(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174483
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】積層フィルム、およびロール
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20241210BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20241210BHJP
【FI】
F21S2/00 433
F21S2/00 435
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092333
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】久野 純平
(72)【発明者】
【氏名】中村 恒三
【テーマコード(参考)】
3K244
【Fターム(参考)】
3K244AA05
3K244AA09
3K244BA48
3K244BA50
3K244CA03
3K244DA01
3K244EA02
3K244EA04
3K244EA12
3K244EC01
3K244EC13
3K244EC27
3K244ED30
3K244LA01
(57)【要約】
【課題】意匠性が高い積層フィルムおよびロールを提供する。
【解決手段】本積層フィルムは、光源から入射される光を導光する導光部材と、前記導光部材の一方側に配置され、屈折率が1.30以下である低屈折率層と、を有し、前記導光部材は、前記導光部材により導光される光を抽出可能な光抽出部を含み、前記導光部材の厚みは、1000μm以下であり、前記低屈折率層が配置された側とは反対側における前記導光部材の表面である第1面から、前記導光部材とは反対側における前記低屈折率層の表面である第2面までの全体厚みは、1500μm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から入射される光を導光する導光部材と、
前記導光部材の一方側に配置され、屈折率が1.30以下である低屈折率層と、を有し、
前記導光部材は、前記導光部材により導光される光を抽出可能な光抽出部を含み、
前記導光部材の厚みは、1000μm以下であり、
前記低屈折率層が配置された側とは反対側における前記導光部材の表面である第1面から、前記導光部材とは反対側における前記低屈折率層の表面である第2面までの全体厚みは、1500μm以下である、積層フィルム。
【請求項2】
前記低屈折率層における前記導光部材とは反対側に配置された第1粘接着層を有する、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記導光部材は、前記光抽出部を含む光抽出層と、前記光源から入射される光を透過する透過層と、を有する、請求項1または請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記透過層の厚みは、30μm以上である、請求項3に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記光抽出部は、前記光抽出層に設けられた複数の内部空間である、請求項3に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記透過層と前記光抽出層との間に配置される第2粘接着層を有し、
前記導光部材の厚みに対する前記第2粘接着層の厚みの割合は、10%以上である、請求項3に記載の積層フィルム。
【請求項7】
平面視において、前記光抽出層の端部は、前記透過層の端部よりも内側に位置している、請求項3に記載の積層フィルム。
【請求項8】
平面視において、前記光抽出層と前記透過層とが重ならない前記透過層の領域に配置され、前記光源からの光を入射させる光入射部材を有する、請求項7に記載の積層フィルム。
【請求項9】
前記低屈折率層における前記導光部材とは反対側に配置される被着体を有する、請求項1または請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載の積層フィルムが巻き取られたロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム、およびロールに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス、窓、壁、床、天井等に積層フィルムを配置することで、意匠性または娯楽性が高い照明や表示を実現する方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、導光板と、導光板よりも屈折率の低い低屈折率樹脂により導光板の一方面上に全面接着されて設けられた第1の保護板と、を有する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、導光板および第1の保護板からなる構成の厚みにより、積層フィルムの意匠性が低くなる場合がある。
【0006】
本発明は、意匠性が高い積層フィルムおよびロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る本積層フィルムは、光源から入射される光を導光する導光部材と、前記導光部材の一方側に配置され、屈折率が1.30以下である低屈折率層と、を有し、前記導光部材は、前記導光部材により導光される光を抽出可能な光抽出部を含み、前記導光部材の厚みは、1000μm以下であり、前記低屈折率層が配置された側とは反対側における前記導光部材の表面である第1面から、前記導光部材とは反対側における前記低屈折率層の表面である第2面までの全体厚みは、1500μm以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、意匠性が高い積層フィルムおよびロールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る積層フィルムの模式的断面図である。
【
図2】実施形態に係る光抽出層の模式的平面図である。
【
図3】
図2におけるIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】実施形態に係る光抽出部の模式的断面図である。
