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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174482
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20241210BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20241210BHJP
【FI】
F21S2/00 431
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092332
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】久野 純平
(72)【発明者】
【氏名】翁 宇峰
(72)【発明者】
【氏名】中村 恒三
【テーマコード(参考)】
3K244
4F100
【Fターム(参考)】
3K244AA04
3K244BA50
3K244CA03
3K244DA01
3K244EA02
3K244EA12
3K244GA01
3K244GA17
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA42C
4F100DB00
4F100JN00A
4F100JN00B
4F100JN18C
4F100YY00
(57)【要約】
【課題】積層フィルムの厚みを薄くした場合であっても、光源からの光の入射効率が高い積層フィルムを提供する。
【解決手段】本積層フィルムは、複数の層が積層される積層フィルムであって、積層方向に沿う端面と、前記端面に交差し、光源からの光を入射させる光入射面と、前記光入射面を通して入射される光を導光する導光層と、前記導光層により導光される光を抽出可能な光抽出部を含む光抽出層と、を有し、前記導光層が配置される側とは反対側における前記光抽出層の表面である第1面と、前記光抽出層が配置される側とは反対側における前記導光層の表面である第2面と、の間の厚みは1000μm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層が積層される積層フィルムであって、
積層方向に沿う端面と、
前記端面に交差し、光源からの光を入射させる光入射面と、
前記光入射面を通して入射される光を導光する導光層と、
前記導光層により導光される光を抽出可能な光抽出部を含む光抽出層と、を有し、
前記導光層が配置される側とは反対側における前記光抽出層の表面である第1面と、前記光抽出層が配置される側とは反対側における前記導光層の表面である第2面と、の間の厚みは1000μm以下である、積層フィルム。
【請求項2】
前記光入射面に配置され、前記光源からの光を入射させる光入射部材をさらに有する、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記光入射部材は、一部が前記光入射面に向き合い、且つ他の一部が前記端面に向き合うように配置される、請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記光入射部材における前記光源が位置する側とは反対側に配置される反射部をさらに含む、請求項3に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記反射部は、前記光入射部材の前記光源が位置する側とは反対側の面に配置される反射シートである、請求項4に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記導光層の厚みは、30μm以上である、請求項1または請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記導光層と前記光抽出層との間に配置され、前記導光層よりも屈折率が低い第1部分と、前記第1部分よりも屈折率が高い第2部分と、を含むパターン層を有する、請求項1または請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記光抽出層の端部は、平面視において、前記導光層の端部よりも前記導光層の内側に位置し、
前記光入射面は、平面視において、前記光抽出層と前記導光層とが重ならない前記導光層の領域に位置する、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項9】
前記光抽出層は、前記導光層における前記光源が配置される側に配置されている、請求項8に記載の積層フィルム。
【請求項10】
前記光抽出層の端部を通して前記光源からの光をさらに入射可能である、請求項8に記載の積層フィルム。
【請求項11】
前記光抽出層は、前記光源と接触して配置されている、請求項10に記載の積層フィルム。
【請求項12】
巻取り可能に長尺に形成されている、請求項1または請求項2に記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス、窓、壁、床、天井等に積層フィルムを配置することで、意匠性または娯楽性が高い照明や表示を実現する方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、光源から出射された光を受ける受光側面を有する導光層と、導光層内を伝搬する光の配光制御構造と、を有する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2022/025067号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、積層フィルムの厚みを薄くした場合に、特許文献1の構成では、光源からの光を導光層の側面等の端部のみから導光層に入射させるため、入射効率の観点において改善の余地があった。
【0006】
本発明は、積層フィルムの厚みを薄くした場合であっても、光源からの光の入射効率が高い積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る本積層フィルムは、複数の層が積層される積層フィルムであって、積層方向に沿う端面と、前記端面に交差し、光源からの光を入射させる光入射面と、前記光入射面を通して入射される光を導光する導光層と、前記導光層により導光される光を抽出可能な光抽出部を含む光抽出層と、を有し、前記導光層が配置される側とは反対側における前記光抽出層の表面である第1面と、前記光抽出層が配置される側とは反対側における前記導光層の表面である第2面と、の間の厚みは1000μm以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、積層フィルムの厚みを薄くした場合であっても、光源からの光の入射効率が高い積層フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る積層フィルムの模式的断面図である。
図2】実施形態に係る光抽出層の模式的平面図である。
図3図2におけるIII-III線に沿った断面図である。
