(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174494
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】化粧シート、吸音材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20241210BHJP
B32B 27/02 20060101ALI20241210BHJP
B32B 17/02 20060101ALI20241210BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20241210BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20241210BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20241210BHJP
E04F 13/18 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/02
B32B17/02
B32B27/36
G10K11/16 130
E04F13/07 B
E04F13/07 C
E04F13/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092348
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 幹之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良介
【テーマコード(参考)】
2E110
4F100
5D061
【Fターム(参考)】
2E110AA33
2E110AA57
2E110AB04
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2E110AB44
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2E110GA32W
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2E110GB01X
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2E110GB11Y
2E110GB32W
2E110GB52W
4F100AG00
4F100AG00B
4F100AK41
4F100AK41B
4F100AT00A
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4F100JH01
5D061AA06
5D061AA12
5D061AA22
5D061BB02
5D061BB28
(57)【要約】
【課題】吸音性の低下を抑制することが可能な化粧シートと吸音材を提供する。
【解決手段】吸音材100が、ポリエステル系の樹脂を用いて形成された基材層と、基材層の一方の面に積層され、且つガラスクロスを用いて形成されたガラスクロス層とを備え、基材層とガラスクロス層との積層体には、基材層とガラスクロス層とを積層した方向へ貫通する開口部7が形成されている化粧シート10と、一方の面がガラスクロス層と対向した状態で化粧シート10と間隔を開けて配置される化粧板30とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系の樹脂を用いて形成された基材層と、前記基材層の一方の面に積層され、且つガラスクロスを用いて形成されたガラスクロス層と、を備え、
前記基材層と前記ガラスクロス層との積層体には、前記基材層と前記ガラスクロス層とを積層した方向へ貫通する開口部が形成されている化粧シート。
【請求項2】
前記開口部は、円形に形成されており、
前記開口部の内径は、0.1mm以上0.5mm以下の範囲内である請求項1に記載した化粧シート。
【請求項3】
前記基材層と前記ガラスクロス層との積層体には、複数の前記開口部が形成され、
前記開口部の数は、16個/cm2以上100個/cm2以下の範囲内である請求項1に記載した化粧シート。
【請求項4】
前記基材層の他方の面に積層され、且つインキによる印刷により形成された印刷層をさらに備える請求項1に記載した化粧シート。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した化粧シートと、
一方の面が前記ガラスクロス層と対向した状態で前記化粧シートと間隔を開けて配置される化粧板と、を備える吸音材。
【請求項6】
