孔である。排出孔H1は、第1凹部D1の第1正方向X1側且つ第2正方向Y1側の端の近傍に位置している。なお、平面視とは、カバー部CMの見かけの面積が最も大きくなる方向を向いて当該カバー部CMを視ることである。以下の平面視についても同様である。
【0029】
図3に示すように、底部BMは、第1軸Xに沿う方向に長い略長方形の板状である。底部BMの外縁は、平面視した場合に、カバー部CMの外縁と概ね一致している。底部BMは、第2内面I2と、第2区画壁CW2と、吸入孔H2と、を備える。第2内面I2は、ヘッドカバー本体61Aをシリンダブロック23の上端に接続した場合において、シリンダブロック23とは反対を向く面である。第2区画壁CW2は、第2内面I2から突出している。そして、第2区画壁CW2は、第2内面I2とともに、当該第2内面I2が向く方向に開口する第2凹部D2を区画している。底部BMを平面視したとき、第2凹部D2は、第1凹部D1と概ね同形状である。具体的には、第2凹部D2は、底部BMの中心に対して第2負方向Y2側から第2正方向Y1側に延び、そして、第1正方向X1側に向かって延びている。吸入孔H2は、底部BMを貫通する貫通孔である。吸入孔H2は、第2凹部D2の第2負方向Y2側の端に位置している。
【0030】
ヘッドカバー本体61Aは、カバー部CM及び底部BMを、第1内面I1と第2内面I2とが向かい合うように嵌め合わせることで構成される。このように嵌め合わせた状態において、第1凹部D1の外縁形状と、第2凹部D2の外縁形状とは、略一致する。そして、第1凹部D1及び第2凹部D2によって、ヘッドカバー本体61Aの主流路62が構成されている。主流路62の上流端62Dは、底部BMの吸入孔H2である。主流路62の上流端62Dは、シリンダヘッド22における第2ブローバイガス通路22Dの上端に繋がっている。主流路62の下流端62Eは、カバー部CMの排出孔H1である。主流路62の詳細については後述する。
【0031】
図1に示すように、導出路61Bは、ブローバイガスを吸気通路IPに導くための通路である。導出路61Bの第1端は、主流路62の下流端62Eに接続している。導出路61Bの第2端は、吸気管41Aのうち、エアクリーナ45に対して下流側であってコンプレッサホイール46Aに対して上流側の部分に接続している。したがって、燃焼室CCからクランクケース24に漏出したブローバイガスは、第1ブローバイガス通路23C、第2ブローバイガス通路22D、主流路62、及び導出路61Bを通り、吸気通路IPへ流通可能である。
【0032】
(ブローバイガスの流路について)
図2及び
図3に示すように、主流路62は、当該主流路の途中に絞り部62Cを有している。主流路62のうち、絞り部62Cよりも上流側の通路を上流路62Aとする。主流路62のうち絞り部62Cよりも下流側の通路を下流路62Bとする。この実施形態において、絞り部62Cは、主流路62のうち最も流路断面積が小さくなる箇所である。したがって、絞り部62Cの流路断面積は、上流路62Aの流路断面積より小さくなっている。また、絞り部62Cの流路断面積は、下流路62Bの流路断面積より小さくなっている。なお、流路断面積とは、ブローバイガスの流路を仮想したとき、当該流路方向に直交する主流路62の断面積のことをいう。
【0033】
上流路62Aは、絞り部62Cに対して、第2負方向Y2の部分である。上流路62Aの第1端は、主流路62の上流端62Dと一致する。したがって、上流路62A内において、ブローバイガスは、全体として第2正方向Y1に流れる。
【0034】
下流路62Bは、絞り部62Cに対して、第2正方向Y1側の部分である。下流路62Bの第2端は、主流路62の下流端62Eと一致する。したがって、下流路62B内において、ブローバイガスは、全体として第1正方向X1に流れる。
【0035】
図2に示すように、ヘッドカバー本体61Aは、リブ63を備えている。リブ63は、ヘッドカバー本体61Aのうちの主流路62を区画する壁面から突出している。より具体的には、リブ63は、上流路62A及び下流路62Bの略全域において、カバー部CMの第1内面I1から突出している。第1内面I1を平面視したとき、リブ63は格子状に突出している。また、当該第1内面I1に直交する方向の寸法を高さ寸法とする。このとき、下流路62Bにおけるリブ63の高さ寸法は、上流路62Aにおけるリブ63の高さ寸法よりも低くなっている。具体的には、下流路62Bにおけるリブ63の高さ寸法の最小値は、上流路62Aにおけるリブ63の高さ寸法の最大値よりも小さくなっている。
