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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174491
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】自動制御装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/70 20180101AFI20241210BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F24F11/70
F24F7/007 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092343
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】山根 典嗣
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB15
3L260BA38
3L260CA17
3L260CB68
3L260EA09
3L260FA20
3L260FC05
3L260FC22
3L260GA02
(57)【要約】
【課題】状態量検知部の検知感度が経年劣化した場合でも、室内の気中物質の状態量を使用者が期待する量まで調整することができる自動制御装置を得ること。
【解決手段】自動制御装置10は、室内の空気における気中物質の状態量を調整する状態量調整機械を制御する自動制御装置10である。自動制御装置10は、室内の気中物質の状態量を検知して出力する状態量検知部と、状態量検知部の出力が目標値以下となるように状態量検知部の出力に基づいて状態量調整機械をフィードバック制御する制御部2と、を備える。制御部2は、状態量検知部の出力値と、過去の状態量検知部の出力値とに基づいて状態量検知部の経年劣化による検知感度の低下量を算出し、低下量に基づいて目標値を調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の空気における気中物質の状態量を調整する状態量調整機械を制御する自動制御装置であって、
前記室内の気中物質の状態量を検知して出力する状態量検知部と、
前記状態量検知部の出力が目標値以下となるように前記状態量検知部の出力に基づいて前記状態量調整機械をフィードバック制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記状態量検知部の出力値と、過去の前記状態量検知部の出力値とに基づいて前記状態量検知部の経年劣化による検知感度の低下量を算出し、前記低下量に基づいて前記目標値を調整すること、
を特徴とする自動制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記状態量検知部への通電を開始してからあらかじめ決められた出力安定時間の経過後の前記状態量検知部の出力のピーク値と、前記状態量検知部への通電を開始してからあらかじめ決められた出力安定時間の経過後の過去の前記状態量検知部の出力値のピーク値とに基づいて前記状態量検知部の経年劣化による検知感度の低下量を算出すること、
を特徴とする請求項1に記載の自動制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記状態量検知部への通電開始直後における前記状態量検知部の出力値の上限値が継続して出力されている時間である上限値出力の継続時間と、過去の前記上限値出力の継続時間とに基づいて前記状態量検知部の経年劣化による検知感度の低下量を算出すること、
を特徴とする請求項1に記載の自動制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記状態量検知部への通電をあらかじめ決められた通電停止時間だけ停止させた後に前記状態量検知部への通電を開始させて、前記状態量検知部の出力値と、過去の前記状態量検知部の出力値とに基づいて前記状態量検知部の経年劣化による検知感度の低下量を算出すること、
を特徴とする請求項1に記載の自動制御装置。
【請求項5】
前記状態量調整機械の運転に関する操作指令を受け付けて前記制御部に送信するリモートコントローラを備え、
前記制御部は、前記低下量に基づいて前記低下量があらかじめ決められた進行度合いに到達する時期を予測し、予測結果を前記リモートコントローラに送信して前記リモートコントローラに表示させること、
を特徴とする請求項1に記載の自動制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、直前に測定した前記状態量検知部の出力値に比べ、現在測定した前記状態量検知部の出力値があらかじめ決められた上昇幅閾値をあらかじめ決められた期間またはあらかじめ決められた回数を連続して超えている場合には、現在の前記状態量検知部の出力値に基づいて前記目標値を調整すること、
を特徴とする請求項1に記載の自動制御装置。
【請求項7】
前記状態量調整機械が、送風機であること、
を特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の自動制御装置。
【請求項8】
前記状態量調整機械が、電気集塵機であること、
を特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の自動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、室内の空気の状態量を調整できる機能を備えた機械を制御する自動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室内の空気の空気質を調整する機能を有する換気装置の自動制御装置においては、室内のにおい濃度、または微小粒子状物質等の状態量を状態量検知部で検知し、状態量検知部で検知された状態量が目標値になるように換気装置を制御している。微小粒子状物質は、PM(Particulate Matter)2.5とも呼ばれる。そして、換気装置は、例えば、煙草の煙等で室内の空気が目標値より汚濁すると、運転を開始し、室内の汚濁した空気を室外へ排気し、新鮮な外気を導入して、室内の空気が予め設定された清浄度になるまで換気を行う。
【0003】
自動制御装置内の状態量検知部は、室内のにおい濃度等の状態量を正確に検知するために、ヒータ抵抗等の熱源が内部に実装されていることがある。熱源は、状態量検知部を室内のにおい濃度等の状態量の検知に適した温度に保つ役割、および熱源の発熱により上昇気流を発生させることによって状態量検知部内に室内の空気を引き込む役割を担っている。
【0004】
ただし、熱源への通電が開始された直後は、状態量検知部の内部および熱源の温度が急激に上昇するため、状態量検知部の内部および熱源に付着していた物質が一斉に放出される。このため、状態量検知部の出力値は、一斉に放出された物質を検知することにより、一時的に急増する。
【0005】
したがって、自動制御装置では、状態量検知部の熱源に通電を開始してからあらかじめ設定された時間は、状態量検知部の出力値を制御対象である換気装置のフィードバック制御に使用しない、状態量検知部の出力値安定待ち期間が設けられている場合が多い。
【0006】
特許文献1には、特定の空間におけるガス濃度等の状態量を調整できる機能を備えた換気装置を制御対象とし、同空間の状態量を検知する雑ガスセンサの出力値が設定された目標値になるように送風機をフィードバック制御する自動制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-310480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載された自動制御装置は、雑ガスセンサの経年劣化によって雑ガスセンサの検知感度が低下すると、室内の空気が汚濁しているにも関わらず、雑ガスセンサの出力値が目標値を超えない状態が発生し、送風機が運転する時間が少なくなり、室内を十分に換気することができない、という問題があった。室内を十分に換気できない場合には、室内の空気が汚濁しているため、使用者が不快に感じる。
【0009】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、状態量検知部の検知感度が経年劣化した場合でも、室内の気中物質の状態量を使用者が期待する量まで調整することができる自動制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる自動制御装置は、室内の空気における気中物質の状態量を調整する状態量調整機械を制御する自動制御装置である。自動制御装置は、室内の気中物質の状態量を検知して出力する状態量検知部と、状態量検知部の出力が目標値以下となるように状態量検知部の出力に基づいて状態量調整機械をフィードバック制御する制御部と、を備える。制御部は、状態量検知部の出力値と、過去の状態量検知部の出力値とに基づいて状態量検知部の経年劣化による検知感度の低下量を算出し、低下量に基づいて目標値を調整する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、状態量検知部の検知感度が経年劣化した場合でも、室内の気中物質の状態量を使用者が期待する量まで調整することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1にかかる自動制御装置を備えた換気装置の構成を示すブロック図
図2】実施の形態1にかかるリモートコントローラの機能構成を示すブロック図
図3】実施の形態1にかかる自動制御装置の制御部のフィードバック制御の手順を示すフローチャート
図4】実施の形態1にかかる自動制御装置の基本的なフィードバック制御動作を説明するためのタイムチャート
図5】実施の形態1にかかる自動制御装置の制御部がフィードバック制御における目標値を変更する動作手順を示すフローチャート