前記化粧シートと前記化粧板との間に配置され、且つ空隙部を有するスペーサーをさらに備え、
前記開口部は、前記空隙部と接続しており、
互いに接続されている前記空隙部と前記開口部とにより、前記化粧シートの前記スペーサーと対向する面と反対側の面から前記化粧板の前記一方の面まで連続する空間が形成されている請求項5に記載した吸音材。
【請求項7】
ISO354に準拠した残響室法により測定した吸音率のピークが、1600Hz以下である請求項5に記載した吸音材。
【請求項8】
前記化粧シートと前記化粧板との間隔は、10mm以上50mm以下の範囲内である請求項5に記載した吸音材。
【請求項9】
前記化粧シートと前記化粧板との間隔は、30mm以上50mm以下の範囲内である請求項8に記載した吸音材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートと吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、業務の打ち合わせ等を行う際に、オフィスに出勤しなくとも、テレビ会議システム等を使用して、自宅やテレワークブースから会議に出席する事が一般的となっている。テレワークブースは、閉鎖空間であるために、自分が発した声が反響して残響音となる場合がある。このため、残響音を低減するために、テレワークブースの構成を、吸音材を設置した構成とする場合がある。
吸音材については、ポリエステル製のフェルト吸音材を用いて形成した吸音材が一般的であるが、テレワークブースのような閉鎖空間においては、火事が起こる事を想定して、不燃性を有する材料を用いることが好適である。
【0003】
不燃性を有する材料を用いて形成した吸音材としては、グラスウールを固めた構成の吸音材があるが、意匠性も悪く、また、触ると皮膚に炎症を起こす可能性があるという問題がある。
この問題に対し、例えば、特許文献1に開示されているように、裏面に粘着剤が付いた塩ビフィルムに、レーザーを照射して孔を開けた後、塩ビフィルムにガラスクロスをラミネートして作成した吸音材がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粘着剤が付いた塩ビフィルムに孔を開けて作成する吸音材では、孔を開けた塩ビフィルムにガラスクロスをラミネートする際に、粘着剤が孔を塞ぐ可能性がある。このため、例えば、1000Hz以下の周波数領域等、低波長域の吸音性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した問題点を鑑み、吸音性の低下を抑制することが可能な化粧シートと吸音材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、ポリエステル系の樹脂を用いて形成された基材層と、基材層の一方の面に積層され、且つガラスクロスを用いて形成されたガラスクロス層と、を備える化粧シートである。そして、基材層とガラスクロス層との積層体には、基材層とガラスクロス層とを積層した方向へ貫通する開口部が形成されている。
【0008】
また、上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、化粧シートと、一方の面がガラスクロス層と対向した状態で化粧シートと間隔を開けて配置される化粧板と、を備える吸音材である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、吸音性の低下を抑制することが可能な化粧シートと吸音材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第一実施形態における吸音材の構成を示す断面図である。
【
図2】第一実施形態における化粧シートの構成を示す断面図である。
【
図3】第一実施形態の変形例における吸音材の構成を示す断面図である。
【
図4】残響室法吸音率測定を行った結果(残響室法吸音率測定結果)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0012】
(第一実施形態)
以下、
図1を参照して、第一実施形態における吸音材100の構成について説明する。
吸音材100は、
図1に示すように、化粧シート10と、スペーサー20と、化粧板30を備える。
また、吸音材100は、ISO354(JIS A 1409)に準拠した残響室法により測定した吸音率のピークが、1600[Hz]以下である。
【0013】
化粧シート10は、シート状に形成されており、複数の開口部7が形成されている。
スペーサー20は、例えば、アルミを用いて形成されており、化粧シート10と化粧板30との間に配置されている。
【0014】
また、スペーサー20は、複数の空隙部40を有する。