図4】実施形態に係る光抽出部の模式的断面図である。
図5】第1変形例に係る積層フィルムの模式的断面図である。
図6】第2変形例に係る積層フィルムの模式的断面図である。
図7】第3変形例に係る積層フィルムの模式的断面図である。
図8】第4変形例に係る積層フィルムの模式的断面図である。
図9】第5変形例に係る積層フィルムの模式的断面図である。
図10】第6変形例に係る積層フィルムの模式的断面図である。
図11】第7変形例に係る積層フィルムの模式的断面図である。
図12】第8変形例に係る積層フィルムの模式的断面図である。
図13】第9変形例に係る積層フィルムの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。各図面において、同一構成要素には同一符号を付与し、重複した説明を適宜省略する。
【0011】
以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための積層フィルムを例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0012】
以下に示す図面において、方向表現として、X軸、Y軸およびZ軸を有する直交座標を用いる。X軸、Y軸およびZ軸は、互いに略直交する。X軸の矢印が向く方向を+X方向または+X側、+X方向とは反対方向を-X方向または-X側と表記する。Y軸の矢印が向く方向を+Y方向または+Y側、+Y方向とは反対方向を-Y方向または-Y側と表記する。Z軸の矢印が向く方向を+Z方向または+Z側、+Z方向とは反対方向を-Z方向または-Z側と表記する。
【0013】
Z軸に沿うZ方向は、実施形態に係る積層フィルムを構成する各層の積層方向を示すものとする。本明細書において、「平面視」とはZ方向から対象を視ることをいう。また、+Z方向を「上」といい、-Z方向を「下」という。但し、これらの方向表現は、実施形態の方向を限定するものではない。また、本明細書において、「厚み」とはZ方向、すなわち各層の積層方向における対象の長さをいう。断面図は、実施形態に係る積層フィルムのYZ平面と平行な断面を示している。
【0014】
[実施形態]
<実施形態に係る積層フィルム10の全体構成例>
図1は、第1実施形態に係る積層フィルム10の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す例では、積層フィルム10は、複数の層が積層される積層フィルムである。積層フィルム10は、積層方向(Z方向)に沿う端面103と、端面103に交差し、光源50からの光Lを入射させる光入射面1bと、光入射面1bを通して入射される光Lを導光する導光層1と、導光層1により導光される光Lを抽出可能な光抽出部21を含む光抽出層2と、を有する。
【0015】
光源50は、例えばLED(Light Emitting Diode)光源である。光源50からの光Lは、平面視において、光抽出層2と導光層1とが重ならない導光層1の領域に位置する光入射面1bを通って導光層1に入射する。図1に示す例では、光入射面1bの領域は、導光層1の上面104のうち、導光層1の端部1aと光抽出層2の端部2aとにより画定される領域である。
【0016】
光入射面1bに配置される光源50の導光層1に対する傾斜角度は、光源50からの光Lが光入射面1bを通して導光層1に入射して導光層1内を導光可能であれば、任意の角度であってよい。光源50は、積層フィルム10が配置される被着体等の積層フィルム10周辺の構成に接着部材等によって固定される。
【0017】
積層フィルム10は、光源50から入射される光Lを導光層1により導光するとともに、光抽出部21により導光層1の内部から外部に光Lを抽出する。積層フィルム10は、導光層1から抽出された光Lにより、積層フィルム10が配置される空間を照明することができる。積層フィルム10は、ガラス、窓、壁、床、天井等の被着体に配置可能である。また、積層フィルム10は、被着体に配置せずに可撓性を有する照明フィルムとして用いることもできる。例えば積層フィルム10は、被着体の表面に貼り付けられることによって配置される。積層フィルム10は、窓ガラス等の被着体に配置された状態で室内空間等を照明できる。
【0018】
本実施形態では、第1面101と第2面102との間の厚みt1は1000μm以下である。第1面101は、導光層1が配置される側とは反対側における光抽出層2の表面である。第2面102は、光抽出層2が配置される側とは反対側における導光層1の表面である。例えば、第1面101と第2面102との間の厚みt1を800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下とすることができる。下限は特に限定されないが例えば50μm以上、100μm以上、200μm以上である。厚みt1が1000μm以下であることで、積層フィルム10は、自身の存在感を低減し、積層フィルム10を目立たなくすることができる。また、発光し且つ可撓性を有するフィルムとして用いることもできる。本実施形態では、積層フィルム10の存在感を低減することにより、意匠性が高い積層フィルム10を提供できる。また、積層フィルム10は、積層フィルム10が配置された被着体の意匠性を高くすることができる。
【0019】
ここで、光源からの光を積層フィルムの端部から導光層に入射させると、導光層の端部の面積が狭いことから、積層フィルムの内部への光の入射効率が低くなる場合がある。積層フィルムの厚みが薄くなるほど、光源からの光が積層フィルムの端部の面積が狭くなるため、該端部から積層フィルムの内部に光が入射しにくくなることで、上記の入射効率は低くなる。例えば、積層フィルムの意匠性を高くするために積層フィルムの厚みを1000μm以下にすると、積層フィルムが薄いことで、光源からの光の入射効率が低くなる。
【0020】
積層フィルム10では、平面視において、光抽出層2の端部2aは、導光層1の端部1aよりも導光層1の内側に位置することができる。例えば光抽出層2の端部2aと導光層1の端部1aとの距離は1mm以上100mm以下である。平面視における内側は、積層フィルム10を平面視したときにおける積層フィルム10の中央に近い側を意味する。積層フィルム10は、光抽出層2と導光層1とが重ならない導光層1の領域に位置する光入射面1bを通して、光源50からの光Lを導光層1に入射させる。例えば、光入射面1bの面積を導光層1の端部2aの面積よりも広くすることで、導光層1の端部2aから光Lを入射させる場合と比較して、積層フィルム10への光Lの入射効率を高くすることができる。以上より、本実施形態では、積層フィルム10の厚みを薄くした場合であっても、光源50からの光Lの入射効率が高い積層フィルム10を提供することができる。
【0021】
積層フィルム10では、導光層1の厚みt2を30μm以上としてよい。導光層1の厚みt2を30μm以上とすることにより、光源50からの光Lの積層フィルム10への入射効率を高くすることができる。
【0022】