図6】実施の形態1にかかる自動制御装置の制御部がフィードバック制御における目標値を変更する制御動作を説明するためのタイムチャート
図7】実施の形態2における自動制御装置の制御部がフィードバック制御における目標値を変更する動作手順を示すフローチャート
図8】実施の形態2にかかる自動制御装置の制御部がフィードバック制御における目標値を変更する制御動作を説明するためのタイムチャート
図9】実施の形態5にかかる空気清浄機の構成を示すブロック図
図10】実施の形態1から5にかかる制御部のハードウェア構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、実施の形態にかかる自動制御装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる自動制御装置を備えた換気装置の構成を示すブロック図である。実施の形態1にかかる換気装置100は、室内空気における気中物質の状態量を調整できる換気機能を備えた装置である。換気装置100は、自動制御装置10と、送風機6とを備える。
【0015】
室内空気における気中物質の状態量は、例えば室内のにおい濃度および室内のPM2.5濃度を含む。室内のにおい濃度は、室内空気におけるにおい成分の状態量である。PM2.5濃度は、室内空気におけるPM2.5の状態量である。
【0016】
実施の形態1にかかる自動制御装置10の制御対象は、室内空気における気中物質の状態量を調整できる換気機能を備えた、換気装置100である。すなわち、自動制御装置10は、室内空気における気中物質の状態量を調整できる換気機能を備えた換気装置100の運転を自動でフィードバック制御する。より具体的に、自動制御装置10の制御対象は、送風機6である。
【0017】
換気機械は、室内のにおい濃度および室内のPM2.5濃度といった室内空気における気中物質の状態量を調整できる機能を備えた、状態量調整機械である。換気装置100における換気機械は、送風機6である。したがって、自動制御装置10は、状態量調整機械である送風機6の運転を自動でフィードバック制御する。そして、換気装置100は、室内空気における気中物質の状態量を調整できる機能を備えた状態量調整装置といえる。
【0018】
自動制御装置10は、換気装置100内に組込まれており、においセンサ1と、制御部2と、通信部3と、駆動回路4と、リモートコントローラ5と、を備える。なお、以下においては、リモートコントローラを単にリモコンと称する場合がある。
【0019】
においセンサ1は、室内空気における気中物質の状態量である室内のにおい濃度を検知し、検知結果を制御部2に出力する状態量検知部である。すなわち、においセンサ1は、室内空気における気中物質の状態量を検知し、検知結果を制御部2に出力する状態量検知部である。においセンサ1は、検知結果に対応する電圧を制御部2に出力する。すなわち、においセンサ1は、室内の状態量である室内のにおい濃度の検知結果を電圧に変換して制御部2に出力する。すなわち、においセンサ1における室内のにおい濃度の検知結果の制御部2への出力値は、電圧値である。
【0020】
においセンサ1は、不図示のヒータ抵抗が内部に実装されている。ヒータ抵抗は、状態量検知部であるにおいセンサ1を室内のにおい濃度等の状態量の検知に適した温度に保つ役割、およびヒータ抵抗の発熱により上昇気流を発生させることによってにおいセンサ1内に室内の空気を引き込む役割を担っている。
【0021】
制御部2は、マイクロコンピュータを備え、においセンサ1の出力値が予め設定された目標値以下となるように、駆動回路4によって送風機6の運転をフィードバック制御する。制御部2は、においセンサ1の出力値を送風機6の運転の制御に用いるフィードバック制御を行う。
【0022】
通信部3は、リモコン5の後述するリモートコントローラ通信部54との間で通信を行う。
【0023】
駆動回路4は、制御部2の制御に従って、送風機6の運転を制御する。
【0024】
リモコン5は、使用者からの換気装置100に対する操作指令を受け付けて制御部2に送信する。リモコン5は、使用者が換気装置100の運転の開始と運転の停止とに関する操作を行うための遠隔操作装置である。リモコン5は、使用者からの換気装置100の運転制御についての指令を受け付ける。リモコン5は、使用者から受け付けた各種指令を、制御部2に送信する。リモコン5は、換気装置100用の専用のリモコンであってもよく、換気装置100の遠隔操作が可能なアプリケーションソフトがインストールされて通信部3との間の通信が可能なスマートフォンといった端末機器であってもよい。実施の形態1では、リモコン5が換気装置100用の専用のリモコンである場合について説明する。
【0025】
図2は、実施の形態1にかかるリモートコントローラの機能構成を示すブロック図である。リモコン5は、リモートコントローラ操作部51と、リモートコントローラ表示部52と、リモートコントローラ記憶部53と、リモートコントローラ通信部54と、リモートコントローラ制御部55と、を備える。上記のリモコン5の各構成部は、互いに情報の授受が可能である。
【0026】
リモコン操作部51は、換気装置100の運転を遠隔制御するためのインタフェースであり、使用者から換気装置100の運転に関わる操作を受け付ける。リモコン操作部51は、使用者からの操作を受け付けると、使用者の操作に対応した信号を操作信号としてリモコン制御部55に送信する。
【0027】
リモコン表示部52は、換気装置100に関する各種の情報を表示する。リモコン表示部52は、リモコン制御部55から送信された信号を受信し、当該信号に基づいて各種の情報を表示する。
【0028】
リモコン記憶部53は、換気装置100における換気運転に関わる各種の情報を記憶し、リモコン表示部52に表示するための設定内容、設定内容に関する画像データなどの情報を一時的または長期的に記憶する。
【0029】
リモコン通信部54は、通信部3との間で通信を行う。リモコン通信部54は、リモコン制御部55から送信された信号を受信し、当該信号を通信部3に送信する。また、リモコン通信部54は、通信部3から送信された信号を受信し、当該信号をリモコン制御部55に送信する。
【0030】
なお、リモコン通信部54と通信部3との間の通信は、無線通信であってもよく、有線通信であってもよい。実施の形態1では、リモコン5と通信部3とが無線接続されており、リモコン通信部54と通信部3との間の通信が無線通信であるものとする。
【0031】
リモコン制御部55は、リモコン5全体の動作を制御する。リモコン制御部55は、リモコン操作部51から送信される操作信号に基づいて、リモコン5の制御を行う。リモコン制御部55は、各種情報をリモコン表示部52に表示させる制御を行う。
【0032】
送風機6は、制御部2および駆動回路4の制御によって動作して、室内の換気を行う送風を行う。
【0033】
つぎに、実施の形態1にかかる自動制御装置10の制御部2が行う基本的なフィードバック制御について説明する。図3は、実施の形態1にかかる自動制御装置の制御部のフィードバック制御の手順を示すフローチャートである。図4は、実施の形態1にかかる自動制御装置の基本的なフィードバック制御動作を説明するためのタイムチャートである。図4の上図の縦軸は、においセンサ1の出力値である。図4の上図の横軸は、時間である。図4の下図の縦軸は、送風機6の制御状態である。図4の下図の横軸は、時間である。
【0034】
送風機6は、自動制御装置10の制御により、図4のタイムチャートに示すように、時刻T0においてオンにされて運転が開始され、時刻T1においてオフにされて運転が停止され、時刻T2においてオンにされて運転が開始され、時刻T3においてオフにされて運転が停止される。図3および図4を用いて、実施の形態1にかかる自動制御装置10の基本的なフィードバック制御動作について説明する。
【0035】
まず、ステップS110では、時刻T0において、自動制御装置10が、換気装置100の自動運転を開始する。具体的に、自動制御装置10の制御部2は、時刻T0にリモコン5から換気装置100の運転開始指令を受信すると、送風機6の運転を開始させる制御を行い、においセンサ1に通電を開始する制御を行う。これにより、時刻T0に送風機6の運転が開始されることにより、換気装置100による室内の換気が開始される。
【0036】
通電されたにおいセンサ1は、当該においセンサ1の内部に実装されているヒータ抵抗に通電されることによって、当該においセンサ1の内部の温度が上昇するとともに、室内空気におけるにおい成分の状態量であるにおい濃度の検知と、検知結果の制御部2への出力と、を開始する。ここで、においセンサ1内部の温度が安定し、におい濃度を正確に検知して検知結果を制御部2に出力できるまでに、ある程度の出力安定時間STが必要である。制御部2は、あらかじめ決められた出力安定時間STの間は、においセンサ1の出力値を送風機6のフィードバック制御に使用せず、においセンサ1の出力値に関わらず、強制的に送風機6を運転させる。においセンサ1への通電開始時である時刻T0の状態Aでは、においセンサ1の出力値は、0である。
【0037】
通電が開始されたにおいセンサ1は、当該においセンサ1の内部の温度が上昇すると、当該においセンサ1の内部の壁面に付着していたにおい成分、またはヒータ抵抗に付着していたにおい成分が、ヒータ抵抗が発する熱によって当該においセンサ1の内部に放出される。そして、においセンサ1の内部に放出されたにおい成分が、においセンサ1の内部の空気中のにおい成分濃度を上昇させる。においセンサ1が当該においセンサ1の内部に放出されたにおい成分に反応することで、においセンサ1の出力は、図4の上図に示すように、急峻な上昇を示す。これにより、においセンサ1の出力値は、急激に上昇する。この場合のにおい成分は、例えば水素である。水素は無臭であるが、においセンサ1には検知される。
【0038】