【
図5】実施例1に係る光抽出部の模式的断面図である。
【
図6】実施例1に係る光抽出部の模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。各図面において、同一構成要素には同一符号を付与し、重複した説明を適宜省略する。
【0011】
以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための積層フィルムを例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0012】
以下に示す図面において、方向表現として、X軸、Y軸およびZ軸を有する直交座標を用いる。X軸、Y軸およびZ軸は、互いに略直交する。X軸の矢印が向く方向を+X方向または+X側、+X方向とは反対方向を-X方向または-X側と表記する。Y軸の矢印が向く方向を+Y方向または+Y側、+Y方向とは反対方向を-Y方向または-Y側と表記する。Z軸の矢印が向く方向を+Z方向または+Z側、+Z方向とは反対方向を-Z方向または-Z側と表記する。
【0013】
Z軸に沿うZ方向は、実施形態に係る積層フィルムを構成する各層の積層方向を示すものとする。本明細書において、平面視とはZ方向から対象を視ることをいう。また、+Z方向を「上」という。実施形態に係る積層フィルムが配置される被着体は、該積層フィルムから見て-Z方向に位置する。但し、これらの方向表現は、実施形態の方向を限定するものではない。また、本明細書において、「厚み」とはZ方向、すなわち各層の積層方向における対象の長さをいう。断面図は、実施形態に係る積層フィルムのYZ平面と平行な断面を示している。
【0014】
[実施形態]
<実施形態に係る積層フィルム10の全体構成例>
図1は、第1実施形態に係る積層フィルム10の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示す例では、積層フィルム10は、光源50から入射される光Lを導光する導光部材1と、導光部材1の一方側に配置され、屈折率が1.30以下である低屈折率層2と、を有する。低屈折率層2は、導光部材1の一方側に第3粘接着層9を介して配置されることができる。導光部材1は、導光部材1により導光される光Lを抽出可能な光抽出部31を含む。導光部材1の厚みt1は、1000μm以下である。導光部材1の厚みt1は、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下であることが好ましい。下限は特に限定されないが、100μm以上、200μm以上である。低屈折率層2が配置された側とは反対側における導光部材1の表面である第1面11から、導光部材1とは反対側における低屈折率層2の表面である第2面12までの全体厚みt2は、1500μm以下である。全体厚みt2は、1000μm以下、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下であることが好ましい。下限は特に限定されないが、100μm以上、200μm以上である。
【0015】
積層フィルム10は、光源50から入射される光Lを導光部材1により導光するとともに、光抽出部31により導光部材1の内部から外部に光Lを抽出することができる。積層フィルム10は、導光部材1から抽出された光Lにより、積層フィルム10が配置される空間を照明することができる。光源50は、例えばLED(Light Emitting Diode)光源である。
【0016】
積層フィルム10は、導光部材1の厚みt1を1000μm以下とし、かつ全体厚みt2を1500μm以下とすることで、積層フィルム10の存在感を低減し、積層フィルム10を目立たなくすることができる。本実施形態では、積層フィルム10の存在感を低減することにより、意匠性が高い積層フィルム10を提供できる。また、積層フィルム10は、積層フィルム10が配置された被着体20の意匠性を高くすることができる。
【0017】
また、積層フィルム10では、全体厚みt2を1500μm以下とすることで、積層フィルム10に可撓性を持たせることができる。積層フィルム10に可撓性を持たせることにより、積層フィルム10を被着体20に配置するときに、シワが生じたり、積層フィルム10と被着体20やとの間に空気が入り込んだりする配置不良を低減することができる。従来のように、導光板が板状の部材であるとは異なり、導光部材を一体化した状態で、ロールで取り扱うことができる。つまり、本実施形態では、意匠性が高い積層フィルム10が巻き取られたロールを提供することができる。
【0018】
また、積層フィルム10内を導光される光Lが、積層フィルム10が配置された被着体20に到達すると、到達した光Lが被着体20で散乱されることで照明光の輝度が減衰したり、到達した光が被着体20で吸収されることで照明光の色相が変化したりする場合がある。例えば、被着体20がフロートガラスであると、フロートガラスに到達した光Lのうち、赤色に対応する波長の光をフロートガラスが吸収することで、照明光が青く色付いて視認される。積層フィルム10は、低屈折率層2を有することで、導光部材1により導光される光Lを低屈折率層2で全反射させ、該光Lが被着体20に到達することを低減できる。これにより、積層フィルム10による照明光の輝度減衰や色相変化等を低減することができる。
【0019】
積層フィルム10は、被着体20に配置することができる。被着体20としては、ガラス、窓、壁、床、天井等が挙げられる。例えば積層フィルム10は、被着体20の表面に貼り付けられることによって配置される。
【0020】
積層フィルム10は、樹脂により構成できる。積層フィルム10は、樹脂により構成されることで、可撓性が高くなるため、様々な形態で取り扱うことができる。例えば、被着体20に配置される前の積層フィルム10は、第1粘接着層7にはく離ライナーが設けられ、長尺のロール形態で取り扱うことができ、取り扱いが容易になる。但し、積層フィルム10は、必ずしも樹脂により構成されなくてもよく、少なくとも一部がガラス等で構成されてもよい。
【0021】
積層フィルム10は、低屈折率層2における導光部材1とは反対側に配置された第1粘接着層7を有することができる。積層フィルム10は、第1粘接着層7を有することで、導光部材1、第3粘接着層9および低屈折率層2を被着体20上に固定することができる。