空隙部40は、開口部7と接続されている。そして、互いに接続されている空隙部40と開口部7とにより、化粧シート10のスペーサー20と対向する面と反対側の面(
図1では、上側の面)から化粧板30の一方の面30a(
図1では、上側の面)まで連続する空間が形成されている。
【0015】
化粧板30は、一方の面30aが後述するガラスクロス層(化粧シート10が備える層)と対向した状態で、化粧シート10と間隔を開けて配置されている。
したがって、化粧板30の一方の面30aは、開口部7を通過して空隙部40へ進入した音(音波)が反射する反射面を形成している。
化粧シート10と化粧板30との間隔Rは、10[mm]以上50[mm]以下の範囲内である。第一実施形態では、一例として、化粧シート10と化粧板30との間隔Rが、30[mm]以上50[mm]以下の範囲内である場合について説明する。
【0016】
なお、化粧板30(構造体)は、化粧シート10を取り付ける被着体の一部であり、例えば、一般家屋、集合住宅、ビル、その他建築物の壁面、天井面、床面、パーティション等である。
また、化粧板30は、例えば、板状の金属、石膏等を用いて形成した基材でもよく、化粧シート10を基材に取り付けた吸音材100を、壁面、天井面、床面、パーティション等に取り付けて用いてもよい。また、吸音材100を用いて、壁、天井、床、パーティション等を構成してもよい。
また、化粧板30は、例えば、厚さが3[mm]のケイ酸カルシウム板に、オレフィンシートをラミネートして形成する。
【0017】
<化粧シート>
化粧シート10は、
図2に示すように、基材層1と、印刷層2と、表面保護層3と、プライマー層4と、接着剤層5と、ガラスクロス層6を備える。
【0018】
化粧シート10の厚さは、例えば、0.215[mm]以上0.423[mm]以下の範囲内とし、より好ましくは、0.215[mm]以上0.374[mm]以下の範囲内とする。
化粧シート10の質量は、例えば、245[g/m2]以上436.88[g/m2]以下の範囲内とし、より好ましくは、245[g/m2]以上414.81[g/m2]以下の範囲内とする。
【0019】
<基材層>
基材層1は、ポリエステル樹脂を含有するポリエステル樹脂系フィルムを用いて形成する。すなわち、基材層1は、ポリエステル系の樹脂を用いて形成された層である。
また、基材層1には、必要に応じて無機顔料(酸化チタン、酸化鉄等)を添加してもよい。
基材層1の組成は、例えば、ポリエステル樹脂を67.0質量[%]以上96.5質量[%]以下、無機顔料を3.5質量[%]以上33.0質量[%]以下含む組成とする。
【0020】
基材層1の厚さは、例えば、0.093[mm]以下(より好ましくは、0.077[mm])とする。これにより、燃焼量を低下させる。なお、基材層1の厚さは、下限値を、例えば、基材層1の強度等を考慮して、0.045[mm]以上とする。
基材層1の質量は、例えば、124.0[g/m2]以下(有機質量111.0[g/m2]以下)とし、好ましくは、110.0[g/m2]以下(有機質量78.76[g/m2]以下)とする。
【0021】
<印刷層>
印刷層2は、基材層1の他方の面(
図2では、上側の面)に積層されており、化粧シート10の意匠性を向上させるために、例えば、ウレタン樹脂系インキによる印刷により形成された層である。
ウレタン樹脂系インキとしては、例えば、ウレタン樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、有機顔料、無機顔料を含むインキを用いることが可能である。
【0022】
印刷層2の組成は、例えば、ウレタン樹脂を50.9質量[%]以上76.7質量[%]以下、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂を10.2質量[%]以上23.3質量[%]以下の範囲内で含む組成とする。これに加え、印刷層2の組成は、例えば、有機顔料を0質量[%]以上37.7質量[%]以下の範囲内、無機顔料を0質量[%]以上20.0質量[%]以下の範囲内で含む組成とする。
印刷層2を形成する印刷方法としては、例えば、インクジェットヘッドからインク滴を吹き付けるインクジェット印刷法、くぼんでいる反面を用いるグラビア印刷法を用いることが可能である。
【0023】
印刷層2の質量は、例えば、11.8[g/m2]以下(固形量)(有機質量9.50[g/m2]以下)とし、好ましくは8.36[g/m2]以下(固形量)(有機質量6.71[g/m2]以下)とする。
【0024】
<表面保護層>
表面保護層3は、印刷層2の一方の面(
図2では、上側の面)に積層されており、化粧シート10の表面(
図1及び
