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特開2024-174493化粧シート、及び化粧シートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174493
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】化粧シート、及び化粧シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 33/00 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
B32B33/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092347
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】塩田 歩
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AT00A
4F100BA02
4F100DD07A
4F100HB00B
4F100HB31B
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】インクジェット印刷法で絵柄層が形成される化粧シートの意匠性を、より向上させることを目的としている。
【解決手段】第1の層(ベース基材1)と、第1の層(ベース基材1)の表面1aにインクジェット印刷法で形成された絵柄層2と、を備える化粧シート10であって、上記第1の層における、上記絵柄層2が形成される表面の表面粗さの算術平均高さSaが、50μm以上300μm以下の範囲である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の層と、第1の層の表面にインクジェット印刷法で形成された絵柄層と、を備える化粧シートであって、
上記第1の層における、上記絵柄層が形成される表面の表面粗さの算術平均高さSaが、50μm以上300μm以下の範囲である、
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
上記第1の層は、樹脂製の基材からなる、
ことを特徴とする請求項1に記載した化粧シート。
【請求項3】
第1の層と第1の層の表面に形成された絵柄層と、を備える化粧シートの製造法であって、
上記第1の層における、上記絵柄層が形成される表面の表面粗さの算術平均高さSaを、50μm以上300μm以下とした後に、
上記第1の層の表面に対し、インクジェット印刷法で上記絵柄層を形成する、
ことを特徴とする化粧シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表装材その他を構成する、意匠性を有する化粧シート、及びその化粧シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧シートとしては、例えば特許文献1に記載の表装材がある。
特許文献1には、ベース基材の表面に絵柄層が積層した化粧シートが記載され、絵柄層がインクジェット印刷法で形成されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-163791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、一般に、絵柄層をインクジェット印刷法で形成する場合、印刷する基材表面は平坦な面となっている。そして、インクジェットヘッドから吐出されたインキは、平坦な基材面へ規則的に着弾して、絵柄層を形成する。
【0005】
すなわち、基材の表面凹凸が激しい基材の場合(図4(b)参照)、規則的に着弾するインキ21が基材の凹凸に埋もれて、形成した絵柄が安定せず、目的とする絵柄とならないおそれがある。このことは、化粧シートの意匠性に悪影響を及ぼす。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、インクジェット印刷法で絵柄層が形成される化粧シートの意匠性を、より向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は、化粧シートの意匠性を向上させるために、絵柄層が形成される面に凹凸を付与して意匠性を向上させることと、凹凸がある表面へのインクジェット加飾を行った場合に、安定した絵柄層を提供することの両立について種々検討して、本発明を成した。
【0007】
課題解決のために、本発明の一態様は、第1の層と、第1の層の表面にインクジェット印刷法で形成された絵柄層と、を備える化粧シートであって、上記第1の層における、上記絵柄層が形成される表面の表面粗さの算術平均高さSaが、50μm以上300μm以下の範囲である。
【0008】