また、積層フィルム10では、光抽出層2は、導光層1における光源50が配置される側に配置されてよい。この構成では、積層フィルム10と光源50とからなる構成の厚みは、導光層1の厚みと光源50の厚みとの和になる。一方、導光層における光源が配置される側とは反対側に光抽出層が配置されると、積層フィルムと光源とからなる構成の厚みは、導光層の厚みと光抽出層の厚みと光源の厚みとの和になる。従って、導光層1における光源50が配置される側に光抽出層2を配置することで、導光層1における光源50が配置される側とは反対側に光抽出層2を配置する場合と比較して、積層フィルム10と光源50とからなる構成の厚みを薄くすることができる。
【0023】
積層フィルム10は、樹脂により構成できる。積層フィルム10は、樹脂により構成されることで、可撓性が高くなるため、様々な形態で取り扱うことができる。例えば、積層フィルム10が長尺に形成されている場合に、長尺の積層フィルム10を巻取ることができるため、その取り扱いが容易になる。但し、積層フィルム10は、必ずしも樹脂により構成されなくてもよく、少なくとも一部がガラス等で構成されてもよい。
【0024】
積層フィルム10は、導光層1と光抽出層2との間に配置され、導光層1と光抽出層2とを粘接着する粘接着層3を有することができる。図1に示す例では、端面103は、光抽出層2の端部2aと粘接着層3の端部3aとから構成される面である。但し、粘接着層3は必須の構成部ではなく、導光層1および光抽出層2は、粘接着層3を介さずに接合されてもよい。
【0025】
<導光層1の構成例>
導光層1は、両面が平坦なフィルムから形成可能である。導光層1に用いる材料は、光吸収係数が低いものが好ましい。例えば、導光層1に用いる材料として、PMMA(Poly Methyl Methacrylate)等のアクリル系フィルム、COP(Cyclo Olefin Polymer)等のシクロオレフィン系フィルム、PET(Polyethylene Terephthalate)等のポリエチレン系フィルム、ポリカーボネート系フィルム等を使用できる。
【0026】
光源50からの光の導光層1への入射効率の観点では、導光層1の厚みは、30μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、60μm以上または100μm以上がさらに好ましい。一方、可撓性を持たせる観点では、導光層1の厚みは、800μm以下が好ましく、600μm以下がより好ましく、500μm以下または500μm未満がさらに好ましく、400μm以下、300μm以下、200μm以下が特に好ましい。導光層1の屈折率は、例えば1.45以上1.60以下が好ましい。
【0027】
<光抽出層2の構成例>
図1に加え、図2~4をさらに参照して、光抽出層2の構成の一例について説明する。図2は、光抽出層2を模式的に示す平面図である。図3は、光抽出層2を模式的に示す断面図である。図4は、光抽出部21を模式的に示す断面図である。
【0028】
光抽出層2に含まれる光抽出部21は、光抽出層2に設けられた複数の内部空間であってよい。複数の内部空間のそれぞれは、内部全反射によって光を+Z側に向ける界面を形成している。内部空間をキャビティということもある。内部空間は、+Z側に頂角を有する三角形の断面形状(X方向に垂直、YZ面に平行)を有しており、導光層1内を+Y側に伝搬する光Lを+Z側に向ける。内部空間によって+Z側に向けられた光Lは、積層フィルム10から出射される。内部空間の断面形状はこれに限られず、+Y方向に伝搬する光Lを+Z側に向ける界面を有していれば、台形等であってもよい。内部空間の断面形状(例えば、三角形の頂角の方向)を変えることによって、光の出射方向を変えることができる。
【0029】
積層フィルム10は、導光層1により導光される光Lを光抽出部21によって抽出するとともに、抽出された光Lの配光を制御できるので、可視光透過率は60%以上であり、ヘイズ値が10%未満であり得る。また、光抽出部21における複数の内部空間の形状および配置等を調整することによって、積層フィルム10から出射される光Lの配光分布、出射効率および輝度分布を制御することができる。光抽出部21は、典型的には内部に空気が充填された空隙部(エアキャビティ)である。但し、エアキャビティには、空気に代えて、光抽出層2の屈折率よりも低い屈折率を有する材料が充填されてもよい。
【0030】
光抽出層2には、主面、すなわちXY平面と略平行な平面に沿って、光抽出部21である複数の内部空間が規則的またはランダムに配置されている。個々の内部空間の大きさは、光抽出層2の内部に設置可能な範囲で適宜選択可能である。光抽出部21を内部に含む光抽出層2については、例えば、国際公開第2019/182091号、国際公開第2011/124765号、国際公開第2019/087118号および国際公開第2011/127187号に開示された導光層を使用できる。これらの公報の開示内容の全てを参照により本願明細書に援用する。
【0031】
光抽出層2は、例えば、パターンが形成されていない第1フィルムと、所望の微細パターンが形成された第2フィルムとを、ラミネーション法で貼り合わせるか、または接着剤(感圧接着剤を含む)により接着することで作製される。
【0032】
第2フィルムへの微細パターンの形成には、レーザパターニング、ダイレクトレーザイメージング、レーザドリル、マスクによるまたはマスクレスのレーザまたは電子ビーム照射が用いられる。また印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷等によって個別の特性を付与して、材料や屈折率値を変更してもよい。マイクロまたはナノディスペンス、ドージング、ダイレクト「書込み」、離散的レーザ焼結、マイクロ放電加工(マイクロEDM(Electrical Discharge Machining))、またはマイクロマシニング、マイクロ成形、インプリンティング、エンボス加工およびこれらに類するものを用いることもできる。
【0033】
積層フィルム10の良好な可視光透過率およびヘイズ値を得る観点では、光抽出部21である複数の内部空間は、平面視において、光抽出層2の面積に占める複数の内部空間の面積の割合(占有面積率)は30%以下であることが好ましい。なお、内部空間の占有面積率は、均一であってもよいし、光源50からの距離が増大しても輝度が低下しないように、距離の増大につれて、占有面積率が増大するようにしてもよい。内部空間の占有面積率は均一であることが好ましい。なお、内部空間の占有面積率は、良好な輝度を得る観点から1%以上であることが好ましい。内部空間の占有面積率は、1%以上30%以下であることが好ましく、上限値は、25%以下がさらに好ましく、高い可視光透過率を得るためには、10%以下が好ましく、5%以下がさらに好ましい。
【0034】
なお、光抽出部21の上述の特徴は、ここで例示した光抽出層2内に形成された複数の内部空間に限られず、種々の配光制御構造に共通する。複数の内部空間によって構成される配光制御構造としては、例えば、国際公開第2019/087118号に記載の配光構造体(Light Distribution Structure)を用いることができる。