図2では、上側の面)を保護するために、アクリル樹脂系塗料で形成された層である。
アクリル樹脂系塗料としては、例えば、紫外線硬化型等の特性を有するアクリル樹脂を用いることが可能である。
【0025】
また、表面保護層3には、必要に応じて、無機質添加剤(シリカ等)を添加してもよい。
表面保護層3の組成は、例えば、アクリル樹脂を80質量[%]以上86質量[%]以下の範囲内、無機質添加剤を14質量[%]以上20質量[%]以下の範囲内で含む組成とする。
【0026】
表面保護層3の厚さは、例えば、0.062[mm]以下とし、好ましくは0.044[mm]以下とする。また、質量は、24.60([g/m2]以下(固形量)(有機質量19.70[g/m2]以下)とし、好ましくは17.49([g/m2]以下(固形量)(有機質量13.97[g/m2]以下)とする。
ここで、表面保護層3の表面には、意匠性を付与するために、凹凸模様を形成してもよい。凹凸模様としては、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチャー、梨地、砂目、ヘアライン等を採用することが可能である。凹凸模様を形成する方法としては、例えば、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機による、エンボス加工法を用いることが可能である。
【0027】
<プライマー層>
プライマー層4は、基材層1の一方の面(
図2では、下側の面)に積層されており、接着性の向上のためにウレタン樹脂系プライマーで形成された層である。
ウレタン樹脂系プライマーとしては、例えば、ウレタン樹脂、無機顔料(シリカ等)を含むプライマーを用いることが可能である。
【0028】
プライマー層4の組成は、例えば、ウレタン樹脂を56.2以上68.5以下の範囲内、無機顔料を34.0以上41.4以下の範囲内で含む組成とする。
プライマー層4の質量は、2.48[g/m2]以下(固形量)(有機質量1.55[g/m2]以下)とし、好ましくは1.76[g/m2]以下(固形量)(有機質量1.10[g/m2]以下)とする。
【0029】
<接着剤層>
接着剤層5は、プライマー層4の他方の面(
図2では、下側の面)に積層されており、ガラスクロス層6と化粧シート10とを接着するために、合成樹脂系接着剤を用いて形成される層である。
合成樹脂系接着剤としては、例えば、二液硬化型のエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤や、二液硬化型のウレタン樹脂系接着剤を用いる。
エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、無機顔料(シリカ等)を含む接着剤を用いることが可能である。
【0030】
エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤の組成は、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を80.3質量[%]以上100質量[%]以下の範囲内、無機顔料(シリカ等)を0質量[%]以上19.7質量[%]以下の範囲内で含む組成とする。
エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤の質量は、62.0[g/m2]以下(固形量)(有機質量62.0[g/m2]以下)とし、好ましくは44.0[g/m2]以下(固形量)(有機質量44.0[g/m2]以下)とする。
【0031】
<ガラスクロス層>
ガラスクロス層6は、接着剤層5の他方の面(
図2では、下側の面)に積層されており、ガラスクロスを用いて形成されている。すなわち、ガラスクロス層6は、基材層の一方の面に積層されている。
ガラスクロスは、ガラス繊維を織って形成したクロスである。ガラス繊維としては、例えば、Eガラス、表面処理剤(接着性を向上させる集束剤、シラン化合物等)を含む繊維を用いることが可能である。
【0032】
ガラスクロスの組成(ガラス繊維の組成)は、例えば、Eガラスを97質量[%]以上99質量[%]以下の範囲内、表面処理剤を1質量[%]以上3質量[%]以下の範囲内で含む組成とする。
ガラス繊維の織り方は、例えば、平織りとする。さらに、糸番手は、例えば、縦糸を68.5[tex]、横糸を68.5[tex]とし、織り密度は、例えば、縦糸を42[本/25mm]以上46[本/25mm]以下の範囲内、横糸を31[本/25mm]以上35[本/25mm]以下の範囲内とする。
【0033】
ガラスクロス層6の厚さは、例えば、0.17[mm]以上0.21[mm]以下の範囲内とする。