ここで、インクジェット印刷法で形成した絵柄層の構造又は特性を、測定に基づき解析し特定することは、不可能又は非実際的である。このため、「インクジェット印刷法で形成された絵柄層」との記載で絵柄層を特定している。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様によれば、絵柄形成面に凹凸を付与して意匠性を向上させつつ、安定した絵柄層の提供が可能となる。この結果、本発明の態様によれば、より化粧シートの意匠性が安定して向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態における化粧シートの構成を示す断面図である。
図2】本発明の変形例の構成を示す断面図である。
図3】本発明の変形例の構成を示す断面図である。
図4】絵柄層形成面1aと、インクジェット印刷法で付着したインキ21との関係を示す模式図であり、(a)が平坦な面の場合の例、(b)が凹凸が激しい場合の例、(c)が本発明に基づく面の場合の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
なお、図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0012】
(構成)
本実施形態の化粧シート10は、図1に示すように、ベース基材1と絵柄層2を備える。
【0013】
(ベース基材1)
ベース基材1は、第1の層を構成する。
ベース基材1の材料は、特に限定されるものではなく、公知の印刷媒体を用いることが可能である。
ベース基材1としては、例えば、紙基材、プラスチック基材、ガラス基材、布帛基材、有機樹脂に細骨材等の無機材料を配合してシート化した基材等を例示できる。紙基材は、上質紙、コート紙、アート紙、キャスト紙、合成紙、インクジェット専用紙等である。プラスチック基材は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン(登録商標)、ポリスチレン、発泡スチロール、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート等の樹脂を材料とした基材である。
【0014】
ベース基材1は、一種類の基材だけから構成される場合に限定するものではなく、二種類以上の基材を積層して構成されていてもよい。
ベース基材1の形状は、特に限定されることなく、例えば、フィルム状、シート状、板状等であっても良い。
ベース基材1は、インクジェット印刷を考えると樹脂系の基材が好ましい。樹脂系の基材には、紙基材の表面に樹脂を吹き付けた後、乾燥させてなる基材も含まれる。
【0015】
本実施形態のベース基材1の上面1aは、平らな面を前提として、その平らな面に凹凸が形成されて意匠が付与されている。ただし、本実施形態では、ベース基材1の上面のうち、少なくとも絵柄層2が形成される表面の表面粗さの算術平均高さSaが、50μm以上300μm以下の範囲となるように調整されている。
【0016】
<絵柄層2>
絵柄層2は、ベース基材1の上面1aに形成されている。具体的に、絵柄層2は、図1において、ベース基材1の表面1aに積層されており、ベース基材1の表面全体を覆うように形成されている。なお、形成する絵柄に応じて、ベース基材1が露出した部分が存在していても構わない。
【0017】
本実施形態の絵柄層2は、インクジェット印刷法を用いて形成されている。
インクジェット印刷法に用いるインキとしては、水系、溶剤系、UV系等、各種のインキを用いることが可能である。また、インキの系は、印刷の対象となるベース基材1の種類等に応じて、適宜選択することが可能である。基材の凹凸面へ印刷するという観点から、インクジェット印刷法に用いるインキは、UV系のインキが好ましい。
【0018】
インキの成分としては、着色剤としての顔料及び分散剤、又は、着色剤としての染料を含んでおり、使用するインキの色に合わせて、顔料や染料を用いることが可能である。
顔料として好適に用いることが可能なものとしては、例えば、無機顔料、有機顔料、ブラック顔料がある。
【0019】
無機顔料の一例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、黒色酸化鉄、カドミウムレッド、弁柄、モリブデンレッド、モリブデートオレンジ、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等を用いることが可能である。
【0020】
有機顔料の一例としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、染料レーキ顔料、蛍光顔料等を用いることが可能である。
【0021】
具体的な有機顔料として、マゼンタ又はレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントバイオレット23等を用いることが可能である。
【0022】
オレンジ又はイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138等を用いることが可能である。
【0023】
グリーン又はシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等を用いることが可能である。
【0024】