【0035】
光抽出部21は、複数の内部空間に限らず、光抽出層2に配置された複数のプリズムであってもよい。光抽出層2は、内部に複数のプリズムを含むプリズムシートであってもよい。光抽出層2の表面に複数の凸部(プリズム部)が直接形成されてもよい。光抽出層2の屈折率は、粘接着層3の屈折率と概ね等しいことが好ましく、屈折率の差(絶対値)は、0.15以下が好ましく、0.1以下であることがさらに好ましい。
【0036】
光抽出部21が複数の内部空間である配光制御構造は、プリズムシート等の配光制御構造よりも光の利用効率が高い。また、内部空間の断面形状(例えば、図4中の傾斜面の角度θa、θb)、大きさ、配置密度、分布等を調整することによって、配光分布を制御することができる。一方、光抽出部21が有する複数の内部空間の断面形状、大きさ、配置密度、分布を調整することによって、積層フィルム10の可視光透過率およびヘイズ値を制御することができる。積層フィルム10の可視光透過率は、60%以上であり、好ましくは、65%以上、70%以上、75%以上または80%以上である。積層フィルム10のヘイズ値は、10%未満であり、好ましくは9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満であり得る。なお、ヘイズ値はヘイズメータを用いて測定可能である。
【0037】
内部空間の大きさおよび密度はヘイズ値に影響する。内部空間の大きさ(長さM、幅W:図2~4参照)は、例えば、長さMが10μm以上500μm以下であることが好ましく、幅Wが1μm以上100μm以下であることが好ましい。光抽出層2による光抽出効率の観点では、高さHは、1μm以上100μm以下であることが好ましい。複数の内部空間は、離散的に均一に分布させることが好ましく、例えば、図2に示したように、周期的に配置することが好ましい。ピッチPxは、例えば10μm以上500μm以下であることが好ましく、ピッチPyは、例えば10μm以上500μm以下であることが好ましい。図2における間隔Eは、X方向における複数の内部空間同士の間隔である。図2における間隔Dは、Y方向における複数の内部空間同士の間隔である。
【0038】
<粘接着層3の構成例>
粘接着層3には、アクリル系、ポリエステル系等の粘着剤および接着剤の少なくとも一方を適宜選択できる。粘接着層3の屈折率は、導光層1と同程度であることが好ましく、例えば1.45以上1.60以下が好ましい。
【0039】
粘接着層3は、導光層1と光抽出層2との間に配置される。積層フィルム10の厚みt1に対する粘接着層3の厚みの割合は、10%以上とすることができ、15%以上、20%以上が好ましい。上限は特に限定ないが例えば50%以下、40%以下である。このような粘接着層3を、導光層1と光抽出層2との間に配置することで、積層フィルム10は、可撓性を好適に有することができる。
【0040】
[変形例]
以下、様々な変形例について説明する。なお、既に説明した実施形態と同一の名称、符号については、同一もしくは同質の部材又は構成部を示しており、詳細説明を適宜省略する。
【0041】
<第1変形例>
図5は、第1変形例に係る積層フィルム10の模式的断面図である。第1変形例に係る積層フィルム10は、光抽出層2の端部2aを通して、光源50からの光をさらに入射可能である点が、上述した実施形態と異なる。第1変形例では、光入射面1bだけでなく、光抽出層2の端部2aからも入射可能にすることで、光源50からの光の積層フィルム10への入射効率を高くすることができる。
【0042】
図5に示すように、光源50は、光入射面1bに配置される。光源50からの光は、光入射面1bを通して積層フィルム10に入射するとともに、光抽出層2の端部2aを通して積層フィルム10に入射することができる。光源50は、導光層1および光抽出層2のどちらか一方に、接着部材等によって固定される。光抽出層2の端部2aは、光抽出層2が備える複数の端部のうち、光源50の最も近くに位置する端部である。図5に示す例では、光源50からの光L1は、光入射面1bを通して積層フィルム10に入射する光に対応する。光源50からの光L2は、光抽出層2の端部2aを通して積層フィルム10に入射する光に対応する。
【0043】
光抽出層2は、光源50と接触して配置されてもよい。光抽出層2が光源50と接触して配置されることで、光源50からの光が光抽出層2に入射せず漏れ出すことによる光損失を低減し、光源50からの光の光抽出層2への入射効率を高くすることができる。
【0044】
<第2変形例>
図6は、第2変形例に係る積層フィルム10の模式的断面図である。第2変形例に係る積層フィルム10は、導光層1と光抽出層2との間に配置され、導光層1よりも屈折率が低い第1部分401と、第1部分401よりも屈折率が高い第2部分402と、を含むパターン層4を有する点が、上述した実施形態と異なる。第2変形例に係る積層フィルム10は、パターン層4を有することで、第2変形例に係る積層フィルム10による照明光の輝度の均一性を向上させることができる。パターン層4は光入射面から離れるにつれて第2部分402の面積が多くなるように構成されてもよい。
【0045】
パターン層4には、国際公開第2022/025067号に開示された光結合層を使用できる。国際公開第2022/025067号の開示内容の全てを参照により本願明細書に援用する。第1部分401は、低屈折率層であってもよいし、エアキャビティであってもよい。第2部分402は、導光層1または粘接着層3とほぼ同じ屈折率を有する材料で構成されてよい。低屈折率層を用いる場合には、低屈折率層の屈折率は、例えば1.25以下であることが好ましく、1.20以下であることがより好ましく、1.15以下がさらに好ましい。低屈折率層は固体であることが好ましく、屈折率は、例えば1.05以上であることが好ましい。導光層1の屈折率と低屈折率層の屈折率との差は、好ましくは0.20以上であり、より好ましくは0.23以上であり、さらに好ましくは0.25以上である。屈折率が1.25以下の低屈折率層は、例えば多孔質材料を用いて形成され得る。
【0046】
<第3変形例>
図7は、第3変形例に係る積層フィルム10の模式的断面図である。第3変形例に係る積層フィルム10は、平面視において、光入射面1bに配置され、光源50からの光を導光層に入射させる光入射部材としてのテーパ部材40を有する点が、上述した実施形態と異なる。積層フィルム10は、テーパ部材40を有することで、光源50からの光Lの入射効率を高くすることができる。
【0047】
図7に示すように、テーパ部材40は、導光層1の上面104等に積層するための底面41と、光源50からの光Lを入射させる光入射面42と、光源50からテーパ部材40に入射された光Lを反射して導光層1側に導く傾斜面43と、を有する。傾斜面43は、臨界角未満の角度で傾斜面43に入射される光の方向を制御することができる。傾斜面43は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。傾斜面43の曲面は、球面の一部であってもよいし、非球面の一部であってもよい。非球面には放物面等が挙げられる。図7に示す例では、テーパ部材40は、光源50から遠ざかるほど厚みが薄くなるテーパ形状を有する。