【0022】
導光部材1は、光抽出部31を含む光抽出層3と、光源50から入射される光Lを透過する透過層4と、を有することができる。導光部材1は、光抽出層3と透過層4とを有することで、光源50から入射される光Lを導光するとともに、導光部材1の内部から外部に光Lを抽出することができる。
【0023】
積層フィルム10では、透過層4の厚みt3を30μm以上とすることができる。透過層4の厚みt3を30μm以上とすることにより、光源50からの光Lが積層フィルム10に入射する入射効率を高くすることができる。
【0024】
光抽出部31は、光抽出層3に設けられた複数の内部空間であってよい。光抽出部31が光抽出層3に設けられた複数の内部空間であることで、積層フィルム10は、指向性の高い光Lを導光部材1の内部から外部に抽出することができる。
【0025】
積層フィルム10は、透過層4と光抽出層3との間に配置される第2粘接着層8を有することができる。導光部材1の厚みに対する第2粘接着層8の厚みの割合は、10%以上とすることができ、15%以上、20%が好ましい上限は特に限定ないが例えば50%以下、40%以下である。このような第2粘接着層8を、透過層4と光抽出層3との間に配置することで、積層フィルム10は、可撓性を好適に有することができる。
【0026】
平面視において、光抽出層3の端部3aは、透過層4の端部4aよりも内側に位置していてもよい。例えば光抽出層3の端部3aと透過層4の端部4aとの距離は1mm以上100mm以下である。平面視における内側は、積層フィルム10を平面視したときの積層フィルム10の中央に近い側を意味する。平面視において、光抽出層3の端部3aが透過層4の端部4aよりも内側に位置していることで、光抽出層3と透過層4とが重ならない透過層4の領域4bに、光源50からの光Lを積層フィルム10に入射させるための部材を配置することができ、光源50から積層フィルム10への光Lの入射効率を高くすることができる。領域4bは、光抽出層3の端部3aと透過層4の端部4aとにより画定される。
【0027】
積層フィルム10は、平面視において、光抽出層3と透過層4とが重ならない透過層4の領域4bに配置され、光源50からの光Lを積層フィルム10に入射させる光入射部材40と、を有することができる。この構成により、積層フィルム10では、光源50から積層フィルム10に光Lが入射しやすくなる。
【0028】
光抽出層3は、光抽出部31が形成された光抽出部形成層30と、基材5と、光抽出部形成層30と基材5との間に配置され、光抽出部形成層30と基材5とを粘接着する第4粘接着層6と、を含むことができる。積層フィルム10は、透過層4と低屈折率層2との間に配置され、透過層4と低屈折率層2とを粘接着する第3粘接着層9と、を有することができる。
【0029】
<低屈折率層2の構成例>
低屈折率層2の屈折率は、例えば1.25以下であることが好ましく、1.20以下であることがより好ましく、1.15以下がさらに好ましい。低屈折率層2は固体であることが好ましく、屈折率は、例えば1.05以上であることが好ましい。透過層4の屈折率と低屈折率層2の屈折率との差は、好ましくは0.20以上であり、より好ましくは0.23以上であり、さらに好ましくは0.25以上である。屈折率が1.25以下の低屈折率層2は、例えば多孔質材料を用いて形成され得る。低屈折率層2の厚みは、例えば、0.3μm以上5.0μm以下である。低屈折率層2は例えばアクリルフィルムなどの図示しない基材フィルムに塗工されて用いられる。低屈折率層2と図示しない基材フィルムは、第1粘接着層7、低屈折率層2、図示しない基材フィルム、第3粘接着層9の順に配置される。図示しない基材フィルムの厚みは例えば5μm以上であり、100μm以下、好ましくは50μm以下である。
【0030】
低屈折率層2が内部に空隙を有する多孔質材料である場合、その空隙率は、好ましくは35体積%以上であり、より好ましくは38体積%以上であり、特に好ましくは40体積%以上である。このような範囲であれば、屈折率が特に低い低屈折率層を形成することができる。低屈折率層の空隙率の上限は、例えば90体積%以下であり、好ましくは75体積%以下である。このような範囲であれば、強度に優れる低屈折率層を形成することができる。ここでの空隙率は、エリプソメーターで測定した屈折率の値から、Lorentz‐Lorenz's formula(ローレンツ-ローレンツの式)より算出された値である。
【0031】
低屈折率層2には、例えば、国際公開第2019/146628号に開示された空隙を有する低屈折率層を用いることができる。国際公開第2019/146628号の開示内容の全てを参照により本願明細書に援用する。具体的には、空隙を有する低屈折率層は、シリカ粒子、微細孔を有するシリカ粒子、シリカ中空ナノ粒子等の略球状粒子、セルロースナノファイバー、アルミナナノファイバー、シリカナノファイバー等の繊維状粒子、ベントナイトから構成されるナノクレイ等の平板状粒子等を含む。1つの実施形態において、空隙を有する低屈折率層は、粒子(例えば微細孔粒子)同士が直接的に化学的に結合して構成される多孔体である。また、空隙を有する低屈折率層を構成する粒子同士は、その少なくとも一部が、少量(例えば、粒子の質量以下)のバインダー成分を介して結合していてもよい。低屈折率層の空隙率および屈折率は、この低屈折率層を構成する粒子の粒径、粒径分布等により調整することができる。
【0032】
空隙を有する低屈折率層を得る方法としては、例えば、特開2010-189212号公報、特開2008-040171号公報、特開2006-011175号公報、国際公開第2004/113966号、およびそれらの参考文献に記載された方法が挙げられる。特開2010-189212号公報、特開2008-040171号公報、特開2006-011175号公報、国際公開第2004/113966号の開示内容の全てを参照により本明細書に援用する。
【0033】