ブラック顔料としては、例えば、ファーネス法やチャネル法で製造されたカーボンブラックを用いることが可能である。また、ブラック顔料としては、カーボンブラックの他にも、例えば、アニリンブラック、ルモゲンブラック、アゾメチンアゾブラック等を用いることが可能である。また、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料や、ブラウン顔料、オレンジ顔料等の有彩色顔料を複数使用して、ブラック顔料とすることも可能である。染料としては、酸性染料、反応性染料、分散染料等を用いることが可能である。具体的な化合物としては、酸性染料や反応性染料等を用いることが可能である。
【0025】
酸性染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー2、3、7、17、19、23、25、29、38、42、49、59、61、72、99、C.I.アシッドオレンジ56、64、C.I.アシッドレッド1、8、14、18、26、32、37、42、52、57、72、74、80、87、115、119、131、133、134、143、154、186、249、254、256、C.I.アシッドバイオレット11、34、75、C.I.アシッドブルー1、7、9、29、87、126、138、171、175、183、234、236、249、C.I.アシッドグリーン9、12、19、27、41、C.I.アシッドブラック1、2、7、24、26、48、52、58、60、94、107、109、110、119、131、155を用いることが可能である。
【0026】
反応性染料としては、例えば、C.I.リアクティブイエロー1、2、3、13、14、15、17、37、42、76、95、168、175、C.I.リアクティブレッド2、6、11、21、22、23、24、33、45、111、112、114、180、218、226、228、235、C.I.リアクティブブルー7、14、15、18、19、21、25、38、49、72、77、176、203、220、230、235、C.I.リアクティブオレンジ5、12、13、35、95、C.I.リアクティブブラウン7、11、33、37、46、C.I.リアクティブグリーン8、19、C.I.リアクティブバイオレット2、4、6、8、21、22、25、C.I.リアクティブブラック5、8、31、39を用いることが可能である。
【0027】
また、分散染料としては、例えば、アゾ系分散染料、キノン系分散染料、アントラキノン系分散染料、キノフタロン系分散染料等種々の分散染料を用いることが可能である。具体的な化合物としては、例えば、C.I.Disperse Yellow3,4,5,7,9,13,23,24,30,33,34,42,44,49,50,51,54,56,58,60,63,64,66,68,71,74,76,79,82,83,85,86,88,90,91,93,98,99,100,104,108,114,116,118,119,122,124,126,135,140,141,149,160,162,163,164,165,179,180,182,183,184,186,192,198,199,202,204,210,211,215,216,218,224,227,231,232、C.I.Disperse Orange1,3,5,7,11,13,17,20,21,25,29,30,31,32,33,37,38,42,43,44,45,46,47,48,49,50,53,54,55,56,57,58,59,61,66,71,73,76,78,80,89,90,91,93,96,97,119,127,130,139,142、C.I.Disperse Red1,4,5,7,11,12,13,15,17,27,43,44,50,52,53,54,55,56,58,59,60,65,72,73,74,7
5,76,78,81,82,86,88,90,91,92,93,96,103,105,106,107,108,110,111,113,117,118,121,122,126,127,128,131,132,134,135,137,143,145,146,151,152,153,154,157,159,164,167,169,177,179,181,183,184,185,188,189,190,191,192,200,201,202,203,205,206,207,210,221,224,225,227,229,239,240,257,258,277,278,279,281,288,298,302,303,310,311,312,320,324,328、C.I.Disperse Violet1,4,8,23,26,27,28,31,33,35,36,38,40,43,46,48,50,51,52,56,57,59,61,63,69,77、C.I.Disperse Green9、C.I.Disperse Brown1,2,4,9,13,19、C.I.Disperse Blue3,7,9,14,16,19,20,26,27,35,43,44,54,55,56,58,60,62,64,71,72,73,75,79,81,82,83,87,91,93,94,95,96,102,106,108,112,113,115,118,120,122,125,128,130,139,141,142,143,146,148,149,153,154,158,165,167,171,173,174,176,181,183,185,186,187,189,197,198,200,201,205,207,211,214,224,225,257,259,267,268,270,284,285,287,288,291,293,295,297,301,315,330,333、C.I.Disperse Black1,3,10,24等を用いることが可能である。