次に、においセンサ1の内部の壁面またはヒータ抵抗に付着しているにおい成分が存在している間は、当該におい成分のにおいセンサ1の内部への放出が継続される。図4の上図に示す、においセンサ1の出力値が急激に上昇した状態Bの時点で、においセンサ1の出力値がピーク値となる。その後、においセンサ1の内部の壁面またはヒータ抵抗に付着しているにおい成分が枯渇してくるのに伴い、においセンサ1の内部へのにおい成分の放出量は低下する。さらに、放出されたにおい成分は、におい成分の濃度が高いにおいセンサ1の内部の空気中から、におい成分の濃度が低いにおいセンサ1の外部の空気中へ、においセンサ1の通気口を通って拡散される。そして、最終的には、においセンサ1の内部の空気中のにおい成分の濃度は、当該においセンサ1の外部の空気中と同一濃度まで低下する。
【0039】
においセンサ1の内部の空気中のにおい成分の濃度と、当該においセンサ1の外部の空気中のにおい成分の濃度とが同一濃度となった後、においセンサ1は、室内のにおい濃度の正しい濃度、すなわち室内空気におけるにおい成分の状態量を検知して出力することが可能となる。
【0040】
制御部2は、においセンサ1への通電開始から、室内のにおい濃度の正しい濃度を検知して出力できるようになるまでの出力安定時間STの間は、においセンサ1の出力値を送風機6のフィードバック制御には使用しない。出力安定時間STは、例えば3分である。
【0041】
出力安定時間STは、換気装置100の開発時に、においセンサ1への通電開始後の出力値を測定して、においセンサ1内部の温度が安定してにおい濃度を正確に検知できるまでの時間を計測しておくことで決めることができる。なお、出力安定時間STの決定方法は、特に限定されない。例えば、においセンサ1単体の部品スペックとして出力安定時間が決まっている場合には、当該出力安定時間をそのまま出力安定時間STに使用してもよい。出力安定時間STの情報は、換気装置100の製造時に、制御部2が有するマイクロコンピュータに内蔵されるメモリに記憶される。
【0042】
つぎに、ステップS120において、制御部2は、時刻T0から出力安定時間STが経過したか否かを判定する。具体的に、制御部2は、当該制御部2のタイマー機能あるいは当該制御部2の時計機能を用いて、時刻T0から出力安定時間STが経過したか否かを判定する。図4においては、時刻T1が出力安定時間STの終了時刻である。
【0043】
時刻T0から出力安定時間STが経過していないと判定された場合は、ステップS120でNoとなり、ステップS120に戻る。時刻T0から出力安定時間STが経過したと判定された場合は、ステップS120でYesとなり、ステップS130に進む。
【0044】
ステップS130では、制御部2は、においセンサ1の出力値を使用して送風機6のフィードバック制御を実施する。すなわち、時刻T0から出力安定時間STが経過した後は、制御部2は、においセンサ1から送信される当該においセンサ1の出力値を送風機6のフィードバック制御に使用する。すなわち、図4において、時刻T1の状態C以降は、制御部2は、においセンサ1の出力値を送風機6のフィードバック制御に使用する。
【0045】
具体的に、においセンサ1の出力値が予め設定された目標値TVを超えている場合は、制御部2は、駆動回路4に送風機6を運転させる指令である運転信号を駆動回路4に送って、送風機6を運転させる。また、制御部2は、においセンサ1の出力値が目標値TV以下である場合は、駆動回路4に送風機6を停止させる指令である停止信号を駆動回路4に送って、送風機6を停止させる。制御部2は、においセンサ1の出力値を使用して送風機6のフィードバック制御を実施する。
【0046】
図4のタイムチャートにおいて、においセンサ1の出力値は、時刻T1後において目標値TV以下の状態で推移し、その後上昇して時刻T2において目標値TVを超えている。その後、においセンサ1の出力値は、さらに上昇した後に減少して、時刻T3において目標値TVとなり、さらに減少している。このため、制御部2は、時刻T2において送風機6をオンにして送風機6の運転を開始させ、時刻T3において送風機6をオフにして送風機6の運転を停止させる。
【0047】
目標値TVは、制御部2が、においセンサ1の出力値に基づいて送風機6を運転させるか否かを判定するために、においセンサ1の出力値と比較する、においセンサ1の出力値の基準値である。すなわち、目標値TVは、制御部2が、状態量検知部の出力値に基づいて送風機6を運転させるか否かを判定するために、状態量検知部の出力値と比較する、状態量検知部の出力値の基準値である。目標値TVは、室内空気のにおい濃度の一般的な基準値が用いられてもよく、また使用者が自ら設定できるようにされてもよい。すなわち、目標値TVは、室内空気における気中物質の状態量の一般的な基準値が用いられてもよく、また使用者が自ら設定できるようにされてもよい。
【0048】
目標値TVに一般的な基準値を用いる場合は、換気装置100の製造時に、制御部2に実装されたマイクロコンピュータに内蔵されるメモリに、当該一般的な基準値の情報が記憶される。
【0049】
また、目標値TVを使用者が自ら設定できるようにする場合は、例えばリモコン5に不図示のボリューム抵抗を実装しておき、当該ボリューム抵抗を使用者が調整した結果の情報をリモコン5が制御部2に送信するようにしてもよい。制御部2は、ボリューム抵抗の調整結果、すなわち、調整されたボリューム抵抗値と、目標値TVとの関係を示す対応関係情報を予め保持しておくことにより、リモコン5から送信された調整されたボリューム抵抗値に対応する目標値TVを取得することができる。対応関係情報は、換気装置100の製造時に、制御部2に実装されたマイクロコンピュータに内蔵されるメモリに記憶される。
【0050】
自動制御装置10は、上述した処理を行うことにより、においセンサ1の出力値が予め設定された目標値TV以下となるように換気装置100の送風機6をフィードバック制御する。これにより、送風機6が運転すると室内の汚濁した空気の室外への排気が換気装置100により行われ、また新鮮な外気を室内に導入して、室内の空気が予め設定された清浄度になるまで換気を行うことができる。
【0051】
新鮮な外気の室内への導入口は、換気装置100とは別に設けられてもよく、また換気装置100自体に吸排気機能が設けられてもよい。
【0052】
また、新鮮な外気の室内への導入口が換気装置100と相対的に近い位置に設けられている場合、あるいは換気装置100自体に吸排気機能が設けられている場合は、換気装置100から相対的に近い位置の室内空気の清浄度は高いが、換気装置100から相対的に遠い位置の室内空気の清浄度は低い可能性がある。このため、においセンサ1の出力値が、目標値TVを超えている状態から目標値TV以下となった場合には、あらかじめ決められた継続時間だけ送風機6を継続して運転させるような制御が行われてもよい。継続時間は、例えば10分である。
【0053】
つぎに、自動制御装置10の制御部2が、においセンサ1の検知感度の経年劣化の度合いを判定し、判定したにおいセンサ1の検知感度の経年劣化の度合いに基づいて目標値TVを変更する制御について説明する。自動制御装置10の制御部2は、上述したフィードバック制御を行う際に、以下で説明するように、においセンサ1の検知感度の経年劣化の度合いに基づいて目標値TVを変更する制御を行う。以下においては、においセンサ1の検知感度の経年劣化を、においセンサ1の経年劣化と称する場合がある。
【0054】
図5は、実施の形態1にかかる自動制御装置の制御部がフィードバック制御における目標値を変更する動作手順を示すフローチャートである。図6は、実施の形態1にかかる自動制御装置の制御部がフィードバック制御における目標値を変更する制御動作を説明するためのタイムチャートである。図6は、上述した図4に対応する図である。図6の上図の縦軸は、においセンサ1の出力値である。図6の上図の横軸は、時間である。図6の下図の縦軸は、送風機6の制御状態である。図6の下図の横軸は、時間である。図5および図6を用いて、実施の形態1にかかる自動制御装置10の制御部2が目標値TVを変更する制御動作について説明する。
【0055】
まず、ステップS210では、時刻T0において、換気装置100が自動運転を開始して、においセンサ1に通電が開始される。具体的に、自動制御装置10の制御部2は、時刻T0にリモコン5から換気装置100の運転開始指令を受信すると、送風機6の運転を開始させる制御を行い、においセンサ1に通電を開始する制御を行う。これにより、時刻T0に送風機6の運転が開始されることにより、換気装置100による室内の換気が開始される。
【0056】
つぎに、ステップS220において、制御部2は、においセンサ1の通電開始直後におけるにおいセンサ1の出力値のピーク値を取得する。すなわち、制御部2は、においセンサ1の通電開始後に当該においセンサ1の出力値を記憶して、当該においセンサ1の出力値を監視し、当該においセンサ1の出力値のピーク値を取得する。
【0057】
実施の形態1において、制御部2は、においセンサ1の経年劣化の度合いの判定において、においセンサ1の通電開始直後におけるにおいセンサ1の出力値が急上昇した際の、当該においセンサ1の出力値のピーク値を用いる。なお、においセンサ1の出力値のピーク値を、単に出力値のピーク値と称する場合がある。
【0058】
つぎに、ステップS230において、制御部2は、においセンサ1の通電開始直後におけるにおいセンサ1の出力値のピーク値の、換気装置100が使い始められた初期におけるにおいセンサ1の出力値のピーク値からの低下量を算出する。すなわち、制御部2は、現在ピーク値の初期ピーク値からの低下量を算出する。
【0059】
現在ピーク値は、現在においてにおいセンサ1で測定されている、においセンサ1の通電開始直後におけるにおいセンサ1の出力値のピーク値である。
【0060】
初期ピーク値は、換気装置100が使い始められた初期においてにおいセンサ1で測定された、においセンサ1の通電開始直後におけるにおいセンサ1の出力値のピーク値である。制御部2は、換気装置100が使い始められた初期に、においセンサ1の出力値のピーク値を記憶しておく。