空隙を有する低屈折率層として、シリカ多孔体を好適に用いることができる。シリカ多孔体は、例えば、以下の方法で製造される。ケイ素化合物:加水分解性シラン類およびシルセスキオキサンの少なくとも一方、ならびにその部分加水分解物および脱水縮合物の少なくともいずれか1つを加水分解および重縮合させる方法、多孔質粒子および中空微粒子の少なくとも一方を用いる方法、ならびにスプリングバック現象を利用してエアロゲル層を生成する方法、ゾルゲル法により得られたゲル状ケイ素化合物を粉砕し、得られた粉砕体である微細孔粒子同士を触媒等で化学的に結合させた粉砕ゲルを用いる方法、等が挙げられる。
【0034】
低屈折率層2は、シリカ多孔体に限定されない。低屈折率層2の製造方法も例示した製造方法に限定されず、どのような製造方法であってもよい。また、多孔質層は、シリカ多孔体に限定されず、製造方法も例示した製造方法に限定されず、どのような製造方法により製造されてもよい。
【0035】
シルセスキオキサンは、(RSiO1.5、Rは炭化水素基)を基本構成単位とするケイ素化合物であり、SiO2を基本構成単位とするシリカとは厳密には異なる。しかしながら、シロキサン結合で架橋されたネットワーク構造を有する点でシリカと共通しているので、ここではシルセスキオキサンを基本構成単位として含む多孔体もシリカ多孔体またはシリカ系多孔体という。
【0036】
シリカ多孔体は、互いに結合したゲル状ケイ素化合物の微細孔粒子から構成され得る。ゲル状ケイ素化合物の微細孔粒子としては、ゲル状ケイ素化合物の粉砕体が挙げられる。シリカ多孔体は、例えば、ゲル状ケイ素化合物の粉砕体を含む塗工液を基材に塗工して形成され得る。ゲル状ケイ素化合物の粉砕体は、例えば、触媒の作用、光照射、加熱等により化学的に結合(例えば、シロキサン結合)し得る。
【0037】
<光抽出層3の構成例>
図1に加え、
図2~4をさらに参照して、光抽出層3の構成の一例について説明する。
図2は、光抽出層3を模式的に示す平面図である。
図3は、光抽出層3を模式的に示す断面図である。
図4は、光抽出部31を模式的に示す断面図である。
【0038】
光抽出層3に含まれる光抽出部31は、光抽出層3に設けられた複数の内部空間であってよい。複数の内部空間のそれぞれは、内部全反射によって光を+Z側に向ける界面を形成している。内部空間をキャビティということもある。内部空間は、+Z側に頂角を有する三角形の断面形状(X方向に垂直、YZ面に平行)を有しており、導光部材1内を+Y側に伝搬する光Lを+Z側に向ける。内部空間によって+Z側に向けられた光Lは、積層フィルム10から出射される。内部空間の断面形状はこれに限られず、+Y方向に伝搬する光Lを+Z側に向ける界面を有していれば、台形等であってもよい。内部空間の断面形状(例えば、三角形の頂角の方向)を変えることによって、光の出射方向を変えることができる。
【0039】
積層フィルム10は、導光部材1により導光される光Lを光抽出部31によって抽出するとともに、抽出された光Lの配光を制御できるので、可視光透過率は60%以上であり、ヘイズ値が10%未満であり得る。また、光抽出部31における複数の内部空間の形状および配置等を調整することによって、積層フィルム10から出射される光Lの配光分布、出射効率および輝度分布を制御することができる。光抽出部31は、典型的には内部に空気が充填された空隙部(エアキャビティ)である。但し、エアキャビティには、空気に代えて、光抽出部形成層30の屈折率よりも低い屈折率を有する材料が充填されてもよい。
【0040】
導光部材1には、主面、すなわちXY平面と略平行な平面に沿って、光抽出部31である複数の内部空間が規則的またはランダムに配置されている。個々の内部空間の大きさは、光抽出部形成層30の内部に設置可能な範囲で適宜選択可能である。光抽出部31を内部に含む光抽出部形成層30については、例えば、国際公開第2019/182091号、国際公開第2011/124765号、国際公開第2019/087118号および国際公開第2011/127187号に開示された導光層を使用できる。これらの公報の開示内容の全てを参照により本願明細書に援用する。
【0041】
光抽出層3は、例えば、パターンが形成されていない第1フィルムと、所望の微細パターンが形成された第2フィルムとを、ラミネーション法で貼り合わせるか、または接着剤(感圧接着剤を含む)により接着することで作製される。
【0042】
第2フィルムへの微細パターンの形成には、レーザパターニング、ダイレクトレーザイメージング、レーザドリル、マスクによるまたはマスクレスのレーザまたは電子ビーム照射が用いられる。また印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷等によって個別の特性を付与して、材料や屈折率値を変更してもよい。マイクロまたはナノディスペンス、ドージング、ダイレクト「書込み」、離散的レーザ焼結、マイクロ放電加工(マイクロEDM(Electrical Discharge Machining))、またはマイクロマシニング、マイクロ成形、インプリンティング、エンボス加工およびこれらに類するものを用いることもできる。
【0043】
良好な可視光透過率およびヘイズ値を得る観点では、光抽出部31である複数の内部空間は、平面視において、光抽出部形成層30の面積に占める複数の内部空間の面積の割合(占有面積率)は30%以下であることが好ましい。なお、内部空間の占有面積率は、均一であっても良いし、光源50からの距離が増大しても輝度が低下しないように、距離の増大につれて、占有面積率が増大するようにしてもよい。内部空間の占有面積率は均一であることが好ましい。なお、内部空間の占有面積率は、良好な輝度を得る観点から1%以上であることが好ましい。内部空間の占有面積率は、1%以上30%以下であることが好ましく、上限値は、25%以下がさらに好ましく、高い可視光透過率を得るためには、10%以下が好ましく、5%以下がさらに好ましい。
【0044】
なお、光抽出部31の上述の特徴は、ここで例示した光抽出部形成層30内に形成された複数の内部空間に限られず、種々の配光制御構造に共通する。複数の内部空間によって構成される配光制御構造としては、例えば、国際公開第2019/087118号に記載の配光構造体(Light Distribution Structure)を用いることができる。
【0045】
光抽出部31は、複数の内部空間に限らず、光抽出部形成層30に配置された複数のプリズムであってもよい。光抽出部形成層30は、内部に複数のプリズムを含むプリズムシートであってもよい。光抽出部形成層30の表面に複数の凸部(プリズム部)が直接形成されてもよい。光抽出部形成層30の屈折率は、基材5および第4粘接着層6それぞれの屈折率と概ね等しいことが好ましく、屈折率の差(絶対値)は、0.15以下が好ましく、0.1以下であることがさらに好ましい。