【0028】
(化粧シート10の製造方法)
本実施形態の化粧シート10の製造方法は、ベース基材形成工程と、絵柄層形成工程とを備える。
ここでは、ベース基材1がシート状のプラスチック基材(樹脂製の基材)の場合を例にして説明する。
【0029】
<ベース基材形成工程>
ベース基材形成工程は、ベース基材1を形成する工程である。本実施形態では、ベース基材1のうち、絵柄層2を形成する表面1aに、押出し成形その他の表面処理を実行して、当該表面の粗さが、算術平均高さSaで下記(1)式の条件を満足するように設定した。
50μm≦Sa≦300μm ・・・(1)
例えば、シート状に成形したベース基材1の面1aに対し、12μm以下の平坦な面となるように押圧した後に、上記(1)式を満足する凹凸形状をエンボス加工などで付与した。
【0030】
<絵柄層形成工程>
絵柄層形成工程は、絵柄層2を形成する工程である。
絵柄層形成工程では、ベース基材1の表面1aに対し、着色剤としての顔料及び分散剤、又は、着色剤としての染料を含むインキを用いて、インクジェット印刷法により画像を形成することで、絵柄層2を形成する。
着色剤は、例えば、有機顔料及び無機顔料のうち少なくとも1つを含む。
着色剤が含む無機顔料は、例えば、コバルトブルー、酸化鉄、黄色酸化鉄、カーボンブラックのうち少なくとも1つを含む。
【0031】
着色剤が含む有機顔料は、例えば、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.Disperse Blue60(C)、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.Disperse Red302(M)、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.Disperse Yellow149(Y)、カーボンブラック(K)のうち少なくとも1つを含む。
【0032】
なお、上述した実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0033】
(効果)
本実施形態の化粧シート10では、絵柄形成面1aに凹凸を付与して意匠性を向上させつつ、安定した絵柄層2の提供が可能となる。この結果、より化粧シート10の意匠性が安定して向上させることが可能となる。
【0034】
ここで、通常のインクジェット印刷の場合、図4(a)に示すように、ベース基材1の表面1aは平坦なものが多い。この場合、プリンタ20のインクジェットヘッドから吐出されたインキ21は、平坦な面へ規則的に着弾して、絵柄層2が形成される。ただし、絵柄形成面が平坦なため、その分、化粧シート10の意匠性が劣る。
【0035】
一方、図4(b)に示すように、ベース基材1の表面1aの表面凹凸が激しい場合、規則的に着弾するインキ21が基材凹凸に埋もれて絵柄が安定しなくなる。すなわち、絵柄形成面に意匠性を付与しても、所定以上の凹凸があると、絵柄が安定せず、目的とする絵柄が形成されないおそれがある。
【0036】
これに対し、本実施形態では、上記のように基材面1aの凹凸を規定することで、図4(c)のように、絵柄形成面に意匠性を付与しつつ、規則的に着弾するインキ21が基材凹凸に埋もれることを抑制することで絵柄が安定して形成され、目的とする絵柄を精度良く形成することができる(実施例参照)。
【0037】
(変形例)
(1)上記実施形態では、化粧シート10の構成を、ベース基材1と絵柄層2を備える構成としたが、これに限定するものではない。化粧シート10の構成を、ベース基材1と、絵柄層2に加え、例えば、図2に示すように、トップコート層4を備える構成としてもよい。
トップコート層4は、絵柄層2に積層されており、絵柄層2を間に挟んで、ベース基材1の表面と対向している。
トップコート層4は、光沢等の意匠性や、耐傷性、耐候性等の表面物性を付与するために、必要に応じて設けられる層である。トップコート層4の硬化方式は、1液、2液、活性エネルギー線照射等、公知の方式を用いることが可能である。トップコート層4に用いる樹脂材料は、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系等、公知の材料を用いることが可能である。
【0038】
(2)上記実施形態では、化粧シート10の構成を、ベース基材1と、絵柄層2を備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、化粧シート10の構成を、ベース基材1と、絵柄層2に加え、例えば、図3に示すように、トップコート層4と、機能層6を備える構成としてもよい。
機能層6は、ベース基材1の印刷面となる表面(図3では、上側の面)の反対側の面(裏面)に、例えば、剥離シート等で表面を保護した粘着層等により形成する。