【0061】
図6の上図では、換気装置100が使い始められた初期における、においセンサ1の出力値と時間との関係を示す特性曲線を、特性曲線11として実線で示している。また、図6の上図では、現在においてにおいセンサ1で測定されているにおいセンサ1の出力値と時間との関係を示す特性曲線を、特性曲線12として破線で示している。現在においてにおいセンサ1で測定されているにおいセンサ1の出力値は、においセンサ1の経年劣化後においてにおいセンサ1で測定されているにおいセンサ1の出力値である。
【0062】
図6の上図の例では、初期ピーク値が5Vである。そして、現在ピーク値は、4.5Vまで低下している。これらの数値から、においセンサ1の経年劣化後におけるにおいセンサ1の出力値のピーク値は、0.5V低下した、すなわち10%低下したことになる。すなわち、制御部2は、においセンサ1の通電開始直後におけるにおいセンサ1の出力値のピーク値の、換気装置100が使い始められた初期におけるにおいセンサ1の出力値のピーク値からの低下量を、0.5Vと算出する。この場合、制御部2は、においセンサ1の検知感度が10%低下したと判定する。すなわち、制御部2は、においセンサ1の検知感度の低下量が、10%であると判定する。においセンサ1の検知感度の低下量は、においセンサ1の検知感度の経年劣化の度合いである。
【0063】
つぎに、ステップS240において、制御部2は、においセンサ1の通電開始直後における出力値のピーク値の初期からの低下量に基づいて、においセンサ1の経年劣化後における目標値TVである劣化後目標値TV2を算出する。
【0064】
図6の上図の例では、制御部2は、においセンサ1の検知感度が10%低下したと判定したので、経年劣化後における目標値TVを10%低下させる。すなわち、制御部2は、においセンサ1の出力値のピーク値の低下量を、においセンサ1の検知感度の低下量と判定して、目標値TVを低下させて、経年劣化後における目標値TVを算出する。制御部2は、経年劣化後におけるにおいセンサ1の出力値のピーク値の低下割合、および経年劣化後におけるにおいセンサ1の検知感度の低下割合と同じ割合だけ、経年劣化後における目標値TVを低下させて、経年劣化後における目標値TVを算出する。
【0065】
図6の上図の例では、換気装置100が使い始められた初期における目標値TVである初期目標値TV1が2.5Vである。このため、制御部2は、経年劣化後における劣化後目標値TV2を、初期目標値TV1を10%低下させた、すなわち初期目標値TV1を0.25V低下させた2.25Vに変更する。すなわち、制御部2は、においセンサ1の通電開始直後ににおいセンサ1の出力値が急上昇した際の当該においセンサ1の出力値のピーク値を、においセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として使用して、経年劣化後における劣化後目標値TV2を算出する。
【0066】
室内のにおい濃度が同じ状態であっても、においセンサ1の経年劣化後においてにおいセンサ1の検知感度が10%低下することにより、においセンサ1の出力値も10%低下する。そこで、制御部2は、経年劣化後における目標値TVを、経年劣化後のにおいセンサ1の検知感度の初期からの低下割合と同じ割合である10%低く再設定する。すなわち、上記のように制御部2は、経年劣化後における劣化後目標値TV2を、初期目標値TV1を10%低下させた2.25Vに設定する。そして、制御部2は、目標値TVの再設定後は、再設定された目標値TVである劣化後目標値TV2に基づいて送風機6のフィードバック制御を行うことで、初期と同じ時間だけ送風機6を運転することができる。
【0067】
つまり、制御部2は、においセンサ1の経年劣化の有無に関わらず、同じ室内のにおい濃度のにおいセンサ1の出力値のピーク値を、においセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として使用して目標値TVを調整し、調整した目標値TVに基づいて送風機6をフィードバック制御する。このため、自動制御装置10は、においセンサ1の検知感度が経年劣化した場合でも、初期と同じ時間だけ送風機6を運転することができる。これにより、使用者はにおいセンサ1の経年劣化を感じることなく、継続的に快適性を得ることができる。すなわち、制御部2は、においセンサ1の経年劣化の有無に関わらず、同じ室内のにおい濃度を目標値TV以下にするように、送風機6をフィードバック制御するため、使用者はにおいセンサ1の経年劣化を感じることなく、継続的に快適性を得ることができる。
【0068】
においセンサ1の通電開始直後ににおいセンサ1の出力値が急上昇した際の当該においセンサ1の出力値のピーク値を、においセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として使用できる理由は、次のとおりである。
【0069】
においセンサ1の通電開始直後は、温度上昇によって内部の壁面およびヒータ抵抗に付着していたにおい成分が急激に放出されるため、においセンサ1内の気中のにおい成分のほとんどが放出された成分となり、元々室内の空気中に含まれているにおい成分の割合は極端に少なくなる。つまり、においセンサ1の通電開始直後におけるにおいセンサ1の出力値は、におい成分の検出時点の室内の気中のにおい濃度の影響をほとんど受けることなく、一定のピーク値が得られるため、においセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として使用できる。
【0070】
さらに、日々のにおいセンサ1の出力値のピーク値のバラツキを最小化するために、予め決められた複数日分の出力値のピーク値を、制御部2に実装されたマイクロコンピュータに内蔵されるメモリに記憶させておき、当該複数日の期間におけるにおいセンサ1の出力値のピーク値の平均値がにおいセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として採用されてもよい。予め決められた複数日は、例えば30日である。
【0071】
ただし、においセンサ1の検知感度の経年劣化が回復することはないため、或る日を境に通電開始直後のにおいセンサ1の出力値のピーク値が上昇した場合には、においセンサ1が新品に交換されたことが想定される。この場合は、或る日を境に上昇する前の通電開始直後のにおいセンサ1の出力値のピーク値は、においセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として採用せず、或る日を境に上昇した後のにおいセンサ1の出力値のピーク値のみを、においセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として採用するようにする。
【0072】
例を挙げて説明すると、制御部2に実装されたマイクロコンピュータに内蔵されるメモリに、例えば「経年劣化の指標として採用していた、上昇する直前の出力値のピーク値に対し、現在測定したにおいセンサ1の出力値のピーク値があらかじめ決められた上昇幅閾値0.3Vを超えて上昇した計測をあらかじめ決められた期間である5日連続で計測した場合」などの条件を記憶させておく。上昇する直前の出力値のピーク値は、或る日を境に通電開始直後のにおいセンサ1の出力値のピーク値が上昇した場合における、或る日以前の直近においてにおいセンサ1に通電されたときにおける、出力値のピーク値である。
【0073】
そして、この条件が満たされた場合は、制御部2は、においセンサ1が新品に交換されたと判定し、6日前以前のにおいセンサ1の出力値のピーク値は、においセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として採用しない。この時点では、制御部2は、過去5日間の出力値のピーク値の平均値をにおいセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として採用する。そして、制御部2は、翌日は過去6日間の出力値のピーク値の平均値をにおいセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として採用し、翌々日は過去7日間の出力値のピーク値の平均値をにおいセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として採用する、という具合に、30日目に達するまでは、30日より少ない日数分の出力値のピーク値のみの平均値を採用する。
【0074】
なお、制御部2は、上述したあらかじめ決められた期間の代わりに、あらかじめ決められた回数を用いて、においセンサ1の検知感度の経年劣化を判定してもよい。すなわち、例えば「経年劣化の指標として採用していた、上昇する直前の出力値のピーク値に対し、現在測定したにおいセンサ1の出力値のピーク値があらかじめ決められた上昇幅閾値0.3Vを超えて上昇した計測をあらかじめ決められた回数である5回連続で計測した場合」などの条件が、制御部2に実装されたマイクロコンピュータに内蔵されるメモリに記憶されてもよい。
【0075】
そして、この条件が満たされた場合は、制御部2は、においセンサ1が新品に交換されたと判定し、上記の連続した5回よりも前のにおいセンサ1の出力値のピーク値は、においセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として採用しない。この時点では、制御部2は、上記の連続した5回の出力値のピーク値の平均値をにおいセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として採用する。そして、制御部2は、連続した5回の後の次回は、連続した5回の出力値のピーク値の平均値をにおいセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として採用し、連続した5回の後の次々回は、連続した5回と連続した5回の次回との6回分の出力値のピーク値の平均値をにおいセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として採用する、という具合に、30回目に達するまでは、30回より少ない回数分の出力値のピーク値のみの平均値を採用する。