【0046】
光抽出部31が複数の内部空間である配光制御構造は、プリズムシート等の配光制御構造よりも光の利用効率が高い。また、内部空間の断面形状(例えば、
図4中の傾斜面の角度θa、θb)、大きさ、配置密度、分布等を調整することによって、配光分布を制御することができる。一方、光抽出部31が有する複数の内部空間の断面形状、大きさ、配置密度、分布を調整することによって、積層フィルム10の可視光透過率およびヘイズ値を制御することができる。積層フィルム10の可視光透過率は、60%以上であり、好ましくは、65%以上、70%以上、75%以上または80%以上である。積層フィルム10のヘイズ値は、10%未満であり、好ましくは9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満であり得る。なお、ヘイズ値はヘイズメータを用いて測定可能である。
【0047】
内部空間の大きさおよび密度はヘイズ値に影響する。内部空間の大きさ(長さM、幅W:
図2~4参照)は、例えば、長さMが10μm以上500μm以下であることが好ましく、幅Wが1μm以上100μm以下であることが好ましい。光抽出層3による光抽出効率の観点では、高さHは、1μm以上100μm以下であることが好ましい。複数の内部空間は、離散的に均一に分布させることが好ましく、例えば、
図2に示したように、周期的に配置することが好ましい。ピッチPxは、例えば10μm以上500μm以下であることが好ましく、ピッチPyは、例えば10μm以上500μm以下であることが好ましい。
図2における間隔Eは、X方向における複数の内部空間同士の間隔である。
図2における間隔Dは、Y方向における複数の内部空間同士の間隔である。
【0048】
<透過層4の構成例>
図1において、透過層4は、両面が平坦なフィルムから形成可能である。透過層4に用いる材料は、光吸収係数が低いものが好ましい。例えば、透過層4に用いる材料として、PMMA(Poly Methyl Methacrylate)等のアクリル系フィルム、COP(Cyclo Olefin Polymer)等のシクロオレフィン系フィルム、PET(Polyethylene Terephthalate)等のポリエチレン系フィルム、ポリカーボネート系フィルム等を使用できる。
【0049】
光源50からの光が積層フィルム10に入射する入射効率の観点では、透過層4の厚みt3は、30μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、60μm以上または100μm以上がさらに好ましい。一方、可撓性を持たせる観点では、透過層4の厚みt3は、800μm以下が好ましく、600μm以下がより好ましく、500μm以下または500μm未満がさらに好ましく、400μm以下が特に好ましい。透過層4の屈折率は、例えば1.45以上1.60以下が好ましい。低屈折率層2が塗工される基材フィルム、光抽出層3、並びに光抽出層3と貼り合わせられる基材フィルムも、透過層4と同様のフィルムが用いられることが好ましい。
【0050】
<第1~第4粘接着層の構成例>
第1粘接着層7、第2粘接着層8、第3粘接着層9および第4粘接着層6のそれぞれには、アクリル系、ポリエステル系等の粘着剤および接着剤の少なくとも一方を適宜選択できる。第1粘接着層7、第2粘接着層8、第3粘接着層9および第4粘接着層6それぞれの屈折率は、透過層4と同程度であることが好ましく、例えば1.45以上1.60以下が好ましい。
【0051】
<光入射部材40の構成例>
光入射部材40は、透過層4の上面等の面に積層するための底面41と、光源50からの光Lを入射させる光入射面42と、光源50から光入射部材40に入射された光Lを反射して透過層4側に導く傾斜面43と、を有する。傾斜面43は、臨界角未満の角度で傾斜面43に入射される光の方向を制御することができる。傾斜面43は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。傾斜面43の曲面は、球面の一部であってもよいし、非球面の一部であってもよい。非球面には放物面等が挙げられる。
図1に示す例では、光入射部材40は、光源50から遠ざかるほど厚みが薄くなるテーパ形状を有する。
【0052】
複数の光源50が複数並んで配置されている場合には、積層フィルム10は、複数の光入射部材40を有してもよいし、複数の光源50が並んでいる方向において、複数の光源50のそれぞれからの光が入射可能な長さを有する1つの光入射部材40を有してもよい。
【0053】
光入射部材40には、国際公開第2022/030544号に開示された「optical incoupling element」を使用できる。国際公開第2022/030544号の開示内容の全てを参照により本願明細書に援用する。
【0054】
光入射部材40は、臨界角未満の角度で入射する光Lの反射方向を制御するものであればよく、例えば回析格子であってもよいし、光学キャビティを含む指向性を有する層であってもよい。指向性を有する層は、例えばエアキャビティのパターンが形成されたフィルムに別のフィルムを貼り合わせることによって形成できる。指向性を有する層は、例えば国際公開第2022/030543号に開示された「optical incoupling tape」を使用できる。国際公開第2022/030543号の開示内容の全てを参照により本願明細書に援用する。
【0055】
[実施例および比較例]
以下、実施例および比較例について説明する。但し、本発明は、これらの例に何ら限定されない。
【0056】
<評価方法>
(屈折率の評価)
アクリルフィルムに低屈折率層を形成した後に、50mm×50mmのサイズにカットし、これを粘接着層でガラス板(厚み:3mm)の表面に貼り合わせた。ガラス板の裏面中央部(直径20mm程度)を黒マジックで塗りつぶして、ガラス板の裏面で光が反射されないサンプルを調製した。エリプソメーター(J.A.Woollam Japan社製:VASE)に、調整したサンプルをセットし、550nmの波長、入射角が50度以上80度以下の条件において屈折率を測定し、その平均値を屈折率とした。