【0048】
テーパ部材40は、光源50からの光Lに対して透過率を有する樹脂またはガラス材料により構成できる。樹脂材料には、アクリル樹脂等を使用できる。ここでの透過率は、60%以上であることが好ましい。
【0049】
テーパ部材40は、光入射面1bに配置される。テーパ部材40は、光入射面1bに接着部材等で接着されてよい。積層フィルム10への光Lの入射効率を高くする観点では、光抽出層2とテーパ部材40との間の距離は近いことが好ましく、光抽出層2とテーパ部材40とが接触することがより好ましい。
【0050】
複数の光源50が複数並んで配置されている場合には、積層フィルム10は、複数のテーパ部材40を有してもよい。または、複数の光源50が並んでいる方向において、複数の光源50のそれぞれからの光が入射可能な長さを有する1つのテーパ部材40を有してもよい。
【0051】
テーパ部材40には、国際公開第2022/030544号に開示された「optical incoupling element」を使用できる。国際公開第2022/030544号の開示内容の全てを参照により本願明細書に援用する。
【0052】
テーパ部材40は、臨界角未満の角度で入射する光Lの反射方向を制御するものであればよく、例えば回析格子であってもよいし、光学キャビティを含む指向性を有する層であってもよい。指向性を有する層は、例えばエアキャビティのパターンが形成されたフィルムに別のフィルムを貼り合わせることによって形成できる。指向性を有する層は、例えば国際公開第2022/030543号に開示された「optical incoupling tape」を使用できる。国際公開第2022/030543号の開示内容の全てを参照により本願明細書に援用する。
【0053】
<第4変形例>
図8は、第4変形例に係る積層フィルム10の模式的断面図である。第4変形例に係る積層フィルム10は、平面視において、光入射面1bに配置され、光源50からの光を導光層に入射させる光入射部材としてのプリズム部材40aを有する点が、上述した実施形態と異なる。積層フィルム10は、プリズム部材40aを有することで、光源50からの光Lの入射効率を高くすることができる。
【0054】
図8に示すように、プリズム部材40aは、導光層1の上面104等に積層するための底面41aと、光源50からの光Lを入射させる光入射面42aと、を有する。光源50の光出射面50aとプリズム部材40aの光入射面42aとが接触するように配置されることで、光源50とプリズム部材40aとが一体に構成されてもよい。光源50とプリズム部材40aとが一体に構成されることで、光源50とプリズム部材40aとの間における界面反射を低減して光損失を低減できるため、光入射効率を高くすることができる。
【0055】
プリズム部材40aは、光源50からの光Lに対して透過率を有する樹脂またはガラス材料により構成できる。樹脂材料には、アクリル樹脂等を使用できる。ここでの透過率は、60%以上であることが好ましい。
【0056】
プリズム部材40aは、光入射面1bに配置される。プリズム部材40aは、光入射面1bに接着部材等で接着されてよい。積層フィルム10への光Lの入射効率を高くする観点では、光抽出層2とプリズム部材40aとの間の距離は近いことが好ましく、光抽出層2とプリズム部材40aとが接触することがより好ましい。
【0057】
複数の光源50が複数並んで配置されている場合には、積層フィルム10は、複数のプリズム部材40aを有してもよい。または、複数の光源50が並んでいる方向において、複数の光源50のそれぞれからの光が入射可能な長さを有する1つのプリズム部材40aを有してもよい。
【0058】
<第5変形例>
図9は、第5変形例に係る積層フィルム10の模式的断面図である。第5変形例に係る積層フィルム10は、平面視において、光入射面1bに配置され、光源50からの光を導光層に入射させる光入射部材としての第1透光部材40bを有する点が、上述した実施形態と異なる。積層フィルム10は、第1透光部材40bを有することで、光源50からの光Lの入射効率を高くすることができる。
【0059】
第1透光部材40bは、直方体状の部材である。第1透光部材40bは、光入射面1b上に配置されるとともに、光抽出層2の端部2aと光源50の光出射面50aとの間に配置されることができる。光源50からの光Lは、第1透光部材40bの内部に入射した後、その一部は、第1透光部材40bの上面で全反射され、光抽出層2の端部2a、粘接着層3の端部3aまたは光入射面1bを通って積層フィルム10の内部に入射する。第1透光部材40bの内部に入射した光Lの他の一部は、第1透光部材40bの上面で全反射されることなく、端部2a、端部3aまたは光入射面1bを通って積層フィルム10の内部に入射する。
【0060】
界面反射を低減し、界面反射に伴う積層フィルム10への入射光の光損失を低減する観点では、第1透光部材40bは、端部2aに接触して配置されるとともに、光出射面50aに接触して配置されることが好ましい。第1透光部材40bは、光入射面1bに接着部材等で接着されてよい。
【0061】
また、Y方向において、端部2aの位置と端部3aの位置がずれる場合がある。この場合、端部2aまたは端部3aのどちらか一方に接触するように第1透光部材40bを配置すると、端部2aまたは端部3aの他方と第1透光部材40bとの間に隙間ができる。光源50からの光Lがこの隙間で界面反射することで、積層フィルム10への入射光の光損失が生じる。従って、第1透光部材40bは、端部2aおよび端部3aの少なくとも一方に押圧しながら配置されることが好ましい。押圧しながら第1透光部材40bを配置することで、端部2aまたは端部3aと第1透光部材40bとの間の隙間を低減し、光源50からの光Lの積層フィルム10への入射効率を高くすることができる。
【0062】
第1透光部材40bは、光源50からの光Lに対して透過率を有する樹脂またはガラス材料により構成できる。樹脂材料には、アクリル樹脂等を使用できる。ここでの透過率は、60%以上であることが好ましい。
【0063】
複数の光源50が複数並んで配置されている場合には、積層フィルム10は、複数の第1透光部材40bを有してもよい。または、複数の光源50が並んでいる方向において、複数の光源50のそれぞれからの光が入射可能な長さを有する1つの第1透光部材40bを有してもよい。
【0064】
図9に示すように、積層フィルム10は、第1透光部材40bの光源50が位置する側とは反対側に配置される反射部60をさらに含んでよい。例えば、反射部60は、第1透光部材40bの光源50が位置する側とは反対側の面に配置される反射シートとすることができる。反射シートは、反射面を含むシート状の部材であり、第1透光部材40bの光源50が位置する側とは反対側の面に貼付することで固定される。
【0065】
反射部60は、反射シートに限定されない。例えば反射部60は、板状部材に反射膜が形成された反射板であってもよい。反射膜は、アルミニウム等の金属材料により構成できる。また、反射部60は、第1透光部材40bの光源50が位置する側とは反対側の面にスプレー等で金属材料を塗布することによって形成されてもよい。