【0076】
なお、図6では、図示を可能とするために、においセンサ1への通電開始直後のにおいセンサ1の出力値のピーク値が10%低下する例を示したが、換気装置100の実使用条件では、10%というにおいセンサ1の検知感度の低下量は、数年分のにおいセンサ1の検知感度の経年劣化に相当する低下量である。よって、実際には0.1%程度あるいは0.01%程度の日々のにおいセンサ1の出力値のピーク値の低下量を測定し、変更後の目標値TVの決定に使用することになる。
【0077】
実施の形態1では、室内空気における気中物質の状態量を検知する状態量検知部として、室内のにおい濃度を検知するにおいセンサ1について示しているが、状態量検知部は、においセンサ1に限定されない。状態量検知部には、室内空気における気中物質の状態量である室内のPM2.5濃度を検知するPM2.5センサなどの他のセンサが用いられてもよい。
【0078】
上記の自動制御装置10によれば、室内の空気における気中物質の状態量を調整する状態量調整機械を制御する自動制御装置であって、室内の気中物質の状態量を検知して出力する状態量検知部と、状態量検知部の出力が目標値以下となるように状態量検知部の出力に基づいて状態量調整機械をフィードバック制御する制御部と、を備え、制御部が、状態量検知部の出力値と、過去の状態量検知部の出力値とに基づいて状態量検知部の経年劣化による検知感度の低下量を算出し、低下量に基づいて目標値を調整する、自動制御装置が実現される。
【0079】
上述したように、実施の形態1にかかる換気装置100は、自動制御装置10を備える。自動制御装置10の制御部2は、においセンサ1の通電開始直後ににおいセンサ1の出力値が急上昇した際の当該においセンサ1の出力値のピーク値を、においセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として使用する。
【0080】
制御部2は、においセンサ1の通電開始直後におけるにおいセンサ1の出力値のピーク値を取得する。また、制御部2は、においセンサ1の通電開始直後におけるにおいセンサ1の出力値のピーク値の、換気装置100が使い始められた初期におけるにおいセンサ1の出力値のピーク値からの低下量を算出する。また、制御部2は、においセンサ1の通電開始直後における出力値のピーク値の初期からの低下量に基づいて、においセンサ1の経年劣化後における目標値TVである目標値TV2を算出し、目標値TVを目標値TV2に再設定する。そして、制御部2は、目標値TVの再設定後は、再設定された目標値TVである劣化後目標値TV2に基づいて送風機6のフィードバック制御を行う。
【0081】
このように、自動制御装置10の制御部2は、においセンサ1の通電開始直後におけるにおいセンサ1の出力値のピーク値から、においセンサ1の経年劣化による検知感度の低下量を算出し、算出結果に基づいて目標値を調整する。すなわち、自動制御装置10は、経年劣化によってにおいセンサ1の検知感度が低下した低下量に対応する分だけ目標値も低下させて、送風機6のフィードバック制御を行う。
【0082】
これにより、自動制御装置10は、経年劣化によってにおいセンサ1の検知感度が低下した場合でも、室内の空気が予め設定された清浄度になるまで換気装置100をフィードバック制御し、室内のにおい濃度を使用者が不快に感じない清浄後に調整することができる。すなわち、自動制御装置10は、においセンサ1の経年劣化による検知感度の低下によらず、継続して室内のにおい濃度が目標値以下になるように換気装置100の換気運転を制御し、室内のにおい濃度を使用者が期待する量まで調整できるため、室内の快適性を向上させることができる。
【0083】
したがって、実施の形態1にかかる自動制御装置10によれば、状態量検知部であるにおいセンサ1の検知感度が経年劣化した場合でも、室内の気中物質の状態量を使用者が期待する量まで調整することができる、という効果が得られる。
【0084】
実施の形態2.
実施の形態2では、上述した自動制御装置10の他の機能について説明する。実施の形態2においては、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能おおよび構成については同一の符号を用いて述べることとする。また、実施の形態1と同一の機能および構成についての説明は省略する。
【0085】
実施の形態2では、においセンサ1の通電開始直後におけるにおいセンサ1の出力値が急上昇した際の、当該においセンサ1の出力値のピーク値が出力可能な上限に達しており、においセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として、においセンサ1の通電開始直後のピーク値ではなく、上限値出力の継続時間を用いる点が、実施の形態1と異なる。
【0086】
上限値出力の継続時間は、においセンサ1の通電開始直後におけるにおいセンサ1の出力値が急上昇した際の、においセンサ1の出力値の上限値が継続して出力されている時間である。
【0087】
図7は、実施の形態2における自動制御装置の制御部がフィードバック制御における目標値を変更する動作手順を示すフローチャートである。図8は、実施の形態2にかかる自動制御装置の制御部がフィードバック制御における目標値を変更する制御動作を説明するためのタイムチャートである。図8は、上述した図6に対応する図である。図8の上図の縦軸は、においセンサ1の出力値である。図8の上図の横軸は、時間である。図8の下図の縦軸は、送風機6の制御状態である。図8の下図の横軸は、時間である。図7および図8を用いて、実施の形態2において自動制御装置10の制御部2がフィードバック制御における目標値を変更する制御動作について説明する。
【0088】
まず、ステップS310では、時刻T0において、換気装置100の自動運転を開始して、においセンサ1に通電が開始される。具体的に、自動制御装置10の制御部2は、時刻T0にリモコン5から換気装置100の運転開始指令を受信すると、送風機6の運転を開始させる制御を行い、においセンサ1に通電を開始する制御を行う。これにより、時刻T0に送風機6の運転が開始されることにより、換気装置100による室内の換気が開始される。
【0089】
つぎに、ステップS320において、制御部2は、においセンサ1の通電開始直後におけるにおいセンサ1の上限値出力の継続時間を取得する。すなわち、制御部2は、においセンサ1の通電開始後に当該においセンサ1の出力値を記憶して、当該においセンサ1の出力値を監視し、当該においセンサ1の出力値についての上限値出力の継続時間を取得する。
【0090】
実施の形態2において、制御部2は、においセンサ1の経年劣化の度合いの判定において、においセンサ1の通電開始直後におけるにおいセンサ1の出力値が急上昇した際の、当該においセンサ1の出力値についての上限値出力の継続時間を用いる。なお、においセンサ1の出力値についての上限値出力の継続時間を、単に上限値出力の継続時間と称する場合がある。
【0091】
つぎに、ステップS330において、制御部2は、においセンサ1の通電開始直後における上限値出力の継続時間の、換気装置100が使い始められた初期における上限値出力の継続時間からの、低下量を算出する。すなわち、制御部2は、現在の上限値出力の継続時間の、初期の上限値出力の継続時間からの、低下量を算出する。現在の上限値出力の継続時間の、初期の上限値出力の継続時間からの低下量は、においセンサ1の検知感度の経年劣化の度合いである。
【0092】
現在の上限値出力の継続時間は、現在の換気装置100の運転においてにおいセンサ1で測定されている、においセンサ1の通電開始直後においてにおいセンサ1の出力値が急上昇した際の、においセンサ1の出力値の上限値が継続して出力されている時間である。
【0093】
初期の上限値出力の継続時間は、換気装置100が使い始められた初期においてにおいセンサ1で測定された、においセンサ1の通電開始直後においてにおいセンサ1の出力値が急上昇した際の、においセンサ1の出力値の上限値が継続して出力されている時間である。制御部2は、換気装置100が使い始められた初期に、初期の上限値出力の継続時間を記憶しておく。
【0094】
図8の上図では、換気装置100が使い始められた初期における、においセンサ1の出力値と時間との関係を示す特性曲線を、特性曲線13として実線で示している。また、図8の上図では、現在においてにおいセンサ1で測定されているにおいセンサ1の出力値と時間との関係を示す特性曲線を、特性曲線14として破線で示している。現在においてにおいセンサ1で測定されているにおいセンサ1の出力値は、においセンサ1の経年劣化後においてにおいセンサ1で測定されているにおいセンサ1の出力値である。
【0095】
においセンサ1は、規定量以上のにおい濃度を検知すると、出力値が上限に達してしまう。自動制御装置10のにおいセンサ1には、直流(Direct Current:DC)5Vの電源が給電されている。このため、においセンサ1の出力値の上限出力値は、DC5Vである。そして、においセンサ1は、においセンサ1の通電開始直後に規定量以上のにおい濃度を検知しているため、図8のタイムチャートに示すように、出力値が上限のDC5Vに達している。
【0096】
換気装置100が使い始められた初期では、初期の上限値出力の継続時間が60秒である。そして、現在の上限値出力の継続時間は、20秒まで低下している。これらの数値から、においセンサ1の経年劣化後におけるにおいセンサ1の上限値出力の継続時間は、40秒低下している。すなわち、制御部2は、においセンサ1の通電開始直後における上限値出力の継続時間の、換気装置100が使い始められた初期における上限値出力の継続時間からの、低下量を40秒と算出する。