【0057】
(発光度合の評価)
実施例および比較例に係る積層フィルム内に光源50から光を入射させて、光抽出層側から光を取り出した。取り出された光について、目視で発光輝度を評価した。以下に、発光度合いの評価指標である「A」~[C]の定義を示す。
A:良好(輝度の減衰が小さい)。
B:やや良好(Aに比べ輝度が低いが、輝度の減衰が小さい)。
C:不良(A、Bに比べ輝度の減衰が大きく、導光される方向において光源50が位置する側と反対側に向かうほど暗くなる)。
【0058】
(発光色の評価)
実施例および比較例に係る積層フィルム内に光源50から光を入射させて、光抽出層側から光を抽出した。取り出された光の発光色を目視で評価した。以下に、発光色の評価指標である「〇」および[×]の定義を示す。
〇:白色。
×:輝度減衰し、導光される方向において、光源50が位置する側と反対側に向かうほど暗くなる(被着体が高透過ガラスである比較例1,2,4が該当する)。または、照明光が青く色づいて白色ではなくなる(被着体がフロートガラスである比較例3が該当する)。高透過ガラスは、入射した光の吸収や散乱が小さいガラスである。フロートガラスは、高透過ガラスと比較して入射した光の吸収や散乱が小さいガラスである。
【0059】
(存在感の評価)
実施例および比較例に係る積層フィルムから光が抽出された側から、被着体20に配置された該積層フィルムの存在感を目視で評価した。以下に、存在感の評価指標である「〇」および[×]の定義を示す。
〇:積層フィルムの存在感を感じない。
×:積層フィルムの存在感を感じる。
【0060】
(可撓性の評価)
実施例および比較例に係る積層フィルムの可撓性を官能評価した。以下に可撓性の評価指標である「〇」および「×」の定義を示す。
〇:長尺の場合にロール巻き取りが可能なほど柔らかい。
×:長尺の場合にロール巻き取りが不可能なほど硬い。
【0061】
<製造方法>
(製造例1:基材フィルム付きの低屈折率層の作製)
ジメチルスルホキシド(DMSO:Dimethyl Sulfoxide)18部に、メチルトリメトキシシランを8部溶解させた。この混合液に、0 .01mol/Lのシュウ酸水溶液を4部添加し、室温で30分、撹拌を行うことで、メチルトリメトキシシランを加水分解させた。さらに、ジメチルスルホキシド65部、28%濃度のアンモニア水3部、および純水2部を添加した後、室温で15分撹拌、40℃で20時間の加熱エージングを行ない、ゲル状化合物を得た。
【0062】
上記の加熱エージングで得られたゲル状化合物を、数mm~数cmサイズの顆粒状に砕き、イソプロピルアルコール(IPA:Isopropyl Alcohol)をゲル量の4倍添加し、軽く撹拌した後、室温で6時間静置して、ゲル中の溶媒および触媒をデカンテーションした。同様のデカンテーション処理を3回繰り返し、溶媒置換を完了した。
【0063】
溶媒置換により得られたゲル状化合物に対し高圧メディアレス粉砕(ホモジナイザー(商品名UH-50、エスエムテー社製))を行ない、ゾル液を作製した 。この時のゾル液の粒度バラツキを示す体積平均粒子径を、動的光散乱式ナノトラック粒度分析計(日機装社製、商品名UPA-EX150型)にて確認したところ、0.50μm以上 0.70μm以下であった。さらに、1.5重量%の光塩基発生触媒(和光純薬工業株式会社:商 品名WPBG266)のイソプロピルアルコール溶液を用意し、ゾル粒子液0.75部に対して0.031部添加、5%のビス(トリメトキシシリル)エタンを0 .018部添加し塗工液を調製した。
【0064】
次に、基材フィルム(PMMA:Poly Methyl Methacrylate、厚み30μm)に低屈折率層形成用塗工液を硬化後の厚みが1μmになるように塗工し、加熱および乾燥して硬化させ、基材フィルム付きの低屈折率層(厚み31μm)を得た。得られた低屈折率層の屈折率は、1.16であった。
【0065】
(製造例2:基材フィルム付きの低屈折率層の作製)
アルミナゾル液(4.9%濃度:川研ファインケミカル製)20部に、水13部添加し 、80℃で加熱後、NH3を3部添加した。さらに80℃で10時間加熱してゲル状化合物を得た。このゲル状化合物を製造例1のゲル状化合物に代えて用いた以外は、製造例1と同様の操作を行ない、基材フィルム付きの低屈折率層を得た。得られた低屈折率層の屈折率は1.24であった。
【0066】
(製造例3:基材フィルム付きの低屈折率層の作製)
特開2008-299117号公報に記載の屈折率1.41の熱硬化型シリコーン材料(信越化学製OF-127)を用いた以外は、製造例1と同様の操作を行ない、基材フィルム付きの低屈折率層を得た。得られた低屈折率層の屈折率は1.41であった。
【0067】
(製造例4:光抽出部形成層の作製)
特表2013-524288号公報に記載の方法に従って、一方の主面に凹部を有する光抽出部形成層を作製した。具体的には、以下のとおりである。PMMAフィルム(厚み128μm)の表面をラッカー(三洋化成工業社製ファインキュアー RM-64)でコーティングし、当該ラッカーを含むフィルム表面上に所定の光学パターンをエンボス加工し、その後ラッカーを硬化させた。これにより、
図5に示すような断面形状を有し、
図6に示すような平面視形状を有する凹部を含む光抽出部形成層を作製した。ここで、
図5は、実施例における光抽出部の一例を模式的に示す断面図である。
図6は、実施例における光抽出部の一例を模式的に示す平面図である。
【0068】
作製された光抽出部としての凹部の高さ(深さ)Hは10μmであり、幅Wは10.5μmであり、第1傾斜面ISaの傾斜角θcは49°であり、第2傾斜面ISbの傾斜角θdは80°であった。さらに、光が導光される方向(例えばY方向)における凹部のピッチPyは300μmであり、光が導光される方向と直交する方向(例えばX方向)におけるピッチPxは300μmであった。
【0069】
(実施例1)