【0066】
積層フィルム10は、第1透光部材40bに入射した光源50からの光Lを反射部60で反射することで、光Lが、光源50が位置する側とは反対側の面を透過して第1透光部材40bの外部に出射されることを低減する。これにより、光損失を低減し、光源50からの光Lの積層フィルム10への入射効率を高くすることができる。また、反射部60として反射シートを用いることで、反射部60を第1透光部材40bに簡単に配置することができる。
【0067】
<第6変形例>
図10は、第6変形例に係る積層フィルム10の模式的断面図である。第6変形例に係る積層フィルム10は、導光層1が配置される側とは反対側における光抽出層2の表面である第1面101の少なくとも一部に光入射面2bを有する点が、上述した実施形態と異なる。第1面101の少なくとも一部を光入射面2bとすることで、光源50からの光Lの積層フィルム10への入射効率を高くすることができる。
【0068】
図10に示す例では、積層フィルム10は、第1透光部材40bを有する。第1透光部材40bは、光入射面2b上に配置される。光入射面2bの領域は、第1面101内における、第1透光部材40bに向き合う領域に対応する。第1透光部材40bは、光入射面2bに接着部材等で接着されてよい。
【0069】
光源50は、光出射面50aが、第1透光部材40bと向き合うとともに、端面103に向き合うように配置される。図10に示す例では、端面103は、導光層1の端部1aと光抽出層2の端部2aと粘接着層3の端部3aとから構成される面である。
【0070】
光源50からの光Lの一部は、第1透光部材40bの内部に入射し、他の一部は、端面103を通って積層フィルム10に入射する。第1透光部材40bの内部に入射した光の一部は、第1透光部材40bの上面で全反射された後、光入射面1bを通って積層フィルム10の内部に入射する。第1透光部材40bの内部に入射した光Lの他の一部は、第1透光部材40bの上面で全反射されることなく、光入射面1bを通って積層フィルム10の内部に入射する。
【0071】
界面反射を低減し、界面反射に伴う積層フィルム10への入射光の光損失を低減する観点では、光出射面50aは第1透光部材40bに接触して配置されるとともに、端面103に接触して配置されることが好ましい。
【0072】
また、Y方向において、端部1aの位置、端部2aの位置、および端部3aの位置が互いにずれる場合がある。この場合、端部1a、端部2aまたは端部3aのいずれか1つに光出射面50aが接触するように光源50を配置すると、他の端部と光出射面50aとの間に隙間ができる。光源50からの光Lがこれらの隙間で界面反射することで、積層フィルム10への入射光の光損失が生じる。従って、光源50は、端部1a、端部2aおよび端部3aの少なくとも1つに光出射面50aを押圧しながら配置されることが好ましい。光出射面50aを押圧しながら光源50を配置することで、端部1a、端部2aおよび端部3aそれぞれと光出射面50aとの間の隙間を低減し、光源50からの光Lの積層フィルム10への入射効率を高くすることができる。
【0073】
複数の光源50が複数並んで配置されている場合には、積層フィルム10は、複数の第1透光部材40bを有してもよい。または、複数の光源50が並んでいる方向において、複数の光源50のそれぞれからの光が入射可能な長さを有する1つの第1透光部材40bを有してもよい。
【0074】
図10に示すように、積層フィルム10は、第1透光部材40bの光源50が位置する側とは反対側に配置される反射部60をさらに含むことができる。この反射部60は、図9において説明したものとほぼ同じであるため、ここでは重複する説明を省略する。
【0075】
<第7変形例>
図11は、第7変形例に係る積層フィルム10の模式的断面図である。第7変形例では、光入射部材としての第2透光部材40cは、一部が光入射面2bに向き合い、且つ他の一部が端面103に向き合うように配置される点が、第6変形例と異なる。第2透光部材40cは、その一部が光入射面2bに向き合うとともに、他の一部が端面103に向き合う。第2透光部材40cを有することで、光源50からの光Lの積層フィルム10への入射効率を高くすることができる。
【0076】
図11に示す例では、第2透光部材40cは、第1対向面41cと第2対向面42cとを有する。第1対向面41cは、光入射面2bに向き合う面である。第2対向面42cは、端面103に向き合う面である。図11に示す例では、端面103は、導光層1の端部1aと光抽出層2の端部2aと粘接着層3の端部3aとから構成される面である。光入射面2bの領域は、第1面101における、第1対向面41cに向き合う領域に対応する。第2透光部材40cは、光入射面2bおよび端面103の少なくとも一方に接着部材等で接着されてよい。
【0077】
光源50は、光出射面50aが、第2透光部材40cに向き合うように配置される。光源50からの光Lは、第2透光部材40cの内部に入射する。第2透光部材40cの内部に入射した光の一部は、第2透光部材40cの上面で全反射された後、光入射面2bまたは端面103を通って積層フィルム10の内部に入射する。また第2透光部材40cの内部に入射した光の他の一部は、第2透光部材40cの上面で全反射されることなく、光入射面2bまたは端面103を通って積層フィルム10の内部に入射する。
【0078】
界面反射を低減し、界面反射に伴う積層フィルム10への入射光の光損失を低減する観点では、光出射面50aが第2透光部材40cに、第1対向面41cが光入射面2bに、第2対向面42cが端面103に、それぞれ接触して配置されることが好ましい。
【0079】
また、Y方向において、端部1aの位置、端部2aの位置、および端部3aの位置が互いにずれる場合がある。この場合、端部1a、端部2aまたは端部3aのいずれか1つに接触するように第2透光部材40cを配置すると、他の端部と第2透光部材40cとの間に隙間ができる。光源50からの光Lがこれらの隙間で界面反射することで、積層フィルム10への入射光の光損失が生じる。従って、第2透光部材40cは、端部1a、端部2aおよび端部3aの少なくとも1つに押圧しながら配置されることが好ましい。押圧しながら第2透光部材40cを配置することで、端部1a、端部2aおよび端部3aそれぞれと第2透光部材40cとの間の隙間を低減し、光源50からの光Lの積層フィルム10への入射効率を高くすることができる。
【0080】
複数の光源50が複数並んで配置されている場合には、積層フィルム10は、複数の第2透光部材40cを有してもよい。または、複数の光源50が並んでいる方向において、複数の光源50のそれぞれからの光が入射可能な長さを有する1つの第2透光部材40cを有してもよい。
【0081】
図11に示すように、積層フィルム10は、第2透光部材40cの光源50が位置する側とは反対側に配置される反射部60をさらに含むことができる。この反射部60は、第2透光部材40cに配置される点を除き、図9において説明したものとほぼ同じであるため、ここでは重複する説明を省略する。