ガラスクロス層6の質量は、例えば、190.8[g/m2]以上233.2[g/m2]以下の範囲内(有機質量2.0[g/m2]以上6.4[g/m2]以下の範囲内)とする。
【0034】
<開口部>
複数の開口部7は、基材層1と、印刷層2と、表面保護層3と、プライマー層4と、接着剤層5と、ガラスクロス層6とを積層した積層体である化粧シート10に対し、基材層1とガラスクロス層6とを積層した方向へ貫通して形成されている。すなわち、複数の開口部7は、基材層1とガラスクロス層6との積層体に、基材層1とガラスクロス層6とを積層した方向へ貫通して形成されている。
また、開口部7は、基材層1とガラスクロス層6とを積層した方向から見て、円形に形成されている。
【0035】
開口部7の内径は、0.1[mm]以上0.5[mm]以下の範囲内である。
開口部7の数は、16[個/cm2]以上100[個/cm2]以下の範囲内である。
【0036】
開口部7を形成する際には、基材層1と、印刷層2と、表面保護層3と、プライマー層4と、接着剤層5と、ガラスクロス層6とを積層した積層体に対して、針エンボス版を用いることで、積層体を貫通する開口部7を形成する。
第一実施形態では、接着剤層5を形成する合成樹脂系接着剤として、二液硬化型のエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤や、二液硬化型のウレタン樹脂系接着剤を用いている。このため、針エンボス版を用いて開口部7を形成する際に、針エンボス版に合成樹脂系接着剤が付着することを抑制することが可能となり、安定した生産が可能となる。
また、第一実施形態では、針エンボス版を用いて開口部7を形成するため、レーザーの照射により開口部を形成する場合と比較して、製造コストを低減させることが可能となるとともに、化粧シートに焦げ等の損傷が発生する可能性を低減させることが可能となる。
【0037】
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この第一実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0038】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態の化粧シート10であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)ポリエステル系の樹脂を用いて形成された基材層1と、基材層1の一方の面に積層され、且つガラスクロスを用いて形成されたガラスクロス層6を備え、基材層1とガラスクロス層6との積層体には、基材層1とガラスクロス層6とを積層した方向へ貫通する開口部7が形成されている。
その結果、化粧シート10を基材層1の側からガラスクロス層6の側へ向けて通過する音が、ガラスクロス層6で反射しないため、吸音性の低下を抑制することが可能な化粧シート10を提供することが可能となる。
【0039】
また、ガラスクロス層6を備える構成であるため、ガラスクロス層の代わりにフェルト系の吸音材を用いて形成した構成と比較して、不燃性を増加させることが可能となる。
さらに、ガラスクロス層6を備える構成であるため、ガラスクロスの代わりにグラスウールを用いて形成した構成と比較して、接触による人体の損傷を抑制することが可能となる。
【0040】
(2)開口部7は、円形に形成されており、開口部7の内径は、0.1[mm]以上0.5[mm]以下の範囲内である。
その結果、開口部7の内径を0.1[mm]未満とした構成と比較して、吸音性の低下を抑制することが可能となる。また、開口部7の内径が0.5[mm]を超える構成と比較して、音(音波)が開口部7を通過する際に発生する抵抗の減少を抑制することが可能となるため、吸音性の低下を抑制することが可能となる。さらに、開口部7の内径が0.5[mm]を超える構成と比較して、化粧シート10の強度が低下することを抑制することが可能となる。
【0041】
(3)基材層1とガラスクロス層6との積層体には、複数の開口部7が形成され、開口部7の数は、16[個/cm2]以上100[個/cm2]以下の範囲内である。
その結果、開口部7の数を16[個/cm2]未満とした構成と比較して、吸音性の低下を抑制することが可能となる。また、開口部7の数が100[個/cm2]を超える構成と比較して、音(音波)が開口部7を通過する際に発生する抵抗の減少を抑制することが可能となるため、吸音性の低下を抑制することが可能となる。さらに、開口部7の数が100[個/cm2]を超える構成と比較して、化粧シート10の強度が低下することを抑制することが可能となる。
【0042】
(4)基材層1の他方の面に積層され、且つインキによる印刷により形成された印刷層2をさらに備える。