【0097】
つぎに、ステップS340において、制御部2は、においセンサ1の通電開始直後における上限値出力の継続時間の初期からの低下量に基づいて、においセンサ1の経年劣化後における目標値である劣化後目標値TV4を算出する。
【0098】
図8の上図の例では、制御部2は、目標値を2.5Vから2.3Vに8%低下させている。制御部2は、においセンサ1の通電開始直後における上限値出力の継続時間の減少量と、経年劣化後によるにおいセンサ1の検知感度の低下量との関係を示す相関関係情報に基づいて、目標値を何%低下させるかを決定する。
【0099】
換気装置100の開発時に、においセンサ1の通電開始直後における上限値出力の継続時間の減少量と、経年劣化後によるにおいセンサ1の検知感度の低下量との相関関係を検証しておく。そして、検証結果に基づいて、においセンサ1の通電開始直後における上限値出力の継続時間の減少量と、経年劣化後によるにおいセンサ1の検知感度の低下量との関係を示す相関関係情報があらかじめ作成される。当該相関関係情報は、換気装置100の製造時に、制御部2が有するマイクロコンピュータに内蔵されるメモリに記憶される。
【0100】
そして、制御部2は、ステップS330において算出した現在の上限値出力の継続時間の初期の上限値出力の継続時間からの低下量と、当該メモリに記憶された相関関係情報と、に基づいて、目標値を何%低下させるかを決定する。
【0101】
例を挙げて説明すると、図8の上図の例では、制御部2のマイクロコンピュータに内蔵されるメモリには、「上限値出力の継続時間が10秒減少した場合は、においセンサ1の検知感度が2%低下している」という相関関係を示す相関関係情報が記憶されている。図8の上図の例では、においセンサ1の通電開始直後における上限値出力の継続時間、すなわちにおいセンサ1の通電開始直後におけるにおいセンサ1の出力値がDC5V上限に達している時間が、初期から40秒減少している。このため、制御部2は、においセンサ1の検知感度が8%低下したと判定し、経年劣化後における目標値TVを8%低下させる。
【0102】
すなわち、図8の上図の例では、換気装置100が使い始められた初期における目標値TVである初期目標値TV3が2.5Vである。このため、制御部2は、経年劣化後における劣化後目標値TV4を、初期目標値TV3を8%低下させた、すなわち初期目標値TV3を0.2V低下させた2.3Vに変更する。すなわち、制御部2は、においセンサ1の通電開始直後ににおいセンサ1の出力値が急上昇した際の当該においセンサ1の上限値出力の継続時間を、においセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として使用して、経年劣化後における劣化後目標値TV4を算出する。
【0103】
室内のにおい濃度が同じ状態であっても、においセンサ1の経年劣化後においてにおいセンサ1の検知感度が8%低下することにより、においセンサ1の出力値も8%低下する。そこで、制御部2は、経年劣化後における目標値を、経年劣化後のにおいセンサ1の検知感度の初期からの低下割合と同じ割合である8%低く再設定する。すなわち、上記のように制御部2は、経年劣化後における劣化後目標値TV4を、初期目標値TV3を8%低下させた2.3Vに設定する。そして、制御部2は、目標値の再設定後は、再設定された目標値である劣化後目標値TV4に基づいて送風機6のフィードバック制御を行うことで、初期と同じ時間だけ送風機6を運転することができる。
【0104】
つまり、制御部2は、においセンサ1の経年劣化の有無に関わらず、同じ室内のにおい濃度のにおいセンサ1の上限値出力の継続時間を、においセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として使用して、送風機6をフィードバック制御するため、使用者はにおいセンサ1の経年劣化を感じることなく、継続的に快適性を得ることができる。すなわち、制御部2は、においセンサ1の経年劣化の有無に関わらず、同じ室内のにおい濃度を目標値以下にするように、送風機6をフィードバック制御するため、使用者はにおいセンサ1の経年劣化を感じることなく、継続的に快適性を得ることができる。
【0105】
においセンサ1の通電開始直後ににおいセンサ1の出力値が急上昇した際の当該においセンサ1の上限値出力の継続時間を、においセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として使用できる理由は、次のとおりである。
【0106】
規定量以上のにおい濃度を検知することにより、においセンサ1の出力値が上限に達してしまうと、においセンサ1の検知感度の経年劣化によって出力値が低下していたとしても、ピーク値の差はないため、においセンサ1の出力値のピーク値からはにおいセンサ1の検知感度の経年劣化を判別できない。
【0107】
しかしながら、においセンサ1へ通電開始からしばらく経つと、においセンサ1の内部の壁面およびヒータ抵抗から放出されるにおい成分が枯渇してくること、およびにおいセンサ1の外部の空気中へにおい成分が拡散することにより、においセンサ1の内部のにおい成分の濃度は徐々に減少してくる。このとき、においセンサ1の検知感度が経年劣化している場合は、初期のにおいセンサ1よりも早く上限出力値を出力しなくなる。つまり、においセンサ1の検知感度が経年劣化しているか否かによって、においセンサ1が上限出力値を出力し続ける時間が異なってくる。このため、においセンサ1の通電開始直後ににおいセンサ1の出力値が急上昇した際ににおいセンサ1が上限出力値を出力し続ける時間である上限値出力の継続時間を、においセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として用いることができる。
【0108】
なお、図8では、図示を可能とするために、においセンサ1への通電開始直後における上限値出力の継続時間が40秒減少した例を示したが、換気装置100の実使用条件では、40秒という上限値出力の継続時間の減少量は、数年分のにおいセンサ1の検知感度の経年劣化に相当する低下量である。よって、実際には0.1秒程度あるいは0.01秒程度の日々のにおいセンサ1の上限値出力の継続時間の減少量を測定し、変更後の目標値の決定に使用することになる。
【0109】
また、においセンサ1の上限出力値は、ある程度の幅を持たせてもよい。例えば、実際の上限出力値がDC5Vであっても、DC4.8V以上を上限値とみなすことで、部品の性能のバラツキまたは電気ノイズなどに起因した、においセンサ1からの出力値である電圧値の微小変動の影響を、排除することができる。
【0110】
また、制御部2は、においセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として、においセンサ1が上限出力値を出力している場合はにおいセンサ1の上限値出力の継続時間を使用し、においセンサ1が上限出力値を出力していない場合にはにおいセンサ1の出力値のピーク値を使用してもよい。この場合、制御部2は、においセンサ1の上限値出力の継続時間と、においセンサ1の出力値のピーク値とのうちのどちらをにおいセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として使用するかを自動で判定する。
【0111】
また、制御部2は、においセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として、においセンサ1の上限値出力の継続時間と、においセンサ1の出力値のピーク値との両方を使用して劣化後目標値を算出してもよい。例えば、制御部2は、においセンサ1の検知感度の経年劣化の指標としてにおいセンサ1の上限値出力の継続時間を使用して算出した劣化後目標値と、においセンサ1の検知感度の経年劣化の指標としてにおいセンサ1の出力値のピーク値とを使用して算出した劣化後目標値と、の平均値を最終的な劣化後目標値としてもよい。においセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として、においセンサ1の上限値出力の継続時間と、においセンサ1の出力値のピーク値との両方を使用して劣化後目標値を算出することにより、より幅広い範囲でにおいセンサ1の検知感度の経年劣化の度合いを判定することができる。
【0112】
上述したように、実施の形態2においては、制御部2は、においセンサ1の通電開始直後におけるにおいセンサ1の上限値出力の継続時間を、においセンサ1の検知感度の経年劣化の指標として使用する。
【0113】
制御部2は、においセンサ1の通電開始直後におけるにおいセンサ1の上限値出力の継続時間を取得する。また、制御部2は、上限値出力の継続時間の、換気装置100が使い始められた初期における上限値出力の継続時間からの低下量を算出する。また、制御部2は、上限値出力の継続時間の初期からの低下量に基づいて、においセンサ1の経年劣化後における目標値TVである劣化後目標値TV4を算出し、目標値TVに劣化後目標値TV4に再設定する。そして、制御部2は、目標値TVの再設定後は、再設定された目標値である劣化後目標値TV4に基づいて送風機6のフィードバック制御を行う。
【0114】
これにより、実施の形態2においては、実施の形態1の場合と同様に、自動制御装置10は、経年劣化によってにおいセンサ1の検知感度が低下した場合でも、室内の空気が予め設定された清浄度になるまで換気装置100をフィードバック制御し、室内のにおい濃度を使用者が不快に感じない清浄後に調整することができる。すなわち、実施の形態2においても、自動制御装置10は、においセンサ1の経年劣化による検知感度の低下によらず、継続して室内のにおい濃度が目標値以下になるように換気装置100の換気運転を制御し、室内のにおい濃度を使用者が期待する量まで調整できるため、室内の快適性を向上させることができる。
【0115】
実施の形態3.