【0082】
<第8変形例>
図12は、第8変形例に係る積層フィルム10の模式的断面図である。第8変形例に係る積層フィルム10は、光抽出層2が配置される側とは反対側における導光層1の表面である第2面102の少なくとも一部を光入射面2bとする点が、第6変形例と異なる。第8変形例の作用効果は、第6変形例と同様である。
【0083】
<第9変形例>
図13は、第9変形例に係る積層フィルム10の模式的断面図である。第9変形例に係る積層フィルム10は、光抽出層2が配置される側とは反対側における導光層1の表面である第2面102の少なくとも一部を光入射面2bとする点が、第7変形例と異なる。第9変形例の作用効果は、第7変形例と同様である。
【0084】
[実施例および比較例]
以下、実施例および比較例について説明する。但し、本発明は、これらの例に何ら限定されない。なお、以下に示す説明では、説明を分かりやすくするために、比較例1~3においても、図1に示した積層フィルム10と実質的に同じ構成には、図1に示した符号と同じ符号を便宜的に用いる場合がある。
【0085】
<評価方法>
(発光度合の評価)
実施例および比較例に係る積層フィルム内に光源50から光を入射させて、光抽出層側から光を取り出した。取り出された光について、目視で発光輝度を評価した。以下に、発光度合いの評価指標である「A」~[D]それぞれの定義を示す。
A:非常に良好(輝度が非常に高い)。
B:良好(輝度が高い)。
C:やや良好(輝度がやや高い)。
D:不良(輝度が低い)。
【0086】
(可撓性の評価)
実施例および比較例に係る積層フィルムの可撓性を官能評価した。以下に可撓性の評価指標である「A」~「D」それぞれの定義を示す。
A:非常に良好(長尺の場合にロール巻き取りが可能なほど柔らかい)。
B:良好(Aよりも劣るが長尺の場合にロール巻き取りが可能なほど柔らかい)。
C:やや良好(Bより劣るが長尺の場合にロール巻き取りが可能なほど柔らかい)。
D:不良(長尺の場合にロール巻き取りが難しい)
【0087】
(光入射安定性の評価)
実施例および比較例に係る積層フィルムへの光入射安定性を官能評価した。以下に光入射安定性の評価指標である「A」~「C」の定義を示す。
A:容易に安定な光入射が可能
B:安定な光入射が可能
C:安定な光入射が困難
【0088】
(実施例1)
以下、実施例1に係る積層フィルムの条件を示す。
・導光層1:材質をアクリル樹脂、厚みを130μmとした。
・粘接着層3:材質を樹脂(CS9864)、厚みを100μmとした。
・光抽出層2の基材フィルム:材質をアクリル樹脂、厚みを30μmとした。
・光抽出層2の粘着剤:材質をポリエステル樹脂、厚みを7μmとした。
・光抽出層2の凹凸フィルム:材質をアクリル樹脂、厚みを128μmとした。
・積層フィルム10全体の厚みを395μmとした。
・光入射面1bにおける導光層1の端部1aから光抽出層2の端部2aまでの長さを50mmとした。
・光源50からの光を、光入射面1bおよび端面103を通して積層フィルムの内部に入射させた。
【0089】
(実施例2)
光入射面1bにテーパ部材40を配置(第3変形例)し、テーパ部材40を介して光源50からの光を、光入射面1bおよび端面103のそれぞれを通して積層フィルムに入射させた点以外は、実施例1と同様とした。
【0090】
(実施例3)
光入射面1bにテーパ部材40を配置(第3変形例)し、テーパ部材40を介して光源50からの光を、光入射面1bのみを通して積層フィルムに入射させた点以外は、実施例1と同様とした。
【0091】
(実施例4)
・導光層1の厚みを170μmとした。
・光抽出層2の厚みを725μmとした。
・積層フィルム全体の厚みを995μmとした。
・上記の点以外は、実施例1と同様とした。
【0092】
(実施例5)
・導光層1の厚みを170μmとした。
・光抽出層2の厚みを725μmとした。
・積層フィルム全体の厚みを995μmとした。
・上記の点以外は、実施例2と同様とした。
【0093】
(実施例6)
・導光層1の厚みを170μmとした。
・光抽出層2の厚みを725μmとした。
・積層フィルム全体の厚みを995μmとした。
・上記の点以外は、実施例3と同様とした。
【0094】
(実施例7)
・導光層1の厚みを30μmとした。
・積層フィルム全体の厚みを295μmとした。
・上記の点以外は、実施例1と同様とした。
【0095】
(実施例8)
・導光層1の厚みを30μmとした。
・積層フィルム全体の厚みを295μmとした。
・上記の点以外は、実施例2と同様とした。
【0096】
(実施例9)
光入射部材としてプリズム部材40a(第4変形例)を用いた点以外は、実施例1と同様とした。
【0097】
(実施例10)
光入射部材として第1透光部材40b(第5変形例)を用いた点以外は、実施例1と同様とした。
【0098】
(実施例11)
非重複領域を「無」とするとともに、光入射部材として第1透光部材40b(第6変形例)を用いた点以外は、実施例1と同様とした。ここで、非重複領域とは、平面視において、光抽出層と導光層とが重ならない導光層の領域を意味する。
【0099】
(実施例12)
非重複領域を「無」とするとともに、光入射部材として第2透光部材40c(第7変形例)を用いた点以外は、実施例1と同様とした。
【0100】
(比較例1)
光源50からの光を、端面103を通して積層フィルムに入射した点以外は実施例1と同様とした。
【0101】
(比較例2)
非重複領域を「無」とし、光源50からの光を、端面103を通して積層フィルムに入射した点以外は実施例1と同様とした。
【0102】
(比較例3)
導光層の厚みを1000μm、粘接着層の厚みを50μm、光抽出層の厚みを165μm、積層フィルム全体の厚みを1215μmとし、かつ光源50からの光を、端面103を通して積層フィルムに入射した点以外は、実施例1と同様とした。
【0103】
実施例1~12および比較例1~3それぞれにおける条件および評価結果の一覧を表1に示す。
【表1】
【0104】
表1に示したように、実施例1~12では、「発光度合い」は「A」~「C」となり、いずれも良好な結果が得られた。また、実施例1~12では、「可撓性」は、「A」~「C」のいずれかであり、ロール巻取りが可能な程度の可撓性が得られた。さらに、実施例1~12では、「光入射安定性」が「A」または「B」となり、良好な結果が得られた。発光度合いは、実施例12が最も良好であり、次に実施例10および実施例11が良好であった。積層フィルム10が反射部60を備える場合に発光度がより高くなったが、反射部60を備えない場合でも十分な発光度が得られた。
【0105】
比較例1~2では、「光入射安定性」が「C」であり、良好な結果が得られなかった。また比較例3では、「光入射安定性」は「A」であったものの、「可撓性」が「D」となり、ロール巻取りが不可能な可撓性となった。
【0106】
以上のように、実施例1~12では、「発光度合い」および「光入射安定性」のいずれにおいても良好であり、且つ「可撓性」においてロール巻取り可能な積層フィルムが得られることが分かった。