その結果、印刷層2を備えていない構成と比較して、化粧シート10の使用目的に応じた意匠性を、化粧シート10に付与することが可能となる。
【0043】
また、第一実施形態の吸音材100であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(5)化粧シート10と、一方の面30aがガラスクロス層6と対向した状態で化粧シート10と間隔を開けて配置される化粧板30を備える。
その結果、吸音性の低下を抑制することが可能な吸音材を提供することが可能となる。
となる。
【0044】
また、ガラスクロス層6を備える構成であるため、ガラスクロス層の代わりにフェルト系の吸音材を用いて形成した構成と比較して、不燃性を増加させることが可能となる。
さらに、ガラスクロス層6を備える構成であるため、ガラスクロスの代わりにグラスウールを用いて形成した構成と比較して、接触による人体の損傷を抑制することが可能となる。
【0045】
(6)化粧シート10と化粧板30との間に配置され、且つ空隙部40を有するスペーサー20をさらに備え、開口部7は、空隙部40と接続している。これに加え、互いに接続されている空隙部40と開口部7とにより、化粧シート10のスペーサー20と対向する面と反対側の面から化粧板30の一方の面30aまで連続する空間が形成されている。
その結果、スペーサー20により、化粧シート10と化粧板30との間隔Rが変化することを抑制することが可能となり、吸音性を安定させることが可能となる。
【0046】
(7)ISO354に準拠した残響室法により測定した吸音率のピークが、1600[Hz]以下である。
その結果、例えば、1500[Hz]以上1600[Hz]以下の範囲内の領域等、1600[Hz]以下の領域、すなわち、人の声の領域(声域)に相当する周波数の音に対して、吸音性の低下を抑制することが可能となる。
【0047】
(8)化粧シート10と化粧板30との間隔は、10[mm]以上50[mm]以下の範囲内である。
その結果、化粧シート10と化粧板30との間隔が10[mm]未満である構成と比較して、特に、1500[Hz]以下の領域における吸音性の低下を抑制することが可能となる。
また、化粧シート10と化粧板30との間隔が50[mm]を超える構成と比較して、吸音材100を使用して形成するパーティションや間仕切りの大型化を抑制することが可能となるとともに、吸音性の低下を抑制することが可能となる。これにより、例えば、テレワークブースのような閉鎖空間に対し、吸音材100を好適に用いることが可能となる。
【0048】
(9)化粧シート10と化粧板30との間隔は、30[mm]以上50[mm]以下の範囲内である。
その結果、化粧シート10と化粧板30との間隔が30[mm]未満である構成と比較して、特に、1500[Hz]以下の領域における吸音性の低下を抑制することが可能となる。
また、化粧シート10と化粧板30との間隔が50[mm]を超える構成と比較して、吸音材100を使用して形成するパーティションや間仕切りの大型化を抑制することが可能となるとともに、吸音性の低下を抑制することが可能となる。これにより、例えば、テレワークブースのような閉鎖空間に対し、吸音材100を好適に用いることが可能となる。
【0049】
<第一実施形態の変形例>
(1)第一実施形態では、吸音材100の構成を、化粧シート10と、スペーサー20と、化粧板30を備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、
図3に示すように、吸音材100の構成を、化粧シート10と化粧板30を備える構成としてもよい。この構成であっても、化粧シート10は、化粧板30に対し、化粧シート10と化粧板30との間に間隔が開くように配置する。また、化粧シート10と化粧板30との間隔Rは、第一実施形態と同様、10[mm]以上50[mm]以下の範囲内とし、好ましくは、30[mm]以上50[mm]以下の範囲内とする。
【0050】
(2)第一実施形態では、開口部7の構成を、基材層1とガラスクロス層6とを積層した方向から見て、円形に形成されている構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、開口部7の構成を、基材層1とガラスクロス層6とを積層した方向から見て、例えば、方形や角形に形成されている構成としてもよい。
【実施例0051】
第一実施形態を参照しつつ、以下、実施例1から3の吸音材と、比較例1の吸音材について説明する。
【0052】
(実施例1)
化粧シートは、隣り合う開口部のピッチを2[mm]とし、開口部の直径0.3を[mm]として形成した。