実施の形態3では、上述した自動制御装置10の他の機能について説明する。実施の形態3では、自動制御装置10がにおいセンサ1の経年劣化の度合いをより正確に測定して判定することができる機能について説明する。実施の形態3においては、特に記述しない項目については実施の形態1または実施の形態2と同様とし、同一の機能および同一の構成については同一の符号を用いて述べることとする。また、実施の形態1または実施の形態2と同一の機能および同一の構成についての説明は省略する。
【0116】
実施の形態3では、においセンサ1への通電をあらかじめ決められた通電停止時間だけ停止した後に、再度、においセンサ1への通電を開始し、においセンサ1の経年劣化の度合いを判定する点が、実施の形態1および実施の形態2と異なる。
【0117】
通電停止時間は、換気装置100の換気運転の停止後に、においセンサ1の経年劣化の度合いを判定する処理である経年劣化判定処理を行うまで、においセンサ1への通電を停止する時間である。
【0118】
通電停止時間は、換気装置100の換気運転が停止された場合に、においセンサ1への通電が停止される時間であり、換気装置100の換気運転の停止後に、においセンサ1の経年劣化の度合いを判定する処理である経年劣化判定処理を行うまで、においセンサ1への通電を停止する時間である。通電停止時間は、予め決められて制御部2が有するマイクロコンピュータに内蔵されるメモリに記憶されている。通電停止時間は、例えば5時間である。
【0119】
においセンサ1の内部の壁面およびヒータ抵抗に付着していたにおい成分は、においセンサ1への通電を停止している状態で時間が経過することによって、状態が変化する。このため、においセンサ1への通電を毎回同じ時間である通電停止時間だけ停止した後に、再度、においセンサ1への通電を開始することで、においセンサ1の経年劣化の度合いをより正確に測定することができる。
【0120】
また、においセンサ1の経年劣化の度合いを正確に測定するために、通電停止時間は、室内における人の活動が少なく室内空気の汚濁具合が少ない夜間に設定されることが好ましい。
【0121】
例えば、21時に換気装置100の換気運転が停止された場合、制御部2は、においセンサ1への通電を停止する制御を行う。そして、制御部2は、21時から5時間後の2時に経年劣化判定処理を行う。すなわち、制御部2は、21時から5時間後の2時に、予め決められた判定用通電時間の3分間だけ、においセンサ1へ通電させる制御を行う。そして、制御部2は、上述した実施の形態1あるいは実施の形態2に示したように、においセンサ1の経年劣化の度合いを判定し、においセンサ1の経年劣化の度合いの判定結果を制御部2が有するマイクロコンピュータに内蔵されるメモリに記憶させる。
【0122】
その後、例えば8時に換気装置100の換気運転が開始されたときは、制御部2は、上述した実施の形態1あるいは実施の形態2に示したようなにおいセンサ1の経年劣化の度合いを判定する制御を行わない。制御部2は、2時に行った経年劣化判定処理で判定された経年劣化の度合いの判定結果を、今回の換気装置100の換気運転の開始時における、においセンサ1の経年劣化の度合いの判定結果とする。
【0123】
その後、例えば22時に換気装置100の換気運転が停止された場合、制御部2は、においセンサ1への通電を停止する制御を行う。そして、制御部2は、22時から5時間後の3時に経年劣化判定処理を行う。すなわち、制御部2は、22時から5時間後の3時に、予め決められた判定用通電時間の3分間だけ、においセンサ1へ通電させる制御を行う。そして、制御部2は、上述した実施の形態1あるいは実施の形態2に示したように、においセンサ1の経年劣化の度合いを判定し、においセンサ1の経年劣化の度合いの判定結果を制御部2が有するマイクロコンピュータに内蔵されるメモリに記憶させる。
【0124】
その後、例えば8時に換気装置100の換気運転が開始されたときは、制御部2は、上述した実施の形態1あるいは実施の形態2に示したようなにおいセンサ1の経年劣化の度合いを判定する制御を行わない。制御部2は、3時に行った経年劣化判定処理で判定された経年劣化の度合いの判定結果を、今回の換気装置100の換気運転の開始時における、においセンサ1の経年劣化の度合いの判定結果とする。
【0125】
上述したように、実施の形態3では、制御部2は、換気装置100の換気運転が停止された場合に、換気装置100の換気運転が停止された時から毎回同じ時間の通電停止時間だけ、においセンサ1への通電を停止する。その後、制御部2は、予め決められた判定用通電時間だけにおいセンサ1へ通電させて、においセンサ1の経年劣化の度合いを判定し、判定した経年劣化の度合いの情報を記憶する。これにより、自動制御装置10は、においセンサ1の経年劣化の度合いを正確に測定して判定することができる。
【0126】
また、においセンサ1への通電を停止する期間を夜間とすることで、においセンサ1の経年劣化の度合いをより正確に測定することができる。
【0127】
実施の形態4.
実施の形態4では、上述した自動制御装置10の他の機能について説明する。実施の形態4では、自動制御装置10がにおいセンサ1の寿命の情報を使用者に報知する機能について説明する。実施の形態4においては、特に記述しない項目については実施の形態1から実施の形態3と同様とし、同一の機能および同一の構成については同一の符号を用いて述べることとする。また、実施の形態1から実施の形態3と同一の機能および同一の構成についての説明は省略する。
【0128】
実施の形態4では、自動制御装置10が、過去のにおいセンサ1の経年劣化の度合いの判定結果を用いて、当該においセンサ1の経年劣化の進行速度を計算し、当該においセンサ1が寿命に到達する時期を予測し、においセンサ1が寿命に到達する時期の予測結果をにおいセンサ1の寿命予告情報として使用者に報知する。
【0129】
制御部2は、においセンサ1が寿命に到達する前に、寿命予告情報の表示を指示する旨の情報である寿命表示指示情報をリモコン5のリモコン制御部55に送信する。寿命表示指示情報には、寿命予告情報が含まれる。リモコン制御部55は、寿命表示指示情報を受信すると、寿命予告情報をリモコン5のリモコン表示部52に送信して、寿命予告情報をリモコン表示部52に表示させる。
【0130】
以下、においセンサ1の寿命到達時期の予測方法の一例について説明する。例えば、ここでは、においセンサ1の寿命の到達時期を、現在のにおいセンサ1の出力値のピーク値である、換気装置100が使い始められた初期におけるにおいセンサ1の出力値のピーク値である現在ピーク値が初期ピーク値から30%の低下した時期と定義する。
【0131】
制御部2は、換気装置100が使い始められた初期におけるにおいセンサ1の出力値のピーク値である初期出力値ピーク値と、においセンサ1の寿命の到達時期の判定条件である時期判定条件と、に基づいて、寿命到達時期を判定して予測する。
【0132】
初期出力値ピーク値は、換気装置100が使い始められた初期におけるにおいセンサ1の出力値のピーク値であり、換気装置100の製造時に、制御部2のマイクロコンピュータに内蔵されるメモリに記憶される。また、初期出力値ピーク値は、例えば使用者による換気装置100の初回の使用時に測定されて制御部2のマイクロコンピュータに内蔵されるメモリに記憶されてもよい。
【0133】
時期判定条件は、においセンサ1の寿命の到達時期の判定条件であり、においセンサ1の出力値のピーク値が初期出力値ピーク値の30%低下という条件である。すなわち、時期判定条件は、現在ピーク値が初期ピーク値から30%低下していることである。時期判定条件は、換気装置100の製造時に、制御部2のマイクロコンピュータに内蔵されるメモリに記憶される。
【0134】
制御部2は、日々のにおいセンサ1の経年劣化の度合いと、換気装置100が使い始められてからのにおいセンサ1への通電時間を積算した積算通電時間と、をマイクロコンピュータに内蔵されるメモリに記憶していく。ここで、においセンサ1の現在ピーク値が初期ピーク値から20%まで低下するまでの、においセンサ1への通電時間が2000時間であったとする。制御部2は、においセンサ1の経年劣化の進行速度を、においセンサ1に1000時間通電するごとに現在ピーク値が初期ピーク値から10%低下する、と計算する。そして、制御部2は、あと1000時間だけにおいセンサ1に通電することで、においセンサ1の寿命到達時期に到達するという予測を行う。
【0135】
制御部2は、現在の状態からにおいセンサ1に対して1000時間の通電を行うことでにおいセンサ1の寿命到達時期に到達する旨の寿命予告情報を含む寿命表示指示情報を、リモコン5に送信する。リモコン5は、液晶画面であるリモコン表示部52に、文字またはイラストの表示によって寿命予告情報を表示して、においセンサ1の寿命の到達時期を使用者に通知する。
【0136】
なお、リモコン表示部52は、液晶画面に限定されず、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)ランプなどであってもよい。すなわち、使用者への寿命予告情報の報知方法は、LEDランプを点灯させることで寿命予告情報を使用者に通知するなど、特定の方法に限定されない。
【0137】
上述したように、実施の形態4では、制御部2は、においセンサ1の経年劣化の度合いの判定結果を蓄積することによって、においセンサ1の経年劣化の進行速度を計算できるため、においセンサ1が寿命に到達する時期を予測することができる。使用者は、リモコン表示部52に表示された寿命予告情報を見ることによって、あらかじめ新しいにおいセンサ1を購入しておき、使用中のにおいセンサ1が寿命に到達する前に、当該使用中のにおいセンサ1を新品のにおいセンサ1に交換することができる。
【0138】
これにより、換気装置100は、においセンサ1が寿命により使用不可能となることに起因して送風機6のフィードバック制御ができなくなることがなく、継続して室内のにおい濃度が目標値以下になるように換気運転を制御できるため、室内の快適性が向上する。
【0139】
実施の形態5.