【0107】
[その他の好適な変形例]
実施形態に係る積層フィルム10は、積層フィルム10の一方側に配置され、導光層1よりも屈折率が低い低屈折率層を有してもよい。低屈折率層は、屈折率が1.30以下であることが好ましい。被着体に配置された状態等における積層フィルム10の存在感を低減する観点では、積層フィルム10における低屈折率層が配置された側とは反対側における積層フィルム10の表面から、低屈折率層が配置された側における積層フィルム10の表面までの全体厚みは、1500μm以下であることが好ましい。
【0108】
積層フィルム10が配置される被着体は、ガラスに限らず、液晶セル等の電子基板、天井、壁、床等の非光透過性部材等であってもよい。光抽出層2は、被着体が位置する側とは反対側に光Lを抽出することに限らず、被着体が位置する側に光Lを抽出してもよい。この場合、被着体の光透過性が高ければ、抽出された光Lは被着体を透過してもよいし、被着体の光透過性が低ければ、被着体が光を反射してもよい。
【0109】
光抽出層2における導光層1が位置する側とは反対側に、基材フィルムがさらに配置されてもよい。この基材フィルムは、ハードコート層や反射防止層であってもよい。さらに、光抽出層2と基材フィルムとの間に低屈折率層があってもよいし、導光層と基材フィルムとの間に低屈折率層があってもよい。被着体に配置された状態等における積層フィルム10の存在感を低減する観点では、これらの部材がある場合でも導光部材の厚みは、1000μm以下であることが好ましく、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下であることがより好ましい。
【0110】
導光層1と光抽出層2は、別々のフィルムである構成に限らず、導光層1と光抽出層2が一体化された構成であってもよい。例えば、パターン化された凹部が形成された導光層1は、導光層1の機能と光抽出層2の機能を兼備することができる。
【0111】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0112】
実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係をこれに限定するものではない。
【0113】
実施形態に係る積層フィルムは、光源からの光の入射効率を高くすることができるため、光源と組み合わせてガラス、窓、壁、床、天井等の建築部材に配置されることで、建築物の内部または外部の空間を明るく照明することができる。また、パーティションに配置されることで、室内の間仕切りまたは所望の空間の目隠しを好適に行うことができる。また、液晶パネル、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイパネル等の表示装置のガラス基板等に配置されることで、表示装置におけるバックライト照明等を明るくすることができる。また、積層フィルム10は、被着体に配置せずに可撓性を有する照明フィルムとして用いることもできる。さらに、実施形態に係る積層フィルムは、上記以外にも、新しい用途を提供することができる。
【0114】
実施形態に係る積層フィルムと、該積層フィルムの光入射面に光が直接、または光入射部材を介して入射するように配置された光源と、により、面照明装置を構成することもできる。
【0115】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1> 複数の層が積層される積層フィルムであって、積層方向に沿う端面と、前記端面に交差し、光源からの光を入射させる光入射面と、前記光入射面を通して入射される光を導光する導光層と、前記導光層により導光される光を抽出可能な光抽出部を含む光抽出層と、を有し、前記導光層が配置される側とは反対側における前記光抽出層の表面である第1面と、前記光抽出層が配置される側とは反対側における前記導光層の表面である第2面と、の間の厚みは1000μm以下である、積層フィルムである。
<2> 前記光入射面に配置され、前記光源からの光を入射させる光入射部材をさらに有する、前記<1>に記載の積層フィルムである。
<3> 前記光入射部材は、一部が前記光入射面に向き合い、且つ他の一部が前記端面に向き合うように配置される、前記<2>に記載の積層フィルムである。
<4> 前記光入射部材における前記光源が位置する側とは反対側に配置される反射部をさらに含む、前記<3>に記載の積層フィルムである。
<5> 前記反射部は、前記光入射部材の前記光源が位置する側とは反対側の面に配置される反射シートである、前記<4>に記載の積層フィルムである。
<6> 前記導光層の厚みは、30μm以上である、前記<1>または前記<2>に記載の積層フィルムである。
<7> 前記導光層と前記光抽出層との間に配置され、前記導光層よりも屈折率が低い第1部分と、前記第1部分よりも屈折率が高い第2部分と、を含むパターン層を有する、前記<1>から前記<6>のいずれか1つに記載の積層フィルムである。
<8> 前記光抽出層の端部は、平面視において、前記導光層の端部よりも前記導光層の内側に位置し、前記光入射面は、平面視において、前記光抽出層と前記導光層とが重ならない前記導光層の領域に位置する、前記<1>から前記<7>のいずれか1つに記載の積層フィルムである。
<9> 前記光抽出層は、前記導光層における前記光源が配置される側に配置されている、前記<8>に記載の積層フィルムである。
<10> 前記光抽出層の端部を通して前記光源からの光をさらに入射可能である、前記<8>または前記<9>に記載の積層フィルムである。
<11> 前記光抽出層は、前記光源と接触して配置されている、前記<10>に記載の積層フィルムである。
<12> 巻取り可能に長尺に形成されている、前記<1>から前記<11>のいずれか1つに記載の積層フィルムである。
【符号の説明】
【0116】
1 導光層
1a 端部
1b、2b 光入射面
101 第1面
102 第2面
103 端面
104 上面
2 光抽出層
2a 端部
21 光抽出部
3 粘接着層
3a 端部
4 パターン層
401 第1部分
402 第2部分
10 積層フィルム
40 テーパ部材(光入射部材の一例)
41 底面
42 光入射面
43 傾斜面
40a プリズム部材(光入射部材の一例)
41a 底面
42a 光入射面
40b 第1透光部材(光入射部材の一例)
40c 第2透光部材(光入射部材の一例)
41c 第1対向面
42c 第2対向面
50 光源
50a 光出射面
60 反射部
L、L1、L2 光
t1 積層フィルムの厚み
t2 導光層の厚み
D Y方向における複数の内部空間同士の間隔
E X方向における複数の内部空間同士の間隔
M 長さ
Px X方向における複数の内部空間のピッチ
Py Y方向における複数の内部空間のピッチ
H 高さ
W 幅
θa、θb 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
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図12
図13