【0036】
シリンダヘッドカバー60は、壁部64と、窪み部65と、副流路66と、を備えている。
壁部64は、ヘッドカバー本体61Aの内面から突出している。より具体的には、壁部64は、第1壁部PW1及び第2壁部PW2から構成される。
図2に示すように、第1壁部PW1は、上流路62Aにおいて、カバー部CMの第1内面I1から突出している。カバー部CMを平面視したとき、第1壁部PW1は、概ね第1軸Xに沿って延びている。
図3に示すように、第2壁部PW2は、上流路62Aにおいて、底部BMの第2内面I2から突出している。底部BMを平面視したとき、第1壁部PW1は、概ね第1軸Xに沿って延びている。カバー部CM及び底部BMを、第1内面I1と第2内面I2とが向かい合うように嵌め合わせた状態において、第1壁部PW1及び第2壁部PW2は、それぞれの先端の互いに突き合わされた状態にある。したがって、第1壁部PW1及び第2壁部PW2は、第1内面I1から第2内面I2にまで延びる1つの一体的な壁部64になっている。また、
図3に示すように、ヘッドカバー本体61Aを平面視したとき、壁部64は、主流路62の上流端62Dと絞り部62Cとを結ぶ任意の線分Lに対して交差している。
【0037】
窪み部65は、上流路62Aにおいて、ヘッドカバー本体61Aの内面から外側に向かって窪んでいる。より具体的には、窪み部65は、カバー部CMの第1内面I1において、壁部64よりも絞り部62C側の下流に位置している。そして、窪み部65は、カバー部CMの第1内面I1に対して、底部BMとは反対方向に窪んでいる。
【0038】
副流路66は、ブローバイガスを導出路61B又は吸気通路IPに導くための、管状の通路である。
図1に示すように、副流路66は、ヘッドカバー本体61Aの外側に位置している。副流路66の第1端は、上流路62Aに接続している。より具体的には、副流路66の第1端は、窪み部65の底面に接続している。したがって、副流路66は、上流路62Aにおいて壁部64よりも下流側に接続している。副流路66の第2端は、導出路61Bの途中に接続している。
【0039】
(本実施形態の作用について)
内燃機関10では、燃焼室CCからクランクケース24にブローバイガスが漏出する。ブローバイガスは、第1ブローバイガス通路23C及び第2ブローバイガス通路22Dを介して、主流路62に流通する。主流路62の絞り部62Cよりも上流側には、副流路66が接続している。そのため、ブローバイガスの一部は、副流路66を流通する。すなわち、ブローバイガスの流れは、主流路62における絞り部62Cよりも上流側で分岐する。
【0040】
(本実施形態の効果について)
(1)上記実施形態において、シリンダヘッドカバー60は、副流路66を備える。そして、副流路66は、主流路62の上流路62Aに接続している。上流路62Aにおいてブローバイガスの一部を副流路66に導くことで、下流路62Bでのブローバイガスの流速が低下する。したがって、下流路62Bにおいて、オイルと水分とが撹拌されることを防げる。
【0041】
(2)上記実施形態において、下流路62Bのリブ63の高さ寸法は、上流路62Aのリブ63の高さ寸法に比べて低い。そのため、リブ63の周囲において、ブローバイガスの乱流が生じにくい。その結果、下流路62Bにおけるリブ63の周囲にブローバイガスが流入しても、エマルジョンが比較的に生じにくい。
【0042】
(3)上記実施形態において、ヘッドカバー本体61Aは、上流路62Aに壁部64を備える。上流路62Aの上流端62Dから流入したブローバイガスの少なくとも一部は、この壁部64に衝突する。このとき、ブローバイガスに含まれるオイルが壁部64に付着するので、オイルを除去しやすい。
【0043】
(4)上記実施形態において、壁部64より下流に副流路66がある。壁部64でブローバイガスに含まれる一部のオイルが除去された後に、当該ブローバイガスが副流路66に流入する。これにより、多量のオイルが副流路66に流入してしまうことを防げる。
【0044】