実施の形態1から実施の形態4では、自動制御装置10が換気装置100に実装される場合について示したが、自動制御装置10は空気清浄機に実装されてもよい。すなわち、自動制御装置10の制御対象は、電気集塵機であってもよい。
【0140】
図9は、実施の形態5にかかる空気清浄機の構成を示すブロック図である。実施の形態5にかかる空気清浄機200は、室内空気における気中物質の状態量を調整できる常空気清浄機能を備えた装置である。空気清浄機200は、自動制御装置20と、電気集塵機21とを備える。
【0141】
実施の形態5にかかる自動制御装置20の制御対象は、室内空気における気中物質の状態量を調整できる空気清浄機能を備えた、空気清浄機200である。すなわち、自動制御装置20は、室内空気における気中物質の状態量を調整できる空気清浄機能を備えた空気清浄機200の運転を自動でフィードバック制御する。より具体的に、自動制御装置20の制御対象は、電気集塵機21である。
【0142】
空気清浄機200における換気機械は、電気集塵機21である。したがって、自動制御装置20は、状態量調整機械である電気集塵機21の運転を自動でフィードバック制御する。そして、空気清浄機200は、室内空気における気中物質の状態量を調整できる機能を備えた状態量調整装置といえる。
【0143】
自動制御装置20は、空気清浄機200内に組込まれている。自動制御装置20は、制御対象が電気集塵機21であること以外は、実施の形態1にかかる自動制御装置10と同様の機能を有する。
【0144】
上述した実施の形態5にかかる空気清浄機200の自動制御装置10は、経年劣化によってにおいセンサ1の検知感度が低下した場合でも、室内の空気が予め設定された清浄度になるまで空気清浄機200をフィードバック制御し、室内のにおい濃度を使用者が不快に感じない清浄後に調整することができる。すなわち、空気清浄機200の自動制御装置10は、においセンサ1の経年劣化による検知感度の低下によらず、継続して室内のにおい濃度が目標値以下になるように空気清浄機200の空気清浄運転を制御し、室内のにおい濃度を使用者が期待する量まで調整できるため、室内の快適性を向上させることができる。
【0145】
したがって、実施の形態5にかかる空気清浄機200によれば、状態量検知部であるにおいセンサ1の検知感度が経年劣化した場合でも、室内の気中物質の状態量を使用者が期待する量まで調整することができる、という効果が得られる。
【0146】
続いて、実施の形態1から5にかかる制御部のハードウェア構成について説明する。制御部2は、処理回路により実現される。処理回路は、プロセッサを備える制御回路であってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。図10は、実施の形態1から5にかかる制御部2のハードウェア構成を示すブロック図である。制御部2を実現する制御回路は、図10に示すようにプロセッサ111およびメモリ112を備える。プロセッサ111およびメモリ112は、例えば、バスによって互いにデータの送受信が可能である。プロセッサ111は、メモリ112に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部2の機能を実行する。プロセッサ111は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、およびDSP(Digital Signal Processer)のうち1つ以上を含む。
【0147】
メモリ112は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、およびEEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)のうち1つ以上を含む。また、メモリ112に格納されるプログラムは、例えば記録媒体により提供される。記録媒体は、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルメモリ、光ディスク、コンパクトディスク、およびDVD(Digital Versatile Disc)のうち1つ以上を含む。また、メモリ112に格納されるプログラムは、通信媒体により提供されてもよい。処理回路が専用ハードウェアである場合、処理回路は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)およびシステムLSI(Large Scale Integration)のうち少なくとも1つ以上を含む。また、メモリ112は、プロセッサ111が実行する各処理における一時メモリとしても使用される。
【0148】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0149】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0150】
(付記1)
室内の空気における気中物質の状態量を調整する状態量調整機械を制御する自動制御装置であって、
前記室内の気中物質の状態量を検知して出力する状態量検知部と、
前記状態量検知部の出力が目標値以下となるように前記状態量検知部の出力に基づいて前記状態量調整機械をフィードバック制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記状態量検知部の出力値と、過去の前記状態量検知部の出力値とに基づいて前記状態量検知部の経年劣化による検知感度の低下量を算出し、前記低下量に基づいて前記目標値を調整すること、
を特徴とする自動制御装置。
(付記2)
前記制御部は、前記状態量検知部への通電を開始してからあらかじめ決められた出力安定時間の経過後の前記状態量検知部の出力のピーク値と、前記状態量検知部への通電を開始してからあらかじめ決められた出力安定時間の経過後の過去の前記状態量検知部の出力値のピーク値とに基づいて前記状態量検知部の経年劣化による検知感度の低下量を算出すること、
を特徴とする付記1に記載の自動制御装置。
(付記3)
前記制御部は、前記状態量検知部への通電開始直後における前記状態量検知部の出力値の上限値が継続して出力されている時間である上限値出力の継続時間と、過去の前記上限値出力の継続時間とに基づいて前記状態量検知部の経年劣化による検知感度の低下量を算出すること、
を特徴とする付記1に記載の自動制御装置。
(付記4)
前記制御部は、前記状態量検知部への通電をあらかじめ決められた通電停止時間だけ停止させた後に前記状態量検知部への通電を開始させて、前記状態量検知部の出力値と、過去の前記状態量検知部の出力値とに基づいて前記状態量検知部の経年劣化による検知感度の低下量を算出すること、
を特徴とする付記1に記載の自動制御装置。
(付記5)
前記状態量調整機械の運転に関する操作指令を受け付けて前記制御部に送信するリモートコントローラを備え、
前記制御部は、前記低下量に基づいて前記低下量があらかじめ決められた進行度合いに到達する時期を予測し、予測結果を前記リモートコントローラに送信して前記リモートコントローラに表示させること、
を特徴とする付記1から4のいずれか1つに記載の自動制御装置。
(付記6)
前記制御部は、直前に測定した前記状態量検知部の出力値に比べ、現在測定した前記状態量検知部の出力値があらかじめ決められた上昇幅閾値をあらかじめ決められた期間またはあらかじめ決められた回数を連続して超えている場合には、現在の前記状態量検知部の出力値に基づいて前記目標値を調整すること、
を特徴とする付記1に記載の自動制御装置。
(付記7)
前記状態量調整機械が、送風機であること、
を特徴とする付記1から6のいずれか1つに記載の自動制御装置。
(付記8)
前記状態量調整機械が、電気集塵機であること、
を特徴とする付記1から6のいずれか1つに記載の自動制御装置。
【符号の説明】
【0151】
1 においセンサ、2 制御部、3 通信部、4 駆動回路、5 リモートコントローラ、6 送風機、10 自動制御装置、11,12,13,14 特性曲線、20 自動制御装置、21 電気集塵機、51 リモートコントローラ操作部、52 リモートコントローラ表示部、53 リモートコントローラ記憶部、54 リモートコントローラ通信部、55 リモートコントローラ制御部、100 換気装置、111 プロセッサ、112 メモリ、200 空気清浄機、ST 出力安定時間、TV 目標値、TV1,TV3 初期目標値、TV2,TV4 劣化後目標値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10