製造例4で作製した光抽出層3における凹部が形成されている主面に、第4粘接着層6(材質はポリエステル系樹脂、厚み7μm)を配置し、第4粘接着層6を介して基材5(材質はPMMA、厚み30μm)を積層し、光抽出層3を得た(厚み165μm)。さらに、基材5の第4粘接着層6とは反対側に第2粘接着層8(日東電工株式会社製CS9864、厚み100μm)を介して透過層4を積層し(材質はPMMA、厚み130μm)、導光部材1を得た(厚み395μm)。さらに、透過層4の第2粘接着層8とは反対側に第3粘接着層9(材質はアクリル系樹脂、厚み10μm)を介して製造例1で作製した基材フィルム付きの低屈折率層2の基材フィルム側を積層し、積層フィルム10を得た(厚み456μm)。さらに、基材フィルム(30μm)付きの低屈折率層2の基材フィルムとは反対側に第1粘接着層7(材質はアクリル系樹脂、厚み10μm)を配置し、第1粘接着層7を介して被着体20としての高透過ガラス(日本板硝子社製、厚み5mm)に積層フィルム10を配置した。
【0070】
以上のようにして、光抽出層3、第4粘接着層6、基材5、第2粘接着層8、透過層4、第3粘接着層9、基材フィルム付きの低屈折率層2および第1粘接着層7を有する積層フィルム10を作製した。
【0071】
また、本実施例では、
図1に示したように、光抽出層3の端部3aが透過層4の端部4aよりも内側に位置するように積層フィルム10を形成した。そして、平面視において、光抽出層3と透過層4とが重ならない透過層4の領域4bに、光源50からの光を積層フィルム10に入射させる光入射部材40を配置した。領域4bのY方向における長さは、50mmとした。例えば粘接着層を介して透過層4に粘接着することで、光入射部材40を透過層4に配置した。また、光入射部材40を介して積層フィルム10に光を入射できるように光源50を配置した。被着体20に配置された積層フィルム10に対して上述した評価を行った。
【0072】
(実施例2)
製造例1に代えて、製造例2で作製した基材フィルム付きの低屈折率層を用いたこと以外は、実施例1と同様とした。
【0073】
(実施例3)
光入射部材40に代えて、透過層4の端部4aに光源50を配置したこと以外は、実施例1と同様とした。
【0074】
(実施例4)
第2粘接着層8に代えて、別の第2粘接着層(日東電工株式会社製CS9862、厚み50μm)を用い、また光抽出部形成層30に変えて厚みが薄い光抽出部形成層(厚み60μm)にしたこと以外は、実施例1と同様とした。
【0075】
(実施例5)
透過層4に代えて、厚みが薄い透過層(厚み30μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様とした。
【0076】
(実施例6)
透過層4に代えて、厚みが薄い透過層(厚み40μm)にし、光入射部材40に変えて、透過層4よりも厚みが薄い透過層の端部に光源50を配置したこと以外は、実施例1と同様とした。
【0077】
(比較例1)
製造例1に代えて、製造例3で作製した基材フィルム付きの低屈折率層を用いたこと以外は、実施例1と同様とした。
【0078】
(比較例2)
基材フィルム付きの低屈折率層2および第1粘接着層7を設けなかったこと以外は、実施例1と同様とした。
【0079】
(比較例3)
高透過ガラスに代えて、フロートガラス(日本板硝子社製、厚み5mm)を用いたこと、基材フィルム付きの低屈折率層2および第1粘接着層7を設けなかったこと以外は、実施例1と同様とした。
【0080】
(比較例4)
透過層4に代えて、厚みが厚い透過層(厚み2000μm)を用いたこと、光入射部材40に変えて、透過層4よりも厚みが厚い透過層の端部に光源50を配置したこと以外は、実施例1と同様とした。
【0081】
実施例1~6および比較例1~3それぞれにおける条件および評価結果の一覧を表1に示す。表1における「可撓性/存在感」の項目では、可撓性と存在感の両方が「○」の場合に「○」とし、可撓性と存在感の少なくとも一方が「×」の場合に「×」とした。
【表1】
【0082】
表1に示したように、実施例1~4では、「発光度合い」が「A」、「発光色」が「〇」、「可撓性/存在感」が「〇」となった。実施例5~6では、「発光度合い」が「B」、「発光色」が「〇」、「可撓性/存在感」が「〇」となった。
【0083】
一方、比較例1~2では、「発光度合い」が「C」、「発光色」が「×」、「可撓性/存在感」が「〇」となった。比較例3では、「発光度合い」が「A」、「発光色」が「×」、「可撓性/存在感」が「〇」となった。比較例4では、「発光度合い」が「A」、「発光色」が「〇」、「可撓性/存在感」が「×」となった。
【0084】
以上のように、実施例1~6では、「発光度合い」、「発光色」、「可撓性/存在感」のいずれにおいても良好な積層フィルムが得られることが分かった。
【0085】
[様々な変形例]
積層フィルム10は、低屈折率層2における導光部材1とは反対側に配置される被着体20を有することもできる。積層フィルム10が被着体20を有することで、意匠性の高い被着体20付の積層フィルム10を提供できる。
【0086】
被着体20は、ガラスに限らず、液晶セル等の電子基板、天井、壁、床等の非光透過性部材等であってもよい。光抽出層3は、被着体20が位置する側とは反対側に光Lを抽出することに限らず、被着体20が位置する側に光Lを抽出してもよい。この場合、被着体20の光透過性が高ければ、抽出された光Lは被着体20を透過してもよいし、被着体20の光透過性が低ければ、被着体20が光を反射してもよい。光抽出層3は、透過層4と低屈折率層2との間に配置されてもよい。
【0087】
透過層4と光抽出層3との間に、輝度均一性を向上させるためのパターン層を有してもよい。このようなパターン層には、国際公開第2022/025067号に開示された光結合層を使用できる。国際公開第2022/025067号の開示内容の全てを参照により本願明細書に援用する。パターン層は、透過層4よりも屈折率の低い第1部分と、第1部分よりも屈折率が高い第2部分と、によって形成される。第1部分は、低屈折率層2のような低屈折率層であってもよいし、エアキャビティであってもよい。第2部分は、粘接着層により構成されてもよいし、低屈折率層の空隙部分が粘接着剤等の材料によって埋められることで形成されてもよい。積層フィルム10の存在感を低減する観点では、パターン層がある場合においても、導光部材1の厚みは、1000μm以下であることが好ましく、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下であることがさらに好ましい。
【0088】