スペーサーは、縦方向の長さが600[mm]であり、横方向の長さが600[mm]であり、厚さが30[mm]のアルミ製フレームを用いて形成した。これにより、化粧シートと化粧板との間隔を30[mm]とした。
【0053】
化粧板は、厚さが3[mm]のケイ酸カルシウム板に、オレフィンシートをラミネートして形成した。
以上により、実施例1の吸音材を形成した。
【0054】
(実施例2)
化粧シートと化粧板との間隔を40[mm]とした点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例2の吸音材を形成した。
【0055】
(実施例3)
化粧シートと化粧板との間隔を50[mm]とした点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例3の吸音材を形成した。
【0056】
(比較例1)
厚さが7[mm]のポリエステル吸音材に、インクジェット印刷を行った厚さが0.2[mm]のポリエステル不織布を、合成ゴム系接着剤を用いて貼り合わせ、比較例1の吸音材を形成した。なお、ポリエステル吸音材としては、東京防音株式会社製の「ホワイトキューオン」を用い、ポリエステル不織布としては、旭化成株式会社製の「エルタスE05050」を用い、合成ゴム系接着剤としては、コニシ株式会社製の「Z-3」を用いた。
【0057】
(性能評価)
実施例1から3の吸音材と、比較例1の吸音材に対し、それぞれ、吸音効果を測定して評価した。測定結果は、表1と
図4に示す。なお、測定対象とする周波数は、主に、400[Hz]から5000[Hz]の範囲であり、表1において、6300[Hz]、8000[Hz]、10000[Hz]の欄に示す数値は、参考値である。
吸音効果を測定する手法としては、日本音響エンジニアリングの小型残響室に二枚の吸音材を並べ、ISO354に準拠した、インパルス応答を用いた残響室法吸音率測定を用いた。
【表1】
【0058】
(評価結果)
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果、
図4に示すように、実施例1から3の吸音材は、比較例1の吸音材と比較して、人の声に相当する1500[Hz]以下の領域において、高い吸音率を有することが確認された。
なお、
図4では、縦軸に、残響室法吸音率測定を用いて測定した吸音率(残響室法吸音率)を示し、横軸に、1/3オクターブにおけるバンド(帯域)の中心周波数(1/3オクターブバンド中心周波数)を示す。また、1/3オクターブバンド中心周波数は、表1における「周波数」に対応する。
【0059】
なお、本技術は、以下のような構成を取ることが可能である。
(1)
ポリエステル系の樹脂を用いて形成された基材層と、前記基材層の一方の面に積層され、且つガラスクロスを用いて形成されたガラスクロス層と、を備え、
前記基材層と前記ガラスクロス層との積層体には、前記基材層と前記ガラスクロス層とを積層した方向へ貫通する開口部が形成されている化粧シート。
(2)
前記開口部は、円形に形成されており、
前記開口部の内径は、0.1mm以上0.5mm以下の範囲内である前記(1)に記載した化粧シート。
(3)
前記基材層と前記ガラスクロス層との積層体には、複数の前記開口部が形成され、
前記開口部の数は、16個/cm2以上100個/cm2以下の範囲内である前記(1)又は(2)に記載した化粧シート。
(4)
前記基材層の他方の面に積層され、且つインキによる印刷により形成された印刷層をさらに備える前記(1)~(3)のいずれかに記載した化粧シート。
(5)
前記(1)~(4)のいずれかに記載した化粧シートと、
一方の面が前記ガラスクロス層と対向した状態で前記化粧シートと間隔を開けて配置される化粧板と、を備える吸音材。
(6)
前記化粧シートと前記化粧板との間に配置され、且つ空隙部を有するスペーサーをさらに備え、
前記開口部は、前記空隙部と接続しており、
互いに接続されている前記空隙部と前記開口部とにより、前記化粧シートの前記スペーサーと対向する面と反対側の面から前記化粧板の前記一方の面まで連続する空間が形成されている前記(5)に記載した吸音材。
(7)
ISO354に準拠した残響室法により測定した吸音率のピークが、1600Hz以下である前記(5)又は(6)に記載した吸音材。
(8)
前記化粧シートと前記化粧板との間隔は、10mm以上50mm以下の範囲内である前記(5)~(7)のいずれかに記載した吸音材。
(9)
前記化粧シートと前記化粧板との間隔は、30mm以上50mm以下の範囲内である前記(8)に記載した吸音材。
1…基材層、2…印刷層、3…表面保護層、4…プライマー層、5…接着剤層、6…ガラスクロス層、7…開口部、10…化粧シート、20…スペーサー、30…化粧板、40…空隙部、100…吸音材