(5)上記実施形態において、副流路66は、ヘッドカバー本体61Aの窪み部65に接続している。このようにあえて副流路66を窪み部65に接続することで、副流路66には比較的にブローバイガスが流入しにくくなっている。したがって、副流路66にブローバイガスが流入しすぎて、主流路62内を流通するブローバイガスが少なくなることは防げる。
【0045】
<変更例>
上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0046】
・ヘッドカバー本体61A、カバー部CM、及び底部BMの構成は、上記実施形態の例に限られない。例えば、底部BMは、第2凹部D2を備えていなくてもよい。この場合には、主流路62は、ヘッドカバー本体61Aの第1凹部D1のみによって構成される。また、ヘッドカバー本体61Aはカバー部CM及び底部BMの2つの部材から構成されていなくてもよい。すなわち、ヘッドカバー本体61Aは、一体成形された1つの部材で構成されていてもよいし、3つ以上の部材を組み合わせて構成されていてもよい。
【0047】
・排出孔H1の形状、位置、大きさ等の構成は上記実施形態の例に限られない。例えば、排出孔H1は、第1区画壁CW1を介してカバー部CMを貫通する貫通孔であってもよい。また、排出孔H1は、底部BMを貫通する貫通孔であってもよい。この点、吸入孔H2についても同様である。
【0048】
・主流路62は、複数の絞り部62Cを備えていてもよい。この場合においても、いずれかの絞り部62Cよりも上流側の上流路62Aにおいて副流路66が接続していれば、当該絞り部62Cよりも下流側において、(1)に記載の効果が得られる。
【0049】
・上流路62Aの形状、大きさ、位置等の構成は、上記実施形態の例に限られない。この点、下流路62Bについても同様である。各流路の構成が異なっていても、絞り部62C及び副流路66を備えていれば、(1)に記載の効果が得られる。
【0050】
・リブ63の形状、大きさ、位置等の構成は、上記実施形態の例に限られない。例えば、リブ63は、上流路62Aにおいてのみ、カバー部CMの第1内面I1から突出していてもよい。また、下流路62Bにおけるリブ63の高さ寸法は、上流路62Aにおけるリブ63の高さ寸法以上であってもよい。リブ63は、底部BMの第2内面I2から突出していてもよい。また、ヘッドカバー本体61Aは、リブ63を備えていなくてもよい。ただし、ヘッドカバー本体61Aの強度を確保するという観点では、リブ63を設けることが好ましい。
【0051】
・窪み部65の形状、大きさ、位置等の構成は、上記実施形態の例に限られない。また、ヘッドカバー本体61Aは、窪み部65を備えていなくてもよい。窪み部65がない場合でも、副流路66を備えることにより(1)に記載の効果は得られる。
【0052】
・壁部64の形状、大きさ、位置等の構成は、上記実施形態の例に限られない。例えば、第1壁部PW1及び第2壁部PW2から構成されていなくてもよく、一体成形された壁部64であってもよい。また、ヘッドカバー本体61Aは、壁部64を備えていなくてもよい。
【0053】
・副流路66の構成は、上記実施形態の例に限られない。副流路66は、少なくとも上流路62Aに接続しており、ブローバイガスを導出路61B又は吸気通路IPに導ければ(1)に記載の効果は得られる。例えば、副流路66は、上流路62Aにおいて、底部BMの第2内面I2に接続していてもよい。副流路66は、上流路62Aにおいて壁部64よりも上流側に接続していてもよい。副流路66の第1端は、窪み部65の底面ではなく、第1内面I1に直接接続していてもよい。副流路66は途中で分岐しており、導出路61B及び吸気通路IPの両方に接続していてもよい。また、ヘッドカバー本体61Aは2以上の副流路66を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…内燃機関 60…シリンダヘッドカバー 61A…ヘッドカバー本体 CM…カバー部 I1…第1内面 CW1…第1区画壁 D1…第1凹部 H1…排出孔 BM…底部 I2…第2内面 CW2…第2区画壁 D2…第2凹部 H2…吸入孔 61B…導出路 62…主流路 62A…上流路 62B…下流路 62C…絞り部 62D…上流端 62E…下流端 63…リブ 64…壁部 PW1…第1壁部 PW2…第2壁部 65…窪み部 66…副流路 L…線分