光抽出層3における透過層4が位置する側とは反対側に、基材フィルムがさらに配置されてもよい。この基材フィルムは、ハードコート層や反射防止層であってもよい。さらに、光抽出層3と基材フィルムとの間に低屈折率層があってもよい。積層フィルム10の存在感を低減する観点では、これらの部材がある場合でも導光部材1の厚みは、1000μm以下であることが好ましく、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下であることがさらに好ましい。
【0089】
透過層4と光抽出層3は、別々のフィルムである構成に限らず、透過層4と光抽出層3が一体化された構成であってもよい。例えば、パターン化された凹部が形成された透過層4は、透過層4の機能と光抽出層3の機能を兼備することができる。
【0090】
光抽出層3は、基材5を必ずしも有さなくてよい。導光部材1は、第2粘接着層8を必ずしも有さなくてよい。
【0091】
低屈折率層2が図示しない基材フィルムに塗工されること、第1粘接着層7、低屈折率層2、図示しない基材フィルム、第3粘接着層9の順に配置される場合について説明した。しかし、低屈折率層2、図示しない基材フィルムはその順番が逆でもよいし、図示しない基材フィルムはなくてもよい。また、低屈折率層2が導光部材1、すなわち透過層4に直接塗工され、第3粘接着層9と図示しない基材フィルムが省略されてもよい。
【0092】
ロールとして取り扱われる場合、導光部材と低屈折率層の積層フィルムの状態でロールとして取り扱われてもよいし、導光部材と低屈折率層と第1粘着剤層の積層フィルムの状態で取り扱われてもよい。ロールとして取り扱う場合、導光部材や低屈折率層の表面に基材と粘着剤とを有する表面保護フィルムを適宜貼り合わせてもよい。また、第1粘着剤層の表面にはく離ライナーを貼り合わせてもよい。
【0093】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0094】
実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係をこれに限定するものではない。
【0095】
実施形態に係る積層フィルムは、意匠性が高いため、光源と組み合わせてガラス、窓、壁、床、天井等の建築部材に配置されることで、建築部材の意匠性を高くしつつ、建築物の内部または外部の空間を照明する用途で使用できる。また、パーティションに配置されることで、パーティションの意匠性を高くしつつ、室内の間仕切りまたは所望の空間の目隠しを行う用途で使用できる。また、液晶パネル、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイパネル等の表示装置のガラス基板等に配置されることで、表示装置の意匠性を高くしつつ、表示装置におけるバックライト照明等の用途で使用できる。さらに、実施形態に係る積層フィルムは、上記以外にも、新しい用途を提供することができる。
【0096】
本実施形態の積層フィルムと、積層フィルムの端部近傍に配置される光源と、により、面照明装置を構成することもできる。光源からの光は、積層方向に沿った、積層フィルムの端面から積層フィルムの内部に入射してもよいし、当該端面に交差する面(積層フィルムの主面)から積層フィルムの内部に入射してもよい。光源からの光は、光入射部材等を介さずに直接、積層フィルムの内部に入射してもよいし、光入射部材を介して積層フィルムの内部に入射してもよい。
【0097】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1> 光源から入射される光を導光する導光部材と、前記導光部材の一方側に配置され、屈折率が1.30以下である低屈折率層と、を有し、前記導光部材は、前記導光部材により導光される光を抽出可能な光抽出部を含み、前記導光部材の厚みは、1000μm以下であり、前記低屈折率層が配置された側とは反対側における前記導光部材の表面である第1面から、前記導光部材とは反対側における前記低屈折率層の表面である第2面までの全体厚みは、1500μm以下である、積層フィルムである。
<2> 前記低屈折率層における前記導光部材とは反対側に配置された第1粘接着層を有する、前記<1>に記載の積層フィルムである。
<3> 前記導光部材は、前記光抽出部を含む光抽出層と、前記光源から入射される光を透過する透過層と、を有する、前記<1>から前記<3>のいずれか1つに記載の積層フィルムである。
<4> 前記透過層の厚みは、30μm以上である、前記<3>に記載の積層フィルムである。
<5> 前記光抽出部は、前記光抽出層に設けられた複数の内部空間である、前記<3>または前記<4>に記載の積層フィルムである。
<6> 前記透過層と前記光抽出層との間に配置される第2粘接着層を有し、前記導光部材の厚みに対する前記第2粘接着層の厚みの割合は、10%以上である、前記<3>から前記<5>のいずれか1つに記載の積層フィルムである。
<7> 平面視において、前記光抽出層の端部は、前記透過層の端部よりも内側に位置している、前記<3>から前記<6>のいずれか1つに記載の積層フィルムである。
<8> 平面視において、前記光抽出層と前記透過層とが重ならない前記透過層の領域に配置され、前記光源からの光を入射させる光入射部材を有する、前記<7>に記載の積層フィルムである。
<9> 前記低屈折率層における前記導光部材とは反対側に配置される被着体を有する、前記<1>から前記<8>のいずれか1つに記載の積層フィルムである。
<10> 前記<1>から前記<9>のいずれか1つに記載の積層フィルムが巻き取られたロール。
【符号の説明】
【0098】
1 導光部材
11 第1面
12 第2面
2 低屈折率層
3 光抽出層
30 光抽出部形成層
31 光抽出部
3a 端部
4 透過層
4a 端部
4b 領域
5 基材
6 第4粘接着層
7 第1粘接着層
8 第2粘接着層
9 第3粘接着層
10 積層フィルム
20 被着体
40 光入射部材
41 底面
42 光入射面
43 傾斜面
50 光源
L 光
t1 導光部材の厚み
t2 積層フィルムの全体厚み
t3 透過層の厚み
D Y方向における複数の内部空間同士の間隔
E X方向における複数の内部空間同士の間隔
ISa 第1傾斜面
ISb 第2傾斜面
M 長さ
Px X方向における複数の内部空間のピッチ
Py Y方向における複数の内部空間のピッチ
H 高さ
W 幅
θa、θb 角度
θc、θd 傾斜角