【0039】
また、例えば、ベース基材1の裏面に、織布や不織布等を積層してもよい。
また、例えば、ベース基材1と絵柄層2との間に、インキ密着性を向上させるためのプライマー層を形成してもよい。
【0040】
(その他)
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)第1の層と、第1の層の表面にインクジェット印刷法で形成された絵柄層と、を備える化粧シートであって、
上記第1の層における、上記絵柄層が形成される表面の表面粗さの算術平均高さSaが、50μm以上300μm以下の範囲である、
ことを特徴とする化粧シート。
(2)上記第1の層は、樹脂製の基材からなる。
(3)第1の層と第1の層の表面に形成された絵柄層と、を備える化粧シートの製造法であって、
上記第1の層における、上記絵柄層が形成される表面の表面粗さの算術平均高さSaを、50μm以上300μm以下とした後に、
上記第1の層の表面に対し、インクジェット印刷法で上記絵柄層を形成する、
ことを特徴とする化粧シートの製造方法。
【実施例0041】
次に、本実施形態の実施例について説明する。
本実施例では、表面の凹凸感の異なるベース基材1に対しインクジェット加飾を行い、絵柄層2の意匠性が安定して形成されるかどうかを確認した。なお、意匠については、天然石を見本として、天然石の凹凸感と絵柄を再現することを目標に、インクジェット印刷法にて加飾を行った。
【0042】
以下の各例において、化粧シート10の層構成として、図1に示すような、ベース基材1の上に、インクジェット印刷法で絵柄層2を形成した層構成を採用した。
【0043】
<実施例1>
・ベース基材1は、骨材を主成分とし、アクリル樹脂系エマルジョンを添加した基材を使用した。
実施例1では、上面の算術平均高さSaが152μmとなっていた。すなわち、表面に、ある程度の凹凸感のあるベース基材1を採用した。なお、本実施例1では、基材に関しては、樹脂を吹き付けた後、乾燥させて使用したもので、特にエンボス板などを押し当てているのではなく、樹脂が自然となじんだ結果として、凹凸感のある基材に成形されている。
【0044】
・絵柄層2
絵柄層2は、ベース基材1の表面に、UVインキを用いたインクジェット印刷法によりマルチパスにて形成した。これにより、実施例1の化粧シート10を製造した。
UVインキには、東京インキ製TIC-JET 2012C-STを使用した。また、形成した印刷絵柄は、濃色柄石目柄とした。
【0045】
<実施例2>
実施例2では、上面の算術平均高さSaが200μmとなるように調整した。すなわち、表面に、ある程度の凹凸感のあるベース基材1を採用した。
また、形成した印刷絵柄は、淡色柄石目柄とした。
その他の条件は、実施例1と同じ条件とした。
【0046】
<比較例1>
比較例1では、上面の算術平均高さSaが12μmとなるように調整した。すなわち、表面が平坦なベース基材1を採用した。
また、形成した印刷絵柄は、濃色柄石目柄とした。
その他の条件は、実施例1と同じ条件とした。
【0047】
<比較例2>
比較例2では、上面の算術平均高さSaが9μmとなるように調整した。すなわち、表面が平坦なベース基材1を採用した。
また、形成した印刷絵柄は、淡色柄石目柄とした。
その他の条件は、実施例1と同じ条件とした。
【0048】
<比較例3>
比較例3では、上面の算術平均高さSaが325μmとなるように調整した。すなわち、表面について凹凸感の大きなベース基材1を採用した。
また、形成した印刷絵柄は、濃色柄石目柄とした。
その他の条件は、実施例1と同じ条件とした。
【0049】
<比較例4>
比較例4では、上面の算術平均高さSaが534μmとなるように調整した。すなわち、表面について凹凸感の大きなベース基材1を採用した。
また、形成した印刷絵柄は、淡色柄石目柄とした。
その他の条件は、実施例1と同じ条件とした。
【0050】
(評価)
各サンプルの評価結果を、表1に示す。
【表1】
【0051】
(評価方法)
表1に記載の評価の方法は、次の通りである。
<凹凸感>
ベース基材1表面の凹凸感は、斜め45度から照明を当て、目視にて評価した。
【0052】
<印刷安定性>
印刷安定性は、各例についてそれぞれ、連続して複数枚印刷を行い、1枚目の印刷状態を基準として10枚目までの平均色差ΔEを求める。
そして、平均色差ΔEによって、下記ように評価した。
△:ΔE<2
〇:ΔE<1
◎:ΔE<0.5
【0053】
<意匠性>
意匠性は、目視による評価し、次の評価で判定した。
×:凹凸感なく、天然石を表現できていない
〇:凹凸感は少ないが、天然石の意匠感を最低限表現できている
◎:凹凸感があり、天然石の意匠感を表現できている
【0054】
<算術平均高さSa>
凹凸部高低差(うねりの測定)を、マイクロスコープにて測定し、算術平均高さSaを求めた。
【0055】
<評価結果>
表1に示す結果測定から分かるように、本開示に基づく各実施例では、印刷安定性及び意匠性が共に良好であった。
【符号の説明】
【0056】
1 ベース基材
1a 表面
2 絵柄層
10 化粧シート
20 プリンタ
21 インキ
図1
図2
図3
図4